説明

カップリング化合物の製造方法およびカップリング触媒

【課題】貴金属系触媒を用いなくても、芳香族化合物とボロン酸類とのカップリング化合物を効率よく製造できる方法を提供する。
【解決手段】過酸化物、および非貴金属系遷移金属元素を含む触媒の存在下、芳香族化合物と有機ボロン酸類とを反応させる。このような方法により、芳香族化合物および有機ボロン酸類が、芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基との間で分子間脱離して炭素−炭素結合を形成したカップリング化合物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族化合物と有機ボロン酸類とがカップリングした化合物を製造する方法およびこの製造方法に用いる触媒(カップリング触媒)に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ボロン酸と芳香族化合物をカップリングさせて、カップリング化合物を得る代表的な方法として、鈴木カップリング反応(鈴木−宮浦カップリング反応)が知られている。鈴木カップリング反応では、塩基およびパラジウム触媒の存在下、芳香族ボロン酸とハロゲン化芳香族化合物とを反応させることにより、カップリング化合物(クロスカップリング化合物)を得ることができる。このように鈴木カップリング反応では、パラジウム触媒が必須であり、また、反応基質がハロゲン化芳香族化合物に限定される。
【0003】
このような鈴木カップリング反応様のカップリング方法として、種々の方法が開発されつつある。例えば、非特許文献1(J.Org.Chem,2003,68(2),578−580頁)には、芳香族ボロン酸と、大過剰のベンゼンとを、芳香族ボロン酸に対してマンガン化合物(酢酸マンガン)を3当量用いて、還流下で反応させ、カップリング化合物を得る方法が開示されている。この文献の方法では、マンガン化合物をボロン酸を酸化するための酸化剤として用いるため、多量のマンガン化合物が必要となる。
【0004】
また、非特許文献2(Angew.Chem.Int.Ed.,2008,47,8897−8900頁)には、芳香族ボロン酸とベンゼンとを、塩基、酸化剤としての量論量の鉄化合物(硫酸鉄など)および多官能含窒素配位子(1,5,7,10−テトラアザシクロペンタデカン)の存在下、反応させてカップリング化合物を得る方法が開示されている。しかし、この文献でも、鉄化合物を酸化剤として用いるため、多量の鉄化合物が必要となり、また、これに伴い、多量の含窒素配位子も必要となる。
【0005】
非特許文献3(J.Am.Chem.Soc,2010,132(38),13194−13196頁)には、芳香族複素環化合物(ピリジンなど)と芳香族ボロン酸とを、1当量のトリフルオロ酢酸、酸化剤として3当量のKおよび0.2当量の硝酸銀の存在下、水/塩化メチレン混合溶媒中で反応させ、カップリング化合物を得る方法が開示されている。しかし、この文献の方法では、触媒量でよいものの、高価な銀化合物を必要である。また、基質がピリジンのような電子不足の芳香族複素環化合物に限定される。
【0006】
また、非特許文献4(Org.Lett.,2010,12(12),2694−2697頁)には、芳香族複素環化合物(ピロールなど)と芳香族ボロン酸とを、酸化剤としての量論量の鉄化合物(硫酸鉄など)および多官能含窒素配位子(1,5,7,10−テトラアザシクロペンタデカン)の存在下、反応させ、カップリング化合物を得る方法が開示されている。そして、この文献には、空気中の酸素を酸化剤として用いることで、鉄化合物を触媒量に低減できることも開示されている。
【0007】
しかし、この文献の方法でも、基質がピロールやピリジンのような電子不足の芳香族複素環化合物に限定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Org.Chem,2003,68(2),578−580頁
【非特許文献2】Angew.Chem.Int.Ed.,2008,47,8897−8900頁
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc,2010,132(38),13194−13196頁
【非特許文献4】Org.Lett.,2010,12(12),2694−2697頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、芳香族化合物とボロン酸類とのカップリング化合物を効率よく製造できる方法およびこの方法に用いる触媒を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、幅広い芳香族化合物とボロン酸類との組み合わせにおいて、カップリング化合物を製造できる方法およびこの方法に用いる触媒を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、貴金属系触媒を用いなくても、効率よく芳香族化合物とボロン酸類とのカップリング化合物を製造できる方法およびこの方法に用いる触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の酸化剤としての過酸化物と触媒としての非貴金属系遷移元素(例えば、鉄)とを組み合わせると、鈴木カップリング反応のように貴金属系触媒を使用することなく、芳香族化合物とボロン酸類とのカップリング化合物を効率よく製造できること、また、この方法では、基質としての芳香族化合物がハロゲン化やトリフラート化されている必要や、ピリジンのような特定の芳香族複素環化合物である必要がなく、幅広い芳香族化合物とボロン酸類との組み合わせにおいてカップリング化合物が得られること、さらに、非貴金属系遷移元素を触媒として用いるため、触媒量(すなわち、金属使用量が少ない系)であっても、カップリング化合物を効率よく得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の方法では、過酸化物、および非貴金属系遷移金属元素を含む触媒の存在下、芳香族化合物と有機ボロン酸類とを反応(酸化的にカップリング反応)させ、芳香族化合物および有機ボロン酸類(例えば、芳香族ボロン酸類)が、芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基(又はボロン酸基)との間で分子間脱離して炭素−炭素結合を形成したカップリング化合物を製造する。
【0014】
前記過酸化物は、有機過酸化物(例えば、ジアルキルパーオキシドなど)であってもよい。前記過酸化物の割合は、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基1モルに対して、1モル以上であってもよい。
【0015】
また、前記非貴金属系遷移金属元素は、特に、鉄を含んでいてもよい。なお、前記触媒は、通常、非貴金属系遷移金属元素を、正のイオン価の金属として、非貴金属系遷移金属元素を含んでいてもよい。
【0016】
前記触媒は、さらに、配位子として含窒素有機化合物を含んでいてもよい。このような含窒素有機化合物は、代表的には、芳香族ポリアミンを含んでいてもよく、特に、ビピリジン類、ターピリジン類、およびフェナントロリン類から選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0017】
反応において、前記触媒の割合は、非貴金属系遷移金属元素換算で、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基1モルに対して、0.8モル以下であってもよい。
【0018】
本発明には、前記方法において用いる触媒、すなわち、芳香族化合物と有機ボロン酸類とを反応させ、芳香族化合物および有機ボロン酸類が、芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基との間で分子間脱離して炭素−炭素結合を形成したカップリング化合物を製造するための触媒であって、過酸化物と組み合わせて用いられ、非貴金属系遷移金属元素を含む触媒を含む。
【0019】
なお、本明細書中、「有機ボロン酸類」とは、有機基と、この有機基(又は有機基の炭素原子)に結合し、誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基(−B(OH))を少なくとも1つ有する化合物を意味する。また、本明細書中、「芳香族化合物」とは、芳香環に結合した水素原子を少なくとも1つ有する化合物を意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、特定の酸化剤と特定の金属元素を含む触媒とを組み合わせることにより、芳香族化合物とボロン酸類とのカップリング化合物を効率よく製造できる。特に、本発明の方法では、芳香族化合物がハロゲン化物や芳香族複素環化合物に限定されることがなく、幅広い芳香族化合物とボロン酸類との組み合わせにおいて、カップリング化合物を製造できる。また、本発明の方法では、非貴金属系遷移元素を触媒として用いることができるため、貴金属系触媒を用いなくても、さらには金属触媒の使用量が触媒量であっても、効率よく芳香族化合物とボロン酸類とのカップリング化合物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明では、過酸化物、および非貴金属系遷移金属元素(非貴金属系遷移金属触媒)を含む触媒の存在下、芳香族化合物と有機ボロン酸類(ボロン酸類)とを反応させ、芳香族化合物および有機ボロン酸類が、芳香族化合物の芳香環(又は芳香環を構成する炭素原子)に結合(直接結合)した水素原子と、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基との間で分子間脱離して炭素−炭素結合を形成[又は芳香族化合物と有機ボロン酸類の有機残基とが結合]したカップリング化合物(酸化カップリング化合物)を製造する。
【0022】
[芳香族化合物]
芳香族化合物(芳香環を有する化合物)は、芳香環(又は芳香環を構成する炭素原子)に結合(又は置換)した水素原子(分子間脱離に関与する水素原子)を有していればよく、単環式芳香族化合物又は多環式芳香族化合物であってもよく、芳香族炭化水素化合物(アレーン化合物)又はヘテロ原子含有芳香族化合物(ヘテロ環式芳香族化合物)であってもよい。
【0023】
芳香族化合物を構成する芳香環は、芳香族炭化水素環、芳香族複素環に大別できる。芳香族炭化水素環(又はアレーン環)としては、例えば、ベンゼン環、多環式芳香族炭化水素環{例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、フルオランテン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ペリレン環、ベンゾ[a]ピレン環、ベンゾ[e]ピレン環などの縮合2乃至6環式芳香族炭化水素環など)、複数の芳香族炭化水素環が直接結合又は連結基[例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、2−プロピリデン基などのC1−10アルキレン基(又はアルキリデン基))などの炭化水素基;エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、イミノ基(−NH−)、アミド基(−NHCOO−)、チオ基(−S−)、スルホニル基(−SO−)、スルフィニル基(−SO−)、オキシアルキレン基(例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基などのオキシC1−4アルキレン基)などのヘテロ原子含有連結基]を介して結合した芳香族炭化水素環(例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ターフェニル環などの2乃至6個のC6−10アレーン環が直接結合した芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
【0024】
芳香族複素環(又はヘテロアレーン環)としては、芳香環を構成する原子としてヘテロ原子(特に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子)を含む芳香環であればよく、例えば、単環式芳香族複素環[又は単環式ヘテロアレーン環、例えば、ピロール環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、アゾール環(例えば、ジアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環など)、ピラジン環など]、縮合多環式芳香族複素環[又は縮合多環式ヘテロアレーン環、例えば、チエノ[2,3−b]チオフェン環、インドール環、ベンゾ[b]フラン環、3,4−エチレンジオキシチオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾピラン環、キノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、キサンテン環、チアントレン環などの縮合2乃至6環式芳香族複素環]、少なくとも芳香族複素環を含む複数の芳香環(芳香族炭化水素環を含む)が直接結合又は連結基(前記例示の連結基など)を介して結合した芳香環[例えば、複数の芳香族複素環同士が結合した芳香環(例えば、ビピリジル環、ビフリル環、ターピリジン環、ビチオフェン環、ターチオフェン環などの2乃至6個の芳香族複素環が直接結合した芳香環など)など]などが挙げられる。
【0025】
芳香族化合物は、芳香環(芳香環骨格)を有している限り、置換基(芳香環に置換した置換基)を有していてもよい。置換基(誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基でない置換基)としては、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(メチル、エチル、ブチル、t−ブチル基、ペンチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基)、ハロアルキル基(トリクロロメチル、トリフルオロメチル、テトラフルオロプロピル基などのハロC1−4アルキル基など)、アルケニル基(ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル基などのC2−6アルケニル基、好ましくはC2−4アルケニル基)、アリール基(フェニル基などのC6−14アリール基)、アラルキル基(ベンジル、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基)など]、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、ヒドロキシル基、メルカプト基、(チオ)エーテル基[例えば、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ、t−ブトキシ基などのC1−6アルコキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基などの上記アルコキシ基に対応するC1−6アルキルチオ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)など]、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC1−10アルキル基)、アシル基[ホルミル基、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル基などのC1−6アルキル−カルボニル基)、アロイル基(例えば、ベンゾイル基など)など]、カルボキシル基、エステル基[例えば、アルコキシ−カルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル基などのC1−6アルコキシ−カルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基など)など]、アミノ基、置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのアルキルアミノ基)、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、これらの置換基同士が結合した置換基[例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基などのC1−4アルコキシC6−10アリール基)など]などが挙げられる。芳香族化合物(又は芳香環)は、これらの置換基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0026】
このような置換基を有する芳香族化合物において、置換基の数は、芳香族骨格の種類にもよるが、例えば、1〜8、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4程度であってもよい。特に、置換基を有する単環式芳香環(ベンゼン環又は単環式芳香族複素環)において、置換基の置換数は、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2程度であってもよい。
【0027】
なお、芳香族化合物は、前記のように、芳香環に直接結合した水素原子を少なくとも1つ有するが、このような水素原子の数は、特に限定されず、例えば、1以上(例えば、1〜30)、好ましくは2〜25(例えば、2〜22)、さらに好ましくは3〜20(例えば、3〜18)程度であってもよく、通常2〜15(例えば、3〜12)程度であってもよい。なお、芳香族化合物が、複数の水素原子を有していても、すべての水素原子が分子間脱離に関与する必要はなく、少なくとも1個の水素原子が分子間脱離すればよい。
【0028】
代表的な芳香族化合物としては、芳香族炭化水素化合物、芳香族複素環化合物などが挙げられる。芳香族炭化水素化合物(又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素)としては、例えば、単環式芳香族炭化水素化合物{又は置換基を有していてもよい単環式芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、置換基を有するベンゼン[例えば、アルキルベンゼン(例えば、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼンなどのモノ乃至テトラC1−10アルキルベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラC1−6アルキルベンゼン、さらに好ましくはモノ乃至トリC1−4アルキルベンゼン)、アルコキシベンゼン(例えば、アニソール、エトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、トリメトキシベンゼンなどのモノ乃至テトラC1−10アルコキシベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラC1−6アルコキシベンゼン、さらに好ましくはモノ乃至トリC1−4アルコキシベンゼン)、アシルベンゼン(例えば、アセトフェノンなどのC1−10アシルベンゼン)、ハロベンゼン(例えば、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、トリブロモベンゼンなど)、ハロアルキルベンゼン(例えば、モノ、ジ又はトリ(トリフルオロメチル)ベンゼンなど)、ハロ−アルキルベンゼン(例えば、クロロトルエンなど)、ヒドロキシベンゼン(例えば、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼンなど)、アルキル−ヒドロキシベンゼン(例えば、クレゾール、キシレノールなどのC1−10アルキル−ヒドロキシベンゼン)、ハロ−アルコキシベンゼン(例えば、クロロアニソールなどのハロ−C1−10アルコキシベンゼン)、カルボキシベンゼン(安息香酸など)、アルコキシカルボニルベンゼン(例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどのC1−10アルコキシ−カルボニルベンゼン)、アシルベンゼン(例えば、アセトフェノンなどのC1−10アシル−ベンゼン)、ベンゾニトリル、アニリン、アニリド(例えば、アセトアニリドなどのN−C1−10アシルアニリン)など]など}、多環式芳香族炭化水素化合物{又は置換基を有していてもよい多環式芳香族炭化水素、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素(例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、フルオランテン、トリフェニレン、ナフタセン、ペリレン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]ピレンなどの縮合2乃至6環式芳香族炭化水素など)、複数の芳香族炭化水素が直接結合又は連結基を介して結合した化合物[例えば、ビフェニル、フェニルナフタレン、ターフェニルなどの2乃至6個のC6−10アレーンが直接結合した化合物(ビス乃至テトラキスアリールなど)など]、置換基を有する多環式芳香族炭化水素[例えば、置換基を有する縮合多環式芳香族炭化水素(例えば、アルコキシ縮合多環式アレーン(例えば、メトキシナフタレンなどのC1−10アルコキシ−縮合2乃至6環式芳香族炭化水素など)、ハロ縮合多環式アレーン(例えば、クロロナフタレンなどのハロ縮合2乃至6環式芳香族炭化水素)などの前記置換基を有するベンゼンに対応する多環式芳香族炭化水素)など]など}などが挙げられる。
【0029】
芳香族複素環化合物としては、例えば、単環式芳香族複素環化合物{又は置換基を有していてもよい単環式ヘテロアレーン、例えば、ピロール、ピリジン、ピリミジン、フラン、チオフェン、アゾール(例えば、ジアゾール、オキサゾール、チアゾールなど)、ピラジンなどの単環式ヘテロ環式アレーン;アルキルフラン(例えば、2又は3−メチルフラン、2又は3−ペンチルフランなどのC1−10アルキルフラン)、アルキルチオフェン(例えば、2又は3−メチルチオフェンなどのC1−10アルキルチオフェン)、アルコキシチオフェン(例えば、2又は3−メトキシチオフェンなどのC1−10アルコキシチオフェン)、ハロチオフェン(例えば、2又は3−クロロチオフェン、2又は3−ブロモチオフェンなど)、アシルチオフェン(例えば、2又は3−チオフェンカルバルデヒド、2又は3−アセチルチオフェンなどのC1−10アシル−チオフェン)、チオフェンカルボン酸、アルコキシカルボニルチオフェン(例えば、2又は3−チオフェンカルボン酸メチルなど)などの前記例示の置換基を有する単環式ヘテロアレーン}、多環式芳香族複素環化合物{又は置換基を有していてもよい多環式ヘテロアレーン、例えば、縮合多環式芳香族複素環化合物[例えば、チエノ[2,3−b]チオフェン、インドール、ベンゾ[b]フラン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾピラン、キノリン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、キサンテン、チアントレンなどの縮合2乃至6環式ヘテロ環式アレーン;N−アルキルインドール(例えば、N−メチルインドールなどのN−C1−4アルキルインドール)などの前記例示の置換基を有する縮合2乃至6環式ヘテロ環式アレーンなど]、環集合芳香族複素環化合物(例えば、ビピリジル、ビフリル、ターピリジン、ビチオフェン、ターチオフェンなどの2乃至6個の芳香族複素環化合物が直接結合した化合物;これらの化合物に前記置換基が置換した化合物など)など}などが挙げられる。
【0030】
本発明では、基質(反応基質)として、幅広い芳香族化合物を使用できるが、比較的活性な(又は活性化された)芳香族化合物[例えば、芳香族複素環化合物や芳香環を強く活性化させる置換基(例えば、アミノ基、置換アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、アルコキシ基など)を有する芳香族化合物など]でなくても、有機ボロン酸類とのカップリング化合物を効率よく得ることができる。
【0031】
なお、本発明では、芳香族化合物として、ハロゲン原子により置換された化合物を使用することもできるが、鈴木カップリング反応のように芳香環に直接結合したハロゲン原子の脱離は生じず、水素原子の脱離によりカップリング化合物が生成する。そのため、ハロゲン原子を置換基に有するカップリング化合物を得ることもできる。
【0032】
[有機ボロン酸類]
有機ボロン酸類には、有機ボロン酸の他、有機ボロン酸の誘導体[又は有機ボロン酸のジヒドロキシボリル基(−B(OH))が誘導体化された有機ボロン酸]などが含まれる。すなわち、有機ボロン酸類は、有機基(脂肪族基又は芳香族基)に結合(直接結合)した誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基(単にジヒドロキシボリル基、ボロン酸基、誘導体化されていてもよいボロン酸基などということがある)を有する化合物である。有機ボロン酸類において、このようなボロン酸基の数は、1個であっても、複数(例えば、2〜6個、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個程度)であっても(すなわち、ポリボロン酸類であっても)よく、特に1個(すなわち、モノボロン酸)であってもよい。
【0033】
なお、有機ボロン酸の誘導体としては、前記芳香族化合物とカップリング可能であれば特に限定されず、例えば、有機ボロン酸エステル{例えば、ジアルキルエステル(例えば、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジイソプロピルエステル、ジブチルエステルなどのジC1−6アルキルエステル)、ジオール[例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ピナコール(2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールなどのC2−10アルカンジオール)などの脂肪族ジオール;ジヒドロキシアレーン(例えば、1,2−ジヒドロキシベンゼン)などの芳香族ジオール]とのジエステルなど}、有機ボロン酸の環状3量体(又はボロキシン)などが含まれる。なお、ジオールとのジエステルでは、有機ボロン酸の2つのヒドロキシ基がジオールの2つのヒドロキシル基とボロン酸エステル(ボロネート)を形成しており、例えば、ピナコールとのジエステルでは有機ボロン酸のジヒドロキシボリル基が下記式で表される基に誘導体化されている。
【0034】
【化1】

【0035】
有機ボロン酸類は、脂肪族ボロン酸類{又は非芳香族ボロン酸類、例えば、飽和脂肪族ボロン酸[例えば、アルキルボロン酸(例えば、メチルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、ヘキシルボロン酸、テトラデシルボロン酸、オクタデシルボロン酸、ブロモメチルボロン酸などのC1−20アルキルボロン酸など)、シクロアルキルボロン酸(例えば、シクロヘキシルボロン酸などのC4−10シクロアルキルボロン酸)など]、不飽和脂肪族ボロン酸[例えば、アルケニルボロン酸(例えば、ビニルボロン酸などのC2−20アルケニルボロン酸など)など]、これらの誘導体(ボロン酸エステルなど)など}、芳香族ボロン酸類に大別でき、これらのいずれを使用してもよいが、特に、芳香族ボロン酸類を好適に使用してもよい。
【0036】
芳香族ボロン酸類は、芳香環(又は芳香族基)に直接結合したボロン酸基を有する化合物であり、芳香族ボロン酸、芳香族ボロン酸の誘導体(前記例示の誘導体など)が含まれる。芳香族ボロン酸類を構成する芳香環としては、前記芳香族化合物の項で例示の芳香環が挙げられる。
【0037】
また、芳香族ボロン酸類は、芳香環に置換基を有していてもよい。置換基(ボロン酸基でない置換基)としては、前記芳香族化合物の項で例示の置換基が挙げられる。置換基の数もまた、前記と同様の範囲から選択できる。なお、芳香環に置換するボロン酸基と置換基との位置関係は、特に限定されず、例えば、ベンゼン環であれば、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。
【0038】
代表的な芳香族ボロン酸類としては、アレーンボロン酸類(芳香族炭化水素のボロン酸類)、ヘテロアレーンボロン酸類(芳香族複素環のボロン酸類)などが挙げられる。アレーンボロン酸類(又はアリールボロン酸類)としては、単環式アレーンボロン酸類{例えば、フェニルボロン酸、置換基を有するフェニルボロン酸[例えば、アルキルフェニルボロン酸(例えば、メチルフェニルボロン酸(2,3又は4−メチルフェニルボロン酸)、エチルフェニルボロン酸、イソプロピルフェニルボロン酸、ブチルフェニルボロン酸、t−ブチルフェニルボロン酸、ペンチルボロン酸、ジメチルフェニルボロン酸などのモノ乃至テトラC1−10アルキルフェニルボロン酸)、アルコキシフェニルボロン酸(例えば、メトキシフェニルボロン酸、エトキシフェニルボロン酸、イソプロポキシフェニルボロン酸、ジメトキシフェニルボロン酸などのモノ乃至テトラC1−10アルコキシフェニルボロン酸)、アルキルチオフェニルボロン酸(例えば、2,3又は4−メチルチオフェニルボロン酸などのモノ乃至テトラC1−10アルキルチオフェニルボロン酸)、アシルフェニルボロン酸(例えば、ホルミルフェニルボロン酸、アセチルフェニルボロン酸などのC1−10アシルフェニルボロン酸)、ハロフェニルボロン酸(例えば、フルオロフェニルボロン酸、クロロフェニルボロン酸、ブロモフェニルボロン酸、ジクロロフェニルボロン酸、ジフルオロフェニルボロン酸、トリフルオロフェニルボロン酸など)、ハロアルキルフェニルボロン酸(例えば、モノ、ジ又はトリ(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、ブロモメチルボロン酸など)、ハロ−アルキルフェニルボロン酸(例えば、フルオロ−メチルフェニルボロン酸など)、ヒドロキシフェニルボロン酸(例えば、2,3又は4−ヒドロキシフェニルボロン酸など)、ヒドロキシアルキルフェニルボロン酸(例えば、ヒドロキシメチルフェニルボロン酸などのヒドロキシC1−10アルキルフェニルボロン酸)、カルボキシフェニルボロン酸(例えば、2,3又は4−カルボキシフェニルボロン酸など)、ハロ−アルコキシフェニルボロン酸(例えば、クロロ−メトキシフェニルボロン酸などのハロ−C1−10アルコキシフェニルボロン酸)、アルコキシカルボニルフェニルボロン酸(例えば、メトキシカルボニルフェニルボロン酸、エトキシカルボニルフェニルボロン酸などのC1−10アルコキシ−カルボニルフェニルボロン酸)、シアノフェニルボロン酸(例えば、2,3又は4−シアノフェニルボロン酸)、シアノ−アルキルフェニルボロン酸(シアノ−メチルフェニルボロン酸などのシアノ−C1−10アルキルフェニルボロン酸)、シアノ−ハロフェニルボロン酸(シアノ−フルオロフェニルボロン酸など)、ニトロフェニルボロン酸(例えば、2,3又は4−ニトロフェニルボロン酸)、ニトロ−カルボキシフェニルボロン酸、アミノフェニルボロン酸、置換アミノフェニルボロン酸(例えば、N,N−ジメチルアミノフェニルボロン酸などのN,N−ジアルキルアミノフェニルボロン酸;N,N−ジフェニルアミノフェニルボロン酸などのN,N−ジアリールアミノフェニルボロン酸)など]、これらの誘導体など}、多環式アレーンボロン酸類{例えば、縮合多環式アレーンボロン酸(例えば、ナフタレンボロン酸、アントラセンボロン酸、フェナントレンボロン酸、ピレンボロン酸、フルオレンボロン酸、9,9−ジメチルフルオレンボロン酸などの縮合2乃至6環式アレーンボロン酸など)、複数のアレーン環が直接結合又は連結基を介して結合した多環式アレーンのボロン酸[例えば、ビフェニルボロン酸、ターフェニルボロン酸、ナフチルフェニルボロン酸、ブロモビフェニルボロン酸などの2乃至6個のC6−10アレーンが直接結合したアレーンのボロン酸など]、これらの誘導体など}、これらに対応するポリボロン酸類{例えば、アレーンジボロン酸(例えば、ベンゼンジボロン酸など)、多環式アレーンジボロン酸[例えば、ビフェニルジボロン酸(4,4’−ビフェニルジボロン酸など)など]、これらの誘導体など}などが挙げられる。
【0039】
ヘテロアレーンボロン酸類としては、例えば、単環式ヘテロアレーンボロン酸類{例えば、ピリジンボロン酸、ピリミジンボロン酸、フランボロン酸、チオフェンボロン酸;アルコキシピリジンボロン酸(例えば、メトキシピリジンボロン酸などのC1−10アルコキシピリジンボロン酸)、ハロピリジンボロン酸(例えば、フルオロピリジンボロン酸、クロロピリジンボロン酸、ブロモピリジンボロン酸、ジフルオロピリジンボロン酸など)、アシルフランボロン酸(例えば、ホルミルフランボロン酸などのC1−10アシルフランボロン酸)、アルキルチオフェンボロン酸(例えば、メチルチオフェンボロン酸などのC1−10アルキルチオフェンボロン酸)、アシルチオフェンボロン酸(例えば、ホルミルチオフェンボロン酸、アセチルチオフェンボロン酸などのC1−10アシル−チオフェンボロン酸)、ハロチオフェンボロン酸(例えば、クロロチオフェンボロン酸、ブロモチオフェンボロン酸など)などの前記例示の置換基を有する単環式ヘテロアレーンボロン酸、これらの誘導体など}、多環式ヘテロアレーンボロン酸類{例えば、縮合多環式ヘテロアレーンボロン酸[例えば、ベンゾフランボロン酸、ベンゾチオフェンボロン酸、ジベンゾチオフェンボロン酸、3,4−(メチレンジオキシ)フェニルボロン酸、キノリンボロン酸などの縮合2乃至6環式ヘテロ環式アレーンボロン酸類]、環集合ヘテロアレーンボロン酸類(例えば、ビチオフェンボロン酸などの2乃至6個のヘテロアレーンが直接結合したアレーンのボロン酸)、これらの誘導体など}、これらに対応するポリボロン酸類などが挙げられる。
【0040】
なお、反応において、芳香族化合物と有機ボロン酸類との割合は、芳香族化合物における水素原子の数、有機ボロン酸類のボロン酸基の数、芳香族化合物とカップリングさせる有機ボロン酸類の数などに応じて選択できる。例えば、主に芳香族化合物の1個の水素原子をカップリングに供する場合、芳香族化合物の使用割合は、有機ボロン酸類のボロン酸基1モルに対して、1モル以上(例えば、1.2〜500モル)、好ましくは過剰モル[例えば、1.5モル以上(例えば、1.5〜300モル)、さらに好ましくは2モル以上(例えば、3〜200モル)]であってもよい。また、過剰の芳香族化合物を溶媒として用いてもよい。
【0041】
[過酸化物]
本発明では、酸化剤として少なくとも過酸化物を用いる。過酸化物としては、例えば、過酸化水素、ペルオキソ化合物[例えば、過酸化塩(例えば、過酸化ナトリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化カリウムなどの過酸化アルカリ又はアルカリ土類金属塩)、過酸(例えば、過硫酸、過リン酸などのオキソ酸の過酸)、過酸塩(例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、過硫酸アンモニウムなどの過酸のアンモニウム塩など)など]、有機過酸化物が含まれる。
【0042】
有機過酸化物(又はペルオキシド)としては、例えば、ヒドロパーオキシド[例えば、アルキルヒドロパーオキシド(t−ブチルヒドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキシドなどのC1−10アルキルヒドロパーオキシド)、アルカンジヒドロパーオキシド(例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキシドなど)、アラルキルヒドロパーオキシド(例えば、クメンヒドロパーオキシドなど)など]、ジアルキルパーオキシド(例えば、過酸化ジエチル、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−アミルパーオキシドなどのジC1−10アルキルパーオキシド;ジクミルパーオキシドなどのジアラルキルパーオキシド;t−ブチル−クミルパーオキシドなどのアルキル−アラルキルパーオキシド)、ジアシルパーオキシド[例えば、過酸化ジアセチル、ラウロイルパーオキシドなどのジアルカノイルパーオキシド(ジC1−18アルカノイルパーオキシドなど);ベンゾイルパーオキシド、4−クロロベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルトルイルパーオキシド、トルイルパーオキシドなどのジアロイルパーオキシド(ジC7−12アロイルパーオキシドなど)など]、ジ(アルキルパーオキシ)アルカン[例えば、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタンなどのジ(C1−10アルキルパーオキシ)C1−10アルカン]、ジ(アルキルパーオキシ)シクロアルカン[例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのジ(C1−10アルキルパーオキシ)C5−10シクロアルカン]、ジ(アルキルパーオキシアルキル)アレーン[例えば、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン,1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジ(C1−10アルキルパーオキシC1−4アルキル)C6−10アレーン]、ジ(アルキルパーオキシ)アルキン[例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3など]、ジ(アシルパーオキシ)アルカン(例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサンなど)、過酸[例えば、過アルカン酸(例えば、過ギ酸、過酢酸などのC1−18過アルカン酸)、過アレーンカルボン酸(例えば、過安息香酸、過フタル酸など)など]、過酸エステル[例えば、過酸アルキルエステル(例えば、過酢酸t−ブチル、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシデカノエート、t−ブチルパーオキシラウレートなどの過アルカン酸アルキルエステル(C1−18過アルカン酸C1−6アルキルエステルなど);t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどの過アレーンカルボン酸アルキルエステル(C1−6アルキルエステルなど)など]、ケトンパーオキシド(例えば、メチルイソブチルケトンパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシドなど)、パーオキシカーボネート[例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート;ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのジアルコキシアルキルパーオキシジカーボネート;ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシカーボネートなどのジシクロアルキルパーオキシカーボネートなど]などが含まれる。
【0043】
過酸化物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0044】
これらのうち、好ましい過酸化物には、有機過酸化物(例えば、アルキルヒドロパーオキシド、ジアルキルパーオキシドなど)が含まれ、特に、分岐アルキルパーオキシド[例えば、分岐アルキルヒドロパーオキシド(t−ブチルヒドロパーオキシドなどの分岐C3−6アルキルヒドロパーオキシド)、ジ分岐アルキルパーオキシド(ジt−ブチルパーオキシドなどのジ分岐C3−6アルキルパーオキシド)など]が好ましい。
【0045】
過酸化物(又は酸化剤)の割合は、理論量以上であればよく、有機ボロン酸類のボロン酸基1モルに対して、例えば、1モル以上(例えば、1.1〜10モル)、好ましくは1.2モル以上(例えば、1.3〜8モル)、さらに好ましくは1.5モル以上(例えば、1.7〜5モル)程度であってもよい。
【0046】
なお、酸化剤は、過酸化物のみで構成してもよく、本発明の効果を害しない範囲であれば、過酸化物を酸化剤の主成分として、他の酸化剤[例えば、硝酸、硫酸、過ハロゲン酸又はその塩(過塩素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウムなど)、金属酸又はその塩(過マンガン酸、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、二クロム酸カリウムなど)、ルイス酸(三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、五塩化アンチモンなど)、酸素、酸化窒素(四酸化二窒素など)、アゾ化合物など]などを使用してもよい。
【0047】
[触媒]
触媒は、触媒成分として、少なくとも非貴金属系遷移金属元素(又は非貴金属系遷移金属触媒)を含む。すなわち、触媒(非貴金属系遷移金属触媒)は、非貴金属系遷移金属元素(又は遷移金属成分)で構成されている。非貴金属系遷移金属元素(単に、遷移金属元素ということがある)としては、例えば、周期表第3族元素[又は周期表第3族金属、以下同じ。Sc、Y、ランタノイド(La、Ce、Pr、Nd、Smなど)、アクチノイド]、周期表第4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、周期表第5族元素(V、Nb、Taなど)、周期表第6族元素(Cr、Mo、Wなど)、周期表第7族元素(Mn、Tc、Reなど)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、周期表第12族元素(Znなど)などが例示できる。触媒は、これらの遷移金属元素を単独で又は二種以上含んでいてもよい。
【0048】
これらの遷移金属元素のうち、特に、鉄が好ましい。そのため、触媒は、少なくとも鉄を含んでいてもよい。
【0049】
なお、触媒に含まれる遷移金属元素の酸化数(又は価数又はイオン価)は、特に制限されず、元素の種類に応じて、例えば、0(又は0価)、+1(又は1価)、+2(又は2価)、+3(又は3価)、+4(又は4価)などであってもよく、通常、触媒は、酸化数(又は価数又はイオン価)が正の形態で(又は遷移金属化合物又はイオン結合性化合物として)遷移金属元素を含んでいる場合が多い。例えば、鉄の酸化数は、2又は3価である場合が多く、特に、3価の鉄(Fe3+)を好適に使用してもよい。なお、原料や前駆体として用いる遷移金属元素の価数は、反応系において所望の価数に変換(酸化又は還元)できれば、特に限定されない。例えば、原料又は前駆体として用いたより小さい価数の鉄(例えば、0価、2価などの鉄)を反応系において酸化し、3価の鉄を生じさせてもよい。
【0050】
触媒を構成する遷移金属元素は、金属単体であってもよいが、通常、遷移金属化合物(遷移金属元素を含む化合物)の形態で触媒に含まれていてもよい。なお、遷移金属化合物(錯体など)は、反応系中で生成させてもよい。
【0051】
遷移金属化合物としては、例えば、無機塩[又は無機化合物、例えば、無機酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、過塩素酸塩などの過ハロゲン酸塩、クロム酸塩など)、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、酸化物、硫化物、水酸化物など]、有機酸塩{例えば、スルホン酸塩[例えば、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩などのアルカンスルホン酸塩(C1−10アルカンスルホン酸塩など);トリフルオロメタンスルホン酸塩などのハロアルカンスルホン酸塩(ハロC1−4アルカンスルホン酸塩など);ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などのアレーンスルホン酸塩(C6−10アレーンスルホン酸塩など)]、カルボン酸塩[例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩などのカルボン酸塩(C1−12アルカン酸塩など);ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩などのハロアルカン酸塩(ハロC1−4アルカン酸塩など)など]など}などが含まれる。なお、遷移金属化合物は、反応系において生じさせることができれば、原料や前駆体として用いる遷移金属化合物やその価数は特に限定されない。例えば、トリフルオロメタンスルホン酸塩は、反応系において、トリフルオロメタンスルホン酸を存在させ、トリフルオロメタンスルホン酸塩以外の他の遷移金属化合物から生じさせてもよい。
【0052】
また、遷移金属元素は、錯体(又は錯塩)の形態で触媒に含まれていてもよい。錯体を構成する配位子としては、例えば、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)、アシル基(C1−4アシル基など)、アルコキシカルボニル基(C1−4アルコキシカルボニル基など)、アセチルアセトナト、シクロアルカジエニル基(シクロペンタジエニル基、シクロオクタジエニル基など)、ベンジリデン基、ビニリデン基、ベンジリデンアセトン、ベンジリデンアセチルアセトナト、ベンジリデンアセトフェノン、シクロアルカジエン(シクロオクタジエンなど)、芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、シメン、クメン、キシレン、ナフタレンなど)、ハロゲン原子、CO、CN、酸素原子、HO(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなど)、ホスファイト(トリフェニルホスファイトなど)、NH(アンミン)、NO、NO(ニトロ)、NO(ニトラト)、含窒素有機化合物、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)などが挙げられる。
【0053】
含窒素有機化合物としては、アミン、イミン(シッフ塩基)などが挙げられる。アミンは、第1〜3級アミンのいずれであってもよいが、好ましいアミンには、アミンを構成する窒素原子が、sp窒素であるアミンが含まれる。このようなsp窒素を有するアミンには、後述するように、芳香族窒素環化合物(芳香族ヘテロ環を構成するヘテロ原子が窒素原子である芳香族化合物)などが含まれる。
【0054】
また、アミンは、1つのアミノ基を有するアミン(すなわち、モノアミン)であってもよく、複数のアミノ基(又はイミノ基)を有するアミン(すなわち、ポリアミン)であってもよい。好ましいアミンはポリアミンである。特に好ましいポリアミンには、錯体(又は配位化合物)において、多座配位子として分類されるポリアミンが含まれる。
【0055】
イミンもまた、1つの炭素−窒素二重結合を有していてもよく、複数の炭素−窒素二重結合(又はイミノ基)を有するイミン(ポリイミン)であってもよい。好ましいイミンはポリイミンであり、特に好ましいポリイミンには、錯体(又は配位化合物)において、多座配位子として分類されるポリイミンなどが含まれる。
【0056】
代表的なアミンとしては、脂肪族アミンと芳香族アミンとに大別される。脂肪族アミンとしては、例えば、脂肪族モノアミン[例えば、アルキルアミン(例えば、エチルアミンなどのC1−10アルキルアミン)などの脂肪族第1級モノアミン;ジアルキルアミン(例えば、ジメチルアミンなどのジC1−10アルキルアミン)、アザシクロアルカン(例えば、ピペリジン、モルホリンなど)などの脂肪族第2級モノアミン;トリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン)、トリシクロアルキルアミン(トリシクロヘキシルアミンなど)、アルキルジシクロアルキルアミン(例えば、メチルジシクロヘキシルアミンなど)などの脂肪族第3級モノアミン]、脂肪族ポリアミン[例えば、アルカンジアミン(例えば、エチレンジアミンなどのC2−10アルカンジアミン)、ポリアルカンジアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど)などの脂肪族第1級ポリアミン;N,N’−ジアルキルアルカンジアミン(例えば、N,N’−ジメチルエチレンジアミンなどのN,N’−ジC1−4アルキルC2−10アルカンジアミン)、ポリアザシクロアルカン(例えば、ピペラジン、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンなどのジ乃至テトラアザシクロアルカン;)などの脂肪族第2級ポリアミン;N,N,N’,N’−テトラアルキルアルカンジアミン(例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどのN,N,N’,N’−テトラC1−4アルキルC2−10アルカンジアミン)、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタアルキルジアルキレントリアミン(例えば、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンなどのN,N,N’,N’’,N’’−ペンタC1−4アルキルジC2−4アルキレントリアミン)、N,N’,N’’−トリアルキルトリアザシクロアルカン(例えば、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンなどのN,N’,N’’−トリC1−4アルキルトリアザシクロアルカン)などの脂肪族第3級ポリアミン]などが挙げられる。
【0057】
芳香族アミンは、芳香族モノアミン(例えば、ピリジンなど)であってもよいが、通常、芳香族ポリアミンであってもよい。芳香族ポリアミンには、芳香族第3級ポリアミン、例えば、環集合芳香族窒素環化合物{例えば、ビピリジン類[又は置換基を有していてもよいビピリジン、例えば、ビピリジン(2,2’−ビピリジンなど);アルキルビピリジン(例えば、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、などのC1−4アルキルビピリジン)、アリールビピリジン(例えば、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジンなどのC6−10アリールビピリジン)、アルコキシビピリジン(例えば、4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジンなどのC1−4アルコキシビピリジン)、ハロゲン原子を有するビピリジン[例えば、ハロアルキルビピリジン(例えば、4,4’−ジトリフルオロメチル−2,2’−ビピリジンなどのハロC1−4アルキルビピリジン)など]、ニトロビピリジン(例えば、4,4’−ジニトロ−2,2’−ビピリジンなど)、カルボキシビピリジン(例えば、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンなど)、ジアルキルアミノビピリジン(例えば、4,4’−ジメチルアミノ−2,2’−ビピリジンなどのC1−4アルキルアミノビピリジン)、ヒドロキシビピリジン(例えば、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジンなど)などの置換基(前記例示の置換基など)を有するビピリジン]、ターピリジン類[又は置換基を有していてもよいターピリジン、例えば、ターピリジン(2,2’:6’,2’’−ターピリジンなど)、置換基を有するターピリジン(前記置換基を有するビピリジンに対応するターピリジン)]、クアテルピリジン類[又は置換基を有していてもよいクアテルピリジン、例えば、クアテルピリジン(2,2’:6’,2’’:6’’,2’’’−クアテルピリジンなど)、置換基を有するクアテルピリジン(前記置換基を有するビピリジンに対応するターピリジン)]などの芳香族窒素環が複数直接結合した化合物など}、縮合多環式芳香族窒素環化合物{例えば、フェナントロリン類[又は置換基を有していてもよいフェナントロリン、例えば、フェナントロリン(1,10−フェナントロリンなど);アルキルフェナントロリン(例えば、4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリンなどのC1−4アルキルフェナントロリン)、アリールフェナントロリン(例えば、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジフェニル−1,10−フェナントロリンなどのC6−10アリールフェナントロリン)、ハロゲン原子を有するフェナントロリン[例えば、ハロアルキルアリールフェナントロリン(例えば、4,7−ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)−1,10−フェナントロリンなどのハロC1−4アルキルC6−10アリールフェナントロリン)など]、アルキル−アリールフェナントロリン(例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンなどのC1−4アルキル−C6−10アリールフェナントロリン)、アルコキシフェナントロリン(例えば、3,4,7,8−テトラメトキシ−1,10−フェナントロリンなどのC1−4アルコキシフェナントロリン)などの置換基(前記例示の置換基など)を有するフェナントロリン]などの縮合多環式芳香族化合物の芳香環を構成する炭素原子の2以上が窒素原子に置換した化合物}などが挙げられる。
【0058】
また、イミンとしては、例えば、ビス(N−置換イミノ)アセナフテン類{例えば、ビス(アリールイミノ)アセナフテン[例えば、ビス(フェニルイミノ)アセナフテン(1,2−ビス(フェニルイミノ)アセナフテン)などのビス(C6−10アリールイミノ)アセナフテン]など}などのポリイミンが挙げられる。
【0059】
これらのアミン類の中でも、ビピリジン類、ターピリジン類、フェナントロリン類などの芳香族ポリアミン類が好ましく、特に、電子不足の(又は電子吸引性置換基を有する)芳香族ポリアミン類[例えば、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)を有する縮合多環式芳香族窒素化合物(フェナントロリンなど)]などが好ましい。
【0060】
配位子は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい(又は、錯体又は錯塩において、同種又は異種の配位子が一種又は二種以上配位してもよい)。
【0061】
配位子を含む触媒は、遷移金属元素(又は遷移金属化合物)および配位子(又は配位子となりうる化合物)を含んでいればよく、前記のように、反応系中や反応に供する前に生成させてもよい。例えば、反応において、遷移金属化合物として遷移金属錯体をそのまま用いてもよく、触媒を、遷移金属化合物(例えば、無機塩、有機酸塩など)とこの遷移金属化合物を構成する遷移金属と錯体を形成可能(又は遷移金属に配位可能)な配位子とで構成し、反応系中又は反応に供する前において遷移金属錯体を形成させてもよい。
【0062】
なお、遷移金属錯体を反応系中で形成させる場合、配位子の割合は、遷移金属化合物を構成する遷移金属元素の種類や配位数、さらには配位子の種類(単座配位子であるか多座配位子であるかなど)などに応じて適宜選択でき、通常、遷移金属元素に対して少なくとも1当量の配位子を用いることができる。
【0063】
触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0064】
なお、触媒は、担体(活性炭など)に担持(固定)されていてもよい。
【0065】
反応において、触媒の割合は、非貴金属系遷移金属元素換算で、有機ボロン酸類のボロン酸基1モルに対して、通常、1モル以下、例えば、0.8モル以下[例えば、0.001〜0.7モル(例えば、0.005〜0.6モル)]、好ましくは0.5モル以下(例えば、0.01〜0.4モル)、さらに好ましくは0.3モル以下[例えば、0.02〜0.3モル(例えば、0.03〜0.25モル)]、特に0.2モル以下[例えば、0.04〜0.2モル(例えば、0.05〜0.15モル)]程度であってもよい。
【0066】
酸化剤(又は過酸化物)と触媒との割合は、前者/後者(モル比)=1/1〜100/1、好ましくは2/1〜80/1(例えば、3/1〜60/1)、さらに好ましくは5/1〜50/1程度であってもよい。
【0067】
なお、反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒としては、反応において不活性(酸化剤で酸化されない又は酸化されにくい溶媒など)であれば特に限定されず、例えば、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロアルカンなど)、含硫黄系溶媒(ジメチルスルホキサイド、スルホランなど)などが挙げられる。また、芳香族化合物を過剰に用いて溶媒として用いてもよい。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0068】
反応温度は、特に限定されないが、例えば、30〜200℃(例えば、40〜180℃)、好ましくは50〜160℃、さらに好ましくは60〜150℃(例えば、70〜130℃)程度であってもよく、通常50〜120℃(例えば、60〜100℃)程度であってもよい。なお、反応時間は、使用する基質(芳香族化合物)の種類、過酸化物の種類(過酸化物の分解温度など)、反応温度に応じて適宜選択でき、ガスクロマトグラフィーなどを利用してカップリング化合物の生成の程度を確認しながら調整してもよい。
【0069】
反応は、常圧下、加圧下、又は減圧下のいずれで行ってもよく、また、還流させて行ってもよい。なお、反応は、酸化性雰囲気中で行ってもよく、非酸化性雰囲気中[例えば、窒素ガス、希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)中など]で行ってもよい。
【0070】
反応終了後、慣用の分離精製手段、例えば、濃縮、乾固、晶析、再結晶、濾過、抽出、蒸留、クロマトグラフィなどの方法を利用して、生成物を単離してもよい。
【0071】
[カップリング化合物]
上記のようにして、芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と有機ボロン酸類のボロン酸基との間で分子間脱離が生じ、対応するカップリング化合物が得られる。すなわち、下記式(I)で表されるカップリング反応(酸化カップリング反応)により、芳香族化合物(1)と、有機ボロン酸(2)(又はその誘導体)との間で、少なくとも1つの炭素−炭素結合が形成されたカップリング化合物(3)が得られる。
【0072】
【化2】

【0073】
[式中、Zは芳香族化合物(又は芳香族化合物から芳香環に結合した水素原子を除いた残基)、Rは有機基(又は有機ボロン酸からジヒドロキシボリル基を除いた残基)を示す。]
なお、カップリング化合物は、芳香族化合物の水素原子と、有機ボロン酸類のボロン酸基との間で分子間脱離が生じ、少なくとも1つの炭素−炭素結合が形成していればよく、複数の炭素−炭素結合を形成してもよい。例えば、分子間脱離可能であれば、(Ia)芳香族化合物が複数の水素原子を有している場合、下記式(Ia)で表されるように、1つの芳香族化合物(化合物(1a))と複数の有機ボロン酸類(化合物(2a)又はその誘導体)との間で、分子間脱離させて、カップリング化合物(化合物(3a))を得てもよく、下記式(Ib)で表されるように、有機ボロン酸類が、複数のボロン酸基を有している場合、1つの有機ボロン酸類と複数の芳香族化合物との間で分子間脱離させて、カップリング化合物(化合物(3b))を得てもよい。
【0074】
【化3】

【0075】
[式中、m、nおよびpは、それぞれ2以上の整数を示し、Z、Rは前記と同じ。ただし、m≧n、pは芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子の数以下である。]
なお、炭素−炭素結合の数は、芳香族化合物、有機ボロン酸類の種類、これらの反応割合などを調整することにより調整できる。例えば、有機ボロン酸類に対して過剰の芳香族化合物を使用するなどにより、芳香族化合物あたりの炭素−炭素結合の数を1つにしやすい。本発明では、代表的には芳香族化合物と有機ボロン酸類(1つのボロン酸基を有する有機ボロン酸類)との間で、上記炭素−炭素結合が1つ形成されたカップリング化合物を得る場合が多い。また、芳香族化合物が複数の水素原子を有している場合、どの水素原子が脱離するかは、芳香環に置換する置換基の種類、大きさ、置換位置などに応じて、決定される場合が多く、位置選択的にカップリングが進行して1つの構造のカップリング化合物が得られる場合の他、カップリング化合物が位置異性体として得られる場合もある。
【実施例】
【0076】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
20mLのシュレンク管に、FeCl(塩化鉄(II))0.012mmol(ボロン酸の10モル%)、4−ブロモフェニルボロン酸0.12mmol、ベンゼン1.1mL(1.2mmol、ボロン酸に対して100当量)、ジ−t−ブチルペルオキシド0.24mmol(ボロン酸に対して2当量)加えた。
【0078】
そして、窒素雰囲気下、撹拌下、80℃で12時間加熱し、反応させた。反応液を20mLの食塩水に注ぎ、25mLのジエチルエーテルで三回抽出した。得られた有機層(エーテル層)を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、得られた濾液を濃縮した。濃縮残分をシリカゲルクロマトグラフィー(PTLC)に供し、対応するカップリング化合物(4−ブロモビフェニル)を得た。4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は23%、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は33%であった。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は、H−NMRにより測定した値であり、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は、4−ブロモフェニルボロン酸基準で、ガスクロマトグラフィーにより測定した値である。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0079】
(実施例2)
実施例1において、FeClに代えてFeCl(塩化鉄(III))0.012mmol(ボロン酸の10モル%)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は29%、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は50%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0080】
(実施例3)
実施例1において、FeClに代えてFe(CFSO(トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)、鉄(III)トリフラート、Fe(OTf))0.012mmol(ボロン酸の10モル%)を使用し、反応時間を2時間にしたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は76%、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は199%超であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0081】
(実施例4)
実施例3において、さらに、2,2’−ビピリジン(配位子L5)0.012mmolを使用し、反応時間を48時間にしたこと以外は、実施例3と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は64%、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は112%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0082】
(実施例5)
実施例3において、さらに、1,10−フェナントロリン(配位子L1)0.012mmolを使用し、反応時間を48時間にしたこと以外は、実施例3と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は99%、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は171%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0083】
(実施例6)
実施例3において、さらに、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(配位子L2)0.012mmolを使用し、反応時間を12時間にしたこと以外は、実施例3と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は99%超、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は180%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0084】
(実施例7)
実施例3において、さらに、4,7−ビス[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,10−フェナントロリン(配位子L3)0.012mmolを使用し、反応時間を12時間にしたこと以外は、実施例3と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は99%超、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は169%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0085】
(実施例8)
実施例3において、さらに、4,7−ビス[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,10−フェナントロリン(配位子L3)0.012mmolを使用するとともに、ベンゼンの使用量を0.36mmol(ボロン酸に対して30当量)に代え、反応時間を12時間にしたこと以外は、実施例3と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は99%超、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は173%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0086】
(実施例9)
実施例7において、反応時間を3時間にしたこと以外は、実施例7と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は80%、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は134%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0087】
(実施例10)
実施例7において、配位子L3に代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(配位子L2)0.012mmolを使用したこと以外は、実施例7と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は67%、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は102%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0088】
(実施例11)
実施例7において、配位子L3に代えて、4,7−ビス(4−メトキシフェニル)−1,10−フェナントロリン(配位子L4)0.012mmolを使用したこと以外は、実施例7と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は49%、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は84%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0089】
(比較例1)
実施例1において、FeClを用いず、反応時間を12時間に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は5%、ジ−t−ブチルペルオキシドの転化率は12%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0090】
(比較例2)
実施例8において、ジ−t−ブチルペルオキシドを用いなかったこと以外は、実施例8と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。なお、4−ブロモフェニルボロン酸の転化率は9%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0091】
(実施例12)
20mLのシュレンク管に、Fe(OTf)0.020mmol(ボロン酸の10モル%)、4,7−ビス[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,10−フェナントロリン(配位子L3)0.020mmol(ボロン酸の10モル%)、フェニルボロン酸0.20mmol、ベンゼン1.79mL(2.0mmol、ボロン酸に対して100当量)、ジ−t−ブチルペルオキシド0.40mmol(ボロン酸に対して2当量)を加えた。
【0092】
そして、窒素雰囲気下、撹拌下、80℃で24時間加熱し、反応させた。反応液を20mLの食塩水に注ぎ、25mLのジエチルエーテルで三回抽出した。得られた有機層(エーテル層)を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、得られた濾液を濃縮した。濃縮残分をシリカゲルクロマトグラフィー(PTLC)に供し、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0093】
(実施例13)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて4−メチルフェニルボロン酸0.20mmolを使用したこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0094】
(実施例14)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて4−クロロフェニルボロン酸0.20mmolを使用したこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0095】
(実施例15)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて3−ブロモフェニルボロン酸0.20mmolを使用したこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0096】
(実施例16)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて2−クロロフェニルボロン酸0.20mmolを使用し、反応温度を90℃に代えたこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0097】
(実施例17)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸0.20mmolを使用し、反応時間を12時間に代えたこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0098】
(実施例18)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて4−シアノフェニルボロン酸0.20mmolを使用したこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0099】
(実施例19)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて4−(エトキシカルボニル)フェニルボロン酸0.20mmolを使用したこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0100】
(実施例20)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて4−メトキシフェニルボロン酸0.20mmolを使用し、反応温度を90℃、反応時間を22時間に代えたこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0101】
(実施例21)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて3−メトキシフェニルボロン酸0.20mmolを使用したこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0102】
(実施例22)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて3−クロロ−4−メトキシフェニルボロン酸0.20mmolを使用したこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0103】
(実施例23)
実施例12において、フェニルボロン酸に代えて3−チオフェンボロン酸0.20mmolを使用し、反応温度を90℃、反応時間を20時間に代えたこと以外は、実施例12と同様にして、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0104】
(実施例24)
20mLのシュレンク管に、Fe(OTf)0.020mmol(ボロン酸の10モル%)、4,7−ビス[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,10−フェナントロリン(配位子L3)0.020mmol(ボロン酸の10モル%)、4−フルオロフェニルボロン酸0.20mmol、クロロベンゼン2.0mmol(ボロン酸に対して100当量)、ジ−t−ブチルペルオキシド0.40mmol(ボロン酸に対して2当量)を加えた。
【0105】
そして、窒素雰囲気下、撹拌下、80℃で24時間加熱し、反応させた。反応液を20mLの食塩水に注ぎ、25mLのジエチルエーテルで三回抽出した。得られた有機層(エーテル層)を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、得られた濾液を濃縮した。濃縮残分をシリカゲルクロマトグラフィー(PTLC)に供し、対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。なお、表において、o−,m−,p−は、それぞれ、オルト体、メタ体、パラ体を意味する。
【0106】
(実施例25)
実施例24において、クロロベンゼンに代えて1,4−ジフルオロベンゼン2.0mmol、4−フルオロフェニルボロン酸に代えて4−エトキシカルボニルフェニルボロン酸0.20mmolを使用したこと以外は、実施例24と同様にして対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0107】
(実施例26)
実施例24において、クロロベンゼンに代えて1,3,5−トリフルオロベンゼン2.0mmol、4−フルオロフェニルボロン酸に代えて4−エトキシカルボニルフェニルボロン酸0.20mmolを使用し、反応時間を48時間にしたこと以外は、実施例24と同様にして対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0108】
(実施例27)
実施例24において、クロロベンゼンに代えてチオフェン2.0mmol、4−フルオロフェニルボロン酸に代えて4−ブロモフェニルボロン酸0.20mmolを使用し、反応時間を4時間にしたこと以外は、実施例24と同様にして対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。なお、表において、2−,3−は、それぞれ、2位体(置換体)、3位体(置換体)を意味する。
【0109】
(実施例28)
実施例27において、チオフェンを0.6mmol、反応時間を2時間にしたこと以外は、実施例27と同様にして対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0110】
(実施例29)
実施例24において、クロロベンゼンに代えて3−ブロモチオフェン2.0mmol、4−フルオロフェニルボロン酸に代えて3−メトキシフェニルボロン酸0.20mmolを使用したこと以外は、実施例24と同様にして対応するカップリング化合物を得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。なお、表において、2−,5−は、それぞれ、2位体(置換体)、5位体(置換体)を意味する。
【0111】
結果を表に示す。なお、表において、収率は、ボロン酸基準で、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して得られた生成物の収量からボロン酸基準で算出した値である。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明では、芳香族化合物の水素原子と有機ボロン酸類のボロン酸基との脱離を伴ってカップリングできるため、幅広い芳香族化合物と有機ボロン酸類との組み合わせにおいて、カップリング化合物を得ることができる。しかも、芳香族化合物がハロゲン化物のような活性化された芳香族化合物である必要がなく、また、貴金属系触媒を使用する必要もないため、簡単な反応系において、芳香族化合物と有機ボロン酸類とのカップリング化合物を効率よく得ることができる。このような本発明の方法(又は本発明の方法により得られるカップリング化合物)は、各種化学品(液晶材料、有機EL材料など)、薬品、医薬品などに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物、および非貴金属系遷移金属元素を含む触媒の存在下、芳香族化合物と有機ボロン酸類とを反応させ、芳香族化合物および有機ボロン酸類が、芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基との間で分子間脱離して炭素−炭素結合を形成したカップリング化合物を製造する方法。
【請求項2】
有機ボロン酸類が、芳香族ボロン酸類である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
過酸化物が有機過酸化物である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
過酸化物の割合が、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基1モルに対して、1モル以上である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
非貴金属系遷移金属元素が、鉄を含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
触媒が、さらに、配位子として含窒素有機化合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
含窒素有機化合物が、芳香族ポリアミンを含む請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
含窒素有機化合物が、ビピリジン類、ターピリジン類、およびフェナントロリン類から選択された少なくとも1種を含む請求項6又は7記載の製造方法。
【請求項9】
触媒の割合が、非貴金属系遷移金属元素換算で、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基1モルに対して、0.8モル以下である請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
芳香族化合物と有機ボロン酸類とを反応させ、芳香族化合物および有機ボロン酸類が、芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、有機ボロン酸類の誘導体化されていてもよいジヒドロキシボリル基との間で分子間脱離して炭素−炭素結合を形成したカップリング化合物を製造するための触媒であって、過酸化物と組み合わせて用いられ、非貴金属系遷移金属元素を含む触媒。

【公開番号】特開2013−56852(P2013−56852A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196297(P2011−196297)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名:日本化学会第91春季年会(2011) 講演予稿集IV、発行所:社団法人 日本化学会、発行日:平成23(2011)年3月11日
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】