説明

カップラー

【課題】 メタノール燃料電池の場合のように簡単に着脱して金属と接触させずに液体などを供給したり、取り出したり、あるいは容器ごと交換することができるカップラーを提供すること。
【解決手段】弁体16とこれを閉方向に付勢する金属製コイルバネ17とを備えるソケットS10と、弁体24とこれを閉方向に付勢する金属製コイルばね25とを備え、ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグP10とから構成されるカップラー10で、両弁体16,24の基端部に当該弁体が開閉方向に往復移動可能かつシール可能に装着される弾性体ホルダ18,26を設け、この弾性体ホルダに前記弁体を付勢する前記付勢手段を収納するとともに、この弾性体ホルダの外側に流路を形成してある。
これにより、金属製コイルばねを弾性体ホルダ内に収納することで、液体との接触を防止できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はソケットとプラグとで構成され着脱可能に連結されるカップラーに関し、液体などを容器から簡単に本体側の容器などに移したり、容器ごと交換することができるようにするもので、特にメタノール燃料電池のカートリッジ容器と燃料電池本体との間に設けて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から機器の運転や使用にともなって減少する原料などの液体を補充する必要がある場合も多く、機器本体側に設けた容器にカートリッジ容器を連結して原料などの液体を移すことで供給したり、機器本体側の容器と別の容器を付け替えることで供給することが行われている。
【0003】
このような容器同士の連結や容器の付け替えを簡単にするため着脱可能な種々のカップラーが用いられている。
【0004】
例えば特許文献1には、図8に示すように、連結装置が開示されており、主流路と副流路とを備えたプラグPと、主流路と副流路とを備えプラグと嵌合可能であるとともに、嵌合した状態でプラグの主流路と副流路とを連通可能なソケットSとから構成されている。
【0005】
そして、この連結装置では、ソケットSは保持体1に固定された弁押体2の外周に形成された主流路2aと、さらに主流路2aの外側に形成された副流路2bと、それらの流路2a,2bを閉じるバルブ3a、3bを有し、各バルブ3a、3bはスプリング4a,4bの付勢力によって弁座に向けて押圧され、主流路2aおよび副流路2bを閉じることができる構成となっている。
【0006】
一方、プラグPは弁保持体5に摺動自在に保持された弁本体6の外周に形成された主流路6aと、さらに主流路6aの外側に形成された副流路6bと、それらの流路6a,6bを閉じるバルブ7a,7bを有し、各バルブ7a,7bはスプリング8a,8bの付勢力によって弁座に向けて押圧され、主流路6aおよび副流路6bを閉じることができる構成となっている。
【0007】
このようなソケットSとプラグPの接続がなされると、まず、ソケットSの副バルブ3bとプラグPの副バルブ7bが当接し、両者がそれぞれスプリング4b,8bの付勢力に抗して互いに離れる方向に移動し、副流路2b,6bが連通する。
【0008】
さらに、ソケットSとプラグPの接続がなされると、ソケットSの主バルブ3aがプラグPの内筒体の端面によって押され、スプリング4aに抗して後退して弁体が弁押体2の弁座から離れ、弁押体2との主流路2aを開くとともに、ソケットS側の弁押体の先端部平面とプラグP側の弁本体6に設けた弁部材の平面とが当接しプラグP側の弁本体6をスプリング8aの付勢力に抗して押圧し、弁本体を後退させてプラグP側の主バルブ7aを開き主流路6aと連通する。
【0009】
これにより、副流路が連通すると気体供給源から容器内に気体が供給され、その気体圧によって内袋を収縮させ、内袋内の液体がプラグ側の主流路からソケット側の主流路を介して液体を容器外に送出することができる。
【特許文献1】特開2003−172487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような連結装置によれば、容器内に中袋を設けてその中の液体を取り出す場合に、副流路から中袋の外側に加圧気体を入れ、主流路から液体を取り出すようにすることで中袋の中の液体を他の気体と接触させずに取り出すことができる。
【0011】
ところが、容器内の液体を取り出したり、他の容器などに供給する場合に液体と金属との接触を防止する必要がある場合があり、例えばメタノール燃料電池では、燃料となるメタノールを燃料電池本体に供給する場合にメタノールが金属と接触すると、溶出した金属イオンが、アノード側で発生した水素イオン(プロトン)が移動するはずの場所を先に占有して移動量を減少させ、アノード側反応速度を低下させ、その結果として燃料電池としての機能を低下させてしまう。
【0012】
このため、上記の連結装置を燃料電池本体とメタノール容器との間のカップラーとして用いると、弁体を閉方向に付勢する金属製のばねが主流路および副流路内に設けられるため、液体と金属との接触が避けられず、使用できないという問題がある。
【0013】
この発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、メタノール燃料電池の場合のように簡単に着脱して金属と接触させずに液体などを供給したり、取り出したり、あるいは容器ごと交換することができるカップラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来技術の有する課題を解決するためこの発明の請求項1記載のカップラーは、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方の前記弁体の基端部に当該弁体が開閉方向に往復移動可能かつシール可能に装着される弾性体ホルダを設け、この弾性体ホルダに前記弁体を付勢する前記付勢手段を構成する弾性体を収納するとともに、この弾性体ホルダの外側に流路を形成したことを特徴とするものである。
【0015】
このカップラーによれば、弾性体ホルダに弁体を開閉方向に往復移動可能かつシール可能に装着し、この弾性体ホルダに弁体を付勢する付勢手段を構成する弾性体を収納してその外側に流路を形成するようにしており、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方は、弾性体を弾性体ホルダ内に収納することで、液体との接触を防止できるようにしている。
【0016】
さらに、この発明の請求項2記載のカップラーは、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、 弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方の前記弁体を開閉方向に付勢する前記付勢手段を非金属材料で形成してなることを特徴とするものである。
【0017】
このカップラーによれば、弁体を付勢する付勢手段を非金属材料で形成するようにしており、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方は、金属を用いることなく合成樹脂などでカップラーを構成することで、液体と接触しても問題が生じないようにしている。
【0018】
また、この発明の請求項3記載のカップラーは、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、前記ソケットと前記プラグとのいずれか一方の前記弁体の基端部に当該弁体が開閉方向に往復移動可能かつシール可能に装着される弾性体ホルダを設け、この弾性体ホルダに前記弁体を付勢する前記付勢手段を構成する弾性体を収納するとともに、この弾性体ホルダの外側に流路を形成し、前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか他方の前記弁体を開閉方向に付勢する前記付勢手段を非金属材料で形成してなることを特徴とするものである。
【0019】
このカップラーによれば、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方を弾性体ホルダに弁体を開閉方向に往復移動可能かつシール可能に装着し、この弾性体ホルダに弁体を付勢する付勢手段を構成する弾性体を収納してその外側に流路を形成するようにしており、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方は、弾性体を弾性体ホルダ内に収納することで、液体との接触を防止でき、ソケットとプラグとの少なくともいずれか他方の弁体を付勢する付勢手段を非金属材料で形成するようにしており、ソケットとプラグとの少なくともいずれか他方は、金属を用いることなく合成樹脂などでカップラーを構成することで、液体と接触しても問題が生じないようにし、これらの組み合わせでカップラーとして金属の接触を防止できるようにしている。
【0020】
さらに、この発明の請求項4記載のカップラーは、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記付勢手段を構成する前記弾性体を、金属製コイルばね、非金属製コイルばね、非金属製弾性部材のいずれかで構成したことを特徴とするものであり、このカップラーによれば、前記弾性体を、弾性体ホルダ内に収納することで、金属の溶出や、非金属成分の溶出による影響を回避できるようになる。
【0021】
また、この発明の請求項5記載のカップラーは、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記ソケットのソケット本体または前記プラグのプラグ本体に前記弁体が往復移動する弁座部材を設け、この弁座部材に前記弁体の先端外周面とでシールするシール部およびこれに隣接して流路となるスリット部を設けてなることを特徴とするものであり、このカップラーによれば、弁体の外周面をシール部とし、弁座部材の内周面のシール部とスリット部で弁座と流路を確保するようにしている。
【0022】
さらに、この発明の請求項6記載のカップラーは、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記ソケットと前記プラグの少なくともいずれか一方に前記両弁体を開放して連通状態にする操作部を設けてなることを特徴とするものであり、このカップラーによれば、ソケットとプラグの少なくともいずれか一方に設けた操作部によって嵌合連結によって両弁体を開放状態にできるようにしている。
【0023】
また、この発明の請求項7記載のカップラーは、請求項1〜6のいずれかに記載の構成に加え、前記プラグ本体に設けられる合成樹脂製の前記弁体を、略中空の逆円錐体状に形成するとともに先端部の中心孔の内周面をシール部とする一方、このシール部に接触する弁座部材の弁座部を円柱状に形成して前記プラグ本体に設けてなること特徴とするものであり、このカップラーによれば、弁体を逆円錐状の側面部分の弾性力で中心孔を塞ぐように付勢させて円柱状の弁座部の側面とでシール状態にでき、弁体の逆円錐状の側面を外側に広げるようにして円柱状の弁座部との間に流路を確保することで、構造を簡素化できるようにしている。
【0024】
さらに、この発明の請求項8記載のカップラーは、請求項1〜7のいずれかに記載の構成に加え、前記プラグ本体に設けられる合成樹脂製の前記弁体の基端部を、前記プラグ本体の先端面より突出させて当該プラグ本体に被せられるキャップの天面部と押圧シール可能に構成したことを特徴とするものであり、このカップラーによれば、キャップとの間のシールを合成樹脂製の弁体の一部を兼用し、一層部品点数を減らして構造を簡素化できるようになる。
【0025】
また、この発明の請求項9記載のカップラーは、請求項1〜8のいずれかに記載の構成に加え、前記ソケットと前記プラグとの間に、嵌合連結状態を保持する連結保持手段を設けたことを特徴とするものであり、このカップラーによれば、連結保持手段で嵌合連結状態を保持でき、ソケットとプラグを連通状態とする場合の付勢手段の反力を支持できるようにしている。
【0026】
さらに、この発明の請求項10記載のカップラーは、請求項1〜9のいずれかに記載の構成に加え、前記ソケットと前記プラグとの連通経路が外部に対しシールされた後、前記ソケットの前記弁体および前記プラグの前記弁体とが連通可能に構成してあることを特徴とするものであり、このカップラーによれば、ソケットとプラグを嵌合連結してから弁体同士を連通させることで、漏洩などを防止できるようにしている。
【0027】
また、この発明の請求項11記載のカップラーは、請求項1〜10のいずれかに記載の構成に加え、前記カップラーがメタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられて構成されることを特徴とするものであり、このカップラーによれば、メタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられるカップラーとして必要な機能を全て満たすものとなる。
【0028】
すなわち、メタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられるカップラーとしては、以下の条件を満たすものである必要がある。
【0029】
1) 簡単に着脱できること、
2) ソケットとプラグのいずれも、非接合時には弁体を閉じたシール状態にできること、
3) 接合時に弁体を開くことができ、この状態を保持できること、
4) 容器をスクイズするなどの簡便な方法で、容易に燃料を充填できること、
5) 接合時には、シール状態が確立した後、弁体が開くこと、
6) 接合を解除した際、接合部に付着する残液量が少ないこと、
7) 内容液と金属が直接触れない構造であること。
【発明の効果】
【0030】
この発明の請求項1記載のカップラーによれば、弾性体ホルダに弁体を開閉方向に往復移動可能かつシール可能に装着し、この弾性体ホルダに弁体を付勢する付勢手段を構成する弾性体を収納してその外側に流路を形成するようにしたので、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方は、弾性体を弾性体ホルダ内に収納することで、液体との接触を防止することができる。
【0031】
さらに、この発明の請求項2記載のカップラーによれば、弁体を付勢する付勢手段を非金属材料で形成するようにしたので、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方は、金属を用いることなく合成樹脂などでカップラーを構成することで、液体と接触しても問題が生じないようにすることができる。
【0032】
また、この発明の請求項3記載のカップラーによれば、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方を弾性体ホルダに弁体を開閉方向に往復移動可能かつシール可能に装着し、この弾性体ホルダに弁体を付勢する付勢手段を構成する弾性体を収納してその外側に流路を形成するようにしたので、ソケットとプラグとの少なくともいずれか一方は、弾性体を弾性体ホルダ内に収納することで、液体との接触を防止でき、ソケットとプラグとの少なくともいずれか他方の弁体を付勢する付勢手段を非金属材料で形成するようにしたので、ソケットとプラグとの少なくともいずれか他方は、金属を用いることなく合成樹脂などでカップラーを構成することで、液体と接触しても問題が生じないようにすることができ、これらの組み合わせでカップラーとして金属の接触を完全に防止することができる。
【0033】
さらに、この発明の請求項4記載のカップラーによれば、付勢手段を構成する弾性体を、金属製コイルばね、非金属製コイルばね、非金属製弾性部材のいずれかで構成して弾性体ホルダ内に収納したので、金属の溶出や、非金属成分の溶出による影響を回避することができる。
【0034】
また、この発明の請求項5記載のカップラーによれば、弁体の外周面をシール部とし、弁座部材の内周面をシール部とスリット部とすることで、弁を構成して弁座と流路とを確保することができる。
【0035】
さらに、この発明の請求項6記載のカップラーによれば、ソケットとプラグの少なくともいずれか一方に操作部を設けたので、嵌合連結によって両弁体を操作部で自動的に連通状態にすることができる。
【0036】
また、この発明の請求項7記載のカップラーによれば、弁体を逆円錐状の側面部分の弾性力で中心孔を塞ぐように付勢させて円柱状の弁座の側面とでシール状態にでき、弁体の逆円錐状の側面を外側に広げるようにして円柱状の弁座部との間に流路を確保するようにしたので、弁体と付勢手段を一体にできるとともに、その構造を簡素化することができる。
【0037】
さらに、この発明の請求項8記載のカップラーによれば、キャップとの間のシールを合成樹脂製の弁体の一部を兼用するようにしたので、一層部品点数を減らして構造を簡素化することができる。
【0038】
また、この発明の請求項9記載のカップラーによれば、嵌合連結状態を保持する連結保持手段を設けたので、連結保持手段で嵌合連結状態を保持でき、ソケットとプラグを連通状態とする場合の付勢手段の反力を支持することができる。
【0039】
さらに、この発明の請求項10記載のカップラーによれば、ソケットとプラグの連通経路を外部に対しシールしてから弁体同士を連通させることができ、漏洩などを防止することができる。
【0040】
また、この発明の請求項11記載のカップラーによれば、メタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられるカップラーとして必要な機能を全て満たすものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1はこの発明のカップラーの一実施の形態にかかり、(a)は接続前の状態の縦断面図、(b)は接続状態の縦断面図である。
【0042】
このカップラー10は、ソケットS10と、このソケットS10と嵌合連結されるプラグP10とで構成され、例えばメタノール燃料電池の本体側FにソケットS10が設けられ、メタノール容器としてのカートリッジ側にプラグP10が設けられ、互いを連通させて本体側に燃料を補充したり、カートリッジごと交換するのに用いられ、主要部は、非金属材料、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂で作られる。
【0043】
以下の説明では、図面上での上下を基準に説明するが、実際の容器本体への装着方向を何ら制限するものでなく、どのような方向で実施しても良い。
【0044】
このカップラー10のソケットS10は、燃料電池の本体Fに一体もしくは別体として取り付けられる部材に形成された装着孔11の先端部(図中、下端部)内周に装着された略円筒状のソケット本体12を備えている。
【0045】
このソケット本体12には、中間部に仕切り部13aとその中心の流路孔13bを備えた略円筒状の弁座部材13の先端部がOリング14を介して装着され、このOリング14でソケット本体12と弁座部材13とをシールするとともに、ソケット本体12に嵌合連結されるプラグP10との間をシールできるようにしてある。
また、弁座部材13の中間部外周にOリング15が装着されて装着孔11との間もシールされている。
【0046】
この弁座部材13には、流路孔13bの基端側(図中、上側)の内周に,円筒側面で構成した弁座となるシール部13cが形成されるとともに、中心軸方向上側に隣接して縦溝状のスリット部13dが円周等間隔に複数形成してある。
【0047】
この弁座部材13内には、弁体となるピストンバルブ16が装着され、弁座部材13のシール部13cに摺動自在に嵌合される弁部16aを備えるとともに、弁部16aの中央部に突き出して操作部16bが形成され、この操作部16bを流路孔13bから突出すようにし、接続されるプラグP10の弁体を開弁することができるようになっている。
【0048】
また、この弁体となるピストンバルブ16の基端部内周には、閉弁方向に付勢する付勢手段を構成する金属製コイルばね17が装着されるばね装着部16cが形成される一方、外周部にシール用スカート部16dが形成してある。
【0049】
このピストンバルブ16の基端側および弁座部材13の外周側に略底付き円筒状の弾性体ホルダ18が配置され、弁座部材13の外周および装着孔11の内周に嵌合固定され、Oリング15でシールされている。
【0050】
そして、この弾性体ホルダ18内には、ピストンバルブ16のシール用スカート部16dがシール状態で摺動可能に装着され、ピストンバルブ16のばね装着部16cと弾性体ホルダ18内に形成したガイド部18aに金属製コイルばね17が装着され、ピストンバルブ16を閉弁方向に付勢するようになっている。
【0051】
また、この弾性体ホルダ18の基端部の外周部は装着孔11より小径とされて流路18bとされている。
【0052】
さらに、この弾性体ホルダ18の外周部の流路18bと弁座部材13の内周部との間を連通するスリット18cが弾性体ホルダ18の円周等間隔に複数形成してある。
【0053】
そして、このカップラー10のソケットS10には、燃料電池の本体Fに一体もしくは別体として取り付けられる部材に形成された装着孔11の外側にプラグP10との嵌合連結状体を保持する連結保持手段としてロック用溝19が形成され、例えば30度程度の範囲の円弧状の溝が中心軸を挟んで対向して設けられ、対角位置の半分に段差部を形成しておき、段差部でフックを係止し、段差部のない部分でフックを開放できるように回動させて操作するようにする。
【0054】
したがって、このように構成したカップラー10のソケットS10では、弁体を構成するピストンバルブ16が操作部16bを介して金属製コイルばね17に抗して押し上げられると、弁部16aが弁座部材13のシール部13cからスリット部13dに位置することで、開弁状態となり、ソケット本体12内から流路孔13b、弁座部材13のシール部13c、スリット部13d、弾性体ホルダ18のスリット18cおよび弾性体ホルダ18の外周部の流路18bを介して燃料電池F内のタンクと連通されるようになり、逆にピストンバルブ16への押し上げ力が解除されると、ピストンバルブ16の弁部16aが弁座部材13のシール部13cに位置して閉弁状態が保持される。
【0055】
このようなソケットS10によれば、構成部品が非金属材料とされ、ピストンバルブ16が押し上げられて開弁されて液体が流路を流れる場合でも金属製コイルばね17はピストンバルブ16と弾性体ホルダ18とでシール状態とされているので、直接接することがなく、液体に金属イオンが溶出することが防止される。
【0056】
次に、このようなソケットS10に嵌合連結されるプラグP10について説明する。
このカップラー10のプラグP10は、例えばソケットS10と同様に構成部品が非金属材料とされ、金属製コイルばねを使用しても流路を流れる液体と直接接することがないようにしたものが用いられる。
【0057】
このカップラー10のプラグP10は、燃料電池の燃料であるメタノールがいれられた容器BのノズルNの先端部(図中、上端部)外周に装着されるプラグ本体21を備えており、基端大径円筒部21aの内周部に容器BのノズルNが装着され、先端小径部21bが弁座部材と兼用される弁座部22としてある。
【0058】
このプラグP10の弁座部22は、その外形がソケットS10のソケット本体12および弁座部材13で形成される略円筒状の凹部形状に対応する形状とされ、先端部が弁座部材13の内周に対応する小径部22aとされ、基端部がソケット本体12の内周に対応する大径部22bとされて円錐面22cで連続するようになっており、円錐面22cがソケットS10のOリング14と接することでシールされる。
【0059】
そして、このプラグP10のプラグ本体21の基端大径円筒部21aおよび弁座部22の内周部が流路23とされ、弁座部22の先端に円筒側面の弁座となるシール部22dが形成されるとともに、中心軸方向下側に隣接して縦溝状のスリット部22eが円周等間隔に複数形成してある。
【0060】
この弁座部22内には、弁体となるピストンバルブ24が装着され、弁座部22のシール部22dに摺動自在に嵌合される弁部24aを備えるとともに、弁部24aの下方がスリット部22eより細い細径部24bとしてあり、段差部24cを介してその下方が弁座部22の円錐面22cの内側の内周面との間に流路となる隙間を有する円筒状とされ、さらに下端外周部にシール用のスカート部24dが形成してある。
【0061】
また、この弁体となるピストンバルブ24の基端部内周には、閉弁方向に付勢する付勢手段を構成する金属製コイルばね25が装着されるばね装着部24eが形成してある。
【0062】
このピストンバルブ24を付勢する金属製コイルばね25を支持するためピストンバルブ24の基端側に弾性体ホルダ26が配置され、プラグ本体21の基端大径円筒部21aの内側に突き出す内側円筒部21bに弾性体ホルダ26の略底付き二重円筒状の内外円筒間が嵌合されて固定してある。
【0063】
この弾性体ホルダ26の外円筒の内周とプラグ本体21の内側円筒部21bとはシール状態とされ、プラグ本体21の内側円筒部21bと弾性体ホルダ26の内円筒の外周との間に流路26aとなる隙間が形成されるとともに、内外円筒の底部にスリット26bが形成され、容器BのノズルN内と連通している。
【0064】
そして、この弾性体ホルダ26の内円筒内には、ピストンバルブ24のシール用スカート部24dがシール状態で摺動可能に装着され、ピストンバルブ24のばね装着部24eと弾性体ホルダ26内に形成したガイド部26cに金属製コイルばね25が装着され、ピストンバルブ24を閉弁方向に付勢するようになっている。
【0065】
したがって、ピストンバルブ24のばね装着部24eと弾性体ホルダ26内に収納された金属製コイルばね25は、弾性体ホルダ26の内円筒の外周とピストンバルブ24の外周が流路となり、弾性体ホルダ26とピストンバルブ24とがシール用スカート部24dでシールされていることから流路を流れる液体と直接接することがない。
【0066】
また、このカップラー10のプラグP10には、プラグ本体21にソケットS10との嵌合連結状態を保持する連結保持手段としてロックアーム27が設けられ、例えば2本のロックアーム27の先端内側にそれぞれフック27aを形成し、このフック27aを燃料電池の本体Fに一体もしくは別体として取り付けられる部材に形成したロック用溝19に挿入してロック用溝19の対角位置の半分の段差部19aに係止することで連結状態を保持するようにし、段差部19aのない部分にフック27aを回動することで開放できるようにする。
【0067】
このようなカップラー10のプラグP10では、弁体を構成するピストンバルブ24がソケットS10の操作部16bを介して金属製コイルばね25に抗して押し下げられると、弁部24aが弁座部22のシール部22dからスリット部22eに位置することで、開弁状態となり、容器BのノズルN内からスリット26b、弾性体ホルダ26の内円筒の外周とピストンバルブ24の外周との間の流路26a、ピストンバルブ24の外周と弁座部22の内周面との間の流路、段差部24c、弁座部22のスリット部22e、弁座部22のシール部22dを介して外部と連通され、ソケットSを連結しておくことでソケットS10を介して燃料電池F内のタンクと連通させることができる。
【0068】
一方、逆にピストンバルブ24への押し下げ力が解除されると、金属製コイルばね25の付勢力によってピストンバルブ24の弁部24aが弁座部22のシール部22dに位置して閉弁状態が保持される。
【0069】
このようなプラグP10によれば、ピストンバルブ24が開弁されて液体が流路23を流れる場合でも金属製コイルばね25はピストンバルブ24と弾性体ホルダ26とでシール状態とされているので、直接接することがなく、液体に金属イオンが溶出することが防止される。
【0070】
また、このプラグP10が設けられる容器Bには、カバーキャップ28がねじ込まれるようになっており、カバーキャップ28の内側天面に取り付けたパッキン28aでシールできるようにしてある。
【0071】
このようなソケットS10とプラグP10とで構成したカップラー10では、互いを嵌合連結状態にすると、まず、プラグ本体21の弁座部22の先端部がソケット本体12のOリング14に接触して互いがシール状態となり、この状態では、ソケットSの操作部16bでプラグP10のピストンバルブ24の頂部を押し下げるものの、弁部24aがシール部22dの下方寄りに位置するので閉弁状態が保持される。
【0072】
さらに、プラグP10がソケットS10に押し込まれると、ソケットS10とプラグP10のピストンバルブ16,24の弁部16a,24aがシール部13c、22dからスリット部13d、22eに位置することになり、連通状態となる。
【0073】
そして、このプラグP10とソケットS10との嵌合連結状態がロック用溝19の段差部19aにロックアーム27のフック27aを係止することで保持することができる。
【0074】
これにより、容器B内のメタノールをスクイズすることで燃料電池Fのタンク内に加圧して供給することで、空間内の空気を一旦圧縮し、スクイズを止めることで、圧縮された空気を容器側に戻すようにしてメタノールを補充したり、容器ごと交換することもできる。
【0075】
次に、この発明のカップラーの他の一実施の形態について、図2により説明するが、すでに説明した実施の形態と同一部分には同一記号を記し、重複する説明は省略する。
図2はこの発明のカップラーの一実施の形態にかかり、(a)は接続前の状態の縦断面図、(b)は接続状態の縦断面図である。
【0076】
このカップラー30では、ソケットS30のソケット本体31がすでに説明したソケット本体12と弁座部材13を一体に連結した形状とされ、ソケット本体31を仕切る中心孔31aが形成された仕切り部31bの内面が平面状の弁座となるシール部31cとされ、シール用パッキン32が取り付けてあり、仕切り部31bの外面にもプラグP30の先端面とのシール用パッキン33が取り付けてある。
【0077】
一方、ピストンバルブ34は、先端面が平面状の弁部34aとされ、この弁部34aをシール部31cのシール用パッキン32に押圧することで閉弁状態とし、隙間を形成することで開弁状態にできる。
なお、ソケットS30の他の構成はすでに説明したソケットS10と同一である。
【0078】
このようなソケットS30では、ピストンバルブ34の弁部34aが摺動方向と直交する先端面であることから弁部の抵抗分がなく、ピストンバルブ34の開弁操作の操作力が金属製コイルばね17に抗する力とシール用スカート部16d部分の抵抗だけとなり、カップラー10の場合に比べ、付勢力を小さくすることができるとともに、小さな力で接続することができる。
なお、このカップラー30のソケットS30によってもすでに説明したカップラー10のソケットS10の場合と同様の作用効果を奏する。
【0079】
一方、カップラー30のプラグP30は、プラグ本体41の弁座部42の流路43の先端に弁座として円錐面のシール部42aが形成してあり、すでに説明した円筒内面のシール部22dと異なる構成となっている。
【0080】
これにともないピストンバルブ44の先端部の弁部44aも円錐面に形成してあり、円錐面の弁部44aをシール部42aに押圧することで閉弁状態にできるようにしてある。
なお、他の構成はすでに説明したカップラー10のプラグP10と同一である。
【0081】
このようなプラグP30では、ピストンバルブ44の弁部44aが摺動方向先端の円錐面であることから弁部の抵抗分がなく、ピストンバルブ44の開弁操作の操作力が金属製コイルばね25に抗する力とシール用スカート部24dの抵抗だけとなり、カップラー10のプラグP10の場合に比べ、付勢力を小さくすることができるとともに、小さな力で接続することができる。
なお、このカップラー30のプラグP30によってもすでに説明したカップラー10のプラグP10の場合と同様の作用効果を奏する。
【0082】
次に、この発明のカップラーのさらに他の一実施の形態について、図3により説明する。
図3はこの発明のカップラーの一実施の形態にかかり、(a)は接続前の状態の縦断面図、(b)は接続状態の縦断面図である。
【0083】
このカップラー50のソケットS50は、構成部品の全てが合成樹脂などの非金属材料としてあり、燃料電池の本体Fに一体もしくは別体として取り付けられる部材に形成された装着孔51の内周に装着される略2重円筒状のソケット本体52を備えており、外筒52aの外周が装着孔51に嵌合されている。
【0084】
このソケット本体52には、基端部に外筒52aおよび内筒52b間を仕切り部52cが設けてあり、内筒52b内が流路孔53とされ、この流路孔53の内周面が円錐状の弁座となるシール部52dとしてあり、下方に突き出す内筒先端がプラグPの操作部52eとしてある。
【0085】
このようなソケット本体52には、バルブ54が装着され、円錐状の弁座となるシール部52dに対応する円錐面の弁部54aを備え、その下方に内筒52b内面に沿って摺動する小径円柱状のガイド部54bが一体に形成してある。
【0086】
このバルブ54の基端部には、付勢手段を構成する皿ばね状の合成樹脂スプリング55が装着され、バルブ54を閉弁方向に付勢するようになっている。
【0087】
この皿ばね状の合成樹脂スプリング55は、中心装着部55aと外周の固定用リング部55bとが放射状の連結部55cで連結されて構成されている。
【0088】
そして、この合成樹脂スプリング55の固定用リング部55bをソケット本体52の外筒52aの基端部内周に装着するとともに、中心装着部55aをバルブ54の基端部に装着することで、連結部55cを撓ませてバルブ54の弁部54aを弁座となるシール部52dに押圧して閉弁状態にでき、この状態からバルブ54を押し戻すことで連結部54cをさらに撓ませて開弁状態にできるように構成してある。
【0089】
したがって、このようなソケットS50によれば、金属製のコイルばねを用いることなく、合成樹脂製のバルブ54およびこれを閉弁方向に付勢する付勢手段としての合成樹脂スプリング55を用いて構成することができ、金属との接触を嫌う液体のソケットSを簡単に実現することができる。
【0090】
次に、このようなソケットS50に嵌合連結されるプラグP50は、例えば金属製コイルばねを使用せずに構成部品の全てを非金属材料で構成したものが用いられる。
【0091】
このカップラー50のプラグP50は、燃料電池の燃料であるメタノールがいれられた容器のノズルの先端部(図中、上端部)外周に装着されるプラグ本体61を備えており、基端部の大径円筒部61aの内周部が容器BのノズルNに装着され、先端小径部61bがソケットS50のソケット本体52への嵌合連結部としてあり、小径部61bの外周面がソケット本体52の外筒52aの内周に嵌合され、小径部61b外周のリング状の突部61cとソケット本体52のリング状の溝部52fとによって嵌合連結状態を保持するようになっている。
【0092】
このプラグ本体61の内側には、弁座部材62が装着され、円板状のフランジ部62aが容器BのノズルN先端面に当てられるとともに、プラグ本体61の大径円筒部61aと小径部61bとを連結する円板部61d内面に当てられる。
【0093】
このフランジ部62aの上方に突き出してプラグ本体61の小径部61bの内周に嵌合される円筒状の取付部62bが一体に形成され、さらに流路となるスリット62cを介して中心部に円柱状の弁座部62dが上方に突き出して一体に形成してある。
【0094】
この弁座部62dはその円柱の外周側面が弁座とされるとともに、ソケットSの操作部としても兼用されるようになっている。
【0095】
このプラグP50のバルブ63は、合成樹脂などの弾性体で略逆中空円錐体状に成形され、尖った下端部に弁座部62dより小径の孔が形成されてその内周面が内側に突き出す弁部63aとされ、大径の上端部63bがプラグ本体61の先端部内周に取り付けてある。
【0096】
そして、このバルブ63の孔内周に突き出して構成した弁部63aを弁座部62dの円柱側面に配置することで、バルブ63自身の弾性力でシール状態として閉弁状態にでき、バルブ63の円錐側面63cをソケットS50の円筒状の操作部52eを挿し込んで外側に押し広げることで弁座部62dの円柱側面の弁座との間に隙間を形成して開弁状態にできるとともに、開弁状態に押し広げられるバルブ63の外周面をプラグ本体61の内周面に押し付けることで、プラグ本体61とのシールにも利用できるようになっている。
【0097】
また、このバルブ63の上端部を外側に突き出して取り付けてあり、カバーキャップ64を締め込む場合のパッキンと兼用するとともに、ソケットS50との連結の際にもソケット本体52の仕切り部52cに押し当ててシールできるようにしてある。
【0098】
したがって、このようなプラグP50によれば、金属製のコイルばねを用いることなく、バルブ63自身の弾性力で閉弁方向に付勢する付勢手段を構成することができ、金属との接触を嫌う液体のプラグP50を簡単に実現することができる。
【0099】
このようなソケットS50とプラグP50とで構成したカップラー50では、互いを嵌合連結状態にすると、まず、プラグ本体61の先端小径部61bの先端部がソケット本体52の内周面に接触して互いの嵌合連結が開始されるとともに、ソケット本体52の操作部52eの先端部がバルブ63の側面63cの内周と接触することで互いがシール状態となり、この状態では、ソケットS50の操作部52eでプラグP50のバルブ63の側面63cを押し広げるものの、バルブ63の弁部63aは円柱側面の弁座部62dとシール状態とされて閉弁状態が保持される一方、ソケットS50では、バルブ54の下面にプラグP50の操作部となる弁座部62dが接触せず、バルブ54はシール状態とされて閉弁状態が保持される。
【0100】
さらに、プラグP50がソケットS50に押し込まれると、ソケットS50とプラグP50のそれぞれの操作部52e、62dがバルブ54,63を開弁状態にする。
【0101】
すなわち、ソケットS50では、バルブ54の下面をプラグP50の操作部となる弁座部62dが押し上げて開弁状態とし、プラグP50では、ソケットS50の操作部52eでバルブ63の側面63cを押し広げることで、円柱側面の弁座部62dとの間に隙間が形成されて開弁状態となることで、プラグP50とソケットS50とが連通状態となる。
【0102】
そして、このプラグP50とソケットS50との嵌合連結状態がリング状の突部61cとリング状溝部52fとを係止することで保持することができ、金属製コイルばねを用いる場合に比べ、互いを引き離す力が小さく、小さな力で簡単に保持することができる。
【0103】
これにより、容器内のメタノールをスクイズすることで燃料電池Fのタンク内に加圧して供給することで、空間内の空気を一旦圧縮し、スクイズを止めることで、圧縮された空気を容器側に戻すようにしてメタノールを補充したり、容器ごと交換することもできる。
【0104】
次に、この発明のカップラーの他の一実施の形態について、図4により説明するが、すでに説明した実施の形態と同一部分には同一記号を記し、重複する説明は省略する。
図4はこの発明のカップラーの一実施の形態にかかるプラグのみを示す縦断面図である。
【0105】
このカップラー70では、プラグP70の弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段を金属製コイルばねに代えて、合成樹脂製コイルばね71を用いて構成したもので、構成部品の全てが非金属材料で構成してある。
【0106】
このカップラー70のプラグP70は、プラグ本体72を備えており、このプラグ本体72は、基端部に二重円筒状のボトル装着部72aが形成され、この内外筒の間のボトル装着部72aに容器BのノズルNが挿入される一方、先端部に小径円筒状のソケットSへの挿入部72bが一体に形成されて構成してある。
【0107】
このプラグ本体72の小径円筒状の挿入部72bの内周部には、円筒側面の弁座となるシール部72cが段差部72dを介して形成されるとともに、その下部に複数の縦溝が形成されたスリット部72eが設けてある。
【0108】
一方、このプラグ本体72内には、ピストンバルブ73が装着されており、このピストンバルブ73は、シール部72cに対応する外径のピストン部73aを備えるとともに、ピストン部73aの中心に円柱部が上下に突き出して一体に形成され、上部が操作部73bとされ、下部が合成樹脂製コイルばね71のガイド部73cとしてある。
【0109】
したがって、このプラグP70では、ピストンバルブ73のピストン部73aがプラグ本体72のシール部72cに位置することでシール状態となる閉弁状態にでき、ピストン部73aがシール部72cからスリット部72eに位置することでシール状態が開放されて開弁状態にすることができる。
【0110】
このようなピストンバルブ73を閉弁方向に付勢する付勢手段として合成樹脂製コイルばね71が用いられ、先端部がピストン部73aの下面に当てられる一方、基端部外周の係止突部71aがプラグ本体72の二重円筒部の内円筒の内周の係止溝72fに係止されて付勢力を付与できるようになっている。
【0111】
このようなプラグP70では、合成樹脂製コイルばね71が内容液と接することになるが、金属イオンを溶出することがなく、燃料電池のプラグPとして用いても問題がない。
【0112】
なお、このプラグP70は、すでに説明したいずれのソケットS(S10,S30,S50)と組み合わせてもカップラーを構成することができ、燃料電池Fにも用いることができる。
【0113】
以上、複数の実施の形態とともに、種々のソケットSとプラグPで構成されるカップラーについて説明したが、この発明のカップラーは、それぞれのソケットSとプラグPとをそれぞれ入れ替えて組み合わせて構成することが可能である。
【0114】
そこで、以下にいくつかの組み替えて構成したカップラーについて説明するが、すでに説明したソケットSやプラグPと同一部分については同一記号を記し説明は省略する。
【0115】
例えばカップラー80では、図5に示すように、ソケットSとして図1で説明したカップラー10のソケットS10のように金属製コイルばね17を弾性体ホルダ18内に収納する一方、プラグPをカップラー50のプラグP50ようにバルブ63を自身の弾性力で閉弁方向に付勢できるようにしたものを備えたもので構成してある。
【0116】
このようなカップラー80によれば、例えば燃料電池Fの本体側のカップラーであるソケットS10の閉弁方向への付勢を金属製コイルばね17を用いることで、繰り返し使用する場合の信頼性を高めることができ、カートリッジなどの容器Bのような数回〜10回程度の使用で済むプラグP50の閉弁方向への付勢をバルブ63自身の弾性力で行うようにすることで、部品点数を削減し、構造を簡素化できるとともに、コストを削減することができる。
【0117】
また、例えばカップラー90では、図6に示すように、ソケットS10の弁体を付勢する付勢手段として金属製コイルばね17を用いるのに代えて円柱状のゴムなどの弾性体81を用い、軸方向の撓みを利用して付勢力を付与するようにしたソケットS10′を用い、プラグPとしてはプラグP50を用いて構成してある。
【0118】
なお、この弾性体としては、例えば熱可塑性エラストマーやゴムを用いることができ、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー、エポキシ化スチレン系エラストマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー、水添スチレンブロックコポリマー、水添SBCコンパウンド、単純ブレンド型オレフィン系エラストマー、架橋型エラストマー、塩ビ系エラストマー、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイ、塩素化ポリエチレン系エラストマー、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマーを挙げることができる。
【0119】
また、ゴム(ASTMのゴム分類に基づくもの)として、M:ポリメチレンッタイプの飽和主鎖をもつゴム、例えばエチレンープロピレンージエン三元系共重合体、エチレンープロピレン共重合体、完全水素化アクリルニトリルーブタジエンゴム、フッ素ゴム、完全水素化スチレンーブタジエンゴム、完全水素化スチレンーイソプレンゴム、また、主鎖に酸素を持つゴム、例えばエピクロロヒドリンゴム、さらに主鎖にケイ素と酸素を持つゴム、例えばビニルメチルシリコーンゴム、また、天然ゴムやジエン系ゴムのように、主鎖に不飽和炭素結合を持つゴム、例えばブタジエンゴム、クロロプレンゴム、水素化アクリロニトリルーブタジエンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム、イソブテンーイソプレンゴム、天然ゴム、水素化スチレンーブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、水素化スチレンーイソプレンゴム、スチレンーイソプレンゴム、さらに主鎖に炭素、酸素、および窒素を持つゴム、例えばポリエーテルウレタン、また主鎖に酸素もしくはリンを持たないで窒素を持つゴム、さらに、主鎖に硫黄を持つゴム、例えばポリスルフィドゴム、また、主鎖にリンおよび窒素を持つゴム、例えばフォスファゼンゴムなどを挙げることができる。
【0120】
さらに、カップラー100では、図7に示すように、ソケットS10′として図1で説明したカップラー10のソケットS10のように金属製コイルばね17を弾性体ホルダ18内に収納したものとする一方、プラグP70′としてカップラー70のプラグP70と同一構成の合成樹脂製コイルばね71の弾性力で閉弁方向に付勢できるようにしたもので構成してある。
【0121】
なお、ソケットS10′の弁座部材13の先端中心部に操作部13eが設けてあり、ピストンバルブ16には、操作部13eの両側に突き出して2本の操作部16bが設けてある。
【0122】
このようなソケットS10′とプラグP70′との組み合わせによって構成したカップラー100でも、液体に金属イオンを溶出させることがなく、燃料電池のカップラーとして必要な条件を満たすものを一層簡単に構成することができる。
【0123】
なお、ここで説明した組み合わせ以外にも、ソケットSとプラグPの組み合わせを変えてカップラーを構成するようにしても良い。
【0124】
また、ソケットの付勢手段とプラグの付勢手段の強さのバランスを調整することにより、ソケットの弁体とプラグの弁体との開閉順序を制御することができる。
【0125】
例えばソケットの付勢手段をプラグの付勢手段より弱くし、接合時にはプラグより先にソケットの弁体が開き、解除する時には後で閉じるようにしておくと、接合解除時に外部に漏れる残液を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】この発明のカップラーの一実施の形態にかかり、(a)は接続前の状態の縦断面図、(b)は接続状態の縦断面図である。
【図2】この発明のカップラーの他の一実施の形態にかかり、(a)は接続前の状態の縦断面図、(b)は接続状態の縦断面図である。
【図3】この発明のカップラーの一実施の形態にかかり、(a)は接続前の状態の縦断面図、(b)は接続状態の縦断面図である。
【図4】この発明のカップラーの他の一実施の形態にかかるプラグのみを示す縦断面図である。
【図5】この発明のカップラーの一実施の形態にかかり、(a)は接続前の状態の縦断面図、(b)は接続状態の縦断面図である。
【図6】この発明のカップラーの他の一実施の形態にかかり、(a)は接続前の状態の縦断面図、(b)は接続状態の縦断面図である。
【図7】この発明のカップラーの一実施の形態にかかり、(a)は接続前の状態の縦断面図、(b)は接続状態の縦断面図である。
【図8】従来の連結装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0127】
10 カップラー
S10 ソケット
P10 プラグ
F メタノール燃料電池の本体側
11 装着孔
12 ソケット本体
13 弁座部材
13a 仕切り部
13b 流路孔
13c シール部
13d スリット部
14 Oリング
15 Oリング
16 ピストンバルブ
16a 弁部
16b 操作部
16c ばね装着部
16d シール用スカート部
17 金属製コイルばね
18 弾性体ホルダ
18a ガイド部
18b 流路
18c スリット
19 ロック用溝
21 プラグ本体
21a 基端大径円筒部
21b 先端小径部
22 弁座部
22a 小径部
22b 大径部
22c 円錐面
22d シール部
22e スリット部
23 流路
24 ピストンバルブ
24a 弁部
24b 細径部
24c 段差部
24d シール用のスカート部
24e ばね装着部
25 金属製コイルばね
26 弾性体ホルダ
26a 流路
26b スリット
26c ガイド部
27 ロックアーム
27a フック
30 カップラー
S30 ソケット
31 ソケット本体
31a 中心孔
31b 仕切り部
31c シール部
32 シール用パッキン
33 シール用パッキン
34 ピストンバルブ
34a 弁部
P30 プラグ
41 プラグ本体
42 弁座部
43 流路
44 ピストンバルブ
44a 弁部
50 カップラー
S50 ソケット
51 装着孔
52 ソケット本体
52a 外筒
52b 内筒
52c 仕切り部
52d シール部
52e 操作部
53 流路孔
54 バルブ
54a 弁部
54b ガイド部
55 合成樹脂製スプリング
55a 中心装着部
55b 固定用リング部
55c 連結部
P50 プラグ
61 プラグ本体
61a 大径円筒部
61b 先端小径部
61c リング状の突部
61d 円板部
62 弁座部材
62a フランジ部
62b 取付部
62c スリット
62d 弁座部
63 バルブ
63a 弁部
63b 大径の上端部
63c 円錐側面
64 カバーキャップ
70 カップラー
P70 プラグ
71 合成樹脂製コイルばね
72 プラグ本体
72a ボトル装着部
72b 挿入部
72c シール部
72d 段差部
72e スリット部
72f 係止溝
73 ピストンバルブ
73a ピストン部
73b 操作部
73c ガイド部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方の前記弁体の基端部に当該弁体が開閉方向に往復移動可能かつシール可能に装着される弾性体ホルダを設け、この弾性体ホルダに前記弁体を付勢する前記付勢手段を構成する弾性体を収納するとともに、この弾性体ホルダの外側に流路を形成したことを特徴とするカップラー。
【請求項2】
弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方の前記弁体を開閉方向に付勢する前記付勢手段を非金属材料で形成してなることを特徴とするカップラー。
【請求項3】
弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
前記ソケットと前記プラグとのいずれか一方の前記弁体の基端部に当該弁体が開閉方向に往復移動可能かつシール可能に装着される弾性体ホルダを設け、この弾性体ホルダに前記弁体を付勢する前記付勢手段を構成する弾性体を収納するとともに、この弾性体ホルダの外側に流路を形成し、
前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか他方の前記弁体を開閉方向に付勢する前記付勢手段を非金属材料で形成してなることを特徴とするカップラー。
【請求項4】
前記付勢手段を構成する前記弾性体を、金属製コイルばね、非金属製コイルばね、非金属製弾性部材のいずれかで構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカップラー。
【請求項5】
前記ソケットのソケット本体または前記プラグのプラグ本体に前記弁体が往復移動する弁座部材を設け、この弁座部材に前記弁体の先端外周面とでシールするシール部およびこれに隣接して流路となるスリット部を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカップラー。
【請求項6】
前記ソケットと前記プラグの少なくともいずれか一方に前記両弁体を開放して連通状態にする操作部を設けてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカップラー。
【請求項7】
前記プラグ本体に設けられる合成樹脂製の前記弁体を、略中空の逆円錐体状に形成するとともに先端部の中心孔の内周面をシール部とする一方、このシール部に接触する弁座部材の弁座部を円柱状に形成して前記プラグ本体に設けてなること特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカップラー。
【請求項8】
前記プラグ本体に設けられる合成樹脂製の前記弁体の基端部を、前記プラグ本体の先端面より突出させて当該プラグ本体に被せられるキャップの天面部と押圧シール可能に構成したことを特徴とする請求項1〜7のずれかに記載のカップラー。
【請求項9】
前記ソケットと前記プラグとの間に、嵌合連結状態を保持する連結保持手段を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のカップラー。
【請求項10】
前記ソケットと前記プラグとの連通経路が外部に対しシールされた後、前記ソケットの前記弁体および前記プラグの前記弁体とが連通可能に構成してあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のカップラー。
【請求項11】
前記カップラーがメタノール燃料電池本体と燃料用のメタノール容器との間に設けられて構成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のカップラー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−177492(P2006−177492A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373262(P2004−373262)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】