説明

カテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の製造方法

【課題】抗酸化を有し、癌、炎症、虚血性臓器障害、動脈硬化などの種々の障害や疾患、皮膚または粘膜の老化に対する治療用および/または予防用組成物の活性成分として使用することができる、カテコール基含有ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の簡便で高収率な製造方法の提供。
【解決手段】メチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体(例えば、下記式IIIの化合物)を、金属ハロゲン化物と反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化剤として有用なカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体にとって酸素は必要不可欠なものであるが、酸素が生体内で還元されて活性酸素と呼ばれる一群の反応性の高い分子種になると、生体内でタンパク質、核酸、脂質などの標的分子を酸化し、障害を与えることが知られている。生物はこの酸素による障害を防ぐため、活性酸素の生成量を低く保ち、さらに生成した活性酸素を消去することによって標的分子の酸化を防いでいる。
【0003】
植物体に広く存在するカテキン、ケルセチン、エラグ酸のようなポリフェノール化合物は、分子内にカテコール基を有しているため、一般的に抗酸化活性があるとされている。しかしながら、2単位のC−C構造(フェニルプロパノイド)が酸化重合した化合物であるリグナン化合物に分類されるセサミン、セサミノール、セサモリン、ピレジノール、オイデスミン、ポドフィロトキシン等の化合物の多くは、それらの化学構造中に存在するフェノール基又はカテコール基がメチレンジオキシ基やメトキシ基として保護されており、抗酸化活性が弱い。そのため、リグナン化合物分子中の保護されたフェノール、特にカテコール基を脱保護する方法が種々検討されてきた。
【0004】
非特許文献1には、メチレンジオキシフェニル基を、臭化アルミニウム(AlBr)とエタンチオール(CHCHSH)を用いた分解反応に付すことよりカテコール基に変換できることが記載されているが、特許文献1には、メチレンジオキシフェニル基を有しかつベンジルエーテル基を有するリグナン化合物、例えばセサミンに対して上記分解反応を適用すると、ベンジル位が優先的に反応して開裂するためカテコール基を生成できないことが記載されている。この問題点を解消するための方法として、特許文献1は、超臨界水を用いることによってリグナン化合物分子中に存在するメチレンジオキシ基を選択的に加水分解する方法を開示している。また、この方法によりセサミン及びエピセサミンから得られたカテコール基を有するリグナン化合物が、原料のセサミン及びエピセサミンより高い抗酸化活性を有することも示されている。しかしながら、この方法においては、反応収率が低く、また、超臨界水を生成するための高温及び高圧に耐え得る特殊な装置が必要であった。
【0005】
また、特許文献2及び3には、メチレンジオキシフェニル基とベンジルエーテル部分とを有するリグナン化合物であるセサミン、セサミノール又はセサミノール配糖体を含む発酵原料をアスペルギルス属微生物を用いて発酵させることにより、セサミンカテコール体、セサミンジカテコール体またはセサミノールカテコール体を製造できることが記載されている。しかしながら、これら文献の実施例によると、発酵処理に長時間を要するにも関わらず、原料のリグナン化合物から対応するカテコール化合物への変換率は満足できるものではなかった。
【0006】
上記のように、これまでに開示されている、メチレンジオキシフェニル基を有するリグナン化合物のメチレンジオキシ基を選択的に除去することのできる方法は、実用的に満足できるものではなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−139579号公報
【特許文献2】特開2005−23125号公報
【特許文献3】特開2005−22999号公報
【非特許文献1】Chem. Lett., 97, 1979
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、カテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の、簡便で高収率な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、メチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体に、金属ハロゲン化物、特に三臭化ホウ素又は三塩化ホウ素を低温で作用させることにより、カテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が収率良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下のものに関する。
1.下記式(I)を有する、メチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体:
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、同一または異なってもよく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基を示し;或いは、
R1, R2, R3, R4, R5, R7, R8の内の少なくとも1対の隣接する基は、一緒になってメチレンジオキシ基を形成してもよく;
ここで、上記各基上に存在し得る置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1つのものである。]と、金属ハロゲン化物とを反応させる工程を含む、下記式(II):
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、式(I)に関して定義した通りである。]
に示すカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の製造方法。
2.下記式(I')を有する、メチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体:
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、R3, R4, R5, R6, R7, R8, R9, R10は、同一または異なってもよく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基を示し;或いは、
R3, R4, R6, R7, R8, R9, R10の内の少なくとも1対の隣接する基は、一緒になってメチレンジオキシ基を形成してもよく;
ここで、上記各基上に存在し得る置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1つのものである。]と、金属ハロゲン化物とを反応させる工程を含む、下記式(II'):
【0017】
【化4】

【0018】
[式中、R3, R4, R5, R6, R7, R8, R9, R10は、式(I')に関して定義した通りである。]
に示すカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の製造方法。
3.金属ハロゲン化物が、三臭化ホウ素(BBr)、三塩化ホウ素(BCl)、三塩化アルミニウム(AlCl)、四塩化チタン(TiCl)、四塩化ゲルマニウム(GeCl)、三塩化インジウム(InCl)、三塩化ガリウム(GaCl)、三塩化スカンジウム(ScCl)、四塩化ジルコニウム(ZrCl)、四塩化テルル(TeCl)、三臭化ガリウム(GaBr)、四臭化ゲルマニウム(GeBr)からなる群から選択される1以上のものである、1又は2に記載の製造方法。
4.金属ハロゲン化物が三臭化ホウ素(BBr)又は三塩化ホウ素(BCl)である、3に記載の製造方法。
5.前記カテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体(II)又は(II')が、下記式(III)に示す化合物:
【0019】
【化5】

【0020】
及び/又は下記式(IV)に示す化合物:
【0021】
【化6】

【0022】
である、1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6.金属ハロゲン化物の量が、原料となるメチレンジオキシフェニル基を有する式(I)又は式(I')のジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の1.0〜10.0当量である、1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7.メチレンジオキシフェニル基を有する式(I)又は式(I')のジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体と、金属ハロゲン化物との反応が、有機溶媒中で行われるものである、1〜6のいずれかに記載の製造方法。
8.反応の温度が−100〜0℃である、1〜7のいずれかに記載の製造方法。
9.メチレンジオキシフェニル基を有する式(I)又は式(I')のジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が、ゴマ由来のリグナン化合物である、1〜8のいずれかに記載の製造方法。
10.ゴマ由来のリグナン化合物がセサミンである、9に記載の製造方法。
11.下記式(V):
【0023】
【化7】

【0024】
の化合物[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、式(I)に関して定義したとおりである。]又は
当該式(V)の化合物及び下記式(VI):
【0025】
【化8】

【0026】
の化合物[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、式(I)に関して定義したとおりである。]の混合物と、ハロゲン化金属とを反応させて、下記式(VII):
【0027】
【化9】

【0028】
の化合物[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、式(I)に関して定義したとおりである。]を生成させることを特徴とする、1〜9のいずれかに記載の製造方法。
12.式(V)の化合物がエピセサミンであり、式(VI)の化合物がセサミンであり、式(VII)の化合物が、下記式(IX):
【0029】
【化10】

【0030】
のジカテコールセサミンである、11に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明に利用される反応は、複数の反応を経由しない1工程のみの反応である。したがって、本発明の方法を用いることにより、簡便にかつ大量にカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体を得ることができる。
【0032】
本発明の製造方法においては、その出発物質として用いるメチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体は、例えば天然物から入手可能なゴマ由来のリグナン化合物から、容易に入手できるものである。したがって、本発明の製造方法は、安価かつ大量にカテコール基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体を製造するために非常に適した方法であり、例えば、高い抗酸化活性を有するセサミンのカテコール体を高い収率で簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の製造方法(以下、本発明の方法とも表記する)は、メチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体に、金属ハロゲン化合物を、好ましくは有機溶媒中で好ましくは低温で作用させることを特徴とする。
【0034】
本発明の製造方法において原料として用いられる下記式(I)及び(I')のメチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体:
【0035】
【化11】

【0036】
[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8, R9, R10は、上記で定義したとおりである。]
並びに製造される下記式(II)及び(II')を有するカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体:
【0037】
【化12】

【0038】
[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8, R9, R10は、上記で定義したとおりである。]
には、ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン上の置換基が結合する2つの炭素原子及び2つの橋頭位炭素における立体配置に起因する立体異性体が存在するが、本発明における式(I)、(I')、(II)及び(II')の化合物には、そのような立体異性体を含む全ての可能な立体異性体が含まれる。
【0039】
尚、式(I)、(I')、(II)及び(II')における「−(O)−」は、ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン環とフェニル基の間の結合が単結合であってもエーテル結合であってもよいことを示す。
【0040】
本発明の方法においては、出発物質である式(I)又は(I')の化合物として、既知の化合物を使用することができる。そのような化合物の例としては、天然物由来あるいは化学的に合成されたリグナン化合物が挙げられ、具体的には、セサミン、セサミノール等のゴマ由来のリグナン化合物が例示できる。中でも、本発明においては、セサミン、エピセサミンを好適に使用することができる。なお、本発明ではリグナン化合物の異性体も原料として使用することができる。
【0041】
例えば、本発明の方法において、セサミン及びエピセサミンを包含する式(VIII):
【0042】
【化13】

【0043】
の化合物を金属ハロゲン化物と反応させることにより、
高い抗酸化活性を有することが知られているセサミンのモノカテコール体を包含する下記式(III)
【0044】
【化14】

【0045】
で表されるモノカテコール体及び/又は、高い抗酸化活性を有することが知られているセサミンのジカテコール体を包含する下記式(IV)
【0046】
【化15】

【0047】
で表されるジカテコール体を得ることができる。
本明細書において「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0048】
本明細書において、「アルキル基」とは、好ましくは炭素原子1〜6個を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、及びn−ヘキシル基等が含まれる。
【0049】
本明細書において、「アルコキシ基」とは、好ましくは炭素原子1〜6個を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシ基を意味し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などの既に定義したアルキル基をアルキル部分として有するものが含まれる。
【0050】
同様に、本明細書における「アルキルチオ基」、「アルキルスルホニル基」、「アルキルアミノ基」は、既に定義したアルキル基をアルキル部分として有する。
本明細書における「アシル基」とは、例えばアルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基であり、それには既に定義したアルキル基をアルキル部分として有するC1−6アルキルカルボニル基およびベンゾイル基が含まれる。
【0051】
本明細書における「アシルオキシ基」は、既に定義したアシル基をアシル部分として有する。
本明細書における「アルコキシカルボニル基」は、既に定義したアルコキシ基をアルコキシ部分として有する。
【0052】
本明細書における「アルケニル基」とは、炭素原子2〜6個を有し、1個以上の2重結合を有する直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を意味し、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等が挙げられる。
【0053】
本明細書における「アルキニル基」とは、好ましくは炭素原子2〜6個を有する直鎖又は分岐鎖のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等が挙げられる。
【0054】
本明細書における「アリール基」とは、炭素原子数6〜18個の単環〜4環式の芳香族炭素環式基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。
【0055】
本明細書における「ヘテロアリール基」とは、1つ以上のヘテロ原子を環中に有する5若しくは6員の芳香環を含有する基を意味し、他の環と縮合していてもよい。ヘテロ原子には、窒素、酸素、硫黄が含まれる。ヘテロアリール基としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、オキサゾリル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ベンズイミダゾリルなどが挙げられる。
【0056】
本明細書における「アリールオキシ基」、「アリールアミノ基」、「アリールビニル基」、及び「アリールエチニル基」は、アリール部分として既に定義したアリール基を有する。
【0057】
本明細書における「ヘテロアリールオキシ基」は、ヘテロアリール部分として既に定義したヘテロアリール基を有する。
基R1〜R7は、追加の反応工程において公知の方法により修飾を施して他の基R1〜R7に変換することができる。例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基は、公知の方法によりそれぞれアルコキシ基、アミノアルキル基及びアルキルチオ基に変換することができる。
【0058】
また、本反応においては、反応性の基を保護基で適切に保護してもよい。このための方法は、公知のいずれかのものを用いればよい。
本発明の方法において、出発物質として用いることができるセサミン等のリグナン化合物は、例えば、特開平3−27319号公報に記載されている方法によりゴマ油等の原料から抽出することができる。あるいは、リグナン化合物を含む原料、例えば、ゴマ種子、ゴマ粕、ゴマ油、又はゴマの脱臭スカムを原料として用いることもできる。
【0059】
反応に用いる金属ハロゲン化物としては、三臭化ホウ素(BBr)、三塩化ホウ素(BCl)、三塩化アルミニウム(AlCl)、四塩化チタン(TiCl)、四塩化ゲルマニウム(GeCl)、三塩化インジウム(InCl)、三塩化ガリウム(GaCl)、三塩化スカンジウム(ScCl)、四塩化ジルコニウム(ZrCl)、四塩化テルル(TeCl)、三臭化ガリウム(GaBr)、四臭化ゲルマニウム(GeBr)等が挙げられるが、中でも、BBrまたはBClを用いることが好ましい。出発物質である式(I)及び/又は式(I')の化合物に金属ハロゲン化物を用いると、ベンジル位を保護、すなわちベンジル位の開裂を抑制しつつ、メチレンジオキシ基を開裂してカテコール基を導入することができる。金属ハロゲン化物の添加量としては、出発物質の化合物に対して、通常、1.0〜10.0モル当量、好ましくは4.0〜8.0モル当量である。
【0060】
本発明においては、式(I)及び/又は(I')の化合物と金属ハロゲン化物とを反応させることが重要であり、この反応は、触媒や反応促進剤等の追加的な他の反応物を用いることなく進行させることができる。場合により追加的な反応物を用いてもよいが、本発明の反応に悪影響を及ぼし得る物質、例えば、特許文献1に記載されているエタンチオールのようなチオール類を用いることは好ましくない(ベンジルエーテルの開裂を生じる可能性が高い)。
【0061】
溶媒は、反応において不活性である限り適宜用いてよい。反応に用いる有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;等が挙げられるが、中でもジクロロメタンが好ましい。有機溶媒の量としては、出発物質の化合物1重量部に対して、通常、10〜100重量部の溶媒を用いる。
【0062】
本発明の方法において、好ましくは予め出発物質(メチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体)を有機溶媒に溶解して低温に維持し、次いで金属ハロゲン化物を添加する。金属ハロゲン化物の添加は、好ましくは有機溶媒に溶解した反応液として添加することが好ましい。その反応液の濃度は、0.1〜0.5mol/Lが好ましく、0.1〜0.3mol/Lがより好ましい。この濃度は、有機溶媒としてジクロロメタンを、金属ハロゲン化物としてBBrを用いた場合に特に有効である。
【0063】
本発明の方法は、出発物質に金属ハロゲン化物を低温で短時間作用させることを特徴とする。上記したとおり、好ましくは予め低温に維持された原料液(出発物質に有機溶媒を添加したもの)に、反応液(金属ハロゲン化物に有機溶媒を添加したもの)を添加する。本発明でいう低温とは、−100〜0℃、好ましくは−78〜−20℃程度である。
【0064】
本発明の方法においては、反応を上記範囲の低温に維持することが好ましい。本発明反応の生成物は、一般に酸や塩基に不安定であることから、本反応は0℃以下で行うことが望ましい。また、反応溶媒として用いられることの多いジクロロメタンの融点は−97℃であるため、それ以上の温度で反応させることが望ましい。また、−100℃以下の極低温においてはカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の収量の低下が認められる。本発明の方法において、反応温度を維持するために、また、反応を均一に行わせるために、原料液を低温に維持する際や、反応を行う際には、攪拌を行うことが好ましい。
【0065】
上記の反応の時間は、金属ハロゲン化物の種類や濃度、反応温度等により異なるが、通常、0.5〜10分、好ましくは1〜5分程度である。本発明の方法は、このように極めて短時間で終了することを特徴とする。なお、反応の終点は、TLC等の方法にて原料及び/又は生成物の量を確認しながら行い、出発物質であるメチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が完全に又はほぼ完全に消費された時点を反応の終点とすればよい。反応の停止は、反応溶液にアルコール類や含水有機溶媒を添加すること等の公知の後処理により可能である。
【0066】
反応終了後は、有機溶媒を減圧下除去した後にHPLCにより精製するなどの公知の方法により、目的とするカテコール基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体を得る。
【0067】
本発明の方法によると、出発物質であるジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体のメチレンジオキシフェニル基が2以上存在する場合には、反応の程度を制御することで得られる化合物の性状を制御することも可能である。具体的には、金属ハロゲン化物の量の調節等により制御できる。例えば、セサミンを包含する式(VIII)のジオキサビシクロ[3.0.0]オクタン誘導体を原料として用いた場合、通常、上記の式(III)で表されるモノカテコール体と式(IV)で表されるジカテコール体が得られるが、それらの生成比は用いる金属ハロゲン化物の量によって変動することが本発明者らにより確認されている。例えば、出発原料としてセサミンを用い、金属ハロゲン化物としてBBrを、有機溶媒としてジクロロメタンを用いた場合には、BBrの量をより多くすると、セサミンジカテコール体(ジカテコールセサミン)が選択的に得られた。具体的には、セサミンの3.5〜8.0当量のBBrを用いた場合、ほぼ選択的にジカテコールセサミンを得ることができ、BBrが少ない場合、具体的にはセサミンの2.0〜3.0当量のBBrを用いた場合、生成物の20〜30重量%に相当するセサミンモノカテコール体(モノカテコールセサミン)が得られた。
【0068】
また、本発明の方法では、セサミンを出発物質として用いる場合だけでなく、セサミンの異性体であるエピセサミンを用いる場合、及びセサミンとエピセサミンとの混合物を用いる場合にも、ジカテコールセサミンが主生成物として、ジカテコールエピセサミンが副生成物として得られた。したがって、本発明の方法は、ジカテコールセサミンを含む式(VII)の化合物の製造に、特に好適に用いることができる。
【0069】
(カテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の用途)
本発明の方法で得られるカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体は、活性酸素の影響により体内で生じる発癌、炎症、虚血性臓器障害、動脈硬化などの種々の障害や疾患、老化に対する治療用および/または予防用組成物の活性成分として使用することができる。抗酸化組成物の投与経路は、経口投与が最も好ましいが、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与などであってもよい。経口投与に適した製剤には、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、溶液剤、シロップ剤などが含まれるが、これらに限定されない。治療用および/または予防用組成物には、薬剤的に許容できる担体として、当該技術分野で公知の適切な賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着香料、着色剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などが含まれてもよい。
【0070】
上記組成物は、皮膚または粘膜の老化、発癌または炎症、もしくは皮膚の日焼けなどの皮膚または粘膜に関する種々の症状を治療しまたは改善するための経皮投与用外用医薬品または化粧品として使用することもできる。外用医薬品または化粧品として適した剤形には溶液剤、パップ剤、貼布剤などが含まれる。外用医薬品は、薬剤的に許容できる担体として、賦形剤、着香料、着色剤、溶解補助剤、懸濁剤などを含んでもよい。
【0071】
上記組成物は、食品の形態で提供することもできる。好ましい食品の形態としては粉末、顆粒、ペースト、ゼリーなどが挙げられる。特に、顆粒等にする場合は、甘味を加えるために乳糖などの糖類を加えることもできる。また、上記組成物は、飲料の形態で提供することもできる。このような食品または飲料には、カテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の他に、ビタミン剤、カルシウムなどの無機成分、アルコール類などを追加してもよい。この食品または飲料には、特定保健用食品、病者用食品等も含まれる。
【実施例】
【0072】
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。本発明の方法を種々変更、修飾して使用することが当業者には可能であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
【0073】
実施例1
カテコール体の合成
【0074】
【化16】

【0075】
ナス形フラスコに、ジクロロメタン0.5mLを入れ、セサミン8.8mg(0.025mmol)を攪拌しながら溶解させた。このフラスコを−78℃の冷媒に浸して冷却した後、BBr/ジクロロメタン溶液(1mol/L)を添加し、−78℃で2分間攪拌した。この反応を、当該BBr/ジクロロメタン溶液の量を変えて(0.025〜0.2mL(1.0〜8.0モル当量))9回行った。また、原料としてエピセサミン、又はセサミンとエピセサミンとの混合物を用いて同様の反応を行なった。
【0076】
その後、各反応のフラスコに2−プロパノール0.5mLを加え、HPLC分析用溶液を調製した。−78℃に保ったHPLC分析用溶液の一定量を80%アセトニトリル水溶液(1%のギ酸を含む)1mLで希釈し、当該溶液の各々について下記の条件でHPLCによりSC−2(ジカテコールセサミン:保持時間 21.5分)、一緒に得られたSC−1(モノカテコールセサミン:保持時間 37.3分)及びEC−2(ジカテコールエピセサミン:保持時間 24.7分)の生成量、並びに未反応のセサミン(保持時間 41.7分)の量を分析した。これら各成分のHPLC保持時間はそれぞれ対応する標品の保持時間と一致していた。尚、それら標品は、公知の方法、例えば特許文献1に記載の方法により入手することができる。本実施例において標品として用いられたSC−1、SC−2及びEC−2は、本発明の方法により別途合成され、NMRと質量分析により同定されたものである。
【0077】
HPLC条件:
カラム: DAISOPAK SP-120-5-ODS-AP(φ4.6×150mm、ダイセル化学工業株式会社)
流速: 1.0mL/分
グラジェント: B液0〜80%(0〜30分)
溶媒A:H2O (0.1% トリフルオロ酢酸含有)
溶媒B:CH3CN-H2O(9:1)液(0.1% トリフルオロ酢酸含有)
検出波長: 280nm
測定時間: 60分
上記HPLC分析結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
各生成物についての精密質量分析の結果は以下のとおりである。これらの値は、それぞれの標準品の値とほぼ一致した。
SC−1:ESI−IT−TOF−MS m/z341.1028[M−H]-
(C1917の理論値:341.1025)
SC−2:ESI−IT−TOF−MS m/z329.1034[M−H]-
(C1817の理論値:329.1025)
EC−2:ESI−IT−TOF−MS m/z329.1028[M−H]-
(C1817の理論値:329.1025)
【0080】
本発明の方法により、モノカテコールセサミン及びジカテコールセサミンが得られることが確認された。
【0081】
また、モノカテコールセサミンを生成するためには、出発物質(セサミン)の2.0〜3.0モル当量のBBrを用いることが好ましいことが明らかとなった。なお、BBrが3モル当量以下の場合には未反応の出発物質(セサミン)が多く残存することから、モノカテコールセサミンを効率的に得るためには、BBrを2.5〜3.0モル当量使用することが好ましいことが明らかとなった。
【0082】
また、ジカテコールセサミンを生成させる場合には、出発物質(セサミン)の2.0当量以上のBBrを用いるのが好ましく、特に、3.5〜8.0当量、好ましくは4.0〜5.0モル当量のBBrを用いると、モノカテコール体を含む副生成物の量を低減できることが明らかとなった。なお、BBrを大量(8モル当量以上)に使用した場合、収率が低下する傾向がみられた。
【0083】
さらに、出発物質としてセサミンを用いる場合だけでなく、セサミンの異性体であるエピセサミンや、セサミンとエピセサミンの混合物を用いた場合にも、ジカテコールセサミンが主生成物として得られ、いずれの場合にも微量のジカテコールエピセサミンが生成することがわかった。
【0084】
したがって、本発明の方法は、ジカテコール体、特にジカテコールセサミンを包含する式(VII)の化合物の製造に好適に使用できるといえる。
【0085】
実施例2
ジカテコール体の合成及び単離
ナス形フラスコに、ジクロロメタン0.5mLを入れセサミン8.8mg(0.025mmol)を攪拌しながら溶解させた。このフラスコを−78℃の冷媒に浸して冷却した後、BBr/ジクロロメタン溶液(1mol/L)0.1mL(4.0モル当量)を添加し、−78℃で3分間攪拌した。その後、このフラスコ中の液に2−プロパノール0.2mLを加え、−78℃で2分間攪拌した。溶液中の大部分のジクロロメタンを除去するために、この−78℃に冷やされた当該溶液を真空ポンプに装着し、徐々に0℃まで温度を上げながらジクロロメタンを除去した。そして、残渣を50%アセトニトリル水溶液(1%のギ酸を含む)0.5mLに溶解し、この溶液をHPLCに付し、ジカテコールセサミン(3.0mg,36.4%)を得た。このように、ジカテコールセサミンを単離精製した場合にも、実施例1に示されたHPLC分析結果(%)と同様の収率が達成された。
【0086】
分取HPLC条件:
カラム:DAISOPAK SP-120-5-ODS-AP(φ20.0×250mm、ダイセル化学工業株式会社)
流速:9.999ml/分
グラジェント:0〜80%B/50分
溶媒A:H2O (0.1% トリフルオロ酢酸含有)
溶媒B: CH3CN-H2O(9:1)液 (0.1% トリフルオロ酢酸含有)
検出波長:280nm
分取フラクション:18.0〜19.8分
【0087】
なお、生成したジカテコールセサミンについて実施例1に示した条件でHPLC分析及び精密質量分析を行った結果、HPLC保持時間(21.4分)及び精密質量数(m/z:329.1025)がその標品と一致することも確認した。
【0088】
実施例3
BClによるカテコール体の合成
ナス形フラスコに、ジクロロメタン0.5mLを入れ、セサミン8.8mg(0.025mmol)を攪拌しながら溶解させた。このフラスコを−78℃の冷媒に浸して冷却した後、BCl/ジクロロメタン溶液(1mol/L)を0.1mL(4.0当量)添加し、−78℃で2分間攪拌した。その後、フラスコに2−プロパノール0.5mLを加え、HPLC分析用溶液を調製した。−78℃に保ったHPLC分析用溶液の一定量を80%アセトニトリル水溶液(1%のギ酸を含む)1mLで希釈し、実施例1で示した条件でHPLC分析を行い、SC−2(ジカテコールセサミン:保持時間 21.5分)が19.4%の収率で生成していることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)を有する、メチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体:
【化1】

[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、同一または異なってもよく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基を示し;或いは、
R1, R2, R3, R4, R5, R7, R8の内の少なくとも1対の隣接する基は、一緒になってメチレンジオキシ基を形成してもよく;
ここで、上記各基上に存在し得る置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1つのものである。]と、金属ハロゲン化物とを反応させる工程を含む、下記式(II):
【化2】

[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、式(I)に関して定義した通りである。]
に示すカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の製造方法。
【請求項2】
下記式(I')を有する、メチレンジオキシフェニル基を有するジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体:
【化3】

[式中、R3, R4, R5, R6, R7, R8, R9, R10は、同一または異なってもよく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基を示し;或いは、
R3, R4, R6, R7, R8, R9, R10の内の少なくとも1対の隣接する基は、一緒になってメチレンジオキシ基を形成してもよく;
ここで、上記各基上に存在し得る置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1つのものである。]と、金属ハロゲン化物とを反応させる工程を含む、下記式(II'):
【化4】

[式中、R3, R4, R5, R6, R7, R8, R9, R10は、式(I')に関して定義した通りである。]
に示すカテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の製造方法。
【請求項3】
金属ハロゲン化物が、三臭化ホウ素(BBr)、三塩化ホウ素(BCl)、三塩化アルミニウム(AlCl)、四塩化チタン(TiCl)、四塩化ゲルマニウム(GeCl)、三塩化インジウム(InCl)、三塩化ガリウム(GaCl)、三塩化スカンジウム(ScCl)、四塩化ジルコニウム(ZrCl)、四塩化テルル(TeCl)、三臭化ガリウム(GaBr)、四臭化ゲルマニウム(GeBr)からなる群から選択される1以上のものである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
金属ハロゲン化物が三臭化ホウ素(BBr)または三塩化ホウ素(BCl)である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記カテコール基が導入されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体(II)又は(II')が、下記式(III)に示す化合物:
【化5】

及び/又は下記式(IV)に示す化合物:
【化6】

である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
金属ハロゲン化物の量が、原料となるメチレンジオキシフェニル基を有する式(I)又は式(I')のジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体の1.0〜10.0当量である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
メチレンジオキシフェニル基を有する式(I)又は式(I')のジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体と、金属ハロゲン化物との反応が、有機溶媒中で行われるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
反応の温度が−100〜0℃である、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
メチレンジオキシフェニル基を有する式(I)又は式(I')のジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が、ゴマ由来のリグナン化合物である、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
ゴマ由来のリグナン化合物がセサミンである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
下記式(V):
【化7】

の化合物[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、式(I)に関して定義したとおりである。]又は
当該式(V)の化合物及び下記式(VI):
【化8】

の化合物[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、式(I)に関して定義したとおりである。]の混合物と、ハロゲン化金属とを反応させて、下記式(VII):
【化9】

の化合物[式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8は、式(I)に関して定義したとおりである。]を生成させることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−143884(P2009−143884A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325884(P2007−325884)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000001904)サントリー酒類株式会社 (319)
【Fターム(参考)】