カップ部を有する衣類
【課題】楽な着用感を損なうことなく、バストに対するカップ部の上辺部の浮きを抑制することが可能なカップ部を有する衣類を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るカップ部を有する衣類1は、バストを覆うためのカップ部12と、カップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を生じさせ、カップ部を安定させるバック部16とを有する衣類において、バストの造形性を補助するための第1の造形補助部であって、カップ部12の下辺部脇側12Lsから、バストトップTとカップ部12の下辺との間を通り、前記カップ部の前中心側に向けて延在する帯状の当該第1の造形補助部20と、バストの造形性を補助するための第2の造形補助部であって、カップ部12の上辺部に沿って下辺部前中心側端部12Lctから下辺部脇側端部12Lstまで延在する帯状の当該第2の造形補助部30とを備える。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るカップ部を有する衣類1は、バストを覆うためのカップ部12と、カップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を生じさせ、カップ部を安定させるバック部16とを有する衣類において、バストの造形性を補助するための第1の造形補助部であって、カップ部12の下辺部脇側12Lsから、バストトップTとカップ部12の下辺との間を通り、前記カップ部の前中心側に向けて延在する帯状の当該第1の造形補助部20と、バストの造形性を補助するための第2の造形補助部であって、カップ部12の上辺部に沿って下辺部前中心側端部12Lctから下辺部脇側端部12Lstまで延在する帯状の当該第2の造形補助部30とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バストを覆うためのカップ部を有する衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、バストを覆うためのカップ部を有する衣類として、ブラジャーが開示されている。これらのブラジャーは、カップ部に対して帯状部材(造形補助部)を備えている。特許文献1に開示のブラジャーは、バストに対する圧迫感を抑制するために、カップ部の下辺におけるワイヤに代えて帯状部材(テープ)を用いている。この帯状部材は、一方のカップ部の下辺に沿って他方のカップ部方向に延び、他方のカップ部の上辺に沿って肩紐まで延びている。また、特許文献2に開示のブラジャーは、カップ部の上辺部に帯状部材(上辺布)を重ね合わせ、カップ部の脇側部に帯状部材(脇布)を重ね合わせている。これらの帯状部材は、肩紐から延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−119004号公報
【特許文献2】実開昭62−203209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ブラジャーによってバストのボリュームを上方へ持ち上げる際、バストのボリュームがうまく持ち上がらずに、カップ部の上辺部がバストに対して浮いてしまうことがある。特に、年齢を重ねるに従って柔らかくなり、下垂したバストは、上胸にボリュームを移動しにくく、カップ部の上辺部がバストに対して浮きやすい。
【0005】
この点に関し、特許文献1及び2に開示のブラジャーのように、肩紐による上に引く力を積極的に利用するが考えられるが、その場合、肩に負担がかかってしまう。また、カップ部の上辺部が着用者にくい込んでしまうことがある。更には、ストラップ部の付け根が引っ張られて、カップ部の上辺部が歪んでしまい(ラインが変形してしまい)、バストに沿わなくなってしまう。逆に、肩に負担がかからないように、ストラップ部をゆるくすると、カップ部の上辺部がバストに対して浮いてしまう。
【0006】
特に、1/2カップタイプのブラジャーのようにカップ部の面積が小さいブラジャーでは、フルカップタイプのブラジャーと比較して肩紐付け根近傍の布地が少なく、肩紐によってカップ部の上辺部を上に引く力が弱い。更には、ストラップレスタイプのブラジャーでは、カップ部の上辺部を上に引く力がない。そのため、1/2カップタイプやストラップレスタイプのブラジャーでは、バック部によってカップ部の下辺部脇側を横に引く力を利用して、カップ部を安定させることとなる。
【0007】
この種の1/2カップタイプやストラップレスタイプのブラジャーでは、カップ部の上辺部を上に引く力が弱い又はないので、着用者の動作に伴い、カップ部の上辺部がバストから浮いてしまうことがある。この点に関し、バック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を強くすることが考えられるが、その場合、着用者に強い締め付け感を与えてしまう。また、ストラップ部によるカップ部の上辺部を上に引く力を強くすることも考えられるが、その場合、カップ部の上辺部が着用者にくい込んでしまい、バストシルエットがくずれてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、楽な着用感を損なうことなく、バストに対するカップ部の上辺部の浮きを抑制することが可能なカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカップ部を有する衣類は、バストを覆うためのカップ部と、カップ部の下辺部脇側を横に引く力を生じさせ、カップ部を安定させるバック部とを有する衣類において、バストの造形性を補助するための第1の造形補助部であって、カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部から、バストトップとカップ部の下辺との間を通り、カップ部の前中心側に向けて延在する第1の造形補助部と、バストの造形性を補助するための第2の造形補助部であって、カップ部の上辺部に沿って下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部まで延在する第2の造形補助部と、を備える。
【0010】
このカップ部を有する衣類によれば、第2の造形補助部がカップ部の上辺部に沿って下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部まで延在するので、バック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を強くせずとも、通常のバック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を利用して、第2の造形補助部によってカップ部の上辺部をバスト側に沿わせることができる。
【0011】
例えば、第2の造形補助部がないブラジャーでは、着用したときに、カップ部の上辺部が脇側に歪んでしまい、バストに沿わないことがある。その場合、カップ部の上辺部がバストにフィットしていないため、着用者の動きに起因して更に着崩れが生じてしまう。この点に関し、上記したように、バック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を強くすることが考えられるが、その場合、着用者に強い締め付け感を与えてしまう。これに対し、このカップ部を有する衣類によれば、第2の造形補助部によって、カップ部の上辺部の形状を保つことができる。そのため、バック部によってカップ部の下辺部脇側を横に引いても、カップ部の上辺部が変形したり、つぶれてバストにくい込んだりすることなく、きれいなカーブを保ったままカップ部の上辺部をバストに沿わせることができる。
【0012】
したがって、楽な着用感を損なうことなく、バストに対するカップ部の上辺部の浮きを抑制することができ、更に、着用者の動きに起因して生じるカップ部の上辺部の浮きをも抑制することができる。
【0013】
また、このカップ部を有する衣類によれば、主に、バック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を利用して、第1の造形補助部によってバストの寄せ効果や押し上げ効果を高めることができ、バストの造形性を高めることができる。
【0014】
このように、第1の造形補助部によってバストを上に持ち上げ、第2の造形補助部によってカップ部の上辺部をバストに沿わせることにより、着用者の動きに影響されることなく、第1及び第2の造形補助部によって囲まれた部分の立体形状を保つことができる。
【0015】
上記した第1の造形補助部は、前中心において連結していることが好ましい。この構成によれば、左右のバスト同士(カップ同士)が離れる(開く)のを抑制することができ、バストの寄せ効果や押し上げ効果をより高めることができ、バストの造形性をより高めることができる。
【0016】
上記した第1の造形補助部では、脇側端部がカップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部に結合され、前中心側端部がカップ部の前中心側に結合されており、上記した第2の造形補助部は、カップ部の下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部にわたって結合されていてもよい。この構成によれば、第1の造形補助部がカップ部の動きにひきつられることなく、また、第1の造形補助部の位置がずれることもない。また、第2の造形補助部が安定し、カップ部の上辺部を更にしっかりさせることができる。
【0017】
また、上記した第1の造形補助部は、カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部から前中心側にわたって結合されていてもよい。この構成によれば、第1の造形補助部が安定し、カップ部の下部を更にしっかりさせることができる。その結果、バストの造形性を高めることができる。
【0018】
また、上記したカップ部を有する衣類は、左右の第1の造形補助部の前中心側を連結する帯状の連結部材を更に備えることが好ましい。この構成によれば、連結部材によって、カップ部が左右に開いてしまうことを抑制することができ、第1の造形補助部によるバストの寄せ効果や押し上げ効果をより高めることができ、バストの造形性をより高めることができる。
【0019】
また、上記した第1の造形補助部の脇側端部はカップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部に結合され、その他の部分は前記カップ部に対して遊離しており、上記した左右の第1の造形補助部の前中心側端部は連結されていることが好ましい。この構成によれば、第1の造形補助部の脇側端部以外の部分がカップ部に対して遊離しているので、カップ部の動きに影響されることなく、バストの寄せ効果や押し上げ効果をより高めることができる。また、左右の第1の造形補助部の前中心側端部が連結されているので、カップ部が左右に開いてしまうことを抑制することができる。その結果、バストの造形性をより高めることができる。
【0020】
また、上記したカップ部を有する衣類は、前中心に設けられた環状の固定部を更に備え、上記した第1の造形補助部の前中心側端部は、固定部の孔に挿通されていることが好ましい。この構成によれば、上記したように第1の造形補助部の脇側端部以外の部分がカップ部に対して遊離しており、前中心側端部が固定部の孔に挿通されてフレキシブルに固定されるので、第1の造形補助部の前中心側端部は左右カップ間をフレキシブルに移動することができる。したがって、第1の造形補助部の前中心側端部の位置を安定させつつ、例えば第1の造形補助部の前中心側端部を単に前中心に固定する場合と比較して、着用者の動きに起因して動くバストに対するカップ部の追従性を高めることができる。
【0021】
また、上記した第1の造形補助部の幅は、第2の造形補助部の幅よりも広いことが好ましい。この構成によれば、第1の造形補助部によるバストの造形性をより強くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、カップ部を有する衣類において、楽な着用感を損なうことなく、バストに対するカップ部の上辺部の浮きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図2】第2の帯状部材の配置位置の種々の例を示す図である。
【図3】第1の実施形態のブラジャーにおいて肩紐部を取り外した状態を示す図である。
【図4】本発明の変形例に係る第1の帯状部材を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図9】本発明の変形例に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図10】本発明の変形例に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図11】本発明の変形例に係るカップ部と第1及び第2の帯状部材とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明のカップ部を有する衣類の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
[第1の実施形態]
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1は、本体部10と、第1の帯状部材(第1の造形補助部)20と、第2の帯状部材(第2の造形補助部)30と、連結部材40とを備えている。なお、ブラジャー1は左右略対称であるので、以下では左右の一方のみによって説明する。
【0026】
本体部10は、カップ部12と、土台部14と、バック部16と、肩紐部18とを有している。
【0027】
カップ部12は、バストを覆うためのものであり、土台部14に支持されている。土台部14は、非伸縮性の布からなっており、カップ部12の下辺部と縫着されている。土台部14の脇辺部には、バック部16が縫着されている。なお、土台部14は必ずしも備えなくてもよい。その場合、バック部16は、カップ部12の下辺部脇側に縫着される。バック部16は、伸縮性の布からなっており、背中において連結することによって、土台部14の脇辺部、すなわちカップ部12の下辺部脇側を横に引っ張る力を生じさせ、カップ部を安定させる。また、カップ部12の上辺部脇側には、肩紐部18が着脱部材18aを介して着脱自在に連結されている。肩紐部18の他端もまた、着脱部材を介してバック部16に連結されている。肩紐部18は、伸縮性の布又は紐等からなっている。
【0028】
また、カップ部12と土台部14との境界には、すなわち、バージスラインに沿ってカップワイヤー50が装着されている。なお、カップワイヤー50は必ずしも備えなくてもよい。また、カップ部12の表側には、第1の帯状部材20と第2の帯状部材30が設けられている。
【0029】
第1の帯状部材20、第2の帯状部材30、及び、連結部材40には、テープや布等が用いられる。あるいは、第1の帯状部材20、第2の帯状部材30、及び、連結部材40には、伸張回復性が高い素材(SS曲線傾斜が小さい素材)が用いられてもよい。また、第1の帯状部材20、第2の帯状部材30、及び、連結部材40には、接着樹脂や接着テープ等が用いられてもよい。
【0030】
第1の帯状部材20は、カップ部12の下辺部脇側12Lsから、バストトップTとバージス最下点Bとの中間を通り、カップ部12の下辺部前中心側12Lcに向けて延びている。ここで、バストトップTとバージス最下点Bとの中間とは、バストトップTからバージス最下点Bまでの間において、最下点Bから1/4〜3/4の位置を通ることが好ましく、更に好ましくは、バストトップTからバージス最下点Bまでの1/2の位置T1/2近傍である。また、カップ部12の下辺部前中心側12Lcは、カップ部12の下辺部前中心側端部12Lctからバージス最下点Bまでの1/2の位置B1/2近傍と、下辺部前中心側端部12Lctとの間の部分であることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、第1の帯状部材20の脇側端部は、カップ部12の下辺部脇側12Lsにおける下辺部脇側端部12Lst近傍に縫着されている。一方、第1の帯状部材20の前中心側端部は、カップ部12の下辺部前中心側12Lcにおける中間部分に縫着されている。また、第1の帯状部材20は、脇側端部から前中心側端部にわたって全体的にカップ部12に縫着されていてもよい。
【0032】
第2の帯状部材30は、カップ部12の上辺部に沿って、下辺部前中心側端部12Lctから下辺部脇側端部12Lstまで延びている。第2の帯状部材30は、前中心側端部から脇側端部にわたって全体的にカップ部12に縫着されている。なお、上辺部とは、カップ部の上辺縁のみならず、上辺縁より下方であり、バストトップTより上方の部分も含むものとする。
【0033】
図2は、第2の帯状部材の配置位置の種々の例を示す図である。図2には、図1におけるII−II線に沿う断面構造を示している。図2(a)に示すように、第2の帯状部材30は、カップ部12の表生地12a上であってカップ部12の表側に配置される。また、第2の帯状部材30は、図2(b)に示すように、カップ部12の表生地12aの上辺折り返し部分上であってカップ部12の裏側に配置されてもよいし、図2(c)に示すように、カップ部12と表生地12aとの間に配置されてもよいし、図2(d)に示すように、カップ部12と表生地12aの上辺折り返し部分との間に配置されてもよい。
【0034】
なお、第2の帯状部材30として接着樹脂や接着テープが適用される場合、図2(c),(d)に示すように、カップ部12と表生地12aとの間、又は、カップ部12と表生地12aの上辺折り返し部分との間の接着樹脂や接着テープが、第2の帯状部材30として適用されることとなる。なお、第1の帯状部材も同様に、カップ部の表生地もしくは裏生地の上、その間等に配置されても良い。
【0035】
第1の帯状部材20の幅は第2の帯状部材30の幅以上であることが好ましい。例えば、カップサイズがC70の場合、第2の帯状部材30の幅が約7mmであり、第1の帯状部材20の幅が約7〜12mmであることが好ましい。また、それより大きいラージサイズの場合、第2の帯状部材30の幅が約7〜9mmであり、第1の帯状部材20の幅が約9〜16mmであることが好ましい。これによれば、第1の帯状部材20によるバストの造形性を適切に働かせることができる。なお、第1の帯状部材20の幅は、上記した例以外にも様々な幅に設定することが可能であるが、バストトップTを押さえつけない程度の幅に設定されることが望ましい。
【0036】
連結部材40もまた、帯状をなしており、左右の第1の帯状部材20の前中心側を連結している。連結部材40の中心部は、土台部14の前中心に縫着されている。
【0037】
この第1の実施形態のブラジャー1によれば、主に、バック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を利用して、第1の帯状部材20によってバストの寄せ効果や押し上げ効果を高めることができ、バストの造形性を高めることができる。更に、連結部材40によって、カップ部12が左右に開いてしまうことを抑制することができ、第1の帯状部材20によるバストの寄せ効果や押し上げ効果をより高めることができ、バストの造形性をより高めることができる。なお、連結部材40の中心部は土台部14の前中心に縫着されているので、連結部材40の位置を安定させることができるとともに、連結部材40が着用者の前側に浮いてしまい、アウターウェアに影響を与えてしまうことを抑制することができる。
【0038】
また、第1の実施形態のブラジャー1によれば、第2の帯状部材30がカップ部12の上辺部に沿って下辺部前中心側端部12Lctから下辺部脇側端部12Lstまで延在するので、バック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を強くせずとも、通常のバック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を利用して、第2の帯状部材30によってカップ部12の上辺部をバスト側に沿わせることができる。例えば、第2の帯状部材30によって、カップ部12の上辺部の形状を保つことができるので、バック部16によってカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引いても、カップ部12の上辺部が変形したり、つぶれてバストにくい込んだりすることなく、きれいなカーブを保ったままカップ部12の上辺部をバストに沿わせることができる。したがって、楽な着用感を損なうことなく、バストに対するカップ部12の上辺部の浮きを抑制することができ、更に、着用者の動きに起因して生じるカップ部12の上辺部の浮きをも抑制することができる。
【0039】
このように、第1の帯状部材20によってバストを上に持ち上げ、第2の帯状部材30によってカップ部12の上辺部をバストに沿わせることにより、着用者の動きに影響されることなく、第1及び第2の帯状部材20、30によって囲まれた部分の立体形状を保つことができる。
【0040】
このように、第1の実施形態のブラジャー1は、第1及び第2の帯状部材20、30ともにバック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を主に利用するので、肩紐部18によるカップ部12の上辺部を上に引く力が弱い1/2カップタイプのブラジャーのようにカップ部の面積が小さいブラジャーでも、カップ部の上辺部の浮きを抑制し、バストを造形することができる。
【0041】
また、図3に示すように、肩紐部18を取り外した、カップ部の上辺部を上に引く力がないストラップレスタイプのブラジャーに好適である。
(第1の帯状部材の変形例)
【0042】
ところで、第1の実施形態では、第1の帯状部材20の脇側端部をカップ部12の下辺部脇側12Lsにおける下辺部脇側端部12Lst近傍に縫着したが、図4に示すように、第1の帯状部材20の脇側端部は、カップ部12の下辺部脇側12Lsのうちの何れか一部分に縫着されていればよい。更に、第1の帯状部材20の脇側端部は、上辺部脇側12Usのうちの何れか一部分に縫着されてもよい。この場合にも、第1の帯状部材20は、バック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を利用することができる。更に、この場合には、第1の帯状部材20は、肩紐部18によるカップ部12の上辺部を上に引く力をも利用することができる。
【0043】
また、第1の実施形態では、第1の帯状部材20の前中心側端部をカップ部12の下辺部前中心側12Lcにおける中間部分に縫着したが、図4に示すように、第1の帯状部材20の前中心側端部は、カップ部12の下辺部前中心側12Lcのうちの何れか一部分に縫着されていればよい。
[第2の実施形態]
【0044】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1Aは、ブラジャー1において第1の帯状部材20及び連結部材40に代えて第1の帯状部材20A、連結部材40A、固定部42を備えている構成で第1の実施形態と異なっている。第2の実施形態のブラジャー1Aのその他の構成は、第1の実施形態のブラジャー1と同一である。
【0045】
第1の帯状部材20Aには、第1の帯状部材20と同様の素材が適用可能である。第1の帯状部材20Aは、前中心側端部が、カップ部12の前中心側において、カップ部12の下辺部前中心側の手前の位置12cまでしか延在していない点で第1の帯状部材20と異なっている。第1の帯状部材20Aは、第1の帯状部材20と同様に、脇側端部と前中心側端部とがカップ部12に縫着されていてもよいし、脇側端部から前中心側端部にわたって全体的にカップ部12に縫着されていてもよい。また、脇側端部が縫着され、前中心側端部まではカップから遊離させても良い。左右の第1の帯状部材20Aの前中心側端部は、連結部材40Aによって連結されている。また、左右の第1の帯状部材20Aと連結部材40Aが一体化した、一つの部材としても良い。
【0046】
連結部材40Aにも、連結部材40と同様の素材が適用可能である。連結部材40Aは、土台部14の前中心に縫着されておらず、土台部14に対して遊離しており、土台部14の前中心に設けられた固定部42によって、土台部14に固定されている点で第1の実施形態と異なっている。例えば、固定部42は、布またはテープを環状(リング状)に形成したものであり、土台部14の前中心に縫着されている。連結部材40Aは、この固定部42の孔を通ることによって、土台部14にフレキシブルに固定されることとなる。
【0047】
この第2の実施形態のブラジャー1Aでも、第1の実施形態のブラジャー1と同様の利点を得ることができる。
【0048】
更に、第2の実施形態のブラジャー1Aによれば、連結部材40Aが固定部42の孔に挿通されてフレキシブルに固定されるので、連結部材40Aは左右カップ間をフレキシブルに移動することができる。したがって、連結部材40Aの位置を安定させつつ、例えば連結部材40Aを単に土台部14の前中心に縫着する場合と比較して、着用者の動きに起因して動くバストに対する連結部材40A及びカップ部12の追従性を高めることができる。
【0049】
例えば、着用者が上体を右に捻った場合にあっては、左カップ部12の上辺付近でバストとの間に浮きが生じるところ、この動きに追従して連結部材40Aが左カップ部12側から右カップ部12側へ固定部42の孔をスライドして引かれ、左側カップ部12がバスト側に押さえつけられることにより上記浮きを抑制することとなる。
【0050】
なお、連結部材40Aと固定部42との機能を一つの部材で実現してもよい。例えば、ストラップ等に使用される長さ調節具や、前中心で結ぶリボン等の部材が考えられる。これらの例示の部材によれば、長さ調節機能を備えているので、バストの寄せ効果や押し上げ効果の度合いを調節することも可能となる。
[第3の実施形態]
【0051】
図6は、本発明の第3の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1Bは、ブラジャー1において第1の帯状部材20及び連結部材40に代えて引寄部22、固定部42を備えている構成で第1の実施形態と異なっている。第3の実施形態のブラジャー1Bのその他の構成は、第1の実施形態のブラジャー1と同一である。
【0052】
引寄部22は、バストを前中心に向けて引き寄せるためのものである。引寄部22の脇辺部は、カップ部12の下辺部脇側に縫着されている。引寄部22は、カップ部12の下辺部脇側から前中心へ向けて、次第に幅が狭くなるように、カップ部12の下部に沿った略三角形をなして延びている。引寄部22は、前中心において、左右の引寄部のうちのもう一方の引寄部と縫着されている。なお、引寄部22は、左右の引寄部を一枚布から一体的に形成するものであってもよい。引寄部22は、カップ部12に対して脇辺部を除いて遊離している。これにより、引寄部22は、バストを前中心方向に引き寄せるように作用する。
【0053】
この引寄部22の上辺部には、第1の帯状部材20Bが縫着されている。この第1の帯状部材20Bも、引寄部22と同様に、前中心において左右の第1の帯状部材のうちのもう一方の第1の帯状部材と縫着されている形態であってもよいし、左右の第1の帯状部材を一本の帯状部材から一体的に形成する形態であってもよい。また、第1の帯状部材20Bも、引寄部22と同様に、カップ部12に対して脇側端部を除いて遊離している。
【0054】
第1の帯状部材20Bには、第1の帯状部材20と同様の素材が適用可能である。また、第1の帯状部材20Bは、第1の帯状部材20と同様に、カップ部12の下辺部脇側12Lsから、バストトップTとバージス最下点Bとの中間を通り、カップ部12の下辺部前中心側12Lcに向けて延在している。ここで、バストトップTとバージス最下点Bとの中間とは、同様に、バストトップTからバージス最下点Bまでの間において、最下点Bから1/4〜3/4の位置を通ることが好ましく、更に好ましくは、バストトップTからバージス最下点Bまでの1/2の位置T1/2近傍である。また、第1の帯状部材20Bの幅は第2の帯状部材30の幅以上であることが好ましい。
【0055】
引寄部22及び第1の帯状部材20Bの前中心部は、土台部14の前中心に設けられた固定部42によって、土台部14に固定されている。例えば、固定部42は、布またはテープを環状(リング状)に形成したものであり、土台部14の前中心に縫着されている。引寄部22及び第1の帯状部材20Bの前中心部は、この固定部42の孔を通ることによって、土台部14にフレキシブルに固定されることとなる。
【0056】
この第3の実施形態のブラジャー1Bでも、第1及び第2の帯状部材20B,30を備えているので、第1の実施形態のブラジャー1と同様の効果を得ることができる。
【0057】
更に、第3の実施形態のブラジャー1Bによれば、引寄部22及び第1の帯状部材20Bの脇側端部以外の部分がカップ部12に対して遊離しており、前中心側端部が固定部42の孔に挿通されてフレキシブルに固定されるので、引寄部22及び第1の帯状部材20Bの前中心側端部は左右カップ間をフレキシブルに移動することができる。したがって、第1の実施形態のブラジャー1の連結部材40を土台部14に縫着する場合と同様に、引寄部22及び第1の帯状部材20Bの前中心側端部の位置を安定させつつ、第1の実施形態のブラジャー1の連結部材40を単に土台部14に縫着する場合と比較して、着用者の動きに起因して動くバストに対する引寄部22及び第1の帯状部材20B、並びにカップ部12の追従性を高めることができる。
【0058】
例えば、着用者が上体を右に捻った場合にあっては、左カップ部12の上辺付近でバストとの間に浮きが生じるところ、この動きに追従して引寄部22及び第1の帯状部材20Bが左カップ部12側から右カップ部12側へ固定部42の孔をスライドして引かれ、左側カップ部12がバスト側に押さえつけられることにより上記浮きを抑制することとなる。
【0059】
なお、上述したように、第3の実施形態に係るブラジャー1Bは、肩紐部18によるカップ部12の上辺部を上に引く力が弱い1/2カップタイプのブラジャーや、ストラップを取り外して使用する場合に好適である。
[第4の実施形態]
【0060】
図7は、本発明の第4の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1Cは、ブラジャー1Bにおいて引寄部22及び第1の帯状部材20Bに代えて引寄部22C及び第1の帯状部材20Cを備えている構成で第3の実施形態と異なっている。第4の実施形態のブラジャー1Cのその他の構成は、第3の実施形態のブラジャー1Bと同一である。
【0061】
引寄部22Cは、脇辺部がカップ部12の下辺部脇側に縫着されているのに加えて上辺部脇側もカップ部12の上辺部脇側12Usに縫着されている点で引寄部22と異なっている。引寄部22Cのその他の構成は引寄部22と同様である。すなわち、引寄部22Cの上辺部に縫着された第1の帯状部材20Cは、カップ部12の上辺部脇側12Usから、バストトップTとバージス最下点Bとの中間を通り、カップ部12の下辺部前中心側12Lcに向けて延在している。ここで、バストトップTとバージス最下点Bとの中間とは、同様に、バストトップTからバージス最下点Bまでの間において、最下点Bから1/4〜3/4の位置を通ることが好ましく、更に好ましくは、バストトップTからバージス最下点Bまでの1/2の位置T1/2近傍である。この第1の帯状部材20Cの幅は第2の帯状部材30の幅以上であることが好ましい。
【0062】
この第4の実施形態のブラジャー1Cでも、第3の実施形態のブラジャー1Bと同様の利点を得ることができる。
【0063】
なお、上述したように、第4の実施形態のブラジャー1Cは、ストラップを取り付けて使用する場合、又は、ストラップ固定タイプの場合に好適である。
[第5の実施形態]
【0064】
図8は、本発明の第5の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1Dは、ブラジャー1において本体部10及び第2の帯状部材30に代えて本体部10D、第2の帯状部材30Dを備えている構成で第1の実施形態と異なっている。第5の実施形態のブラジャー1Dのその他の構成は、第1の実施形態のブラジャー1と同一である。
【0065】
本体部10Dは、肩紐部18とカップ部12との間に幅広肩紐部19が縫着されている構成で本体部10と異なっている。幅広肩紐部19には、難伸縮性又は非伸縮性の生地が適用可能である。幅広肩紐部19は、肩紐部18からカップ部12の上辺部脇側に向けて次第に幅が広くなっており、バスト上部を覆うように機能する。これより、幅広肩紐部19と1/2カップタイプのカップ部12とで、3/4カップタイプまたはフルカップタイプと称されることがある。このような形態では、幅広肩紐部19の脇側縁部は、カップ部の脇辺部12Sとして機能することとなる。幅広肩紐部19には、布やレース等の生地が用いられる。
【0066】
第2の帯状部材30Dには、第2の帯状部材30と同様の素材が適用可能である。第2の帯状部材30Dは、カップ部12の上辺部に沿って、下辺部前中心側端部12Lctから脇辺部12Sまで延びている。
【0067】
この第5の実施形態のブラジャー1Dでも、第1の実施形態のブラジャー1と同様の効果を得ることができる。
(第5の実施形態の変形例)
【0068】
第5の実施形態のブラジャー1Dでは、図9、図10に示すように、第1の帯状部材20の脇側端部も脇辺部12Sから延在していてもよい。
【0069】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、カップ部12には、モールドタイプのものが適用可能である。この場合、図11(a)に示すように、第1及び第2の帯状部材20,30をカップ部12の内部に一体成型してもよい。また、図11(b),(c)に示すように、カップ部12の成型時に、カップ部12の表側又は裏側に第1及び第2の帯状部材20,30の配置部位を熱成型した後、第1及び第2の帯状部材20,30を配置してもよい。なお、図11(b),(c)では、カップ部12、第1及び第2の帯状部材20,30全てを表生地12aによって覆っている。また、図11(d)に示すように、カップ部12を表生地12aによって覆った後に、表生地12aの表側に第1及び第2の帯状部材20,30を配置してもよい。
【0070】
図11(a)によれば、カップ部の成型と第1及び第2の帯状部材の配置とを一度に行うことができ、作業効率を高めることができる。また、図11(a)〜(c)によれば、第1及び第2の帯状部材が表から見えないため、見栄えが良くなる。また、図(a)〜(d)によれば、第1及び第2の帯状部材において段差ができないため、第1及び第2の帯状部材が肌にあたらず、着用感を高めることができる。
【0071】
また、本実施形態では、略直線状の第1及び第2の帯状部材20,30を例示したが、第1及び第2の帯状部材としては、波状や非並行状等、様々な形態の帯状部材が適用可能である。
【0072】
また、本実施形態では、カップ部材及び引寄部材とは別部材の第1及び第2の帯状部材20,30を備える形態を例示したが、本発明の第1及び第2の造形補助部は、カップ部材又は引寄部材の一部に一体的に形成されてもよい。例えば、モールド等のカップ部材の一部を強くすることによって、第1及び第2の造形補助部を形成してもよいし、引寄部材の一部を布地のパワー切替や刺繍等により強くすることで、第1及び第2の造形補助部を形成してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、カップワイヤー50を備えるブラジャーを例示したが、本実施形態の特徴は、上記したように、カップワイヤーを備えないノンワイヤータイプのブラジャーにも適用可能である。
【0074】
また、本実施形態では、土台部14を備えるブラジャーを例示したが、本実施形態の特徴は、上記したように、土台部を備えないタイプのブラジャーにも適用可能である。
【0075】
また、本実施形態では、バック部16の後端をホック等で掛け留めするタイプのブラジャーを例示したが、本実施形態の特徴は、前中心において土台部14の左右を分離してホック等で掛け留めするフロントホックタイプのブラジャーにも適用可能である。
【0076】
また、本実施形態の特徴は、ブラジャー以外でも、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ、カップ付きテディ、水着等のようにカップ部を備える衣類であればすべてに適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B,1C,1D…ブラジャー(カップ部を有する衣類)、10,10D…本体部、12…カップ部、12Lc…下辺部前中心側、12Lct…下辺部前中心側端部、12Ls…下辺部脇側、12Lst…下辺部脇側端部、12S…脇辺部、12Us…上辺部脇側、12a…表生地、14…土台部、16…バック部、18…肩紐部、18a…着脱部材、19…幅広肩紐部、20,20A,20B,20C…第2の帯状部材(第1の造形補助部)、22,22C…引寄部、30,30D…第2の帯状部材(第2の造形補助部)、40,40A…連結部材、42…固定部、50…カップワイヤー、B…バージス最下点、T…バストトップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バストを覆うためのカップ部を有する衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、バストを覆うためのカップ部を有する衣類として、ブラジャーが開示されている。これらのブラジャーは、カップ部に対して帯状部材(造形補助部)を備えている。特許文献1に開示のブラジャーは、バストに対する圧迫感を抑制するために、カップ部の下辺におけるワイヤに代えて帯状部材(テープ)を用いている。この帯状部材は、一方のカップ部の下辺に沿って他方のカップ部方向に延び、他方のカップ部の上辺に沿って肩紐まで延びている。また、特許文献2に開示のブラジャーは、カップ部の上辺部に帯状部材(上辺布)を重ね合わせ、カップ部の脇側部に帯状部材(脇布)を重ね合わせている。これらの帯状部材は、肩紐から延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−119004号公報
【特許文献2】実開昭62−203209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ブラジャーによってバストのボリュームを上方へ持ち上げる際、バストのボリュームがうまく持ち上がらずに、カップ部の上辺部がバストに対して浮いてしまうことがある。特に、年齢を重ねるに従って柔らかくなり、下垂したバストは、上胸にボリュームを移動しにくく、カップ部の上辺部がバストに対して浮きやすい。
【0005】
この点に関し、特許文献1及び2に開示のブラジャーのように、肩紐による上に引く力を積極的に利用するが考えられるが、その場合、肩に負担がかかってしまう。また、カップ部の上辺部が着用者にくい込んでしまうことがある。更には、ストラップ部の付け根が引っ張られて、カップ部の上辺部が歪んでしまい(ラインが変形してしまい)、バストに沿わなくなってしまう。逆に、肩に負担がかからないように、ストラップ部をゆるくすると、カップ部の上辺部がバストに対して浮いてしまう。
【0006】
特に、1/2カップタイプのブラジャーのようにカップ部の面積が小さいブラジャーでは、フルカップタイプのブラジャーと比較して肩紐付け根近傍の布地が少なく、肩紐によってカップ部の上辺部を上に引く力が弱い。更には、ストラップレスタイプのブラジャーでは、カップ部の上辺部を上に引く力がない。そのため、1/2カップタイプやストラップレスタイプのブラジャーでは、バック部によってカップ部の下辺部脇側を横に引く力を利用して、カップ部を安定させることとなる。
【0007】
この種の1/2カップタイプやストラップレスタイプのブラジャーでは、カップ部の上辺部を上に引く力が弱い又はないので、着用者の動作に伴い、カップ部の上辺部がバストから浮いてしまうことがある。この点に関し、バック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を強くすることが考えられるが、その場合、着用者に強い締め付け感を与えてしまう。また、ストラップ部によるカップ部の上辺部を上に引く力を強くすることも考えられるが、その場合、カップ部の上辺部が着用者にくい込んでしまい、バストシルエットがくずれてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、楽な着用感を損なうことなく、バストに対するカップ部の上辺部の浮きを抑制することが可能なカップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカップ部を有する衣類は、バストを覆うためのカップ部と、カップ部の下辺部脇側を横に引く力を生じさせ、カップ部を安定させるバック部とを有する衣類において、バストの造形性を補助するための第1の造形補助部であって、カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部から、バストトップとカップ部の下辺との間を通り、カップ部の前中心側に向けて延在する第1の造形補助部と、バストの造形性を補助するための第2の造形補助部であって、カップ部の上辺部に沿って下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部まで延在する第2の造形補助部と、を備える。
【0010】
このカップ部を有する衣類によれば、第2の造形補助部がカップ部の上辺部に沿って下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部まで延在するので、バック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を強くせずとも、通常のバック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を利用して、第2の造形補助部によってカップ部の上辺部をバスト側に沿わせることができる。
【0011】
例えば、第2の造形補助部がないブラジャーでは、着用したときに、カップ部の上辺部が脇側に歪んでしまい、バストに沿わないことがある。その場合、カップ部の上辺部がバストにフィットしていないため、着用者の動きに起因して更に着崩れが生じてしまう。この点に関し、上記したように、バック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を強くすることが考えられるが、その場合、着用者に強い締め付け感を与えてしまう。これに対し、このカップ部を有する衣類によれば、第2の造形補助部によって、カップ部の上辺部の形状を保つことができる。そのため、バック部によってカップ部の下辺部脇側を横に引いても、カップ部の上辺部が変形したり、つぶれてバストにくい込んだりすることなく、きれいなカーブを保ったままカップ部の上辺部をバストに沿わせることができる。
【0012】
したがって、楽な着用感を損なうことなく、バストに対するカップ部の上辺部の浮きを抑制することができ、更に、着用者の動きに起因して生じるカップ部の上辺部の浮きをも抑制することができる。
【0013】
また、このカップ部を有する衣類によれば、主に、バック部によるカップ部の下辺部脇側を横に引く力を利用して、第1の造形補助部によってバストの寄せ効果や押し上げ効果を高めることができ、バストの造形性を高めることができる。
【0014】
このように、第1の造形補助部によってバストを上に持ち上げ、第2の造形補助部によってカップ部の上辺部をバストに沿わせることにより、着用者の動きに影響されることなく、第1及び第2の造形補助部によって囲まれた部分の立体形状を保つことができる。
【0015】
上記した第1の造形補助部は、前中心において連結していることが好ましい。この構成によれば、左右のバスト同士(カップ同士)が離れる(開く)のを抑制することができ、バストの寄せ効果や押し上げ効果をより高めることができ、バストの造形性をより高めることができる。
【0016】
上記した第1の造形補助部では、脇側端部がカップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部に結合され、前中心側端部がカップ部の前中心側に結合されており、上記した第2の造形補助部は、カップ部の下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部にわたって結合されていてもよい。この構成によれば、第1の造形補助部がカップ部の動きにひきつられることなく、また、第1の造形補助部の位置がずれることもない。また、第2の造形補助部が安定し、カップ部の上辺部を更にしっかりさせることができる。
【0017】
また、上記した第1の造形補助部は、カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部から前中心側にわたって結合されていてもよい。この構成によれば、第1の造形補助部が安定し、カップ部の下部を更にしっかりさせることができる。その結果、バストの造形性を高めることができる。
【0018】
また、上記したカップ部を有する衣類は、左右の第1の造形補助部の前中心側を連結する帯状の連結部材を更に備えることが好ましい。この構成によれば、連結部材によって、カップ部が左右に開いてしまうことを抑制することができ、第1の造形補助部によるバストの寄せ効果や押し上げ効果をより高めることができ、バストの造形性をより高めることができる。
【0019】
また、上記した第1の造形補助部の脇側端部はカップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部に結合され、その他の部分は前記カップ部に対して遊離しており、上記した左右の第1の造形補助部の前中心側端部は連結されていることが好ましい。この構成によれば、第1の造形補助部の脇側端部以外の部分がカップ部に対して遊離しているので、カップ部の動きに影響されることなく、バストの寄せ効果や押し上げ効果をより高めることができる。また、左右の第1の造形補助部の前中心側端部が連結されているので、カップ部が左右に開いてしまうことを抑制することができる。その結果、バストの造形性をより高めることができる。
【0020】
また、上記したカップ部を有する衣類は、前中心に設けられた環状の固定部を更に備え、上記した第1の造形補助部の前中心側端部は、固定部の孔に挿通されていることが好ましい。この構成によれば、上記したように第1の造形補助部の脇側端部以外の部分がカップ部に対して遊離しており、前中心側端部が固定部の孔に挿通されてフレキシブルに固定されるので、第1の造形補助部の前中心側端部は左右カップ間をフレキシブルに移動することができる。したがって、第1の造形補助部の前中心側端部の位置を安定させつつ、例えば第1の造形補助部の前中心側端部を単に前中心に固定する場合と比較して、着用者の動きに起因して動くバストに対するカップ部の追従性を高めることができる。
【0021】
また、上記した第1の造形補助部の幅は、第2の造形補助部の幅よりも広いことが好ましい。この構成によれば、第1の造形補助部によるバストの造形性をより強くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、カップ部を有する衣類において、楽な着用感を損なうことなく、バストに対するカップ部の上辺部の浮きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図2】第2の帯状部材の配置位置の種々の例を示す図である。
【図3】第1の実施形態のブラジャーにおいて肩紐部を取り外した状態を示す図である。
【図4】本発明の変形例に係る第1の帯状部材を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図9】本発明の変形例に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図10】本発明の変形例に係るブラジャーを示す斜視図である。
【図11】本発明の変形例に係るカップ部と第1及び第2の帯状部材とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明のカップ部を有する衣類の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
[第1の実施形態]
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1は、本体部10と、第1の帯状部材(第1の造形補助部)20と、第2の帯状部材(第2の造形補助部)30と、連結部材40とを備えている。なお、ブラジャー1は左右略対称であるので、以下では左右の一方のみによって説明する。
【0026】
本体部10は、カップ部12と、土台部14と、バック部16と、肩紐部18とを有している。
【0027】
カップ部12は、バストを覆うためのものであり、土台部14に支持されている。土台部14は、非伸縮性の布からなっており、カップ部12の下辺部と縫着されている。土台部14の脇辺部には、バック部16が縫着されている。なお、土台部14は必ずしも備えなくてもよい。その場合、バック部16は、カップ部12の下辺部脇側に縫着される。バック部16は、伸縮性の布からなっており、背中において連結することによって、土台部14の脇辺部、すなわちカップ部12の下辺部脇側を横に引っ張る力を生じさせ、カップ部を安定させる。また、カップ部12の上辺部脇側には、肩紐部18が着脱部材18aを介して着脱自在に連結されている。肩紐部18の他端もまた、着脱部材を介してバック部16に連結されている。肩紐部18は、伸縮性の布又は紐等からなっている。
【0028】
また、カップ部12と土台部14との境界には、すなわち、バージスラインに沿ってカップワイヤー50が装着されている。なお、カップワイヤー50は必ずしも備えなくてもよい。また、カップ部12の表側には、第1の帯状部材20と第2の帯状部材30が設けられている。
【0029】
第1の帯状部材20、第2の帯状部材30、及び、連結部材40には、テープや布等が用いられる。あるいは、第1の帯状部材20、第2の帯状部材30、及び、連結部材40には、伸張回復性が高い素材(SS曲線傾斜が小さい素材)が用いられてもよい。また、第1の帯状部材20、第2の帯状部材30、及び、連結部材40には、接着樹脂や接着テープ等が用いられてもよい。
【0030】
第1の帯状部材20は、カップ部12の下辺部脇側12Lsから、バストトップTとバージス最下点Bとの中間を通り、カップ部12の下辺部前中心側12Lcに向けて延びている。ここで、バストトップTとバージス最下点Bとの中間とは、バストトップTからバージス最下点Bまでの間において、最下点Bから1/4〜3/4の位置を通ることが好ましく、更に好ましくは、バストトップTからバージス最下点Bまでの1/2の位置T1/2近傍である。また、カップ部12の下辺部前中心側12Lcは、カップ部12の下辺部前中心側端部12Lctからバージス最下点Bまでの1/2の位置B1/2近傍と、下辺部前中心側端部12Lctとの間の部分であることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、第1の帯状部材20の脇側端部は、カップ部12の下辺部脇側12Lsにおける下辺部脇側端部12Lst近傍に縫着されている。一方、第1の帯状部材20の前中心側端部は、カップ部12の下辺部前中心側12Lcにおける中間部分に縫着されている。また、第1の帯状部材20は、脇側端部から前中心側端部にわたって全体的にカップ部12に縫着されていてもよい。
【0032】
第2の帯状部材30は、カップ部12の上辺部に沿って、下辺部前中心側端部12Lctから下辺部脇側端部12Lstまで延びている。第2の帯状部材30は、前中心側端部から脇側端部にわたって全体的にカップ部12に縫着されている。なお、上辺部とは、カップ部の上辺縁のみならず、上辺縁より下方であり、バストトップTより上方の部分も含むものとする。
【0033】
図2は、第2の帯状部材の配置位置の種々の例を示す図である。図2には、図1におけるII−II線に沿う断面構造を示している。図2(a)に示すように、第2の帯状部材30は、カップ部12の表生地12a上であってカップ部12の表側に配置される。また、第2の帯状部材30は、図2(b)に示すように、カップ部12の表生地12aの上辺折り返し部分上であってカップ部12の裏側に配置されてもよいし、図2(c)に示すように、カップ部12と表生地12aとの間に配置されてもよいし、図2(d)に示すように、カップ部12と表生地12aの上辺折り返し部分との間に配置されてもよい。
【0034】
なお、第2の帯状部材30として接着樹脂や接着テープが適用される場合、図2(c),(d)に示すように、カップ部12と表生地12aとの間、又は、カップ部12と表生地12aの上辺折り返し部分との間の接着樹脂や接着テープが、第2の帯状部材30として適用されることとなる。なお、第1の帯状部材も同様に、カップ部の表生地もしくは裏生地の上、その間等に配置されても良い。
【0035】
第1の帯状部材20の幅は第2の帯状部材30の幅以上であることが好ましい。例えば、カップサイズがC70の場合、第2の帯状部材30の幅が約7mmであり、第1の帯状部材20の幅が約7〜12mmであることが好ましい。また、それより大きいラージサイズの場合、第2の帯状部材30の幅が約7〜9mmであり、第1の帯状部材20の幅が約9〜16mmであることが好ましい。これによれば、第1の帯状部材20によるバストの造形性を適切に働かせることができる。なお、第1の帯状部材20の幅は、上記した例以外にも様々な幅に設定することが可能であるが、バストトップTを押さえつけない程度の幅に設定されることが望ましい。
【0036】
連結部材40もまた、帯状をなしており、左右の第1の帯状部材20の前中心側を連結している。連結部材40の中心部は、土台部14の前中心に縫着されている。
【0037】
この第1の実施形態のブラジャー1によれば、主に、バック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を利用して、第1の帯状部材20によってバストの寄せ効果や押し上げ効果を高めることができ、バストの造形性を高めることができる。更に、連結部材40によって、カップ部12が左右に開いてしまうことを抑制することができ、第1の帯状部材20によるバストの寄せ効果や押し上げ効果をより高めることができ、バストの造形性をより高めることができる。なお、連結部材40の中心部は土台部14の前中心に縫着されているので、連結部材40の位置を安定させることができるとともに、連結部材40が着用者の前側に浮いてしまい、アウターウェアに影響を与えてしまうことを抑制することができる。
【0038】
また、第1の実施形態のブラジャー1によれば、第2の帯状部材30がカップ部12の上辺部に沿って下辺部前中心側端部12Lctから下辺部脇側端部12Lstまで延在するので、バック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を強くせずとも、通常のバック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を利用して、第2の帯状部材30によってカップ部12の上辺部をバスト側に沿わせることができる。例えば、第2の帯状部材30によって、カップ部12の上辺部の形状を保つことができるので、バック部16によってカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引いても、カップ部12の上辺部が変形したり、つぶれてバストにくい込んだりすることなく、きれいなカーブを保ったままカップ部12の上辺部をバストに沿わせることができる。したがって、楽な着用感を損なうことなく、バストに対するカップ部12の上辺部の浮きを抑制することができ、更に、着用者の動きに起因して生じるカップ部12の上辺部の浮きをも抑制することができる。
【0039】
このように、第1の帯状部材20によってバストを上に持ち上げ、第2の帯状部材30によってカップ部12の上辺部をバストに沿わせることにより、着用者の動きに影響されることなく、第1及び第2の帯状部材20、30によって囲まれた部分の立体形状を保つことができる。
【0040】
このように、第1の実施形態のブラジャー1は、第1及び第2の帯状部材20、30ともにバック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を主に利用するので、肩紐部18によるカップ部12の上辺部を上に引く力が弱い1/2カップタイプのブラジャーのようにカップ部の面積が小さいブラジャーでも、カップ部の上辺部の浮きを抑制し、バストを造形することができる。
【0041】
また、図3に示すように、肩紐部18を取り外した、カップ部の上辺部を上に引く力がないストラップレスタイプのブラジャーに好適である。
(第1の帯状部材の変形例)
【0042】
ところで、第1の実施形態では、第1の帯状部材20の脇側端部をカップ部12の下辺部脇側12Lsにおける下辺部脇側端部12Lst近傍に縫着したが、図4に示すように、第1の帯状部材20の脇側端部は、カップ部12の下辺部脇側12Lsのうちの何れか一部分に縫着されていればよい。更に、第1の帯状部材20の脇側端部は、上辺部脇側12Usのうちの何れか一部分に縫着されてもよい。この場合にも、第1の帯状部材20は、バック部16によるカップ部12の下辺部脇側12Lsを横に引く力を利用することができる。更に、この場合には、第1の帯状部材20は、肩紐部18によるカップ部12の上辺部を上に引く力をも利用することができる。
【0043】
また、第1の実施形態では、第1の帯状部材20の前中心側端部をカップ部12の下辺部前中心側12Lcにおける中間部分に縫着したが、図4に示すように、第1の帯状部材20の前中心側端部は、カップ部12の下辺部前中心側12Lcのうちの何れか一部分に縫着されていればよい。
[第2の実施形態]
【0044】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1Aは、ブラジャー1において第1の帯状部材20及び連結部材40に代えて第1の帯状部材20A、連結部材40A、固定部42を備えている構成で第1の実施形態と異なっている。第2の実施形態のブラジャー1Aのその他の構成は、第1の実施形態のブラジャー1と同一である。
【0045】
第1の帯状部材20Aには、第1の帯状部材20と同様の素材が適用可能である。第1の帯状部材20Aは、前中心側端部が、カップ部12の前中心側において、カップ部12の下辺部前中心側の手前の位置12cまでしか延在していない点で第1の帯状部材20と異なっている。第1の帯状部材20Aは、第1の帯状部材20と同様に、脇側端部と前中心側端部とがカップ部12に縫着されていてもよいし、脇側端部から前中心側端部にわたって全体的にカップ部12に縫着されていてもよい。また、脇側端部が縫着され、前中心側端部まではカップから遊離させても良い。左右の第1の帯状部材20Aの前中心側端部は、連結部材40Aによって連結されている。また、左右の第1の帯状部材20Aと連結部材40Aが一体化した、一つの部材としても良い。
【0046】
連結部材40Aにも、連結部材40と同様の素材が適用可能である。連結部材40Aは、土台部14の前中心に縫着されておらず、土台部14に対して遊離しており、土台部14の前中心に設けられた固定部42によって、土台部14に固定されている点で第1の実施形態と異なっている。例えば、固定部42は、布またはテープを環状(リング状)に形成したものであり、土台部14の前中心に縫着されている。連結部材40Aは、この固定部42の孔を通ることによって、土台部14にフレキシブルに固定されることとなる。
【0047】
この第2の実施形態のブラジャー1Aでも、第1の実施形態のブラジャー1と同様の利点を得ることができる。
【0048】
更に、第2の実施形態のブラジャー1Aによれば、連結部材40Aが固定部42の孔に挿通されてフレキシブルに固定されるので、連結部材40Aは左右カップ間をフレキシブルに移動することができる。したがって、連結部材40Aの位置を安定させつつ、例えば連結部材40Aを単に土台部14の前中心に縫着する場合と比較して、着用者の動きに起因して動くバストに対する連結部材40A及びカップ部12の追従性を高めることができる。
【0049】
例えば、着用者が上体を右に捻った場合にあっては、左カップ部12の上辺付近でバストとの間に浮きが生じるところ、この動きに追従して連結部材40Aが左カップ部12側から右カップ部12側へ固定部42の孔をスライドして引かれ、左側カップ部12がバスト側に押さえつけられることにより上記浮きを抑制することとなる。
【0050】
なお、連結部材40Aと固定部42との機能を一つの部材で実現してもよい。例えば、ストラップ等に使用される長さ調節具や、前中心で結ぶリボン等の部材が考えられる。これらの例示の部材によれば、長さ調節機能を備えているので、バストの寄せ効果や押し上げ効果の度合いを調節することも可能となる。
[第3の実施形態]
【0051】
図6は、本発明の第3の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1Bは、ブラジャー1において第1の帯状部材20及び連結部材40に代えて引寄部22、固定部42を備えている構成で第1の実施形態と異なっている。第3の実施形態のブラジャー1Bのその他の構成は、第1の実施形態のブラジャー1と同一である。
【0052】
引寄部22は、バストを前中心に向けて引き寄せるためのものである。引寄部22の脇辺部は、カップ部12の下辺部脇側に縫着されている。引寄部22は、カップ部12の下辺部脇側から前中心へ向けて、次第に幅が狭くなるように、カップ部12の下部に沿った略三角形をなして延びている。引寄部22は、前中心において、左右の引寄部のうちのもう一方の引寄部と縫着されている。なお、引寄部22は、左右の引寄部を一枚布から一体的に形成するものであってもよい。引寄部22は、カップ部12に対して脇辺部を除いて遊離している。これにより、引寄部22は、バストを前中心方向に引き寄せるように作用する。
【0053】
この引寄部22の上辺部には、第1の帯状部材20Bが縫着されている。この第1の帯状部材20Bも、引寄部22と同様に、前中心において左右の第1の帯状部材のうちのもう一方の第1の帯状部材と縫着されている形態であってもよいし、左右の第1の帯状部材を一本の帯状部材から一体的に形成する形態であってもよい。また、第1の帯状部材20Bも、引寄部22と同様に、カップ部12に対して脇側端部を除いて遊離している。
【0054】
第1の帯状部材20Bには、第1の帯状部材20と同様の素材が適用可能である。また、第1の帯状部材20Bは、第1の帯状部材20と同様に、カップ部12の下辺部脇側12Lsから、バストトップTとバージス最下点Bとの中間を通り、カップ部12の下辺部前中心側12Lcに向けて延在している。ここで、バストトップTとバージス最下点Bとの中間とは、同様に、バストトップTからバージス最下点Bまでの間において、最下点Bから1/4〜3/4の位置を通ることが好ましく、更に好ましくは、バストトップTからバージス最下点Bまでの1/2の位置T1/2近傍である。また、第1の帯状部材20Bの幅は第2の帯状部材30の幅以上であることが好ましい。
【0055】
引寄部22及び第1の帯状部材20Bの前中心部は、土台部14の前中心に設けられた固定部42によって、土台部14に固定されている。例えば、固定部42は、布またはテープを環状(リング状)に形成したものであり、土台部14の前中心に縫着されている。引寄部22及び第1の帯状部材20Bの前中心部は、この固定部42の孔を通ることによって、土台部14にフレキシブルに固定されることとなる。
【0056】
この第3の実施形態のブラジャー1Bでも、第1及び第2の帯状部材20B,30を備えているので、第1の実施形態のブラジャー1と同様の効果を得ることができる。
【0057】
更に、第3の実施形態のブラジャー1Bによれば、引寄部22及び第1の帯状部材20Bの脇側端部以外の部分がカップ部12に対して遊離しており、前中心側端部が固定部42の孔に挿通されてフレキシブルに固定されるので、引寄部22及び第1の帯状部材20Bの前中心側端部は左右カップ間をフレキシブルに移動することができる。したがって、第1の実施形態のブラジャー1の連結部材40を土台部14に縫着する場合と同様に、引寄部22及び第1の帯状部材20Bの前中心側端部の位置を安定させつつ、第1の実施形態のブラジャー1の連結部材40を単に土台部14に縫着する場合と比較して、着用者の動きに起因して動くバストに対する引寄部22及び第1の帯状部材20B、並びにカップ部12の追従性を高めることができる。
【0058】
例えば、着用者が上体を右に捻った場合にあっては、左カップ部12の上辺付近でバストとの間に浮きが生じるところ、この動きに追従して引寄部22及び第1の帯状部材20Bが左カップ部12側から右カップ部12側へ固定部42の孔をスライドして引かれ、左側カップ部12がバスト側に押さえつけられることにより上記浮きを抑制することとなる。
【0059】
なお、上述したように、第3の実施形態に係るブラジャー1Bは、肩紐部18によるカップ部12の上辺部を上に引く力が弱い1/2カップタイプのブラジャーや、ストラップを取り外して使用する場合に好適である。
[第4の実施形態]
【0060】
図7は、本発明の第4の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1Cは、ブラジャー1Bにおいて引寄部22及び第1の帯状部材20Bに代えて引寄部22C及び第1の帯状部材20Cを備えている構成で第3の実施形態と異なっている。第4の実施形態のブラジャー1Cのその他の構成は、第3の実施形態のブラジャー1Bと同一である。
【0061】
引寄部22Cは、脇辺部がカップ部12の下辺部脇側に縫着されているのに加えて上辺部脇側もカップ部12の上辺部脇側12Usに縫着されている点で引寄部22と異なっている。引寄部22Cのその他の構成は引寄部22と同様である。すなわち、引寄部22Cの上辺部に縫着された第1の帯状部材20Cは、カップ部12の上辺部脇側12Usから、バストトップTとバージス最下点Bとの中間を通り、カップ部12の下辺部前中心側12Lcに向けて延在している。ここで、バストトップTとバージス最下点Bとの中間とは、同様に、バストトップTからバージス最下点Bまでの間において、最下点Bから1/4〜3/4の位置を通ることが好ましく、更に好ましくは、バストトップTからバージス最下点Bまでの1/2の位置T1/2近傍である。この第1の帯状部材20Cの幅は第2の帯状部材30の幅以上であることが好ましい。
【0062】
この第4の実施形態のブラジャー1Cでも、第3の実施形態のブラジャー1Bと同様の利点を得ることができる。
【0063】
なお、上述したように、第4の実施形態のブラジャー1Cは、ストラップを取り付けて使用する場合、又は、ストラップ固定タイプの場合に好適である。
[第5の実施形態]
【0064】
図8は、本発明の第5の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。このブラジャー1Dは、ブラジャー1において本体部10及び第2の帯状部材30に代えて本体部10D、第2の帯状部材30Dを備えている構成で第1の実施形態と異なっている。第5の実施形態のブラジャー1Dのその他の構成は、第1の実施形態のブラジャー1と同一である。
【0065】
本体部10Dは、肩紐部18とカップ部12との間に幅広肩紐部19が縫着されている構成で本体部10と異なっている。幅広肩紐部19には、難伸縮性又は非伸縮性の生地が適用可能である。幅広肩紐部19は、肩紐部18からカップ部12の上辺部脇側に向けて次第に幅が広くなっており、バスト上部を覆うように機能する。これより、幅広肩紐部19と1/2カップタイプのカップ部12とで、3/4カップタイプまたはフルカップタイプと称されることがある。このような形態では、幅広肩紐部19の脇側縁部は、カップ部の脇辺部12Sとして機能することとなる。幅広肩紐部19には、布やレース等の生地が用いられる。
【0066】
第2の帯状部材30Dには、第2の帯状部材30と同様の素材が適用可能である。第2の帯状部材30Dは、カップ部12の上辺部に沿って、下辺部前中心側端部12Lctから脇辺部12Sまで延びている。
【0067】
この第5の実施形態のブラジャー1Dでも、第1の実施形態のブラジャー1と同様の効果を得ることができる。
(第5の実施形態の変形例)
【0068】
第5の実施形態のブラジャー1Dでは、図9、図10に示すように、第1の帯状部材20の脇側端部も脇辺部12Sから延在していてもよい。
【0069】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、カップ部12には、モールドタイプのものが適用可能である。この場合、図11(a)に示すように、第1及び第2の帯状部材20,30をカップ部12の内部に一体成型してもよい。また、図11(b),(c)に示すように、カップ部12の成型時に、カップ部12の表側又は裏側に第1及び第2の帯状部材20,30の配置部位を熱成型した後、第1及び第2の帯状部材20,30を配置してもよい。なお、図11(b),(c)では、カップ部12、第1及び第2の帯状部材20,30全てを表生地12aによって覆っている。また、図11(d)に示すように、カップ部12を表生地12aによって覆った後に、表生地12aの表側に第1及び第2の帯状部材20,30を配置してもよい。
【0070】
図11(a)によれば、カップ部の成型と第1及び第2の帯状部材の配置とを一度に行うことができ、作業効率を高めることができる。また、図11(a)〜(c)によれば、第1及び第2の帯状部材が表から見えないため、見栄えが良くなる。また、図(a)〜(d)によれば、第1及び第2の帯状部材において段差ができないため、第1及び第2の帯状部材が肌にあたらず、着用感を高めることができる。
【0071】
また、本実施形態では、略直線状の第1及び第2の帯状部材20,30を例示したが、第1及び第2の帯状部材としては、波状や非並行状等、様々な形態の帯状部材が適用可能である。
【0072】
また、本実施形態では、カップ部材及び引寄部材とは別部材の第1及び第2の帯状部材20,30を備える形態を例示したが、本発明の第1及び第2の造形補助部は、カップ部材又は引寄部材の一部に一体的に形成されてもよい。例えば、モールド等のカップ部材の一部を強くすることによって、第1及び第2の造形補助部を形成してもよいし、引寄部材の一部を布地のパワー切替や刺繍等により強くすることで、第1及び第2の造形補助部を形成してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、カップワイヤー50を備えるブラジャーを例示したが、本実施形態の特徴は、上記したように、カップワイヤーを備えないノンワイヤータイプのブラジャーにも適用可能である。
【0074】
また、本実施形態では、土台部14を備えるブラジャーを例示したが、本実施形態の特徴は、上記したように、土台部を備えないタイプのブラジャーにも適用可能である。
【0075】
また、本実施形態では、バック部16の後端をホック等で掛け留めするタイプのブラジャーを例示したが、本実施形態の特徴は、前中心において土台部14の左右を分離してホック等で掛け留めするフロントホックタイプのブラジャーにも適用可能である。
【0076】
また、本実施形態の特徴は、ブラジャー以外でも、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ、カップ付きテディ、水着等のようにカップ部を備える衣類であればすべてに適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B,1C,1D…ブラジャー(カップ部を有する衣類)、10,10D…本体部、12…カップ部、12Lc…下辺部前中心側、12Lct…下辺部前中心側端部、12Ls…下辺部脇側、12Lst…下辺部脇側端部、12S…脇辺部、12Us…上辺部脇側、12a…表生地、14…土台部、16…バック部、18…肩紐部、18a…着脱部材、19…幅広肩紐部、20,20A,20B,20C…第2の帯状部材(第1の造形補助部)、22,22C…引寄部、30,30D…第2の帯状部材(第2の造形補助部)、40,40A…連結部材、42…固定部、50…カップワイヤー、B…バージス最下点、T…バストトップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バストを覆うためのカップ部と、前記カップ部の下辺部脇側を横に引く力を生じさせ、前記カップ部を安定させるバック部とを有する衣類において、
バストの造形性を補助するための第1の造形補助部であって、前記カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部から、バストトップと前記カップ部の下辺との間を通り、前記カップ部の前中心側に向けて延在する帯状の当該第1の造形補助部と、
バストの造形性を補助するための第2の造形補助部であって、前記カップ部の上辺部に沿って下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部まで延在する帯状の当該第2の造形補助部と、
を備える、カップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記第1の造形補助部は、前中心において連結している、
請求項1に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記第1の造形補助部では、脇側端部が前記カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部に結合され、前中心側端部が前記カップ部の前中心側に結合されており、
前記第2の造形補助部は、前記カップ部の下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部にわたって結合されている、
請求項1又は2に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記第1の造形補助部は、前記カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部から前中心側にわたって結合されている、
請求項3に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
左右の前記第1の造形補助部の前中心側を連結する帯状の連結部材を更に備える、
請求項1〜4の何れか1項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
前記第1の造形補助部の脇側端部は前記カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部に結合され、その他の部分は前記カップ部に対して遊離しており、
左右の前記第1の造形補助部の前中心側端部は連結されている、
請求項1又は2に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項7】
前中心に設けられた環状の固定部を更に備え、
前記第1の造形補助部の前中心側端部は、前記固定部の孔に挿通されている、
請求項6に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項8】
前記第1の造形補助部の幅は、前記第2の造形補助部の幅よりも広い、
請求項1〜7の何れか1項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項1】
バストを覆うためのカップ部と、前記カップ部の下辺部脇側を横に引く力を生じさせ、前記カップ部を安定させるバック部とを有する衣類において、
バストの造形性を補助するための第1の造形補助部であって、前記カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部から、バストトップと前記カップ部の下辺との間を通り、前記カップ部の前中心側に向けて延在する帯状の当該第1の造形補助部と、
バストの造形性を補助するための第2の造形補助部であって、前記カップ部の上辺部に沿って下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部まで延在する帯状の当該第2の造形補助部と、
を備える、カップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記第1の造形補助部は、前中心において連結している、
請求項1に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記第1の造形補助部では、脇側端部が前記カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部に結合され、前中心側端部が前記カップ部の前中心側に結合されており、
前記第2の造形補助部は、前記カップ部の下辺部前中心側端部から下辺部脇側端部又は脇辺部にわたって結合されている、
請求項1又は2に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記第1の造形補助部は、前記カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部から前中心側にわたって結合されている、
請求項3に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
左右の前記第1の造形補助部の前中心側を連結する帯状の連結部材を更に備える、
請求項1〜4の何れか1項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
前記第1の造形補助部の脇側端部は前記カップ部の下辺部脇側、上辺部脇側又は脇辺部に結合され、その他の部分は前記カップ部に対して遊離しており、
左右の前記第1の造形補助部の前中心側端部は連結されている、
請求項1又は2に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項7】
前中心に設けられた環状の固定部を更に備え、
前記第1の造形補助部の前中心側端部は、前記固定部の孔に挿通されている、
請求項6に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項8】
前記第1の造形補助部の幅は、前記第2の造形補助部の幅よりも広い、
請求項1〜7の何れか1項に記載のカップ部を有する衣類。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−76176(P2013−76176A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215041(P2011−215041)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]