説明

カップ部を有する衣類

【課題】ノンワイヤーブラジャーでも、バスト保形機能を高めたカップ部を有する衣類。
【解決手段】脇側バージスラインより前中心側のカップ脇部分から脇線ラインまで左右方向に延在し、かつ、肩ストラップ5と連結する上端から土台部分の下端まで延在する脇寄せサポートシート10を配置し、該脇寄せサポートシートは縦方向に強い張りを有する素材からなり、バージスラインの下方にカップ部材2と別体の土台部材3を配置し、前記土台部材と前記脇寄せサポートシートとからなるL型フレーム11を左右対称に備え、前記土台部材は前中央に配置する非伸縮材からなる前中心伸止材30と、該前中心伸止材と前記脇寄せサポートシートとの間に配置する伸縮材からなるカップ中央下伸縮材31とからなり、前記L型フレームは前記前中央伸止材が支点となり前記カップ中央下伸縮材が伸びて前記脇寄せサポートシートを前中央に向けて回転可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカップ部を有する衣類に関し、特に、ノンワイヤーブラジャー等において、脇流れする肉を前中央および削げが発生し易いバスト上部に押し戻し、脇をすっきりさせると共にバストの保形性能を高めるものである。
【背景技術】
【0002】
ブラジャー等のカップ部を有する衣類では、カップの下半周縁に沿ってワイヤーを装着したワイヤー付きとし、ワイヤーでバストの下垂や脇流れを抑制している場合が多い。
このように、ワイヤー付きとすると、バストの保形性に優れている利点を有するが、着用時にワイヤーによる締付感が生じるため、ワイヤー無し(ノンワイヤー)が好まれる場合がある。特に、高齢者は窮屈感や締付感無く、楽に着用できるノンワイヤーブラジャーが好まれる場合が多い。
【0003】
しかしながら、ノンワイヤーブラジャーは、ワイヤー付きブラジャーと比較して、保形性が低いことは否めない。しかも、ノンワイヤーブラジャーを好む高齢者ほど、加齢によりバストの張りが低下し、バストの下垂、脇流れが発生しやすくなっている。このように、バストの保形性に優れたワイヤー付きブラジャーの着用が好ましい高齢者程、ノンワイヤーブラジャーを好む背反する傾向がある。
即ち、現状では、ブラジャー等でバストを綺麗に整えることより、楽にゆったりと着用できる着用感を優先しているが、ワイヤー無しで楽に着用できるブラジャー等において、バストの脇流れや下垂を抑制してバストを綺麗に整える機能を有するブラジャー等が求められていることは言うまでもない。
【0004】
本出願人は、特開2003−313702号公報で、脇流れを抑制して脇をすっきりできるカップ付き女性用衣類を提供しており、図6に示すブラジャーではノンワイヤーとしている。該ブラジャー100は、脇側に肩ストラップ101の取付位置からカップ部下端縁(バージスライン)を通過して土台部の下端まで上下直線状に延在する前端縁102aを備えると共に、背面側端縁102bが着用者の背側の前鋸筋位置に位置するパネル部材102を配置している。即ち、カップ部の脇側部分から、従来は土台部で形成していた脇側下部および背面部分までを一枚のパネル部材102で覆っている。また、パネル部材102の前端縁102aに接するカップ部110の脇側部110aもバージスラインを越えて土台部の下端まで延在し、カップ部の脇部側には別体の土台部がない。カップ部と別体の土台部はカップ部110の前側部110bの下側にのみアンダー部111として存在し、かつ、その前中心Pは比較的高い位置に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−313702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1のブラジャーでは、脇部に非伸縮性材からなるパネル部材102を配置しているため、脇流れしたバストの肉をパネル部材102で押さえることができ、脇部分に現れる贅肉をパネル部材を配置していないブラジャーよりも押さえることはできる。また、該パネル部材102の上端に肩ストラップ101を連結しているため、肩ストラップ101でパネル部材102を引き上げ、脇流れした肉を上方へ引き上げる機能も有する。しかしながら、パネル部材102は背面側へかなり延在させているため、脇流れした肉を上方へ押し上げる力よりも背面側へ引く力が強く、バストアップ機能は低い。かつ、パネル部材102の前端縁と連結したカップ部110の脇側部110aの上端にも肩ストラップ101を連結し、該カップ部の脇側部110aをカップ部の下端縁を越えて土台部の下端まで延在させている。よって、肩ストラップ101による引き上げ力を高めると、カップ部110も上昇することになり、バストとカップ部との間に位置ずれが生じやすい。
かつ、該ブラジャーでは、安定感を出すためにアンダー部111の前中心Pを高くしているため、着用するとカップ部110が背面側に強く引っ張られ、左右のカップ部110が嘴状にへしゃげて、バストを整えることができない問題がある。
即ち、図6に示すブラジャーは、脇流れした肉をパネル部材102で押さえてダブつきを目立たたせない機能を有するが、脇流れした肉を前側へ押し戻したり、上方へ引き上げたりする機能は低く、バストを綺麗に整える機能は低い。
【0007】
本発明は前記した問題に鑑みてなされたもので、特許文献1と同様に脇側部分に脇流れした肉を押さえる機能を有するサポート部材を配置するブラジャー等のカップ部を有する衣類において、ノンワイヤーとしながら、脇流れしたバストの肉を押さえると共に、前中央およびバストの肉の削げが発生するバスト上部へと押し戻して、脇をすっきりさせると共にバストの保形機能を高めることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、ワイヤーを装着していないカップ部を有する衣類であって、
脇側バージスラインより前中心側のカップ脇部分から脇線ラインまで左右方向に延在すると共に、肩ストラップと連結する上端から土台部分の下端まで延在する脇寄せサポートシートを配置し、
前記脇寄せサポートシートは縦方向に強い張りを有する素材からなると共に、該脇寄せサポートシートの上端に肩ストラップを連結し、かつ、
左右のカップ部材のバージスラインの下方にカップ部材と別体の土台部材を配置し、該土台部材の脇側端を前記脇寄せサポートシートと連結させて、前記土台部材と前記脇寄せサポートシートとからなるL型フレームを左右対称に備え、
前記土台部材は前中央に配置する非伸縮材からなる前中心伸止材と、該前中心伸止材と前記脇寄せサポートシートとの間に配置する伸縮材からなるカップ中央下伸縮材とからなり、前記L型フレームは前記前中央伸止材が支点となり前記カップ中央下伸縮材が伸びて前記脇寄せサポートシートを前中央に向けて回転可能な構成としていることを特徴とするカップ部を有する衣類を提供している。
【0009】
本発明で用いる前記脇寄せサポートシートは、従来はカップ部の領域内であるカップ部脇部に配置していると共に、体幹の脇線である前記脇線ラインまで配置している。かつ、該脇寄せサポートシートは、カップ部の下端を越えて土台部まで配置して、前記のように、土台部材と組み合わせてL型フレームを構成している。
なお、該脇寄せサポートシートは、パターン上は前方向にカーブさせているが、縫製状態で直線上の外観を生じ、特に、着用時にバストに押されて直線状を呈する。
【0010】
前記脇寄せサポートシートと土台部材とからなるL型フレームは、着用時に、脇寄せサポートシートが肩ストラップに引き上げられると、前中央伸止材が伸びないことにより支点となり、伸縮するカップ中央下伸縮材が上向きに伸びて、脇寄せサポートシートを前中央部側へと回転させる。この脇寄せサポートシートの回転で、脇流れの肉を脇寄せサポートシートでしっかりと押さえながら、脇寄せサポートシートの回転移動に伴って保持しているバストの肉を中央側および上部へと押し戻すことが出来る。
これにより、脇流れした肉を前側へ寄せることができると共に、バスト上部に押し戻してバスト上部のボリュームアップを図ることができる。このバスト上部はバストが下垂すると、削げが目立つ箇所であるため、脇側に流れるバストの肉を削げ発生部分に押し戻すことで、バストラインを美しく修正することができる。
【0011】
本発明のカップ部を有する衣類は、ワイヤーを装着していないノンワイヤーブラジャー等とすることで、締付感を無くして楽に着用できるものとしている。
ノンワイヤーとしていることによるバスト保形機能の低下は、前記のように、脇寄せサポートシートとして縦方向の張りがある、所謂縦ハリのある素材を用い、かつ、該脇寄せサポートシートと、前中央伸止材とカップ中央下伸縮材からなる土台部材とで前中央向きに回転可能なL型フレームを設けることでバスト保形機能を補償している。
さらに、着用時に脇寄せサポートシートが肩ストラップで上方へ引き上げられ、その下部に接続したカップ中央下伸縮材が伸びながら上向きに回転するため、下垂するバストを引き上げる機能も有する。
これにより、ワイヤー付きブラジャーと同等以上のバストを綺麗に保形できる機能を持たせることができる。
【0012】
前記縦ハリのある脇寄せサポートシートは、脇流れする肉により変形せずに、肉を押さえこむことができる平面保持力を備え、かつ、肉にぴったりと密着し、脇寄せサポートシートが肩ストラップにより引き上げられる力が負荷された時に密着した肉を上方へと引っ張り揚げる力、前中央側へと回転する時に密着した肉を前中央側へと押し戻す力を有するものとしている。
素材としては、ハリとコシを有し、特に縦ハリを有するもので、ダブルラッセル、パワーネット、不織布、ウレタン、樹脂含浸布等が挙げられる。
【0013】
具体的には、脇寄せサポートシートの素材からなる試験片(幅2.5cm、長さ16cm)を、定速伸長形引張試験機において、掴み間隔10cmとして、上部を2.5cm掴む共に下部を3.5cm掴んで取り付け、伸度設定を60%として、30cm±2cm/minの速度で伸長回復を3回繰り返し、伸長力および緊迫力を測定した時に、伸長力と緊迫力の平均が300cN以上を有するものであることが好ましい。より好ましくは300〜600cNの範囲に入るものである。
【0014】
このように、脇寄せサポートシートを縦ハリのある素材で形成していることで、肩ストラップによる脇寄せサポートシートの引き上げ力を強くしないでも、脇流れした贅肉を脇寄せサポートシートの素材の機能で上方へ押し上げることができる。その結果、肩ストラップをきつくする必要はなく、肩への負担を低減できる。
【0015】
前記土台部材は伸縮素材で土台部材の全長を形成し、該伸縮素材のみでカップ中央下伸縮材を設ける一方、該伸縮素材の表面または/および裏面に非伸縮性素材を重ねて縫着して前中心伸止材とすることが好ましい。このように、前中心伸止材を積層素材から形成して厚くすると、前中心位置を安定保持することができ、かつ、カップ部材の周縁を囲む土台部分をカップ部材と別体として分離しているため、カップ部材を安定保持できる。よって、前中心位置を比較的低くでき、着用時に背面部が引っ張られた時にカップ部が口ばし状にへしゃげる形状になることを防止できる。
なお、前記の積層構造とせず、前中心伸止材を非伸縮素材のみで形成し、該非伸縮素材のみからなる前中心伸止め材の両側に伸縮素材からなるカップ中央下伸縮材を縫着して土台部材を構成してもよい。
さらに、土台部材を1枚の編地で構成し、編地のパワーを切り替えてもよい。
【0016】
前記カップ部材は、脇側下部材と、中央下部材と、前記脇側下部材および中央下部材との両部に接合する上部材の3つの部材でカップ部材を構成し、
前記中央下部材は土台部材に接する下辺の両端からバストトップに対応するカップ部頂点へ向けて山形状に突出する形状とし、該中央下部材を他の脇側下部材および上部材と比較して厚くしてバストアップ機能を持たせていることが好ましい。
前記カップ部材は非伸縮性または低伸縮性素材で形成することが好ましい。
また、該カップ部材の表面にレース等の外装材を取り付けることが好ましい。
なお、カップ部材は前記3つの部材を縫着して形成する代わりに、モールドした成形カップでもよい。
【0017】
さらに、前記土台部材の下端縁およびカップ部の上端縁には端始末用のテープを取り付けないことが好ましい。
このように、上下端縁にテープを取り付けないことにより、端縁が身体に食い込まず着用感を高めることができ、かつ、肉段を発生させないため外観も良くなる。
【0018】
前記左右のカップ部は3/4カップまたはフルカップであることが好ましい。
また、該カップ部材の脇端には左右の背面部材を前面側へ回りこませてカップ部材および土台部材と接合し、この左右の背面部材の前側脇側部分の内面に前記脇寄せサポートシートを重ねて配置して縫合していることが好ましい。
【0019】
さらに、肩ストラップは比較的広幅とし、該肩ストラップの先端に前記カップ部の上端と前記脇寄せサポートシートの上端の両方を連結し、脇寄せサポートシートとカップ部の両方に肩ストラップによる引き上げ力を付与することが好ましい。
【0020】
本発明のカップ部を有する衣類は、ブラシャー、ブラスリップ、ブラキャミソール等のカップ部を有するインナー、水着、レオタード等のカップ部を有するアウター、アウターの内面のバスト部分にカップ部が取り付けられる衣類等に適用できる。
【発明の効果】
【0021】
前述したように、本発明のカップ部を有する衣類では、ノンワイヤーとして楽に着用できるものとしながら、脇寄せサポートシートと土台部材とで着用時に脇寄せサポートシートを前中央側へと回転させるL型フレームを設けているため、脇流れするバストの肉を押さえながら前中央に押し戻してバストを寄せると共に、引き上げてバスト上部の削げが発生する部分のボリュームアップを図ることができる。
このように、ワイヤー付きと同等以上のバストの保形性を備えたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態のブラジャーの前面側からみた斜視図である。
【図2】前記ブラジャーの背面側の要部を示す図面である。
【図3】土台部材の斜視図である。
【図4】前記ブラジャーの作用の説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態のブラキャミソールを示す概略図であり、(A)は前面図、(B)は背面図である。
【図6】従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に第1実施形態のブラジャー1からなるカップ部を有する衣類について説明する。
【0024】
ブラジャー1は3/4カップまたはフルカップのブラジャーである。
ブラジャー1は左右一対のカップ部材2、土台部材3、左右一対の背面部材4、左右一対の肩ストラップ5とを構成要素とし、左右の背面部材4を背面中央で止具で着脱自在に係止するものである。かつ、カップ部材2の下半周縁のバージスラインに沿わせるワイヤーを装着していないノンワイヤーのブラジャーである。
【0025】
前記カップ部材2の脇側端縁はバージスラインの脇部よりもカップ側に寄った位置とし、上下方向の略直線ラインL1としている。
前記背面部材4は脇線ラインL2を越えて略直線ラインL1と接する位置まで前側に回り込ませ、土台位置の下端まで延在している。
【0026】
前記背面部材4の前側位置の全領域の内面に、脇寄せサポートシート10を重ねて縫着している。よって、該脇寄せサポートシート10は脇側バージスラインを越えたカップ側脇部分の直線ラインL1から脇線ラインL2まで左右方向に延在すると共に、肩ストラップ5と連結する上端から土台部分の下端まで上下に延在している。
【0027】
前記脇寄せサポートシート10は、ハリとコシがある平面保持力が強い素材で、特に縦ハリを有し、比較的伸度が低い難伸縮性で横伸びより縦伸びを大としている素材で形成している。具体的には、前記のように、定速伸長形引張試験機において、脇寄せサポートシートの素材からなる試験片を掴み間隔10cmとして、上部を2.5cm掴むと共に下部を3.5cm掴んで取り付け、伸度設定を60%として、30cm±2cm/minの速度で伸長回復を3回繰り返し、伸長力および緊迫力を測定した時に、伸長力と緊迫力の平均が300〜600cNの範囲に入るものを用いている。
該素材としては、ダブルラッセルやパワーネットが挙げられる。
【0028】
前記土台部材3は、左右のカップ部材2の下周縁を覆うと共に前記脇寄せサポートシート10の下部前縁と接する位置まで延在する形状としている。
該土台部材3は前中心伸止材30と、該前中心伸止材30の左右両端に連続させるカップ中央下伸縮材31とから構成し、左右一対のカップ中央下伸縮材31の外端はそれぞれ背面部材4および脇寄せサポートシート10の前側端の下部と縫着している。該脇寄せサポートシート10の上端は後述するように、肩ストラップ5と連結している。
【0029】
前記土台部材3と脇寄せサポートシート10の下部の前端縁とを縫着して連続させ、図1、2でクロス斜線で示すL型フレーム11を設けている。該L型フレーム11は左右一対で対称に配置される。
該L型フレーム11は、一端が前中心伸止材30であり、他端の脇寄せサポートシート10の上端を肩ストラップ5と連結して上方へと引っ張られる。該脇寄せサポートシート10と伸びない前中心伸止材30との間に伸びるカップ中央下伸縮材31が位置することで、前中心伸止材30が回転支点となって、カップ中央下伸縮材31が伸びながら回転し、脇寄せサポートシート10が上方へと引っ張られながら前中央向きに回転するようにしている。
【0030】
前記左右のカップ部材2の前端縁は図示のように互いに縫着していることにより、土台部材3の前記前中心伸止材30は左右のカップ部材2の前中央下端に連続した山形形状としている。該山形は曲線状の頂点としてもよいし、鋭角に突出した頂点としてもよい。
本実施形態では、図3に示すように、伸縮素材G1で土台部材3の全長を形成し、該伸縮素材G1のみでカップ中央下伸縮材31を設ける一方、該伸縮素材G1の表面に非伸縮性素材G2を重ねて縫着して前中心伸止材30としている。
【0031】
前記左右一対のカップ部材2は、それぞれ脇側下部材21と、中央下部材22と、前記脇側下部材21と中央下部材22との両部に接合する上部材23の3つの部材で構成している。これら3つの部材はいずれも非伸縮性としている。
また、中央下部材22は土台部材3に接する下辺の両端からバストトップに対応するカップ部頂点へ向けて山形状に突出する形状としている。該中央下部材22を他の脇側下部材21および上部材23と比較して厚くしてバストアップ機能を持たせている。
前記カップ部材2の表面にはストレッチレースからなる外装材25を取り付けている。
前記カップ部材2の上端縁および前記土台部材3の下端縁には、端始末用の伸縮テープ等は取り付けていない。
【0032】
また、カップ部材2の上辺は前記脇寄せサポートシート10と接する位置を上端位置としている。隣接するカップ部材2の上端と脇寄せサポートシート10の上端とに、幅広とした肩ストラップ5の前端を縫着している。該肩ストラップ5は幅広のストレッチレース帯27の幅方向の両側に一対のゴムテープ28を縫着し、先端側を調節具29を介して背面部材4と連結している。
【0033】
前記構成としたブラジャー1の着用状態を図4に基づいて説明する。
ブラジャー1の着用時、肩ストラップ5によりカップ部材2および土台部材3を上方へと引っ張って支持すると共に、左右の背面部材4を背面中央で係止することにより左右方向に引っ張って支持する。これにより、ブラジャー1は左右のバストを覆う状態で保持される。
【0034】
肩ストラップ5は脇寄せサポートシート10の上端に連結しているため、肩ストラップ5による上方への引上力は脇寄せサポートシート10に直接付加される。脇寄せサポートシート10の下部は土台部材3と連結してL型フレーム11を構成している。該L型フレーム11は、前記のように、肩ストラップ5により上方へと引っ張られる脇寄せサポートシート10と伸びない前中心伸止材30との間に伸びるカップ中央下伸縮材31を位置させているため、前中心伸止材30が回転支点となって、カップ中央下伸縮材31が伸びながら上向きに回転し、脇寄せサポートシート10が上方へと引っ張られながら前中央向きに回転する。これにより、カップ中央下伸縮材31の上部のカップ部材2の脇側下部材21で保持しているバストを上向きに押し上げる。
かつ、該カップ中央下伸縮材31と連結している脇寄せサポートシート10も上中央向きに回転させ、特に、脇寄せサポートシート10の上側部が前中央寄りに回転移動することになる。
【0035】
脇寄せサポートシート10は、前記のように、縦ハリのある素材で形成しているため、脇流れするバストの肉にぴったりとフィットしても、外部に段差を発生させることなく強く押圧する。かつ、このバストの肉にぴったりとフィットした脇寄せサポートシート10が前中央向きに回転することで、脇流れした肉を前中央側へと押し戻し、所謂バストを寄せる作用をする。かつ、脇寄せサポートシート10の上側部がより前中央に回転移動するため、脇流れした肉をバスト上部に押し戻す。このバスト上部の脇側はバストが下垂すると削げが目立つ箇所であるため、この部分の肉を押し戻すと、バストの脇側上部をボリュームアップできる。
【0036】
このように、ブラジャー1はワイヤーを装着していないが、縦ハリのある脇寄せサポートシート10を設け、かつ、カップ中央下伸縮材31と前中心伸止材30とからなる土台部材3を脇寄せサポートシート10と連結して回転可能なL型フレーム11を構成していることで、ワイヤーを装着している場合と同等以上のバスト保形機能を持たせている。かつ、肩ストラップ5の引っ張り力を強くしないでも、縦ハリのある脇寄せサポートシート10を用いているため、脇流れした肉をしっかりと押圧しながら前中央側へと押し戻すため、脇をすっきりとさせることができる。
【0037】
さらにまた、土台部材3をカップ部材2と分離して、前中央を低くしているため、左右の背面部材4で引っ張った時に、カップ部材2がクチバシ状にひしゃげることはなく、美しいバストラインを実現できる。
【0038】
図5に第2実施形態のブラキャミソール50を示す。
該ブラキャミソール50は、第1実施形態のブラジャーと同様な構成で、左右背面部材を一体とした背面材52とした点および肩部54を長さ調節不可とした点を相違させたブラジャー部51をキャミソール53のトップ側内面に取り付けている。
前記のように、ブラジャー部51は第1実施形態のブラジャーと同様な構成としているため、同様な作用効果を備え、楽な着用感で、バストの脇流れする肉を前側に寄せて、かつ、削げが目立つ上方へあげることができる。
【0039】
本発明は前記実施形態のブラジャーやブラキャミソールに限定されず、ブラスリップ等のカップ部を有する衣類にも適用できる。その際、前記土台部材は、前ブラジャーの土台部材と同一上下幅を有するものとしていることが好ましい。また、カップ部を有するレオタード、水着等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ブラジャー
2 カップ部材
3 土台部材
4 背面部材
5 肩ストラップ
10 脇寄せサポートシート
11 L型フレーム
30 前中心伸止材
31 カップ中央下伸縮材
50 ブラキャミソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーを装着していないカップ部を有する衣類であって、
脇側バージスラインより前中心側のカップ脇部分から脇線ラインまで左右方向に延在すると共に、肩ストラップと連結する上端から土台部分の下端まで延在する脇寄せサポートシートを配置し、
前記脇寄せサポートシートは縦方向に強い張りを有する素材からなると共に、該脇寄せサポートシートの上端に肩ストラップを連結し、かつ、
左右のカップ部材のバージスラインの下方にカップ部材と別体の土台部材を配置し、該土台部材の脇側端を前記脇寄せサポートシートと連結させて、前記土台部材と前記脇寄せサポートシートとからなるL型フレームを左右対称に備え、
前記土台部材は前中央に配置する非伸縮材からなる前中心伸止材と、該前中心伸止材と前記脇寄せサポートシートとの間に配置する伸縮材からなるカップ中央下伸縮材とからなり、前記L型フレームは前記前中央伸止材が支点となり前記カップ中央下伸縮材が伸びて前記脇寄せサポートシートを前中央に向けて回転可能な構成としていることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記カップ部材は、脇側下部材と、中央下部材と、前記脇側下部材および中央下部材との両部に接合する上部材の3つの部材でカップ部材を構成し、
前記中央下部材は土台部材に接する下辺の両端からバストトップに対応するカップ部頂点へ向けて山形状に突出する形状とし、該中央下部材を他の脇側下部材および上部材と比較して厚くしている請求項1に記載のカップ部を有する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−236521(P2011−236521A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108452(P2010−108452)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】