説明

カット野菜の鮮度保持方法

【課題】 次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤を使用することなく、カット野菜の鮮度を長時間にわたって保持できると共にカット野菜における付着微生物数を長時間にわたって低い値に維持することのできるカット野菜の鮮度保持方法を提供すること。
【解決手段】 カット野菜を、水酸化カルシウム及び酸化カルシウムの少なくとも一方を添加した水で処理し、水洗した後、包装容器に収容し、包装容器内の酸素濃度を5〜10体積%及び炭酸ガス濃度を10〜15体積%の範囲に保ちながら、−1℃〜3℃の温度で低温保存するカット野菜の鮮度保持方法により上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カット野菜の鮮度保持方法に関する。より詳細には、本発明は、従来汎用されてきた次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤を用いずに、カット野菜の鮮度を長時間にわたって保持させるための方法に関するものである。本発明の鮮度保持方法による場合は、高い安全性および衛生性と、生の野菜類本来の良好な食感、味、風味、外観などを維持しながら、カット野菜を長時間にわたって新鮮に保存することができる。
【背景技術】
【0002】
野菜類の清浄化、皮剥き、細片状へのカットなどは、調理工程の一環として、通常各々の調理現場で行われている。しかし、近年、生活様式の変化や流通形態の変化などに伴って、野菜類の清浄化、皮剥き、細片状へのカットなどの工程を各々の調理現場で行わずに、工場などで予めまとめて行い、清浄化、皮剥き、カット処理などのいずれかまたは2つ以上を施した生野菜を、スーパーマーケットなどで販売したり、飲食店、食堂、弁当や総菜類の製造販売店、給食センターなどの調理現場などに納入したりすることが広く行われるようになっている。
清浄化、皮剥き、カット処理などの処理を施した状態で販売されている生の野菜類を購入した家庭や上記した調理現場では、清浄化、皮剥き、カットなどのような手間および時間のかかる処理工程を省略することができ、野菜類の種類やその処理形態などに応じて、そのまま直接サラダなどとして食したり、料理や弁当などの付け合わせとしてそのまま用いたり、或いはそのままで又は必要に応じて更に適当な大きさにカットするだけで直接煮炊きなどの調理に使用することができ、極めて便利であることから、その需要が伸びている。
【0003】
予め清浄化、皮剥き、カット処理などの処理を施した状態で流通、販売されている生の野菜類のうちでも、カット野菜は、カット処理によって野菜類の組織の一部が損傷し、しかもカット処理によって表面積が大きくなっているために、短期間のうちに、鮮度の低下や微生物の増殖に伴う変質や腐敗などが生じ易い。例えば、水道水で洗って千切りしたキャベツや角切りしたレタスなどは、5℃の冷蔵庫で保存した場合に、通常1日後には鮮度が大きく低下して、野菜本来の食感、味、風味、外観が失われる。
【0004】
微生物の増殖に伴う変質や腐敗を防止して鮮度を保持するために、野菜類を次亜塩素酸ナトリウムやさらし粉などの塩素系の殺菌剤を用いて殺菌処理することや、前記した塩素系の殺菌剤を用いて殺菌処理した原料を用いて食品を製造することが広く行われている。
次亜塩素酸ナトリウムやさらし粉などの塩素系殺菌剤は、低濃度では殺菌効果がそれほど高くなく、高濃度の水溶液にして用いる必要があることから、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて野菜類を消毒する場合は、通常、有効塩素濃度が2000ppm(500倍希釈液)前後の極めて高い濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が使用されている(非特許文献1を参照)。
【0005】
しかし、高濃度の塩素系殺菌剤水溶液の使用は、野菜本来の食感、味、風味などの品質の低下を招き易く、しかも塩素系殺菌剤に特有の不快臭による作業環境の悪化などを生じ易い。その上、人体に対する安全性の点で考慮しなければならない塩素系殺菌剤やその分解物が殺菌処理後に食品に多量に残留する恐れがあるため、処理後に水洗処理を十分に行う必要があり、水道水の過剰使用などが生じ易い。しかも、塩素系殺菌剤やその分解物はステンレス製の調理台などの厨房設備や調理道具の腐食を招き易い。
【0006】
上記の点から、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤を用いないで野菜類やその他の食品の除菌を行う方法が従来から提案されており、そのような従来技術としては、(1)焼成カルシウム、多価アルコール、多価アルコール脂肪酸エステルおよびエチルアルコールを含有する除菌剤を用いて野菜類やその他の食品の除菌を行う方法(特許文献1を参照)、(2)ホタテ貝などの貝殻や卵殻を焼成して得られた酸化カルシウムを主成分とする焼成粉末と燐酸塩粉末とからなる殺菌・抗菌剤を懸濁させた水を用いて野菜類やその他の食品を処理する方法(特許文献2を参照)が知られている。
しかしながら、これらの従来の方法を生の野菜類、特に生のカット野菜に適用しても、微生物の増殖を十分に抑制することはできず、しかも生の野菜類が本来有している食感、味、風味などを長期にわたって保持することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−272434号公報
【特許文献2】特開2002−265311号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本食品工業学会編纂,「食品工業総合事典」,株式会社光琳,昭和63年3月5日発行(第2版),p402(“じあえんそさんなとりうむ”の欄)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来汎用されてきた次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤を使用せずに、生のカット野菜の鮮度を長時間にわたって保持させる方法を提供することである。
そして、本発明の目的は、カット野菜における微生物の付着を低減させることができ、しかも微生物の増殖が少なくて、カット野菜の安全性および衛生性を長時間にわたって良好に維持することのできるカット野菜の鮮度保持方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を重ねてきた。その結果、カット野菜を、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムの少なくとも一方を添加した水で処理し、水洗した後に、包装容器に収容し、包装容器内に酸素濃度および炭酸ガス濃度を所定の範囲に保ちながら、−1℃〜3℃という低温で保存すると、カット野菜の鮮度が長時間(例えば4日以上)にわたって保持されていて、野菜本来の食感、味、風味、外観などを良好に維持ながら長時間保存できることを見出した。
さらに、本発明者らは、前記した一連の工程を採用すると、カット野菜における付着微生物数が大幅に低減し、長時間経過(例えば4日以上経過)した後でも微生物の増殖が少なくて、長時間にわたって高い安全性および衛生性を維持し、安全に喫食できることを見出した。
【0011】
また、本発明者らは、前記した一連の工程を採用するに当って、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムの少なくとも一方を添加した水における水酸化カルシウム濃度を特定の範囲にすると、また水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムの少なくとも一方を添加した水の温度を特定の温度範囲にすると、また水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムの少なくとも一方を添加した水による処理時間を特定の範囲にすると、カット野菜からの微生物の除去率が高く、しかも微生物の増殖がより小さくて、カット野菜の安全性、衛生性および鮮度がより長時間にわたって維持されること、また当該鮮度保持方法は、葉菜を主体とするカット野菜の鮮度保持方法として特に適していることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1) カット野菜を、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムの少なくとも一方を添加した水で処理し、水洗した後、包装容器に収容し、包装容器内の酸素濃度を5〜10体積%および炭酸ガス濃度を10〜15体積%の範囲に保ちながら、−1℃〜3℃の温度で低温保存することを特徴とするカット野菜の鮮度保持方法である。
【0013】
そして、本発明は、
(2) 水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムのうちの少なくとも一方を添加した水における水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムのうちの少なくとも一方の添加量が、水の質量に対して0.05〜0.1質量%である前記(1)のカット野菜の鮮度保持方法;
(3) 水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムのうちの少なくとも一方を添加した水の温度が10〜30℃である前記(1)または(2)のカット野菜の鮮度保持方法;
(4) 水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムのうちの少なくとも一方を添加した水による処理時間が、30秒〜10分である前記(1)〜(3)のいずれかのカット野菜の鮮度保持方法;および、
(5) 葉菜を主体とするカット野菜の鮮度保持方法である前記(1)〜(4)のいずれかのカット野菜の鮮度保持方法;
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明による場合は、従来野菜類などの除菌に用いられてきた次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤を用いずに、カット野菜を、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムの少なくとも一方を添加した水で処理し水洗した後に、包装容器に収容して、本発明で規定する特定の酸素濃度および炭酸ガス濃度下に、通常の冷蔵保存温度よりも低い、−1℃〜3℃という低温で保存することによって、短時間のうちに鮮度が低下しやすいカット野菜を、野菜本来の食感、味、風味、外観などを良好に保ちながら、従来よりも長時間にわたって良好な鮮度に保つことができる。
本発明による場合は、長時間経過後も、付着微生物数が少なくて、安全性および衛生性に優れるカット野菜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の鮮度保持方法の対象であるカット野菜の種類は特に制限されず、カットした状態で、保存、流通、販売、使用、調理および/または喫食されることのあるカット野菜であればいずれでもよい。
限定されるものではないが、本発明の鮮度保持方法を適用できるカット野菜としては、カットした葉菜類、カットした果菜類、カットした花菜類、カットした根菜類、カットしたキノコ類などを挙げることができる。
【0016】
具体的には、カットした葉菜類としては、例えば、キャベツ、レタス、グリーンリーフ、サニーレタス、セロリ、ハクサイ、パセリ、カラシナ、キョウナ、グリーンカール、クレソン、ケール、コマツナ、コルニッション、サイシン、サラダ菜、サンチュ、三葉、シュンギク、スイスチャード、セリ、タアサイ、大葉、チシャ、チンゲンサイ、ツルムラサキ、菜花、ニラ、ニンニク、ネギ、根三葉、フキ、フダンソウ、ホウレンソウ、ミズナ、ミツバ、山東菜、ヨウサイ、ヨモギ、ルッコラ、レタス、ワケギなどをカットしたものを挙げることができる。
【0017】
また、カットした果菜類としては、例えば、キュウリ、カボチャ、オクラ、パプリカ、ピーマンなどのカットしたものを挙げることができる。
カットした花菜類としては、例えば、ブロッコリー、カリフラワー、アスパラガスなどのカットしたものを挙げることができる。
また、カットした根菜類としては、例えば、ニンジン、タマネギなどのカットしたものを挙げることができる。
カットしたキノコ類としては、例えば、キクラゲ、ヒラタケ、シイタケ、エノキダケ、シメジなどのカットしたものを挙げることができる。
また、その他のカット野菜としては、例えば、タケノコ、ゼンマイ、ワラビ、タラノ芽などのカットしたものを挙げることができる。
【0018】
そのうちでも本発明の鮮度保持方法は、葉菜を主体とするカット野菜の鮮度保持方法として適しており、特に、キャベツ、レタス、グリーンリーフなどの葉菜を主体とするカット野菜の鮮度保持方法として好適である。
【0019】
本発明の鮮度保持方法では、カット野菜として、生の野菜類をカットしたものを用いる。
その際に、野菜類の種類、収穫方法、集荷形態、カットする前の流通・保存方法などに応じて、カット野菜にする前に(カットする前に)、野菜類を清浄処理(例えば、水道水による洗浄処理、井水による洗浄処理など)して、野菜類に付着しているゴミ、泥、その他の汚れを除去しておくとよい。
また、野菜類は、カット野菜にする前に(前記清浄処理を行う場合は、清浄処理の前かまたは清浄処理後でカット処理の前に)、必要に応じて、皮剥き、不要な部分の除去(例えば、根、ヘタ、萼、芽、スジ、ワタ、タネ、イボ、傷んだ部分などの除去)などを行っておいてもよい。
【0020】
カット野菜のカット形態(カットの仕方)およびカットサイズは特に制限されず、野菜類の種類、カット野菜の使用形態、使用目的、調理方法などに応じて、所定のカット形態、カットサイズにすればよい。
何ら限定されるものではないが、カット野菜のカット形態としては、例えば、千切り、角切り、みじん切り、輪切り、半月切り、イチョウ切り、拍子木切り、短冊切り、さいの目切り、あられ切り、そぎ切り、乱切り、斜め切り、小口切り、ぶつ切り、くし形切り、ささがき、かつらむき、飾り切りなどを挙げることができ、前記したいずれのカット形態であってもよい。
【0021】
本発明では、上記したカット野菜を、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムの少なくとも一方を添加した水(以下これを「水酸化カルシウム/酸化カルシウム水」ということがある)で処理する。
カット野菜は、水酸化カルシウム/酸化カルシウム水でそのまま直接処理してもよいが、鮮度保持効果および除菌効果が向上する点から、カット野菜を水道水、井戸水などによって予洗いした後に水酸化カルシウム/酸化カルシウム水で処理することが好ましい。予洗いに用いる水の温度は、10〜30℃、特に15〜25℃であることが好ましい。
【0022】
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水の調製に用いる水酸化カルシウム(消石灰)は、水酸化カルシウム100%からなるものであっても、または水酸化カルシウムを主体とし他の成分を少量成分として含むものであってもいずれでもよい。
また、水酸化カルシウム/酸化カルシウム水の調製に用いる酸化カルシウムは、酸化カルシウム100%からなるものであっても、または酸化カルシウムを主体とし他の成分を少量成分として含むものであってもいずれでもよい。酸化カルシウムとしては、例えば、石灰石を焼いて製造した酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、クエン酸カルシウムなどのカルシウム塩や水酸化カルシウムを焼成して製造した酸化カルシウム、貝殻、骨、サンゴ、乳清、卵殻などのカルシウム含有材料を焼成して製造した酸化カルシウムの1種または2種以上を用いることができる。
酸化カルシウムは、水に添加すると、水酸化カルシウムに変化する。
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水は、水酸化カルシウムを単独で使用するか、酸化カルシウムを単独で使用するか、または水酸化カルシウムと酸化カルシウムを併用して調製することができる。
【0023】
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水における水酸化カルシウムおよび/または酸化カルシウムの添加量(水酸化カルシウムと酸化カルシウムを併用する場合は両者の合計添加量)は、除菌効果、洗浄効果、鮮度保持効果などの点から、水の質量に基づいて、0.05〜0.1質量%であることが好ましく、0.07〜0.1質量%であることがより好ましい。
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水における水酸化カルシウムおよび/または酸化カルシウムの添加量が少なすぎると、カット野菜の除菌が円滑に行われなくなり、一方添加量が多すぎると、飽和による沈殿量が多くなり、水酸化カルシウム/酸化カルシウム水で処理した後の洗浄に要する洗浄水の量が多くなり、洗浄時間が長くなり易い。
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水のpHは11〜12程度であることが、カット野菜の除菌、鮮度保持が良好に行われる点から好ましい。
【0024】
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水の温度は、カット野菜の種類、カット形態、サイズ、水酸化カルシウム/酸化カルシウム水で処理する際の処理のしかた(例えば以下で説明する浸漬、シャワー、流下などの処理形態)などに応じて調整するのがよいが、一般的には10〜30℃であることが好ましく、15〜25℃であることがより好ましい。水酸化カルシウム/酸化カルシウム水の温度が高すぎると、カット野菜の鮮度、食感、味、風味、外観が低下し易くなる。
【0025】
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水による処理時間も、カット野菜の種類、カット形態、サイズ、水酸化カルシウム/酸化カルシウム水で処理する際の処理のしかた(例えば以下で説明する浸漬、シャワー、流下などの処理形態)などに応じて調整するのがよいが、一般的には処理時間は、30秒〜10分が好ましく、60秒〜5分がより好ましく、90秒〜3分が更に好ましい。
【0026】
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水によるカット野菜の処理は、カット野菜を水酸化カルシウム/酸化カルシウム水中に浸漬する方法、水酸化カルシウム/酸化カルシウム水をカット野菜にシャワー状に噴射する方法、水酸化カルシウム/酸化カルシウム水を蛇口などから流水させながらカット野菜を洗う方法、それらの2つ以上の組み合わせなどのいずれの方法で行ってもよい。そのうちでも、カット野菜を水酸化カルシウム/酸化カルシウム水中で循環流水処理する方法が、除菌効果が高く且つ操作が簡単であることから好ましい。
【0027】
カット野菜を水酸化カルシウム/酸化カルシウム水中に浸漬して処理する際の水の温度は、一般に10〜30℃、特に15〜25℃であることが好ましい。水酸化カルシウム/酸化カルシウム水の温度が高すぎると、カット野菜の鮮度および食感が低下し易くなる。
カット野菜を水酸化カルシウム/酸化カルシウム水中に浸漬して処理する際には、滅菌設備を備えた循環式の処理装置を用いて水酸化カルシウム/酸化カルシウム水を滅菌しながら処理を行うことが望ましい。
【0028】
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水には、必要に応じて更に乳化剤(界面活性剤)を添加してもよい。乳化剤を添加することによってカット野菜の除菌効果が一層向上する。
乳化剤としては、食品に対して使用可能な乳化剤であればいずれでもよく、例えば、グリセリン高級脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、キラヤ抽出物、ダイズサポニン、チャ種子サポニン、レシチン(植物レシチン、卵黄レシチン)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
水酸化カルシウム/酸化カルシウム水に乳化剤を更に添加する場合の添加量は、水の質量に基づいて、0.001〜0.5質量%であることが好ましく、0.01〜0.05質量%であることがより好ましい。
【0029】
また、水酸化カルシウム/酸化カルシウム水に、必要に応じて、酢酸、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸などの有機酸やそれらの塩、アルコール類、蛋白分解酵素、澱粉分解酵素、難消化性多糖類分解酵素、脂質分解酵素などを添加してもよい。
【0030】
カルシウム成分を添加した水酸化カルシウム/酸化カルシウム水で処理したカット野菜を、次に水洗する。
水洗は、カット野菜の表面全体が水で洗われるようにして行う。
水洗は、カット野菜を洗浄水の中に浸漬する方法、洗浄水をカット野菜にシャワー状に噴射する方法、洗浄水を蛇口などから流水させながらカット野菜を洗う方法、それらの2つ以上の組み合わせなどのいずれの方法で行ってもよい。そのうちでも、カット野菜を洗浄水の中に浸漬する方法、洗浄水を蛇口などから流水させながらカット野菜を洗う方法、またはそれらの組み合わせが、洗浄効果が高いことから好ましい。
洗浄水としては、水道水などの上水、洗浄用に特別に調製した精製水などを用いる。
【0031】
カット野菜を洗浄水の中に浸漬して洗う場合は、カット野菜を洗浄水の中に静置した状態で所定時間放置して洗ってもよいが、水洗を速やかに確実に行うためには、カット野菜を洗浄水の中で動かしながら洗うことが好ましい。
カット野菜を洗浄水に浸漬して洗う際の水の量は、カット野菜の質量に対して、2〜500質量倍、特に10〜100質量倍であることが好ましい。
また、蛇口などから洗浄水を流しながらカット野菜を洗う場合は、カット野菜などの食品や食器などを水洗する際に通常行われているのと同じように行えばよい。
洗浄水の温度は、一般に10〜30℃、特に15〜25℃であることが、洗浄効率、カット野菜の鮮度維持などの点から好ましい。
また、水洗時間は、カット野菜の種類、量、カット形態、サイズなどに応じて調整すればよい。
【0032】
水洗の終了したカット野菜は十分に水切りすることが好ましい。水切りが足りないと、除菌が不十分になることがある。
水切りの方法は、カット野菜の種類、カット形態、サイズなどに応じて適当な方法を採用すればよく、例えば、水洗したカット野菜を手で持って振り、水を振り落とす方法、遠心式の脱水機を用いる方法、水洗したカット野菜を網などの上に載せてしばらく置いておく方法、カット野菜に付着している水分を吸水紙などで吸い取る方法、水洗したカット野菜に清浄風を当てて乾燥させる方法、前記した方法の2つ以上の組み合わせなどを挙げることができる。
【0033】
次に、水洗したカット野菜を、包装容器に収容して、包装容器内の酸素濃度(O2濃度)を5〜10体積%(vol%)および炭酸ガス濃度(CO2濃度)を10〜15体積%(vol%)の範囲に保ちながら、−1℃〜3℃の温度で低温保存する。
前記低温保存時には、カット野菜の鮮度保持の点から、包装容器内の酸素濃度が5〜10体積%で炭酸ガス濃度が10〜15体積%であることが好ましく、包装容器内の酸素濃度が6.5〜10体積%で炭酸ガス濃度が10〜13.5体積%であることがより好ましい。
カット野菜を収容した包装容器内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を、前記した範囲にするためには、カット野菜を包装容器内に収容した後、包装容器内の気体を、本発明で規定する酸素濃度および炭酸ガス濃度を有する気体で置換する方法が好ましく採用される。
例えば、カット野菜を包装容器内に収容した後、包装容器内の気体を、酸素濃度が10体積%および炭酸ガス濃度が10体積%の気体で置換する方法などが採用される。
包装容器内に収容したカット野菜の呼吸によって、包装容器内の酸素がカット野菜により吸収(消費)され、その一方で炭酸ガスがカット野菜から放出されるので、カット野菜を包装容器内に収容した後に包装容器内に導入(充填)される置換用気体としては、酸素濃度が本発明で規定する低温保存時の酸素濃度の上限値またはそれよりも僅かに低い値で且つ炭酸ガス濃度が本発明で規定する低温保存時の炭酸ガス濃度の下限値またはそれよりも僅かに高い値である気体が好ましく用いられる。
【0034】
カット野菜を収容する包装容器としては、−1℃〜3℃の温度での低温保存中に、包装容器内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を本発明で規定する上記した範囲に保つことのできる包装容器であればいずれでもよい。
一般的には、包装容器として、低温保存中にカット野菜の呼吸によって生じた炭酸ガスの一部を包装容器外に放出すると共に包装容器内に外部から空気(酸素)を取り込んで、包装容器内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を本発明で規定する上記した範囲に保つのに適合する通気度を有する袋、プラスチック製成形容器などが用いられる。
具体的には、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、その他のプラスチックフィルム、紙、不織布などの布帛の1種または2種以上から作製した前記した通気度を有する袋、ポリエチレン、ポリプロピレン、プラスチック製成形容器などを挙げることができる。中でも、フィルムの厚みが15〜60μmである合成樹脂フィルム(例えば延伸配向ナイロン/ポリエチレン積層フィルム、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン積層フィルム、延伸配向ナイロン/エチレン−酢酸ビニル共重合体積層フィルムなど)から作製した袋が好ましく用いられる。
【0035】
低温保存中に包装容器内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を本発明で規定する範囲に保つための通気度を有する包装容器の具体例としては、全面に微細孔が分布している本発明に合致する通気度を有する多孔質フィルム(例えば、住友ベークライト株式会社製「MA包装P−プラス」)を用いて作製した包装容器(包装袋)、本発明に合致する通気度を有するように全面にまたは部分的に通気用の穴(孔)を空けたプラスチックフィルムを用いて作製した包装容器、本発明に合致する通気度を有する紙または不織布を用いて作製した包装容器、本発明に合致する通気度を有するように全面にまたは部分的に通気用の穴(孔)を空けたプラスチック製成形容器などを挙げることができる。
上記低温保存中に本発明で規定する酸度濃度および炭酸ガス濃度を維持するための包装容器の通気度は、包装容器のサイズ、包装容器に収容するカット野菜の種類、量、カット形態などによっても異なり得るから、各々の態様に適した包装容器を使用するとよい。
【0036】
野菜類を冷蔵保存する場合は、通常、5〜10℃程度の冷蔵温度が広く採用されている。それに対して、本発明では、カット野菜を水酸化カルシウム/酸化カルシウム水で処理し、水洗した後に包装容器に収容して、通常の冷蔵温度よりも低い、−1℃〜3℃の温度で保存する。これによって、カット野菜の鮮度が通常よりも一層長く保持される。包装容器に収容したカット野菜の保存温度は、0〜2℃であることがより好ましい。
包装容器に収容したカット野菜の保存温度が本発明で規定する温度よりも高いと、長時間にわたって鮮度を保持することが困難になり、一方本発明で規定する温度よりも低いと、カット野菜の凍結などが生じて、組織の破壊などが生ずる。
【0037】
包装容器に収容したカット野菜の前記低温保存は、工場、調理場などに設置した冷蔵庫、スーパーやコンビニなどの店頭に設置した冷蔵ケースで行ってもよいし、トラック、車両、航空機などの輸送手段に設けた−1℃〜3℃の温度での低温保存可能な低温保存設備内に入れて輸送しながら行ってもよい。当該低温保存は、カット野菜の使用時まで継続して行うことにより、カット野菜の鮮度をより長時間にわたって良好に保つことができる。
【0038】
カット野菜は、鮮度の低下が速く、通常、冷蔵庫で保存した場合であっても1日経つと鮮度が大幅に低下するが、上記した本発明の鮮度保持方法を行った場合には、長時間に渡って鮮度が維持され、一般的には4日後でも当初と同じような鮮度が保たれていて、カット野菜の種類やカット形態などによっては、10日後でも当初とほぼ同じような鮮度が保たれている。しかも、微生物の増殖が少なく、良好な鮮度と共に、高い安全性および衛生性を保つことができる。
【実施例】
【0039】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
以下の例において、カット野菜を収容した包装容器内の酸素濃度および炭酸ガス濃度の測定、カット野菜の鮮度の評価(外観、食感および食味の評価)並びにカット野菜に付着している一般生菌数の測定は、次のようにして行った。
【0040】
(1)カット野菜を収容した包装容器内の酸素濃度および炭酸ガス濃度の測定:
PBI社製「Check Mate 9900 O2/CO2濃度計」を使用して、カット野菜を収容した包装容器内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を経時的に測定した。
【0041】
(2)カット野菜の鮮度の評価(外観、食感および食味の評価):
(i)カット野菜の外観:
5名のパネラーがカット野菜を目視により観察して、下記の表1に示す評価規準に従って点数評価し、5名のパネラーの平均値を採った。
(ii)カット野菜の食感:
5名のパネラーがカット野菜を食して、下記の表1に示す評価規準に従って点数評価し、5名のパネラーの平均値を採った。
(iii)カット野菜の食味:
5名のパネラーがカット野菜を食して、下記の表1に示す評価規準に従って点数評価し、5名のパネラーの平均値を採った。
【0042】
【表1】

【0043】
(3)カット野菜に付着している一般生菌数の測定:
検体(生のカット野菜)25gを秤量し、滅菌したリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)225gを加え、60秒間ストマッカー処理(細菌検査用ホモジナイザで60秒間均質化処理)をしたものを試料原液として用いて、さらに10倍段階希釈液を調製した。この希釈液を滅菌シャーレに1ml分注し、さらに滅菌した標準寒天培地(栄研化学株式会社製「デソキシコーレイト寒天培地」)を適量分注して混和した。それを35℃で48時間培養して、48時間培養後の集落(コロニー)の数を数えて、一般生菌数(CFU/g)とした。
【0044】
《実施例1》
外側の葉と芯を除いたレタスを洗浄せずにそのまま約50mm×50mmに角切りし、当該角切りレタス約1300gを水道水(水温約25℃)に90秒間浸漬撹拌した後、同水道水を流しながら45秒間すすぎ、約200gずつに分けて試験区1〜6用の試料とした。各試験区に分ける前の水洗浄後の角切りレタスにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、6.2×105CFU/gであった。
(1)試験区1(対照区):
(i) チャック付きのポリエチレン袋(セイニチ社製「ユニパック」)に試験区1用の角切りレタスのうちの約150gを入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、当該ポリエチレン袋の20カ所に直径約0.1mmの穴を開け、それを温度3℃の冷蔵庫に入れて、3℃で4日間冷蔵保存した。
(ii) 上記(i)の冷蔵保存中に、ポリエチレン袋内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を一定時間ごとに測定すると共に、一定時間ごとにポリエチレン袋内の角切りレタスの外観を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、冷蔵保存してから2日後および4日後に、ポリエチレン袋内の角切りレタスの一部(約20g)を素早く袋から取り出して、その食感および食味を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、4日間の冷蔵保存を行った後の角切りレタスにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0045】
(2)試験区2(対照区):
(i) 試験区1で使用したのと同じチャック付きのポリエチレン袋に試験区2用の角切りレタスのうちの約150gを入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、当該ポリエチレン袋の20カ所に直径約0.1mmの穴を開け、それを温度10℃の冷蔵庫に入れて、10℃で4日間冷蔵保存した。
(ii) 上記(i)の冷蔵保存中に、ポリエチレン袋内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を一定時間ごとに測定すると共に、一定時間ごとにポリエチレン袋内の角切りレタスの外観を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、冷蔵保存してから2日後および4日後に、ポリエチレン袋内の角切りレタスの一部(約20g)を素早く袋から取り出して、その食感および食味を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、4日間の冷蔵保存を行った後の角切りレタスにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0046】
(3)試験区3(比較用区):
(i) 水道水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して次亜塩素酸ナトリウム濃度が200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の温度を10℃に調整し、その5リットル中に試験区3用の角切りレタス(約200g)を90秒間浸漬した(浸漬中は滅菌処理したホイッパーを用いて水中で角切りレタスを撹拌)。
(ii) 次いで、角切りレタスを次亜塩素酸ナトリウム水溶液から取り出して、温度25℃の水道水5リットルにそのまま直接45秒間浸漬して水洗し(浸漬中は滅菌処理したホイッパーを用いて水中で角切りレタスを撹拌)、次に水道水から取り出して、滅菌処理した手動式脱水機を用いて20秒間水切りした。
(iii) 上記(ii)で得られた水切り後の角切りレタスの一部(25g)を採取して上記した方法で一般生菌数を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(iv) 試験区1で使用したのと同じチャック付きのポリエチレン袋に上記(ii)で得られた水切り後の角切りレタスのうちの約150gを入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、当該ポリエチレン袋の20カ所に直径約0.1mmの穴を開け、それを温度3℃の冷蔵庫に入れて、3℃で4日間冷蔵保存した。
(v) 上記(iv)の冷蔵保存中に、ポリエチレン袋内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を一定時間ごとに測定すると共に、一定時間ごとにポリエチレン袋内の角切りレタスの外観を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、冷蔵保存してから2日後および4日後に、ポリエチレン袋内の角切りレタスの一部(約20g)を素早く袋から取り出して、その食感および食味を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、4日間の冷蔵保存を行った後の角切りレタスにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0047】
(4)試験区4(比較用区):
(i) 水道水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して次亜塩素酸ナトリウム濃度が200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の温度を20℃に調整し、その5リットル中に試験区4用の角切りレタス(約200g)を90秒間浸漬した(浸漬中は滅菌処理したホイッパーを用いて水中で角切りレタスを撹拌)。
(ii) 次いで、角切りレタスを次亜塩素酸ナトリウム水溶液から取り出して、温度25℃の水道水5リットルにそのまま直接45秒間浸漬して水洗し(浸漬中は滅菌処理したホイッパーを用いて水中で角切りレタスを撹拌)、次に水道水から取り出して、滅菌処理した手動式脱水機を用いて20秒間水切りした。
(iii) 上記(ii)で得られた水切り後の角切りレタスの一部(25g)を採取して上記した方法で一般生菌数を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(iv) 試験区1で使用したのと同じチャック付きのポリエチレン袋に上記(ii)で得られた水切り後の角切りレタスのうちの約150gを入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、当該ポリエチレン袋の20カ所に直径約0.1mmの穴を開け、それを温度3℃の冷蔵庫に入れて、3℃で4日間冷蔵保存した。
(v) 上記(iv)の冷蔵保存中に、ポリエチレン袋内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を一定時間ごとに測定すると共に、一定時間ごとにポリエチレン袋内の角切りレタスの外観を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、冷蔵保存してから2日後および4日後に、ポリエチレン袋内の角切りレタスの一部(約20g)を素早く袋から取り出して、その食感および食味を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、4日間の冷蔵保存を行った後の角切りレタスにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0048】
(5)試験区5(発明区):
(i) 水道水に水酸化カルシウムを添加して水酸化カルシウム濃度が約0.08質量%の水酸化カルシウム水溶液を調製し、水酸化カルシウム水溶液の温度を10℃に調整し、その5リットル中に試験区5用の角切りレタス(約200g)を90秒間浸漬した(浸漬中は滅菌処理したホイッパーを用いて水中で角切りレタスを撹拌)。
(ii) 次いで、角切りレタスを水酸化カルシウム水溶液から取り出して、温度25℃の水道水5リットルにそのまま直接45秒間浸漬して水洗し(浸漬中は滅菌処理したホイッパーを用いて水中で角切りレタスを撹拌)、次に水道水から取り出して、滅菌処理した手動式脱水機を用いて20秒間水切りした。
(iii) 上記(ii)で得られた水切り後の角切りレタスの一部(25g)を採取して上記した方法で一般生菌数を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(iv) 試験区1で使用したのと同じチャック付きのポリエチレン袋に上記(ii)で得られた水切り後の角切りレタスのうちの約150gを入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、当該ポリエチレン袋の20カ所に直径約0.1mmの穴を開け、それを温度3℃の冷蔵庫に入れて、3℃で4日間冷蔵保存した。
(v) 上記(iv)の冷蔵保存中に、ポリエチレン袋内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を一定時間ごとに測定すると共に、一定時間ごとにポリエチレン袋内の角切りレタスの外観を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、冷蔵保存してから2日後および4日後に、ポリエチレン袋内の角切りレタスの一部(約20g)を素早く袋から取り出して、その食感および食味を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、4日間の冷蔵保存を行った後の角切りレタスにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0049】
(6)試験区6(発明区):
(i) 水道水に水酸化カルシウム0.08質量%を添加して水酸化カルシウム濃度が約0.08質量%の水酸化カルシウム水溶液を調製し、水酸化カルシウム水溶液の温度を20℃に調整し、その5リットル中に試験区6用の角切りレタス(約200g)を90秒間浸漬した(浸漬中は滅菌処理したホイッパーを用いて水中で角切りレタスを撹拌)。
(ii) 次いで、角切りレタスを水酸化カルシウム水溶液から取り出して、温度25℃の水道水5リットルにそのまま直接45秒間浸漬して水洗し(浸漬中は滅菌処理したホイッパーを用いて水中で角切りレタスを撹拌)、次に水道水から取り出して、滅菌処理した手動式脱水機を用いて20秒間水切りした。
(iii) 上記(ii)で得られた水切り後の角切りレタスの一部(25g)を採取して上記した方法で一般生菌数を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(iv) 試験区1で使用したのと同じチャック付きのポリエチレン袋に上記(ii)で得られた水切り後の角切りレタスのうちの約150gを入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、当該ポリエチレン袋の20カ所に直径約0.1mmの穴を開け、それを温度3℃の冷蔵庫に入れて、3℃で4日間冷蔵保存した。
(v) 上記(iv)の冷蔵保存中に、ポリエチレン袋内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を一定時間ごとに測定すると共に、一定時間ごとにポリエチレン袋内の角切りレタスの外観を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、冷蔵保存してから2日後および4日後に、ポリエチレン袋内の角切りレタスの一部(約20g)を素早く袋から取り出して、その食感および食味を上記した方法で点数評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、4日間の冷蔵保存を行った後の角切りレタスにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0050】
【表2】

【0051】
上記の表2の結果にみるように、発明区である試験区5および6では、試験区1および2と比較して、冷蔵4日後の一般生菌数が少なくて増菌しておらず、しかも鮮度が十分に良好に維持されていることが分かる。
さらに、発明区である試験区5および6では、試験区3および4と比較すると、一般生菌数はほぼ同じオーダーであるが、鮮度が良好保たれていることが分かる。
【0052】
《実施例2》
レタスの代わりにキャベツを用い、外側の葉と芯を除いたキャベツを洗浄せずにそのまま手動式千切りカッターにて約2mm幅に千切りし、当該千切りキャベツ約1300gを水道水(水温約25℃)に90秒間浸漬撹拌した後、同水道水を流しながら45秒間すすぎ、その後、手動式脱水機を用いて20秒間水切りしてから、約200gずつに分けて試験区1〜6用の試料とした。各試験区に分ける前の水洗浄後の千切りキャベツにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、8.7×104CFU/gであった。
試験区1〜6用の千切り切りキャベツを用いて、実施例1の試験区1〜6と同じ処理操作[冷蔵保存のみ(試験区1と2)または除菌処理と冷蔵保存(試験区3〜6)]を行って、実施例1と同様にして包装容器内のガス組成の測定、鮮度の評価および千切りキャベツに付着している一般生菌数を測定した。その結果を、下記の表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
《実施例3》
レタスの代わりにグリンリーフを用い、外側の葉と芯を除いたグリンリーフを洗浄せずにそのまま約5cm×5cmに角切りし、当該角切りグリンリーフ約1300gを水道水(水温約25℃)に90秒間浸漬撹拌した後、同水道水を流しながら45秒間すすぎ、その後、手動式脱水機を用いて20秒間水切りしてから、約200gずつに分けて試験区1〜6用の試料とした。各試験区に分ける前の水洗浄後の角切りグリンリーフにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、2.4×104CFU/gであった。
試験区1〜6用の角切りグリンリーフを用いて、実施例1の試験区1〜6と同じ処理操作[冷蔵保存のみ(試験区1と2)または除菌処理と冷蔵保存(試験区3〜6)]を行って、実施例1と同様にして包装容器内のガス組成の測定、鮮度の評価および角切りグリンリーフに付着している一般生菌数を測定した。その結果を、下記の表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
《実施例4》
(1) 外側の葉と芯を除いたキャベツを洗浄せずにそのまま手動式千切りカッターにて約2mm幅に千切りし、当該千切りキャベツ約1300gを水道水(水温約25℃)に90秒間浸漬撹拌した後、同水道水を流しながら45秒間すすぎ、その後、手動式脱水機を用いて20秒間水切りしてから、約200gずつに分けて試験区1〜6用の試料とした。各試験区に分ける前の水洗浄後の千切りキャベツにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、8.7×104CFU/gであった。
(2) 水道水の質量に対して水酸化カルシウムを下記の表5に示す量(質量%)で添加して水酸化カルシウム水溶液を調製し、水酸化カルシウム水溶液の温度を10℃に調整し、その5リットル中に各試験区用の千切りキャベツ(約200g)を90秒間浸漬した(浸漬中滅菌処理したホイッパーを用いて水中で千切りキャベツを撹拌)後、水酸化カルシウム水溶液から取り出して、温度25℃の水道水5リットルにそのまま直接45秒間浸漬して水洗し(浸漬中滅菌処理したホイッパーを用いて水中で千切りキャベツを撹拌)、次いで水道水から取り出して滅菌処理した手動式脱水機を用いて20秒間水切りした。
(3) 上記(2)で得られた水切り後の各試験区の千切りキャベツの一部(25g)を採取して上記した方法で一般生菌数を測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
(4) 実施例1の試験区1で使用したのと同じチャック付きのポリエチレン袋のそれぞれに上記(2)で得られた水切り後の各試験区用の千切りキャベツのそれぞれ約150gを入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、当該ポリエチレン袋の20カ所に直径約0.1mmの穴を開けて試験区1〜6用とし、それぞれを温度3℃の冷蔵庫に入れて、3℃で4日間冷蔵保存した。
(5) 上記(4)の冷蔵保存中に、ポリエチレン袋内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を一定時間ごとに測定すると共に、一定時間ごとにポリエチレン袋内の千切りキャベツの外観を上記した方法で点数評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、冷蔵保存してから2日後および4日後に、ポリエチレン袋内の千切りキャベツの一部(約20g)を素早く袋から取り出して、その食感および食味を上記した方法で点数評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、4日間の冷蔵保存を行った後の千切りキャベツにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0057】
【表5】

【0058】
《実施例5》
(1) 外側の葉と芯を除いたキャベツを洗浄せずにそのまま手動式千切りカッターにて約2mm幅に千切りし、当該千切りキャベツ約1300gを水道水(水温約25℃)に90秒間浸漬撹拌した後、同水道水を流しながら45秒間すすぎ、その後、手動式脱水機を用いて20秒間水切りした。水洗浄後の千切りキャベツにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、8.7×104CFU/gであった。
(2) 水道水の質量に対して水酸化カルシウムを0.08質量%の量で添加して水酸化カルシウム水溶液を調製し、水酸化カルシウム水溶液の温度を10℃に調整し、その30リットル中に上記(1)の水洗浄した千切りキャベツ約1200gを90秒間浸漬した(浸漬中滅菌処理したホイッパーを用いて水中で千切りキャベツを撹拌)後、水酸化カルシウム水溶液から取り出して、温度25℃の水道水30リットルにそのまま直接45秒間浸漬して水洗し(浸漬中滅菌処理したホイッパーを用いて水中で千切りキャベツを撹拌)、次いで水道水から取り出して滅菌処理した手動式脱水機を用いて20秒間水切りした。
(3) 上記(2)で得られた千切りキャベツの一部(25g)を採取して上記した方法で一般生菌数を測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
(4) 実施例1の試験区1で使用したのと同じチャック付きのポリエチレン袋のそれぞれに上記(2)で得られた水切り後の各試験区用の千切りキャベツのそれぞれ約150gを入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、当該ポリエチレン袋の20カ所に直径約0.1mmの穴を開けて試験区1〜6とし、それぞれを以下の表6に示すそれぞれの温度の冷蔵庫に入れて4日間冷蔵保存した。
(5) 上記(4)の冷蔵保存中に、ポリエチレン袋内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を一定時間ごとに測定すると共に、一定時間ごとにポリエチレン袋内の千切りキャベツの外観を上記した方法で点数評価したところ、下記の表6に示すとおりであった。
また、冷蔵保存してから2日後および4日後に、ポリエチレン袋内の千切りキャベツの一部(約20g)を素早く袋から取り出して、その食感および食味を上記した方法で点数評価したところ、下記の表6に示すとおりであった。
また、4日間の冷蔵保存を行った後の千切りキャベツにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0059】
【表6】

【0060】
《実施例6》
(1) 外側の葉と芯を除いたキャベツを洗浄せずにそのまま手動式千切りカッターにて約2mm幅に千切りし、当該千切りキャベツ約700gを水道水(水温約25℃)に90秒間浸漬撹拌した後、同水道水を流しながら45秒間すすぎ、その後、手動式脱水機を用いて20秒間水切りした。水洗浄後の千切りキャベツにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、8.7×104CFU/gであった。
(2) 水道水の質量に対して水酸化カルシウムを0.08質量%の量で添加して水酸化カルシウム水溶液を調製し、水酸化カルシウム水溶液の温度を10℃に調整し、その15リットル中に上記(1)の水洗浄後の千切りキャベツ約600gを90秒間浸漬した(浸漬中滅菌処理したホイッパーを用いて水中で千切りキャベツを撹拌)後、水酸化カルシウム水溶液から取り出して、温度25℃の水道水5リットルにそのまま直接45秒間浸漬して水洗し(浸漬中滅菌処理したホイッパーを用いて水中で千切りキャベツを撹拌)、次いで水道水から取り出して滅菌処理した手動式脱水機を用いて20秒間水切りした。
(3) 上記(2)で得られた水切り後の千切りキャベツの一部(25g)を採取して上記した方法で一般生菌数を測定したところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0061】
(4) 上記(2)で得られた水切り後の千切りキャベツのうちの約150gを、穴を開けてないチャック付きのポリエチレン袋(セイニチ社製「ユニパック」)に入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、それを2℃の冷蔵庫に入れて4日間冷蔵保存した(試験区1)(比較用区)。
(5) 上記(2)で得られた水切り後の千切りキャベツのうちの約150gを、上記(4)で使用したのと同じチャック付きのポリエチレン袋に入れ、ガス置換によりポリエチレン袋内の酸素濃度を10体積%および炭酸ガス濃度を10体積%に調整した後、チャックを閉じ、当該ポリエチレン袋の20カ所に直径約0.1mmの穴を開け、それを2℃の冷蔵庫に入れて4日間冷蔵保存した(試験区2)(発明区)。
(6) 上記(2)で得られた水切り後の千切り切りのうちの約150gを、ポリプロピレン製ネット袋に収容し、それを2℃の冷蔵庫に入れて4日間冷蔵保存した(試験区3)(比較用区)
(7) 上記(4)〜(6)の冷蔵保存中に、袋内の酸素濃度および炭酸ガス濃度を一定時間ごとに測定すると共に、一定時間ごとに袋内の千切りキャベツの外観を上記した方法で点数評価したところ、下記の表7に示すとおりであった。
また、冷蔵保存してから2日後および4日後に、袋内の千切りキャベツの一部(約20g)を素早く袋から取り出して、その食感および食味を上記した方法で点数評価したところ、下記の表7に示すとおりであった。
また、4日間の冷蔵保存を行った後の千切りキャベツにおける一般生菌数を上記した方法で測定したところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0062】
【表7】

【0063】
上記の表7にみるように、試験区2では、カット野菜(千切りキャベツ)を、水酸化カルシウムを添加した水で処理し、水洗した後、包装容器に収容し、包装容器内の酸素濃度を5〜10体積%および炭酸ガス濃度を10〜15体積%の範囲に保ちながら、2℃で低温保存したことにより、4日後も、カット野菜(千切りキャベツ)の鮮度が良好に維持されている。
それに対して、試験区1では、冷蔵保存中に包装容器内の酸素濃度が5体積%よりも少なくなり、一方炭酸ガス濃度が15体積%を超えたことにより、また試験区3では冷蔵保存4日間を通して包装容器内の酸素濃度が20体積%で炭酸ガス濃度が0体積%であることにより、いずれの場合も、冷蔵4日後にカット野菜(千切りキャベツ)の鮮度が大きく低下している。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明による場合は、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤を使用せずに、生の野菜類が本来有している外観、食感、味、風味などを損なうことなくそのまま良好に保持しながら、野菜類に付着している菌類などの微生物を十分に除去して、安全性および衛生性に優れ、しかも鮮度、外観、食感、味、風味に優れる除菌された野菜類を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カット野菜を、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムの少なくとも一方を添加した水で処理し、水洗した後、包装容器に収容し、包装容器内の酸素濃度を5〜10体積%および炭酸ガス濃度を10〜15体積%の範囲に保ちながら、−1℃〜3℃の温度で低温保存することを特徴とするカット野菜の鮮度保持方法。
【請求項2】
水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムのうちの少なくとも一方を添加した水における水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムのうちの少なくとも一方の添加量が、水の質量に対して0.05〜0.1質量%である請求項1に記載のカット野菜の鮮度保持方法。
【請求項3】
水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムのうちの少なくとも一方を添加した水の温度が10〜30℃である請求項1または2に記載のカット野菜の鮮度保持方法。
【請求項4】
水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムのうちの少なくとも一方を添加した水による処理時間が、30秒〜10分である請求項1〜3のいずれか1項に記載のカット野菜の鮮度保持方法。
【請求項5】
葉菜を主体とするカット野菜の鮮度保持方法である請求項1〜4のいずれか1項に記載のカット野菜の鮮度保持方法。

【公開番号】特開2011−67161(P2011−67161A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222377(P2009−222377)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】