説明

カップブラシ

【課題】 液晶基板の洗浄において、洗浄液は、回転するカップブラシのブラシセグメント内の台座の中心領域に浸入して滞留しすぐには外に流出しないので、液晶面を傷つけることがなく、効率良く洗浄できる状態が長続きするカップブラシを提供する。
【解決手段】 複数の第1ブラシセグメント41を、円盤状台座10の中心から外縁に向かって径方向に、且つ隣り合う第1ブラシセグメント41同士を所定間隔で設けるとともに、該間隔内の領域に第2ブラシセグメント42を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶基板の洗浄に使用されるカップブラシに関するものである。本明細書において、ブラシセグメントとは、複数本の樹脂のブラシ毛が基台の表面から突出して、基台に溶着された状態で成形されている溶着ブラシ、植込みブラシ、チヤンネルブラシや複数のブラシ毛を束ねて形成したブラシ毛束等をいう。
【背景技術】
【0002】
液晶基板の洗浄においては、液晶基板の表面に洗浄液を吹き付けながらカップブラシが回転して洗浄するスクラブ洗浄が行われている。一般的なカップブラシは、台座にブラシセグメントが環状配列して取り付けられているため、カップブラシを回転させると、遠心力によって環状配列したブラシセグメントの環の中に洗浄液が入らずに、効率の悪い洗浄が行われてしまう。
【0003】
そこで、台座に複数のチヤンネルブラシを外周方向に向って放射状に設けたカップブラシが提案されている。このカップブラシの場合には、液晶基板の洗浄において、洗浄液がブラシセグメント内の台座の中心領域まで浸入する。
【特許文献1】特開2005―7120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のカップブラシは、液晶基板の洗浄において、基板の表面に吹き付けた洗浄液が回転するカップブラシのブラシセグメント内の台座中心の領域に浸入するが、浸入した洗浄液は遠心力が作用して、すぐに、カップブラシの外に流出してしまう。そのまま洗浄を続けると洗浄効果が低減するだけでなく、液晶面を傷つけて液晶基板の商品価値を損なう虞があるため改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、液晶基板の洗浄において、洗浄液は、回転するカップブラシのブラシセグメント内の台座の中心領域に浸入して滞留して、カップブラシの外に流出しないので、液晶面を傷つけることがなく、しかも効率良く洗浄できる状態が長続きするカップブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1記載の発明は、円盤状台座に渦巻き状のブラシセグメントを設けたことを特徴とするカップブラシである。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、複数のU字状ブラシセグメントを、開放されている両端を円盤状台座の中心側、湾曲部分が外縁側となるように円盤状台座の中心から外縁に向かって径方向に、且つ隣り合う前記ブラシセグメント同士を所定間隔で設けたことを特徴とするカップブラシである。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、複数の第1ブラシセグメントを、円盤状台座の中心から外縁に向かって径方向に、且つ隣り合う第1ブラシセグメント同士を所定間隔で設けるとともに、該間隔内の領域に第2ブラシセグメントを設けたことを特徴とするカップブラシである。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、前記第1ブラシセグメントは、U字状である請求項3に記載のカップブラシである。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、第1ブラシセグメントは、円弧状である請求項3に記載のカップブラシである。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、前記第1ブラシセグメントは、L字状であり十字状の間隙を形成している請求項3に記載のカップブラシである。
【0012】
また、請求項7記載の発明は、前記第1ブラシセグメントは、蛇行して設けられている請求項3に記載のカップブラシである。
【0013】
また、請求項8記載の発明は、前記各ブラシセグメントはチャンネルブラシである請求項1〜7のいずれか1項に記載のカップブラシである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、洗浄液は、回転するカップブラシのブラシセグメント内の台座の中心領域に浸入したまま滞留するので、カップブラシの外に流出しにくく、液晶面を傷つけることがない。しかも、回転するカップブラシでの洗浄は効率の良い状態が長続きする
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1(a)は本発明の実施例1に係るカップブラシの概略斜視図、(b)は同概略平面図である。図1(a),(b)において、カップブラシ1は、右渦巻き状のブラシセグメント11を、円盤状台座10の底面に設けたものである。カップブラシ1は、洗浄液を吹き付けながら右回転で使用する。右渦巻き状のブラシセグメント11が洗浄液の浸入ガイドと滞留壁を兼用するように機能し、洗浄液はカップブラシ1に設けた右渦巻きに沿って、渦巻きの中心付近の円盤状台座10の中心領域まで容易に浸入して滞留する。
【実施例2】
【0017】
図2は本発明の実施例2に係るカップブラシの概略平面図である。図2において、カップブラシ2は、9または6の数字形の左渦巻き状のブラシセグメント12を、円盤状台座10の底面に設けたものである。実施例2のカップブラシ2は、洗浄液を吹き付けながら左回転で使用する。数字形の左渦巻き状のブラシセグメント12が洗浄液の浸入ガイドと滞留壁を兼用するように機能し、洗浄液はカップブラシ2に設けた左渦巻きに沿って、渦巻きの中心付近の円盤状台座10の中心領域まで容易に浸入して滞留する。
【実施例3】
【0018】
図3(a)は本発明の実施例3に係るカップブラシの概略斜視図、(b)は同概略平面図である。図3(a),(b)において、カップブラシ3は、複数のU字状のブラシセグメント13を、開放されている両端を円盤状台座の中心側、湾曲部分が外縁側となるように円盤状台座10の中心から外縁に向かって径方向に、且つ、隣り合うU字状のブラシセグメント13同士を所定間隔で複数(図では3つ)設けたものである。
【0019】
実施例3のカップブラシ3では、U字状のブラシセグメント13の湾曲部分の外壁13aが洗浄液の浸入ガイドとして機能し、湾曲部分の内壁13bが洗浄液の流出防止用の滞留壁(以下の説明では洗浄液の滞留壁という)として機能する。
【実施例4】
【0020】
図4(a)は本発明の実施例4に係るカップブラシの斜視図、(b)は(a)のカップブラシの概略平面図である。
【0021】
図4(a)(b)において、カップブラシ4は、円盤状台座10を有している。そして、U字状の複数(図では4つ)の第1ブラシセグメント41を、開放されている両端を円盤状台座の中心側、湾曲部分が外縁側となるように円盤状台座の中心から外縁に向かって径方向にして、円盤状台座10の中心から外縁に向かって径方向に、且つ隣り合う前記ブラシセグメント同士を所定間隔で設けている。そして、台座10において隣り合う第1ブラシセグメント41同士の間の領域内のそれぞれに円弧状の第2ブラシセグメント42を配置し、各第2ブラシセグメント42が所定間隔で環状に配列されるように設けたものである。
【0022】
カップブラシ4は、図示しない液晶基板の洗浄において、洗浄液を吹き付けた液晶基板の表面にカップブラシ4を回転させて摺接させると、液晶基板の表面に吹き付けた洗浄液が、カップブラシ4に設けた第1および/または第2ブラシセグメント41,42の外壁41a,42aによる洗浄液の浸入ガイドに沿って回転するカップブラシの隣り合う第1および/または第2ブラシセグメント41,42同士の間から台座の中心付近の領域に浸入する。
【0023】
その後、カップブラシ4の回転により外部へ流出しようとする洗浄液は、カップブラシ4に設けた第1および/または第2ブラシセグメント41,42の内壁41b,42bからなる滞留壁により、外部への流出が制限されて、しばらく台座10の中心付近の液晶基板の面に滞留する。
【0024】
図5(a)〜(e)は本発明の実施例5〜9に係るカップブラシの概略平面図、図6は本発明の実施例10に係るカップブラシの概略平面図である。後述する実施例5〜10におけるカップブラシは、実施例4のカップブラシ4と同様に、円盤状台座に第1と第2の2種のブラシセグメントを複数設けたものであり、各ブラシセグメントの形状は異なるが、実施例5〜10における2種のブラシセグメントは実施例4のカップブラシ4と同様に作用するものである。したがって、以下の実施例5〜10における各カップブラシの作用については概略の説明に留めることとする。
【実施例5】
【0025】
図5(a)に示した実施例5のカップブラシ5は、4つの直線状の第1ブラシセグメント51を、円盤状台座10の中心から外縁に向かって径方向に設け、隣り合う第1ブラシセグメント51同士を等角度間隔で設けている。そして、台座10において隣り合う第1ブラシセグメント51同士の間の領域に大小の円弧状の第2ブラシセグメント52,第3ブラシセグメント53を径方向に離間して配列し、第2ブラシセグメント52と第3ブラシセグメント53のそれぞれが適宜の間隔で環状に配列され、第2ブラシセグメント52による環状配列の内側に、第3ブラシセグメント53を環状配列して、二重の環状配列となるように設けたものである。
【0026】
実施例5のカップブラシ5では、直線状の第1ブラシセグメント51が洗浄液の浸入ガイドとして機能し、大小の円弧状の第2、第3ブラシセグメント52,53の各内壁52b,53bが洗浄液の滞留壁として機能する。
【実施例6】
【0027】
図5(b)に示した実施例6のカップブラシ6は、4つの円弧状の第1ブラシセグメント61を、円盤状台座10の中心から外縁に向かって径方向に設け、隣り合う第1ブラシセグメント61同士を等角度間隔で設けている。そして、台座10において隣り合う円弧状の第1ブラシセグメント61同士の間の領域に十字に組み合わせた第2ブラシセグメント62を設けたものである。
【0028】
実施例6のカップブラシ6は、円弧状の膨らみ部分が回転方向に移動するように洗浄液を吹き付けながら使用すると良い。図5(b)に示したカップブラシ6は、右回転で使用することで、第1ブラシセグメント61の円弧状の膨らみ部分が回転方向に移動し、第1ブラシセグメント61が洗浄液の浸入ガイドとして機能し、十字に組み合わせた第2ブラシセグメント62が洗浄液の滞留壁として機能する。
【実施例7】
【0029】
図5(c)に示した実施例7のカップブラシ7は、先端部を曲げてヘ字状に形成した4つの第1ブラシセグメント71を、円盤状台座10の中心から外縁に向かって径方向に設け、隣り合う第1ブラシセグメント71同士を等角度間隔で設けている。そして、台座10において隣り合うブラシセグメント71同士の間の領域に平行四辺形の第2ブラシセグメント72を設けたものである。
【0030】
実施例7のカップブラシ7においても、ヘ字状の膨らみ部分が回転方向に移動するように洗浄液を吹き付けながら使用すると良い。図5(c)に示したカップブラシ7は、右回転で使用することで、第1ブラシセグメント71のヘ字状の膨らみ部分が回転方向に移動し、4つの第1ブラシセグメント71が洗浄液の浸入ガイドとして機能し、平行四辺形の第2ブラシセグメント72が洗浄液の浸入ガイドと滞留壁を兼用するように機能する。
【実施例8】
【0031】
図5(d)に示した実施例8のカップブラシ8は、波状に蛇行して形成した4つの第1ブラシセグメント81を、円盤状台座10の中心から外縁に向かって径方向に設け、隣り合う第1ブラシセグメント81同士を等角度間隔で設けている。そして、台座10において隣り合う第1ブラシセグメント51同士の間の領域に、複数本のブラシ毛を束ねて形成したブラシ毛束からなる第2ブラシセグメント82の複数個を相互に離間して点在するように設けたものである。
【0032】
実施例8のカップブラシ8では、波状に蛇行して設けられた第1ブラシセグメント81が洗浄液の浸入ガイドとして機能し、複数のブラシ毛束からなる第2ブラシセグメント82が洗浄液の浸入ガイドと滞留壁を兼用するように機能する。
【実施例9】
【0033】
図5(e)に示した実施例9のカップブラシ9は、直角に曲げて形成した4つのL字状の第1ブラシセグメント91を、直角に曲げた山側の部分を中心側にして、円盤状台座10の中心から外縁に向かって径方向に設け、隣り合う第1ブラシセグメント91同士を等角度間隔に配置して、各第1ブラシセグメント91が十字状の間隙を形成するように設けている。そして、台座10において隣り合うブラシセグメント91同士の十字状の間隙の領域9a、および、個々のL字状のブラシセグメント91が円盤状台座10の外縁との間を囲み込むブラシセグメント91の包囲領域9b内に、複数のブラシ毛束からなる第2ブラシセグメント92を相互に離間して点在するように設けたものである。
【0034】
実施例9のカップブラシ9では、4つのL字状の第1ブラシセグメント91が洗浄液の浸入ガイドとして機能し、複数のブラシ毛束からなる第2ブラシセグメント92が洗浄液の浸入ガイドと滞留壁を兼用するように機能する。
【実施例10】
【0035】
図6に示した実施例10のカップブラシ15は、湾曲した6つの円弧状の第1ブラシセグメント101の2つを互いの凹部を向い合せにして1組のブラシセグメント対102として、各第1ブラシセグメント101a,101bを円盤状台座10の中心から外縁に向かって径方向に設け、隣り合うブラシセグメント対102同士を等角度間隔で設けている。この場合、1組のブラシセグメント対102において、円弧状の膨らみ部分が回転方向に移動する一方のブラシセグメント101を前記した実施例4〜9における第1ブラシセグメントとし、向きの異なる他方を第2ブラシセグメントと考えることができる。
【0036】
実施例10のカップブラシ15では、各組のブラシセグメント対102を構成する1対の第1ブラシセグメント101の各外壁101aが洗浄液の浸入ガイドとして機能し、ブラシセグメント対102の各内壁101bが洗浄液の滞留壁として機能する。
【0037】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)は本発明の実施例1に係るカップブラシの概略斜視図、(b)は同概略平面図である。
【図2】本発明の実施例2に係るカップブラシの概略平面図である。
【図3】(a)は本発明の実施例3に係るカップブラシの概略斜視図、(b)は同概略平面図である。
【図4】(a)は本発明の実施例4に係るカップブラシの斜視図、(b)は(a)のカップブラシの概略平面図である。
【図5】(a)〜(e)は本発明の実施例5〜9に係るカップブラシの概略平面図である。
【図6】本発明の実施例10に係るカップブラシの概略平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1〜9,15 カップブラシ
9a 第1ブラシセグメント91同士の十字状の間隙の領域
9b 第1ブラシセグメント91の包囲領域
10 台座
11 右渦巻き状のブラシセグメント
12 数字形の左渦巻き状のブラシセグメント
13 U字状のブラシセグメント
41,51,61,71,81,91 第1ブラシセグメント
42,52,62,72,82,92 第2ブラシセグメント
13a U字状のブラシセグメントの外壁
13b U字状のブラシセグメントの内壁
101円弧状の第1ブラシセグメント
102 1組のブラシセグメント対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状台座に渦巻き状のブラシセグメントを設けたことを特徴とするカップブラシ。
【請求項2】
複数のU字状ブラシセグメントを、開放されている両端を円盤状台座の中心側、湾曲部分が外縁側となるように円盤状台座の中心から外縁に向かって径方向に、且つ隣り合う前記ブラシセグメント同士を所定間隔で設けたことを特徴とするカップブラシ。
【請求項3】
複数の第1ブラシセグメントを、円盤状台座の中心から外縁に向かって径方向に、且つ隣り合う第1ブラシセグメント同士を所定間隔で設けるとともに、該間隔内の領域に第2ブラシセグメントを設けたことを特徴とするカップブラシ。
【請求項4】
前記第1ブラシセグメントは、U字状である請求項3に記載のカップブラシ。
【請求項5】
前記第1ブラシセグメントは、円弧状である請求項3に記載のカップブラシ。
【請求項6】
前記第1ブラシセグメントは、L字状であり十字状の間隙を形成している請求項3に記載のカップブラシ。
【請求項7】
前記第1ブラシセグメントは、蛇行して設けられている請求項3に記載のカップブラシ。
【請求項8】
前記各ブラシセグメントはチャンネルブラシである請求項1〜7のいずれか1項に記載のカップブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−167361(P2007−167361A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369349(P2005−369349)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(398029234)
【出願人】(300038675)
【Fターム(参考)】