説明

カップ状容器

【課題】 カップ状容器をスタックした際における、上位の容器と下位の容器との、径方向からのぶつかりを無くすことにより、スタック部による適正なスタック動作を得て、多数の容器のコンパクト収納効率を低下させることなく、良好な分離可能状態を維持することを目的とする。
【解決手段】 2軸延伸ブロー成形されたカップ状容器であって、下端部にスタック部7を形成した胴筒部6と口筒部2との間に、テーパ角が大きい首筒部5を設け、首筒部5のテーパ角を、容器1をスタックした際に、下位の容器1と上位の容器1との間に、径方向に隙間bを形成する値に設定することにより、適正なスタック状態と、各容器1のスタック状態からの円滑な分離を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深皿状に射出成形された合成樹脂製のプリフォームから、2軸延伸ブロー成形手段により成形されるカップ状容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製カップ状容器の成形方法の従来技術として、深皿状の合成樹脂製プリフォームを射出成形し、このプリフォームを、口筒部と口部フランジから成る開口部を不動に固定した状態で、カップ状容器に2軸延伸ブロー成形するものが知られている。
【特許文献1】特開2005−280329号公報
【0003】
上記従来技術にあっては、図6および図7に示すように、容器11は、2軸延伸ブロー金型に固定されて未延伸部分となっている口筒部12とフランジ部14とから成る開口部と、下端を底部18で塞いで直線テーパ筒状に成形された胴筒部16とから構成され、胴筒部16の下端部にスタック部17を設けた構成となっている。
【0004】
胴筒部16は、口筒部12を延伸変形しない固定部分として延伸ブロー成形されるので、口筒部12に対する接続部の構造は、図7に示すように、口筒部12の外側に偏ったものとなり、このため胴筒部16の上端部内周面に対して、口筒部12の内周面部分が突出して張り出し部分13となってしまうが、この張り出し部分13は、口筒部12が未延伸部分であるがために、必ずできてしまう部分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術にあっては、口筒部12の内周面部分が、胴筒部16の上端部分に対して内方に張り出す張り出し部分13を形成するので、容器11をスタックした際、上位の容器11の底部18が、下位の容器11のスタック部17の上に載置する前に、上位の容器11の胴筒部16の上端部分が、下位の容器11の張り出し部分13に、嵌り込み状にぶつかってしまう、と云う現象が発生していた。
【0006】
このため、従来技術にあっては、容器をスタックした際に、スタック高さが大きくなってしまい、多数の容器のコンパクト収納の効率が低下する、と云う問題があった。
【0007】
また、張り出し部分に対する胴筒部のぶつかりが嵌り込み状であるので、その組付きが強固となってしまい、スタックした容器の分離に手間取る場合が発生する、と云う問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、容器をスタックした際における、胴筒部の張り出し部分に対するぶつかりを無くすことを技術的課題とし、もってスタック部による適正なスタック動作を得て、多数の容器のコンパクト収納効率を低下させることなく、良好な分離可能状態を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカップ状容器は、深皿状の合成樹脂製プリフォームから、フランジ部を有する口筒部を固定部分として、2軸延伸ブロー成形されたものであって、固定部分となって未延伸部分となっている口筒部とフランジ部との一体物と、下端を底部で塞ぎ、下端部にスタック部を設けた、テーパ筒状の胴筒部と、口筒部と胴筒部との間に位置した、中心軸心に対するテーパ角が、胴筒部のテーパ角よりも大きいテーパ筒状の首筒部とから構成されている。
【0010】
首筒部のテーパ角は、容器をスタックした際に、下位の容器の口筒部内周面に形成された張り出し部分と、上位の容器との間に、隙間を形成する値に設定されている。
【0011】
すなわち、首筒部は、容器をスタックした際に、下位の容器の張り出し部分に対して、上位の容器との間に「逃げ」としての「隙間」を形成し、これによりスタック時における上下両容器間の「ぶつかり」発生を防止しているのである。
【0012】
容器をスタックさせた際に、上位の容器と、下位の容器の張り出し部分との間に隙間が形成されるので、上位の容器の底部は、確実に下位の容器のスタック部に載置することになり、設定通りのスタック状態を得ることができる。
【0013】
また、首筒部は、胴筒部と比較して、単にテーパ角が違うだけで、同じテーパ筒状であるので、その成形方法に特別な工夫を要することはなく、従来と同じ2軸延伸ブロー成形操作で、適正に成形することができる。
【0014】
本発明の別の構成は、首筒部の高さを、容器をスタックした際に、下位の容器の張り出し部分に対して、上位の容器の首筒部の下端が対向する値に設定した、ことにある。
【0015】
首筒部の高さを、容器をスタックした際に、下位の容器の張り出し部分に対して、上位の容器の首筒部の下端が対向する値に設定したものにあっては、首筒部のテーパ角をできる限り小さくする条件下で、首筒部の高さを必要最小限に抑えることができる。
【0016】
また、本発明の別の構成は、口筒部とフランジ部を、プリフォーム時に熱結晶化させた、ことにある。
【0017】
口筒部とフランジ部を、プリフォーム時に熱結晶化させたものにあっては、口筒部とフランジ部が変形不能部分となっているので、2軸延伸ブロー成形処理のためのプリフォームの加熱処理、ブロー金型に対するプリフォーム組付け処理等の取扱いが容易となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明にあっては、上位の容器の底部が、下位の容器のスタック部に、確実に載置するので、設定通りのスタック状態を得ることができ、これにより強固な嵌り込みを生じさせることなく、設計通りのスタック効率を確実に得ることができる。
【0019】
また、首筒部を、従来と同じ2軸延伸ブロー成形操作で、適正に成形することができるので、安定して安全な生産性を維持することができる。
【0020】
首筒部の高さを、容器をスタックした際に、下位の容器の張り出し部分に対して、上位の容器の首筒部の下端が対向する値に設定したものにあっては、首筒部のテーパ角をできる限り小さくする条件下で、首筒部の高さを必要最小限に抑えることができるので、首筒部を設けることによる容器の外観体裁の変化程度を、ほとんど目立たないものとすることができる。
【0021】
口筒部とフランジ部を、プリフォーム時に熱結晶化させたものにあっては、2軸延伸ブロー成形処理のためのプリフォームの加熱処理、ブロー金型に対するプリフォーム組付け処理等の取扱いが容易となるので、容器の生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図1〜図5を参照しながら説明する。
【0023】
本発明によるカップ状容器1は、容器1の開口部を構成する、口筒部2とフランジ部4との組合せ部分と、やや上方に拡径した円筒状の胴筒部6と、この胴筒部6の下端を封鎖する底部8と、口筒部2と胴筒部6の間に設けられた、上方に拡径した短円筒状の首筒部5とから構成されている。
【0024】
口筒部2は、肉厚な短円筒状に構成され、その上端に外鍔状の肉厚なフランジ部4を連設しており、この口筒部2とフランジ部4との組合せ部分(図3参照)は、未延伸部分である。
【0025】
胴筒部6は、その下端を、内方にドーム状に膨出して、周端部を脚部とした底部8で封鎖しており、その下端部に、内方に湾曲突出する構成でスタック部7を周設(図1、図2参照)している。
【0026】
首筒部5は、胴筒部6と同様にテーパ筒状となっているが、容器1の中心軸心に対するテーパ角は、胴筒部6よりも大きい値に設定されている。
【0027】
容器1は、深皿状に射出成形された、PET等の合成樹脂製プリフォームPから2軸延伸ブロー成形される(図2参照)ものであるが、この2軸延伸ブロー成形は、予め熱結晶化処理等により変形不能部分とされた口筒部2とフランジ部4との組合せ部分を、金型への組付け固定部分として行われるので、首筒部5と胴筒部6と底部8がブロー延伸成形されることになる。
【0028】
このため、首筒部5は、口筒部2の外側に偏った位置に接続する構造(図3参照)となり、口筒部2の内周面部分に、内方に突出した張り出し部分3が形成されることになる。
【0029】
首筒部5のテーパ角は、容器1をスタックさせた(図4、図5参照)際に、上位の容器1の首筒部5の下端部と、下位の容器1の張り出し部分3との間に隙間bを形成することのできる値に設定されている。
【0030】
図示実施形態例の場合、上位の容器1の底部8が下位の容器1のスタック部7に載置したスタック状態におけるスタック高さaに対して、張り出し部分3から首筒部5の下端までの高さを、スタック高さaと同じ寸法となるように設定しており、首筒部5のテーパ角をできる限り小さくした状態で、首筒部5の高さ寸法を、必要最小限に止めるようにしている。
【0031】
このように、複数の容器1のスタック状態では、上位の容器1の底部8が、下位の容器1のスタック部7に載置すると共に、下位の容器1の張り出し部分3と上位の容器1との間に隙間bができて、下位の容器1に対する上位の容器1の嵌り込み固定が発生しないので、多数の容器1の、設定通りのスタック収納を得ることができると共に、スタック状態からの容器1の円滑な分離動作を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態例の、全体正面図である。
【図2】図1に示した実施形態例の、半縦断説明図である。
【図3】図2の要部を拡大した、要部拡大縦断面図である。
【図4】図1に示した実施形態例の、スタック状態の半縦断面図である。
【図5】図4の要部を拡大した、要部拡大縦断面図である。
【図6】従来例を示す、スタック状態の半縦断面図である。
【図7】図6の要部を拡大した、要部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ; 容器
2 ; 口筒部
3 ; 張り出し部分
4 ; フランジ部
5 ; 首筒部
6 ; 胴筒部
7 ; スタック部
8 ; 底部
P ; プリフォーム
a ; スタック高さ
b ; 隙間
11 ; 容器
12 ; 口筒部
13 ; 張り出し部分
14 ; フランジ部
16 ; 胴筒部
17 ; スタック部
18 ; 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
深皿状の合成樹脂製プリフォームから、外鍔状のフランジ部を有する口筒部を固定部分として2軸延伸ブロー成形されたカップ状容器であって、下端を底部で塞ぎ、下端部にスタック部を形成してテーパ筒状の胴筒部を構成し、該胴筒部と口筒部との間に、中心軸心に対するテーパ角が、前記胴筒部よりも大きいテーパ筒状の首筒部を設け、該首筒部のテーパ角を、容器をスタックした際に、下位の容器の口筒部内周に形成された張り出し部分と、上位の容器との間に隙間を形成する値に設定して成るカップ状容器。
【請求項2】
底部からスタック部までの高さ幅を、張り出し部分から首筒部の下端までの高さ幅と等しく設定した請求項1に記載のカップ状容器。
【請求項3】
口筒部とフランジ部を、プリフォーム時に熱結晶化させた請求項1または2に記載のカップ状容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−154931(P2009−154931A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336388(P2007−336388)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】