説明

カップ付き衣料

【課題】脇部位に不自然なシワが発生しないカップ付き衣料を提供する
【解決手段】被服の表地の内側にカップを別体に設けたカップ付き衣料であって、カップ側縁側が緩衝部材及び脇布を介して被服の袖ぐりに結着し、カップ上辺側とカップ下辺側をフリーとしたカップ付き衣料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tシャツなどの被服の内側にカップを設けたカップ付き衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラジャーと一体的に設けた衣料として、特許文献1(特開2003−129303号公報)、特許文献2(特開2000−144503号公報)などに開示されている。
これらの衣料は、カップ布とフロント布と脇布とバック布からなるブラジャーと、その上に着用するストラップ付き外衣とから構成された女性用衣類であって、ブラジャーの両カップの頂部から外側縁、脇布およびバック布の上端縁をストラップ付き外衣の内面に縫着一体化し、他の部分を縫着せず遊離して構成されている。外衣の内面で部分的に縫着されたブラジャーの外観形状が、外衣の表面に顕著に現われることがなく、アウターとしても着用できると共に、バストの補正機能を有する女性用衣類である。
例えば、特許文献2は、図7に開示されている。図7(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は内着のブラジャーの図である。なお、この図に記載された符号は、特許文献2に記載されたものをそのまま表記したものであって、本願発明の符号とは関係がない。(a)の正面図、(b)の背面図には、内着の様子が点線で表記されている。ブラジャーと外衣の縫着は、外衣のネックラインに対して、両カップ布の頂部から内側縁が沿うように、またアームホールに両カップ布の頂部から外側縁を沿わせ、ブラジャーの一方のカップ布の頂部から縫着していき、外側縁を経て脇布の上端縁およびバック布の上端縁を縫着し、他方のカップ布の外側縁から頂部にかけて外衣の内面に縫着してある。すなわち、言い換えれば両カップ布の内側縁と、下辺湾曲部と、脇布およびバック布の下端縁が外衣の内面に縫着されずに遊離した状態になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−129303号公報
【特許文献2】特開2000−144503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のカップ付き衣料は、外着とストラップ無しのブラジャーを脇刳り部位や首刳り部位に逢着して部分的に一体化している。このような衣料では、特に脇部位にシワが発生することがあり、外見が不自然に見えることがある。本発明は、このような脇部位に不自然なシワが発生しないカップ付き衣料を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ブラジャーなどのインナーウエアの開発デザインを継続し、提案を行っている。シワが発生する原因を検討した結果、バストを安定的に保持するブラジャー部位と外着の動きが追従せずに両者の結合部位にシワやヨレとなっていることを解明した。女性は、バストの形状が多様であること、また、腕や胸部の筋肉の動きによって、ブラジャーと外着の動きが別であることが原因となって、両者の結合に無理が生じていることとなっている。
本発明者は、カップ部の影響を小さくして外着と結合することにより、不自然なシワやヨレの発生を防止することを提案する。
【0006】
すなわち、本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.被服の表地の内側にカップを別体に設けたカップ付き衣料であって、
カップ側縁側が緩衝部材及び脇布を介して被服の袖ぐりに結着し、カップ上辺側とカップ下辺側をフリーとしたことを特徴とするカップ付き衣料。
2.カップはモールドカップであることを特徴とする1.記載のカップ付き衣料。
3.緩衝部材は、脇布よりも伸縮性が大きな伸縮性素材であることを特徴とする1.又は2.記載のカップ付き衣料。
4.伸縮素材は、メッシュ素材であることを特徴とする3.記載のカップ付き衣料。
5.伸縮性素材は、幅方向に伸縮性に勾配を付与したことを特徴とする3.又は4.記載のカップ付き衣料。
6.カップは、前布、下台布、及び伸縮性緩衝素材を介して脇布に装着されており、脇布はバック布に連続して一体に形成されていることを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載のカップ付き衣料。
7.カップは、丸編みで形成された基本胴部材に装着されており、緩衝部材も基本胴部材に一体に編成して形成されていることを特徴とする1.〜6.のいずれかに記載のカップ付き衣料。
8.被服の表地は、丸編みされたニット製であることを特徴とする1.〜7.のいずれかに記載のカップ付き衣料。
9.被服は、頭を通して被着するタイプの衣料であることを特徴とする1.〜8.のいずれかに記載のカップ付き衣料。
10.被服は、Tシャツ、タンクトップ、キャミソール、ワンピースのいずれかであることを特徴とする9.に記載のカップ付き衣料。
【発明の効果】
【0007】
脇部位に不自然なシワが発生しないカップ付き衣料を提供できる。体型や体の動きをカップ脇側に緩衝部材を介在させることにより、カップ側と表着との逢着部(結着部)間の相互影響を小さくすることにより、表着の自然性に影響を与えないようにすることができる。
緩衝部材は、内着の構成要素の内で最も伸縮性の大きい素材とすることにより、緩衝作用をより有効に発揮させることができる。また、伸縮性は幅方向に勾配を設けることにより、着用者のサイズの差異の吸収と筋肉の動きや姿勢変更に伴う変化に対する対応性能を向上させることができる。特に、伸縮性の無いモールドカップを使用する場合は、カップ側が固定状態となるので、伸縮性の緩衝部材の機能は有用である。
内着は、丸編みによるニット製とすることにより、逢着などせずに連続した素材安定したブラジャー機能を発揮することができる。丸編みによって、緩衝部材や脇布や前布あるいはバック布を一体的に編み込み形成することができ、且つ、部材の機能に応じた伸縮性や編み構造を実現することができる。通常のブラジャーでは、別々にカットした各部の構成布を縫製によって一体化しており、縫製ラインが現れることとなる。一般のブラジャーは、装着安定性を重視して胸囲の個人差をホックの位置で調整している。カップ付き衣料では、カットした布をつなぎ合わせて丸胴状に形成している。胸部の逆三角形に合わせてダーツをとって密着性を持たせているが、始末及び個人差に対応するのが困難であった。丸編みニットにすることにより、これらが不用となり、着心地は改善され、表着を通しても逢着ラインが見えなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】内着と表着の組み合わせを示す図
【図2】内着の全体図を示す図
【図3】内着のカップ周りの詳細例を示す図
【図4】表着に内着を逢着した状態の着用状体の胸部を示す図
【図5】従来のカップ付き衣料の要部を示す図
【図6】従来のカップ付き衣料の着用状態について要部を模式的に示す図
【図7】カップ付き衣料の一般例
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカップ付き衣料は、カップと表着との結合部位との間に緩衝材を配置した内着を用いたカップ付き衣料である。
従来のカップ付き衣料は、図5(a)に示すようなシワやヨレが発生し、不自然に見えることがある。この原因を追及した結果、図5(b)に示すように、カップ脇の上辺が表着の袖刳りに直接逢着されているために肌に密接しているカップ部の動きや着用者の乳房のサイズの影響と表着の動きが追従しないことが原因であることが解明できた。また、カップ脇上辺が脇布を介して表着の袖刳りに逢着している状態でもシワの発生を防止できないことも判明した。図6に示す例示ではカップ下縁のバージスラインを袖刳りの方へ延長したタイプもあるが、カップの動きを吸収できていない。
【0010】
体に直接密着して個人差や体の動きの影響を直接受けるカップ部と表着の動きは、基本的には異なるので、通常は別々な衣料として存在する。本発明者は、この肌着と表着属性に基づく性質の差に起因する本質的な問題の解決策を追及した結果、相互影響を小さくする構成を想起し、緩衝帯を設けて解決を図ることとした。その緩衝帯の設定位置は、静的状態では乳房の個人差を吸収することができるようにカップの脇に設けることが好ましい。
【0011】
さらに、またカップ及びそれを取り付ける内着は、呼吸による胸部の拡縮、運動による胸筋、腕の動き、背筋、姿勢変化などの影響を肌に密着している内着は、ダイレクトに受けることとなるので、これらの変化が表着に与える影響を小さくすることが求められる。これらは、乳房の安定を損なうことがない対策が必要となる。このために、前記の緩衝帯よりも強度の高い第2の緩衝機能を設けることを検討した。
伸縮性の異なる緩衝帯を連続的に設けて、伸縮性の強弱によってこれらの緩衝作用を発揮する工夫を行った。伸縮性の変化は、例えば、伸縮メッシュの目を大から小へ変化させること、あるいは、伸縮性糸の強度を変化させる、または、伸縮性布を重ね合わせるなどにより実現できる。
【0012】
またさらに、カップの基本的な機能は、乳房の安定であり、この安定性はカップのバージスラインがしっかりしていること、さらにその土台となるブラジャーの下縁がしっかりして、且つ、従来はストラップの吊り機能によってブラジャーが下がることを防止している。カップ付き衣料では、ストラップが無く、表着に逢着されているが、ホックやストラップがないのでこのブラジャーの基本機能が低下しやすい。
本発明では、丸編みニットを活用して、胸部の周囲を伸縮性のあるニット製胴着を内着の基本土台とし安定性向上させることを提案している。個々人の胸囲のバラエティーにも対応可能であり、肌に密着した状態でも姿勢変更などの動きにも対応可能である。逆三角形の胸部の形状にも、ダーツなどを設けること無く対応できる。
【0013】
丸編みニットでは、前記の緩衝帯を編み込むこともでき、背側やカップの前布部分や脇布部分を伸縮や強度を調整することができる。背側のバック布に伸縮性を持たせることは、背側の動きを吸収して、前胸側に与える影響を小さくすることができる。
【0014】
内着と表着の組み合わせを図1に示す。
表着3の内側にカップ部備えブラジャー機能を果たす内着2を結着してカップ付き衣料1を形成する。内着2と表着3は、袖刳り部分において逢着などの手段を用いて結着される。カップの上辺と内着の下辺は表着とは逢着されずにフリーとなっている。内着の背側は、逢着の必要性はない。背側では、表着の縁と内着の縁が同じ位置になる場合は、カーブの形状を一致させて逢着することも態様の一つである。
【0015】
内着の全体を図2に示す。
内着2は、胸部の周囲を囲む基本胴着部材Dに乳房を収納し安定させるモールドカップ21を備えている。
基本胴着部材Dは、少なくともカップ下を通る円周を体に密着した状態になるように形成される。丸編みされたニット製とすることにより、密着性と伸縮性を持たせることができる。基本胴着部材Dは、一体に形成され、それぞれの箇所に応じて、胸部中央部を前布、カップ下側を下台布、カップ側縁から脇の下部分に位置する脇布23、背側を形成するバック布及びカップ側縁の脇側には伸縮緩衝材22を帯状に介在させる。
この基本胴着部材Dの胸部には乳房を支えるカップ21を装着する。カップの形状は、基本的にはブラジャーのカップと同様の形状であって、モールドで形成されることが好ましい。モールドカップは、非伸縮性である。基本胴着部材Dの脇布斜辺部23aを表着の袖刳りと同じカーブに形成する。このカーブを逢着ライン41として表着の袖刳りに逢着する箇所とする。
この逢着ライン41以外は、表着と逢着される必要はない。特に、カップ上辺25と基本胴着部材Dの下辺27は表着とはフリーとする。バック布は表着と必ずしも逢着する必要はない。バック布の上辺と表着の背側の上辺のラインが共通する場合は、逢着することにより。内着が目立たなくすることができる。
【0016】
カップ21の脇側には縦方向に伸縮緩衝材22を帯状に設けて脇布の逢着部位との間に介在させるので、非伸縮性のカップと表着の動きが追従せずに表着の脇部に発生し易いシワはヨレを吸収させることができる。また、基本胴着部材Dには、ホックなどの長さ調整具がなく、個々人の胸囲や乳房の大きさの差異を基本胴着部材の伸縮性によって対応するが、それだけではカップの大きさなどの収納にともなう影響もシワやヨレの原因となることが判明した。伸縮緩衝材は、この個人差を吸収することができる。
【0017】
本発明の内着のカップ周りの詳細な例を図3に示す。
モールドカップ21の周辺は、カップの脇側に伸縮緩衝材22を介して脇布23に連なっている。脇布23の上辺側は袖刳りとなる脇布斜辺部23aを形成している。図3では、伸縮緩衝材としてメッシュ状の緩衝メッシュ22aを表示している。この緩衝メッシュ22aは、カップ上辺25からカップ脇上辺24に沿って下辺27まで帯状に配置されている。伸縮緩衝材22は、非伸縮性のカップと体の体格、姿勢や動きを許容する伸縮性の脇布等との相互影響を吸収する緩衝機能を果たす。伸縮緩衝材は、脇布やカップ下台布よりも伸縮性を大きく設定する。伸縮性は、幅方向に変化を持たせて設定することが好ましい。変化は段階的あるいは連続的に設けることが可能である。
【0018】
緩衝機能の必要性を詳しく分析すると、バストの大きさ、呼吸による心肺運動、運動による筋肉の動き、姿勢変化などの要因がある。これらは静的な状態でも対応が必要なバストの大きさ及び心肺運動に負担にならない弱い力に対応する緩衝性と他の筋肉運動などに伴う大きな力に対応する緩衝性の2つが求められる。このような、緩衝機能の多様な要請に対応するために、伸縮緩衝材には、複数の伸縮性能を付与することが好ましい。その具体的な手段は、異なる伸縮性の素材を平行に並べる、あるいは、伸縮性素材を部分的に重複させる、又は、メッシュ状の伸縮素材のメッシュの目の大きさを変化させることなどの手段により実現することができる。例えば、幅5mm〜6mm メッシュは3段で3倍程度の目開きするテープを使用することにより、様々なカップ容量(Aカップ〜Fカップ)の方のバストの大きさ、及び体の動きに適応することができる。
ニットにより編み目の大きさを変化させることができる。ニットにより基本胴着部材D全体を丸編みすることができ、伸縮緩衝材22も一体に編み込み形成することができる。
また、基本胴着部材Dをニットにより丸編み成形する場合は、緩衝機能材の伸縮性の外、各部位に求められる性能を勘案して編成することができる。例えば、前布は、V字状に開閉するように編み地を形成することが好ましく、バックは縦方向にも伸縮性を持たせるのが好ましく、下辺はバストを安定して支えることができるように強度を持たせることが好ましい。脇布は筋肉などの動きの影響を受けることが少ないので、伸縮性を小さく設定することができる。これらの編み地の切り替えをニットでは一体に編み込み形成することができる。
【0019】
表着に内着を逢着した状態の着用状態の胸部を図4に示す。
表着ライン32は、首側と肩紐部分、表着袖刳り33で示されており、内着との逢着部位が逢着ライン41として示されている。伸縮緩衝材22がモールドカップ21と脇布23の間に介在しているので、大胸筋などの広がる動きSが吸収され、運動追従性が向上されることとなる。
この様子は、従来例を示す図6と対比するとよく理解することができる。図6では、カップ脇上辺124がカップ脇布123bに接続していて、モールドカップはカップ下縁取付け材126が逢着ライン141まで延長されている。この状態では、脇布123aに作用する伸縮力Bとカップ脇布123bに作用する伸縮力Aを別々に処理されており、これらの動きがバラバラとなる結果、表着にシワやヨレとなって現れてしまう。カップ下縁取付け材を逢着ラインまで延長しない改良方法では、バストの大きさなど胸部のサイズに対応することが不十分であり、窮屈あるいはゆるゆるとなってバストの安定性を欠くこととなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被服の表地の内側にカップを別体に設けたカップ付き衣料であって、
カップ側縁側が緩衝部材及び脇布を介して被服の袖ぐりに結着し、カップ上辺側とカップ下辺側をフリーとしたことを特徴とするカップ付き衣料。
【請求項2】
カップはモールドカップであることを特徴とする請求項1記載のカップ付き衣料。
【請求項3】
緩衝部材は、脇布よりも伸縮性が大きな伸縮性素材であることを特徴とする請求項1又は2記載のカップ付き衣料。
【請求項4】
伸縮素材は、メッシュ素材であることを特徴とする請求項3記載のカップ付き衣料。
【請求項5】
伸縮性素材は、幅方向に伸縮性に勾配を付与したことを特徴とする請求項3又は4記載のカップ付き衣料。
【請求項6】
カップは、前布、下台布、及び伸縮性緩衝素材を介して脇布に装着されており、脇布はバック布に連続して一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカップ付き衣料。
【請求項7】
カップは、丸編みで形成された基本胴部材に装着されており、緩衝部材も基本胴部材に一体に編成して形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカップ付き衣料。
【請求項8】
被服の表地は、丸編みされたニット製であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカップ付き衣料。
【請求項9】
被服は、頭を通して被着するタイプの衣料であることを特徴とする請求項請求項1〜8のいずれかに記載のカップ付き衣料。
【請求項10】
被服は、Tシャツ、タンクトップ、キャミソール、ワンピースのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載のカップ付き衣料。

【図2】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84847(P2011−84847A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239698(P2009−239698)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(507368364)有限会社 エムツー企画 (3)
【Fターム(参考)】