説明

カップ紙容器

【課題】食品、飲料などを密封したカップ紙容器で、環境温度が変化し、カップ紙容器の胴部に凹みが生じても、商品の外観を損なわない、商品価値を下げないカップ紙容器を提供することにある。
【解決手段】蓋材で密封したカップ紙容器において、前記胴材並びに前記底材が、外面側から熱接着性樹脂層、紙層、熱接着性樹脂層、ガスバリア材層、熱接着性樹脂層を順に積層してなる積層シートからなり、かつ前記蓋材がガスバリア材層、シーラント層を積層した積層シートからなるカップ紙容器であって、前記胴部の少なくとも一箇所に、直径5mm以上の平坦部と、該平坦部を中心に放射状に二対以上の線状エンボスと、が形成されていることを特徴とするカップ紙容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や飲料などを密封したカップ紙容器に関するもので、さらに詳しくは、環境温度の変化でカップ紙容器内部が減圧になり、カップ紙容器に変形が生じても、容器の外観を損なわないカップ紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品を入れたカップ紙容器の上面開口を蓋材で密封する構造のカップ紙容器が使用されている。手軽に食することができるスナック類に用いられている。これらの内容物は、酸化防止から遮光性、酸素、水蒸気などのガスバリア性に優れた容器が必要とされ、密封性に優れたカップ紙容器が用いられている。
【0003】
この理由としては、カップ紙容器が、袋入り食品に比べて内容物が外力により損傷することがなく、保形性を有しており、商品陳列でも立てた状態で陳列することができるために、場所をとることがなく、また見栄えもよく訴求効果があり、かつ取り扱いが容易であるなどの為である。
【0004】
カップ紙容器は、お酒などにも用いられている。これはガス瓶に替わり軽量、取り扱いの良さから用いられている。最近、プラスチックカップにコーヒーや果汁などの飲料を密封した商品が販売されている。手軽に飲めることから多種に使用されている。
【0005】
通常、お酒や飲料をプラスチックカップやカップ紙容器に充填する場合、充填温度を60℃以上の温度で充填し、殺菌や賞味期限を長くしている。また遮光性、酸素、水蒸気バリア性から密封性が必要とされるために、環境温度が下がることにより、容器内が減圧され、容器が変形する問題がある。
【0006】
プラスチックカップでは、ガスバリア性を付与させ、樹脂の厚みを大きくしたり、剛性を向上させるなどの工夫がなされている。しかし容器自体の廃棄物の環境性からカップ紙容器の要望が強い。
【0007】
しかし、カップ紙容器は、密封性が優れているために容器内が減圧され、表面積の大きいカップの胴部に凹みが発生して商品の外観を損ない、商品価値を下げるという問題があり、この解決が要望されていた。
【0008】
カップ紙容器について説明する。図11は、通常のカップ紙容器を作成する工程の一例を示す説明図である。カップ紙容器50は、扇形状の胴材1(14)の一方の端部を外方向に折り返して接着した折り返し接着部に他方の端部を重ね合わせて接合して形成した胴部2の下端部と底材3が接合され、また胴部2の上端部を一周以上巻き込み口縁部5を形成している。また該口縁部5と蓋材6とが熱シールされ密封されたカップ紙容器50が形成される。
【0009】
図12は、通常のカップ紙容器内が減圧状態一例を示す断面説明図である。内容物8を充填するときの内容物8の温度と、流通、保管、陳列などでの環境変化により内容物8の温度が下がることで容器内が減圧され、内部方向へ引っ張る応力Aが働き、蓋部7、胴部2、底部4が内部方向へ引っ張られている状態を示している。その中で表面積の大きい胴部2に凹みが生じ易い。胴部2に凹みBが生じた場合を示している。発生場所も一定でなく、容器としての見栄えも悪く、店頭陳列には不向きである。
【0010】
これらの問題を解決するために、例えば、胴材、底材、蓋材が紙層、アルミニウム箔、熱接着樹脂層を順に積層した積層シートからなる紙容器で、内面となる熱接着樹脂層から紙層の一部に達する透湿度が、1.0g/m・24hr以下の微細な通気孔を設ける提案がある(特許文献1)。
【0011】
このような微細な通気孔を設けることは、生産工程での透湿度の管理が難しく、積層シートを作成した後に、透湿度を測定するために、測定値が範囲外のシートが作成された場合、廃棄するなど生産効率が悪いなどの問題がある。
【0012】
またカップ紙容器の底材をダイアグラム構造にエンボス加工し、カップ紙容器内が減圧されても、底材のエンボスが容器内部方向へ変形して、カップ紙容器の見かけの変形を防止する提案がある(特許文献2)。
【0013】
しかし底材をダイアグラム形状にエンボス加工するには、品質の管理が難しい面がある。また内容物の重量が底材に掛かるために、容器内部方向への変形の助長が難しい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−291942号公報
【特許文献2】特開2009−120264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
背景技術の問題に鑑みて、食品、飲料などを密封したカップ紙容器で、環境温度が変化し、カップ紙容器の胴部に凹みが生じても、商品の外観を損なわない、商品価値を下げないカップ紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、発明者らは鋭意検討を行い、本発明を完成した。
【0017】
本発明の請求項1に係る発明は、扇形状の胴材の一方の端部を外方向に折返して接着した折返し接着部に他方の端部を重ね合わせて接合して胴部を形成し、該胴部の下端部に底材を接合すると共に上端部を外方向にカールして口縁部を形成した容器本体の前記口縁部を蓋材で密封したカップ紙容器において、
前記胴材並びに前記底材が、外面側から熱接着性樹脂層、紙層、熱接着性樹脂層、ガスバリア材層、熱接着性樹脂層を順に積層してなる積層シートからなり、
かつ前記蓋材がガスバリア材層、シーラント層を積層した積層シートからなるカップ紙容器であって、
前記胴部の少なくとも一箇所に、直径5mm以上の平坦部と、
該平坦部を中心に放射状に二対以上の線状エンボスと、
が形成されていることを特徴とするカップ紙容器である。
【0018】
本発明の請求項2に係る発明は、前記各対の線状エンボスが前記平坦部を境界に対称に配置されていることを特徴とする請求項1記載のカップ紙容器である。
【0019】
本発明の請求項3に係る発明は、前記線状エンボスの形状が内側に凸状であることを特徴とする請求項1または2記載のカップ紙容器である。
【0020】
本発明の請求項4に係る発明は、前記線状エンボスが、前記胴部の対向する箇所にそれ
ぞれ配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のカップ紙容器である。
【0021】
本発明の請求項5に係る発明は、前記線状エンボスの深さが、0.05mm〜0.5mm、幅が、0.05mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカップ紙容器である。
【0022】
本発明の請求項6に係る発明は、対称に配置された少なくとも一対の線状エンボスの形状が、外側に凸状であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のカップ紙容器である。
【0023】
本発明の請求項7に係る発明は、前記ガスバリア材層がアルミニウム箔、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のカップ紙容器である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1によれば、本発明の紙容器は、扇形状の胴材の一方の端部を外方向に折返して接着した折返し接着部に他方の端部を重ね合わせて接合して胴部を形成し、該胴部の下端部に底材を接合すると共に上端部を外方向にカールして口縁部を形成した容器本体の前記口縁部を蓋材で密封したカップ紙容器において、
前記胴材並びに前記底材が、外面側から熱接着性樹脂層、紙層、熱接着性樹脂層、ガスバリア材層、熱接着性樹脂層を順に積層してなる積層シートからなり、かつ前記蓋材がガスバリア材層、シーラント層を積層した積層シートからなるカップ紙容器であって、
前記胴部の少なくとも一箇所に、直径5mm以上の平坦部と、
該平坦部を中心に放射状に二対以上の線状エンボスと、が形成されていることを特徴とする。直径5mm以上の平坦部と、該平坦部を中心に放射状に二対以上の線状エンボスを設けることにより、環境変化で容器内部が減圧され、内部方向への応力が生じても、該線状エンボスが該応力を吸収して線状エンボス部分で凹みを助長する。よって凹み部分が線状エンボス部に集中するのである。凹みがランダムに生じるのを防ぐことができる。
【0025】
また平坦部がない場合は、線状エンボスが交差する交差部位に内部方向への応力が集中し、凹みが生じる。またこの交差部位に応力が過大に集中するために、破損したりすることもある。また直径が5mm未満の平坦部では、内部方向への応力が、線状エンボスに集中しないために凹みを助長する効果が小さい。
【0026】
本発明の請求項2によれば、前記各対の線状エンボスが平坦部を境界に対称に配置されていることを特徴とする。各対の線状エンボスを平坦部の境界に対称に配置することで、内部方向への応力を対称に配置されたエンボス線に分散し助長することができる。
【0027】
本発明の請求項3によれば、前記線状エンボスの形状が内側に凸状であることを特徴とする。線状エンボスの形状が内側に凸状にすることにより、容器内部が減圧され、胴部に内部方向への応力が生じても、該線状エンボスが内側に凸状であるために、該応力を吸収して凹みを助長する。線状エンボス部分で凹ませることができる。容器胴部の線状エンボス部分のみ凹ませるのである。逆に外側に凸部を持たせ剛性を上げると、その部分は、内部方向への応力に強いため、線状エンボスを設けていない部分に応力が集中して凹む箇所がランダムになってしまう問題がある。
【0028】
本発明の請求項4によれば、前記線状エンボスが、前記胴部の対向する箇所にそれぞれ配置されていることを特徴とする。容器胴部の向かい合う場所に放射状の線状エンボスを配置することで、凹んだ際も容器形状の均等がとれ、容器の外観を損なわない、見栄えの
良い容器にすることができる。
【0029】
本発明の請求項5によれば、前記線状エンボスの深さが、0.05mm〜0.5mm、幅が、0.05mm〜0.5mmであることを特徴とする。深さが0.05mm未満であれば、内部方向の応力を吸収できない。また深さが0.5mm以上であると、凹みが生じ易く、不安定になる。線状エンボスの深さをこの範囲にすることにより、内部方向への応力を吸収し助長することにより、容器の外観を損なわない容器とすることができる。また幅についても同様であり、上記範囲にすることより、容器の外観を損なわない容器とすることができる。
【0030】
本発明の請求項6によれば、対称に配置された少なくとも一対の線状エンボスの形状が、外側に凸状であることを特徴とする。内部方向への応力は線状エンボス線に掛かり、内側に凸状の方が凹みやすいために、まず内側に凸状のエンボスが凹む。外側に凸状であるエンボスは、そのままの状態を維持するために、凹みを利用した装飾効果を得ることができる。
【0031】
本発明の請求項7によれば、前記ガスバリア材層が、アルミニウム箔、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする。本発明のカップ紙容器は、酸素、水蒸気などのガスバリア性が必要な食品、飲料に使用することができる。これらのガスバリア材層を積層することにより、カップ紙容器内の内容物を長く保存することができる。
【0032】
本発明のカップ紙容器は、ガスバリア性に優れ、かつ胴部に平坦部とその平坦部を中心に放射状に二対以上の線状エンボスを形成することで、容器内の減圧による凹み(変形)が生じても、ランダムではなく、線状エンボス部分に集中させることができる。凹み部を線状エンボス部に助長することで、商品の外観を損ないようにしたカップ紙容器である。即ち、外観凹みがデザインの一部になり(目立たなくなり)、商品価値を下げない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のカップ紙容器の一例を示す説明図である。
【図2】図1のC−C´線の断面説明図である。
【図3】図1の減圧状態でのC−C´線の断面説明図である。
【図4】本発明の線状エンボスで二対の線状エンボスの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の線状エンボスで三対の線状エンボスの一例を示す説明図である。
【図6】本発明の線状エンボスで四対の線状エンボスの一例を示す説明図である。
【図7】本発明の線状エンボスで平坦部がない線状エンボスの一例を示す説明図である。
【図8】本発明のカップ紙容器の胴材並びに底材の積層シートの一例を示す断面説明図である。
【図9】本発明のカップ紙容器の蓋材の積層シートの一例を示す断面説明図である。
【図10】本発明のカップ紙容器の商品形態の一例を示す説明図である。
【図11】通常のカップ状紙容器の製造工程の一例を示す説明図である。
【図12】通常のカップ紙容器内が減圧状態の一例を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
【0035】
図1は、本発明のカップ紙容器60の一例を示す説明図である。カップ紙容器の胴部2に平坦部9と平坦部9を中心に放射状に二対の線状エンボス10と、線状エンボス10が平坦部9を境界に対称に配置されている。容器内が減圧になり、内部方向への応力が生じ
ても線状エンボス部が優先的に内部方向へ凹むことで応力を吸収するのである。該線状エンボス部に凹みが生じるようにしている。よって凹みが生じる場所を決めることができ、印刷による美粧性と組み合わせることにより装飾効果を出すことができる。
【0036】
図2は、図1のC−C´線の断面説明図である。前記線状エンボスの形状が内側に凸状であることを示している。内側に凸状12を設けることにより、減圧による内部方向への応力Aを優先的に受け易くし、応力を吸収するようにして、凹みの発生を助長するのである。よって凹みがランダムに生じるのではなく、生じる部位を決めることができる。
【0037】
図3は、図1の減圧状態でのC−C´線の断面説明図である。減圧による内部方向への応力を優先的に受け、応力を吸収し、凹みBを生じた時の説明図である。線状エンボスの形状が内側に凸状であるために凹みを助長するのである。
【0038】
図4は、本発明の線状エンボスで二対の線状エンボスの一例を示す説明図である。平坦部9を中心に放射状に二対の線状エンボス10を設けたものである。二対の線状エンボス10は、内側に凸状で平坦部9を挟んで対称の部位に設けている。
【0039】
図5は、本発明の線状エンボスで三対の線状エンボスの一例を示す説明図である。平坦部9を中心に放射状に三対の線状エンボス10を設けたものである。三対の線状エンボス10は、内側に凸状で平坦部9を挟んで対称の部位に設けている。
【0040】
図6は、本発明の線状エンボスで四対の線状エンボスの一例を示す説明図である。四対の線状エンボス10は平坦部9を挟んで対称の部位に設けている。四対の線状エンボス10は、交互に内側に凸状12、外側に凸状13を設けたものである。内側の凸状12のエンボスが凹み易い面、逆に外側の凸状13は、凹み難くいため、交互に設け、かつ印刷の美粧と組み合わせることにより一層の装飾効果を出すことができる。
【0041】
図7は、本発明の線状エンボスで平坦部がない線状エンボスの一例を示す説明図である。
平坦部がなく三対の線状エンボス10を設けたものである。線状エンボスは内側に凸状である。各線状エンボスが交差する部位11は内部方向への応力Aが集中し、その部位が破損してしまう問題がある。
【0042】
また線状エンボス10が、前記胴部2の対向する部位にそれぞれ設けることで、減圧による内部方向への応力Aを胴部全体で吸収するようにする。よって胴部2の対向する部位に設けられたそれぞれの線状エンボスに応力の吸収を分散させ、その部分に凹みを助長させるのである。凹みが生じる部位を決めることができる。
【0043】
図10は、本発明のカップ紙容器60の商品形態の一例を示す説明図である。容器本体25に内容物8を充填した後、蓋材6にて容器本体の口縁部5を熱シールして密封したカップ紙容器である。時には蓋材の上にプラスチック蓋材26を更に被せ、熱シールした蓋材を外力から護るようにし、ストロー27を容器本体の外側側面に付随させたカップ紙容器である。蓋材をストローで突き破り、ストローを介して飲食できる商品形態である。
【0044】
本発明を更に詳しく説明する。
【0045】
図11に示すように、カップ紙容器50は、胴部2と底材3からなる容器本体25とその上面開口を閉ざす蓋材6とからなっている。胴部2を形成する胴材1と底材3は、図8に示すように、外側面から熱接着性樹脂層16、紙層17、熱接着性樹脂層18、ガスバリア材層19、熱接着性樹脂層20を順に積層した積層シート15からなっている。特に
紙層17とガスバリア材層19との貼り合わせは、熱接着性樹脂層18を介して貼り合わせられ、熱接着性樹脂層16と紙層17、ガスバリア材層19と熱接着性樹脂層20との貼り合わせは、接着剤を介して行うことができる。また蓋材6は、図9に示すように、ガスバリア材層19、シーラント層22を積層した積層シート21からなり、貼り合わせは、接着剤を介して行うことができる。
【0046】
本発明のカップ紙容器の製造方法について説明する。図には示していないが、ロール状の紙層17に扇形状の胴材ブランクを複数個並べて割り付け印刷すると共に、胴材ブランクの一方の端縁に、その端縁を含めて外方の部分を長窓として打抜きにより穿設する。
【0047】
胴材ブランクを印刷して長窓が穿設された紙層17の内側面に、熱接着性樹脂層18、ガスバリア材層19、熱接着樹脂層20を積層し、基材の外側面に熱接着性樹脂16を積層して積層シート15を形成する。このとき、紙層17の長窓部分に紙層を挟んだ前記二つの熱可塑性樹脂層16,18で樹脂部を形成する。
【0048】
前記積層シート15の、紙層から外方に延出して設けられた樹脂部を含む、長窓部分を形成させた側の胴材ブランクの不必要部分を連続してカットする。
【0049】
片側の不必要部分が切り取られた積層シートから、印刷された複数個の扇形状の胴材ブランクを打ち抜き、樹脂部を形成させた一枚ずつの胴材ブランク1(14)を作成する。
【0050】
本発明の線状エンボスは、長窓の形成と同時に加工することができる。また胴材ブランク1(14)の形成時、またはその後に加工しても可能である。また積層する工程中でも、胴材ブランクに線状エンボスが形成でき、深さおよび幅が範囲内であれば可能である。線状エンボス10は、胴材ブランク1(14)に平坦部9を中心として放射状に2対以上、対称に設ける。またカップ紙容器の胴部2に対向した部位になるように設ける。
【0051】
線状エンボス10を形成する方法は、所望する形状にエンボス刃を木型の埋め込んだトムソン抜き型やエンボス線を備えた金型を用いて、線状エンボスが積層シートの内側に凸状になるようにプレス加工することにより形成することができる。深さ0.05mm〜0.5mm、幅0.05mm〜0.5mmになるように、エンボス刃の高さと使用する積層シートの厚さから設計することで形成することができる。
【0052】
このような工程を経て、胴材ブランクに線状エンボスが形成され、一方の側端縁に外方に延出した樹脂部が形成された胴材ブランク1(14)が得ることができる。
【0053】
次に図11に示すように、胴材ブランク1(14)の内面側となる樹脂部を外方に折り返した上、加熱により熱接着樹脂層を接着し、その後一方の端縁部を胴部の外面側から重ね合わせ、熱接着性樹脂層を接着し胴部を作成する。
【0054】
次に底材3は予め底形の円形状にされている。この底材3の周縁部を下向きに直角に折り曲げられ、胴部2の下端は底材3の周縁を包むようにカーリングされている。図1に示すように、カーリング部は胴部2または底材3の熱接着性樹脂層にて、熱接着されている。次に胴部2の上端周縁部を一周以上巻き込んで、口縁部5、即ちフランジ部を形成する。このときに胴材ブランク14の左右上端部を予めカットし、切欠部を設けることによりフランジ部の胴部の重ね部の段差を極力小さくすることができる。また一周以上巻き込んだ状態でこの口縁部5を上下から加圧圧着して上面を平坦にしてもよい。口縁部5が平坦で蓋材とのシール性を向上させることができる。このようにして容器本体25を作成することができる。
【0055】
容器本体に使用する紙層としては、坪量200g/m〜400g/mのカップ原紙、ミルクカートン紙、クラフト紙が使用できる。また容器形状、大きさにもよるが200g/m〜300g/mのカップ原紙が好ましい。
【0056】
また熱接着性樹脂層としては、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂が使用できる。紙層とポリエチレンの貼り合わせは、溶融押出しラミネート法、フィルムラミネート法を用いて行うことができる。ポリエチレン樹脂の厚みとして15μm〜80μmである。好ましくは15μm〜50μmである。内容物の要求品質から適宜決めればよい。
【0057】
ガスバリア材層としては、アルミ箔、アルミ箔をラミネートしたポリエステルフィルム、アルミ蒸着ポリエステルフィルム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどの金属酸化物を蒸着したポリエステルフィルムが使用できる。アルミ箔では、7μm〜12μmが使用される。また蒸着ポリエステルフィルムでは、ポリエチレンテレフタレートフィルムに金属酸化物の蒸着厚みを5nm〜300nmの範囲が好ましく、その値は適宜選択すればよい。
【0058】
紙層とガスバリア材層との貼り合わせは、ポリエチレンを介して溶融押出しラミネート法を用いて行うことができる。熱接着性樹脂層と紙層、ガスバリア材層と熱接着性樹脂層との貼り合わせは、溶融押出しラミネート法、フィルムラミネート法を用いて行うことができる。
【0059】
胴材並びに底材の構成としては、例えば、外面側から、ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層/アルミ箔/ポリエステルフィルム/ポリエチレン樹脂層、ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層/アルミ蒸着ポリエステルフィルム/ポリエチレン樹脂層、ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層/金属酸化物蒸着ポリエステルフィルム/ポリエチレン樹脂層などが使用できる。内容物からくる要求品質、流通、店頭での保存環境から、適宜決めて使用することができる。
【0060】
次に蓋材6は、ガスバリア材層19と熱接着性樹脂層のシーラント層22が積層されている。ガスバリア材層としては、アルミ箔、アルミ箔をラミネートしたポリエステルフィルム、アルミ蒸着ポリエステルフィルム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムなどの金属酸化物を蒸着したポリエステルフィルムが使用できる。アルミ箔では、7μm〜12μmが使用される。熱接着性樹脂層としては、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂が使用できる。ポリエチレン樹脂の厚みとして15μm〜80μmである。好ましくは15μm〜50μmである。内容物の要求品質から適宜決めればよい。またガスバリア材層とシーラント層との貼り合わせは、溶融押出しラミネート法、フィルムラミネート法を用いて行うことができる。
【0061】
また蓋材の構成としては、例えば、アルミ箔/ポリエチレン樹脂層、紙層/アルミ箔/ポリエチレン樹脂層、金属酸化物蒸着ポリエステルフィルム/ポリエチレン樹脂層、紙層/金属酸化物蒸着ポリエステルフィルム/ポリエチレン樹脂層などが使用できる。
【0062】
図8に示すようなカップ紙容器の使用形態で、ストローを用いて飲食する場合は、蓋材は、ストローの突き刺し性を考慮して適宜厚みなど決めればよい。
【0063】
またストローを用いないで飲食する場合は、蓋材のシーラント層が、イージーピール性を有するシーラント層であることが好ましい。イージーピール性を有したシーラント層としては、凝集破壊タイプ、層間剥離タイプがある。
【0064】
凝集破壊タイプは、シーラント層自体が凝集破壊するタイプで、ポリプロピレン、ポリ
エチレン、ポリスチレンなどの樹脂を混合した樹脂を用いて、フィルム化し、ガスバリア材層に積層したり、またはこの樹脂の塗工液を塗布することにより使用することができる。
【0065】
例えばポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂とポリブテン系樹脂を混合した樹脂、またポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂を混合した樹脂などが使用することができる。
【0066】
層間剥離タイプは、共押出し法にて三層フィルムを作成し、中間層から剥離するものである。この共押出しフィルムをガスバリア材層に積層し使用することができる。
【0067】
イージーピール性を有したシーラント層として、上記2タイプのいずれでも使用できる。厚みなどは、口縁部との接着強度、また剥離強度、剥離性などから適宜決めればよい。
【0068】
カップ紙容器の表面に印刷を行い、絵柄、文字表現を行うことができる。胴材や蓋材には、プラスチックフィルムや紙などの印刷に用いられるグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、インクジェット印刷など、通常使用される印刷方式で可能である。
【0069】
本発明のカップ紙容器は、その商品形態の一例として、熱シールした蓋材の上にプラスチック蓋材を被せ、蓋材を外力から護るようにし、ストローを容器本体の外側側面に付随させた商品形態が可能である。また蓋材をイージーピールして、部分ピールしてストローで飲食する場合や、ストローを使用しないで飲食する場合にも可能である。また蓋材に紙層を積層すれば、プラスチックの蓋材を不要にすることも可能である。
【0070】
本発明のカップ紙容器は、ガスバリア性、密封性に優れ、かつ胴部に平坦部とその平坦部を中心に放射状に二対以上の線状エンボスを形成することで、容器内の減圧による凹み(変形)が生じても、ランダムではなく、線状エンボス部分に集中させ、商品の外観を損なわないカップ紙容器である。即ち、外観凹み(変形)をデザインの一部にすることにより、目立たなくしたものである。よって商品価値を下げない効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のカップ紙容器は、内容物を充填する時の温度から環境温度が変化し、容器内が減圧状態になっても、商品の外観を損なわないカップ紙容器である。内容物がホット充填される飲料、固形食品、ゼリー食品などの食品に利用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 胴材
2 胴部
3 底材
4 底部
5 口縁部(フランジ部)
6 蓋材
7 蓋部
8 内容物
9 平坦部
10 線状エンボス
11 線状エンボスの交差する部位
12 内側に凸状
13 外側に凸状
14 胴材ブランク(扇形)
15 積層シート(胴材、底材)
16、18、20 熱接着性樹脂層
17 紙層
19 ガスバリア材層
21 積層シート(蓋材)
22 シーラント層
25 容器本体
26 プラスチック蓋材
27 ストロー
50 通常のカップ紙容器
60 本発明のカップ紙容器
70 本発明のカップ容器の商品形態の一例
A 内側へ引っ張る応力
B 凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇形状の胴材の一方の端部を外方向に折返して接着した折返し接着部に他方の端部を重ね合わせて接合して胴部を形成し、該胴部の下端部に底材を接合すると共に上端部を外方向にカールして口縁部を形成した容器本体の前記口縁部を蓋材で密封したカップ紙容器において、
前記胴材並びに前記底材が、外面側から熱接着性樹脂層、紙層、熱接着性樹脂層、ガスバリア材層、熱接着性樹脂層を順に積層してなる積層シートからなり、
かつ前記蓋材がガスバリア材層、シーラント層を積層した積層シートからなるカップ紙容器であって、
前記胴部の少なくとも一箇所に、直径5mm以上の平坦部と、
該平坦部を中心に放射状に二対以上の線状エンボスと、
が形成されていることを特徴とするカップ紙容器。
【請求項2】
前記各対の線状エンボスが前記平坦部を境界に対称に配置されていることを特徴とする請求項1記載のカップ紙容器。
【請求項3】
前記線状エンボスの形状が内側に凸状であることを特徴とする請求項1または2記載のカップ紙容器
【請求項4】
前記線状エンボスが、前記胴部の対向する箇所にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のカップ紙容器。
【請求項5】
前記線状エンボスの深さが、0.05mm〜0.5mm、幅が、0.05mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカップ紙容器。
【請求項6】
対称に配置された少なくとも一対の線状エンボスの形状が、外側に凸状であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のカップ紙容器
【請求項7】
前記ガスバリア材層がアルミニウム箔、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のカップ紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−162296(P2012−162296A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23679(P2011−23679)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】