説明

カップ

【課題】注ぎ口となる注ぎ樋が充填後のシール時や不使用時には邪魔にならず、使用時に簡単な操作で使用しやすい状態に反転して使い勝手の良いカップを提案する。
【解決手段】上端を開口した有底筒状をなす容器体Aと、容器体上面に剥離可能に固着させて容器体上端開口を閉塞する蓋板Bとを備え、容器体の上端外周縁より外方斜め下方へ、斜め上方への反転により注ぎ樋15を形成する突片13を突設している。使用時には蓋板を剥がした後突片を上方へ反転させることで収容液の容易な注出或いは吸飲が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカップに関し、詳しくは、飲み易い飲み口或いは注ぎ易い注ぎ口付きのカップに関する。
【背景技術】
【0002】
カップとして、合成樹脂或いは紙等で形成され、上端を開口した有底筒状の簡易形態のものが種々使用されている。これらのカップでは注ぎ口や飲み口となる特殊形状部分を備えたものが種々提案されている。(例えば、特許文献1及び2参照)
【0003】
上記特許文献1に示されているカップは、扇形状の胴紙を丸めて形成した胴部の下方に円形状の底板を巻き締めると共に上方開口縁に外向きのトップカールを形成してなる紙カップであって、胴紙の上端縁に切れ込み部を設けている。このカップは片手で胴部を把持して持ち上げ、この状態でカップの左右を軽く押すと、切れ込み部のあるトップカールのところでV字型に折れ曲がる。従って、カップに液体をいれておけば、ここを注ぎ口として機能させることができる。ここに示されているカップは材質が紙であるため変形させ易い利点を活用した優れたものであるが、注出時にはカップの左右を押し続けておかなければならない。
【0004】
また、特許文献2に示されているものは、口縁部に下フランジを有するカップ状の容器本体と、容器本体の下フランジにシールされた上フランジを周縁部に有する閉鎖体とからなり、閉鎖体の上フランジの内側に上方膨出部が設けられ、上方膨出部の側面に飲み口を穿設している。また、飲み口を被覆して剥離片をシールしている。この場合の容器本体及び閉塞体は紙主体の積層体製であり、使用時には剥離片を剥がして飲み口に口をつけて内容液を吸飲する。
【特許文献1】特開2001−151223号公報
【特許文献2】特開2003−137324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、合成樹脂からも紙からも或いはそれらの積層体からの製造も可能であり、その構造が簡単で安価に製造することができ、また、注ぎ口となる注ぎ樋が不使用時には邪魔にならず、使用時には簡単な操作で使用しやすい状態に反転する如く構成して使い勝手の良いカップを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカップは、容器体と、蓋板とを備える。
【0007】
容器体は合成樹脂,紙,紙と合成樹脂の覆合等により形成することができ、上端を開口した有底筒状形態のもので、周壁の上端縁より外方へフランジを突設したものであっても、フランジを突設しないものであっても該当する。また、上端外周縁より突片を突設している。従って、突片はフランジの外周縁の一部又は全部、或いは容器体周壁の上端外周縁の一部又は全部から突設する。突片は外方斜め下方へ突設し、上方への反転が可能に構成しており、上方へ反転させることで注ぎ樋を形成する如く構成している。従って、突片は半筒状形態のものが好ましく採用される。
【0008】
この場合の突片の反転とは、例えば、突片が斜め下方へ突出した上半部の横半筒状形態と、突片が斜め上方へ突出した下半部の横半筒状形態とでそれぞれ安定した状態であり、両安定状態間を弾性変形しつつ反転する状態を云う。その為に、例えば、突片の基端縁を円弧状に連結する等の上記した反転が可能な構造を採用できる。特に、突片自体が薄肉に形成されている場合や、基端縁が薄肉線により連結している場合には反転がより行い易くなる。
【0009】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、上端を開口した有底筒状をなす容器体Aと、容器体A上面に剥離可能に固着させて容器体A上端開口を閉塞する蓋板Bとを備え、容器体Aの上端外周縁より外方斜め下方へ、斜め上方への反転により注ぎ樋15を形成する、突片13を突設している。
【0010】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、上記容器体Aが、周壁11の上端縁より外方へフランジ12を延設した容器体Aであり、上記蓋板Bが、フランジ12上に周縁部を剥離可能に固着して容器体A上端開口を閉塞した蓋板Bであり、上記突片13が、フランジ12の周縁部より薄肉線14を介して外方斜め下方へ突設した突片13である。
【0011】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、突片13が、容器体周壁11或いはフランジ12外縁と同じ円弧状の内縁部13a より斜め下方へ、弯曲鍔状に突設して円弧状の外縁部13b を備えている。
【0012】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段のいずれかの手段に於いて、上記突片13の上面に、収容物の流動を規制するガイド壁16を突設した。
【0013】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第4の手段のいずれかの手段に於いて、上記ガイド壁16が、突片13の両側縁部をそれぞれ折り曲げ起立させたガイド壁16である。
【0014】
第6の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第5の手段のいずれかの手段に於いて、上記突片13を周方向複数突設した。
【0015】
第7の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、上記突片13が環状をなす。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカップ1は、容器体Aの上端外周縁より外方斜め下方へ、斜め上方への反転により注ぎ樋15を形成する、突片13を突設しているので、使用に当たり収容液を注出したり、飲んだりするのが極めて簡単に行えるとともに、構造も簡単で、安価に製造できる利点も兼ね備えている。また、開封前には突片13が外方斜め下方へ突設しているので邪魔にならず、また、使用時には突片13が外方斜め上方へ突設されるため、収容液を注出したり飲んだりするのが極めて便利となる。また、蓋板Bは容器体A上面に剥離可能に固着させているため、その取り外しも極めて容易である。
【0017】
上記容器体Aが、周壁11の上端縁より外方へフランジ12を延設した容器体Aであり、上記蓋板Bが、フランジ12上に周縁部を剥離可能に固着して容器体A上端開口を閉塞した蓋板Bであり、上記突片13が、フランジ12の周縁部より薄肉線14を介して外方斜め下方へ突設した突片13である場合には、フランジ12の存在で蓋板Bの固着幅を広くとることができ、気密性に優れたカップとなる。また、薄肉線14を介して突片13を突設しているため、突片13の反転が容易に行えるとともに、突片13自体の肉厚が厚くても容易に行えるため、上下の安定状態での安定度がより大きい。
【0018】
突片13が、容器体周壁11或いはフランジ12外縁と同じ円弧状の内縁部13a より斜め下方へ、弯曲鍔状に突設して円弧状の外縁部13b を備えている場合には、突片13の突出幅をあまり大きくとらなくても簡単に弾性反転を行うことができ、邪魔とならない。
【0019】
上記突片13の上面に、収容物の流動を規制するガイド壁16を突設した場合には、突片13を反転して形成した注ぎ樋15の液の流出が側方にそれることがなく、注出目的部位に安定して流出させることができる。
【0020】
上記ガイド壁16が、突片13の両側縁部をそれぞれ折り曲げ起立させたガイド壁16である場合には、ガイド壁16の高さを大きくとっても弾性変形に支障をきたすことがなく、従って、液の側方への流出をより確実に防止することができる。
【0021】
上記突片13を周方向複数突設した場合には、形状の相違する突片13を一つのカップに有することができ、例えば、注出量の相違や使用者の口の大きさに合わせた突片13を備えることが可能となる。
【0022】
上記突片13が環状をなす場合には、注出の方向、飲み口の方向をどの方向からでも同様に行うことができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1乃至図4は本発明カップ1の一例を示し、カップ1は、容器体Aと、蓋板Bとを備えている。
【0025】
容器体Aは合成樹脂により形成されたもので、底壁10の周縁より周壁11を起立した上端を開口した有底筒状をなし、周壁11の上端縁より外方へフランジ12を延設している。周壁11は上方に行くに従って径の大きくなる円筒状をなしている。また、上端外周縁より突片13を一体に突設している。突片13は、フランジ12の前縁部に薄肉線14を介して外方斜め下方へ突設しており、上方への反転が可能に構成している。突片13は、フランジ12の前縁部に設けた薄肉線14の部分を内縁部13a とし、内縁部13a の両側から斜め下方へ延設するとともに、内縁部13a より小さい曲率半径の円弧状の外縁部13b とで画成され、横方向へ弯曲する弯曲板状をなしている。そして、図3及び図4に示す如く、上方への反転が可能に構成しており、上方に反転した際に、注ぎ樋15を形成する。
【0026】
蓋板Bは、合成樹脂層と金属層との積層構造をなし、フランジ12上に周縁部を剥離可能に固着して容器体A上端開口を閉塞している。蓋板Bの縁部の一部からは指掛け突片20を一体に突設している。
【0027】
上記の如く構成されたカップ1を使用する場合について説明する。図1の状態から指掛け突片20を掴んで図1の二点鎖線にある如く上方へ引き上げれば蓋板Bは容器体Aから容易に取り外すことができる。次いで、突片13を例えば下から押し上げる等すれば図3或いは図4に示す如く突片13は上方へ反転して、注ぎ樋15を形成する。そのまま容器体Aを掴んで傾ければ、収納液が注ぎ樋15を通り注出対象物に注出され、或いは注ぎ樋15の先端に口をあてて収納液を飲むことができる。
【0028】
図5は図1のカップ1にオーバーキャップCを装着した例を示す。オーバーキャップCは周壁上端縁より頂壁を延設した伏せ皿状をなし、周壁の一部を外方へ膨出させて下方反転状態の突片13を被覆する突出部30を備えている。尚、以下の例に於いても突片13の形態にあわせた突出部を備えたオーバーキャップを装着することは当然可能である。
【0029】
図6は他の例を示し、図1の例に於いて、突片13の上面に収容物の流動を規制するガイド壁16を突設した例を示す。この場合のガイド壁16は、突片13の上面両側に、突片13の両側縁に沿って一体に突設した突条形態をなしている。各ガイド壁16の基端部はフランジ12と隙間をあけており、また、先端部には液の流通が可能な流出口を開口している。その他は図1の例と同様である。
【0030】
図7は更に他の例を示し、同様に図1の例に於いて、突片13の上面に収容物の流動を規制するガイド壁16を突設した例を示す。この場合にガイド壁16は、突片13の上面両側及び、中間部に一体に突設した突条形態をなしている。各ガイド壁16の基端部はフランジ12と間隔をあけており、また、先端部にはそれぞれ隣接するガイド壁16との間に液の流通が可能な流出口を開口している。その他は図1の例と同様である。
【0031】
図8は更に他の例を示し、図1の例に於いて、突片13の先端部分をカットした形態で、両側に突条形態のガイド壁16を一体に突設した例を示す。
【0032】
図9は更に他の例を示し、図1の例に於いて、フランジ12の一部を台形状に形成し、その外周縁を内縁部13a とし、円弧状の外縁部13b を備えた突片13としている。この場合は、その構造上両側に平行する折曲線17が存在するため、突片13を反転させると両側に自動的にガイド壁16が形成される。この場合も内縁部13a 及び折曲線17を薄肉線としても良い。その他の構成は図1と同様である。
【0033】
図10は更に他の例を示し、突片13の両側に平行する一対の折曲線17を設け、また、各折曲線17の基端より外方位置の内縁部13a を、それぞれ不連続線18として構成している。そして、反転した突片13の各不連続線18部分をそれぞれ内側に折曲線17の部分で折り曲げ起立させてガイド壁16としている。この場合も内縁部13a 及び折曲線17を薄肉線としても良い。その他の構成は図1と同様である。
【0034】
図11は更に他の例を示し、容器体Aが八角形の周壁11を備え、三辺を内縁部13a とした台形状の突片13を備えた例を示す。この場合も平行する折曲線17が両側に存在して反転させた際に両側に自動的にガイド壁16が形成される。この場合も内縁部13a 及び折曲線17を薄肉線としても良い。その他は図1と同様である。
【0035】
図12は更に他の例を示し、容器体Aが四角形の周壁11を備え、一つのコーナー部分を跨いで内縁部13a を連結しており、外縁部13b は放物線状に形成されている。この場合も内縁部13a を薄肉線としても良い。その他の構成は図1と同様である。
【0036】
図13は更に他の例を示し、一対の突片13を設けた例を示す。この場合には、フランジ12の前半部に図1の突片13と類似の突片13を突設し、後半部にも類似構成の突片13を突設している。この場合には一方の突片13が反転して注ぎ樋15を形成しており、他方の突片13は反転前の状態を示す。この場合も内縁部13a を薄肉線としても良い。その他の構成は図1と同様である。
【0037】
図14は更に他の例を示し、突片13が環状形態の例を示す。この場合も内縁部13a を薄肉線としても良い。その他の構成は図1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】カップの斜視図である。(実施例1)
【図2】カップの縦断面図である。(実施例1)
【図3】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部切欠側面図である。(実施例1)
【図4】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例1)
【図5】オーバーキャップを装着したカップの縦断面図である。(実施例1)
【図6】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例2)
【図7】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例3)
【図8】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例4)
【図9】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例5)
【図10】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例6)
【図11】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例7)
【図12】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例8)
【図13】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例9)
【図14】蓋板を外した容器体の突片を反転させた状態の要部斜視図である。(実施例10)
【符号の説明】
【0039】
1…カップ
A…容器体
10…底壁,11…周壁,12…フランジ,13…突片,13a …内縁部,13b …外縁部,
14…薄肉線,15…注ぎ樋,16…ガイド壁,17…折曲線,18…不連続線
B…蓋板
20…指掛け突片
C…オーバーキャップ
30…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端を開口した有底筒状をなす容器体Aと、容器体A上面に剥離可能に固着させて容器体A上端開口を閉塞する蓋板Bとを備え、容器体Aの上端外周縁より外方斜め下方へ、斜め上方への反転により注ぎ樋15を形成する、突片13を突設していることを特徴とするカップ。
【請求項2】
上記容器体Aが、周壁11の上端縁より外方へフランジ12を延設した容器体Aであり、上記蓋板Bが、フランジ12上に周縁部を剥離可能に固着して容器体A上端開口を閉塞した蓋板Bであり、上記突片13が、フランジ12の周縁部より薄肉線14を介して外方斜め下方へ突設した突片13である請求項1記載のカップ。
【請求項3】
突片13が、容器体周壁11或いはフランジ12外縁と同じ円弧状の内縁部13a より斜め下方へ、弯曲鍔状に突設して円弧状の外縁部13b を備えている請求項1又は請求項2のいずれかに記載のカップ。
【請求項4】
上記突片13の上面に、収容物の流動を規制するガイド壁16を突設した請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のカップ。
【請求項5】
上記ガイド壁16が、突片13の両側縁部をそれぞれ折り曲げ起立させたガイド壁16である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のカップ。
【請求項6】
上記突片13を周方向複数突設してなる請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のカップ。
【請求項7】
上記突片13が環状をなす請求項1記載のカップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−52767(P2010−52767A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219688(P2008−219688)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】