説明

カットフルーツの風味改良方法

【課題】カットフルーツの保存性を高める処理のために生じた異味・異臭を抑え、また、
保存中の経時変化における風味の劣化を抑えて風味を向上させる。
【解決手段】カットフルーツを、スクラロースを含有する保存液中に浸漬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カットフルーツの風味改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴ、スイカ、パイナップル等をカットし盛りつけたカットフルーツが、スーパーや
コンビニエンスストアで広く市販されている。これらのカットフルーツは、一口で食べら
れるような適当なサイズにカットされていて、かつフルーツの皮を取り除く手間がかから
ないことから、気軽に喫食することができるため利便性が非常に高い。このカットフルー
ツの鮮度を保ち、保存性を高めるために、種々の方法が検討されている(特許文献1、2
など)。
しかし、これら保存性を高めるための処理により、異味・異臭などが生じることがあり
、また、これらの方法をもってしても、保存中における経時変化による風味の劣化が問題
になる場合があった。
【0003】
【特許文献1】特開平6−90660号公報
【特許文献2】特開2004−129625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点の解決を目的とするものであり、カットフルーツの風味を改良する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、カットフルーツを、スクラロースを含有する保存液
中に浸漬することにより、保存性を高める処理のために生じた異味・異臭を抑え、また、
保存中の経時変化における風味の劣化を抑えて風味を向上させることができることを見出
した。
即ち、本発明は、かかる知見に基づいて開発されたものであり、下記の態様を含むもの
である:
項1.カットフルーツを、スクラロースを含有する保存液中に浸漬することを特徴とする
カットフルーツの風味改良方法。
項2.保存液中に含まれるスクラロースの含有量が、0.0005〜0.08質量%であ
る項1に記載のカットフルーツの風味改良方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、カットフルーツについて、保存性を高める処理のために生じた異味・異
臭を抑え、また、保存中の経時変化における風味の劣化を抑えて風味を向上させることが
できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、カットフルーツを、スクラロースを含有する保存液中に浸漬することを特徴
とする。本発明で使用するスクラロースは、ショ糖分子内のフルクトース残基の1、6位
およびグルコース残基の4位の三つの水酸基を塩素分子で置換した構造をしており、ショ
糖の約600倍の良質の甘味を示す高甘味度甘味料である。保存液中のスクラロースの含
有量としては、当該保存液の配合や使用するフルーツの種類によって適宜配合することが
できるが、0.0005〜0.08質量%、好ましくは、0.001〜0.05質量%、更に好ましくは0.002〜0.02質量%を挙げることができる。なお、本発明で使用するスクラロースは商業上入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンスイートシリーズなどを挙げることができる。
【0008】
また、スクラロース以外の高甘味度甘味料として、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アリテーム、アスパルテーム、ネオテーム、ステビア、甘草などから選ばれる少なくとも1種を併用してもよい。
【0009】
本発明で用いられるフルーツは特に限定されず、各種フルーツを用いることができる。具体的なフルーツの例としては、柑橘類(例えばみかん、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、柚子)、ベリー類(例えばイチゴ、ラズベリー、ブラックラズベリー、ブルーベリ
ー、木イチゴ、クランベリー)、核果類(例えば桃、杏、プラム、梅)、バナナ、パイン
アップル、グレープ、マスカット、アップル、梨、メロン、キウイフルーツ、グァバ、パ
ッションフルーツ、マンゴー、すいか、カムカム、アロニア、洋ナシ、アロエ、すもも、
スイーティー、ラフランス、プルーン、アローニャ、アセロラ、アムラ、パッションフル
ーツ、ドラゴンフルーツ、シークワーサー、ノニ、カシス、ブラックカラント(黒カシス
)、ドリアン、アサイ、アサイヤシ、ハネデュメロン、アカスグリ、ボ
イセンベリー、チェリー、サワーチェリー、マラスキノチェリー、フェイジョア、ピタン
ガ、マンゴスチン、カラマンシー、チェストツリー、羅漢果果実、リュウガン、ナツメヤ
シ、レーズン、Luo han guo果物、ホワイトハートチェリー、ザクロ、オリーブ、棘梨、
ガルシニア、ガンビア、ヘンプ、パラダイスナッツ、じゃばら、ルロ、モラ(アンデスブ
ラックベリー)、スピルニナ、デュナリエラ、エルダーベリー、クモチユズ、ベルガモッ
ト(Fantastico)、イーチャンレモン、ザダイダイ、オオユ、ターミナリアベリリカ、タ
ールジンかんきつ、デーツ、シロレイシ、スグリ、デーツ、ボイセンベリー、赤ラズベリ
ー、ジャックフルーツ、ウンシュウミカン、タチバナ、ナツミカン、アマナツ、ハッサク
、イヨカン、ポンカン、ブンタン、カボス、スダチ、シトロン、ライム、ベルガモット、
カキ、イチジク、ビワ、カリン、パパイア、アプリコット、ピンクグレープフルーツ、サ
ンザシ、ビルベリー、ハイブッシュブルーベリー、黒イチゴ、赤キイチゴ、マカ、ウコン
、ルクマ、ハイブッシュ・ブルーベリー、ラビットアイ・ブルーベリー、ローブッシュ・
ブルーベリー、冬メロン、カンタロープ、ヘチマ、デューベリー、ローガンベリー、ヤン
グベリー等を挙げることができる。
【0010】
これらのフルーツは、カットフルーツにする前に表皮を洗浄することが好ましい。例えば
、ブラシで水洗するなどの方法により、表皮に付着した異物、昆虫、残留農薬などを除去
することができる。その後、フルーツの表皮を殺菌することが好ましい。殺菌は、酵母や
大腸菌群等を殺菌することができる温水(通常75℃以上)やアルコール製剤、塩素系製
剤を用いて行うことができる。このような表皮の洗浄や殺菌を行うことによって、カット
フルーツにする際の2次汚染を防止することができる。
【0011】
本発明で保存することができるカットフルーツの形態は特に制限されない。少なくとも果
肉が表面に現れている部分が存在するものであれば、本発明でいうカットフルーツの概念
に含まれる。したがって、表皮を完全に除去して果肉のみが表面に現れているものの他に
、例えば8等分したリンゴのように、表皮が残っている部分と果肉が表面に現れている部
分からなるものもカットフルーツの概念に含まれる。また、保存するカットフルーツには
、リンゴの芯やブドウの種のように通常は食さない部分が含まれていても構わない。この
ような種々のカットフルーツの中でも、果肉のみが表面に現れているカットフルーツを保
存する場合に、本発明をより効果的に適用し得る。なお、本発明でいうカットフルーツは
、必ずしも刃物で切ることによって得られるものに限らず、割ったり、表皮を剥いたり溶
かしたりして得られるものであっても構わない。
【0012】
カットフルーツのサイズや形状は特に制限されず、現に流通段階におかれているカットフ
ルーツや消費者向けに販売されているカットフルーツのサイズや形状を採用することがで
きる。例えば、スティック状、シリンダー状、短冊状にすることができ、輪切りにするこ
ともできる。これらのサイズや形状は、目的に応じて適宜決定することができる。
【0013】
本発明のカットフルーツの具体例としては、リンゴを芯取りして皮付きのままカットした
もの、イチゴのヘタの部分をカットして除去したもの、オレンジを剥皮したもの、ブドウ
を剥皮したもの、パイナップルを剥皮し芯取りしてカットしたものなどを挙げることがで
きる。
【0014】
本発明でカットフルーツに使用する保存液は、スクラロースを含有する以外は、本発明の
効果に悪影響を与えない程度で通常使用されるものを適宜添加することができる。例えば
、糖類としては、食品に使用可能な糖類で有れば特に制限はないが、ショ糖、果糖ブドウ
糖液糖、水あめ、還元水あめ、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリト
ール、パラチニット等の糖アルコール、トレハロース等が好ましく使用される。また、保
存液の酸度は、食品に添加しうる酸やアルカリを用いて調整することができる。食品に添
加することができる酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸を例示するこ
とができる。好ましいのは、保存するカットフルーツに含まれている糖や酸と同じ種類の
糖や酸を用いて保存液の糖度と酸度を調整する場合である。
【0015】
さらに、本発明の方法に用いる保存液には、保存しようとするフルーツの果汁が含まれて
いてもよい。保存しようとするフルーツの果汁の量は、保存液の50重量%以上含まれて
いることが好ましく、65重量%以上含まれていることがより好ましく、80重量%以上
含まれていることがさらに好ましい。また、保存しようとするフルーツの果汁そのものを
、保存液として用いてもよい。その場合は、果汁に直接スクラロースを添加すればよい。
保存液には、種々の添加物を添加することができる。例えば、カットフルーツの褐変防
止を目的として酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えばアスコ
ルビン酸などを例示することができる。アスコルビン酸は、保存液の0.01〜0.5重
量%で添加することが好ましく、0.05〜0.3重量%で添加することが好ましい。ア
スコルビン酸などの酸化防止剤を添加した保存液にカットフルーツを浸漬しておけば、カ
ットフルーツを保存液から取り出した状態でも果肉の褐変を抑制することができる。した
がって、カットフルーツを保存液から取り出して、トレー詰めして市販する場合などに有
効である。
【0016】
本発明の方法に用いる保存液は、殺菌または除菌しておくことが好ましい。殺菌や除菌の
方法は、通常用いられている方法の中から適宜選択することができる。例えば、加熱殺菌
やフィルター濾過などの方法を採用することができる。これによって、一般生菌数と真菌
数を300cfu/g未満にしておくことが好ましい。また、処理後の保存液に対して大
腸菌群の検出試験を行って、陰性であることを確認しておくことが好ましい。
【0017】
本発明にしたがってカットフルーツを保存液に浸漬するとき、少なくともカットフルーツ
の果肉部分が完全に保存液に接触するように浸漬することが好ましい。特に、カットフル
ーツ全体が保存液中に浸かる状態におくことが好ましい。具体的には、カットフルーツを
浸漬した保存液を袋や容器に入れ、空気が入らないように密封した状態におくことが好ま
しい。空気が入らないように密封することによって、微生物の増殖を抑制し、カットフル
ーツの酸化を防止することができる。カットフルーツと保存液の重量比は特に制限されないが、10:1〜1:10であることが好ましく、5:1〜1:5であることがより好ましく、2:1〜1:2であることがさらにより好ましい。或いは、カットフルーツを保存液に浸漬するだけでなく、カットフルーツに保存液を噴霧したり、適度な粘度を保存液に与え、カットフルーツをコーティングしてもよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明は
これらに何ら限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を示す
ものとし、文中「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製を示す。
【0019】
実施例1〜3:カットパイナップル
パイナップルを剥皮し、芯取りしてサイコロ状にカットした。一方、水にL−アスコル
ビン酸0.3部とスクラロースを表1に記載の添加量を添加、溶解して計100部の保存液を調製し、保存液:パイナップルの重量比が1:1となるように、保存液にカットしたパイナップルをただちに浸漬し、カットパイナップルを調製した。比較例1として、スクラロースを加えない以外は同様の処方で保存液を調製して、同様にカットパイナップルを調製した。
【0020】
保存液中のカットパイナップルを5℃で7日間保存した後、食した結果を表1に示す。実施例1〜3におけるカットパイナップルは、経時変化による劣化臭が抑えられており、良好な風味のパイナップルであった。比較例1のカットパイナップルは、劣化臭が感じられるものであった。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例4:カットパイナップル
パイナップルを剥皮し、芯取りしてサイコロ状にカットした。一方、水にL−アスコル
ビン酸0.3部とスクラロース0.005部を添加、溶解して計100部の保存液を調製し、保存液:パイナップルの重量比が1:2となるように、保存液にカットしたパイナップルをただちに浸漬し、カットパイナップルを調製した。
【0023】
保存液中のカットパイナップルを5℃で7日間保存した後、食したが、経時変化による
劣化臭が抑えられており、良好な風味のパイナップルであった。比較例2として、スクラロースを加えない以外は同様の処方で保存液を調製して、同様にカットパイナップルを調製し、5℃7日間保存後食したが、劣化臭が感じられるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明により、カットフルーツの保存性を高める処理のために生じた異味・異臭を抑え
、また、保存中の経時変化における風味の劣化を抑えて風味を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カットフルーツをスクラロースを含有する保存液中に浸漬することを特徴とする、カット
フルーツの風味改良方法。
【請求項2】
保存液中に含まれるスクラロースの含有量が、0.0005〜0.08質量%である請求
項1に記載のカットフルーツの風味改良方法。

【公開番号】特開2008−99674(P2008−99674A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245058(P2007−245058)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】