説明

カップ部を有する衣類

【課題】特に横向け側臥姿勢時においてバストが移動しないようにを安定支持しながら、圧迫感や締付感のないものとし、特に就寝時に着用するに適したブラジャーとする。
【解決手段】バストを覆うフルカップ状とした左右カップ部のトップ部より前中央寄りの左右カップ前側部を前中央部を挟んで連続させた部位に、前中央サポート部を設け、前記前中央サポート部の上下両側部は、前記左右カップ部のトップ部を囲む上部側および下部側へと延在するように左右方向に広げ、前記上側部は少なくともストラップとの連続位置まで位置させている一方、前記前中央サポート部に連続してトップ部を覆う左右カップ部の中央部は、該前中央サポート部よりも保持力が弱いカップ中央弱サポート部とし、かつ、前記カップ中央弱サポート部は前中央サポート部よりも伸びやすくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラジャー等のカップ部を有する衣類に関し、特に、就寝姿勢において締付感や窮屈感を与えることなくバストを安定保持するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ブラジャーは就寝時には外し、日中の起きている間は着用している場合が多い。
多数人から調査した結果、就寝時にブラジャーを着けている人は30%前後、ブラジャーを着けていない人は70%前後であった。
【0003】
前記調査によると、就寝時にブラジャーを着けていない理由は、「締め付け感や窮屈感から開放されたい。胸も就寝時には休ませたい」等で有るが、ブラジャーを外していることにより、「バストの形が崩れる。寝返りを打った時にバストが揺れ、また、横向き姿勢(側臥姿勢)で寝ると左右のバストが接触して煩わしい。」等の問題点が挙げられた。
一方、就寝時にブラジャーを着けている理由は、「垂れて型崩れをさせないため。着けないとバストが移動して安定せず、落ち着かない。」等であるが、ブラジャーを着けていることにより、「アンダーの締め付け感がある。ワイヤーが肌に当たって不快感がある。」等の問題点が挙げられた。
【0004】
これに対して、市販されている大半のブラジャーは、立ち姿勢を基準として設計され、立ち姿勢時にバストを引き上げると共に前方に寄せて、美しく外観を保持する構成とされている。即ち、立ち姿勢でのバスト膨出部の外輪線の下縁から左右両側縁に沿ってワイヤーを取り付け、該ワイヤーでバストを垂れ下がらずに上向きとなるように支持すると共に脇側に流れないように前向きに寄せる構成とされ、かつ、背面の留め具で土台部を背面側に引っ張ってカップ部を位置決め保持している。
前記した一般的なブラジャーは、就寝時に着用することを意図していないため、就寝時に着用すると締付感や窮屈感が生じることとなる。
【0005】
従来、バスト全体を圧迫せずに形を整え、着用感を良くしたブラジャーとして、登録実用新案第3016829号公報(特許文献1)で図8に示すノンワイヤーのブラジャーが提案されている。このブラジャーは、カップ1の内側において、略三日月形のパワーネットからなるリフト布2を設けており、リフト布2の下辺部2aのみをカップの下縁部から脇側縁部にかけて縫着し、リフト布2の上辺部2bはカップ上面に差し渡すようにカップ内面から浮かせた構成としている。
【0006】
また、特開平10−60708号公報(特許文献2)においても、バストの整容機能を備えながら着用感を良好にしたものとして、図9に示すような、フレキシブルなバストカップが提案されている。このバストカップは、伸縮性に富んだ素材から構成され、バストの内側上部に位置するチェストパネル6とバストの下側に位置するアンダーパネル7とによって囲まれる空間にバストカップ8が配置して接合されるものとし、少なくとも前記チェストパネル6とバストカップ8との間の接合をこれらパネルにおける折り返し稜線6L,8Lとの突合せ縫いJにより行うことで、バストカップとアウトクロスとの接合部における人体への違和感を除去して着用感を良好にしている。
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3016829号公報
【特許文献2】特開平10−60708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、就寝時の仰向け姿勢(仰臥姿勢)や横向き姿勢(側臥姿勢)においては、バストは立ち姿勢でのバストと比較して隆起部分が大きく相違し、ボリュームに偏りが生じる。即ち、図10(A)に示すように立ち姿勢ではバストは自重で下向きとなるが、仰臥姿勢時では図10(B)に点線で示すように、左右のバストの隆起部は脇側へ流れて広がり、前側ではそげた状態となる。かつ、バストの隆起部は立ち姿勢時よりも上側へと移る。よって仰臥姿勢でのバストの隆起部の外輪線は、立ち姿勢での外輪線と比較して、脇側および上側へと広がることとなる。また、側臥姿勢では、図10(C)に示すように、バストの隆起部が上側に移ると共に、左右のバストは重力の影響を受けて下方側に移動し、上方側ではそげた状態となり、ボリュームに大きな偏りが生じる。
【0009】
前記図8および図9に示すブラジャーは、従来のブラジャーと同様に立ち姿勢のバストを基準として、バストをカップ中央に引き寄せるようにしているため、就寝時に着用した場合には、このようなバストのボリュームの偏りに追従することができず、カップ内にバストが収まらなくなってしまう。そのため、バストを安定支持することができず、着用者に強い圧迫感、締付感を与えてしまうこととなる。
【0010】
特に、アンダーバストやカップサイズが大きい、所謂ラージカップサイズのバストは、図10(C)に示す側臥姿勢におけるバストボリュームの偏りが特に大きいため、ブラジャーによりバストを保持することができず、ブラジャーの前中央部がバストと遊離し、図10(C)中の点線で示す上側のバストB2の内バージスラインがカップからはみ出てしまう。そのため、側臥姿勢では特にバストの形状は崩れてしまっており、バストの安定性は失われ、バスト基底部にも負担がかかりやすい。特に、欧米人は日本人に比べてラージカップサイズの人の割合が高いため、この傾向が顕著である。
【0011】
ラージカップサイズに特に適した就寝時用のカップ部を有する衣類は従来提供されていないが、ラージカップサイズの着用者ほどバストの型崩れに対して大きな不安を抱いているので、就寝時、特に側臥姿勢でのバストを安定支持できるカップ部を有する衣類が強く要望されている。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、就寝時において、窮屈感、締付感がないと共に、特にラージカップサイズのバストをカップ内から移動しないように安定支持できるブラジャー等のカップ部を有する衣類を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、バストを覆うフルカップ状とした左右カップ部のトップ部より前中央寄りの左右カップ前側部を前中央部を挟んで連続させた部位に、前中央サポート部を設け、
前記前中央サポート部の上下両側部は、前記左右カップ部のトップ部を囲む上部側および下部側へと延在するように左右方向に広げ、前記上側部は少なくともストラップとの連続位置まで位置させている一方、
前記前中央サポート部に連続してトップ部を覆う左右カップ部の中央部は、該前中央サポート部よりも保持力が弱いカップ中央弱サポート部とし、
かつ、前記カップ中央弱サポート部は前中央サポート部よりも伸びやすくしていることを特徴とするカップ部を有する衣類を提供している。
【0013】
本発明では、前述したように、左右カップ部のトップ部より前中央寄りの左右カップ前側部を前中央部を挟んで連続させた部位に、前中央サポート部を設けている。このように前中央サポート部を左右カップ前側部の中央で連続させて設け、左右のバストを土台部等で離間保持していない構成とすることで、左右カップ部の前中心がバストから遊離することを防止でき、側臥姿勢時でのカップ部の内バージスラインへの密着性の悪さを改善することができる。
【0014】
かつ、本発明ではバストを覆うフルカップ状とし、前中央サポート部の上下両側部は、前記左右カップ部のトップ部を囲む上部側および下部側へと延在するように左右方向に広げているので、ボリュームのあるバストを上下両側からカップ中央へ向かう2方向の力のベクトルで包み込むように支持することができる。例えば、上側からカップ中央への1方向のベクトルでは前中央サポート部によるバストの引き上げ力が十分でなく、側臥姿勢時の内バージスライン形状への密着性にも欠ける。
【0015】
また、側臥姿勢では、バスト隆起部は上側に移動するが、前中央サポート部の上部側は左右方向に広げ、かつストラップとの連続位置まで位置させているので、バスト隆起部の上側基部を移動しないようにすることができる。かつ、前中央サポート部の下部側も左右方向に広げているので、バストの隆起部の下側基部を移動しないように保持することができる。
このように、ボリュームのあるバストをバスト基底部に負担がかからないように安定化させ、就寝時におけるバストの形態変化を抑制し、バストが型崩れする心配を無くすことができる。
【0016】
なお、前中央サポート部は上下方向に連続して一体に設けるほか、前中心部からストラップに連続する上部側と、前中心部から下カップに連続する下部側に分割して設けてもよい。
この場合、前中央サポート部の上部側と下部側とでは、緊締力を略同等としていることが好ましい。バストの保形の観点からは、上部側の緊締力を下部側の緊締力よりも大きく設定していることが好ましいが、上部側の緊締力を下部側よりも大きくすると、側臥姿勢における上部側のサポートがかえって弱くなり、立ち姿勢時の肩当たりが強くなるおそれがあるためである。
【0017】
前記カップ部を有する衣類は、前記前中央サポート部に連続してトップ部を覆う左右カップ部の中央部は、該前中央サポート部よりも保持力が弱いカップ中央弱サポート部とし、かつ、前記カップ中央弱サポート部は前中央サポート部よりも伸びやすくしている。このように左右カップ部の中央部は保持力が弱く、伸びを良くしているため、前中央サポート部により保持されてトップ部付近へ移動したバストを包み込んでカップ内に収めることができる。また、バスト中央部分はバストがある程度自由に移動でき、圧迫感を与えないので、ブラジャーを着用していないヌード感、開放感も与えて、リラックスさせることができる。
【0018】
前記左右カップ部は、前記前中央部を通る前中心線と左右バストの隆起部の仰臥姿勢時の脇側広がりの外輪郭線に囲まれた内部で規定し、
かつ、前記前中央サポート部は前中心位置にキャザーを設け、側臥姿勢時に前記前中心位置を挟んで前記前中央サポート部により左右カップ部が重ならないサポート力を付与していることが好ましい。
【0019】
このように左右カップ部の下端縁及び脇端縁は、仰臥姿勢での隆起部の脇側広がりの外輪線で規定しており、該外輪線と前記前中央部に囲まれた部分を左右のカップ部とし、カップ部の形状自体を立ち姿勢のカップ部の形状とは相違させている。これにより、仰臥姿勢において、カップ部の内部でバストの隆起部の基部が移動しないようにし、仰臥姿勢でのバストの安定性を保持することができる。
また、前中央サポート部の前中心位置にギャザーを設けることにより、側臥姿勢時における内バージスラインへの密着性をさらに高めることができ、さらに、前記前中央サポート部のサポート力を強化することができるので、左右カップ部が重ならないようにすることができる。
【0020】
また、前記左右カップ部のカップ中央弱サポート部に連続する脇側部分には、カップ脇側サポート部を設け、該カップ脇側サポート部からカップの脇側外輪線にかけた部分は脇側弱サポート部としていることが好ましい。
【0021】
このようにカップ脇側サポート部を設けることにより、仰臥姿勢において、脇側に流れたバストを中央に寄せ、カップ部内でバスト隆起部の基部が移動しないように保持力を高めている。
本発明者らの実験によれば、仰臥姿勢で脇側に流れたバスト及びバスト隆起部の基部の移動は、バストトップ(乳頭)付近の脇側のバストの一点を前中心位置に向かって支持するだけで、有効に抑制することができた。そのため、カップ脇側サポート部は、少なくともカップ脇側の一部に設ければよいが、バスト支持の安定性を向上させるため、カップ脇側サポート部は帯状に設け、上端は脇側端まで延在させると共に下端は前記前中央サポート部の下部側に連結させていることが好ましい。また、カップ脇側サポート部の上端を前記前中央サポート部の上部側に連結させ、前記前中央サポート部とカップ脇側サポート部で前記カップ中央弱サポート部を取り囲むようにしてもよい。
さらに、カップ脇側サポート部からカップの脇側外輪線にかけた部分は該カップ脇側サポート部よりも保持力が弱い脇側弱サポート部とすることで、緊締力を低くし、ある程度、バストを自由に移動可能とし、圧迫力を弱めている。
【0022】
本発明のカップ部を有する衣類は、前記前中央サポート部の上部を延在させて広幅の前側ストラップ部を設け、該前側ストラップ部を背面側の後側ストラップ部と連続させ、かつ、該後側ストラップ部は前側の土台部の左右両側縁間に連続させた背面サポート部に連続させ、
かつ、前記左右カップ部の周縁にはワイヤーを取り付けていない構成としていることが好ましい。
本構成とすることで、バストおよび脇部、肩部を含め、カップ部を有する衣類が当たる部分の全てを締め付けないようにでき、着用して就寝しても、生理的に悪い影響を与えないと共に、窮屈感や締付感を発生させず、ゆったりとした開放感を与えることができ、ぐっすりと睡眠できるようになる。
【0023】
本発明のブラジャー等のカップ部を有する衣類は編地や織地からなる伸縮性が良い布より形成しても良いし、後述するように編み立てで伸縮性を変化させて形成してもよい。
布から形成する場合、サポート力を変えるため、一枚布から本体を形成し、各サポート部にはサポート布を取り付けるほか、各サポート部及び弱サポート部を接ぎで連結してもよい。
【0024】
なかでも、前記カップ中央弱サポート部および脇側弱サポート部は一枚の緊締力の弱い伸縮性編地で形成する一方、
前記前中央サポート部、カップ脇側サポート部、背面サポート部および土台部は前記伸縮性編地を二枚重ねして形成していることが好ましい。
【0025】
このように前記前中央サポート部、カップ脇側サポート部、背面サポート部および土台部は前記伸縮性編地を二枚重ねして形成しているのは、共布の二枚重ね程度の緊締力とするのが、バストの保持安定性と着用時の快適性のバランスが最も良いからである。これらサポート部の緊締力を強くすると、バストの保形性を向上させることができるが、就寝時に締付感を与えてしまい、就寝を妨げるおそれがある。
一方、カップ中央弱サポート部及び脇側弱サポート部は伸びの良い伸縮性を有する一枚布で形成し、サポート部で支持されたバストを圧迫せずにゆったりとした状態でフィットさせている。
【0026】
本発明のブラジャー等のカップ部を有する衣類は、編み立てで緊締力を変化させて形成してもよい。この場合、その編組織を密にする、編糸を変える等の方法で、部分的に緊締力に強弱を設け、前記前中央サポート部等のサポート部の緊締力をカップ中央弱サポート部等の弱サポート部よりも高めている。編地から形成すると編み上げていくだけで良いため、簡単に設けることができると共に、サポート力の強弱も微妙に相違させることも可能となる。
【0027】
本発明のカップ部を有する衣類は、就寝用、スポーツ用、ジュニア用のブラジャーとして好適に用いることができ、就寝用ブラジャーとして最適なものである。
特に、アンダーバスト、カップサイズが大きい、ラージカップサイズ(各カップサイズにおいて、C80、D80、E75、E80、F75、G70、G75以上)の着用者の就寝用に好適に用いられる。
【0028】
このブラジャーの場合には、背面部は連続させてかぶりタイプとし、留め具からなる別体金具を取り付けていないことが好ましい。
違和感を与えないためには、留め具等の金属部品は使用しない方が良く、よって、前記のように背面部は連続させてかぶりタイプのブラジャーとしている。
【0029】
さらに、本発明のカップ部を有する衣類は、ブラジャー付きのスリップ、シャツ、パジャマ、水着、レオタード、さらに、アウター用のTシャツ等にも好適に適用できる。
パジャマに設けると、パジャマの下にブラジャーを着用する必要がなくなり、バストを圧迫することなくバストの移動を抑制でき、安心感のあるパジャマとすることができる。
さらに、タンクトップやTシャツとした場合には、高温となる夏季にブラジャーを着用する必要がなくなり、蒸し暑くならず、爽やかに着用できる。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明より明らかなように、本発明のカップ部を有する衣類は、前中央サポート部を左右カップ前側部の中央で連続させて設け、左右のバストを土台部等で離間保持していない構成としているので、側臥姿勢時で左右カップ部の前中心がバストから遊離することを防止でき、カップ部の内バージスラインへの密着性の悪さを改善することができる。かつ、該前中央サポート部はトップ部を囲む上部側および下部側へと延在させているので、ボリュームのあるバストを上下両側部からカップ中央へ向かう2方向の力のベクトルで包み込むように支持することができる。さらにカップ中央弱サポート部は伸縮性を有し、バストがある程度、自由に移動・変形できるようにしているので、ボリュームのあるバストであっても安定支持することができ、バストを型崩れさせることなく、締付感や窮屈感なく着用者はゆったりと楽に睡眠することができる。よって、就寝時に着けるブラジャーとして最適なものとなる。特に、横向き側臥姿勢でのバストトップを囲むバスト隆起部の基部を移動・変形しないように安定支持できるので、就寝時におけるバストの型崩れを発生させいない信頼感を与えることができると共に、左右のバストが接触して重苦しさや暑苦しさが発生するのも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2に第1実施形態のブラジャー10を示す。ブラジャー10は伸縮性がある布より形成しており、バスト全体を覆うフルカップ形状のかぶりタイプのブラジャーとしている。
【0032】
ブラジャー10は、前中央部Cを通って上下縦断する前中心線L2と、外輪郭線L1で規定された左右カップ部11(11A,11B)と、該左右カップ部11の下側に位置する土台布12と、背面サポート布13、ストラップ布14を備えてなり、首周り及び脇周りには、縁取りテープ21を縫着している。
前記左右カップ部11は、前中央サポート布15及びカップ脇側サポート布17からなる2つのサポート布と、カップ中央弱サポート布16及び脇側弱サポート布18からなる2つの弱サポート布を備えてなり、前中央サポート布15の前中央で左カップ部11Aと右カップ部11Bを分断する構成としている。
【0033】
前記土台布12、背面サポート布13、ストラップ布14、並びに左右カップ部11を構成する前中央サポート布15、カップ中央弱サポート布16、カップ脇側サポート布17、脇側弱サポート布18は、緊締力が弱く、伸縮性が良いと共に通気性も有する同一の布より形成し、本実施形態ではベア天竺を用いている。
前記左右カップ部11を構成する弱サポート布(カップ中央弱サポート布16及び脇側弱サポート布18)は、それぞれ一枚布から形成すると共に、ストラップ布14も一枚布から形成している。一方、前記左右カップ部11を構成するサポート布(前中央サポート布15及びカップ脇側サポート布17)は、それぞれ二枚布から形成すると共に、土台布12、背面サポート布13も二枚布から形成している。
【0034】
前中央サポート布15は、詳細には、左右カップ部11のトップ部T(バストトップ位置)より前中央寄りの左右カップ前側を前中央部Cを挟んで連続させた位置に取り付けている。前記前中央サポート布15の上側部15a及び下側部15bは、前記左右カップ部11のトップ部Tを囲む上部側および下部側へと延在するように左右方向に広げ、前記上側部15aはストラップ布14との連続位置まで位置させている。
前中央サポート部15の前中心線L2には裏面側に伸縮性テープ19を取り付け、キャザーGを設けている。
なお、左右カップ部11の最下端11a同士を連結した直線と、左右カップ部11の前中心線L2の最上端11bとの最短距離で示される上下長さHは、11〜17cmに設定している。
前中心線L2の最上端11bは、着用者の人体部位では頚前から9〜12cmの位置となるようにしている。この頚前から9〜12cmの位置は、モニターによる着用試験では、第4胸骨を覆い、第3胸骨にはかからない位置に相当する。
【0035】
カップ中央弱サポート布16(16A,16B)は、該前中央サポート布15に連続して縫着し、トップ部Tを覆う左右カップ部11A,11Bの中央部に取り付けている。さらに、カップ中央弱サポート部16A,16Bに連続する脇側部分でにはカップ脇側サポート布17(17A,17B)を取り付け、さらに該カップ脇側サポート布17からカップの脇側の外輪郭線L1にかけた部分は脇側弱サポート布18(18A,18B)を取り付けている。
【0036】
土台布12と左右のカップ部11とを縫着するカップ脇側及び下側の外輪郭線L1は、図10(B)中に点線で示す仰臥姿勢時におけるバスト隆起部の外輪線を沿わせるようにしている。この外輪線は立ち姿勢時の外輪線より脇側に広がると共に上向きにも広がったラインとなる。なお、横向き側臥姿勢時も上側に広がったラインとなることは共通している。
なお、通常のブラジャーには立ち姿勢時の外輪線の下縁から左右両側縁にかけてワイヤーを取り付けているが、本実施形態のブラジャー10ではワイヤーを取り付けずに、伸縮性テープ布20を取り付けている。
【0037】
前記背面サポート布13は背面中央で分離させずに連続させ、その左右両端を土台布12に縫着し、ブラジャー10をかぶりタイプとし、留め具を取り付けていない。
土台布12と背面サポート布13により形成されるブラジャー10の下端周縁には、伸縮性テープ22を取り付けている。
また、背面サポート布13と、前中央サポート布15の上端との間に取り付けられた広幅のストラップ布14にも長さ吊設用の金具は取り付けていない。
【0038】
前記構成としたブラジャー10の作用を図3を参照して説明する。
ラージカップサイズ(各カップサイズにおいて、C80、D80、E75、E80、F75、G70、G75)の着用者が図10(C)の横向き側臥姿勢となった場合には、バストのボリュームに極めて大きな偏りが生じる。
【0039】
このような着用者がブラジャー10を着用すると、図10(C)中に点線で示す側臥姿勢で上側に位置するバストB2の内バージスラインに前中央サポート布15がフィットし、重力により下垂したバストを広い面積で支持することができる。前中央サポート布15は、上下両側部へと延在するように左右に広げているので図中矢印X,Yに示す2方向からカップ中央に向けてボリュームのあるバストを安定に支持することができ、バストを型崩れさせない。また、特にラージカップサイズの場合、下側のバストB1に上側のバストB2が重なる方向となって、バストが邪魔に感じたり、重たい感じが生じるが、前中央サポート布15のサポート力により常に、左右のバストB1とB2とを離れた位置に保持できる。さらに、前中心位置にはギャザーGを設けているので、バストへのフィット性がさらに良好となる。
【0040】
一方、バストのトップ部Tを囲む中央部は、一枚布からなる伸びの良いカップ中央弱サポート布16のみでカバーしているため、バストが押し潰されるような圧迫感を与えないだけでなく、ある程度自由に移動できることより、開放感を与えて、リラックスした状態とできる。
【0041】
また、図10(B)に示す仰臥姿勢においては、左右カップ部11と土台布12との脇側及び下側の境界となる外輪郭線L1を就寝時の仰臥姿勢での外輪線を基準として設定しているため、仰臥姿勢におけるバストは、そのトップ部Tを囲む隆起部の基部が移動しない状態で安定支持される。かつ、カップ脇側サポート布17が、図3中矢印Z方向にバストを支持するので、ボリュームのあるバストであっても脇側に流れたバストを中央に寄せ、バストの型崩れを発生させない安心感を着用者に与えることができる。
さらに、カップ脇側サポート布17と脇側の外輪郭線L1の間にはカップ脇側弱サポート布18を設けて、緊締力を低くしているので、ある程度、バストを自由に移動可能とし、圧迫力を弱めている。
【0042】
このように、ブラジャー10は、ボリュームのあるバストを側臥姿勢及び仰臥姿勢において安定支持することができるので、寝返りを打ってもバストを型崩れさせることなく、かつ、締付感や窮屈感を与えず、着用者がゆったりと楽に睡眠することができる。よって、就寝時に着けるブラジャーとして最適なものとなる。
【0043】
また、ブラジャー10では、違和感を与える留具、ワイヤー等は付設していないと共に、伸びの無い素材は用いていないため、バスト以外の部位でも締付感や窮屈感を生じさせず、ゆったりとした開放感を与えることができる。
【0044】
図4に第1実施形態の第1変形例のブラジャー10−2を示す。
ブラジャー10−2は、前中央サポート布15を前中心部Cで上下方向に2分割しており、前中心からストラップ布14に連続する上部布25と、前中心から土台布12に連続する下部布26で構成している。上部布25と下部布26はいずれも前中央サポート布15と同一の布で形成し、同一の緊締力を有するものとしている。
このように、前中央サポート布を上下分割しても第1実施形態のブラジャーと同様にバストを安定支持することができる。
【0045】
図5に第1実施形態の第2変形例のブラジャー10−3を示す。
ブラジャー10−3は、カップ脇側サポート布の形状が第1実施形態と相違する。
即ち、本変形例のカップ脇側サポート布27(27A,27B)は、下端縁27aを前前中央サポート布15の下側部15aに連結させている点は第1実施形態と同様であるが、上端縁27bを前中央サポート布15の上側部15bに連結させ、前中央サポート布15とカップ脇側サポート布27(27A,27B)で左右のカップ中央弱サポート布16(16A,16B)を取り囲むようにしている。
本構成とすれば、仰向け仰臥姿勢で脇側に流れたバストのサポート力をさらに向上させることができる。
【0046】
図6に第2実施形態の編地からなるブラジャー30を示す。
ブラジャー30は、全体形状は第1実施形態と同様であるが、丸編みにより左右カップ部31(31A,31B)、土台部32、背面サポート部(図示せず)、ストラップ部34を連続した編地より形成し、ストラップ部34の背面側下端で背面サポート部と縫着している。
【0047】
前記ブラジャー30の左右カップ部31の内部では、前中心サポート部35、カップ脇側サポート部37となる部分でカップ中央弱サポート部36及び脇側弱サポート部38よりも編組織を密として緊締力を高めており、前中心サポート部35及びカップ中央部に位置するカップ中央弱サポート部36は、若干膨出した状態となるように編成している。
また、土台部32、背面サポート部も前中心サポート部35と同様の緊締力を有する編組織とし、サポート力を高めている一方、ストラップ部34は緊締力を小さくしている。
他の構成は編地に変えている点だけが第1実施形態と相違し、作用効果は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
前記第1実施形態および第2実施形態のブラジャーは就寝用ブラジャーとして好適に用いられるが、締付感、窮屈感がなく、バストの左右方向の移動・変形、上下方向への移動・変形を押さえることができるため、スポーツ用ブラジャーとしても用いることができる。例えば、ジョギング等の運動時にはバストが上下に移動・変形するが、この移動・変形を抑制できるため、バストの揺れを気にすることなく運動を行うことができる。
【0049】
さらに、ジュニア用ブラジャーとしても好適に用いることができる。
ジュニアの場合は、特に、バストが未発達であるためバストを圧迫しない必要があると共に、バストを上げて前方に寄せる機能はブラジャーに要求されない。しかしながら、運動時に若干でもバストの揺れがあると、この揺れを防止したい要求はある。よって、バストを圧迫せず、窮屈感がないが、バストの移動、変形を抑制できる本発明のブラジャーはジュニア用としても好適なものとなる。
【0050】
図7に第3実施形態のブラジャー付きタンクトップ40を示す。
第1実施形態のブラジャーとの相違点は、土台布12に前身頃42を、背面サポート布13に後身頃43を各々縫着して下方へ延在させた点だけである。前身頃42と後身頃43は他の部分と同一の布からなる1枚布としている。
前記タンクトップ40は、腹部まで覆うことができるので、就寝中の腹部の冷えを防止することができ、就寝用のアンダーウエアとして好適である。
他の構成は前記実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限定されず、前中央サポート布とカップ脇側サポート布とを連続させてもよい。また、前中央サポート部の前中心位置にはギャザーを設けない構成としてもよい。
さらにまた、背面布は中央で分割して、肌への当たりが柔らかい留具を取り付け、ブラジャーをかぶりタイプとせず、後ろ止めタイプとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態のブラジャーの前面側の裏面図である。
【図2】(A)は図1のブラジャーの前面側から見た正面図、(B)は後面側から見た正面図である。
【図3】前記ブラジャーの側臥姿勢でのサポート力を示す概略図である。
【図4】第1実施形態の第1変形例を示す概略図である。
【図5】第1実施形態の第2変形例を示す概略図である。
【図6】第2実施形態のブラジャーを示す概略図である。
【図7】第3実施形態のタンクトップを示す概略図である。
【図8】従来例を示す図面である。
【図9】他の従来例を示す図面である。
【図10】(A)は立ち姿勢、(B)は仰臥姿勢、(C)は側臥姿勢でのバストの状態を示す図面である。
【符号の説明】
【0053】
10 ブラジャー
11 カップ部
12 土台布
13 背面サポート布
14 ストラップ布
15 前中央サポート布
16 カップ中央弱サポート布
17 カップ脇側サポート布
18 脇側弱サポート布
40 タンクトップ
L1 外輪郭線
L2 前中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バストを覆うフルカップ状とした左右カップ部のトップ部より前中央寄りの左右カップ前側部を前中央部を挟んで連続させた部位に、前中央サポート部を設け、
前記前中央サポート部の上下両側部は、前記左右カップ部のトップ部を囲む上部側および下部側へと延在するように左右方向に広げ、前記上側部は少なくともストラップとの連続位置まで位置させている一方、
前記前中央サポート部に連続してトップ部を覆う左右カップ部の中央部は、該前中央サポート部よりも保持力が弱いカップ中央弱サポート部とし、
かつ、前記カップ中央弱サポート部は前中央サポート部よりも伸びやすくしていることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記左右カップ部は、前記前中央部を通る前中心線と左右バストの隆起部の仰臥姿勢時の脇側広がりの外輪郭線に囲まれた内部で規定し、
かつ、前記前中央サポート部は前中心位置にキャザーを設け、側臥姿勢時に前記前中心位置を挟んで前記前中央サポート部により左右カップ部が重ならないサポート力を付与している請求項1に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記左右カップ部のカップ中央弱サポート部に連続する脇側部分に、カップ脇側サポート部を設け、該カップ脇側サポート部からカップの脇側外輪線にかけた部分は脇側弱サポート部としている請求項1または請求項2に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記前中央サポート部の上部を延在させて広幅の前側ストラップ部を設け、該前側ストラップ部を背面側の後側ストラップ部と連続させ、かつ、該後側ストラップ部は前側の土台部の左右両側縁間に連続させた背面サポート部に連続させ、
かつ、前記左右カップ部の周縁にはワイヤーを取り付けていない請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
前記カップ中央弱サポート部および脇側弱サポート部は一枚の緊締力の弱い伸縮性編地で形成する一方、
前記前中央サポート部、カップ脇側サポート部、背面サポート部および土台部は前記伸縮性編地を二枚重ねして形成している請求項4に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
就寝用、スポーツ用、ジュニア用のブラジャー、ブラジャー付きのスリップ、シャツ、パジャマ、水着、レオタード、アウター用のTシャツからなる請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のカップ部を有する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−228146(P2009−228146A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72185(P2008−72185)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】