説明

カップ部を有する衣類

【課題】 着用時にバストを押しつぶさずにバストの造形を保ちつつ、運動時のバストの揺れ動きを効果的に軽減することのできるカップ部を有する衣類を提供する。
【解決手段】 カップ部を有する衣類のカップ部101は、バストの膨らみの周辺部に沿ってサポート部材110が設けられている。サポート部材110は、下側サポート部材110Aと上側サポート部材110Bとで構成され、下側サポート部材110Aが、カップ部101の前中心側と脇側とを結ぶ方向に伸縮性を有しており、上側サポート部材110Bが、前記方向と直交する方向に非伸縮性または難伸縮性であり、上側サポート部材110Bが、前中心側および脇側の少なくとも一部で衣類に固定されており、下側サポート部材110Aが、カップ部101に対して変位可能な状態で、脇側の少なくとも一部で衣類に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
ランニング等のスポーツ時には、バストの揺れが起こり、ジャンプ等の動きの際には、バストに大きな衝撃が加わる。従来から、運動時に使用されるスポーツブラジャーとして、前記揺れの抑制をするための検討がなされてきた。一例としては、着用者に与える圧迫感等の負担を軽減しつつ、運動時のバストの揺れを抑制することを目的として、着用状態で乳頭が位置するトップ領域と着用状態で乳房の脇側下部が位置する脇側下部領域とを結ぶライン、および、前記トップ領域と着用状態で乳房の前中心側上部が位置する前中心側上部領域とを結ぶラインに、ストレッチ性のある保護テープを縫着した女性用衣類が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、着用者の乳房を受け入れるカップ部の周縁部に沿って、前記揺れの主方向と主方向に直交する方向とで、弾性係数の異なる部分を設けることで、運動時の前記揺れを制御することが可能なスポーツ衣類が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−286803号公報
【特許文献2】特開2006−104613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の衣類では、バストの揺れや衝撃を防ぐには、十分なものとは言えなかった。バストのトップ部を押さえる構成の場合、揺れはある程度抑えることができるが、バストを押しつぶしてしまい、バストシルエットが崩れがちである。また、着用時に圧迫感を感じることもある。また、後者の構成の場合、揺れはある程度抑えることができるものの、揺れによるバストの変形に、カップが追随しきれない。したがって、バストがカップから離れるときに、バストを支持できず、揺れの制御は困難であった。
【0005】
本発明は、着用時にバストを押しつぶさずにバストの造形を保ちつつ、運動時のバストの揺れ動きを効果的に軽減することのできるカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、
一対のカップ部、肩ストラップ、およびバック布を備え、
前記肩ストラップは、前記一対のカップ部の上部に設けられ、
前記バック布は、前記カップ部の脇側に設けられ、
前記カップ部は、そのバストの膨らみの周縁部に沿ってサポート部材が設けられており、
前記サポート部材は、前記カップ部の下部に位置し、胸部を下方向から保持する下側サポート部材と、前記カップ部のバストの膨らみの前中心側から上部を通って脇側に至る部分に位置し、胸部を上方向から保持する上側サポート部材とで構成され、
前記下側サポート部材が、前記カップ部の前中心側と脇側とを結ぶ方向に伸縮性を有しており、
前記上側サポート部材が、前記方向と直交する方向に非伸縮性または難伸縮性であり、
前記上側サポート部材が、前中心側および脇側の少なくとも一部で衣類に固定されており、
前記下側サポート部材が、前記カップ部に対して変位可能な状態で、脇側の少なくとも一部で衣類に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカップ部を有する衣類は、着用時にバストを押しつぶさずにバストの造形を保ちつつ、運動時のバストの揺れ動きを効果的に軽減することができる。したがって、きれいなバストシルエットで、胸の揺れを気にすることなくスポーツを楽しむことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第一の実施形態に係るスポーツ用ブラジャーを示す斜視図である。左側のバストを覆うカップ部は、表布を外した状態を示す。
【図2】図2は、本発明のカップ部を有する衣類を構成するサポート部材の形状の一例を示す図である。(a)は、下側サポート部材、(b)は、上側サポート部材、(c)は、前記上側サポート部材および前記下側サポート部材を組み合わせた状態を示す。
【図3】図3(a)は、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第二の実施形態に係るスポーツ用ブラジャーを示す図である。図3(b)は、上側サポート部材、図3(c)は、下側サポート部材の形状を示す図である。
【図4】図4は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例を示す斜視図である。図4(a)は、第三の実施形態に係るワイヤータイプのブラジャーの一例であり、図4(b)は、その変形例である。図4(c)は、第四の実施形態に係るキャミソールの一例である。
【図5】図5は、着用評価におけるバストの形状を示す図である。図5(A)は、ランニング時にバストが振りあがった状態、図5(B)は、振りあがったバストが最も下がった状態、図5(C)は、静止時のバスト付近を側面から見た図である。
【図6】図6は、運動時のバストの揺れ方を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカップ部を有する衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0010】
(第一の実施形態)
図1に、本発明のカップ部を有する衣類の第一の実施形態に係るブラジャー100を示す。本実施形態のブラジャー100は、一対のカップ部101、一対の肩ストラップ102、および、バック布103を主要構成要素とする、いわゆるスポーツ用ブラジャーである。本実施形態のブラジャー100は、バック布103が連結係止部を有していない、被って着用するタイプのブラジャーである。一対の肩ストラップ102は、一対のカップ部101の上部に設けられている。本実施形態においては、一対の肩ストラップ102は、背中側においてバック布103と一体に形成されている。前記一対のカップ部101は、前中心部分で連結され、一体となっている。前記一体となったカップ部の両脇部には、バック布103が取り付けられている。
【0011】
同図において、左側のバストを覆うカップ部101は、構造をわかりやすくするために、表布を外した状態で図示している。カップ部101には、バストの膨らみの周縁部にサポート部材110が設けられている。本実施形態において、サポート部材110の肌側に、カップ部101が配置されている。サポート部材110は、カップ部101の下部に位置し、胸部を下方向から保持する下側サポート部材110A、および、カップ部101のバストの膨らみの前中心側から上部を通って脇側に至る部分に位置し、胸部を上方向から保持する上側サポート部材110Bから構成されている。また、カップ部101において、上側サポート部材110Bの上縁部の外側の領域は、非伸縮性もしくは難伸縮性の素材、または低伸度の素材を用い、あるいはそれらの素材を重ねることによって、より低伸度となるよう形成されている(低伸度部材150)。
【0012】
下側サポート部材110Aは、脇側はバック布103もしくはカップ部101とバック布103との固着位置に取り付けられ、前中心側は、カップ部101の前中心側に取り付けられている。そして、この下側サポート部材110Aの下縁部および上縁部は、カップ部101に固定されず、遊離した状態となっている。また、下側サポート部材110Aは、脇側および前中心側は、カップ部101に取り付けられていてもよいし、カップ部には固定されず、上側サポート部材110Bに固定されていてもよい。
【0013】
上側サポート部材110Bは、前中心から前中心側上端縁部にかけて、カップ部101に取り付けられている。上側サポート部材110Bの前中心側の端部は、カップ部101ではなく、下側サポート部材110Aに固定されていてもよい。そして、上側サポート部材110Bのバック布側の端部はカップ部101もしくはカップ部101とバック布103との固着位置に取り付けられている。また、バック布側の端部は、カップ部には固定されず、上側サポート部材110Bに固定されていてもよい。上側サポート部材110Bの下縁部および脇側上縁部は、カップ部101に固定されず、遊離した状態となっている。
【0014】
図2に、本実施形態におけるサポート部材110の形状を示す。図2(a)は、下側サポート部材110A、図2(b)は、上側サポート部材110Bを示す。下側サポート部材110Aは、カップ部101の前中心側と脇側とを結ぶ、図2(a)中の矢印の方向に伸縮性を有している。そして、上側サポート部材110Bは、カップ部101の前中心側と脇側とを結ぶ方向と直交する、図2(b)中の矢印の方向において非伸縮性または難伸縮性である。
【0015】
ここで、運動時のバストの揺れ動きについて説明する。図6は、運動時のバストの揺れ方を説明する模式図である。バストの揺れには、上下方向に揺れる「縦揺れ」(図6(a))と、左右方向に揺れる「横揺れ」(図6(b))とがある。ヌードで走った時のバストの揺れを高速度カメラで詳細に観察したところ、横揺れは、下方から脇側へ、もしくは、下方から内側(前中心側)に振りあがる揺れ方をしており、下方から脇側への振りあがりが特に大きくなっていることがわかった。さらに、この振りあがりは、揺れ下がりによる下方への衝撃の反動で、大きく振りあがることがわかった。そこで、既存の技術では、バストを押さえつけること、もしくはバストの振りあがりをおさえることで揺れを緩和しようとしていたところ、発明者らは、揺れ下がりの衝撃が大きいことがわかったため、振りあがりのみではなく、揺れ下がりの衝撃を抑えることで、バストの揺れを緩和できることを見出して本発明に至った。
【0016】
図2(c)は、下側サポート部材110Aと上側サポート部材110Bとを組み合わせた状態を示す図である。このように、サポート部材110は、バストトップ付近を押さえつけないため、着用時に圧迫感がなく、バストの造形も保つことができ、美しいバストシルエットを得ることができる。そして、バスト上部に、上下方向に伸び難い素材の上側サポート部材110Bが配置されることで、運動時のバストの振りあがりや、前中心側や脇側への横揺れを押さえることができる。また、下側サポート部材110Aは、カップ部101の前中心側と脇側とを結ぶ方向に伸縮性を有している、いわゆるストレッチ素材を用いることにより、運動時にいったん持ち上がって落ちてくるバストの衝撃を緩和して受け止めることができる。また、サポート部材110は、バストの膨らみの周縁部を輪状に押さえるように配置されるので、運動時等のバストの揺れを効果的に抑えることができる。運動時のバストの揺れを完全に抑えることは困難である。従来のブラジャーでは、揺れによってバストが変形すると、カップ部がバストの変形に追随できず、カップ部とバストとの間に隙間が生じてしまう。このように、カップ部から離れたバストに対しては、ブラジャーによる保持力等の作用を及ぼすことができない。本発明においては、下側サポート部材110Aを、カップに完全に固定させず、カップ部101に対して変位可能な状態となるように、前記のような態様で衣類に固定することで、下側サポート部材110Aをバストの変形に追随させることができるため、効果的にバストの揺れを抑えることができる。なお、上側サポート部材110Bは、脇側上辺がカップ部に固定されていないため、手を挙げる等の動作でひきつられない構造となっている。
【0017】
図2(c)に示すように、下側サポート部材110Aと上側サポート部材110Bとは、脇側に重なり部分を有していることが好ましい。この部分で下側サポート部材110Aと上側サポート部材110Bとを縫着すると、サポート部110がバストの動きに追随する時の支点となり、また、重なり部分での伸縮性がより抑えられるため、脇寄せ効果も期待できる。
【0018】
下側サポート部材110Aに用いることのできる素材としては、パワーネット、ツーウェイトリコット、ワンウェイトリコネット等があげられる。また、上側サポート部材110Bに用いることのできる素材としては、トリコット、マーキジット、ワンウェイトリコネット等があげられる。上側サポート部材110Bは、上下方向に加え、横方向にも伸び難い素材であると、よりバストの揺れを押さえることができるため、好ましい。ただし、ティーン向けのブラジャーの場合は、成長期のバストを必要以上に押さえつけないように、横方向には伸縮性のある素材を使用することが好ましい。
【0019】
カップ部101本体(サポート部材110、および低伸度部材150以外の部分)を構成するカップ布としては、伸縮性のある素材を使用することで、腕を上げる等の身体の動きを制限することなく、バストの揺れを抑えることができる。前記カップ布は、左右別々に用意したものを前中心部分で連結してもよいし、左右のバストを含む胸部を覆うような一体のデザインのものを用いてもよい。
【0020】
サポート部材110は、ブラジャー100の肌側に設けてもよいし、表側(肌側の面と反対側の面)に設けてもよい。いずれの場合も、サポート部材110は、バストの動きに追随が可能である。前記カップ布が、肌側布と表布の二枚の布地を重ねて構成されている場合、サポート部材110は、二枚の布地の間に介在されていてもよい。このような構成とすることで、肌側布により着用感が良いものとなり、表布によりファッション性が向上する。さらに、カップ部101に固定されていないサポート部材110が二枚の布地に挟まれるので、洗濯時の取扱いが簡便となる。
【0021】
本実施形態のブラジャー100においては、一対の肩ストラップ102は、背中側においてバック布103と一体に形成されている。そして、カップ部101において、上側サポート部材110Bの上縁部の外側の領域は、非伸縮性もしくは難伸縮性の素材、または低伸度の素材を用い、あるいはそれらの素材を重ねることによって、低伸度部材150が形成されていることが好ましい。低伸度部材150は、上側サポート部材110Bの上縁部に取り付けられていてもよいし、上側サポート部材110B自体がストラップ位置まで延長して低伸度部材150を形成してもよい。低伸度部材150には、非伸縮性または難伸縮性の素材を用いることができる。また、低伸度の素材を用いる場合、低伸度部材150は、カップ部101の前中心側と脇側とを結ぶ方向の伸度よりも、この方向に直交する方向(着用時の上下方向に相当)の伸度が低い素材であることが好ましい。上側サポート部材110Bの上縁部の外側の領域に低伸度部材150を形成することにより、バストの振りあがりをさらにおさえることができる。また、肩ストラップから連結している部分の伸度を抑えることで、バストが下方に下がるのを抑えることができる。肩ストラップ全体の伸度を抑制すると、肩に負担がかかってしまうことがあるため、肩ストラップ120を低伸度とするのではなく、低伸度部材150を、鎖骨付近まで設けることが好ましい。
【0022】
ここで、肩ストラップ102は、カップ部101を肩から吊り下げるものであればよく、本実施形態のブラジャー100のようにタンクトップのような幅の広い、いわゆるラウンドタイプのストラップには限定されず、紐や布テープであってもよい。肩ストラップ102の態様は、一対のカップ部101に対応して一対の肩ストラップ102がそれぞれカップ部上部とバック布103とに連結される態様に限定されず、例えば、背中側で2本の肩ストラップ102が一体となりバック布103に取り付けられる態様であってもよい。また、カップ部101のみに肩ストラップ102が取り付けられている、いわゆる「ホルターネック」タイプであってもよい。肩ストラップ102の取り付け位置は、カップ部101の形状やカップ部を有する衣類のデザインによって決定することができる。
【0023】
本例のブラジャーでは、連結係止部を有していないバック布103を使用しているが、着脱自在な連結係止部を背中心付近に有している態様とすることもできる。前記連結係止部としては、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))、グリッパー、ボタン、紐、面ファスナーなどを、デザインや用途に応じて適宜選択して使用することができる。なお、上記のフック・アンド・アイやグリッパー、ボタンを用いる場合には、複数の留め位置を予め設けておくことにより、締め付け具合を微調整できるようにしておくことも好ましい。なお、上記以外の他の種類の係止具を使用してもよい。また、バック布が連結係止部を有さないフロントホックタイプや、バック布を結んで係止するタイプであってもよい。
【0024】
(第二の実施形態)
図3に、本発明のカップ部を有する衣類の第二の実施形態に係るブラジャー200を示す。図3(a)は、ブラジャー200におけるサポート部材210の状態を示す図である。図3(b)は、上側サポート部材210B、図3(c)は、下側サポート部材210Aの形状を示す図である。本実施形態のブラジャー200は、一対のカップ部201、一対の肩ストラップ202、および、バック布203を主要構成要素とする、いわゆるスポーツ用ブラジャーである。カップ部201の両脇部には、バック布203が取り付けられている。本実施形態のブラジャー200は、バック布203が連結係止部を有していない、被って着用するタイプのブラジャーである。
【0025】
本実施形態においては、上側サポート部材210Bは、前中心側から脇側にかけて、バストの上縁の膨らみに沿った周縁部に、バストを囲むように、左右一体に設けられている。下側サポート部材210Aは、第一の実施形態における下側サポート部材110Aと、ほぼ同様の形状であるが、本実施形態においては、前中心側は、上側サポート部材210Bに取り付けられている。また、下側サポート部材210Aは、左右一体に設けることもできる。上側サポート部材210Bは、前中心側の下辺、脇側および前側上端縁部でブラジャー200に取り付けられている。一対の肩ストラップ202は、一対のカップ部201の上部に設けられている。
【0026】
また、一対の肩ストラップ202は、背中側においてバック布203に取り付けられている。そして、上側サポート部材210Bが肩ストラップ202の取り付け位置にまで延長されている。その他の構成は、前記の第一の実施形態と同様であり、同様の効果を得ることができる。なお、上側サポート部材210Bは、上下方向に加え、横方向にも伸び難い素材であると、よりバストの揺れを押さえることができるため好ましいが、ティーン向けのブラジャーの場合は、成長期のバストを必要以上に押さえつけないように、横方向には伸縮性のある素材を使用することが好ましい。
【0027】
(第三の実施形態)
図4(a)に、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第三の実施形態に係るワイヤータイプのブラジャー300の斜視図を示す。本実施形態のブラジャー300は、一対のカップ部301、一対の肩ストラップ302、バック布303、および、土台部304を主要構成要素とし、さらにサポート部材310が設けられている。土台部304のバージスラインに沿う部分には、ワイヤー305が設けられている。ワイヤー305は、例えば、アモルファスワイヤー、金属ワイヤー、樹脂ワイヤー、布テープ等のテープ状の芯材等から形成されている。土台部304の両端には、バック布303が取り付けられている。ワイヤータイプのブラジャーの場合、バック布303は、着脱自在な連結係止部(図示せず)を背中心付近に有していると、着脱が容易となり好ましい。一対の肩ストラップ302は、一端が一対のカップ部301の上部に取り付けられ、他端がバック布303の上辺に取り付けられている。肩ストラップ302の端部は、カップ部301の上部に取り付けられた円環の係止具306Aを通って反転し、エイト環からなる長さ調節具306Bに導入されることによって、肩ストラップ302の長さ調整が可能な状態で、取り付けられている。
【0028】
本実施形態においては、上側サポート部材310Bは、前中心側と脇側とが、ワイヤー305が配置されている位置で取り付けられている。なお、前中心側は、下側サポート部材310Aに固定されていてもよい。前側上端縁部は、カップ部301上縁において、前中心側からストラップ取り付け位置まで取り付けられている。より好ましくは、前側上端縁部は、ストラップ取り付け位置のみでカップ部301に取り付けられている。これにより、サポート部材310とカップ部301とが別の動きをすることが可能となり、サポート部材310の運動追従性が高くなる。上側サポート部材310Bの脇側上端縁部および下端部は、カップ部301から遊離した状態で設けられている。下側サポート部材310Aは、前中心側及び脇側において、上側サポート部材310B、またはワイヤー305が配置されている位置に縫着され、それ以外の部分では、カップ部301から遊離した状態で設けられている。その他の構成は、前記の第一の実施形態と同様である。このように、ワイヤーや土台部を設けた態様であっても、バストシルエットを保ちつつ、効果的にバストの揺れを抑えることができるブラジャーを提供することができ、デザインのバリエーションを多彩なものとすることができる。
【0029】
本実施形態において、図4(b)に示すように、下側サポート部材310Aおよび上側サポート部材310Bが、土台部304とバック部303との固着位置にまで延設しており、バック部303の固着位置で固定されていてもよい。なお、図4(b)において、左バストを覆う部分は、表布を外した状態を示している。
【0030】
(第四の実施形態)
図4(c)に、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第四の実施形態に係るキャミソール400の斜視図を示す。このキャミソール400のブラジャー相当部分は、図3で説明した第二の実施形態のブラジャー200とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、キャミソール400は、カップ部201の下側に、胸下部身頃420を有している。その他の態様は図3に示したブラジャー200と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。ここでは、第二の実施形態に係るブラジャー200とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するキャミソールについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するキャミソールとすることもできる。本例においては、バック布203がない態様としてもよい。
【0031】
本実施形態においては、ブラジャー相当部分の下側に身頃を設ける態様に限られず、キャミソールの身頃内側にブラジャー相当部分を設けてもよい。この場合、キャミソールは、ブラジャー相当部分を覆うように身頃を有している。このような構成にすることにより、本発明の効果を有しつつ、着用時の外観のバリエーションを多様にすることができる。また、カップ部を、よりアウターにひびかなくすることもできる。
【0032】
(着用主観評価)
図1に示すタイプの本発明に係るブラジャー100を作製し、着用評価を行った。複数名のモニターに、前記ブラジャー100および従来品のブラジャーAを、それぞれ着用して、トレッドミルを使って室内でランニングを行ってもらい、着用感のコメントを求めた。従来品のブラジャーAは、特許文献1に記載のブラジャーの一態様である。すなわち、着用状態で乳頭が位置するトップ領域と着用状態で乳房の脇側下部が位置する脇側下部領域とを結ぶライン、および、前記トップ領域と着用状態で乳房の前中心側上部が位置する前中心側上部領域とを結ぶラインに、ストレッチ性のある保護テープを縫着した特許文献1に記載のブラジャーの一態様である。モニターの内訳は、C70サイズのモニターが2名、D70サイズのモニターが1名、E70サイズのモニターが1名、F70のモニターサイズが1名の、計5名である。その結果、ランニング時にバストが揺れなかったのは、5名中5名が本発明のブラジャーであると回答した。スポーツに好ましいのは、5名中4名が本発明のブラジャーであると回答し、1名は従来品のブラジャーAであると回答した。また、着用時のシルエットがきれいなのは、5名中4名が本発明のブラジャーであると回答し、1名は従来品のブラジャーAであると回答した。ランニング時に使用したいのは、5名中5名が本発明のブラジャーであると回答した。
【0033】
(着用客観評価)
図1に示すタイプの本発明に係るブラジャー100の、着用客観評価結果を示す。前記ブラジャー100および従来品のブラジャーAを、それぞれ、E70サイズの同一のモニターが着用してランニングを行った際の、バストの動きを観察した。また、ブラジャーを着用しない状態でも、同様の観察を行った。
【0034】
図5は、ヌード状態および前記2種類のブラジャーを着用した状態での、前記モニターの胸部分を側面から見た図である。図5(A)は、ランニング時にバストが振りあがった状態を示し、図5(B)は、バストが振りあがった後、最も下がった状態を示している。
各図において、(a)はブラジャー100を着用した状態、(b)は従来品のブラジャーAを着用した状態、(c)はヌード状態である。各図には、バストの動きをわかりやすくするために、基準線を付与してある。ヌード状態では、ランニング時にバストが揺れて、上方に大きく振りあがっている。また、下方には、打ちつけられるように下がっていることがわかり、揺れ下がり時には衝撃を感じることになる。本発明のブラジャーを着用した場合は、バストは押しつぶされることなく、造形を保ったまま、振りあがりおよび下方への衝撃が抑えられていることがわかる。従来品のブラジャーAを着用した場合は、揺れはある程度抑えられているが、下方への衝撃を緩和できないため、揺れ下がったバストに負けて、ブラジャーの下点が下がってしまう。また、下カップ部に丸みも出る。これにより、バストシルエットが本発明のブラジャー着用時に比べて良好なものとは言えない。
【0035】
図5(C)は、前記2種類のブラジャーを着用した状態での、前記モニターの静止時の胸部分を側面から見た図である。(a)はブラジャー100を着用した状態、(b)は従来品のブラジャーAを着用した状態である。運動中ではない状態においても、従来品のブラジャーA着用時は、バスト全体を押しつぶして、バストシルエットが平面的になっているのに対し、本発明のブラジャー着用時は、バストをつぶさないので、立体的なシルエットになっている。また、本発明のブラジャー着用時の方が、バストトップ位置が高くなっている。これにより、本発明のブラジャー着用時の方が、バストシルエットが良好であることがわかる。
【0036】
本発明のブラジャーは、主観、客観ともに、着用時のバストシルエットが美しく、運動時のバストの揺れが少なくなっていることがわかった。
【0037】
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャーおよびキャミソールをあげて本発明を説明したが、本発明のカップ部を有する衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、ボディースーツ、ブラスリップ、水着、レオタード、その他各種のカップ部を有する衣類に適用できる。また、前中心を係脱自在のホックで連結するフロントホックタイプの衣類にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のカップ部を有する衣類は、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、ファンデーション衣類、スポーツ衣類、アウターなど、各種のカップ部を有する衣類に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
100、200、300 ブラジャー
400 キャミソール
101、201、301 カップ部
102、202、302 肩ストラップ
103、203、303 バック布
110、210、310 サポート部材
110A、210A、310A 下側サポート部材
110B、210B、310B 上側サポート部材
150 低伸度部材
304 土台部
305 ワイヤー
306A 円環係止具
306B 長さ調節具
420 身頃


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ部を有する衣類であって、
一対のカップ部、肩ストラップ、およびバック布を備え、
前記肩ストラップは、前記一対のカップ部の上部に設けられ、
前記バック布は、前記カップ部の脇側に設けられ、
前記カップ部は、そのバストの膨らみの周縁部に沿ってサポート部材が設けられており、
前記サポート部材は、前記カップ部の下部に位置し、胸部を下方向から保持する下側サポート部材と、前記カップ部のバストの膨らみの前中心側から上部を通って脇側に至る部分に位置し、胸部を上方向から保持する上側サポート部材とで構成され、
前記下側サポート部材が、前記カップ部の前中心側と脇側とを結ぶ方向に伸縮性を有しており、
前記上側サポート部材が、前記方向と直交する方向に非伸縮性または難伸縮性であり、
前記上側サポート部材が、前中心側および脇側の少なくとも一部で衣類に固定されており、
前記下側サポート部材が、前記カップ部に対して変位可能な状態で、
脇側の少なくとも一部で衣類に固定されていることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記サポート部材の肌側に前記カップ部が配置されている、請求項1記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記上側サポート部材が、非伸縮性または難伸縮性の素材で形成されている、請求項1または2記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記カップ部において、前記上側サポート部材の前側上端縁部の外側に沿って、非伸縮性もしくは難伸縮性の素材、または、前記カップ部の前中心側と脇側とを結ぶ方向の伸度よりも前記方向に直交する方向の伸度が低い素材が配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
前記上側サポート部材の前側上端縁部の外側に沿って配置されている、前記非伸縮性もしくは難伸縮性の素材、または、前記伸度が低い素材の部分が、前記肩ストラップと一体に形成されている、請求項4に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
前記下側サポート部材と前記上側サポート部材とが、脇側で重なり部分を有しており、前記重なり部分において縫着されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項7】
衣類がブラジャーである、請求項1から6のいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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