説明

カップ部を有する衣類

【課題】 楽に着用できるにもかかわらず、バストの造形性に優れ、かつ、着崩れがし難いカップ部を有する衣類を提供する。
【解決手段】 一対のカップ部、カップ部を引き上げるための肩ストラップ、カップ部を支持する支持部およびバック布を備えたカップ部を有する衣類であって、一対のカップ部の下縁に、支持部が備えられ、支持部の脇側にバック布が取り付けられ、カップ部は、外装カップと内カップとを有し、外装カップは、上部が肩ストラップに取り付けられているとともに、下縁部が支持部に接続されており、内カップは、上部が肩ストラップに吊着されているとともに、バストトップ位置とバージスラインとの間の略中央部分の領域のうち、少なくとも、バストトップ位置とバージスラインの最下点近傍との間の領域を含むバスト中間領域に、内カップの下縁部が接するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ部を有する衣類、例えば、ブラジャーでは、バストトップの位置を上方に引き上げ、かつ胸の谷間をくっきりさせてバストを豊かに見せるために、下垂する乳房を前中心上方寄りに寄せ上げる補整機能を備えた様々なブラジャーが提案されている。一例としては、カップ本体の肌側に、分離カップと称する弾性を有する布材を、前中心側のカップ下辺部と肩ストラップとを繋ぐように設け、分離カップでバストを持ち上げるという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。図19(a)〜(c)に、体型によるバスト形状の違いを示す模式側面図を示す。図19(b)および(c)に示すように、バストのボリュームや下垂が大きい場合には、前記分離カップの接触する部分だけが変形して、バストを全体的に持ち上げることは困難であった。また、着用者の動作に伴い、下垂したバストがカップ全体を押し下げることにより、ブラジャーのアンダーバスト部分がバージスラインからずり下がり、着崩れてしまうことがあった(図20参照)。このずり下がりを防ぐために、肩ストラップからの引っ張り力を大きくすると、今度は着用者の動作に伴ってアンダーバスト部分がずり上がりやすくなる。そのため、ブラジャーのアンダーバスト部分(バック布)を強い力で締め付ける必要があり、着用時の負担が大きくなりやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−281920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のカップ部を有する衣類においては、肩ストラップによる引き上げ力と、アンダーバスト部分(バック布)の締め付け力をバランスさせることが困難であり、結果として両方の力が大きくなりがちであった。そのため、肩ストラップの肩への食い込みや、バック布のアンダーバスト部分への食い込みが生じやすく、着用感は必ずしも快適とはいえなかった。本発明は、楽に着用できるにもかかわらず、バストの造形性に優れ、かつ、着崩れがし難いカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、一対のカップ部、前記カップ部を引き上げるための肩ストラップ、カップ部を支持する支持部およびバック布を備え、
前記支持部は、前記一対のカップ部の下縁に設けられ、
前記バック布は、前記支持部の脇側に取り付けられ、
前記カップ部は、外装カップと内カップとを有し、
前記外装カップは、上部が前記肩ストラップに取り付けられているとともに、下縁部が前記支持部に接続されており、
前記内カップは、上部が前記肩ストラップに吊着されているとともに、バストトップ位置とバージスラインとの間の略中央部分の領域のうち、少なくとも、バストトップ位置とバージスラインの最下点近傍との間の領域を含むバスト中間領域に、内カップの下縁部が接するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のカップ部を有する衣類は、前記内カップ部が肩ストラップに吊り下げられているとともに、前記内カップの下縁部が前記バスト中間領域に接するように形成されているため、前記支持部に引っ張られ難い。このため、肩ストラップの引き上げ力によって、バスト中間領域を効果的に持ち上げ、バストトップの位置を高く保持することができる。また、肩ストラップがカップ部を引き上げる力が支持部に伝わり難く、支持部が肩ストラップに引き上げられるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第一の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図2】図2は、前記第一の実施形態に係るブラジャーを示す背面図である。
【図3】図3は、前記第一の実施形態に係るブラジャーのカップ部をI−I方向に見た断面図である。
【図4】図4は、本発明における「中間領域」を説明する模式図である。
【図5】図5は、前記第一の実施形態の第一変形例に係るブラジャーを示す図である。(a)は、カップ部付近を背面側から見た図である。(b)は、前記カップ部をII−II方向に見た断面図である。
【図6】図6は、前記第一の実施形態の第一変形例のその他の例に係るブラジャーの、図5(b)に示す箇所に対応する箇所を示す断面図である。
【図7】図7は、前記第一の実施形態の第二変形例に係るブラジャーの、カップ部付近を背面側から見た図である。図7(a)は、前記第二変形例の一例を、図7(b)は、前記第二変形例のその他の例である。
【図8】図8は、前記第一の実施形態の第三変形例に係るブラジャーの、カップ部付近を背面側から見た図である。
【図9】図9は、前記第一の実施形態の第四変形例に係るブラジャーの、図5(b)に示す箇所に対応する箇所を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第二の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図11】図11は、前記第二の実施形態に係るブラジャーを示す背面図である。
【図12】図12は、前記第二の実施形態に係るブラジャーのカップ部をIII−III方向に見た断面図である。
【図13】図13は、前記第二の実施形態の第一変形例に係るブラジャーの、カップ部付近を背面側から見た図である。
【図14】図14は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第三の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図15】図15は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第四の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図16】図16は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第五の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図17】図17は、着用評価におけるバストの形状を示す図であり、(a)は、ブラジャー着用時の胸部分を正面から見た図、(b)は同じく側面から見た図、(c)はブラジャーを着用した状態で写真撮影し、モアレ干渉縞による立体的な造型性を等高線で示した結果の図、(d)は、ブラジャー着用時の胸を上から撮影したバストシルエットを示す図である。
【図18】図18は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例を示す斜視図である。(a)はボディスーツ、(b)はブラスリップの一例である。
【図19】図19は、体型によるバスト形状の違いを示す模式側面図である。
【図20】図20は、従来品のブラジャー着用時の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカップ部を有する衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0009】
(第一の実施形態)
図1から図3に、本発明のカップ部を有する衣類の第一の実施形態に係るブラジャー100を示す。本実施形態のブラジャー100は、一対のカップ部101、一対の肩ストラップ102、支持部103、およびバック布104を主要構成要素とする、いわゆる3/4カップのブラジャーである。本実施形態においては、バック布104は、着脱自在な連結係止部105を背中心付近に有している。図1は、バック布104を係止した状態の本実施形態のブラジャー100の斜視図であり、図2は、バック布104を開いた状態の本実施形態のブラジャー100の背面図である。図3は、カップ部101を図1においてI−I方向に見た断面図である。前記三図において、同一部分には同一符号を付している。本実施形態においては、前記支持部103は土台部103aを有しており、前記土台部103aによって、前記一対のカップ部101が連結されている。前記支持部103のバージスラインに沿う部分には、ワイヤー103bが設けられていてもよいが、ノンワイヤーとすることもできる。前記土台部103aの両端には、一対のバック布104の一端が取り付けられている。一対のバック布104の他端は、連結係止部105が取り付けられて、着脱自在になっている。本例のブラジャーでは、連結係止部105として、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))を使用しているが、他の種類の係止具を使用してもよく、また、バック布が連結係止部105を有さないフロントホックタイプや、連結係止部105がないタイプ、バック布を結んで係止するタイプであってもよい。肩ストラップ102の他端は、バック布104の上辺に取り付けられた円環の係止具106aを通って反転し、エイト環からなる長さ調節具106bに導入されることによって、肩ストラップ102の長さ調整が可能な状態で、肩ストラップ102の他端側が、バック布104の上辺に取り付けられている。肩ストラップ102の態様はこれに限定されず、例えば、前記一対のカップ部101の上部同士を互いに繋ぐように取り付けられている、いわゆる「ホルターネック」タイプであってもよい。3/4カップのブラジャーの場合には、肩ストラップ102のカップ部101への取り付け位置は、後述するフルカップのブラジャーに比べて脇寄りである。前記取り付け位置を脇寄りとすることによって、バストの脇からの寄せを強くし、バストの谷間やバスト上部のふくらみ感を強調させることが可能となる。
【0010】
前記連結係止部105としては、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))、グリッパー、ボタン、紐、面ファスナーなどを、デザインや用途に応じて適宜選択して使用することができる。なお、上記のフック・アンド・アイやグリッパー、ボタンを用いる場合には、複数の留め位置を予め設けておくことにより、締め付け具合を微調整できるようにしておくことも好ましい。なお、上記以外の他の種類の係止具を使用してもよい。
【0011】
前記一対のカップ部101は、それぞれ外装カップ101aと内カップ101bとを有している。前記外装カップ101aは、上部が肩ストラップ102に取り付けられているとともに、下縁部が支持部103に接続されている。前記内カップ101bは、上部が肩ストラップ102に吊着されており、下縁部は、バストの中間領域Aに接するように形成されている。図3の断面図に示すように、前記内カップ101bの下縁部は、前記外装カップ101aとは接合されていない。そのため、前記内カップ101bは、前記外装カップ101aとは独立に前記肩ストラップ102によって引き上げることができる。ここで、バストの中間領域Aとは、バストトップ位置とバージスラインとの間の略中央部分の領域のうち、少なくとも、バストトップ位置とバージスラインの最下点近傍との間の領域を含む領域である。前記バストの中間領域Aは、図4に示すように、バストトップ位置TからバージスラインLに向かう方向の略中央部分を横断するバージスラインの相似曲線L’を含む領域であることが好ましい。この中間領域Aにおいて、前記肩ストラップ102の引き上げ力によって、前記内カップ101bを持ち上げることで、バストトップ位置Tを高く保持することができる。また、前記内カップ101bは、前記支持部103に引っ張られることがないので、前記内カップ101bが接する前記バストの中間領域Aを効果的に持ち上げることができる。本発明のカップ部を有する衣類は、内カップ101bを吊り下げる構造を採用することにより、バストのボリュームが多少異なっている場合であっても、内カップ101bが前後に揺動してバストに良好にフィットする。前記内カップ101bは、バストを包み込むように形成されているので、例えば、加齢等によりバストの肉質が柔らかくなり下垂が進行している場合であっても、バストを全体的に上方に引き上げることができる。前記内カップ101bは、バストトップを含むバストの膨出部分が円錐形状となるように形成されていることが好ましい。
【0012】
前記内カップ101bの上縁部の少なくとも一部は、前記外装カップ101aの上縁部に接合されていることが好ましい。前記内カップ101bの上縁部の少なくとも一部を前記外装カップ101aの上縁部に接合することで、前記内カップ101bの取り付け位置を一定に保持しやすくなる。接合は、縫着、接着等の方法で行うことができる。本実施形態においては、前記内カップ101bは、前記肩ストラップ102の取り付け位置から前記支持部103の脇部分に近接する位置までの領域において前記外装カップ101aに接合されている。これにより、前記内カップ101bの着用時の位置を、より一定に保持しやすくしている。なお、前記肩ストラップ102の取り付け位置から前記支持部103の脇部分に近接する位置までの領域の一部においてのみ、前記内カップ101bを前記外装カップ101aに取り付けるものとしても良い。このような構成も前記内カップ101bの着用時の位置を一定に保持する上で好ましい。
【0013】
本実施形態においては、前記内カップ101bは、前中心側の端部において、前記支持部103と接続されている。本実施形態のような3/4カップのブラジャーにおいては、前記肩ストラップ102は、上述のとおり脇寄りで前記カップ部101に取り付けられている。このように、前中心側の端部において前記内カップ101bと前記支持部103とを接続することには、前記内カップ101bの位置を、所定の位置に保持しやすくなるというメリットもある。
【0014】
前記内カップ101bは、通常のブラジャーにおいてカップ部に用いられる素材を適宜使用することができる。前記素材は、前記バストの中間領域Aを効果的に持ち上げることができる程度に、伸縮性が低いことが好ましい。例えば、厚手の不織布を接ぎ合わせて構成してもよく、その場合、カップの形状を立体的に保つことができる。
【0015】
ここで、肩ストラップ102は、カップ部101を肩から吊り下げるものであればよい。紐や布テープであってもよいし、タンクトップのような幅の広い、いわゆるラウンドタイプのストラップであってもよい。ラウンドタイプの場合は、外装カップ101aと同じ素材で肩ストラップ102が形成されてもよい。肩ストラップ102の態様は一対のカップ部101に対応して一対の肩ストラップ102をそれぞれカップ部上部とバック布104に取り付ける態様に限定されず、例えば、スポーツタイプのブラジャーの肩ストラップのように、背中側で2本の肩ストラップ102が一体となりバック布104に取り付けられる態様であってもよい。また、カップ部101のみに肩ストラップ102が取り付けられている、いわゆる「ホルターネック」タイプであってもよい。肩ストラップ102の取り付け位置は、カップ部101の形状やカップ部を有する衣類のデザインによって決定することができる。
【0016】
なお、本実施形態において、前記内カップ101bは、前記の前中心側の端部以外の箇所において、前記支持部103とは直接に接続されてはおらず、隙間を有しているが、前記内カップ101bと前記支持部103との間には、被覆部材107が掛け渡されていることが好ましい。前記被覆部材107は、前記内カップ101bが前記肩ストラップ102に引き上げられた際にも、前記支持部103を引き上げることがないように形成されている。一例として、前記隙間の長さよりも予め設定した長さだけ長く設計した前記被覆部材107を用いることができる。ここで、前記予め設定した長さとは、前記内カップ101bが前記肩ストラップ102に引っ張られたときに、前記被覆部材107を介して前記支持部103が前記内カップ101bを引っ張らない程度の長さである。この場合の前記被覆部材107としては、前記内カップ101bの裏打ちと同素材のものとしてもよく、外観のデザインにバリエーションを持たせることができる。
【0017】
また、他の例としては、前記内カップ101bおよび前記肩ストラップ102よりも伸縮性の高い素材を、前記被覆部材107として用いることもできる。前記伸縮性の高い素材としては、メッシュ材、パワーネット等があげられる。このような伸縮性の高い素材を前記被覆部材107として用いることで、前記内カップ101bが前記肩ストラップ102に引き上げられた際にも、前記被覆部材107が伸びることで、前記支持部103を引き上げないようにすることができる。本実施形態において、前記被覆部材107が掛け渡されている態様であると、前記内カップ101bの着用時の位置を、より一定に保持しやすくなるとともに、例えば、ブラジャー100の着用時や洗濯時における型崩れ等を防ぐこともできる。また、前記被覆部材107として、メッシュ状の布材を用いると、着用時のバージスライン周辺の通気性が良好なものとなり、また、バージスライン周辺のバストの肌すべりも良好となるので、快適な着用感のブラジャーを提供することができる。
【0018】
図5に、前記第一の実施形態の第一変形例に係るブラジャーを示す。図5(a)は、本例のブラジャーのカップ部付近を背面側から見た図であり、図5(b)は、前記カップ部をII−II方向に見た断面図である。本変形例においては、前記内カップ101bは、前記バスト中間領域Aから脇側部分を経由して前記肩ストラップ102との吊着部分に至る周縁部に沿って、さらにリフト布108を有している。前記リフト布108は、前記内カップ101bよりも低伸度の素材で形成されていることが好ましい。低伸度の素材を前記内カップ101bの周縁部に設けることで、前記内カップ101b周縁部の剛性を高め、装着時にバスト下部の前記中間領域Aを、より持ち上げやすくすることができる。前記リフト布108は、前記内カップ101bの周縁部側のみに縫着することが好ましい。具体的には、パワーネット、サテンネット、トリコネット等の素材がより好ましいが、これらに限定されない。前記リフト布108としては、伸縮性の低いテープ材を用いてもよい。前記リフト布108は、図5(b)に示すように、内カップ101bの外側(外装カップ101a側)に設けることが肌当たり等の点から好ましいが、これに限定されず、内カップ101bの内側(着用時の肌側)に設けてもよい。なお、本実施態様において、前記リフト布108を前記内カップ101bの周縁部側と縫着する際に、前記内カップ101bの下部を「いせ込み」によって、内側すなわちバストと接する側にわずかに膨出させることで、バストに対する肌当たりを良くすることもできる。
【0019】
上記第一の実施形態の第一変形例では、リフト布108を内カップ101bに設ける例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。リフト布108を設ける代わりに、図6に示すように内カップ101bの周縁部101b−2を低伸度となるよう形成してもよい。より具体的には、編地の伸度を部分的に切り替える方法(編変わり)や、樹脂含浸によって内カップ101bの周縁部101b−2の伸度を他の部分101b−1よりも低いものとすることができる。この場合には、前記リフト布108を別途設けなくとも前記内カップ101b周縁部の剛性を高めることができる。
【0020】
あるいは、リフト布108と被覆部材107とを、同一の素材で一体に形成することもできる。前記リフト布108を、前記内カップ101bよりも低伸度の素材で形成する場合、前記被覆部材107に相当する部分は、前記内カップ101bと前記支持部103との間の隙間の長さよりも長く設けておくとよい。前記被覆部材107に相当する部分の長さは、前記内カップ101bが前記肩ストラップ102に引っ張られたときに、前記被覆部材107を介して前記支持部103が前記内カップ101bを引っ張らない程度の長さとすることが好ましい。
【0021】
図7に、前記第一の実施形態の第二変形例に係るブラジャーのカップ部付近を背面側から見た図を示す。図7(a)に示す変形例においては、前記リフト布108は、前中心側部分に比べ脇側部分において幅広に形成されている。脇側において前記リフト布108の幅を広く設けることによって、バストの脇側に対する前記リフト布108の当接面積が広がり、脇側のバストを押し上げる(すくい上げる)力を大きくすることができるので、好ましい。このような形態にすることで、バストの脇流れを防止することができる。図7(b)に示す変形例においては、前記リフト布108は、前記内カップ101bにおいて、バストの脇側から下側にかけて、広い範囲に形成されている。図7(b)に示すような態様とすると、前記リフト布108がバストを押し上げる(すくい上げる)面積を大きくすることができるので、好ましい。
【0022】
図8に、前記第一の実施形態の第三変形例に係るブラジャーのカップ部付近を背面側から見た図を示す。本変形例においては、前記内カップ101bは、前記外装カップ101aの脇側端部とは分離して形成されている。着用者のバストボリューム等によっては、前記内カップ101bは、前記外装カップ101aの脇側端部とは分離して形成されていても、十分な効果を得ることができる。この場合、前記内カップ101bと前記外装カップ101aの脇側外縁とは、前記被覆部材107を介して連結させることもできる。
【0023】
図9に、前記第一の実施形態の第四変形例に係るブラジャーのカップ部において、図5(b)に示す箇所に対応する箇所を示す断面図を示す。本例においては、前記リフト布108は、前記被覆部材107の一端側を折り返す(ワサ状とする)ことにより形成されている。折り返した前記被覆部材107の端部は、前記内カップ101bの周縁部側に接合され、前記被覆部材107の他端側は、前記支持部103に接合されている。バストを引き上げる力が必要であるリフト布108については、前記被覆部材107をワサ状として伸び難いものとすることにより、求められる機能が異なる前記リフト布108の機能と前記被覆部材107の機能とを、同じ素材によって実現することができる。本構成とすることにより、製造コストを低減することができる。
【0024】
(第二の実施形態)
次に、図10から図12に、本発明のカップ部を有する衣類の第二の実施形態に係るブラジャー200を示す。本実施形態のブラジャー200は、一対のカップ部201、一対の肩ストラップ202、支持部203、およびバック布204を主要構成要素とする、いわゆるフルカップのブラジャーである。本実施形態においては、バック布204は、着脱自在な連結係止部205を背中心付近に有している。図10は、バック布204を係止した状態の本実施形態のブラジャー200の斜視図であり、図11は、バック布204を開いた状態の本実施形態のブラジャー200の背面図である。図12は、カップ部201を図10においてIII−III方向に見た断面図である。前記三図において、同一部分には同一符号を付している。本実施形態においては、前記支持部203は土台部203aを有しており、前記土台部203aによって、前記一対のカップ部201が連結されている。前記支持部203のバージスラインに沿う部分には、ワイヤー203bが設けられていてもよいが、ノンワイヤーとすることもできる。前記土台部203aの両端には、一対のバック布204の一端が取り付けられている。一対のバック布204の他端は、連結係止部205が取り付けられて、着脱自在になっている。本例のブラジャーでは、連結係止部205として、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))を使用しているが、他の種類の係止具を使用してもよく、また、バック布が連結係止部205を有さないフロントホックタイプや、連結係止部205がないタイプ、バック布を結んで係止するタイプであってもよい。肩ストラップ202の他端は、バック布204の上辺に取り付けられた円環の係止具206aを通って反転し、エイト環からなる長さ調節具206bに導入されることによって、肩ストラップ202の長さ調整が可能な状態で、肩ストラップ202の他端側が、バック布204の上辺に取り付けられている。肩ストラップ202の態様はこれに限定されず、例えば、前記一対のカップ部201の上部同士を互いに繋ぐように取り付けられている、いわゆる「ホルターネック」タイプであってもよい。フルカップのブラジャーの場合には、肩ストラップ202のカップ部201への取り付け位置は、カップ部201の中央寄りの部分であり、肩ストラップ202によってバスト全体を持ち上げてバストボリュームの重心を上にする構成である。
【0025】
前記一対のカップ部201は、それぞれ外装カップ201aと内カップ201bとを有している。前記外装カップ201aは、上部が肩ストラップ202に取り付けられているとともに、下縁部が支持部203に接続されている。前記内カップ201bは、上部が肩ストラップ202に吊着されており、下縁部は、前記バストの中間領域Aに接するように形成されている。図12の断面図に示すように、前記内カップ201bの下縁部は、前記外装カップ201aとは接合されていない。そのため、前記内カップ201bは、前記外装カップ201aとは独立に前記肩ストラップ202によって引き上げることができる。前記バストの中間領域Aにおいて、前記肩ストラップ202の引き上げ力によって、前記内カップ201bを持ち上げることで、バストトップ位置Tを高く保持することができる。また、前記内カップ201bは、前記支持部203に引っ張られることがないので、前記内カップ201bが接する前記バストの中間領域Aを効果的に持ち上げることができる。本発明のカップ部を有する衣類は、内カップ201bを吊り下げる構造を採用することにより、バストのボリュームが多少異なっている場合であっても、内カップ201bが前後に揺動してバストに良好にフィットする。前記内カップ201bは、バストを包み込むように形成されているので、例えば、加齢等によりバストの肉質が柔らかくなり下垂が進行している場合であっても、バストを全体的に上方に引き上げることができる。前記内カップ201bは、バストトップを含むバストの膨出部分が円錐形状となるように形成されていることが好ましい。
【0026】
前記内カップ201bの上縁部の少なくとも一部は、前記外装カップ201aの上縁部に接合されていることが好ましい。前記内カップ201bの上縁部の少なくとも一部を前記外装カップ201aの上縁部に接合することで、前記内カップ201bの取り付け位置を一定に保持しやすくなる。接合は、縫着、接着等の方法で行うことができる。本実施態様において、前記内カップ201bは、前記外装カップ201aの前記肩ストラップ202の取り付け位置から前記支持部203の脇部分に近接する位置までの領域の少なくとも一部において接合部分を有すると、前記内カップ201bの着用時の位置を、より一定に保持しやすくなる。また、前記内カップ201bは、前記支持部203とは直接に接続されてはおらず、隙間を有しているが、前記内カップ201bと前記支持部203との間には、被覆部材207が掛け渡されていることが好ましい。
【0027】
なお、本実施形態での前記内カップ201bの素材、前記連結係止部205、前記肩ストラップ202、前記被覆部材207については、前記第一の実施形態における内カップ101b、連結係止部105、肩ストラップ102および被覆部材107と同様である。
【0028】
図13に、前記第二の実施形態の第一変形例に係るブラジャーのカップ部付近を背面側から見た図を示す。本例においては、前記内カップ201bは、前記バスト中間領域Aから脇側部分を経由して前記肩ストラップ202との吊着部分に至る周縁部に沿って、さらにリフト布208を有している。前記リフト布208は、前記第一の実施形態におけるリフト布108と同様に形成することができる。
【0029】
(第三の実施形態)
図14に、本発明のカップ部を有する衣類の第三の実施形態に係るブラジャー300を示す。本実施形態のブラジャー300は、一対のカップ部301、一対の肩ストラップ302、支持部303、およびバック布304を主要構成要素とし、前記一対のカップ部301は、それぞれ外装カップ301aと内カップ301bとを有している。本例のブラジャー300では、前記内カップ301bが、前記第一および第二の実施形態に例示したような円錐形状ではなく、帯状である。そして、前記内カップ301bは、上部が肩ストラップ302に吊着され、前記バストの中間領域Aを被覆するような、いわゆるドーナツ状に形成されている。その他の構成は、前記第一および第二の実施形態と同様である。本実施形態における内カップ301bは、いわゆるフルカップタイプのブラジャーのように、肩ストラップの取り付け位置がカップ部の中央寄りの部分であって、肩ストラップによってバスト全体を持ち上げる構成とする態様において、好適に使用することができる。なお、前記内カップ301bは、前中心側部分に比べ脇側部分において幅広に形成することも好ましい。脇側において前記内カップ301bの幅を広く設けることによって、バストの脇側に対する前記内カップ301bの当接面積が広がり、脇側のバストを押し上げる(すくい上げる)力を大きくすることができる。このような形態にすることで、バストの脇流れを防止することができる。
【0030】
(第四の実施形態)
図15に、本発明のカップ部を有する衣類の第四の実施形態に係るブラジャー400を示す。本実施形態のブラジャー400は、一対のカップ部401、一対の肩ストラップ402、支持部403、およびバック布404を主要構成要素とし、前記一対のカップ部401は、それぞれ外装カップ401aと内カップ401bとを有している。本例のブラジャー400では、前記支持部403が、土台部を有しておらず、前記一対のカップ部401が、前記土台部を介さずに連結されている。前記連結は、前記支持部403同士が連結されていてもよいし(図15(a))、前記連結係止部105を前中心に設けて、フロントホックタイプとしてもよい(図15(b))。その他の構成は、前記の実施形態と同様であり、同様の効果を得ることができる。このように、本発明のカップ部を有する衣類は、様々なデザインにも適用することができる。
【0031】
(第五の実施形態)
図16に、本発明のカップ部を有する衣類の第五の実施形態に係るブラジャー500を示す。なお、図16では、手前側に位置するカップ部のみ内部構成を図示している。本実施形態に係るブラジャー500は、左右のカップ部が三角形状を呈するように形成されている、いわゆる「三角ブラ」である。その他の構成は上記第二の実施形態に係るブラジャー200とほぼ同様である。以下において、主としてブラジャー200の構成と異なる部分について説明する。本実施形態のブラジャー500は、一対のカップ部501、一対の肩ストラップ502、支持部503、バック布504、およびリフト布508を主要構成要素とし、前記一対のカップ部501は、それぞれ外装カップ501aと内カップ501bとを有している。外装カップ501a及び内カップ501bは、それぞれ三角形状に形成されており、前中心側の端部が互いに接する程度に近接するように支持部503に取り付けられている。支持部503は、着用状態において、前中心部分の湾曲が緩やかになるように形成されている。
【0032】
(着用評価)
図1に示すタイプの本発明に係るブラジャー100を作製し、着用評価を行った。図17は、前記ブラジャー100および従来品のブラジャーについて、それぞれ同一モニターが着用した際のバストの形状を示す図である。(a)は、前記2種類のブラジャー着用時の胸部分を正面から見た図、(b)は同じく側面から見た図、(c)は前記2種類のブラジャーを着用した状態で写真撮影し、モアレ干渉縞による立体的な造型性を等高線で示した結果の図、(d)は前記2種類のブラジャー着用時の胸を上から撮影したバストシルエットを示す図である。各図において、それぞれ、左側が本発明のブラジャー、右側が従来品のブラジャーでの結果である。図中の十字マークは、モニター胸部の基準となる場所を示している。(a)中の二点鎖線は、本発明のブラジャー着用時におけるカップ部下縁の支持部(バージスラインに沿う部分)の高さを示す。(a)について比較すると、本発明のブラジャーでは、従来品のブラジャーに比べ、着用時に支持部(土台部)の位置が高く保持されていることがわかる。(b)について比較すると、本発明のブラジャーでは、(b)中、破線で示す部分(上バスト部分)に膨らみがでるようにバストが造形されていることがわかる。(c)について比較すると、本発明のブラジャーでは、バスト表面のモアレ縞が真円に近い形状となっていることがわかる。それに対して、従来品のブラジャーでは、横長の楕円に近い形状となっている。(b)および(c)の結果からは、従来品のブラジャーでは、バストの下垂に起因する上バストの膨らみが削げた部分に膨らみを持たせることができていないことがわかる。それに対し、本発明のブラジャーでは、バストの前記中間領域Aを効果的に持ち上げることができ、上バスト部分の削げた部分にも膨らみを持たせることができている。(d)について比較すると、本発明のブラジャーでは、(d)中、破線で示すバスト脇側のシルエットラインの傾きが小さく、従来品のブラジャーに比べ、バストが前中心側に寄せられていることがわかる。
【0033】
図18(a)に、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ボディスーツ600の斜視図を示す。
【0034】
このボディスーツ600のブラジャー相当部分は、図1で説明したブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、前記ボディスーツ600が、前記支持部103の下側に、衣類本体部であるボディ部601とクロッチ部602を有している。本例では、ボディ部601の一部が本発明におけるバック布となっているが、バック布を別途設けてその下に衣類本体部を取りつけてもよい。その他の態様は図1に示したブラジャー100と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。ここでは、第一の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するボディスーツについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するボディスーツとすることもできる。
【0035】
次に、図18(b)に本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ブラスリップ700の斜視図を示す。
【0036】
このブラスリップ700のブラジャー相当部分は、図1で説明したブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、前記ブラスリップ700が、前記支持部103の下側に、胸下部身頃701と、さらにそれに連なってスカート部702を有している。本例では、胸下部身頃701が本発明におけるバック布である。バック布を別途設けてその下に胸下部身頃701とスカート部702を取りつけてもよいし、バック布の下に直接スカート部702を取りつけてもよい。その他の態様は図1に示したブラジャー100と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。ここでは、第一の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するブラスリップについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するブラスリップとすることもできる。
【0037】
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャー、ボディスーツ、ブラスリップをあげて本発明を説明したが、本発明のカップ部を有する衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のようなファンデーション衣類以外にも、ブラキャミソール、セパレートタイプの水着のトップ部、レオタード、その他各種のカップ部を有する衣類に適用できる。また、前中心を係脱自在のホックで連結するフロントホックタイプの衣類にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のカップ部を有する衣類は、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のようなファンデーション衣類以外にも、スポーツ衣類、アウターなど、各種のカップ部を有する衣類に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
100、200、300、400、500 ブラジャー
101、201、301、401、501 カップ部
101a、201a、301a、401a、501a 外装カップ
101b、201b、301b、401b、501b 内カップ
102、202、302、402、502 肩ストラップ
103、203、303、403、503 支持部
103a、203a 土台部
103b、203b ワイヤー
104、204、304、404、504 バック布
105、205 連結係止部
106a、206a 円環係止具
106b、206b 長さ調節具
107、207 被覆部材
108、208、508 リフト布
600 ボディスーツ
601 ボディ部
602 クロッチ部
700 ブラスリップ
701 胸下部身頃
702 スカート部
A 中間領域
T バストトップ位置
L バージスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ部を有する衣類であって、
一対のカップ部、前記カップ部を引き上げるための肩ストラップ、カップ部を支持する支持部およびバック布を備え、
前記支持部は、前記一対のカップ部の下縁に設けられ、
前記バック布は、前記支持部の脇側に取り付けられ、
前記カップ部は、外装カップと内カップとを有し、
前記外装カップは、上部が前記肩ストラップに取り付けられているとともに、下縁部が前記支持部に接続されており、
前記内カップは、上部が前記肩ストラップに吊着されているとともに、バストトップ位置とバージスラインとの間の略中央部分の領域のうち、少なくとも、バストトップ位置とバージスラインの最下点近傍との間の領域を含むバスト中間領域に、内カップの下縁部が接するように形成されていることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記内カップの上縁部の少なくとも一部が、前記外装カップの上縁部に接合されている、請求項1記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記内カップが、少なくとも前記バスト中間領域から脇側部分を経由して前記肩ストラップとの吊着部分に至る周縁部に沿ってリフト布を有している、請求項1または2記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記リフト布が、前中心側部分に比べ脇側部分において幅広に形成されている、請求項3記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
前記内カップが、前中心側の端部において、前記支持部と接続されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
前記内カップと前記支持部との間に、被覆部材が掛け渡されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項7】
前記被覆部材が、メッシュ状の布材である、請求項6記載のカップ部を有する衣類。
【請求項8】
衣類がブラジャーである、請求項1から7のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項9】
衣類が、さらに衣類本体部を有し、前記衣類本体部が前記支持部の下に取り付けられている、請求項1から7のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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