説明

カッピング医療方法

【課題】カッピング療法施術の際、データベースに予め保存された対応部位の参考減圧値を読み出し、患者の条件や病状に基づいて加重計算を行い、患者の治療程度により近いカッピング減圧値を得ることで、カッピング吸引力を適切にコントロールできるカッピング医療方法を提供する。
【解決手段】本発明のカッピング医療方法は、人体各部位の健康時のカッピングの正常減圧値および発病時の病巣部カッピングの参考減圧値を測定してデータベースに保存し、患者のカッピングしたい部位に基づきデータベースから参考減圧値を取得し、また患者個人の基本条件、対処を要する症状およびカッピング位置等の調整因子を取得し、参考減圧値に対して加重計算を行い、カッピング減圧値を得た後、カップを患者のカッピングしたい部位の上に載置し、カップ内の圧力がカッピング減圧値に達するまでエアポンプでカップ内の空気を吸引し、カップを患者の身体上に残したままカッピング医療作業を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療技術に関するものであって、特にカッピング圧力を計算する医療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カッピング(別名「吸角、吸玉、抜罐」)療法は、中国伝統医学における疾病治療方法の一種であり、主な治療または補助的治療の手段となっている。今日よく使用されるカッピング方法は火罐法および抽気法であり、火罐法は点火燃焼によりカップ(罐)内の温度を上昇させ、温度差変化によりカップ内の圧力を低下させ、吸引力を発生させるものであるが、不慣れな動作や操作の失敗により患者の皮膚を火傷させてしまい易い。抽気法は、手動の機械装置を用いてカップ内の空気を吸引するものであるが、患者が自分で動かさなければ皮膚がどの程度の吸引に耐えられるのか限度がわからないので、カップ内の圧力差が最適な治療程度に達するようにコントロールするのが難しい。
【0003】
また人によっては、身体が丈夫に見えても、実際はまだはっきり現れていない隠れた病気がある人もおり、一般の健常者の吸引力でカッピングを行うと身体の具合が悪くなる恐れがある。例えば、身体の丈夫な高齢者が若者に対する吸引力の程度でカッピングを行った場合、筋肉萎縮のために筋肉組織が損傷したり、血液循環不良のために眩暈や意識障害を起こす恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の問題を克服すべく、本発明はカッピング医療方法を提案する。具体的な構造およびその実施方法を以下に詳述する。本発明の主な目的は、患者個人の基本条件、対処を要する症状、カッピングの位置および中国語で穴位とよばれるツボの有無等の調整因子のパーセンテージの総和を求めた後、予め設定した参考減圧値に対して加重計算を行い、{けいけつ}正しいカッピング減圧値を得ることで、異なる状況の患者が適切な治療を受けられるようにするカッピング医療方法を提供することである。
【0005】
本発明のもう1つの目的は、異なる年齢層、性別、基本的心身状況、症状の種類、重症度、カッピング部位、皮膚表面が平坦であるか否か、組織成分が硬く締まっているか否か、カッピング部位のサイズおよびツボの有無の全ての項目について加重パーセンテージを示し、治療の程度を患者の身体状況が許容できる範囲により近づけるようにするカッピング医療方法を提供することである。
【0006】
本発明の更なる目的は、予め健康な人と患者の身体上の各部位にカッピングを施術し、両者の各部位のカッピングの減圧値を取得して参考値の計算に用いるカッピング医療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明が提供するカッピング医療方法は、人体各部位の健康時のカッピングの正常減圧値および発病時の病巣上のカッピングの参考減圧値を予め測定し、データベースに保存し、患者にカッピング医療を行うとき、患者がカッピングしたい部位に基づいてデータベースから対応する参考減圧値を取得し、患者個人の基本条件、対処を要する症状およびカッピングの位置等の調整因子に基づいて、参考減圧値に対して加重計算を行い、カッピング減圧値を得た後、カップを患者がカッピングしたい部位の上に載置し、カップ内の圧力がカッピング減圧値に達するまでエアポンプによってカップ中の空気を吸引し、カップを患者の身体上に載せたままカッピング医療作業を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明の提供するカッピング医療方法は、データベースに予め実験で得た参考減圧値を保存し、患者にカッピング治療を施す際、データベースから対応する部位の参考減圧値を読み取り、患者の様々な条件状況に基づいて加重計算を行い、得たカッピング減圧値は患者の治療程度により近く、カッピングの吸引力強度をコントロールするのに有効であり、吸引力が強すぎることにより患者を負傷させたり、吸引力不足によりカッピングの効果が無くなってしまうという事態を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のカッピング医療方法が応用するカッピング装置を示す図。
【図2】本発明のカッピング医療方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的、技術内容、特徴および達成する効果の更なる理解のために、以下に具体的な実施例をもって詳しく説明する。
【実施例】
【0011】
本発明が提供するカッピング医療方法は、異なる症状や異なる身体条件に基づき、人体の各部位において異なる吸引力強度のカッピングを適用するので、患者が治療を受けている時に、カッピングの圧力差が大きすぎるために負傷するといったことが起こらない。
【0012】
図1は本発明が応用するカッピング装置を示す。このカッピング装置10は、データベース12、エアポンプ14、少なくとも1つのカップ16、および少なくとも1本の吸気チューブ18を含む。データベース12には予め測定した人体各部位の健康時におけるカッピングの正常減圧値および発病時の病巣上におけるカッピングの参考減圧値を保存し、カッピング装置10が起動するまで残し、カッピング時に読み出して使用する。エアポンプ14は吸気チューブ18を用いてカップ16に接続し、使用者は異なるサイズのカップ16を選択できる。吸気チューブ18をカップ16上部につなぎ、エアポンプ14を起動してカップ16内の空気を吸引する。カップ16底部には弾性リング162を設け、カップ16と使用者の皮膚の間の密着度を増加させる。
【0013】
カッピング装置10上には第一負圧計20をさらに設け、エアポンプ14の圧力値を表示し、各カップ16上部にもまたそれぞれ第二負圧計22を設け、カップ16内の圧力値を表示するのに用いる。
【0014】
本発明が提供するカッピング医療方法は、図1中のカッピング装置を応用し、カッピング医療方法は図2のフローチャートが示すように、ステップS10では、胸部、頚部、腹部、背部、四肢等の人体各部位の健康時におけるカッピングの正常減圧値および発病時の病巣上におけるカッピングの参考減圧値を予め測定して、データベースに保存する。患者にカッピング医療を施術するとき、ステップS12で述べるように、患者のカッピングしたい部位に基づき、データベースから前記部位の参考減圧値を取得し、続けて、ステップS14では、患者個人の基本条件、対処を要する症状およびカッピングの位置等の調整因子に基づき、全ての調整因子の加重値の総和を求めた後、参考減圧値に対して加重計算を行い、カッピング減圧値を得る。最後にステップS16では、カップを患者のカッピングしたい部位上に載置し、カップ内の圧力がカッピング減圧値に達するまでエアポンプによってカップ内の空気を吸引し、カップは患者の身体上に残したままカッピング医療作業を行う。
【0015】
カッピング減圧値は大気圧力(760mm−Hg)からカップ内の圧力を引いたもので、200〜620mm−Hgの間であり、カッピング減圧値が200mm−Hgより低い場合はカッピングの必要はない。
【0016】
上段ですでに説明した調整因子は、個人の基本条件、対処を要する症状およびカッピングの位置を含む以外に、ツボの有無も加える必要があり、個人の基本条件は年齢層、性別、基本手的心身状況を含み、対処を要する症状の加重は症状の種類、重症度およびカッピング部位を含み、カッピング部位の加重は、皮膚表面が平坦であるか否か、組織成分が硬く締まっているか否かおよび部位のサイズを含み、ツボの加重は、ツボの有無および点穴(ツボの一種)の有無を含む。上述の調整因子は各項目ごとに異なる加重値のパーセンテージを有する。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
【表3】

【0020】
【表4】

【0021】
以下に1つの実施例を挙げる。図2のフローチャートのステップに基づき、上記の表1乃至表4の加重値を用いて実際のカッピング時に使用すべきカッピング減圧値はいくらであるかを算出する。
【0022】
仮に、患者が70歳の微衰弱の老婦人であるとして、その患者が重度の坐骨神経痛を患っているとすると、その個人基本条件の項目はそれぞれ年齢>65、女性、衰弱となるので、加重値は−10%−5%−5%=−20%となる。対処を要する症状の項目はそれぞれ神経系、重症、背部および四肢となり、加重値は−5%+0%+0%=−5%となる。カッピング位置の項目はそれぞれ平坦な皮膚、萎縮/糜爛、直径>6センチとなり、加重値は0%−10%+0%=−10%となる。ツボの項目はそれぞれツボ有り、点穴有りであると、加重値は0%+0%=0%となる。調整因子の各項目の加重値パーセンテージの総和を求めると、調整因子の総和は即ち−20%−5%−10%+0%=−35%となる。続いてカッピング減圧値を計算する。ここでの参考減圧値は544mm−Hgと予め設定しておくと、カッピング減圧値の計算は次のとおりである。
カッピング減圧値=参考減圧値×(100%+調整因子の総計)
=544mm−Hg×(100%−35%)
=353.6mm−Hg
≒350〜360mm−Hg
【0023】
したがって、前記患者にとって、参考減圧値544mm−Hgは明らかに高すぎ、もし参考減圧値に基づいてカッピングを行えば、患者は圧力により負傷したり、眩暈や意識障害等の重い症状に至る可能性もあり、またはもともと萎縮していた皮膚が損傷することもある。本発明の方法では患者の様々な条件に基づいて調整を加えた後、最適なカッピング減圧値を得る。
【0024】
以上に述べた内容は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。本発明の精神から離れない範囲で加えられた変更や潤色は全て、本発明の特許保護範囲内に属するものとする。
【符号の説明】
【0025】
10 カッピング装置
12 データベース
14 エアポンプ
16 カップ
162 弾性リング
18 吸気チューブ
20 第一負圧計
22 第二負圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体各部位について健康時のカッピングにおける複数の正常減圧値および発病時の病巣上のカッピングにおける複数の参考減圧値を測定して、カッピング装置のデータベースに保存するステップと、
患者のカッピングをしたい部位に基づき、前記データベースから対応する前記参考減圧値を取得するステップと、
前記カッピング装置が、前記患者の複数の個基本条件、対処を要する症状およびカッピングの位置等の調整因子に基づき、前記参考減圧値に対して加重計算を行い、カッピング減圧値を得るステップと、
少なくとも1つのカップを前記患者のカッピングしたい部位に載置し、前記カップ内の圧力が前記カッピング減圧値に達するまでエアポンプで前記カップ内の空気を吸引するステップと、
を含むことを特徴とするカッピング医療方法。
【請求項2】
前記人体の各部位は、胸部、頚部、腹部、背部、四肢等の部位を含み、前記個人基本条件は、年齢層、性別、基本的心身状況等を含むことを特徴とする、請求項1に記載のカッピング医療方法。
【請求項3】
前記対処を要する症状の加重は、症状の種類、重症度およびカッピング部位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のカッピング医療方法。
【請求項4】
前記カッピング位置の加重は、皮膚上面が平坦であるか否か、組織成分が硬く締まっているか否かおよび部位のサイズを含むことを特徴とする、請求項1に記載のカッピング医療方法。
【請求項5】
前記調整因子は、前記カッピング部位におけるツボの有無および点穴の有無の加重を含むことを特徴とする、請求項1に記載のカッピング医療方法。
【請求項6】
前記カッピング減圧値の範囲は200〜620mm−Hgであることを特徴とする、請求項1に記載のカッピング医療方法。
【請求項7】
前記カッピング減圧値は、前記調整因子の複数の加重値をの総和を求めた後、前記参考減圧値上に重み付けすることを特徴とする、請求項1に記載のカッピング医療方法。
【請求項8】
前記カッピング部位の異なる面積に応じて異なるカップの口のサイズの前記カップを選択することを特徴とする、請求項1に記載のカッピング医療方法。
【請求項9】
前記エアポンプおよび前記カップ上部に少なくとも1つの負圧計を設置して、前記カップ内の圧力値を表示することを特徴とする、請求項1に記載のカッピング医療方法。
【請求項10】
前記カッピング装置は前記カップおよび前記エアポンプを含むことを特徴とする、請求項1に記載のカッピング医療方法。

【図1】
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【図2】
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