説明

カットノズル及び充填装置

【課題】充填する液状物に含まれる固形物をを、吐出通路の側面に開口する取入開口において確実にカットし、固形物がカットノズルの先端から垂れ下がり、袋口を汚すのを防止する。
【解決手段】取入開口9に連通する供給路11にロータリーバルブ12が設置されている。ロータリーバルブ12のロータ14は円柱状で水平な軸線Xを有し、軸線Xと直交する流路15が形成され、外半径Rが軸線Xから吐出通路7までの間隔Dより大きく、かつ外周面に凹部が形成されている。ロータ14が連通位置から遮断位置へ回転するとき、取入開口9の背面側から、開口周縁で取入開口9に引っ掛かった固形物をカットする。続いてピストン6が下降するとき、取入開口9の内側から、取入開口9に引っ掛かった固形物を再度カットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被充填物、特に固形物を含む液状物を容器に充填するための充填ノズル(カットノズル)、及びその充填ノズルを備えた充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固形物を含む液状物(例えばイカの塩辛)を容器に充填する際、前記固形物が充填ノズルの先端(吐出口)から垂れ下がることを防止する技術として、カットノズルが知られている(特許文献1参照)。従来のカットノズルは、下端に吐出開口を有し側面に充填物の取入開口を有する吐出通路が形成されたノズル本体部と、前記吐出通路内を昇降するピストンからなり、前記ピストンが前記取入開口を通過するとき、ピストンの下端周縁と前記取入開口の周縁の間で固形物をカットすることで、固形物の垂れ下がりを防止している。
しかし、従来のカットノズルでは、液状物に含まれる固形物を、前記取入開口の箇所で確実にカットできず、その結果、固形物の一部がピストンの外周壁と前記吐出通路の内周壁の間に挟まり、カットノズルの先端から垂れ下がるのを確実に防止できなかった(特許文献1の段落0003参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−264308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のカットノズルを改良し、液状物に含まれる固形物を、前記取入開口の箇所でより確実にカットできるようにして、前記固形物がカットノズルの先端から垂れ下がるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るカットノズルは、下端に吐出開口を有し、側面に充填物の取入開口を有する吐出通路が形成されたノズル本体部と、前記吐出通路内を昇降するピストンを備え、前記ピストンの下端周縁が前記取入開口を通過して充填物をカットする従来のカットノズルを改良したもので、前記取入開口に連通する充填物の供給路にロータリーバルブを設置し、このロータリーバルブのロータにより、前記取入開口に引っ掛かった固形物を切断するようにしたものである。
具体的な構成として、前記ロータリーバルブは連通位置と遮断位置の間を往復回転して前記供給路を連通・遮断するロータを有し、前記ロータは円柱状で水平な軸線を有し、前記軸線と直交する流路が形成され、外半径(外径の1/2)が前記軸線から吐出通路までの間隔より大きく、かつ外周面の前記流路の両開口の間に凹部が形成されている。ロータが連通位置から遮断位置へ回転するのに伴い、ロータの流路の開口周縁が前記取入開口を通過して充填物をカットする。ロータが遮断位置にきたとき、前記凹部が前記取入開口を閉じ、ロータの外周面は前記ピストンの昇降経路外に退避する。
【0006】
なお、ロータの外半径が前記軸線から吐出通路までの間隔より大きいということは、ロータの外周面(前記凹部が形成されていない外周面)が前記取入開口から吐出通路内に突出することを意味する。一方、遮断位置においては、前記凹部が前記取入開口に面して閉じるので、ロータの外周面は凹部の深さの分だけ後退する。前記凹部の深さを所定値(ロータの外半径と前記軸線から吐出通路までの間隔の差)以上に設定することで、ロータの外周面(凹部)を前記ピストンの昇降経路外に退避させることができる。
前記ロータは、連通位置から遮断位置に向けて回転するとき、ノズル本体側の外周面が下向きに回転することが望ましい。
【0007】
本発明に係る充填装置は、上記カットノズルと、充填物を貯留するタンクと、充填物を計量する計量ポンプと、前記タンクの下流側に配置された3ポートロータリーバルブからなる。前記計量ポンプは、筒状のシリンダと、シリンダ内に配置され、シリンダ内を所定距離往復摺動する計量ピストンを有する。前記3ポートロータリーバルブは、3方向に開口する流路が形成されたハウジングと、3方向に開口する流路が形成され前記ハウジング内で第1位置と第2位置の間を往復回転するロータを有し、前記ハウジングの各流路はタンクに接続されるタンク側流路と、計量ポンプに接続される計量ポンプ側流路と、カットノズルに接続されるカットノズル側流路からなる。ロータは前記第1位置において、ハウジングのタンク側流路と計量ポンプ側流路を連通させ、かつカットノズル側流路を遮断し、前記第2位置において、ハウジングの計量ポンプ側流路とカットノズル側流路を連通させ、かつタンク側流路を遮断する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るカットノズルでは、取入開口に引っ掛かった固形物を、まずロータリーバルブのロータの回転でカットし(第1カット工程)、続いてピストンの摺動(下降)でカットする(第2カット工程)。同じ取入開口において、異なる刃(ピストンの下端周縁とロータの流路の開口周縁)により2段階のカットを行うことにより、前記取入開口に引っ掛かった固形物のカットが、従来のものに比べて確実にかつ安定して行えるようになる。
その結果、本発明に係るカットノズルでは、従来のカットノズルのように、ノズルの先端から固形物が垂れ下がり、その下方に配置された袋の袋口を汚すようなことが防止できる。
本発明に係るカットノズル及び充填装置は、特に固形物を含む液状物の充填に好適に用いられるが、固形物を含まない液状物の充填に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る充填装置断面図(初期状態)である。
【図2】本発明に係る充填装置断面図(計量工程)である。
【図3】本発明に係る充填装置断面図(充填準備工程)である。
【図4】本発明に係る充填装置断面図(充填工程)である。
【図5】本発明に係る充填装置断面図(第1カット工程)である。
【図6】本発明に係る充填装置断面図(第2カット工程)である。
【図7】充填工程におけるカットノズルの平面断面図(a)及び側面断面図(b)である。
【図8】第1カット工程におけるカットノズルの平面断面図(a)、側面断面図(b)及びロータによる固形物のカットを説明する拡大側面断面図(c)である。
【図9】第2カット工程におけるカットノズルの側面断面図(a)及びピストンによる固形物のカットを説明する拡大側面断面図(b)である。
【図10】カットノズルのロータリーバルブのロータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る充填装置及びカットノズルについて、図1〜10を参照して具体的に説明する。
本発明に係る充填装置は、図1に示すように、主要構成要素としてカットノズル1、タンク2、計量ポンプ3、及び3ポートロータリーバルブ4を含む。
カットノズル1は、図7〜9に拡大して示すように、ノズル本体部5と、図示しない駆動源に連結されて鉛直方向に昇降するピストン6を備える。ノズル本体部5は鉛直方向の吐出通路7を有し、吐出通路7内をピストン6が摺動して昇降する。吐出通路7は下端に吐出開口8を有し、側面に被充填物の取入開口9が形成されている。
【0011】
カットノズル1を構成する要素の一部として、取入開口9に連通する供給路11に2ポートロータリーバルブ12が設置されている。ロータリーバルブ12は、ハウジング13と、ハウジング13のボア内に設置されたロータ14からなる。ハウジング13はノズル本体部5と一体化され、取入開口9と供給路11の一部が流路(ポート)となっている。
ロータ14は円柱状で水平な軸線(回転の中心となる線)Xを有し、図示しない駆動源に連結され、軸線Xを中心として連通位置(図7に示す位置)と遮断位置(図9に示す位置)の間を往復回転し、前記供給路11を連通・遮断する。
【0012】
図10に明確に示すように、ロータ14には軸線Xと直交する流路15が形成されている。この流路15の2つの開口16,17(特に開口16)の開口周縁16a,17aは、取入開口9と略一致する輪郭を有する。ロータ14が前記連通位置にきたとき、流路15の開口16が取入開口9に対面する位置にくる。
また、ロータ14の外周面には、開口16,17の中間位置に凹部18が形成されている。この位置は、ロータ14が前記遮断位置(図9に示す位置)にきたとき、取入開口9に対面する位置である。凹部18は断面が円弧状に湾曲した溝として形成され、軸線Xに対し垂直方向(流路15と同方向)に形成されている。凹部18を前記方向に見たときの断面形状は、吐出通路7の内周面の断面形状と略一致する。
【0013】
ロータ14の外半径R(外径の1/2)は、軸線Xから吐出通路7までの間隔Dより大きく設定されている(R>D)。従って、ロータ14の外周面は、前記連通位置から遮断位置の間を回転する間、取入開口9から吐出通路7内に最大で距離(R−D)だけ突出する。
一方、前記連通位置(図7に示す位置)では、開口16が取入開口9に対面するから、ロータ14の外周面は取入開口9から吐出通路7内に突出しない。
また、前記遮断位置(図9に示す位置)では、先に述べたとおり、凹部18が取入開口9に対面する位置にきて該取入開口9を閉じるが、このときロータ14の外周面は凹部18の深さの分だけ、通常の外周面から後退する。凹部18の断面形状を吐出通路7の内周面の断面形状と略一致させ、かつ前記凹部の深さを前記距離(R−D)以上に設定することで、前記遮断位置にきたロータ14の外周面(凹部18)をピストン6の昇降経路外に退避させ、昇降するピストン6とロータ14の干渉を防止することができる
【0014】
タンク2は被充填物(固形物を含む液状物)19を貯留するタンクである。
計量ポンプ3は、筒状のシリンダ21と、シリンダ21内に配置された計量ピストン22、及びピストンロッド23を有し、ピストンロッド23は図示しない駆動源に連結されて所定距離昇降する。それに伴い計量ピストン22がシリンダ21内を摺動しながら、後退端位置と前進端位置の間を移動して、被充填物19をシリンダ21内に吸引して1回の充填量を計量し、又は1回の充填量を排出する。
ロータリーバルブ4は、ハウジング24と、ハウジング24のボア内に設置されたロータ25からなる。ハウジング24には3方向に開口する流路(ポート)が形成されている。ロータ25は円柱状で、3方向に開口する流路27が形成され、図示しない駆動源に連結され、ハウジング24内で第1位置(図1に示す位置)と第2位置(図3に示す位置)の間を往復回転する。
【0015】
ハウジング24の流路は、タンク2に接続されるタンク側流路26aと、計量ポンプ3に接続される計量ポンプ側流路26bと、配管部材28を介してカットノズル1に接続されるカットノズル側流路26cからなる。ロータ25は前記第1位置において、ロータ25の流路27を介してハウジング24のタンク側流路26aと計量ポンプ側流路26bを連通させ、かつカットノズル側流路26cを遮断する。また、ロータ25は前記第2位置において、ハウジング24の計量ポンプ側流路26bとカットノズル側流路26cを連通させ、かつタンク側流路26aを遮断する。
【0016】
続いて、上記充填装置の各部位の作動の一例を工程順に説明する。
(初期状態/図1)
計量ポンプ3のピストン22が上昇して前記前進端位置にある。ロータリーバルブ4が前記第1位置にあり、タンク側流路26aと計量ポンプ側流路26bが連通している。カットノズル1のピストン6が下降端位置にあり、ロータリーバルブ12のロータ14が前記遮断位置にある。
【0017】
(計量工程/図2)
計量ポンプ3のピストン22が下降して前記後退端位置まで移動し、タンク2内の被充填物19を計量シリンダ21内に吸引する。
(充填準備工程/図3)
ロータリーバルブ4のロータ25が前記第2位置に回転し、ハウジング24の計量ポンプ側流路26bとカットノズル側流路26cを連通させる。カットノズル1では、ピストン6が上昇端位置(ピストン6の下端が取入開口9より上方に位置する)に移動し、次いでロータリーバルブ12のロータ14が前記遮断位置から前記連通位置に回転し、取入開口9を供給路11に連通させる。
【0018】
(充填工程/図4,7)
計量ポンプ3のピストン22が上昇して前記前進端位置に向けて移動し、被充填物19をシリンダ21内から押し出す。押し出された被充填物19は、カットノズル1のロータリーバルブ12及び取入開口9を通って吐出通路7に入り、吐出開口8から吐出され、下方に設置された図示しない容器に充填される。
【0019】
(第1カット工程/図5,8)
計量ポンプ3のピストン22が前記前進端位置に達したとき、ロータリーバルブ12のロータ14が前記遮断位置に向けて回転する。その際に、ロータ14の開口16の開口周縁16aは、図8(c)に示すように、取入開口9の背面(吐出通路7の外側の面)に沿って摺動し、取入開口9の開口周縁9aとの間で、取入開口9に引っ掛かった固形物19a(ロータ14の流路15内から取入開口9を通って吐出通路7内に延びて存在している固形物)を、取入開口9の背面側からカットする。つまり、この第1カット工程では、ロータリーバルブ12のロータ14自体が、取入開口9の開口周縁9aに対向する切断刃として作用する。なお、ロータ14が前記連通位置から前記遮断位置に向けて回転する間、図8(c)に示すように、ロータ14の外周面は取入開口9から吐出通路7内に突出する。ロータリーバルブ12のロータ14が前記遮断位置にきたとき、凹部18が取入開口9に対面する位置にくる。
【0020】
(第2カット工程/図6,9)
ロータ14が前記遮断位置にきたとき、ロータ14の外周面(凹部18)は取入開口9から吐出通路7内に突出していない。この状態で、ピストン6は吐出通路7内の移動(前記上昇端位置から前記下降端位置に向けた移動)が許容される。ピストン6が下方に移動する過程で、ピストン6の下端周縁6aが取入開口9の内面(吐出通路7内側の面)に沿って摺動し、取入開口9の開口周縁9aとの間で、取入開口9に引っ掛かった固形物19aを、取入開口9の内面側からカットする。つまり、この第2カット工程では、従来のカットノズルと同様に、ピストン6の下端周縁6aが、取入開口9の開口周縁9aに対向する切断刃として作用する。ピストン6が前記下降端位置に到達したとき、吐出通路7内に残留していた被充填物19は全て前記容器内に充填される。
なお、ピストン6が下方に移動を開始すると同時に、ロータリーバルブ4のロータ25が前記第1位置に復帰回転し、図1に示す初期状態に戻る。
【0021】
なお、上記カットノズル1において、特許文献1に記載された構成を適宜採用することができる。具体的には、(1)ピストンを中空として下端面又は下端部側面にエア穴を形成し、ピストンに付着した充填物を容器内に吹き飛ばす、(2)ピストンを下降と同時に回転させ、固形物の切断形態を摺り切りとする、(3)ピストンの外周壁と吐出通路7の内周壁のクリアランスを下端部で小さく、下端部の上部近傍で相対的に大きく形成する、(4)上記(1)〜(3)の構成を組み合わせる、等が考えられる。
【符号の説明】
【0022】
1 カットノズル
2 タンク
3 計量ポンプ
4 3ポートロータリーバルブ
5 ノズル本体部
6 ピストン
7 吐出通路
9 取入開口
11 供給路
12 ロータリーバルブ
14 ロータ
15 ロータの流路
16,17 ロータの流路の開口
18 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に吐出開口を有し、側面に被充填物の取入開口を有する吐出通路が形成されたノズル本体部と、前記吐出通路内を昇降するピストンを備え、前記ピストンの下端周縁が前記取入開口を通過して被充填物をカットするカットノズルにおいて、前記取入開口に連通する被充填物の供給路にロータリーバルブが設置され、前記ロータリーバルブは連通位置と遮断位置の間を往復回転して前記供給路を連通・遮断するロータを有し、前記ロータは円柱状で水平な軸線を有し、前記軸線と直交する流路が形成され、外半径が前記軸線から前記吐出通路までの間隔より大きく、かつ外周面の前記流路の両開口の間に凹部が形成され、前記ロータの前記連通位置から前記遮断位置への回転に伴い、前記ロータの流路の開口周縁が前記取入開口を通過して被充填物をカットし、前記遮断位置において前記凹部が前記取入開口を閉じ、このとき前記ロータの外周面が前記ピストンの昇降経路から退避することを特徴とするカットノズル。
【請求項2】
前記ロータは、前記連通位置から前記遮断位置に向けて回転するとき、前記ノズル本体側の外周面が下向きに回転することを特徴とする請求項1に記載されたカットノズル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたカットノズルと、被充填物を貯留するタンクと、被充填物を計量する計量ポンプと、前記タンクの下流側に配置された3ポートロータリーバルブからなり、前記計量ポンプは、筒状のシリンダと、前記シリンダ内に配置され、前記シリンダ内を所定距離往復摺動する計量ピストンを有し、前記3ポートロータリーバルブは、3方向に開口する流路が形成されたハウジングと、3方向に開口する流路が形成され前記ハウジング内で第1位置と第2位置の間を往復回転するロータを有し、前記ハウジングの各流路は前記タンクに接続されるタンク側流路と、前記計量ポンプに接続される計量ポンプ側流路と、前記カットノズルに接続されるカットノズル側流路からなり、前記ロータは前記第1位置において、前記ハウジングのタンク側流路と計量ポンプ側流路を連通させ、かつカットノズル側流路を遮断し、前記第2位置において、前記ハウジングの計量ポンプ側流路とカットノズル側流路を連通させ、かつタンク側流路を遮断することを特徴とする充填装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate