説明

カップ部を有する衣類

【課題】 楽に着用できるにもかかわらずバストの造形性に優れ、かつ、非装着時のカップ形状も崩れにくい、カップ部を有する衣類を提供する。
【解決手段】 本発明のカップ部を有する衣類は、一対のカップ部101、カップ部を支持する変形可能なカップ支持部102およびバック部103を備え、前記カップ支持部102は、前記一対のカップ部101の下縁に設けられ、前記バック部103は、前記カップ支持部102の脇側に取り付けられ、前記カップ支持部102は、非装着状態においても前記カップ部101を立体的に保持するように、伸縮性素材を含む保形布105が架け渡されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ部を有する衣類、例えば、ブラジャーでは、バストトップの位置を上方に引き上げ、かつ胸の谷間をくっきりさせてバストを豊かに見せるために、ワイヤーをカップの外側から下側にかけての縁部に配置することによって、バストの造形性を向上させることが提案されてきた。その一方で、楽に着用できることやファッション性の観点から、ワイヤーを使用しないノンワイヤータイプのブラジャーや、剛性が低いワイヤーを用いたブラジャーがある。これらのブラジャーにおいても、バストの造形性を向上させるため、様々な提案がなされている。一例としては、非伸縮性素材からなる押上材を左右のカップ部の下部に内面に配置し、例えば、晒しで巻きつけるようにバスト下部を押さえ、押上材で押さえ込んだ肉をバスト上部に押し上げることで、ノンワイヤーであってもバスト上部に豊かな膨らみをもたらすカップ部を有する衣類が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−217817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のノンワイヤータイプのブラジャーや、ワイヤー部の剛性が低い、例えば、樹脂ワイヤーを用いたブラジャー等のカップ部を有する衣類においては、土台部の剛性が小さいため、装着時におけるバストの造形力は十分に得ることができるとはいえなかった。また、非装着時においては、曲面で構成されているカップ部が、その形状を保持するようにしっかりと支持することができなかった。そのため、店頭に展示する際などには、カップ部の形状が崩れ易く、効果的なディスプレイが困難であるという問題があった。図12に、従来品のノンワイヤータイプのブラジャーを、平置きした状態(非装着時の状態)においてカップ部を、装着時の上方向から見た図の一例を示す。図中の二点鎖線は、装着時の形状を示す。このように、従来品のノンワイヤー対応のブラジャーは、土台部の剛性が小さいことで、平置きするとカップが広がってしまい、つぶれたような形状となりがちであった。
【0005】
本発明は、楽に着用できるにもかかわらずバストの造形性に優れ、かつ、非装着時のカップ形状も崩れにくい、カップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、一対のカップ部、カップ部を支持する変形可能なカップ支持部およびバック部を備え、
前記カップ支持部は、前記一対のカップ部の下縁に設けられ、
前記バック部は、前記カップ支持部の脇側に取り付けられ、
前記カップ支持部は、非装着状態においても前記カップ部を立体的に保持するように、伸縮性素材を含む保形布が架け渡されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカップ部を有する衣類は、前記カップ支持部は、非装着状態においても前記カップ部を立体的に保持するように、伸縮性素材からなる保形布が架け渡されている。このため、ノンワイヤータイプであり楽に着用できるにもかかわらずバストの造形性に優れ、かつ、非装着時のカップ形状も崩れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第一の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図2】図2は、前記第一の実施形態に係るブラジャーのカップ部付近を背面側から見た図である。
【図3】図3は、前記第一の実施形態に係るブラジャーのカップ部を上方向から見た図である。
【図4】図4は、本発明のカップ部を有する衣類の、前記第一の実施形態に係るブラジャーの変形例を示す図である。(a)は、斜視図であり、(b)は、カップ部付近を背面側から見た図である。
【図5】図5は、本発明のカップ部を有する衣類の、第二の実施形態に係るブラジャーを示す図である。(a)は、斜視図であり、(b)は、カップ部付近を背面側から見た図である。
【図6】図6は、本発明のカップ部を有する衣類の、第三の実施形態に係るブラジャーを示す図である。(a)は、斜視図であり、(b)は、カップ部付近を背面側から見た図である。
【図7】図7は、本発明のカップ部を有する衣類の、第四の実施形態に係るブラジャーを示す図である。(a)は、斜視図であり、(b)は、カップ部付近を背面側から見た図である。
【図8】図8は、本発明のカップ部を有する衣類の、第五の実施形態に係るブラジャーを示す図である。(a)は、斜視図であり、(b)は、カップ部付近を背面側から見た図である。(c)は、前記ブラジャーのカップ部をI−I方向に見た断面図である。
【図9】図9(a)、図9(b)、および図9(c)は、本発明のカップ部を有する衣類の、第六の実施形態に係るブラジャーのカップ部付近を背面側から見た図である。
【図10】図10は、着用評価におけるバストの形状を示す図であり、(a)は、ブラジャー着用時の胸部分を正面から見た図、(b)は同じく側面から見た図、(c)はブラジャーを着用した状態で写真撮影し、モアレ干渉縞による立体的な造型性を等高線で示した結果の図、(d)は、ブラジャー着用時の胸を上から撮影したバストシルエットを示す図である。
【図11】図11は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例を示す斜視図である。(a)はボディスーツ、(b)はブラスリップの一例である。
【図12】図12は、従来品のノンワイヤータイプのブラジャーを、非装着時の状態においてカップ部を上方向から見た一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカップ部を有する衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0010】
(第一の実施形態)
図1から図3に、本発明のカップ部を有する衣類の第一の実施形態に係るブラジャー100を示す。図1は、バック部103を係止した状態の本実施形態のブラジャー100の斜視図であり、図2は、バック部103を開いた状態の本実施形態のブラジャー100の背面図である。図3は、カップ部101付近を、図1における上方向から見た図である。前記三図において、同一部分には同一符号を付している。
【0011】
本実施形態のブラジャー100は、一対のカップ部101、一対のカップ部を支持するノンワイヤーのカップ支持部102、一対のバック部103および一対の肩ストラップ104を備えた、ノンワイヤータイプのブラジャーである。一対のカップ部101の下縁には、カップ支持部102が設けられ、カップ支持部102の脇側には、一対のバック部103の一端が取り付けられている。一対のバック部103の他端は、連結係止部106が取り付けられて、背中心付近で着脱自在になっている。カップ支持部102は、バージスラインに沿うように形成されており、前中心部材107によって連結されている。そして、一対のカップ部101の内側(着用時に肌に触れる側)には、伸縮性素材を含む保形布105が設けられている。保形布105は、ブラジャー100の非装着状態において、一対のカップ部101をそれぞれ立体的に保持するようにカップ支持部102に架け渡されている。
【0012】
本実施形態では、保形布105は、カップ部101の下側部分において、カップ支持部102の脇側部分と前中心側部分とを、図2の矢印の方向に、互いに引き寄せて架け渡されている。これにより、非装着時には、カップ部101の立体的形状を保形布105によって保持することができる。また、装着時には、保形布105によって、バストを包み込むように持ち上げることができる。
【0013】
保形布105は、伸縮性素材を含んでいる。そのため、着用時にバストとカップ部101との間のフィット性を高めることができる。前記伸縮性素材としては、例えば、パワーネットがあげられる。前記パワーネットは、メッシュ状であってもよいし、端始末不要(フリーカット)素材を用いてもよい。また、前記伸縮性素材としては、ダンボールニット等、その他の伸縮性のある布材を用いてもよい。保形布105は、伸び縮みが可能であり、伸ばした際に復元力がある素材であればよく、本発明の作用効果を有する限度であれば、部分的に非伸縮性素材が含まれていてもよい。メッシュ状の布地を用いてもよい。また、カップ支持部102の脇側部分と前中心側部分とを結ぶ方向において高伸縮であり、前記方向と略直交する方向には非伸縮または難伸縮であってもよい。このような素材としては、例えば、ワンウェイパワーネット、パワーネット、ツーウェイトリコットなどがある。保形布105は、非装着時にカップ部101をどの程度立体的な状態で保持するのかという点や、装着時にバストを寄せ上げるのに必要な力の大きさを考慮して、前記のような素材から適宜選択すればよい。保形布105は、通気性の素材とすると、気温が高い時期であっても快適に着用することができる。
【0014】
装着時には、保形布105は、バストに当接することで、カップ部101に沿う方向に伸びる。前記保形布105が伸びると、復元力が生じる。したがって、装着時にカップ支持部102がバストに押されて、脇側と前中心との距離が広がろうとしても、保形布105の復元力によって、カップ支持部102の形状を保持することができる。あるいは、保形布105の形状や素材によっては、カップ支持部102の脇側部分を前中心側に引き寄せようとする力を付与することができ、バストを「寄せる」効果を得ることができる。
【0015】
保形布105は、装着時にはバストに押圧されて、カップ部101側に変位する。この際、保形布105は、バストの押圧力によって、カップ部101に近接、または、接触する位置まで伸びながら変位する。これにより、カップ部101をバストにフィットさせることができる。ここで、バストに装着した時の保形布105の長さは、非装着時の長さを基準として、例えば、105パーセントから135パーセントの範囲となるように、カップ支持部102に取り付けることが好ましい。この範囲にあることで、装着時のバストとカップ部101との間のフィット性をより良好にし、優れたバスト造形性と、快適な着用感とを得ることができる。また、保形布105は、長手方向(脇側部分と前中心側部分とを結ぶ方向)に予め伸ばした状態でカップ支持部102に取り付けられているため、非装着時にはカップ支持部102の脇側部分と前中心側部分とを互いに引き寄せるように保持している。このため、非装着時においてもカップ形状が崩れない。よって、店頭での展示も効果的に行うことができる。なお、本発明において、保形布の伸縮性は、上記範囲に限定されるものではなく、バストサイズやカップ部の撓み易さ等を勘案して適宜設定すれば良い。
【0016】
なお、カップ部101の肌側に保形布105があり、これによってバストを寄せ上げる本実施形態のブラジャーでは、例えば、バストサイズに左右差があっても保形布105の伸縮によって左右差を吸収することができる。このように、従来は、カップ部にパッド等を装着することで得られていた効果が、本実施形態のブラジャーでは、パッド等を用いることなく得ることができる。
【0017】
本実施形態において、保形布105は、その上辺が、カップ支持部102の脇側部分よりも前中心側部分の方の位置が低くなるように架設されている。このように架設すると、上記において、バストを「寄せる」とともに、脇側から前中心側に向けて「上げる」方向に、バストをより効果的に押圧することができる。
【0018】
ブラジャー100は、前述のとおり、カップ支持部102の前中心側に前中心部材107を連結することで、一対のカップ部101が互いに連結されているが、前中心部材107と保形布105との位置関係については、次のとおりである。カップ支持部102の前中心側部分において、保形布105が架け渡されてカップ支持部102と連結されている位置は、カップ支持部102と前中心部材107との連結位置よりも下方に設けられている。このように、保形布の連結位置を前中心部材よりも下方とすることで、バストをより前中心側に、寄せるようにして持ち上げることができる。
【0019】
ブラジャー100は、前述のとおり、カップ支持部102の脇側にバック部103の一端が取り付けられている。バック部103の前記取り付け位置は、保形布105が架け渡されているカップ支持部102の脇側部分と隣接するように設けられている。このように、バック部103と保形布105が、カップ支持部102を挟んで連続的に繋がるように形成されていると、バストを含めた胴回り部分にブラジャー100をしっかりフィットさせることができる。
【0020】
本実施形態において、カップ支持部102は、布材を重ね合わせて形成されている。このように、本発明においては、カップ支持部は、剛直なワイヤー等を設ける必要はなく、変形可能なものでよい。カップ支持部102は、ノンワイヤーでもよいし、剛性の低い樹脂ワイヤーや、前記樹脂ワイヤーと同程度の剛性を有する金属ワイヤー等を設けていてもよい。前記金属ワイヤーとしては、径が小さい(細い)ものや、剛性の低いチタン等の材料を用いて形成されたワイヤーを用いることができる。また、上記のように、布材を重ね合わせてカップ支持部102を形成する場合には、バージスラインに沿うような湾曲形状を有する布テープを重ね合わせて用いても良い。
【0021】
上述のとおり、本実施形態のブラジャーは、剛直なワイヤーやパッドを設ける必要がなく、これら部材を設けたブラジャーと同等の効果を得ることができる。さらに、ブラジャーを軽量化することが可能である。また、ワイヤーのような硬い部材や、パッド等の形状が変化し難い部材を用いる必要がないので、例えば、旅行等で持ち運びする際にも、コンパクトな収納が可能である。
【0022】
なお、本実施形態においては、パッドを使用しなくても十分な効果は得られるが、さらにパッドを併用してもよい。この場合、カップ部101の肌側にパッド受けを設けておいてもよい。これにより、着用者の好みに応じてパッドを装着することもできる。
【0023】
本例のブラジャーでは、連結係止部106として、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))を使用しているが、他の種類の係止具を使用してもよい。また、バック部103が連結係止部106を有していなくてもよい。例えば、連結係止部106を前中心に設けてフロントホックタイプとしてもよい。また、連結係止部106がないタイプ、バック部を結んで係止するタイプであってもよい。
【0024】
肩ストラップ104の一端はカップ部101に取り付けられ、他端はバック部103の上辺に取り付けられた円環の係止具108aを通って反転し、エイト環からなる長さ調節具108bに導入されることによって、肩ストラップ104の長さ調整が可能な状態で、肩ストラップ104の他端側が、バック部103の上辺に取り付けられている。肩ストラップ104の態様はこれに限定されず、例えば、前記一対のカップ部101の上部同士を互いに繋ぐように取り付けられている、いわゆる「ホルターネック」タイプであってもよい。肩ストラップ104の取り付け位置は、カップ部101の形状やブラジャーのデザインによって決定することができる。肩ストラップ104は、カップ部101を肩から吊り下げるものであればよい。紐や布テープであってもよいし、タンクトップのような幅の広い、いわゆるラウンドタイプのストラップであってもよい。肩ストラップ104の態様は一対のカップ部101に対応して一対の肩ストラップ104をそれぞれカップ部101上部とバック部103に取り付ける態様に限定されず、例えば、スポーツタイプのブラジャーの肩ストラップのように、背中側で2本の肩ストラップ104が一体となりバック部103に取り付けられる態様であってもよい。また、肩ストラップ104を有しない、ストラップレスの形態とすることもできる。
【0025】
前記連結係止部106としては、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))、グリッパー、ボタン、紐、面ファスナーなどを、デザインや用途に応じて適宜選択して使用することができる。なお、上記のフック・アンド・アイやグリッパー、ボタンを用いる場合には、複数の留め位置を予め設けておくことにより、締め付け具合を微調整できるようにしておくことも好ましい。なお、上記以外の他の種類の係止具を使用してもよい。
【0026】
図4は、前記第一の実施形態の変形例に係るブラジャーを示す図である。図4(a)は、バック部103を係止した状態の本変形例のブラジャー100の斜視図であり、図4(b)は、バック部103を開いた状態の本変形例のブラジャー100の背面図である。本変形例においては、カップ支持部102に土台部110が設けられている。一対のカップ部101の下縁には、それぞれカップ支持部102が設けられ、前記一対のカップ支持部102の下縁には、土台部110が設けられている。そして、一対のカップ支持部102は、土台部110によって連結されている。本変形例においては、土台部110は、カップ部101の下縁途中まで延設されているが、前記下縁から脇部分に至る範囲でカップ部101に連結するようにしてもよい。土台部110を設けることで、アンダーバスト部分での装着安定性を向上させることができる。
【0027】
(第二の実施形態)
図5に、本発明のカップ部を有する衣類の第二の実施形態に係るブラジャー200を示す。図5(a)は、バック部103を係止した状態の本実施形態のブラジャー200の斜視図であり、図5(b)は、バック部103を開いた状態の本実施形態のブラジャー200の背面図である。本実施形態においては、保形布205は、カップ部101の下縁部と隙間を形成するように架け渡されている。
【0028】
バストを効果的に持ち上げるには、バストトップとバスト下部のバージスラインとの間の中間領域を押し上げることが効果的である。前記中間領域部分のバストを効果的に持ち上げるには、保形布205をカップ部101の下縁部に縫着せずに隙間を形成するようにするとよい。
【0029】
また、非装着時にカップ部101を立体的に保持することができるように保形布に作用する復元力を高くしておく場合には、装着時にカップ部101の下縁部がバストにフィットし難くなりやすい。カップ部101の下縁部周辺は、元々、バストとのフィット性が高い部分である。この部分に、保形布を復元力が高くなる状態、すなわち、保形布の両端がカップ部に引っ張られる力が大きくなるように配置すると、着用状態においてバストが保形布を押す力が大きくなるため、カップ部101が押し下げられることがある。この場合、バージスラインとカップ部101下縁部(カップ支持部102)とがフィットしないこととなる。本実施形態のように、保形布205とカップ部101下縁部との間に隙間を設けておくと、装着時のバストに対するカップ部101のフィット性が高く、バージスラインとカップ支持部102のフィット性も良好なものとしつつ、非装着時のカップ部101も立体的に保持することができる。その他の構成は、前記の実施形態一と同様であり、同様の効果を得ることができる。
【0030】
(第三の実施形態)
図6に、本発明のカップ部を有する衣類の第三の実施形態に係るブラジャー300を示す。図6(a)は、バック部103を係止した状態の本実施形態のブラジャー300の斜視図であり、図6(b)は、バック部103を開いた状態の本実施形態のブラジャー300の背面図である。本実施形態においては、カップ部101は、通気性部材311を介してカップ支持部102と接続されている。
【0031】
通気性部材311としては、例えば、メッシュ状の布材を使用することができる。バスト周辺では、バージスラインの直上方部分において、発汗量が最も多くなる。カップ部101とカップ支持部102との間に通気性部材311を設けることにより、汗をかきやすい部分の風通しが良くなる。前記箇所に通気性部材311を設けると、着用時のバージスライン周辺の通気性が良好なものとなり、快適な着用感のブラジャーを提供することができる。その他の構成は、前記の実施形態一と同様であり、同様の効果を得ることができる。
【0032】
(第四の実施形態)
図7に、本発明のカップ部を有する衣類の第四の実施形態に係るブラジャー400を示す。図7(a)は、バック部103を係止した状態の本実施形態のブラジャー400の斜視図であり、図7(b)は、バック部103を開いた状態の本実施形態のブラジャー400の背面図である。本実施形態においては、保形布405は、カップ支持部102からカップ部101にも延設して設けられている。このように、保形布405を広範囲に設けることにより、装着時に、バストとのフィット性をより向上させることができる。
【0033】
(第五の実施形態)
図8に、本発明のカップ部を有する衣類の第五の実施形態に係るブラジャー500を示す。図8(a)は、バック部103を係止した状態の本実施形態のブラジャー500の斜視図であり、図8(b)は、バック部103を開いた状態の本実施形態のブラジャー500の背面図である。図8(c)は、前記ブラジャー500のカップ部をI−I方向に見た断面図である。本実施形態においては、保形布505は、その上辺がカップ部101側に折り返して形成されている。そして、前記折り返し部分は、バストトップとバスト下部のバージスラインとの間の中間領域に形成されている。前記折り返し部分には、パッドを挟み込むことができ、保形布505は、パッド受けの機能も有している。図8(c)の断面図においては、二点鎖線で囲んだ部分がパッドの装着位置Aを示している。パッドの装着位置Aは、カップ部101の肌側面よりもバストに近い位置となる。このような構成とすると、パッドはバストの当接力によってその位置を調整されつつカップに押しつけられる。このため、パッドのフィット性を高いものとすることができる。
【0034】
(第六の実施形態)
上記実施形態では、ノンワイヤータイプのブラジャー100について、カップ肌側に架け渡された保形布105を用いてカップ部101を立体的に保持する例を挙げて説明した。しかし、本発明の構成は、例えば、ワイヤーを含むカップ支持部を備える、いわゆるワイヤータイプのブラジャーにも適用できる。ワイヤータイプのブラジャーは、カップ支持部が撓み難いブラジャーとすることができる。図9(a)には、バック部103を開いた状態の、第六の実施形態に係るブラジャー600aの背面図を示す。本実施形態においては、カップ部101の上辺部分およびカップ支持部102に、保形布605aが引き伸ばされた状態で、カップ部101の肌側のほぼ全面を覆うように架け渡されている。本実施形態において、カップ支持部102は、着用状態においてもあまり撓まない程度の剛性を備えるように、例えば、ワイヤー部材が内蔵された布材によって形成されている。保形布605aは、カップ部101の肌側のほぼ全面を覆うように設けられた伸縮性のある布材である。また、保形布605aは、面方向に張力が作用するように、わずかに引き伸ばした状態で、カップ部101の上辺部分およびカップ支持部102に架け渡されている。保形布605aを引き伸ばした状態でカップ支持部102等に取り付ける具体的な方法としては、保形布605aを取り付け方向に沿って少しずつ引き伸ばしながらカップ支持部102やカップ部101に取り付けるといった方法を用いることができる。前記取り付け方法は、縫着または接着によるものであってもよいし、その他、ブラジャーの仕様に応じて適宜選択すればよい。このように、保形布605aを広範囲に設けることにより、着用状態において、バストにしっかりフィットした状態でバストを上方に押し上げることができる。
【0035】
一般に、バストサイズが左右のバストで異なる場合には、ブラジャーの左右のカップのそれぞれに、左右のバストサイズに合わせたパッドを装着しなければ、好適なフィット感を得ることができなかった。また、当初からパッドが装着しているタイプのブラジャーである場合には、パッドを左右別にバストサイズに適合したものに交換する必要があった。本実施形態のブラジャー600aでは、パッドを用いることなく、バストサイズの左右差を吸収するとともに、バストを前中心側に寄せ上げることができるので、バストサイズの左右差に対する融通性を高めることもできる。また、保形布605aを引き伸ばした状態で架け渡すことによって、バストを包み込むように押し上げることができる。
【0036】
本実施形態において、図9(a)に示すように、カップ部101と保形布605aとの間には、パッドを挿入するための開口が形成されていてもよい。前記開口を設けることにより、カップ部101と保形布605aとの間にパッドを挿入することができる。パッドを併用すると、寄せ上げ効果をより高めることもできる。前記開口の位置は、脇側にあることが好ましいが、これに限定されない。なお、本実施形態のブラジャーが肩ストラップ104を有している場合、保形布605aは、肩ストラップ104の取り付け部と重ならないように設けられていることが好ましい。肩ストラップ104の取り付け部に保形布605aが形成されていないことにより、前記取り付け部を薄く形成することができる。その結果、両脇部の肩ストラップ104の取り付け部近傍のブラジャー600a着用時のシルエットを滑らかなものとすることができる。
【0037】
図9(b)は、本実施形態に係るブラジャーにおいて、パッドを挿入するための開口の位置を前中心側に設けた場合の変形例(ブラジャー600b)を示す背面図である。なお、前記開口の位置が前中心側に設けられている以外は、図9(a)に示すブラジャー600aと同じ構成を備えている。このように、前中心側にパッドを挿入する開口を設けることによって、着用状態におけるパッドの位置調整を容易に行うことができるといったメリットがある。また、前中心側に開口を設けると、脇側に開口を設ける場合よりも、カップ上辺がバストに沿い易く、また、カップ上辺に引きつれが生じ難くなる。このため、カップ材が撓み易い素材である場合や、カップ材の肉厚が薄いような場合に好適である。なお、前記開口を構成する保形布605bの上辺は、バストトップよりも多少下側を経由するように形成しても良いし、バストトップよりも多少上側を経由するようにしてもよい。本変形例では、脇側に開口を設ける場合よりも、開口の幅を広く取ることができるので、保形布605bの伸び代を大きく取ることができ、バストに対する保形布605bのフィット性を向上させ易いといったメリットもある。なお、本例のブラジャー600bが肩ストラップ104を有している場合、保形布605bのカップ部101上辺部分の取り付け位置と肩ストラップ104の取り付け部とが隣接するように設けられていることが好ましい。このように設けると、肩ストラップ104の引張り力を利用して、保形布605bを引張り、ブラジャー600b装着時のバスト造形性をより向上させることができる。
【0038】
図9(c)は、図9(b)に示すブラジャーにおいて、肩ストラップ104の前中心側に補強部609を設けた変形例(ブラジャー600c)を示すものである。このように、保形布605bの開口を形成する上辺に隣接する位置とも肩ストラップ104を連結することにより、前記上辺側をよりしっかり引き上げることができる。補強部609は、レース材やテープ材等を用いて形成すればよい。
【0039】
なお、保形布605aおよび605bは、カップ支持部102およびカップ部101との接続部分全体に亘って、少しずつ引き伸ばして取り付けてもよいし、部分的に引き伸ばして取り付けてもよい。なお、前記部分的に引き伸ばして取り付ける例としては、例えば、カップ支持部102との接続部分についてのみ引き伸ばした状態で保形布605aおよび605bを取り付ける態様があげられる。
【0040】
(着用評価)
図1に示すタイプの本発明に係るブラジャー100を作製し、着用評価を行った。図10は、前記ブラジャー100、従来品のワイヤータイプのブラジャーおよび従来品のノンワイヤータイプのパッド入りブラジャーについて、それぞれ同一モニターが着用した際のバストの形状を示す図である。(a)は、前記3種類のブラジャー着用時の胸部分を正面から見た図、(b)は同じく側面から見た図、(c)は前記3種類のブラジャーを着用した状態で写真撮影し、モアレ干渉縞による立体的な造型性を等高線で示した結果の図、(d)は前記3種類のブラジャー着用時の胸を上から撮影したバストシルエットを示す図である。各図において、それぞれ、左側が本発明のブラジャー、中央が従来品のワイヤータイプのブラジャー、右側が従来品のノンワイヤータイプのパッド入りブラジャーでの結果である。通常、ノンワイヤータイプのブラジャーは、ワイヤータイプのものと比較して造形性が低いが、本発明に係るブラジャー100を着用した場合は、従来品のワイヤータイプのブラジャーと同等の造形性を実現していることがわかる。また、従来のノンワイヤータイプのパッド入りブラジャーと比較しても、同等の造形性を実現している。図10(c)中の矢印は、着用時のバストトップ位置の比較のために付加しており、いずれも同じ長さである。図10(c)の各図において、前記矢印とバストトップ間の距離とを比較すると、前記3種類のブラジャー着用時においては、バストトップ位置に差が見られないことがわかる。すなわち、本発明に係るブラジャー100では、ノンワイヤーでパッドの装着がないにもかかわらず、バストが脇に流れることなく、バストを前中心側に寄せる効果が得られているといえる。
【0041】
図11(a)に、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ボディスーツ700の斜視図を示す。
【0042】
このボディスーツ700のブラジャー相当部分は、図1で説明したブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、ボディスーツ700が、カップ支持部102の下側に、衣類本体部であるボディ部701とクロッチ部702を有している。本例では、ボディ部701の一部が本発明におけるバック部となっているが、バック部を別途設けてその下に衣類本体部を取りつけてもよい。その他の態様は図1に示したブラジャー100と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。ここでは、第一の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するボディスーツについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するボディスーツとすることもできる。
【0043】
次に、図11(b)に本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ブラスリップ800の斜視図を示す。
【0044】
このブラスリップ800のブラジャー相当部分は、図1で説明したブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、ブラスリップ800が、カップ支持部102の下側に、胸下部身頃801と、さらにそれに連なってスカート部802を有している。本例では、胸下部身頃801が本発明におけるバック部である。バック部を別途設けてその下に胸下部身頃801とスカート部802を取りつけてもよいし、バック部の下に直接スカート部802を取りつけてもよい。その他の態様は図1に示したブラジャー100と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。ここでは、第一の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するブラスリップについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するブラスリップとすることもできる。
【0045】
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャー、ボディスーツ、ブラスリップをあげて本発明を説明したが、本発明のカップ部を有する衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のようなファンデーション衣類以外にも、ブラキャミソール、セパレートタイプの水着のトップ部、レオタード、その他各種のカップ部を有する衣類に適用できる。また、前中心を係脱自在のホックで連結するフロントホックタイプの衣類にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のカップ部を有する衣類は、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のようなファンデーション衣類以外にも、スポーツ衣類、アウターなど、各種のカップ部を有する衣類に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
100、200、300、400、500、600a、600b、600c ブラジャー(カップ部を有する衣類)
101 カップ部
102 カップ支持部
103 バック部
104 肩ストラップ
105、205、405、505、605a、605b 保形布
106 連結係止部
107 前中心部材
108a 円環係止具
108b 長さ調節具
110 土台部
311 通気性部材
609 補強部
700 ボディスーツ
701 ボディ部
702 クロッチ部
800 ブラスリップ
801 胸下部身頃
802 スカート部
A パッドの装着位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ部を有する衣類であって、
一対のカップ部、カップ部を支持する変形可能なカップ支持部およびバック部を備え、
前記カップ支持部は、前記一対のカップ部の下縁に設けられ、
前記バック部は、前記カップ支持部の脇側に取り付けられ、
前記カップ支持部は、非装着状態においても前記カップ部を立体的に保持するように、伸縮性素材を含む保形布が架け渡されていることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記カップ支持部が、布材を重ね合わせて形成されている、請求項1記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記保形布が、前記カップ支持部の脇側部分と前中心側部分に架け渡され、かつ、前記脇側部分と前記前中心側部分とを互いに引き寄せるように設けられている、請求項1または2記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記保形布の上辺が、前記脇側部分よりも前記前中心側部分の方の位置が低くなるように設けられている、請求項3記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
前記保形布が架け渡されている前記カップ支持部の脇側部分が、前記バック部の取り付け位置と隣接している、請求項3または4記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
前記カップ部が、通気性部材を介して、前記カップ支持部と接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項7】
前記通気性部材が、メッシュ状の布材である、請求項6記載のカップ部を有する衣類。
【請求項8】
前記保形布が、前記カップ部の下縁部と隙間を形成するように架け渡されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項9】
前記保形布の上辺が、カップ部側に折り返して形成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項10】
カップ部を有する衣類であって、
一対のカップ部、カップ部を支持するワイヤーを含むカップ支持部およびバック部を備え、
前記カップ支持部は、前記一対のカップ部の下縁に設けられ、
前記バック部は、前記カップ支持部の脇側に取り付けられ、
前記カップ部の上辺部分および前記カップ支持部には、伸縮性素材を含む保形布が引き伸ばされた状態で、前記カップ部の肌側の面を覆うように架け渡されていることを特徴とするカップ部を有する衣類。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図10】
image rotate