カップ部を有する衣類
【課題】カップに形成されるダーツ先端部に糸端が残った状態での見映えの悪さや、ダーツ先端部からの糸抜けによりダーツ部が口を開くなどの問題が生じず、カップの表裏いずれの両面においてもスムーズな表面を有して、外観性及び着用感に優れるカップ部を有する衣類を提供する。
【解決手段】ダーツ形成部を有する略同型の表地と裏地の布地片を重ね合わせ、切り欠きのないダーツ形成部の中心線をカップ周縁端部からダーツ先端部に亘って縫着し、次にダーツ形成部の中心線が内側となるよう表地と裏地の布地片をそれぞれダーツ形成部の両側縁部を重ね合わせて中表に折り畳んだ後、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返し、ダーツ形成部の折山線およびダーツ形成部の中心線に沿って、ダーツ先端部で折り返して一連に縫着して表地と裏地を固着し、ダーツ部を形成する。
【解決手段】ダーツ形成部を有する略同型の表地と裏地の布地片を重ね合わせ、切り欠きのないダーツ形成部の中心線をカップ周縁端部からダーツ先端部に亘って縫着し、次にダーツ形成部の中心線が内側となるよう表地と裏地の布地片をそれぞれダーツ形成部の両側縁部を重ね合わせて中表に折り畳んだ後、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返し、ダーツ形成部の折山線およびダーツ形成部の中心線に沿って、ダーツ先端部で折り返して一連に縫着して表地と裏地を固着し、ダーツ部を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、カップを略椀状に形成するために用いられるダーツ部を有し、カップのトップ近傍に位置するダーツ部の、先端部からの糸抜け防止のため長めに残す糸端によって見映えが悪かったり、糸端を短くしてダーツ先端部からの糸抜けによりダーツ部が口を開くなどの従来の問題を解決して、ダーツ先端部に糸端を残す必要をなくし、従ってダーツ先端部からの糸抜けの発生もなく、また、カップの表裏いずれの面においてもスムーズな表面を有し、外観性及び着用感に優れるカップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【０００２】
ブラジャーなどのカップ部を有する衣類は、カップをバスト形状に合うよう立体的に形成するために、カップを形成する布地片にダーツ部を設ける場合がある。
【０００３】
従来のダーツ部は、布地片のダーツ形成部において、ダーツ部の分量分の切り欠き部を設け、該切り欠き部の両側縁部を突き合わせるか、あるいは縫い代同士を重ね合わせた状態で縫着して形成されていた（下記特許文献１、２、３、４参照）。図１０〜１３に従来のダーツ部の形成方法を示す。図１０は、従来のカップ部を有する衣類のカップにおいて、縫着前のダーツ形成部の平面形状を示す拡大図であって、
表地２’と裏地３’の２枚の布地片が重ね合わされている。２枚の布地片のダーツ形成部２１には、切り欠き部２１ａが形成され、その両側縁部には縫い代部２４、２５が設けられている。図１１に示すように、該切り欠き部２１ａの両側縁部の縫い代部２４、２５及びダーツ形成部の両側縁部２２、２３を重ね合わせ、ダーツ形成部の両側縁部２２、２３を縫着固定することにより、図１２、１３に示すようにダーツ部２１’を形成する。なお、図１２は縫い代部を片倒して縫着したもの、図１３は縫い代部を割って縫着したものであって、符号２６は縫着部を示す。
【０００４】
しかし、ダーツ先端部より上方に目測によって縫い止まり部を設けて縫着し（図１２、１３中、符号２７で示される。）、糸端は長めに残して切るため、ダーツ先端部に糸端が長めに残った状態は見映えが悪く、また、糸端を短くするとダーツ先端部からの糸抜けにより、ダーツ部が口を開くなどの問題が生じて、見映えが悪く、着用感やバストの補整効果を阻害することが多々あった。
【０００５】
布地片のダーツ形成部において切り欠き部を設けずに、ダーツ形成部の布地片を折り畳む形成方法も提案されているが（下記特許文献１、５参照）、ダーツ部中心線で二つ折りしてダーツ両端縁部に沿って縫いつけるなどの形成方法であり、ダーツ先端部における糸端の残りや、糸抜けによってダーツ部が口を開くこと、ダーツ部の着用感などを考慮したものではなかった。下記特許文献６にはカップ部に布地片を折り畳んで形成されたタックを有するブラジャーが記載されているが、タックはカップ部周縁部のみを縫着したもので着用時にはタックが開いた状態となり、ダーツ部とは役割が異なるものである。
【特許文献１】実開昭５０−１０４２１公報
【特許文献２】特公昭６１−４０７６１公報
【特許文献３】実開昭５４−１０２３３０公報
【特許文献４】実開昭５８−１９２９１２公報
【特許文献５】実開昭５３−７３１２７公報
【特許文献６】実開昭５４−３０５２７公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明は、カップに形成されるダーツ先端部に糸端が長めに残った状態で見映えが悪くなったり、糸端を短くしてダーツ先端部からの糸抜けによりダーツ部が口を開くなどの問題が生じず、カップの表裏いずれの両面においてもスムーズな表面を有して、外観性及び着用感に優れるカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の課題を解決するために、本発明は、次の様なカップ部を有する衣類を提供するものである。
【０００８】
（１）少なくとも、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かうダーツ部を有する布地からなるカップ部を左右一対有する衣類であって、該カップは、略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部を有する略同型の表地と裏地の布地片を重ね合わせ、切り欠きのないダーツ形成部の中心線をカップ周縁端部からダーツ先端部に亘って縫着し、次に前記ダーツ形成部の中心線が内側となるよう表地と裏地の布地片をそれぞれダーツ形成部の両側縁部を重ね合わせて中表に折り畳んだ後、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返してダーツ形成部を表地と裏地でそれぞれ布地が三重に重なった状態とし、前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部のカップ周縁端部側から表裏の折山線に沿ってダーツ先端部まで縫着し、さらにダーツ先端部で折り返し前記ダーツ形成部の中心線に沿ってカップ周縁端部までを一連に縫着して、あるいは前記ダーツ形成部の中心線に沿ってカップ周縁端部側からダーツ先端部まで縫着し、さらにダーツ先端部で折り返し前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部の表裏の折山線に沿ってカップ周縁端部までを一連に縫着して、一体になるよう前記表地と裏地を固着し、ダーツ部を形成することを特長とするカップ部を有する衣類。
【０００９】
（２）前記カップの一方につき、前記ダーツ部を１箇所乃至４箇所有することを特長とする前記（１）記載のカップ部を有する衣類。
【００１０】
（３）略同型の表地と裏地の前記布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部に沿って縫着した後、該縫い代部が内側となるよう表地と裏地を折り返し、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなることを特長とする前記（１）または（２）に記載のカップ部を有する衣類。
【００１１】
（４）前記略同型の表地と裏地の布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部に沿って縫着した後、該縫い代部が内側となるよう表地と裏地を折り返し、表裏２枚の縫い代部を前記裏地の布地片側に倒し、該布地片に縫着固定し、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなることを特長とする前記（３）記載のカップ部を有する衣類。
【００１２】
（５）前記カップが、薄地の布地片から形成されてなることを特長とする前記（１）乃至（４）のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【００１３】
（６）前記カップが、薄地で伸縮性を有する布地片から形成されてなることを特長とする前記（５）に記載のカップ部を有する衣類。
【００１４】
（７）前記カップ部を有する衣類は、ブラジャー、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ、カップ付きテディ、水着から選ばれる衣類である前記（１）乃至（６）いずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【発明の効果】
【００１５】
本発明のカップ部を有する衣類は、上記構成を有するため、カップに形成されるダーツ先端部に糸端が長めに残った状態で見映えが悪くなったり、また、糸端を短くしてダーツ先端部からの糸抜けによりダーツ部が口を開くなどの問題が生じず、カップの表裏いずれの両面においてもスムーズな表面を有して、バストの補整効果や、デザイン性、着用感を阻害することなく、外観性及び着用感に優れる。また、ダーツ部での布地片の重なりが表地３枚と裏地３枚の計６枚となるため、カップ下部に設けられたダーツ部はカップ部における芯地の役割も付加され、薄地の布地によって形成されるカップであってもバストの補整効果に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１６】
以下、図面を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【００１７】
図１は、本発明のカップ部を有する衣類のカップにおいて、ダーツ形成部の中心線を縫着した状態を示す拡大図、図２は、図１のダーツ形成部を、中心線を中心に折り返した状態を示す拡大図、図３は、図２のダーツ形成部を、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返して縫着し、ダーツ部を形成した状態を示す拡大図である。以下に、ダーツ部の形成方法を説明する。
【００１８】
本発明において、カップは、まず図１に示すように、略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部を有する略同型の表地２と裏地３の２枚の布地片を重ね合わせ、切り欠きのないダーツ形成部１の中心線４、４’をカップ周縁端部からダーツ先端部に亘って縫着する。次に、図２に示すように、前記ダーツ形成部１の中心線４（４’）が内側となるよう表地２と裏地３の布地片をそれぞれダーツ形成部の両側縁部５、６および５’、６’を重ね合わせて中表に折り畳んだ後、外側となったダーツ形成部の側縁部６，６’でさらに折り返してダーツ形成部を表地２と裏地３でそれぞれ布地が三重に重なった状態とする。さらに、図３に示すように、表地２と裏地３の外側に折り畳まれたダーツ形成部のカップ周縁端部７ａ側から表裏の折山線（ダーツ形成部の側縁部６、６’）に沿ってダーツ先端部７ｂまで縫着し、さらにダーツ先端部７ｂで折り返しダーツ形成部の中心線４，４’に沿ってカップ周縁端部７ｃまでを一連に縫着して、一体になるよう表地２と裏地３を固着し、ダーツ部１’を形成する。図３において上記一連に縫着した縫着部は符号８で示す。なお、縫着はダーツ部側縁部のいずれの側から行っても良く、ダーツ形成部の中心線４，４’に沿ってカップ周縁端部７ｃ側からダーツ先端部７ｂまで縫着し、さらにダーツ先端部７ｂで折り返し前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部の表裏の折山線（ダーツ形成部の側縁部６、６’）に沿ってカップ周縁端部７ａまでを一連に縫着しても良い。
【００１９】
上記方法によりダーツ部を形成することにより、カップに形成されるダーツ先端部において糸抜け防止のために糸端を残す必要がなく、外観性が向上し、糸端を残さずダーツ先端部では糸が連続して折り返しているため、糸抜けによりダーツ部が口を開く問題が生じない。また、上記方法によりダーツ部を形成したカップは、カップの表裏いずれの両面においてもスムーズな表面を有して、バストの補整効果や、デザイン性、着用感を阻害することなく、外観性及び着用感に優れ、さらにダーツ部での布地片の重なりが表地３枚と裏地３枚の計６枚となるため、カップ下部に設けられたダーツ部はカップ部における芯地の役割も付加され、薄地の布地によって形成されるカップであってもバストの補整効果に優れる。
【００２０】
本発明のカップ部を有する衣類において、上記方法により形成されるダーツ部の形成数は特に限定されないが、カップの一方につき、１箇所乃至４箇所有するのが好ましい。また、カップの形状から、上記ダーツ部は下カップに相当する箇所など通常ダーツ部を設ける位置に設けられる。
【００２１】
図４に、本発明のカップ部を有する衣類のカップを形成するための布地片の裁断形状の一例を示す。図４の布地片９は、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かうダーツ部を３箇所有するカップを形成するための布地片であり、略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部１を３箇所有する。カップの形成に際しては、図４の布地片９のような形状の略同型の表地と裏地の布地片を使用する。なお、本発明において、必要に応じ、上カップ部と下カップ部のように、カップを複数の裁断片とし、下カップに本発明によるダーツ部を形成するなどしてカップ部を形成しても良い。
【００２２】
本発明のカップ部を有する衣類においては、カップの前側上端縁部を次のように形成するのが好ましい。即ち、図７に示すように、カップを形成するための略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部を有する略同型の表地２と裏地３の布地片を、カップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部１７に沿って縫着した後（図７中符号１６で示される。）、縫い代部１７が内側となるよう表地２と裏地３を折り返し（図７中、それぞれ矢印方向で示される）、図８に示すように折り返された折山線がカップの前側上端縁部１１ａを形成するのが好ましい。カップの前側上端縁部を上記のように形成することにより、表地側、裏地側ともにカップ外側に縫着部が露出せず、またテープ材等による端始末も必要ないため、裏地側においては段差による肌への圧迫等が低減され、痕残りが生じないなど着用感が向上し、表地側においては、縫い目が見えないことによってデザイン性に優れ、胸元の開口が大きいアウター着用時のインナーとしての使用や、薄地のアウター着用時にも外観に響きにくいなどの利点がある。
【００２３】
特に、図９に示すように、略同型の表地２と裏地３の布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部１７に沿って縫着した後（図９中符号１６で示される。）、縫い代部１７が内側となるよう表地２と裏地３を折り返し（図９中、それぞれ矢印方向で示される）、表裏２枚の縫い代部１７を前記裏地３の布地片側に倒し、該布地片に縫着固定し（図９中符号１８で示される。）、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなる（図８において符号１１ａで示される。）のが、縫い代部がしっかり固定され好ましい。
【００２４】
本発明において、上記方法により形成されるダーツ部を有するカップのカップ部への取り付けやストラップの取り付け方法は、通常一般のカップ部を有する衣類と同様に行うことができる。
【００２５】
次に、上記の形成方法により、ダーツ部を形成してなるカップを備えたカップ部を有する衣類の実施形態例を挙げる。図５におけるブラジャーは、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かうダーツ部を有するカップ１１からなる左右一対のカップ部１０、１０、前記カップ部１０、１０を保持する前中心側の土台部１２、前記カップ部１０、１０を脇部側で保持する土台部を含むバスト部における左右一対のバック部１３、１３、およびカップ部１０、１０から肩部をまたがって左右のバック部１３、１３へ延びるストラップ１４、１４を有するブラジャーである。なお、ストラップ１４、１４にはそれぞれバック部への取り付けおよび着用時の角度調節のための係止部材、および長さ調節のための調節部材が取り付けられている。また、バック部１３、１３の両端部には互いに係止可能な係止部材を備える係止部１３ａ、１３ｂが設けられている。カップ１１は、図４の布地片９のような形状の略同型の表地と裏地の２枚の布地片を使用して形成され、布地片９における辺９ａがカップ１１における前側上端縁部１１ａ、布地片９における辺９ｂがカップ１１における脇側上端縁部１１ｂ、布地片９における辺９ｃがカップ周縁部１１ｃを形成する。
【００２６】
カップ１１の下部には、カップ周縁部からカップの略トップ部に向かう上記の形成方法により形成されたダーツ部１５が、一方のカップにつき３箇所ずつ設けられている。
【００２７】
上記ブラジャーは、カップを略椀状に形成するためにダーツ部を形成しているが、該ダーツ部が上記の形成方法により形成されているためカップの表裏いずれの両面においてもダーツ部がスムーズな表面を有して、バストの補整効果や、デザイン性、着用感を阻害することなく、外観性及び着用感に優れる。また、ダーツ部での布地片の重なりが表地３枚と裏地３枚の計６枚となるため、カップ下部に設けられたダーツ部にカップ部における芯地の役割が付加され、バストの補整効果に優れる。
【００２８】
本発明のカップ部を有する衣類は、少なくとも、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かう上記方法によって形成されたダーツ部を有するカップからなるカップ部を左右一対有するのであれば、カップ形状、ストラップやバック部の構成は本発明の作用を阻害しない範囲で得に限定されない。図６に本発明のカップ部を有する衣類の別の実施形態であるブラジャーの正面図を示す。図６のブラジャーは、ストラップ１４’、１４’が背面でクロスするタイプである以外は図５のブラジャーと同様の構成を有する。図６において、図５のブラジャーと同様の構成を有する部分は、図５と同一の符号で示す。
【００２９】
本発明において、カップの構成素材は本発明の作用を阻害しない範囲で特に限定されないが、特に表地、裏地とも薄地の布地片によりカップが構成される場合に本発明の作用がより効果的に発現され、特に好ましくは薄地で伸縮性を有する布地片によりカップが構成されるのがよい。具体的には一般にカップ部を有する衣類に使用されるナイロン糸やポリエステル糸等の化学繊維を用いたトリコットやレース等の編物、前記化学戦意に綿糸や絹糸、レーヨン等の天然繊維や合成繊維を交えたトリコットやレース等の編物、前記繊維にポリウレタン系の弾性繊維を交えたトリコットやレース、パワーネット等の編物などから、１種あるいは２種以上を選択して使用できる。
【００３０】
本発明のカップ部を有する衣類において、上記カップの構成以外は、特に限定されず、その形状、サイズ、素材、製造方法等は本発明の作用を阻害しない範囲で、通常一般のカップ部を有する衣類と同様に構成され、例えば補整効果の向上のためワイヤーやボーン等の他の構成を有していても良い。
【００３１】
本発明のカップ部を有する衣類の実施形態として、具体的には、上記実施形態のようなブラジャーの他に、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ、カップ付きテディ、水着等が挙げられる。本発明のカップ部を有する衣類は、本発明の作用を阻害しない範囲で、カップ部およびバック部の下側に、ウェスト近傍あるいは更にその下側まで延在する胴部を有していても良い。
【産業上の利用可能性】
【００３２】
本発明は、カップに形成されるダーツ先端部に糸端が長めに残った状態で見映えが悪くなったり、また、糸端を短くしてダーツ先端部からの糸抜けによりダーツ部が口を開くなどの問題が生じず、カップの表裏いずれの両面においてもスムーズな表面を有して、バストの補整効果や、デザイン性、着用感を阻害することなく、外観性及び着用感に優れるため、ダーツ部を設けることで立体的なカップを構成するカップ部を有する衣類として有用である。また、ダーツ部によるカップ部下部における芯地の役割も付加され、薄地の布地によって形成されるカップによってカップ部を構成する衣類として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【００３３】
【図１】本発明のカップ部を有する衣類のカップにおいて、ダーツ形成部の中心線を縫着した状態を示す拡大図。
【図２】図１のダーツ形成部を、中心線を中心に折り返し、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返した状態を示す拡大図。
【図３】図２の折り重ねたダーツ形成部を、縫着してダーツ部を形成した状態を示す拡大図。
【図４】本発明のカップ部を有する衣類のカップを形成する布地片の裁断形状の一実施形態を示す平面図。
【図５】本発明のカップ部を有する衣類の一実施形態であるブラジャーの正面図。
【図６】本発明のカップ部を有する衣類の別の実施形態であるブラジャーの正面図。
【図７】本発明のカップ部を有する衣類のカップにおいて、中表に重ね合わせた２枚の布地片のカップ前側上端縁部を縫着した状態を示す拡大図。
【図８】図７の２枚の布地片を外表に折り返した状態を示す拡大図。
【図９】図７の２枚の布地片のカップ前側上端縁部を縫着した後の縫い代部をさらに裏地側の布地片に縫着した状態を示す拡大図。
【図１０】従来のカップ部を有する衣類のカップにおいて、縫着前のダーツ形成部の平面形状を示す拡大図。
【図１１】図１０のダーツ形成部の両側縁部及び縫い代部を重ねた状態を示す拡大図。
【図１２】図１１の重ねた両側縁部を縫着してダーツ部を形成した状態を示す拡大図。
【図１３】図１１の重ねた両側縁部を縫着してダーツ部を形成した状態を示す拡大図。
【符号の説明】
【００３４】
１ ダーツ形成部
１’ ダーツ部
２ 表地（布地片）
３ 裏地（布地片）
４、４’ 中心線
６、５’、６’ダーツ形成部側縁部
７ａ、７ｃ ダーツ部におけるカップ周縁端部
７ｂ ダーツ先端部
８ 縫着部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、カップを略椀状に形成するために用いられるダーツ部を有し、カップのトップ近傍に位置するダーツ部の、先端部からの糸抜け防止のため長めに残す糸端によって見映えが悪かったり、糸端を短くしてダーツ先端部からの糸抜けによりダーツ部が口を開くなどの従来の問題を解決して、ダーツ先端部に糸端を残す必要をなくし、従ってダーツ先端部からの糸抜けの発生もなく、また、カップの表裏いずれの面においてもスムーズな表面を有し、外観性及び着用感に優れるカップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【０００２】
ブラジャーなどのカップ部を有する衣類は、カップをバスト形状に合うよう立体的に形成するために、カップを形成する布地片にダーツ部を設ける場合がある。
【０００３】
従来のダーツ部は、布地片のダーツ形成部において、ダーツ部の分量分の切り欠き部を設け、該切り欠き部の両側縁部を突き合わせるか、あるいは縫い代同士を重ね合わせた状態で縫着して形成されていた（下記特許文献１、２、３、４参照）。図１０〜１３に従来のダーツ部の形成方法を示す。図１０は、従来のカップ部を有する衣類のカップにおいて、縫着前のダーツ形成部の平面形状を示す拡大図であって、
表地２’と裏地３’の２枚の布地片が重ね合わされている。２枚の布地片のダーツ形成部２１には、切り欠き部２１ａが形成され、その両側縁部には縫い代部２４、２５が設けられている。図１１に示すように、該切り欠き部２１ａの両側縁部の縫い代部２４、２５及びダーツ形成部の両側縁部２２、２３を重ね合わせ、ダーツ形成部の両側縁部２２、２３を縫着固定することにより、図１２、１３に示すようにダーツ部２１’を形成する。なお、図１２は縫い代部を片倒して縫着したもの、図１３は縫い代部を割って縫着したものであって、符号２６は縫着部を示す。
【０００４】
しかし、ダーツ先端部より上方に目測によって縫い止まり部を設けて縫着し（図１２、１３中、符号２７で示される。）、糸端は長めに残して切るため、ダーツ先端部に糸端が長めに残った状態は見映えが悪く、また、糸端を短くするとダーツ先端部からの糸抜けにより、ダーツ部が口を開くなどの問題が生じて、見映えが悪く、着用感やバストの補整効果を阻害することが多々あった。
【０００５】
布地片のダーツ形成部において切り欠き部を設けずに、ダーツ形成部の布地片を折り畳む形成方法も提案されているが（下記特許文献１、５参照）、ダーツ部中心線で二つ折りしてダーツ両端縁部に沿って縫いつけるなどの形成方法であり、ダーツ先端部における糸端の残りや、糸抜けによってダーツ部が口を開くこと、ダーツ部の着用感などを考慮したものではなかった。下記特許文献６にはカップ部に布地片を折り畳んで形成されたタックを有するブラジャーが記載されているが、タックはカップ部周縁部のみを縫着したもので着用時にはタックが開いた状態となり、ダーツ部とは役割が異なるものである。
【特許文献１】実開昭５０−１０４２１公報
【特許文献２】特公昭６１−４０７６１公報
【特許文献３】実開昭５４−１０２３３０公報
【特許文献４】実開昭５８−１９２９１２公報
【特許文献５】実開昭５３−７３１２７公報
【特許文献６】実開昭５４−３０５２７公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明は、カップに形成されるダーツ先端部に糸端が長めに残った状態で見映えが悪くなったり、糸端を短くしてダーツ先端部からの糸抜けによりダーツ部が口を開くなどの問題が生じず、カップの表裏いずれの両面においてもスムーズな表面を有して、外観性及び着用感に優れるカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の課題を解決するために、本発明は、次の様なカップ部を有する衣類を提供するものである。
【０００８】
（１）少なくとも、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かうダーツ部を有する布地からなるカップ部を左右一対有する衣類であって、該カップは、略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部を有する略同型の表地と裏地の布地片を重ね合わせ、切り欠きのないダーツ形成部の中心線をカップ周縁端部からダーツ先端部に亘って縫着し、次に前記ダーツ形成部の中心線が内側となるよう表地と裏地の布地片をそれぞれダーツ形成部の両側縁部を重ね合わせて中表に折り畳んだ後、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返してダーツ形成部を表地と裏地でそれぞれ布地が三重に重なった状態とし、前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部のカップ周縁端部側から表裏の折山線に沿ってダーツ先端部まで縫着し、さらにダーツ先端部で折り返し前記ダーツ形成部の中心線に沿ってカップ周縁端部までを一連に縫着して、あるいは前記ダーツ形成部の中心線に沿ってカップ周縁端部側からダーツ先端部まで縫着し、さらにダーツ先端部で折り返し前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部の表裏の折山線に沿ってカップ周縁端部までを一連に縫着して、一体になるよう前記表地と裏地を固着し、ダーツ部を形成することを特長とするカップ部を有する衣類。
【０００９】
（２）前記カップの一方につき、前記ダーツ部を１箇所乃至４箇所有することを特長とする前記（１）記載のカップ部を有する衣類。
【００１０】
（３）略同型の表地と裏地の前記布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部に沿って縫着した後、該縫い代部が内側となるよう表地と裏地を折り返し、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなることを特長とする前記（１）または（２）に記載のカップ部を有する衣類。
【００１１】
（４）前記略同型の表地と裏地の布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部に沿って縫着した後、該縫い代部が内側となるよう表地と裏地を折り返し、表裏２枚の縫い代部を前記裏地の布地片側に倒し、該布地片に縫着固定し、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなることを特長とする前記（３）記載のカップ部を有する衣類。
【００１２】
（５）前記カップが、薄地の布地片から形成されてなることを特長とする前記（１）乃至（４）のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【００１３】
（６）前記カップが、薄地で伸縮性を有する布地片から形成されてなることを特長とする前記（５）に記載のカップ部を有する衣類。
【００１４】
（７）前記カップ部を有する衣類は、ブラジャー、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ、カップ付きテディ、水着から選ばれる衣類である前記（１）乃至（６）いずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【発明の効果】
【００１５】
本発明のカップ部を有する衣類は、上記構成を有するため、カップに形成されるダーツ先端部に糸端が長めに残った状態で見映えが悪くなったり、また、糸端を短くしてダーツ先端部からの糸抜けによりダーツ部が口を開くなどの問題が生じず、カップの表裏いずれの両面においてもスムーズな表面を有して、バストの補整効果や、デザイン性、着用感を阻害することなく、外観性及び着用感に優れる。また、ダーツ部での布地片の重なりが表地３枚と裏地３枚の計６枚となるため、カップ下部に設けられたダーツ部はカップ部における芯地の役割も付加され、薄地の布地によって形成されるカップであってもバストの補整効果に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１６】
以下、図面を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【００１７】
図１は、本発明のカップ部を有する衣類のカップにおいて、ダーツ形成部の中心線を縫着した状態を示す拡大図、図２は、図１のダーツ形成部を、中心線を中心に折り返した状態を示す拡大図、図３は、図２のダーツ形成部を、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返して縫着し、ダーツ部を形成した状態を示す拡大図である。以下に、ダーツ部の形成方法を説明する。
【００１８】
本発明において、カップは、まず図１に示すように、略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部を有する略同型の表地２と裏地３の２枚の布地片を重ね合わせ、切り欠きのないダーツ形成部１の中心線４、４’をカップ周縁端部からダーツ先端部に亘って縫着する。次に、図２に示すように、前記ダーツ形成部１の中心線４（４’）が内側となるよう表地２と裏地３の布地片をそれぞれダーツ形成部の両側縁部５、６および５’、６’を重ね合わせて中表に折り畳んだ後、外側となったダーツ形成部の側縁部６，６’でさらに折り返してダーツ形成部を表地２と裏地３でそれぞれ布地が三重に重なった状態とする。さらに、図３に示すように、表地２と裏地３の外側に折り畳まれたダーツ形成部のカップ周縁端部７ａ側から表裏の折山線（ダーツ形成部の側縁部６、６’）に沿ってダーツ先端部７ｂまで縫着し、さらにダーツ先端部７ｂで折り返しダーツ形成部の中心線４，４’に沿ってカップ周縁端部７ｃまでを一連に縫着して、一体になるよう表地２と裏地３を固着し、ダーツ部１’を形成する。図３において上記一連に縫着した縫着部は符号８で示す。なお、縫着はダーツ部側縁部のいずれの側から行っても良く、ダーツ形成部の中心線４，４’に沿ってカップ周縁端部７ｃ側からダーツ先端部７ｂまで縫着し、さらにダーツ先端部７ｂで折り返し前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部の表裏の折山線（ダーツ形成部の側縁部６、６’）に沿ってカップ周縁端部７ａまでを一連に縫着しても良い。
【００１９】
上記方法によりダーツ部を形成することにより、カップに形成されるダーツ先端部において糸抜け防止のために糸端を残す必要がなく、外観性が向上し、糸端を残さずダーツ先端部では糸が連続して折り返しているため、糸抜けによりダーツ部が口を開く問題が生じない。また、上記方法によりダーツ部を形成したカップは、カップの表裏いずれの両面においてもスムーズな表面を有して、バストの補整効果や、デザイン性、着用感を阻害することなく、外観性及び着用感に優れ、さらにダーツ部での布地片の重なりが表地３枚と裏地３枚の計６枚となるため、カップ下部に設けられたダーツ部はカップ部における芯地の役割も付加され、薄地の布地によって形成されるカップであってもバストの補整効果に優れる。
【００２０】
本発明のカップ部を有する衣類において、上記方法により形成されるダーツ部の形成数は特に限定されないが、カップの一方につき、１箇所乃至４箇所有するのが好ましい。また、カップの形状から、上記ダーツ部は下カップに相当する箇所など通常ダーツ部を設ける位置に設けられる。
【００２１】
図４に、本発明のカップ部を有する衣類のカップを形成するための布地片の裁断形状の一例を示す。図４の布地片９は、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かうダーツ部を３箇所有するカップを形成するための布地片であり、略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部１を３箇所有する。カップの形成に際しては、図４の布地片９のような形状の略同型の表地と裏地の布地片を使用する。なお、本発明において、必要に応じ、上カップ部と下カップ部のように、カップを複数の裁断片とし、下カップに本発明によるダーツ部を形成するなどしてカップ部を形成しても良い。
【００２２】
本発明のカップ部を有する衣類においては、カップの前側上端縁部を次のように形成するのが好ましい。即ち、図７に示すように、カップを形成するための略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部を有する略同型の表地２と裏地３の布地片を、カップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部１７に沿って縫着した後（図７中符号１６で示される。）、縫い代部１７が内側となるよう表地２と裏地３を折り返し（図７中、それぞれ矢印方向で示される）、図８に示すように折り返された折山線がカップの前側上端縁部１１ａを形成するのが好ましい。カップの前側上端縁部を上記のように形成することにより、表地側、裏地側ともにカップ外側に縫着部が露出せず、またテープ材等による端始末も必要ないため、裏地側においては段差による肌への圧迫等が低減され、痕残りが生じないなど着用感が向上し、表地側においては、縫い目が見えないことによってデザイン性に優れ、胸元の開口が大きいアウター着用時のインナーとしての使用や、薄地のアウター着用時にも外観に響きにくいなどの利点がある。
【００２３】
特に、図９に示すように、略同型の表地２と裏地３の布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部１７に沿って縫着した後（図９中符号１６で示される。）、縫い代部１７が内側となるよう表地２と裏地３を折り返し（図９中、それぞれ矢印方向で示される）、表裏２枚の縫い代部１７を前記裏地３の布地片側に倒し、該布地片に縫着固定し（図９中符号１８で示される。）、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなる（図８において符号１１ａで示される。）のが、縫い代部がしっかり固定され好ましい。
【００２４】
本発明において、上記方法により形成されるダーツ部を有するカップのカップ部への取り付けやストラップの取り付け方法は、通常一般のカップ部を有する衣類と同様に行うことができる。
【００２５】
次に、上記の形成方法により、ダーツ部を形成してなるカップを備えたカップ部を有する衣類の実施形態例を挙げる。図５におけるブラジャーは、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かうダーツ部を有するカップ１１からなる左右一対のカップ部１０、１０、前記カップ部１０、１０を保持する前中心側の土台部１２、前記カップ部１０、１０を脇部側で保持する土台部を含むバスト部における左右一対のバック部１３、１３、およびカップ部１０、１０から肩部をまたがって左右のバック部１３、１３へ延びるストラップ１４、１４を有するブラジャーである。なお、ストラップ１４、１４にはそれぞれバック部への取り付けおよび着用時の角度調節のための係止部材、および長さ調節のための調節部材が取り付けられている。また、バック部１３、１３の両端部には互いに係止可能な係止部材を備える係止部１３ａ、１３ｂが設けられている。カップ１１は、図４の布地片９のような形状の略同型の表地と裏地の２枚の布地片を使用して形成され、布地片９における辺９ａがカップ１１における前側上端縁部１１ａ、布地片９における辺９ｂがカップ１１における脇側上端縁部１１ｂ、布地片９における辺９ｃがカップ周縁部１１ｃを形成する。
【００２６】
カップ１１の下部には、カップ周縁部からカップの略トップ部に向かう上記の形成方法により形成されたダーツ部１５が、一方のカップにつき３箇所ずつ設けられている。
【００２７】
上記ブラジャーは、カップを略椀状に形成するためにダーツ部を形成しているが、該ダーツ部が上記の形成方法により形成されているためカップの表裏いずれの両面においてもダーツ部がスムーズな表面を有して、バストの補整効果や、デザイン性、着用感を阻害することなく、外観性及び着用感に優れる。また、ダーツ部での布地片の重なりが表地３枚と裏地３枚の計６枚となるため、カップ下部に設けられたダーツ部にカップ部における芯地の役割が付加され、バストの補整効果に優れる。
【００２８】
本発明のカップ部を有する衣類は、少なくとも、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かう上記方法によって形成されたダーツ部を有するカップからなるカップ部を左右一対有するのであれば、カップ形状、ストラップやバック部の構成は本発明の作用を阻害しない範囲で得に限定されない。図６に本発明のカップ部を有する衣類の別の実施形態であるブラジャーの正面図を示す。図６のブラジャーは、ストラップ１４’、１４’が背面でクロスするタイプである以外は図５のブラジャーと同様の構成を有する。図６において、図５のブラジャーと同様の構成を有する部分は、図５と同一の符号で示す。
【００２９】
本発明において、カップの構成素材は本発明の作用を阻害しない範囲で特に限定されないが、特に表地、裏地とも薄地の布地片によりカップが構成される場合に本発明の作用がより効果的に発現され、特に好ましくは薄地で伸縮性を有する布地片によりカップが構成されるのがよい。具体的には一般にカップ部を有する衣類に使用されるナイロン糸やポリエステル糸等の化学繊維を用いたトリコットやレース等の編物、前記化学戦意に綿糸や絹糸、レーヨン等の天然繊維や合成繊維を交えたトリコットやレース等の編物、前記繊維にポリウレタン系の弾性繊維を交えたトリコットやレース、パワーネット等の編物などから、１種あるいは２種以上を選択して使用できる。
【００３０】
本発明のカップ部を有する衣類において、上記カップの構成以外は、特に限定されず、その形状、サイズ、素材、製造方法等は本発明の作用を阻害しない範囲で、通常一般のカップ部を有する衣類と同様に構成され、例えば補整効果の向上のためワイヤーやボーン等の他の構成を有していても良い。
【００３１】
本発明のカップ部を有する衣類の実施形態として、具体的には、上記実施形態のようなブラジャーの他に、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ、カップ付きテディ、水着等が挙げられる。本発明のカップ部を有する衣類は、本発明の作用を阻害しない範囲で、カップ部およびバック部の下側に、ウェスト近傍あるいは更にその下側まで延在する胴部を有していても良い。
【産業上の利用可能性】
【００３２】
本発明は、カップに形成されるダーツ先端部に糸端が長めに残った状態で見映えが悪くなったり、また、糸端を短くしてダーツ先端部からの糸抜けによりダーツ部が口を開くなどの問題が生じず、カップの表裏いずれの両面においてもスムーズな表面を有して、バストの補整効果や、デザイン性、着用感を阻害することなく、外観性及び着用感に優れるため、ダーツ部を設けることで立体的なカップを構成するカップ部を有する衣類として有用である。また、ダーツ部によるカップ部下部における芯地の役割も付加され、薄地の布地によって形成されるカップによってカップ部を構成する衣類として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【００３３】
【図１】本発明のカップ部を有する衣類のカップにおいて、ダーツ形成部の中心線を縫着した状態を示す拡大図。
【図２】図１のダーツ形成部を、中心線を中心に折り返し、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返した状態を示す拡大図。
【図３】図２の折り重ねたダーツ形成部を、縫着してダーツ部を形成した状態を示す拡大図。
【図４】本発明のカップ部を有する衣類のカップを形成する布地片の裁断形状の一実施形態を示す平面図。
【図５】本発明のカップ部を有する衣類の一実施形態であるブラジャーの正面図。
【図６】本発明のカップ部を有する衣類の別の実施形態であるブラジャーの正面図。
【図７】本発明のカップ部を有する衣類のカップにおいて、中表に重ね合わせた２枚の布地片のカップ前側上端縁部を縫着した状態を示す拡大図。
【図８】図７の２枚の布地片を外表に折り返した状態を示す拡大図。
【図９】図７の２枚の布地片のカップ前側上端縁部を縫着した後の縫い代部をさらに裏地側の布地片に縫着した状態を示す拡大図。
【図１０】従来のカップ部を有する衣類のカップにおいて、縫着前のダーツ形成部の平面形状を示す拡大図。
【図１１】図１０のダーツ形成部の両側縁部及び縫い代部を重ねた状態を示す拡大図。
【図１２】図１１の重ねた両側縁部を縫着してダーツ部を形成した状態を示す拡大図。
【図１３】図１１の重ねた両側縁部を縫着してダーツ部を形成した状態を示す拡大図。
【符号の説明】
【００３４】
１ ダーツ形成部
１’ ダーツ部
２ 表地（布地片）
３ 裏地（布地片）
４、４’ 中心線
６、５’、６’ダーツ形成部側縁部
７ａ、７ｃ ダーツ部におけるカップ周縁端部
７ｂ ダーツ先端部
８ 縫着部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
少なくとも、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かうダーツ部を有する布地からなるカップ部を左右一対有する衣類であって、該カップは、略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部を有する略同型の表地と裏地の布地片を重ね合わせ、切り欠きのないダーツ形成部の中心線をカップ周縁端部からダーツ先端部に亘って縫着し、次に前記ダーツ形成部の中心線が内側となるよう表地と裏地の布地片をそれぞれダーツ形成部の両側縁部を重ね合わせて中表に折り畳んだ後、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返してダーツ形成部を表地と裏地でそれぞれ布地が三重に重なった状態とし、前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部のカップ周縁端部側から表裏の折山線に沿ってダーツ先端部まで縫着し、さらにダーツ先端部で折り返し前記ダーツ形成部の中心線に沿ってカップ周縁端部までを一連に縫着して、あるいは前記ダーツ形成部の中心線に沿ってカップ周縁端部側からダーツ先端部まで縫着し、さらにダーツ先端部で折り返し前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部の表裏の折山線に沿ってカップ周縁端部までを一連に縫着して、一体になるよう前記表地と裏地を固着し、ダーツ部を形成することを特長とするカップ部を有する衣類。
【請求項２】
前記カップの一方につき、前記ダーツ部を１箇所乃至４箇所有することを特長とする請求項１記載のカップ部を有する衣類。
【請求項３】
略同型の表地と裏地の前記布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部に沿って縫着した後、該縫い代部が内側となるよう表地と裏地を折り返し、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなることを特長とする請求項１または２に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項４】
前記略同型の表地と裏地の布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部に沿って縫着した後、該縫い代部が内側となるよう表地と裏地を折り返し、表裏２枚の縫い代部を前記裏地の布地片側に倒し、該布地片に縫着固定し、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなることを特長とする請求項３記載のカップ部を有する衣類。
【請求項５】
前記カップが、薄地の布地片から形成されてなることを特長とする請求項１乃至４のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項６】
前記カップが、薄地で伸縮性を有する布地片から形成されてなることを特長とする請求項５に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項７】
前記カップ部を有する衣類は、ブラジャー、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ、カップ付きテディ、水着から選ばれる衣類である請求項１乃至６のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項１】
少なくとも、略椀状に形成するためにカップの略トップ部に向かうダーツ部を有する布地からなるカップ部を左右一対有する衣類であって、該カップは、略椀状に形成するための所定の面積とダーツ部分量に対応するダーツ形成部を有する略同型の表地と裏地の布地片を重ね合わせ、切り欠きのないダーツ形成部の中心線をカップ周縁端部からダーツ先端部に亘って縫着し、次に前記ダーツ形成部の中心線が内側となるよう表地と裏地の布地片をそれぞれダーツ形成部の両側縁部を重ね合わせて中表に折り畳んだ後、外側となったダーツ形成部の側縁部でさらに折り返してダーツ形成部を表地と裏地でそれぞれ布地が三重に重なった状態とし、前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部のカップ周縁端部側から表裏の折山線に沿ってダーツ先端部まで縫着し、さらにダーツ先端部で折り返し前記ダーツ形成部の中心線に沿ってカップ周縁端部までを一連に縫着して、あるいは前記ダーツ形成部の中心線に沿ってカップ周縁端部側からダーツ先端部まで縫着し、さらにダーツ先端部で折り返し前記表地と裏地の外側に折り畳まれたダーツ形成部の表裏の折山線に沿ってカップ周縁端部までを一連に縫着して、一体になるよう前記表地と裏地を固着し、ダーツ部を形成することを特長とするカップ部を有する衣類。
【請求項２】
前記カップの一方につき、前記ダーツ部を１箇所乃至４箇所有することを特長とする請求項１記載のカップ部を有する衣類。
【請求項３】
略同型の表地と裏地の前記布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部に沿って縫着した後、該縫い代部が内側となるよう表地と裏地を折り返し、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなることを特長とする請求項１または２に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項４】
前記略同型の表地と裏地の布地片をカップ形成時にそれぞれ外側となる面を中表に重ね合わせ、カップ形成時に前側上端縁部となる縫い代部に沿って縫着した後、該縫い代部が内側となるよう表地と裏地を折り返し、表裏２枚の縫い代部を前記裏地の布地片側に倒し、該布地片に縫着固定し、折り返された折山線がカップの前側上端縁部を形成してなることを特長とする請求項３記載のカップ部を有する衣類。
【請求項５】
前記カップが、薄地の布地片から形成されてなることを特長とする請求項１乃至４のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項６】
前記カップが、薄地で伸縮性を有する布地片から形成されてなることを特長とする請求項５に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項７】
前記カップ部を有する衣類は、ブラジャー、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ、カップ付きテディ、水着から選ばれる衣類である請求項１乃至６のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【図２】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００７−２６２６１７（Ｐ２００７−２６２６１７Ａ）
【公開日】平成１９年１０月１１日（２００７．１０．１１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−９０３５４（Ｐ２００６−９０３５４）
【出願日】平成１８年３月２９日（２００６．３．２９）
【出願人】（３０６０３３３７９）株式会社ワコール (116)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年１０月１１日（２００７．１０．１１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年３月２９日（２００６．３．２９）
【出願人】（３０６０３３３７９）株式会社ワコール (116)
【Ｆターム（参考）】
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