説明

カテプシンシステインプロテアーゼインヒビター

本発明は、カテプシンK、L、SおよびBのインヒビター(これらに限定されるものではない。)を含むシステインプロテインインヒビターである、明細書中に示されている新規クラスの化合物(式中、R、R、R、R、R、R、R、Dおよびnは明細書中に定義されている。)に関する。これらの化合物は、骨吸収の抑制が適応となる疾患、例えば骨粗鬆症の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテプシンシステインプロテアーゼインヒビターに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび他の哺乳動物における種々の障害は、異常な骨吸収を伴うか又はそれに関連している。そのような障害には、骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、ページェット病、異常に増加した骨ターンオーバー、歯周病、歯喪失、骨折、慢性関節リウマチ、骨関節症、補装具周囲(periprosthetic)の骨溶解、骨形成不全、悪性疾患の高カルシウム血症および多発性骨髄腫が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの障害のうちの最も一般的なものの1つは骨粗鬆症であり、その最も頻繁な発現は閉経後の女性にみられる。骨粗鬆症は、骨脆弱性および易骨折性の増加を招く低い骨量および骨組織の微細構造劣化により特徴づけられる全身性骨格疾患である。骨粗鬆症による骨折は高齢者集団における罹患および死亡の主要原因である。50%もの女性および3分の1の男性が骨粗鬆症による骨折を経験することになる。高齢者集団の大部分は、低い骨密度および骨折に関する高いリスクを既に有する。骨粗鬆症および骨吸収に関連した他の状態の予防および治療の両方が大いに必要とされている。骨粗鬆症および骨量減少を伴う他の障害は一般に慢性状態であるため、適切な治療は典型的には長期にわたる治療を要すると考えられる。
【0003】
カテプシンはシステインプロテアーゼのパパインスーパーファミリーに属する。これらのプロテアーゼは、結合組織の正常な生理的および病理学的分解において機能する。カテプシンは細胞内タンパク質の分解およびターンオーバーおよびリモデリングにおいて主要な役割を果たしている。現在までに、多数の起源から多数のカテプシンが特定され配列決定されている。これらのカテプシンは多種多様な組織において天然で見出される。例えば、カテプシンB、C、F、H、L、K、O、S、V、WおよびZがクローニングされている。カテプシンLは正常なリソソームタンパク質分解、および黒色腫の転移を含む(これに限定されるものではない。)いくつかの病態に関与している。カテプシンSはアルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患および或る自己免疫障害、例えば若年型糖尿病、多発性硬化症、尋常性天疱瘡、グレイヴス病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび橋本甲状腺炎(これらに限定されるものではない。);アレルギー性障害、例えば喘息(これに限定されるものではない。);ならびに同種免疫応答、例えば臓器移植または組織移植片の拒絶(これらに限定されるものではない。)に関与している。カテプシンBレベルの増加および該酵素の再分布が腫瘍において見出され、このことは腫瘍浸潤および転移における役割を示唆している。また、異常なカテプシンB活性は、慢性関節リウマチ、骨関節症、ニューモシスティス・カリニ、急性膵炎、炎症性気道疾患ならびに骨および関節障害のような病態に関与している。
【0004】
哺乳類カテプシンは、病原性寄生生物(原生動物、扁形動物、線虫および節足動物のファミリーのものを含む。)により発現されるパパイン様システインプロテアーゼに関連している。これらのシステインプロテアーゼは、これらの生物の生活環において必須の役割を果たしている。
【0005】
骨における主要コラーゲンであるヒトI型コラーゲンはカテプシンKの良好な基質である。Kafienah,W.ら,1998,Biochem J 331:727−732(この全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。カテプシンKに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用したインビトロ実験は、おそらくカテプシンK mRNAの翻訳の低下による、インビトロにおける骨吸収の減少を示している。Inui,T.ら,1997,J Biol Chem 272:8109−8112(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。カテプシンKの結晶構造は既に決定されている。McGrath,M.E.ら,1997,Nat Struct Biol :105−109;Zhao,B.ら,1997,Nat Struct Biol :109−11(これらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。選択的なペプチドに基づくカテプシンKインヒビターも開発されている。Bromme,D.ら,1996,Biochem J 315:85−89;Thompson,S.K.ら,1997,Proc Natl Acad Sci USA 94:14249−14254(これらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。したがって、カテプシンKのインヒビターは骨吸収を減少させうる。そのようなインヒビターは、骨吸収が関わる障害、例えば骨粗鬆症の治療に有用であろう。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、カテプシン依存性状態または病態の治療または予防を要する哺乳動物においてカテプシン依存性状態または病態の治療および予防しうる化合物に関する。本発明の1つの実施形態は式Iの化合物ならびにその医薬上許容される塩、立体異性体およびN−オキシド誘導体により例示される。
【0007】
【化2】

【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の化学式:
【0009】
【化3】

(式中、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、所望によりC1−3アルキルで置換されていてもよいC3−4シクロアルキルを形成し;
は、1〜4個のフルオロまたは1〜4個のクロロで置換されたC1−6アルキルであり;
は、1〜5個のハロで置換されたC1−6アルキルであり;
は水素でありまたは所望により1〜5個のハロで置換されていてもよいC1−6アルキルであり;
各Dは、独立して、アリールまたはヘテロアリールであり;
は水素でありまたは所望により1〜2個のヒドロキシルまたは2〜6個のハロで置換されていてもよいC1−6アルキルであり;
は、所望により2〜5個のハロで置換されていてもよいC1−6アルキルであり;
nは2である。)の化合物またはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体に関する。
【0010】
本発明の1つの実施形態においては、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、シクロプロピルを形成している。
【0011】
本発明の1つの実施形態においては、Dはフェニルである。
【0012】
本発明の1つの実施形態においては、RはCFである。
【0013】
本発明の1つの実施形態においては、Rは水素である。
【0014】
本発明の1つの実施形態においては、Rは、2個または3個のフルオロで置換されたC1−3アルキルである。
【0015】
前記の好ましい実施形態に対する言及は、特に示さない限り、特定の好ましい基の全ての組合せを包含する意である。
【0016】
本発明の具体的な実施形態は以下のものを含むが、これらに限定されるものではない。:
−(l−シアノシクロプロピル)−N−(l−{4’−[2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−(2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[3,3,3−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−(2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[2,2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−(トリフルオロメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)プロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−N−(l−{4’−[2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−N−(1−{4’−[2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−[l−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−l−{4’−[(1R)−2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−l−{4’−[(lS)−2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[(lS)−3,3,3−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[(lR)−3,3,3−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(R)−(2,2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[2,2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−(トリフルオロメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[l−ヒドロキシ−l−(トリフルオロメチル)プロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−l−{4’−[(lR)−2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−N−((lS)−l−{4’−[(1S)−2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−N−((lS)−l−{4’−[(lS)−2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシ−l−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(l−シアノシクロプロピル)−N−((lS)−l−{4’−[(lR)−2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシ−l−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
ならびにそれらの医薬上許容される塩、立体異性体およびN−オキシド誘導体。
【0017】
前記の式Iの化合物と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物も本発明の範囲内に含まれる。本発明は、本出願において具体的に開示されているいずれかの化合物と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物も含むと意図される。
【0018】
本発明のもう1つの実施形態は、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に2回または1ヶ月に1回の投与間隔を有する連続的スケジュールに従い骨吸収を抑制するよう適合化される、式Iの化合物またはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体を含む経口医薬組成物に関する。
【0019】
本発明のこれらの及び他の態様は、本明細書に含まれる教示から明らかであろう。
【0020】
有用性
本発明の化合物はカテプシンのインヒビターであり、したがって、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるカテプシン依存性疾患または状態を治療または予防するのに有用である。特に、本発明の化合物はカテプシンKのインヒビターであり、したがって、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるカテプシンK依存性疾患または状態を治療または予防するのに有用である。
【0021】
本発明の化合物は、当技術分野で公知の構造的に類似した化合物と比べて顕著に改良された薬物動態学的プロファイルを有するという利点を有する。特に、本発明の化合物は、雄Sprague Dawleyラットにおける10ミリグラム/kgの用量(0.5〜1% メトセル(methocel)中)において例示されるとおり(これに限定されるものではない。)、優れたバイオアベイラビリティを有する。また、本発明の化合物は、当技術分野で公知の構造的に類似した化合物より大きな薬物全身曝露をもたらす。
【0022】
「カテプシン依存性疾患または状態」は、1以上のカテプシンの活性に依存する病的状態を意味する。「カテプシンK依存性疾患または状態」は、カテプシンKの活性に依存する病的状態を意味する。カテプシンK活性に関連した疾患には、骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、ページェット病、異常な疾患、歯喪失、骨折、慢性関節リウマチ、骨関節症、補装具周囲(periprosthetic)の骨溶解、骨形成不全、アテローム性動脈硬化症、肥満、緑内障、慢性閉塞性肺疾患および癌(転移性骨疾患、悪性疾患の高カルシウム血症および多発性骨髄腫を含む。)が含まれる。本発明で特許請求されている化合物でそのような状態を治療する場合、必要な治療量は具体的な疾患によって様々となり、当業者により容易に確認されうる。治療および予防の両方が本発明の範囲に含まれるが、これらの状態の治療が好ましい用途である。
【0023】
本発明の実施形態は、カテプシン活性の抑制を要する哺乳動物におけるカテプシン活性の抑制方法であり、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。
【0024】
該実施形態の1つのクラスは、カテプシン活性がカテプシンK活性である方法である。
【0025】
本発明のもう1つの実施形態は、カテプシン依存性状態の治療または予防を要する哺乳動物におけるカテプシン依存性状態の治療または予防方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。
【0026】
該実施形態の1つのクラスは、カテプシン活性がカテプシンK活性である方法である。
【0027】
本発明のもう1つの実施形態は、骨喪失の抑制を要する哺乳動物における骨喪失の抑制方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。本発明のもう1つの実施形態は、骨喪失の軽減を要する哺乳動物における骨喪失の軽減方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。本発明のもう1つの実施形態は、異常に増加した骨ターンオーバーおよび骨折の治療を要する哺乳動物における、異常に増加した骨ターンオーバーおよび骨折の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。骨吸収の抑制におけるカテプシンKインヒビターの有用性は文献において公知である。Stroup,G.B.,Lark,M.W.,Veber,DF.,Bhattacharrya,A.,Blake,S.,Dare,L.C.,Erhard,K.F.,Hoffman,S.J.,James,I.E.,Marquis,R.w.,Ru,Y.,Vasko−Moser,J.A.,Smith,B.R.,Tomaszek,T.およびGowen,M. Potent and selective inhibition of human cathepsin K leads to inhibition of bone resorption in vivo in a nonhuman primate.J.Bone Miner.Res.,16:1739−1746;2001;ならびにVotta,B.J.,Levy,M.A.,Badger,A.,Dodds,R.A.,James,I.E.,Thompson,S.,Bossard,M.J.,Carr,T.,Connor,J.R.,Tomaszek,T.A.,Szewczuk,L.,Drake,F.H.,Veber,D.およびGowen,M.Peptide aldehyde inhibitors of cathepsin K inhibit bone resorption both in vivo and in vitro.J.Bone Miner.Res.12:1396−1406;1997を参照されたい。
【0028】
本発明のもう1つの実施形態は、骨粗鬆症の治療または予防を要する哺乳動物における骨粗鬆症の治療または予防方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。骨粗鬆症(グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症)の治療または予防におけるカテプシンKインヒビターの有用性は文献において公知である。Saftig,P.,Hunziker,E.,Wehmeyer,O.,Jones,S.,Boyde,A.,Rommerskirch,W.,Moritz,J.D.,Schu,P.およびVonfigura,K.Impaired osteoclast bone resorption leads to osteopetrosis in cathepsin K−deficient mice.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13453−13458;1998を参照されたい。
【0029】
本発明のもう1つの実施形態は、歯周病または歯喪失の治療または予防を要する哺乳動物における歯周病または歯喪失の治療または予防方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。歯周病または歯喪失の治療または予防におけるカテプシンKインヒビターの有用性は文献に記載されている。Sasaki,T.,“Differentiation and functions of osteoclasts and osontoclasts in mineralized tissue resorption,”Microsc Res Tech.2003 Aug 15;61(6):483−95を参照されたい。
【0030】
本発明のもう1つの実施形態は、慢性関節リウマチまたはリウマチ関節炎状態の治療または予防を要する哺乳動物における慢性関節リウマチまたはリウマチ関節炎状態の治療または予防方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。関節周囲の骨の進行性破壊は慢性関節リウマチ(RA)患者における関節の機能不全および不能状態の主要原因である。Goldring SR,“Pathogenesis of bone erosions in rheumatoid arthritis”.Curr.Opin.Rheumatol.2002;14:406−10を参照されたい。RA患者の関節組織の分析は、カテプシンK陽性破骨細胞が、リウマチ性滑液病変に関連した病巣骨吸収を媒介する細胞型であるという証拠を示している。Hou,W−S,Li,W,Keyszer,G,Weber,E,Levy,R,Klein,MJ,Gravallese,EM,Goldring,SR,Bromme,D,”Comparison of Cathepsin K and S expression within the Rheumatoid and Osteoarthritic Synovium”,Arthritis Rheumatism 2002;46:663−74を参照されたい。また、全身性骨喪失は、重篤なRAに関連した罹患状態の主要原因である。慢性RA患者においては臀部および脊椎骨折の頻度が実質的に増加する。Gould A,Sambrook,P,Devlin Jら,“Osteoclastic activation is the principal mechanism leading to secondary osteoporosis in rheumatoid arthritis”.J.Rheumatol.1998;25:1282−9を参照されたい。関節下(subarticular)骨における吸収の及び全身性骨喪失の治療または予防におけるカテプシンKインヒビターの有用性は、慢性関節リウマチの進行に対する薬理学的介入のための論理的アプローチを表すものである。
【0031】
本発明のもう1つの実施形態は、骨関節症の進行の治療または予防を要する哺乳動物における骨関節症の進行の治療または予防方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。骨関節症(OA)が、関節軟骨表面の侵食、関節周囲軟骨内骨化/骨増殖症ならびに軟骨下骨硬化症および嚢胞形成を含む、関節における十分に特徴づけされた変化を伴うことは、文献において公知である。Oettmeier R,Abendroth,K,“Osteoarthritis and bone:osteologic types of osteoarthritis of the hip”,Skeletal Radiol.1989;18:165−74を参照されたい。最近、OAの開始および進行に対する軟骨下骨硬化症の潜在的寄与が示唆されている。反復衝撃負荷に応答する関節として、硬化した軟骨下骨は、関節を介して力を弱め分散させる能力が低下していて、それを、関節軟骨表面全体にわたって、より大きな機械的ストレスに付す。今度はこれが軟骨の損傷および原線維化を加速する。Radin,ELおよびRose RM,“Role of subchondral bone in the initiation and progression of cartilage damage”,Clin.Orthop.1986;213:34−40を参照されたい。カテプシンKインヒビターのような抗吸収剤による過剰な軟骨下骨吸収の抑制は軟骨下骨ターンオーバーの抑制をもたらして、OAの進行に対して好ましい影響を及ぼしうる。
【0032】
前記の仮説に加えて、最近、OA患者に由来する滑膜および関節軟骨試料からの滑液繊維芽細胞、マクロファージ様細胞および軟骨細胞においてカテプシンKタンパク質の発現が特定された。Hou,W−S,Li,W,Keyszer,G,Weber,E,Levy,R,Klein,MJ,Gravallese,EM,Goldring,SR,Bromme,D,“Comparison of Cathepsin K and S expression within the Rheumatoid and Osteoarthritic Synovium”,Arthritis Rheumatism 2002;46:663−74;およびDodd,RA,Connor,JR,Drake,FH,Gowen,M,“Expression of Cathepsin K messenger RNA in giant cells and their precursors in human osteoarthritic synovial tissues”.Arthritis Rheumatism 1999;42:1588−93;およびKonttinen,YT,Mandelin,J,Li,T−F,Salo,J,Lassus,Jら.“Acidic cysteine endoproteinase cathepsin K in the degeneration of the superficial articular hyaline cartilage in osteoarthritis”,Arthritis Rheumatism 2002;46:953−60を参照されたい。したがって、これらの最近の研究は、カテプシンKの役割が、骨関節症の進行に関連した関節軟骨におけるコラーゲンII型の破壊に関連していることを示している。本明細書に記載の骨関節症の治療または予防におけるカテプシンKインヒビターの有用性は2つの異なるメカニズムを含み、1つは、破骨細胞により駆動される軟骨下骨ターンオーバーの抑制に関するものであり、もう1つは、OA患者の滑膜および軟骨におけるコラーゲンII型変性の直接的抑制に関するものである。
【0033】
本発明のもう1つの実施形態は、補装具周囲(periprosthetic)の骨溶解の治療を要する哺乳動物における補装具周囲の骨溶解の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。補装具周囲の骨溶解の治療のためのカテプシンKインヒビターの使用は文献において考察されている。Mandelin,J.ら,“Interface tissue fibroblasts from loose total hip replacement prosthesis produce receptor activator of nuclear factor−kappaB ligand,osteoprotegerin and cathepsin K,”J Rheumatol.2005 Apr;32(4):713−20を参照されたい。
【0034】
本発明のもう1つの実施形態は、ページェット病、骨形成不全および多発性骨髄腫からの骨病変のような骨疾患の治療を要する哺乳動物における該骨疾患の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。ページェット病、骨形成不全および多発性骨髄腫からの骨病変のような骨疾患の治療のためのカテプシンKインヒビターの使用は文献において考察されている。Lipton,A.,“New therapeutic agents for the treatment of bone diseases,”Expert Opin Biol Ther.2005 Jun;5(6):817−32を参照されたい。
【0035】
本発明のもう1つの実施形態は、癌の治療を要する哺乳動物における癌の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。カテプシンKはヒト乳癌、前立腺癌および軟骨腫において発現され、マトリックス分解能を有することが文献において公知である。Littlewood−Evans AJ,Bilbe G,Bowler WB,Farley D,Wlodarski B,Kokubo T,Inaoka T,Sloane J,Evans DB,Gallagher JA,“The osteoclast−associated protease cathepsin K is expressed in human breast carcinoma,” Cancer Res 1997 Dec 1;57(23):5386−90.Brubaker KD,Vessella RL,True LD,Thomas R,Corey E,“Cathepsin K mRNA and protein expression in prostate cancer progression,”J Bone Miner Res 2003 18,222−30.Haeckel C,Krueger S,Kuester D,Ostertag H,Samii M,Buehling F,Broemme D,Czerniak B,Roessner A,“Expression of cathepsin K in chordoma,”Hum Pathol 2000 Jul;31(7):834−40を参照されたい。
【0036】
本発明のもう1つの実施形態は、アテローム性動脈硬化症の治療を要する哺乳動物におけるアテローム性動脈硬化症の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。カテプシンKはヒトアテロームにおいて発現され、有意なエラスターゼ活性を有することが文献において公知である。Sukhova GK,Shi GP,Simon DI,Chapman HA,Libby P,“Expression of the elastolytic cathepsins S and K in human atheroma and regulation of their production in smooth muscle cells,”J Clin Invest 1998 Aug 102,576−83を参照されたい。
【0037】
本発明のもう1つの実施形態は、肥満の治療を要する哺乳動物における肥満の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。いくつかのマウス肥満モデルの脂肪組織および更にはヒトの肥満男性の脂肪組織においてはカテプシンK mRNAが増加することが文献において公知である。Chiellini C,Costa M,Novelli SE,Amri EZ,Benzi L,Bertacca A,Cohen P,Del Prato S,Friedman JM,Maffei M,“Identification of cathepsin K as a novel marker of adiposity in white adipose tissue,”J Cell Physiol 2003,195,309−21を参照されたい。
【0038】
本発明のもう1つの実施形態は、緑内障の治療を要する哺乳動物における緑内障の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。カテプシンKは虹彩、毛様体および網膜色素上皮において高度に発現され、したがって、緑内障の治療において有用でありうる。Ortega,J.ら,“Gene Expression of Proteases and Protease Inhibitors in the Human Ciliary Epithelium and ODM−2 cells,”Exp.Eye Res(1997)65,289−299;国際公開WO 2004/058238(Alcon,Inc.)を参照されたい。
【0039】
本発明のもう1つの実施形態は、慢性閉塞性肺疾患の治療を要する哺乳動物における慢性閉塞性肺疾患の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。カテプシンKは肺線維症において何らかの役割を果たしていることが文献において公知である。Buhling,F.ら,“Pivotal role of cathepsin K in lung fibrosis,”Am J Pathol.2004 Jun;164(6):2203−16を参照されたい。
【0040】
本発明のもう1つの実施形態は、寄生生物感染症の治療を要する哺乳動物における寄生生物感染症の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。哺乳類カテプシンは、これらの寄生生物の生活環において重要な役割を果たすパパイン様システインプロテアーゼに関連していることが文献において公知である。そのような寄生生物はマラリア、アメリカトリパノソーマ症、アフリカトリパノソーマ症、リーシュマニア症、ランブル鞭毛虫症、トリコモナス症、アメーバ症、住血吸虫症、肝蛭症、肺吸虫症および腸回虫の疾患に関与する。Lecaille F,Kaleta J,Bromme D.,Human and parasitic papain−like cysteine proteases:their role in physiology and pathology and recent developments in inhibitor design.Chem Rev 2002 102,4459−88を参照されたい。
【0041】
本発明のもう1つの実施形態は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の治療を要する哺乳動物における重症急性呼吸器症候群の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。
【0042】
本発明のもう1つの実施形態は、転移性骨疾患の治療を要する哺乳動物における転移性骨疾患の治療方法であって、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を該哺乳動物に投与することを含む方法である。破骨細胞は骨吸収をもたらすこと並びに転移性腫瘍により誘発される骨破壊および高カルシウム血症は破骨細胞により引き起こされることが文献において公知である。したがって、破骨細胞の抑制は骨破壊および骨転移を予防しうる。Miyamoto,T.およびSuda,T.,“Differentiation and function of osteoclasts,”Keio J Med 2003 Mar;52(l):l−7を参照されたい。
【0043】
本発明のもう1つの実施形態は、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、癌および或る自己免疫障害、例えば若年型糖尿病、多発性硬化症、尋常性天疱瘡、グレイヴス病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび橋本甲状腺炎(これらに限定されるものではない);アレルギー性障害、例えば喘息(これに限定されるものではない);ならびに同種免疫応答、例えば臓器移植または組織移植片の拒絶(これらに限定されるものではない)を含む、カテプシンSに関連した哺乳動物の疾患の治療のために、前記のいずれかの化合物または前記のいずれかの医薬組成物の治療的有効量を哺乳動物へ投与することである。カテプシンS活性は前記病態に関連していることが文献において公知である。Munger JS,Haass C,Lemere CA,Shi GP,Wong WS,Teplow DB,Selkoe DJ,Chapman HA,“Lysosomal processing of amyloid precursor protein to A beta peptides:a distinct role for cathepsin S,”Biochem J 1995 311,299−305.Sukhova GK,Zhang Y,Pan JH,Wada Y,Yamamoto T,Naito M,Kodama T,Tsimikas S,Witztum JL,Lu ML,Sakara Y,Chin MT,Libby P,Shi GP,“Deficiency of cathepsin S reduces atherosclerosis in LDL receptor−deficient mice,”J Clin Invest 2003 111,897−906.Zheng T,Zhu Z,Wang Z,Homer RJ,Ma B,Riese RJ Jr,Chapman HA Jr,Shapiro SD,Elias JA,“Inducible targeting of IL−13 to the adult lung causes matrix metalloproteinase−and cathepsin−dependent emphysema,”J Clin Invest 2000 106,1081−93.Shi GP,.Sukhova GK,Kuzuya M,Ye Q,Du J,Zhang Y,Pan JH,Lu ML,Cheng XW,Iguchi A,Perrey S,Lee AM,Chapman HA,Libby P,“Deficiency of the cysteine protease cathepsin S impairs microvessel growth,”Circ Res 2003 92,493−500.Nakagawa TY,Brissette WH,Lira PD,Griffiths RJ,Petrushova N,Stock J,McNeish JD,Eastman SE,Howard ED,Clarke SR,Rosloniec EF,Elliott EA,Rudensky AY,“Impaired invariant chain degradation and antigen presentation and diminished collagen−induced arthritis in cathepsin S null mice,”Immunity 1999 10,207−17を参照されたい。
【0044】
本発明を例示するものとして、骨粗鬆症の治療および/または予防を要する哺乳動物における骨粗鬆症の治療および/または予防のための医薬の製造における前記のいずれかの化合物の使用が挙げられる。さらに、本発明を例示するものとして、カテプシンの機能に関連した骨喪失、骨吸収、骨折、転移性骨疾患および/または障害の治療および/または予防を要する哺乳動物における該疾患および/または障害の治療および/または予防のための医薬の製造における前記のいずれかの化合物の使用が挙げられる。
【0045】
さらに、本発明を例示するものとして、骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、ページェット病、異常に増加した骨ターンオーバー、歯周病、歯喪失、骨折、慢性関節リウマチ、骨関節症、補装具周囲(periprosthetic)の骨溶解、骨形成不全、アテローム性動脈硬化症、肥満、緑内障、慢性閉塞性肺疾患、転移性骨疾患、悪性疾患の高カルシウム血症または多発性骨髄腫から選ばれる障害の治療を要する哺乳動物における、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に2回または1ヶ月に1回の投与間隔を有する連続的スケジュールに従う、該障害の治療のための、経口単位用量としての医薬の製造のための、本発明のカテプシンKインヒビターまたはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体の使用が挙げられる。また、本発明を例示するものとして、骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、ページェット病、異常に増加した骨ターンオーバー、歯周病、歯喪失、骨折、慢性関節リウマチ、骨関節症、補装具周囲(periprosthetic)の骨溶解、骨形成不全、アテローム性動脈硬化症、肥満、緑内障、慢性閉塞性肺疾患、転移性骨疾患、悪性疾患の高カルシウム血症または多発性骨髄腫から選ばれる障害の治療方法であって、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に2回または1ヶ月に1回の投与間隔を有する連続的スケジュールに従い、それを要する哺乳動物に投与することによる方法が挙げられる。
【0046】
本発明の化合物は、哺乳動物、好ましくはヒトに、単独で又は医薬上許容される担体もしくは希釈剤、場合によっては公知アジュバント(例えば、ミョウバン)と共に、医薬組成物として、標準的な薬学的慣例に従い投与されうる。該化合物は経口的に又は非経口的に(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸および局所投与経路により)投与されうる。
【0047】
経口用錠剤の場合、一般に使用される担体にはラクトースおよびコーンスターチが含まれ、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムが一般に加えられる。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥コーンスターチが含まれる。本発明の治療用化合物の経口用途の場合には、選択された化合物を、例えば、錠剤もしくはカプセル剤の形態で又は水性溶液もしくは懸濁液の投与することが可能である。錠剤またはカプセル剤の形態の経口投与には、活性薬物成分を、例えばラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどのような経口用の無毒性な医薬上許容される不活性担体と組合せることが可能であり、液体形態の経口投与には、経口薬物成分を、例えばエタノール、グリセロール、水などのような任意の経口用の無毒性な医薬上許容される不活性担体と組合せることが可能である。さらに、所望により又は必要に応じて、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤を該混合物に加えることが可能である。適当な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコースまたはβ−ラクトース、トウモロコシ甘味料、天然および合成ガム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどが含まれる。これらの剤形において使用する滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、限定的なものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれる。経口用に水性懸濁液が必要な場合には、有効成分を乳化および懸濁剤と一緒にする。所望により、ある甘味および/または芳香剤を加えることが可能である。筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内用途には、通常は、有効成分の無菌溶液を調製し、該溶液のpHを適切に調節し緩衝化すべきである。静脈内用途には、該調製物を等張性にするために溶質の全濃度を制御すべきである。
【0048】
本発明の化合物は、リポソーム運搬系、例えば小単ラメラ小胞、大単ラメラ小胞および多重ラメラ小胞の形態で投与されうる。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンのような種々のリン脂質から形成されうる。
【0049】
本発明の化合物は、該化合物分子が結合する個々の担体としてモノクローナル抗体を使用することによっても運搬されうる。本発明の化合物は、標的可能な薬物担体としての可溶性重合体にも結合されうる。そのような重合体には、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルタミド−フェノールまたはポリエチレンオキシド−ポリリシン(パルミトイル残基で置換されているもの)が含まれうる。さらに、本発明の化合物は、薬物のコントロールリリースを達成するのに有用な生分解性重合体のクラス、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸との共重合体、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリラート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロック共重合体に結合されうる。
【0050】
本化合物は、骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、ページェット病、異常に増加した骨ターンオーバー、歯周病、歯喪失、骨折、慢性関節リウマチ、骨関節症、補装具周囲(periprosthetic)の骨溶解、骨形成不全、転移性骨疾患、悪性疾患の高カルシウム血症または多発性骨髄腫の治療または予防に有用な公知物質と組合せた場合にも有用である。本明細書に開示されている化合物と骨粗鬆症または他の骨障害の治療または予防に有用な他の物質との組合せは本発明の範囲内である。当業者は、関連する疾患および薬物の個々の特性に基づき、物質のどの組合せが有用であるかを認識しうるであろう。そのような物質には以下のものが含まれる:有機ビスホスホナート;エストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPアーゼのインヒビター;HMG−CoAレダクターゼのインヒビター;インテグリン受容体アンタゴニスト;ビタミンD;合成ビタミンD類似体;同化物質、例えばPTH;非ステロイド性抗炎症薬;選択的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター;インターロイキン−1βのインヒビター;LOX/COXインヒビター;RANKLインヒビター;ならびにそれらの医薬上許容される塩および混合物。好ましい組合せは本発明の化合物と有機ビスホスホナートとの組合せである。もう1つの好ましい組合せは本発明の化合物とエストロゲン受容体モジュレーターとの組合せである。もう1つの好ましい組合せは本発明の化合物とアンドロゲン受容体モジュレーターとの組合せである。もう1つの好ましい組合せは本発明の化合物と骨芽細胞同化物質との組合せである。
【0051】
「有機ビスホスホナート」には、限定的なものではないが、以下の化学式の化合物が含まれる。
【0052】
【化4】

(式中、nは0〜7の整数であり、AおよびXは、独立して、H、OH、ハロゲン、NH、SH、フェニル、C−C30アルキル、C−C30分枝またはシクロアルキル、2個または3個のNを含有する二環性環構造、C−C30置換アルキル、C−C10アルキルNH、C−C10分枝またはシクロアルキル置換NH、C−C10ジアルキル置換NH、C−C10アルコキシ、C−C10アルキル置換チオ、チオフェニル、ハロフェニルチオ、C−C10アルキル置換フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニルおよびベンジルよりなる群から選ばれ、nが0の場合にAおよびXの両方がHまたはOHから選ばれることはなく、あるいはAとXとは、これらが結合している炭素原子一緒になって、C−C30環を形成している。)。
【0053】
前記化学式においては、該アルキル基は、該化学構造に十分な原子が選ばれる限り、直鎖状、分枝状または環状でありうる。C−C30置換アルキルには多種多様な置換基が含まれ、その非限定的な例には、フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾニル、NH、C−C10アルキルまたはジアルキル置換NH、OH、SHおよびC−C10アルコキシよりなる群から選ばれるものが含まれる。
【0054】
前記化学式は、Aおよび/またはX置換基に関して、複合的な炭素環式、芳香族およびヘテロ原子構造をも含むと意図され、それらの非限定的な例には、ナフチル、キノリル、イソキノリル、アダマンチルおよびクロロフェニルチオが含まれる。
【0055】
該ビスホスホナートの医薬上許容される塩および誘導体も本発明において有用である。塩の非限定的な例には、アルカリ金属、アルカリ金属、アンモニウム、およびモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−C−C10−アルキル置換アンモニウムよりなる群から選ばれるものが含まれる。好ましい塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアンモニウム塩よりなる群から選ばれるものである。より好ましいのはナトリウム塩である。誘導体の非限定的な例には、エステル、水和物およびアミドよりなる群から選ばれるものが含まれる。
【0056】
本発明の治療用物質に関して本明細書中で用いる「ビスホスホナート」なる語は、ジホスホナート、ビホスホン酸およびジホスホン酸ならびにこれらの物質の塩および誘導体をも包含する意であることに留意すべきである。特に示さない限り、ビスホスホナートに関する特定の命名法の使用は本発明の範囲を限定するものではない。混合命名法が当業者により現在用いられているため、本発明におけるビスホスホナート化合物の特定の重量または割合に対する言及は、特に示さない限り、酸活性重量に基づくものである。例えば、「アレンドロン酸活性重量に基づく、アレンドロナート、その医薬上許容される塩およびその混合物よりなる群から選ばれる骨吸収抑制性ビスホスホナートの約5mg」なる表現は、選ばれたビスホスホナート化合物の量がアレンドロン酸の5mgに基づいて算出されることを意味する。
【0057】
本発明において有用なビスホスホナートの非限定的な例には以下のものが含まれる。
【0058】
アレンドロナート。これは、アレンドロン酸、4−アミノ−l−ヒドロキシブチリデン−l,l−ビスホスホン酸、アレンドロナートナトリウムまたはアレンドロナート一ナトリウム三水和物、4−アミノ−l−ヒドロキシブチリデン−l,l−ビスホスホン酸一サナトリウム三水和物としても公知である。
【0059】
アレンドロナートは、1990年5月1日付け発行のKieczykowskiら,米国特許第4,922,007号、1991年5月28日付け発行のKieczykowskiら,米国特許第5,019,651号、1996年4月23日付け発行のDauerら,米国特許第5,510,517号、1997年7月15日付け発行のDauerら,米国特許第5,648,491号(それらの全ての全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0060】
1990年11月13日発行のIsomuraら,米国特許第4,970,335号(この全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)に記載のシクロヘプチルアミノメチレン−1,1−ビスホスホン酸,YM 175,Yamanouchi(以前はシマドロナート(cimadronate)として公知のインカドロナート(incadronate))。
【0061】
1,1−ジクロロメチレン−1,1−ジホスホン酸(クロドロン酸)および二ナトリウム塩(クロドロナート(clodronate),Procter and Gamble)はベルギー国特許第672,205号(1996)およびJ.Org.Chem 32,4111(1967)(これらの両方の全内容を参照により本明細書に組み入れることとする。)に記載されている。
【0062】
1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)−プロピリデン−1,1−ビスホスホン酸(EB−1053)。
【0063】
1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(エチドロン酸(etidronic acid))。
【0064】
1−ヒドロキシ−3−(N−メチル−N−ペンチルアミノ)プロピリデン−1,1−ビスホスホン酸(BM−210955,Boehringer−Mannheim(イバンドロナート(ibandronate))としても公知である。)は、1990年5月22日付け発行の米国特許第4,927,814号(この全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)に記載されている。
【0065】
1−ヒドロキシ−2−イミダゾ−(1,2−a)ピリジン−3−イエチリデン(ミノドロナート(minodronate))。
【0066】
6−アミノ−1−ヒドロキシヘキリデン−1,1−ビスホスホン酸(ネリドロナート(neridronate))。
【0067】
3−(ジメチルアミノ)−1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ビスホスホン酸(オルパドロナート(olpadronate))。
【0068】
3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ビスホスホン酸(パミドロナート(pamidronate))。
【0069】
[2−(2−ピリジニル)エチリデン]−1,1−ビスホスホン酸(ピリドロナート(piridronate))は米国特許第4,761,406号(この全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)に記載されている。
【0070】
1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジニル)−エチリデン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロナート(risedronate))。
【0071】
1989年10月24日付けのBreliereら,米国特許第4,876,248号(この全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)に記載の(4−クロロフェニル)チオメタン−1,1−ジホスホン酸(チルドロナート(tiludronate))。
【0072】
1−ヒドロキシ−2−(1H−イミダゾール−1−イル)エチリデン−1,1−ビスホスホン酸(ゾレドロナート(zoledronate))。
【0073】
ビスホスホナートの非限定的な例には、アレンドロナート、シマドロナート、クロドロナート、エチドロナート、イバンドロナート、インカドロナート、ミノドロナート、ネリドロナート、オルパドロナート、パミドロナート、ピリドロナート、レセドロナート、チルドロナートおよびゾレンドロナートならびにその医薬上許容される塩およびエステルが含まれる。特に好ましいビスホスホナートはアレンドロナート、特にアレンドロン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはアンモニウム塩である。好ましいビスホスホナートを例示するものとして、アレンドロン酸のナトリウム塩、特にアレンドロン酸の水和化ナトリウム塩が挙げられる。該塩は整数のモル数の水または非整数のモル数の水で水和されうる。さらに、好ましいビスホスホナートを例示するものとして、アレンドロン酸の水和化ナトリウム塩、特に、該水和化塩がアレンドロナート一ナトリウム三水和物であるものが挙げられる。
【0074】
2以上の該ビスホスホナート活性物質の混合物が使用されうると認識される。
【0075】
該有機ビスホスホナートの厳密な投与量は、投与スケジュール、選択した個々のビスホスホナート、哺乳動物またはヒトの年齢、サイズ、性別および状態、治療すべき障害の性質および重症度、ならびに他の関連する医学的および物理的要因によって様々となろう。したがって、厳密な医薬上有効な量は予め特定されうるものではなく、介護者または臨床家により容易に決定されうる。適当な量は動物モデルおよびヒト臨床研究から通常の実験により決定されうる。一般に、ビスホスホナートの適当な量は、骨吸収抑制効果が得られるよう選ばれる。すなわち、該ビスホスホナートの骨吸収抑制量を投与する。ヒトの場合には、ビスホスホナート有効経口用量は、典型的には約1.5〜約6000μg/kg体重、好ましくは約10〜約2000μg/kg体重である。アレンドロナート一ナトリウム三水和物の場合には、ヒトに投与する一般的な用量は、一般には約2mg/日〜約40mg/日、好ましくは約5mg/日〜約40mg/日の範囲である。米国においては、アレンドロナート一ナトリウム三水和物に関して現在承認されている投与量は、骨粗鬆症の予防には5mg/日、骨粗鬆症の治療には10mg/日、ページェット病の治療には40mg/日である。
【0076】
他の投与計画においては、該ビスホスホナートを、毎日ではなく例えば1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、1ヶ月に2回の間隔で投与することが可能である。1週間に1回の投与計画においては、アレンドロナート一ナトリウム三水和物を35mg/週または70mg/週の投与量で投与することになろう。
【0077】
「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」は、メカニズムには無関係に該受容体へのエストロゲンの結合を妨げる又は抑制する化合物を意味する。エストロゲン受容体モジュレーターの具体例には、エストロゲン、プロゲストーゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、TSE−424、タモキシフェン、ヨードキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノアート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾンおよびSH646が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
「エストロゲン受容体βモジュレーター」は、エストロゲン受容体βを選択的に作動または拮抗する化合物である。ERβ作動性ERβは、ERβ媒介事象を介してトリプトファンヒドロキシラーゼ遺伝子(TPH;セロトニン合成における鍵酵素)の転写を増強する。エストロゲン受容体βアゴニストは、2001年11月8日付け公開のPCT国際公開WO 01/82923および2002年5月20日付け公開のWO 02/41835(それらの両方の全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に見出されうる。
【0079】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」は、メカニズムには無関係に該受容体へのアンドロゲンの結合を妨げる又は抑制する化合物である。アンドロゲン受容体モジュレーターの具体例には、フィナステリドおよび他の5α−レダクターゼインヒビター、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾールおよびアビラテロンアセタートが含まれる。
【0080】
「破骨細胞プロトンATPアーゼのインヒビター」は、破骨細胞の頂端膜上に見出され骨吸収過程において重要な役割を果たすと報告されているプロトンATPアーゼのインヒビターを意味する。このプロトンポンプは、骨粗鬆症および関連代謝疾患の治療および予防に潜在的に有用な骨吸収のインヒビターの設計のための魅力的な標的の1つである。C.Farinaら,“Selective inhibitors of the osteoclast vacuolar proton ATPase as novel bone antiresorptive agents,”DDT,4:163−172(1999)(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。)を参照されたい。
【0081】
「HMG−CoAレダクターゼインヒビター」は3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼのインヒビターを意味する。HMG−CoAレダクターゼに対する抑制活性を有する化合物は、当技術分野でよく知られたアッセイを用いることにより容易に特定されうる。例えば、米国特許第4,231,938号の第6欄およびWO 84/02131のp.30−33に記載または引用されているアッセイを参照にされたい。「HMG−CoAレダクターゼインヒビター」および「HMG−CoAレダクターゼのインヒビター」なる語は、本明細書中で用いる場合には同意義を有する。
【0082】
使用しうるHMG−CoAレダクターゼインヒビターの具体例には、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4,231,938号、第4,294,926号および第4,319,039号を参照されたい。)、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4,444,784号、第4,820,850号および第4,916,239号を参照されたい)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4,346,227号、第4,537,859号、第4,410,629号、第5,030,447号および第5,180,589号)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許第5,354,772号、第4,911,165号、第4,929,437号、第5,189,164号、第5,118,853号、第5,290,946号および第5,356,896号を参照されたい。)、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標);米国特許第5,273,995号、第4,681,893号、第5,489,691号および第5,342,952号を参照されたい。)およびセリバスタチン(リバスタチンおよびBAYCHOL(登録商標);米国特許第5,177,080号を参照されたい。)が含まれるが、これらに限定されるものではない。本方法において使用しうるこれらの及び追加的なHMG−CoAレダクターゼインヒビターの構造式はM.Yalpani,“Cholesterol Lowering Drugs”,Chemistry & Industry,pp.85−89(1996年2月5日)の87ページならびに米国特許第4,782,084号および第4,885,314号に記載されている。本明細書中で用いるHMG−CoAレダクターゼインヒビターなる語は、HMG−CoAレダクターゼ抑制活性を有する全ての医薬上許容されるラクトンおよび開裂(開いた)酸形態(すなわち、該ラクトン環が開いて遊離酸を形成しているもの)ならびに化合物の塩およびエステル形態を含み、したがって、そのような塩、エステル、開裂酸およびラクトン形態の使用は本発明の範囲内に含まれる。該ラクトン部分およびその対応開裂酸形態の一例を以下に構造式IおよびIIとして示す。
【0083】
【化5】

【0084】
開裂酸形態が存在しうるHMG−CoAレダクターゼインヒビターにおいては、好ましくは、該開裂酸から塩およびエステル形態が形成されることが可能であり、すべてのそのような形態が、本明細書中で用いる「HMG−CoAレダクターゼインヒビター」なる語の意義に含まれる。好ましくは、HMG−CoAレダクターゼインヒビターは、ロバスタチンおよびシンバスタチンから選ばれ、最も好ましくはシンバスタチンである。本明細書においては、HMG−CoAレダクターゼインヒビターに関する「医薬上許容される塩」なる語は、遊離酸を適当な有機または無機塩基と反応させることにより一般に製造される、本発明において使用する化合物の無毒性塩を意味し、特に、例えばナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛およびテトラメチルアンモニウムのようなカチオンから形成されるもの、ならびに例えばアンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−p−クロロベンジル−2−ピロリジン−1’−イル−メチルベンゾイミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのようなアミンから形成される塩を包含する。HMG−CoAレダクターゼインヒビターの塩形態の他の例には、アセタート、ベンゼンスルホナート、ベンゾアート、炭酸水素塩、硫酸水素塩、ビタルトラート、ボラート、ブロミド、カルシウムエデタート、カンシラート、炭酸塩、クロリド、クラブラナート、シトラート、二塩酸塩、エデタート、エジシラート、エストラート、エシラート、フマラート、グルセプタート、グルコナート、グルタマート、グリコリルアルサニラート、ヘキシルレゾルシナート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトアート、ヨージド、イソチオナート、ラクタート、ラクトビオナート、ラウラート、マラート、マレアート、マンデラート、メシラート、メチルスルファート、ムカート、ナプシラート、ニトラート、オレアート、オキサラート、パモアート、パルミタート、パントテナート、ホスファート/ジホスファート、ポリガラクツロナート、サリシラート、ステアラート、スバセタート、スクシナート、タンナート、タルトラート、テオクラート、トシラート、トリエチオジドおよびバレラートが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
記載されているHMG−CoAレダクターゼインヒビター化合物のエステル誘導体はプロドラッグとして作用することが可能であり、これは、温血動物の血流内に吸収されると、薬物形態を遊離するよう切断され、該薬物が治療効力の改善を示すことを可能にしうる。
【0086】
前記で用いた「インテグリン受容体アンタゴニスト」は、αβインテグリンへの生理的リガンドの結合を選択的に拮抗し抑制し又は相殺する化合物、αβインテグリンへの生理的リガンドの結合を選択的に拮抗し抑制し又は相殺する化合物、αβインテグリンおよびαβインテグリンの両方への生理的リガンドの結合を選択的に拮抗し抑制し又は相殺する化合物、ならびに毛細血管内皮細胞上で発現される個々のインテグリンの活性を選択的に拮抗し抑制し又は相殺する化合物を意味する。該用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβおよびαβインテグリンのアンタゴニストをも意味する。該用語はまた、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβおよびαβインテグリンの任意の組合せのアンタゴニストをも意味する。H.N.Lodeら(PNAS USA 96:1591−1596(1999))は、自然腫瘍転移の根絶における抗血管新生性αインテグリンアンタゴニストと腫瘍特異的抗体−サイトカイン(インターロイキン2)融合タンパク質との間の相乗効果を観察している。それらの結果は、この組合せが癌および転移性腫瘍増殖の治療の可能性を有することを示唆している。αβインテグリン受容体アンタゴニストは、現在利用可能な全ての薬物の場合とは異なる新たなメカニズムにより骨吸収を抑制する。インテグリンは、細胞−細胞および細胞−マトリックス相互作用を媒介するヘテロ二量体膜貫通型接着受容体である。αおよびβインテグリンサブユニットは非共有的に相互作用し、二価カチオン依存的に細胞外マトリックスリガンドに結合する。破骨細胞上で最も豊富なインテグリンはαβであり(>10個/破骨細胞)、これは、細胞の遊走および分極において重要な細胞骨格体制における律速的役割を果たしているらしい。αβ拮抗作用は、骨吸収の抑制、再発狭窄症の抑制、黄斑変性の抑制、関節炎の抑制、ならびに癌および転移性増殖の抑制から選ばれる。
【0087】
「骨芽細胞同化物質」は、例えばPTHのような造骨性物質を意味する。副甲状腺ホルモン(PTH)またはそのアミノ末端断片および類似体の間欠的投与は動物およびヒトにおいて骨喪失を予防し、阻止し、部分的に逆転させ、骨形成を促進することが示されている。考察のためには、D.W.Dempsterら,“Anabolic actions of parathyroid hormone on bone,”Endocr Rev 14:690−709(1993)を参照されたい。研究は骨形成の促進ならびにそれによる骨量および強度の増加における副甲状腺ホルモンの臨床的利益を示している。結果はRM Neerら,New Eng J Med 344 1434−1441(2001)に報告されている。
【0088】
また、副甲状腺ホルモン関連タンパク質断片または類似体、例えばPTHrP−(1−36)は、強力な抗カルシウム尿効果を示しており[M.A.Syedら,“Parathyroid hormone−related protein−(l−36) stimulates renal tubular calcium reabsorption in normal human volunteers:implications for the pathogenesis of humoral hypercalcemia of malignancy,”JCEM 86:1525−1531(2001)を参照されたい]、同様に、骨粗鬆症の治療のための同化物質としての可能性を有しうる。
【0089】
「ビタミンD」には、限定的なものではないがビタミンD(コレカルシフェロール)およびビタミンD(エルゴカルシフェロール)が含まれ、これらは、ビタミンDのヒドロキシル化生物活性代謝産物(1α−ヒドロキシビタミンD、25−ヒドロキシビタミンDおよび1α,25−ジヒドロキシビタミンD)の天然に存在する生物学的に不活性な前駆体である。ビタミンDおよびビタミンDはヒトにおいて同じ生物学的効力を有する。ビタミンDまたはDのいずれかが循環に進入すると、それはシトクロムP450−ビタミンD−25−ヒドロキシラーゼによりヒドロキシル化されて25−ヒドロキシビタミンDを与える。該25−ヒドロキシビタミンD代謝産物は生物学的に不活性であり、腎臓においてシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ,25(OH)D−1α−ヒドロキシラーゼにより更にヒドロキシル化されて1,25−ジヒドロキシビタミンDを与える。血清カルシウムが低下すると、副甲状腺ホルモン(PTH)の産生が上昇し、それはカルシウム恒常性を調節し、25−ヒドロキシビタミンDから1,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換を上昇させることにより血漿カルシウムレベルを上昇させる。
【0090】
1,25−ジヒドロキシビタミンDはカルシウムおよび骨の代謝に対するビタミンDの効果の原因因子であると考えられている。該1,25−ジヒドロキシ代謝産物は、カルシウム吸収および骨格完全性を維持するのに必要な活性ホルモンである。カルシウム恒常性は、1,25ジヒドロキシビタミンDにより、単球幹細胞から破骨細胞への分化誘導およびカルシウムの正常範囲内の維持により維持され、これは、骨表面上へのカルシウムヒドロキシアパタイトの沈着により骨石灰化を引き起こす。Holick,MF,“Vitamin D photobiology,metabolism,and clinical applications,” in Endocrinology,3rd ed.,990−1013(1995)(DeGroot Lら編)を参照されたい。しかし、1α25−ジヒドロキシビタミンDのレベルの上昇は血中カルシウム濃度の上昇、および骨代謝によるカルシウム濃度の異常制御を引き起こして、高カルシウム血症もたらしうる。また、1α,25−ジヒドロキシビタミンDは骨代謝において骨破壊活性を間接的に調節し、レベルの上昇は骨粗鬆症において過剰骨吸収を増加させると予想されうる。
【0091】
本発明の実施形態においては、ビタミンD化合物の適当な量は、骨吸収抑制効果をもたらすカテプシンKインヒビターの能力を妨げることなく、投与間隔中に適当なビタミンD栄養を与えるよう選ばれる。カテプシンKインヒビターとビタミンD化合物とを含む本発明の経口組成物の場合には、ビタミンD化合物の量は約100 IU〜約60,000 IUを含む。本発明の実施形態におけるビタミンD化合物の経口量の非限定的な例には、2,800 IU、5,600 IU、7,000 IU、8,400 IU、11,200 IU、14,000 IU、16,800 IUまたは19,600 IUの投与量が含まれるが、これらに限定されるものではない。週ごとの投与の場合のビタミンDの経口量の非限定的な例としては、2,800 IU、5,600 IU、7,000 IU、8,400 IUおよび11,200 IUが挙げられる。月ごとの投与の場合のビタミンDの経口量の非限定的な例としては、11,200 IU、14,000 IU、15,400 IU、16,800 IUおよび19,600 IUが挙げられる。
【0092】
「合成ビタミンD類似体」には、ビタミンDと同様に作用する、非天然に生じる化合物が含まれる。
【0093】
「非ステロイド抗炎症薬」またはNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ(COX)−1およびCOX−2を介した炎症性プロスタグランジンへのアラキドン酸の代謝の抑制をもたらす。NSAIDの非限定的な例には、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナック、エトドラック、フェノポルフェン、フルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メロキシカム、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダック、トルメチン、ジフルニサール、メクロフェナメートおよびフェニルブタゾンが含まれる。
【0094】
「選択的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター」またはCOX−2インヒビターは、体内の疼痛および炎症に関与する、COX−2補酵素を抑制する、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)のタイプを意味する。COX−2インヒビターの非限定的な例には、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブおよびルミラコキシブが含まれる。
【0095】
「インターロイキン−1ベータまたはIL−1βのインヒビター」は、Tリンパ球を活性化しマイトジェンまたは抗原に対するその応答を増強する、単球、マクロファージおよび他の細胞により産生される可溶性因子であるIL−1のインヒビターを意味する。IL−1βの非限定的な例にはジアセレインおよびリーン(rhein)が含まれる。
【0096】
「LOX/COXインヒビター」は、アラキドン酸経路に関与する主要酵素の全3個(すなわち、5−LOX、COX−1およびCOX−2)のインヒビターを意味する。LOX/COXインヒビターの非限定的な例としては、リコフェロンが挙げられる。
【0097】
「RANKLインヒビター」は、かつては破細胞分化因子(ODF)、オステオプロテゲリンリガンド(OPGL)およびTNF関連活性化誘導性サイトカイン(TRANCE)と呼ばれていた受容体アクチベーターNF−κBリガンド(RANKL)のインヒビターを意味する。RANKLは破骨細胞の生成および成熟の鍵刺激物質である。RANKLインヒビターの非限定的な例としてはAMG−162が挙げられる。
【0098】
そのような組合せ産物は、一定量で製剤化される場合には、後記の投与範囲内の本発明の化合物と、承認された投与量範囲内のその他の医薬上活性な物質とを使用する。あるいは、組合せ製剤化が不適当な場合には、本発明の化合物を、公知の医薬上許容される物質と共に連続的に使用することが可能である。
【0099】
本発明の化合物に関する「投与」なる語およびその派生語(例えば、化合物を「投与する」)は、該化合物または該化合物のプロドラッグを、治療を要する動物の系内に導入することを意味する。本発明の化合物またはそのプロドラッグが1以上の他の活性物質(例えば、細胞毒性物質など)と組合せて与えられる場合には、「投与」およびその派生語はそれぞれ、該化合物またはそのプロドラッグと他の物質との同時および連続的な導入を含むと理解される。本発明は、その範囲内に、本発明の化合物のプロドラッグを含む。一般に、そのようなプロドラッグは、必要な化合物へとインビボで容易に変換されうる、本発明の化合物の機能的誘導体である。本発明において予想されるプロドラッグの非限定的な例には、加水分解されて本発明のアルコールを与えうるエステル、インビボで還元されて本発明のアルコールを与えうるケトンが含まれる。場合によっては、ケトンの還元が立体特異的に生じて単一のジアステレオマーアルコールを優先的に与えうると理解される。適当なプロドラッグの他の例、ならびにそのような誘導体の選択および製造のための通常の方法は、例えば、“Design of Prodrugs,”(H.Bundgaard編),Elsevier,1985(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。したがって、本発明の治療方法においては、「投与」なる語は、具体的に開示されている化合物での、または具体的には開示されてないかもしれないが患者への投与後に開示化合物へとインビボで変換される化合物での、記載されている種々の状態の治療を含むものとする。これらの化合物の代謝産物には、生物学的環境内への本発明の化合物の導入に際して産生する活性種が含まれる。
【0100】
本明細書中で用いる「組成物」なる語は、特定されている成分を、特定されている量で含む産物、ならびに特性されている量の、特定されている成分の組合せから、直接的または間接的に生じる任意の産物を含むと意図される。
【0101】
本明細書中で用いる「治療的有効量」なる語は、研究者、獣医、医師または他の臨床家により求められる組織、系、動物またはヒトにおける生物学的または医学的応答を惹起する、活性化合物または医薬物質の量を意味する。
【0102】
本明細書中で用いる、疾患の「治療」なる語は、該疾患の予防、すなわち、該疾患にさらされうる又は該疾患の素因を有するが該疾患の症状を未だ経験したり示していない哺乳動物において該疾患の臨床症状が発生しないようにすること;該疾患の抑制、すなわち、該疾患の抑制、すなわち、該疾患またはその臨床症状の阻止または軽減;あるいは該疾患の緩和、すなわち、該疾患またはその臨床症状の退縮を含む。
【0103】
本明細書中で用いる「骨吸収」なる語は、破骨細胞が骨を分解する過程を意味する。
【0104】
本明細書中で用いる「1週間に1回(週1回)」および「1週間に1回(週1回)の投与」なる語は、単位投与量、例えばカテプシンKインヒビターの単位投与量を、1週間に1回、すなわち、7日間に1回、好ましくは各週の同じ曜日に投与することを意味する。1週間に1回の投与計画においては、一般には、単位投与量を約7日ごとに投与する。1週間に1回の投与計画の非限定的な例は、毎週日曜日のカテプシンKインヒビターの単位投与量の投与を含むであろう。1週間に1回の投与のための単位投与量を、連続した日には投与しないことが一般には推奨されるが、1週間に1回の投与計画は、2つの異なる週に属する連続する2日に単位投与量を投与する投与計画を含みうる。
【0105】
「2週間に1回」の投与は、カテプシンKインヒビターの単位投与量を、2週間に1回、すなわち、14日間に1回、好ましくは、各2週間の同一日に投与することを意味する。2週間に1回の投与計画においては、一般には、各単位投与量を約14日ごとに投与する。2週間に1回の投与計画の非限定的な例は、隔週日曜日のカテプシンKインヒビターの単位投与量の投与を含むであろう。連続した日には単位投与量を投与しないことが好ましいが、2週間に1回の投与計画は、2つの異なる2週間単位に属する連続する2日に単位投与量を投与する投与計画を含みうる。
【0106】
「1ヶ月に2回」の投与は、カテプシンKインヒビターの単位投与量を、暦月期間内に2回(すなわち、2度)投与する。1ヶ月に2回の計画では、用量を、好ましくは、各月の同じ2日に投与する。1ヶ月に2回の投与計画においては、一般には、各単位投与量を約14〜16日ごとに投与する。1ヶ月に2回の投与計画の非限定的な例は、その月の初日またはその前後、およびその月の15日(中間日)またはその前後に投与することを含むであろう。同じ又は連続した日には単位投与量を投与しないことが好ましいが、1ヶ月に2回の投与計画は、1つの月単位内または異なる月単位内の2つの連続した日に単位投与量を投与する投与計画を含みうる。1ヶ月に2回の計画は、本明細書においては、2週間に1回の投与計画とは異なるものとして定義され、それを含まない。なぜなら、それらの2つの計画は、異なる周期性を有し、長期間にわたって異なる投与数の投与をもたらすからである。例えば、1年間では、1ヶ月に2回の計画によれば合計約24回の投与が行われることになるが(なぜなら、1年間には12の暦月が存在するからである)、2週間に1回の投与計画によれば合計約26回の投与が行われることになる(なぜなら、1年間には約52週存在するからである)。
【0107】
「1ヶ月に1回」なる語は、一般に受け入れられている意義に従い、約4週、約30日または暦年の1/12に相当する時間の尺度として用いられる。
【0108】
本発明はまた、医薬上許容される担体または希釈剤の存在下または非存在下に本発明の化合物の治療的有効量を含む、骨粗鬆症または他の骨障害の治療に有用な医薬組成物を含む。本発明の適当な組成物には、本発明の化合物と薬理学的に許容される担体(例えば、塩類液)を例えば7.4のpHレベルで含む水溶液が含まれる。該溶液は局所ボーラス注射により患者の血流内に導入されうる。
【0109】
本発明の化合物をヒト対象に投与する場合には、1日投与量は、通常、処方医師により決定され、投与量は、一般には、個々の患者の年齢、体重および応答ならびに患者の症状の重症度によって様々となる。
【0110】
1つの典型的な用途においては、カテプシン依存性状態に対する治療を受ける哺乳動物に化合物の適当な量を投与する。本発明の経口投与量は、適応する効果のため用いられる場合には、1日当たり体重1kg当たり約0.01mg(mg/kg/日)〜約100mg/kg/日、好ましくは0.01〜10mg/kg/日、最も好ましくは0.1〜5.0mg/kg/日の範囲となろう。経口投与の場合には、該組成物は、好ましくは、治療すべき患者に、投与量の対症調節のために0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、3.5、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、35.0、40.0、50.0、80.0、100、200および500ミリグラムの有効成分を含有する錠剤の形態で与えられる。医薬は、典型的には約0.01mg〜約500mgの有効成分、好ましくは約1mg〜約100mgの有効成分を含有する。静脈内投与の場合には、最も好ましい用量は、一定速度の注入中、約0.1〜約10mg/kg/分の範囲であろう。有利には、本発明の化合物は1回の1日量で投与されることが可能であり、あるいは合計1日投与量が1日2、3または4回の分割量で投与されうる。または、本発明の化合物は、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に2回または1ヶ月に1回の投与間隔を有する連続的スケジュールで投与されうる。さらに、本発明において好ましい化合物は、適当な鼻腔内用ビヒクルの局所的使用により鼻腔内投与形態で、あるいは当業者によく知られた経皮皮膚パッチの形態を使用して経皮経路で投与されうる。経皮運搬系の形態で投与されるためには、投与は、勿論、投与計画の全体にわたって、断続的ではなく連続的なものとなろう。
【0111】
本発明の化合物は、カテプシン媒介状態の治療に有用な他の物質と共に使用されうる。そのような組合せの個々の成分は、治療経過中の異なる時点で別々に投与されることが可能であり、あるいは分割された又は単一の組合せ形態で同時に投与されうる。したがって、本発明は、同時または交互の治療の全てのそのような計画を含むと理解されるべきであり、「投与」なる語はそれに応じて解釈されるべきである。カテプシン媒介状態の治療に有用な他の物質との本発明の化合物の組合せの範囲は、原則として、エストロゲン機能に関連した障害の治療に有用な任意の医薬組成物との任意の組合せを含むと理解されるであろう。
【0112】
したがって、本発明の範囲は、本発明において特許請求されている化合物と、それと組合された、有機ビスホスホナート;エストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPアーゼのインヒビター;HMG−CoAレダクターゼのインヒビター;インテグリン受容体アンタゴニスト;骨芽細胞同化物質、例えばPTH;ビタミンD;合成ビタミンD類似体;非ステロイド抗炎症薬;選択的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター;インターロイキン−1ベータのインヒビター;LOX/COXインヒビター;RANKLインヒビター;ならびにそれらの医薬上許容される塩および混合物から選ばれる第2の物質との使用を含む。
【0113】
本発明のこれらの及び他の態様は、本明細書に含まれる教示から明らかであろう。
【0114】
定義
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸およびキラル平面(E.L.ElielおよびS.H.Wilen,Stereochemistry of Carbon Compounds,John Wiley & Sons,New York,1994,p.1119−1190に記載されているとおり)を有することがあり、ラセミ化合物、ラセミ混合物および個々のジアステレオマーとして存在することが可能であり、そのすべての考えられうる異性体および混合物(光学異性体を含む)が本発明に含まれる。また、本明細書に開示されている化合物は互変異性体として存在することがあり、一方のみの互変異性体構造が示されている場合であっても、両方の互変異性体が本発明の範囲に含まれると意図される。例えば、以下の化合物Aに関する任意の請求項は互変異性体構造Bを含み、その逆も成り立ち、それらの混合物も含むと理解される。
【0115】
【化6】

【0116】
いずれかの可変基(例えば、R、R、Rなど)がいずれかの構造内に2回以上出現する場合、各出現に関するその定義はそれぞれの他の出現からは独立している。また、置換基および可変基の組合せは、そのような組合せが安定化合物を与える場合にのみ許容される。置換基から環系内に引かれた線は、示されている結合が、置換可能な任意の環炭素原子に結合しうることを示す。環系が多環式である場合には、該結合は、もっぱら近位の環上の適当な任意の炭素原子に結合すると意図される。
【0117】
本発明の化合物上の置換基および置換パターンは、容易に入手可能な出発物質から当技術分野で公知の技術および後記の方法により容易に合成されうる化学的に安定な化合物を与えるよう、当業者により選ばれうると理解される。置換基自体が2以上の基で置換される場合には、安定な構造が生じる限り、これらの複数の基は同一炭素または異なる炭素上に存在しうると理解される。「所望により1以上の置換基で置換されていてもよい」なる表現は「所望により少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい」なる表現と同意義であると解釈されるべきであり、そのような場合、好ましい実施形態は0〜3個の置換基を有する。
【0118】
本明細書中で用いる「アルキル」は、特に示さない限り1〜10個の炭素原子を有する分枝状および直鎖状の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むと意図される。例えば、「C−C10アルキル」におけるC−C10は、直線、分枝または環状配置において1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素を有する基を含むものとして定義される。例えば、「C−C10アルキル」は特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどを含む。
【0119】
「シクロアルキル」または「炭素環」なる語は、特に示さない限り合計3〜8個またはこの範囲内の任意の数の炭素原子のアルカンの環状環(すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル)を意味するものとする。
【0120】
ある場合には、置換基は、ゼロを含む或る範囲の炭素を有するものとして定義されうる(例えば、(C−C)アルキレン−アリール)。アリールがフェニルであると解釈される場合には、この定義はフェニル自体および−CHPh、−CHCHPh、CH(CH)CHCH(CH)Phなどを含むであろう。
【0121】
本明細書中で用いる「アリール」は、各環内に12個までの原子を有する任意の安定な単環式または二環式炭素環を意味し、ここで、少なくとも1つの環は芳香環であると意図される。そのようなアリール要素の例には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリルまたはアセナフチルが含まれる。アリール置換基が二環性であり、1つの環が非芳香族である場合には、結合は芳香環を介したものであると理解される。
【0122】
本明細書中で用いる「ヘテロアリール」なる語は、各環内に10個までの原子を有する安定な単環式、二環式または三環式環を表し、ここで、少なくとも1つの環は芳香環であり、O、NおよびSよりなる群から選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含有する。この定義の範囲内のヘテロアリール基には、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフタピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロキノリニル、メチレンジオキシベンゼン、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリルおよびテトラヒドロキノリンが含まれるが、これらに限定されるものではない。ヘテロアリール置換基が二環性であり、1つの環が非芳香族であるか又はヘテロ原子を含有しない場合には、結合はそれぞれ芳香環またはヘテロ原子含有環を介したものであると理解される。ヘテロアリールが窒素原子を含有する場合には、その対応N−オキシドもこの定義に含まれると理解される。
【0123】
当業者に理解されるとおり、本明細書中で用いる「ハロ」または「ハロゲン」はクロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを含むと意図される。「ケト」なる語はカルボニル(C=O)を意味する。
【0124】
本発明は式Iの化合物のN−オキシド誘導体および保護誘導体を含む。例えば、式Iの化合物が酸化可能な窒素原子を含有する場合には、該窒素原子は、当技術分野でよく知られた方法によりN−オキシドに変換されうる。また、式Iの化合物が、ヒドロキシ、カルボキシ、チオールのような基または窒素原子を含有する任意の基を含有する場合には、これらの基は適当な保護基で保護されうる。適当な保護基の包括的な一覧はT.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,Inc.1981(その開示の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に見出されうる。式Iの化合物の保護誘導体は、当技術分野でよく知られた方法により製造されうる。
【0125】
本発明の化合物の医薬上許容される塩には、無機または有機酸から形成される、本発明の化合物の通常の無毒性塩が含まれる。例えば、通常の無毒性塩には、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などのような無機酸から誘導される塩、および例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ−安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などのような有機酸から製造される塩が含まれる。前記の医薬上許容される塩および他の典型的な医薬上許容される塩の製造は、Bergら,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci,1977:66:1−19(これを参照により本明細書に組み入れることとする)に、より詳細に記載されている。本発明の化合物の医薬上許容される塩は、通常の化学的方法により、塩基性または酸性部分を含有する本発明の化合物から合成されうる。一般には、塩基性化合物の塩は、イオン交換クロマトグラフィーにより、あるいは適当な溶媒または種々の組合せの溶媒中、遊離塩基を化学量論量または過剰の所望の塩形成無機または有機酸と反応させることにより製造される。同様に、酸性化合物の塩は、適当な無機または有機塩基との反応により形成される。
【0126】
本明細書の目的においては、以下の略語は、示されている意義を有する。
i−BuCOCl = イソブチルクロロホルマート
t−BuMeSiCl = tert−ブチルジメチルクロロシラン
BuLi =ブチルリチウム
CHCl = メチレンクロリド
CHCN = メチルシアニド
CrO = クロマート
DAST = ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド
DMF = N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルホキシド
DTT = ジチオトレイトール
EDTA = エチレンジアミン四酢酸
EtOH = エタノール
KOH = 水酸化カリウム
HATU = 2−(7−アザ−lH−ベンゾトリアゾール−l−イル)−l,l,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート
HCl = 塩酸
IO = 過ヨウ素酸
MeMgBr = メチルマグネシウムブロミド
MgSO = 硫酸マグネシウム
NaCO = 炭酸ナトリウム
NaCl = 塩化ナトリウム
NHCl = 塩化アンモニウム
NaBH = ナトリウムボロヒドリド
PdCl(dppf) = [1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)
PG = 保護基
rt = 室温
sat.aq.= 飽和水溶液
SiO = シリカ
TBAF = テトラブチルアンモニウムフルオリド
THF = テトラヒドロフラン
tlc = 薄層クロマトグラフィー
(Ts)O = p−トルエンスルホン酸無水物
Me = メチル
Et = エチル
【0127】
本発明の新規化合物は、適当な物質を使用して以下の一般的方法に従い製造することが可能であり、以下の具体的な実施例により更に例示される。しかし、実施例中に例示されている化合物は、本発明とみなされる唯一の属概念を構成するものと解釈されるべきではない。以下の実施例は更に、本発明の化合物の製造の詳細を例示する。当業者は、これらの化合物を製造するために以下の製造法の条件およびプロセスの公知変形を用いうると容易に理解するであろう。特に示さない限り、すべての温度は摂氏度である。
【0128】
実施例12およびスキーム1に記載のとおり、商業的に入手可能なN−t−Boc−アスパラギン酸ベータベンジルエステルから出発して、該遊離酸を混合無水物法により活性化して(Chen,F.M.F.;Lee,Y;Steinauer,R.,Benoiton,N.L.,Can.J.Chem.1987,65,613−618を参照されたい)、ナトリウムボロヒドリドでの還元を行った。該アルコールを脱離基へと変換し、in situ環化を行い、加温してカルバマートを得た。該エステルを過剰のグリニャール試薬で処理して水溶性第三級アルコールを得た。後者をDASTで処理してフッ素化生成物を得た。環状カルバマートの加水分解および生じたアルコールのシリル化は第一級アミンを与えた。揮発性物質の共沸除去に際してイミンが生成した。1,4−ジブロモベンゼンのモノリチウム化は求核試薬を与え、これは該イミンと良好に反応して第二級アミンを与えた。該アルコールを脱保護し酸化して該酸を得た。標準的なアミド形成法は該揮発性汎用ブロモ中間体を与えた。
【0129】
【化7】

【0130】
スキーム1において得たブロモ体を、スキーム2に示すとおり、パラジウム媒介反応条件下でボロナートエステルに変換することが可能である。そして、得られたボロナートエステルはパラジウム媒介条件下でのブロミドとのカップリング後にビアリル生成物へ容易に変換される。
【0131】
【化8】

【0132】
あるいは、アリルブロミドがパラジウム触媒下でボロナートエステルに変換されうることをスキーム3に示す。パラジウム媒介反応において、このボロナートエステルを、スキーム1に記載のブロミドとカップリングさせてビアリル化合物を得ることが可能である。
【0133】
【化9】

【実施例1】
【0134】
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’[(1R)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの合成
【0135】
【化10】

【0136】
工程11−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジフルオロエタノンの製造
テトラヒドロフラン(800mL)中の1,4−ジブロモベンゼン(86.4g,366mmol)の冷却(−78℃)攪拌溶液に、n−ブチルリチウム(228mL,1.6M(ヘキサン中),366mmol)を加えた。これを−78℃で30分間攪拌し、このスラリーにエチルジフルオロアセタート(50g,402mmol)を2分間にわたり加えた。これを−78℃で1時間攪拌した。該反応を1N塩酸(250mL)でクエンチし、室温へ加温した。該媒体をメチルtert−ブチルエーテル(250mL)で希釈し、層を分離した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮した。残渣を真空下で蒸留してジフルオロケトンを白色ガラス状固体として得た。
【0137】
工程2(lR)−l−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジフルオロエタノール(Ramachandran.P.V.ら,Tet.Asym.1994.Vol.5.No.6.pp.1075−86)
実施例1の工程1において製造したケトン(2.35g,10mmol)および市販のR−アルペン・ボラン(Alpine Borane)(3.1g,12mmol)を室温で一緒に混合し、いくらかのガスの放出を伴いながら4日間攪拌した。4日後、アリコートのH NMRは該ケトンの完全消費を示した。該反応を0℃に冷却してアセトアルデヒド(168μL,3mmol)を添加した。浴を取り除き、攪拌を室温で30分間継続した。ジエチルエーテル(20mL)を加え、ついでエタノールアミン(725μL,12mmol)を加えた。該混合物を室温で1時間攪拌した。沈殿物を濾過により除去し、ペンタンで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(90%ヘキサン;10%酢酸エチルから70%ヘキサン;30%酢酸エチル)により精製して、所望の物質を無色油として得た。この時点では光学純度は確認しなかった。
【0138】
工程3−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]エチル}−L−ロイシンアミドの製造
実施例12の工程9からのN−[(lS)−l−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド(24g,53mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(15.24g,60mmol)および酢酸カリウム(16.2g,165mmol)をジオキサン(240mL)中で攪拌し、ついで窒素をピペットで15分間通気した。[1,1−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタンとの1:1複合体(PdCldppf.CHCl,2.4g,3mmol)を加え、該反応混合物を窒素雰囲気下、80℃で105分間、油浴内に含浸させた。H ΝMRのアリコートは該ブロミドの完全消費を示した。該反応液を室温に冷却させ、該溶媒のほとんどを減圧下で除去した。残渣を最少量のジクロロメタンに溶解させ、シリカゲルのパッド上で濾過した。2つの画分を集め、減圧下で濃縮して固体を得た。最も低い極性の画分を90%ヘキサンと10%ジエチルエーテルとの混合物中、室温で一晩攪拌し、高いほうの極性の画分をヘキサン中、0℃で一晩攪拌した。どちらも、純粋な物質をオフホワイト色固体として与えた。
【0139】
工程4−(l−シアノシクロプロピル)−N−((lS)−l−{4’−[4’−[(1R)−2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イル)−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの製造
実施例1の工程3のボロナートエステル(20g,40mmol)および実施例1の工程2のアリールブロミド(11.4g,48mmol)をジメチルホルムアミド(400mL)に溶解し、ついで炭酸水素ナトリウムの水溶液(60mL,120mmol)を溶解した。ついで窒素をピペットで15分間通気した。[1,1−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタンとの1:1複合体(PdCldppf.CHCl,2.4g,3mmol)を加え、該反応混合物を窒素雰囲気下、80℃で16時間、油浴内に含浸させた。ジメチルホルムアミドのほとんどを低圧(45℃、約1〜5mmHg)のロトバップ(rotovap)下で除去した。残渣を酢酸エチル(400mL)に溶解し、セライトのパッド上に濾過した。濾液を減圧下で濃縮した。残渣を約10mLのジクロロメタン内に取り、フラッシュクロマトグラフィーにより分離した。最も純粋な画分をヘキサン(100mL)中、0℃で一晩に3回、勢い良く振り、再びフラッシュ(90%ヘキサン;10%酢酸エチルから45%ヘキサン;55%酢酸エチル)に付した。揮発物質を減圧下で蒸発させた後、固体をヘキサン中で2日間攪拌した。該生成物は尚もピナコールの4%を含有していたため、該バッチを2つに分割した。画分Aを、穏やかに加温しながら、最少量のイソプロピルアルコールに溶解した。溶液が少し曇るまでヘキサンを加え、冷却した。白色結晶が出現し、該反応を更に、15分間、0℃へ冷却した。固体を濾過により集めて、ピナコールで汚染されていない生成物を得た。画分Bを20%ジエチルエーテル、1%酢酸エチル、79%ヘキサン(100mL)中、室温で3時間攪拌した。固体を濾過により集めた。これは、H NMRによると、1%ピナコールで汚染されているに過ぎなかった。エナンチオマー過剰率をキラルAD−RH,32%アセトニトリル、68%水、0.1%ギ酸(イソクラチック)を使用して実証した(エナンチオマーに関して24分間および所望の分子に関して27分間)。(MH)ESI=528.0。
【実施例2】
【0140】
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−l−{4’−[(lS)−2.2−ジフルオロ−l−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの合成
【0141】
【化11】

【0142】
工程1(1S)−l−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジフルオロエタノールの製造
実施例1の工程1において製造したケトン(2.35g,10mmol)および市販のS−アルペン・ボラン(Alpine Borane)(3.1g,12mmol)を室温で一緒に混合し、いくらかのガスの放出を伴いながら4日間攪拌した。4日後、アリコートのH NMRは出発物質の存在を示した。更にS−アルペン・ボラン(Alpine Borane)(1mL)を加え、攪拌を更に2日間継続した。アリコートのH NMRは該ケトンの完全消費を示した。該反応を0℃に冷却してアセトアルデヒド(393μL,7mmol)を添加した。浴を取り除き、攪拌を室温で30分間継続した。ジエチルエーテル(20mL)を加え、ついでエタノールアミン(966μL,16mmol)を加えた。該混合物を室温で1時間攪拌した。沈殿物を濾過により除去し、ペンタンで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(90%ヘキサン;10%酢酸エチルから70%ヘキサン;30%酢酸エチル)により精製して、所望の物質を無色油として得た。
【0143】
工程2−(l−シアノシクロプロピル)−N−((lS)−l−{(4’−[(1S)−2.2−ジフルオロ−l−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イルl−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの製造
実施例1の工程3のボロナートエステル(200mg,0.40mmol)および実施例2の工程1のアリールブロミド(114mg,0.48mmol)を実施例1の工程4と同様に処理して白色固体を得た。(MH)ESI=528.0。
【実施例3】
【0144】
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(2.2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【化12】

工程1l−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノールの製造
1.9mLのメタノール中の市販の4’−ブロモ−2,2,2−トリフルオロアセトフェノン(100mg)の室温の溶液に、ナトリウムボロヒドリド(15mg)を加えた。該混合物を室温で一晩攪拌した。水を加え、メチルtert−ブチルエーテル(3×20mL)で抽出し、水およびブラインで洗浄した。それを硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去して表題化合物を得、それをそのまま次工程で使用した。
【0145】
表題化合物のH ΝMR(CDCl)δ(ppm):7.55(2H,d),7.35(2H,d),4.92−5.05(1H,m),3.2O(1H,s)。
【0146】
工程2−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド
DMF(4mL)、実施例1の工程3に記載のN−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−l,3,2−ジオキサボラン−2−イル)フェニル]エチル}−L−ロイシンアミド(150mg)、実施例3の工程1からのl−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノール(92mg)および2M NaCO(750μL)の溶液内に窒素流を15分間通過させ、ついで[1,1−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタンとの1:1複合体(12mg)を加えた。該混合物を窒素下、80℃へ3時間加温した。該混合物を室温に冷却し、氷(20g)および飽和水性炭酸水素ナトリウム(20mL)内に注ぎ、ジエチルエーテル中の50%酢酸エチルで抽出した(3×50mL)。合わせた抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を除去して残渣を得、これを、溶離液として酢酸エチルおよびヘキサン(20〜50%)を使用するSiOクロマトグラフィーにより精製し、ついでジエチルエーテルおよびヘキサンを使用してトリチュレーションを行って表題化合物を得た。
【0147】
H NMR(CDCOCD)δ(ppm):8.18(1H,s),7.60−7.70(4H,m),7.50−7.55(1H,m),7.33(1H,d),7.28(1H,d),6.40(1H,bs),4.38−4.48(1H,m),3.56(IH,t),2.67−2.69(IH,m),1.92−2.01(2H,m),1.45−1.46(10H,m),1.05−1.11(3H,m),0.92−0.99(1H,m),0.56−0.60(2H,m),0.36−0.38(2H,m)。
【実施例4】
【0148】
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[(lS)−3,3,3−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミドおよびN−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[(1R)−3,3,3−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミドの合成
【0149】
【化13】

【0150】
工程12−(4−ブロモフェニル)−4,4,4−トリフルオロブタン−2−オールの製造
−78℃のTHF(50mL)中の1,4−ジブロモベンゼン(2.5g,10.6mmol)の溶液にn−BuLi(6.5mL,10.4mmol;1.6M(ヘキサン中))を加え、該混合物を−78℃で15分間攪拌した。ついで4,4,4−トリフルオロ−2−ブタノン(1.3g,10.3mmol)を加えた。更に15分間の攪拌後、該混合物を水性NHClでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。コンビ−フラッシュクロマトグラフィー(40gカラム;20分のうちにヘキサン−酢酸エチル(10%−20%)での溶出;流速:35mL/分および18mL/画分で収集)による精製は表題化合物を淡褐色液として与えた。
【0151】
H NMR(CDCOCD)δ(ppm):7.5(4H,m),4.64(1H,s),1.64(3H,s)。
【0152】
工程2−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[(lS)−3,3,3−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミドおよびN−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2.2−トリフルオロ−l−{4’−[(1R)−3,3,3−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミドの製造
DMF(5mL)、実施例1の工程3に記載のN−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−l,3,2−ジオキサボラン−2−イル)フェニル]エチル}−L−ロイシンアミド(150mg)、実施例4の工程1からの2−(4−ブロモフェニル)−4,4,4−トリフルオロブタン−2−オール(100mg)および2M NaCO(360μL)の溶液内に窒素流を15分間通過させ、ついで[1,1−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタンとの1:1複合体(5mg)を加えた。該混合物を窒素下、80℃へ3時間加温した。該混合物を室温に冷却し、氷(20g)および飽和水性炭酸水素ナトリウム(20mL)内に注ぎ、ジエチルエーテル中の50%酢酸エチルで抽出した(3×50mL)。合わせた抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を除去して残渣を得、これを、自動化勾配ポンプ系CombiFlash(酢酸エチル/ヘキサン,25分間で20:80から50:50)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、ついでジエチルエーテルおよびヘキサンを使用してトリチュレーションを行って2つのジアステレオマーの混合物を得た。
【0153】
分離のために、N−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(3,3,3−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルプロピル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの2つのジアステレオマーの混合物の200μL溶液(30% 2−プロパノールおよび67%ヘキサン中で50μg/μLの濃度)を、溶媒としてのヘキサン中の33% 2−プロパノール、6mL/分の流動および260nmでの検出を用いてChiralcel OD,250×20mm(OD00C−CK004)上に注入した。数回の注入後、N−(l−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−l−{4’−[(1R)−2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシ−1−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2.2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドが第1溶出画分から単離され、N−(l−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−l−{4’−[(1S)−2,2−ジフルオロ−l−ヒドロキシ−1−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2.2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドが第2溶出画分から単離された。
【0154】
第1溶出ジアステレオマー:1H ΝMR(CDCOCD)δ(ppm):8.19(1H,s),7.74−7.68(6H,m),7.57(2H,d),4.60(1H,s),4.42−4.36(1H,m),3.57−3.53(1H,m),2.78−2.88(2H,m),1.94−2.00(2H,m),1.73(3H,s),1.49−1.31(8H,m),1.07−1.13(IH,m),1.00−0.90(1H,m)。トリフルオロエチルアミンのNHは観察されなかった。(MH)APCI=573.9。立体化学は定かでない。
【0155】
第2溶出ジアステレオマー:1H NMR(CDCOCD)δ(ppm):8.19(1H,s),7.74−7.68(6H,m),7.57(2H,d),4.60(1H,s),4.42−4.36(1H,m),3.57−3.53(1H,m),2.78−2.88(2H,m),1.94−2.00(2H,m),1.73(3H,s),1.49−1.31(8H,m),1.07−1.13(1H,m),1.00−0.90(1H,m)。トリフルオロエチルアミンのNHは観察されなかった。(MH)APCI=574.立体化学は定かでない。
【実施例5】
【0156】
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(R)−(2,2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0157】
【化14】

【0158】
工程1(R)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4−(4,5,5−テトラメチル−l,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]エタノールの製造
DMF(80mL)中の(R)−l−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオエタノール(2.26g,8.86mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(2.9g,11mmol)および酢酸カリウム(3g,30mmol)の懸濁液に窒素を15分間通気させた。[1,1−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタンとの1:1複合体(362mg,0.44mmol)を加え、再び窒素を10分間通気した。該反応混合物を85℃で2時間攪拌し、氷および水上に注ぎ、酢酸エチル(2×80mL)で抽出した。合わせた抽出物を飽和NaCl溶液で洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン,25分間で5:95から20:80へ、ついで20:80で5分間)により精製して表題生成物を得た。
【0159】
H ΝMR(CDCOCD)δ(ppm):7.8(2H,d),7.55(2H,d),5.9(1H,OH),5.2−5.3(1H,m),1.3(12H,s)。
【0160】
工程2−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2.2.2−トリフルオロ−l−[4’−(R)−(2,2.2−トリフルオロ−l−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの製造
実施例5の工程1からのボロナートエステル(250mg,0.83mmol)および実施例12の工程9からのN−[(lS)−l−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド(374mg,0.83mmol)を実施例1の工程4と同様にカップリングさせて表題化合物をオフホワイト色粉末として得た。
【0161】
H NMR(CDCOCD)δ(ppm):8.1−8.2(1H,bs),7.75−7.8(4H,m),7.7(2H,m),7.6(2H,m),5.9(1H,m),5.25−5.35(1H,m),4.35(1H,m),3.5−3.6(1H,m),1.9−2.1(2.H,m),1.2−1.6(8H,m),0.9−l.l(2H,m);NHは観察されず。(MH)ESI=545.8。
【実施例6】
【0162】
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((lS)−2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−[2.2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミドの合成
【0163】
【化15】

【0164】
工程12−(4−ブロモフェニル)−l,l.l,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オールの製造
テトラヒドロフラン(100mL)中のジブロモベンゼン(4.7g)の−78℃の溶液に、n−ブチルリチウム(8mL;2.5M(ヘキサン中))を加え、該混合物を15分間攪拌した。ついで穏やかなヘキサフルオロアセトン流を該懸濁液に15分間通過させた。ついで該混合物を1時間反応させた。それを氷および希塩化アンモニウム内に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、最小限度の加熱により該溶媒を減圧下で除去した。溶分液として10%酢酸エチル/90%ヘキサンを使用して、残渣を短いSiO吸着床に通過させて該第三級アルコールを得た。
【0165】
H ΝMR(CDCOCD)δ(ppm):7.75−7.8(4H,s),7.65(1H,OH)。
【0166】
工程2−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−{4’−2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミドの製造
実施例1の工程3に記載のN−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−l,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]エチル}−L−ロイシンアミド(220mg,0.44mmol)および実施例6の工程1からのブロミド(323mg,1mmol)を実施例1の工程4と同様にカップリングさせて表題化合物を泡状物として得た。
【0167】
H NMR(CDCOCD)δ(ppm):8.2(1H,bs),7.85−7.95(4H,m),7.75−7.8(2H,d),7.6(2H,d),7.55(1H,OH),4.4(1H,m),3.55(1H,m),2.8−2.9(1H,m),1.9−2.1(2H,m),1.4−1.5(6H,m),1.3−1.4(2H,m),1.1(1H,m),0.95(1H,m)。(MH)ESI=614.1。
【実施例7】
【0168】
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−l−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−l−ヒドロキシ−l−メチルエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0169】
【化16】

【0170】
工程12−(4−ブロモフェニル)−1,1,l−トリフルオロプロパン−2−オールの製造
ジエチルエーテル(8mL)中の市販のl−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン(1g,4mmol)を−78℃に冷却して、市販のメチルマグネシウムブロミド(2.65mL,7.9mmol,3M(ジエチルエーテル中))を加えた。曇った反応媒体を室温にし、一晩攪拌した。該反応混合物を、1.2M 塩酸(20mL)を含有する分液漏斗に移した。この水層を酢酸エチル(30mL)で3回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた透明な油は、更に精製することなく使用するのに十分な程度に純粋であった。
【0171】
工程2N’−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの製
実施例1の工程3のボロナートエステル(250mg)および実施例7の工程1からのブロミド(150mg)を実施例1の工程4と同様にカップリングさせて表題化合物を白色粉末として得た。
【0172】
(MH)ESI=560。
【実施例8】
【0173】
−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)プロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミドの合成
【0174】
【化17】

【0175】
工程12−(4−ブロモフェニル)−1,1,1−トリフルオロブタン−2−オールの製造
−78℃のTHF(50mL)中の1,4−ジブロモベンゼン(2.5g,10.6mmol)の溶液にn−BuLi(6.5mL,10mmol;1.6M(ヘキサン中))を加え、該混合物を−78℃で15分間攪拌した。ついで1,1,1−トリフルオロ−2−ブタノン(1.3g,10mmol)を加えた。更に15分間の攪拌後、該混合物を水性NHClでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。コンビ・フラッシュクロマトグラフィー(40gカラム;20分のうちにヘキサン−酢酸エチル(10%−20%)で溶出;流速:35mL/分および18mL/画分で収集)による精製は表題化合物を無色液体として与えた。
【0176】
H NMR(CD3COCD3)δ(ppm):7.58(m,5H),5.52(s,1H),2.28(m,1H),2.10(m,1H)。
【0177】
工程2−(l−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((lS)−2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)プロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミドの製造
実施例1の工程3のボロナートエステル(150mg)および実施例8の工程1からのブロミド(100mg)を実施例1の工程4と同様にカップリングさせて表題化合物を白色粉末として得た。
【0178】
(MH)ESI=574。
【実施例9】
【0179】
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1R)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドおよびN−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−l−{4’−[(1S)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの合成
【0180】
【化18】

【0181】
工程12−(4−ブロモフェニル)−1,1−ジフルオロプロパン−2−オールの製造
THF(60mL)中の1−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジフルオロエタノン(2.5g,10.6mmol)の溶液に、メチルマグネシウムクロリド(10mL,30mmol;3M(THF中))を0℃で〜10分にわたり加え、該混合物を0℃で1時間攪拌した。小規模な後処理は出発物質の残存を示し、更にメチルマグネシウムクロリド(5mL,15mmol,3M(THF中))を加えた。更に15分間攪拌した後、該混合物をHOでクエンチし、1M HCl(100mL)で注意深く酸性化し、酢酸エチルで抽出した。コンビ・フラッシュクロマトグラフィー(120gカラム;20分のうちにヘキサン−酢酸エチル(5%−25%)で溶出;流速:70mL/分および25mL/画分で収集)による精製は表題化合物を無色液体として与えた。
【0182】
H ΝMR(CD3COCD3)δ(ppm):7.54(m,4H),5.86(t,1H),5.10(s,1H),1.64(s,3H)。
【0183】
工程2−(l−シアノシクロプロピル)−N−{(lS)−1−[4’−(2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ビフェニル−4−イル]−2,2,2−トリフルオロエチル}−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの製造
実施例1の工程3のボロナートエステル(2.5g)および実施例9の工程1からのブロミド(1.6mg)を実施例1の工程4と同様にカップリングさせてジアステレオマーの混合物を白色粉末として得た。
【0184】
工程3ジアステレオマーの分離
実施例9の工程2からの1:1ジアステレオマー混合物(80mg)をエタノール(2mL)に溶解した。該化合物混合物を、6mL/分の流速でヘキサン中の32.5% 2−プロパノールで溶出するキラルセル(Chiralcel)ODセミ分取カラム(2cm I.D.×25cm)への〜10回の注入(10×200μL)により分割した。21〜23分の時点で溶出した早期溶出画分をプールし、濃縮して、N−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1R)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドを白色粉末として得た(98% d.e.)。立体化学は定かでない。
【0185】
(MH)ESI=542。
【0186】
〜25分の時点で溶出した遅溶出画分をプールし、濃縮して、N−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1S)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドを白色粉末として得た(98% d.e.)。立体化学は定かでない。
【0187】
(MH)ESI=542。
【実施例10】
【0188】
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1S)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの合成
【0189】
【化19】

【0190】
工程11−ブロモ−4−[1−(ジフルオロメチル)ビニル]ベンゼン
1Lフラスコ内の活性化亜鉛末(13.3g,0.2mol)にTHF(200mL)を加えた。ジヨードメタン(8.9mL,110mmol)を〜10分かけて滴下した。該混合物を室温で30分間攪拌した。該混合物を氷−アセトン浴で冷却し、CHCl中のスズ(iv)クロリド1M(22.1mL,22.1mmol)を〜15分にわたって加えた(該混合物内に針先端を挿入した)。該混合物を15分間攪拌し、冷浴を取り外した。該混合物を室温で30分間攪拌した。氷−アセトン浴で再び冷却した後、THF(30mL)中の1−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジフルオロエタノン(5.2g,22.12mmol)の溶液を〜10分にわたって滴下した。冷浴を取り外し、該混合物を室温で30分間攪拌した。ついで該混合物を0℃で、炭酸水素ナトリウム(300mL,300mmol)とヘキサン(300mL)との混合物に、分割して注いだ。15分間の攪拌の後、該混合物をセライトで濾過した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーおよびヘキサン:酢酸エチル(20:1)での溶出は表題化合物を淡黄色液体として与えた。
【0191】
H NMR(CD3COCD3)δ(ppm):7.60(d,2H),7.50(d,2H),6.70(t,1H),5.92(s,1H),5.80(s,1H)。
【0192】
工程2(2S)−2−(4−ブロモフェニル)−3,3−ジフルオロプロパン−1,2−ジオールの製造
市販のAD−ミックス(mix)−アルファ(7g)を充填した250mLフラスコにtert−ブチルアルコール(25mL)およびHO(25mL)を加えた。該混合物を室温で攪拌して2つの透明な相を得、低い相は黄オレンジ色になった。0℃に冷却した後、1−ブロモ−4−[1−(ジフルオロメチル)ビニル]ベンゼン(1.1g,4.7mmol)を一度に加え、該混合物を約4℃で一晩攪拌した。明るい黄色の混合物が生じた。該混合物を0℃に維持し、固体亜硫酸ナトリウム(8g,64mmol)を加えた。該混合物を室温に加温し、30分間攪拌した。酢酸エチル(50mL)を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチル(2×10mL)で抽出した。合わせた酢酸エチル抽出物を乾燥させ(NaSO)、濃縮した。コンビ・フラッシュ(40gカラム;25分のうちにヘキサン−酢酸エチル(20%−60%)で溶出;流速:35mL/分および18mL/画分で収集)による精製は表題化合物を無色油として与えた。
【0193】
H NMR(CD3COCD3)δ(ppm):7.56(s,4H),6.14(t,1H),5.00(s,1H),4.40(t,1H),4.00(m,1H),3.80(m,1H)。
【0194】
工程3−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1S)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの製造
実施例1の工程3のボロナートエステル(900mg)および実施例10の工程2からのブロミド(450mg)を実施例1の工程4と同様にカップリングさせて表題化合物を白色粉末として得た。
【0195】
エステルモノ−ホスホナート誘導体(Yves Leblancら,Tetrahedron Asymmetry 2001,12,3063−3066)を光学純度測定のために製造した(94% d.e.;Chiralpak AD,ヘキサン中の40% 2−プロパノール、流速1mL/分;保持時間7.4分)。
【0196】
H NMR(CD3COCD3)δ(ppm):8.15(s,1H),7.70(m,6H),7.55(d,2H),6.20(t,1H),4.92(s,1H),4.35(m,2H),4.08(m,1H),3.85(m,1H),3.52(m,1H),1.98(m,2H),1.50−1.28(m,8H),1.05(m,1H),0.90(m,1H)。
【実施例11】
【0197】
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’[(1R)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの合成
【0198】
【化20】

【0199】
工程1(2R)−2−(4−ブロモフェニル)−3,3−ジフルオロプロパン−1,2−ジオールの製造
市販のAD−ミックス(mix)−アルファ(7g)を充填した250mLフラスコにt−BuOH(25mL)およびHO(25mL)を加えた。該混合物を室温で攪拌して2つの透明な相を得、低い相は黄オレンジ色になった。0℃に冷却した後、1−ブロモ−4−[1−(ジフルオロメチル)ビニル]ベンゼン(1.1g,4.7mmol)を一度に加え、該混合物を約4℃で一晩攪拌した。明るい黄色の混合物が生じた。該混合物を0℃に維持し、固体亜硫酸ナトリウム(8g,64mmol)を加えた。該混合物を室温に加温し、30分間攪拌した。酢酸エチル(50mL)を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチル(2×10mL)で抽出した。合わせた酢酸エチル抽出物を乾燥させ(NaSO)、濃縮した。組合せ(combined)フラッシュ(40gカラム;25分のうちにヘキサン−酢酸エチル(20%−60%)で溶出;流速:35mL/分および18mL/画分で収集)による精製は表題化合物を無色油として与えた。
【0200】
H NMR(CD3COCD3)δ(ppm):7.56(s,4H),6.14(t,1H),5.00(s,1H),4.40(t,1H),4.00(m,1H),3.80(m,1H)。
【0201】
工程2−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1R)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの製造
実施例1の工程3のボロナートエステル(1.5g)および実施例11の工程1からのブロミド(740mg)を実施例1の工程4と同様にカップリングさせて表題化合物を白色粉末として得た。
【0202】
エステルモノ−ホスホナート誘導体(Yves Leblancら,Tetrahedron Asymmetry 2001,12,3063−3066)を光学純度測定のために製造した(94% d.e.;Chiralpak AD,ヘキサン中の40% 2−プロパノール、流速1mL/分;保持時間11.1分)。
【0203】
H NMR(CD3COCD3)δ(ppm):8.15(s,1H),7.70(m,6H),7.55(d,2H),6.20(t,1H),4.92(s,1H),4.35(m,2H),4.08(m,1H),3.85(m,1H),3.52(m,1H),1.98(m,2H),1.50−1.28(m,8H),1.05(m,1H),0.90(m,1H)。
【実施例12】
【0204】
−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの合成
【0205】
【化21】

【0206】
工程1:ベンジル (3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−ヒドロキシブタノアートの製造
Ν−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アスパラギン酸 4−ベンジルエステル(30g)をジメトキシエタン(90mL)に溶解し、該溶液を−5℃に冷却した。N−メチルモルホリン(10.32mL)を加え、ついで、反応温度が−10℃未満に維持されるよう、イソブチルクロロホルマート(12.66mL)をゆっくり加えた。該混合物を0.5時間熟成させた。該固体を素早く濾過し、ジメトキシエタン(90mL)で洗浄した。濾液を−50℃に冷却し、反応温度が−30℃〜−15℃に維持されるよう水(45mL)中のナトリウムボロヒドリド(4.4g)の溶液をゆっくり加えた。ついで、反応混合物が−15℃未満に維持されるよう水(500mL)を加えた。該懸濁液を濾過し、固体を水(400mL)で洗浄し、乾燥させてベンジル (3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−ヒドロキシブタノアートを得た。
【0207】
H NMR (CDCOCD)δ7.3−7.45(5H,m),5.85−5.95(1H,NH),5.15(2H,s),3.95−4.1(2H,m),3.5−3.7(2H,m),2.55−2.75(2H,m),1.4(9H,s)。
【0208】
工程2ベンジル [(4S)−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−イル]アセタートの製造
ジクロロエタン(925mL)中の工程1からのアルコール(95.7g)の溶液にピリジン(625mL)を加え、該混合物を0〜5℃に冷却した。無水p−トルエンスルホン酸無水物(105.7g)を加え、該混合物を室温へ加温し、1時間攪拌し、ついで90℃へ2時間加熱した。該混合物を冷却し、ジクロロメタン(1000mL)で希釈し、1N HCl(3×600mL)で洗浄した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空中で除去した。残渣を、酢酸エチルおよびヘキサンを1:1の比で使用し次いで酢酸エチルを使用するSiOクロマトグラフィーにより精製して、ベンジル [(4S)−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−イル]アセタートを得た。
【0209】
H NMR(CDSOCD)δ7.8(IH,NH),7.3−7.45(5H,m),5.05−5.15(2H,m),4.4−4.5(1H,m),4.1−4.2(1H,m),4.0−4.05(1H,m),3.6−3.8(2H,m)。
【0210】
工程3(4S)−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1,3−オキサゾリジン−2−オンの製造
メチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中の3M溶液227mL)をトルエン(340mL)とTHF(340mL)との混合物に−20℃で加えた。ついで工程2からのエステル(40g)の暖かいTHF溶液(170mL)を、温度を−10℃未満に維持しながら滴下した。該混合物を2時間熟成させ、ついで水(1000mL)と酢酸(200mL)との混合物にゆっくり加え、得られた混合物を室温で2時間攪拌した。水層を分離し、有機層を水(2×200mL)で抽出した。ジクロロメタンおよび連続抽出器を使用して、合わせた水層から生成物を抽出した。酢酸を共沸留去するための共溶媒としてヘプタンを使用して、該ジクロロメタン抽出物を蒸発乾固させた。残渣を、エタノールおよびジクロロメタン(1:30)を使用するSiOクロマトグラフィーにより精製して、(4S)−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1,3−オキサゾリジン−2−オンを得た。
【0211】
H NMR(CDCOCD)δ 6.1−6.4(1H,NH),4.45−4.55(1H,m),4.1−4.2(1H,m),3.95−4.05(1H,m),3.7(1H,s),1.65−1.85(2H,m),1.25(6H,m)。
【0212】
工程4(4S)−4−(2−フルオロ−2−メチルプロピル)−1,3−オキサゾリジン−2−オンの製造
工程3からのアルコール(47.8g)のジクロロメタン溶液(100mL)をジクロロメタン(500mL)中の(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド(48.5g)の−70℃の溶液に加えた。該混合物を室温へ加温し、1時間攪拌した。ついで該混合物を飽和水性NaHCO(800mL)の0℃の混合物に注意深く加えた。有機層を分離し、飽和水性NaHCOで洗浄した。該水層をジクロロメタン(100mL)で更に抽出し、合わせたジクロロメタン層を乾燥させ、濃縮した。酢酸エチルおよびヘキサン(1:5)を使用し次いで酢酸エチルを使用するSiOクロマトグラフィーにより残渣を精製して、(4S)−4−(2−フルオロ−2−メチルプロピル)−1,3−オキサゾリジン−2−オンを得た。
【0213】
H NMR(CDSOCD)δ 7.6(1H,NH),4.4−4.5(1H,m),3.95−4.05(1H,m),3.9−3.95(1H,m),1.8−1.95(2H,m),1.25−1.4(6H,2s)。
【0214】
工程5(2S)−2−アミノ−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オールの製造
90% 水性エチルアルコール(216mL)中の工程4からのフルオロ誘導体(21.0g)の溶液に水酸化カリウム(21.9g)を加えた。該混合物を還流温度で4時間加熱し、室温に冷却した。ついで該混合物を濃縮し、トルエン(3×300mL)と共に同時蒸発させた。残渣をジクロロメタン(500mL)に溶解し、0.5時間攪拌した。該懸濁液をセライトで濾過し、該セライトをジクロロメタン(3×100mL)で洗浄した。濾液を濃縮乾固させて(2S)−2−アミノ−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オールを得た。
【0215】
H NMR(CDOD)δ 3.4−3.5(1H,m),3.2−3.3(1H,m),3.0−3.1(1H,m),1.5−1.7(2H,m),1.35(3H,s),1.3(3H,s)。
【0216】
工程6(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−2−アミンの製造
工程5からのアミノアルコール(21.0g)をジクロロメタン(300mL)に溶解し、該溶液を0℃に冷却した。4−(ジメチルアミノ)ピリジン(0.051g)およびtert−ブチルジメチルシリルクロリド(21g)を加え、ついでトリエチルアミン(25mL)を加えた。該混合物を室温で一晩攪拌した。該反応混合物を0℃の飽和水性アンモニウムクロリド中にゆっくり注ぎ、ジクロロメタン(3×300mL)で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空中で除去して(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−2−アミンを得た。
【0217】
H NMR(CDOD)δ 3.6−3.65(1H,m),3.4−3.5(1H,m),3.1−3.2(1H,m),1.6−1.8(2H,m),1.35−1.45(6H,m),0.93(9H,s),0.1(6H,s)。
【0218】
工程7(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−フルオロ−4−メチル−N−[(1E)−2,2,2−トリフルオロエチリデン]ペンタン−2−アミンの製造
ベンゼン(126mL)中の工程6からのアミン(31.5g)の溶液にトリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール(21.6mL)を加えた。水を集めるためにディーン・スターク(Dean−Stark)トラップを使用して、該溶液を還流温度で一晩加熱した。該反応混合物を室温に冷却し、濃縮乾固させた。4%酢酸エチルを使用してSiO上で残渣を精製して(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−2−アミンを得た。
【0219】
H NMR(CDCOCD)δ 7.9−7.95(1H,m),3.75−3.85(1H,m),3.7−3.75(1H,m),3.53−3.6(1H,m),1.9−2.0(2H,m),1.3−1.4(6H,m),0.9(9H,s),0.1(3H,s),0.05(3H,s)。
【0220】
工程8(2S)−2−{[(1S)−l−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オールの製造
THF(4mL)中の1,4−ジブロモベンゼン(0.26g)の−75℃の溶液にn−BuLi(0.42mLの2.5Mヘキサン溶液)を加え、該混合物を20分間熟成させた。THF(2mL)中の工程7からのイミン(0.329g)を加え、該混合物を2時間熟成させた。ついで該混合物を水(50mL)、NHCl(1g)および粉砕氷の混合物に加えた。それを酢酸エチル(2×25mL)で抽出し、合わせた酢酸エチル層を乾燥させ、蒸発乾固させた。
【0221】
1,4−ジブロモベンゼン(1.2g)、n−BuLi(1.84mL)および該イミン(1.38g)を使用して、より大きな規模で同じ方法を繰返し、該反応混合物を前記のとおりに処理した。両方の調製物からの合わせた残渣をTHF(10mL)に溶解し、0℃に冷却した。n−テトラブチルアンモニウムフルオリド(1M THF溶液からの6mL)を加え、該混合物を+5℃で16時間攪拌した。該混合物を水(50mL)、アンモニウムクロリド(1g)および粉砕氷の混合物中に注ぎ、有機層を分離した。水層を更に酢酸エチル(2×15mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥させ、濃縮した。酢酸エチルおよびヘキサン(1:5)を使用してSiO上で残渣を精製して(2S)−2−{[(1S)−l−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オールを得た。
【0222】
H NMR(CDCOCD)δ 7.65(2H,m),7.5(2H,m),4.5−4.6(1H,m),3.8(1H,m),3.6(1H,m),3.3−3.4(1H,m),2.85−2.0(1H,m),2.55(1H,m),1.7−1.9(2H,s),1.3−1.4(6H,m)。
【0223】
工程9−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの製造
IO/CrO(CHCN中の0.44Mの6mL;(注)を参照されたい)の懸濁液を0℃に冷却し、CHCN(5mL)中の工程8からのアルコール(1.55g)の溶液を滴下した。該混合物を0〜5℃で3.5時間攪拌した。それを、激しく攪拌しながら、pH4のNaHPO(200mL)中に注ぎ、該混合物をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせたエーテル抽出物を水およびブライン(1:1)で、ついで希水性NaHSOおよびブラインで洗浄した。該混合物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発乾固させてN−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−4−フルオロ−L−ロイシンを得、これをそのまま次工程で使用した。
【0224】
(注):該酸化剤(HIO/CrO)は、水を加えずHPLC等級のCHCN(0.5%の水を含有)を使用した以外はTetrahedron Letters 39(1998)5323−5326に記載されているとおりに調製した。
【0225】
前記の酸(1.5g)、1−アミノ−1−シクロプロパンカルボニトリル塩酸塩(1.18g)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート(1.94g)およびジメチルホルムアミド(5mL)の0℃の懸濁液にジイソプロピルエチルアミン(4.2mL)を加え、該混合物を室温で48時間反応させた。ついでそれを氷および希水性アンモニウムクロリド上に注いだ。該混合物を酢酸エチルおよびエーテル(1:1)で抽出し、合わせた有機層をpH3の希NaHPOおよびブラインで洗浄した。溶媒を蒸発乾固させ、酢酸エチルおよびヘキサン(1:2)を使用するSiOクロマトグラフィーにより残渣を精製して、次工程のために十分な純度状態でN−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドを得た。
【0226】
H ΝMR(CDCOCD)δ 8.15(1H,NH),7.6(2H,m),7.45(2H,m),4.35−4.45(1H,m),3.45−3.55(1H,m),1.9−2.1(2H,m),1.75−1.85(1H,NH),1.35−1.55(8H,m),1.1−1.15(1H,m),0.95−1.05(1H,m)。
【0227】
医薬組成物
本発明の特定の実施形態として、100mgの(1R,2R)−N−(シアノメチル)−5,5−ジフルオロ−2−[4’−(メチルチオ)−1,1’−ビフェニル−2−イル]シクロヘキサンカルボキサミドを、十分に細かく微細化されたラクトースで製剤化して合計580〜590mgを得、これをサイズ0の硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0228】
本出願において開示されている化合物は以下のアッセイにおいて活性を示した。また、本出願において開示されている化合物は、これまでに開示されている化合物と比べて向上した薬理学的プロファイルを有する。
【0229】
カテプシンKアッセイ
500μMから0.0085μMへと下がる、試験化合物の系列希釈物(1/3)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製した。ついで各希釈物からの2μLのDMSOを50μLのアッセイバッファー(MES,50mM(pH5.5);EDTA,2.5mM;DTT,2.5mMおよび10%DMSO)、およびアッセイバッファー溶液中の25μLのヒトカテプシンK(0.4nM)に加えた。該アッセイ溶液をシェーカープレート上で5〜10秒間混合し、室温で15分間インキュベートした。25μLのアッセイバッファー中のZ−Leu−Arg−AMC(8μM)を該アッセイ溶液に加えた。クマリン脱離基(AMC)の加水分解を行った後、分光蛍光分析(Exλ=355nm;Emλ=460nm)を10分間行った。用量反応曲線に関する標準的な数学モデルに実験値を当てはめることにより、抑制率(%)を計算した。
【0230】
カテプシンLアッセイ
500μMから0.0085μMへと下がる、試験化合物の系列希釈物(1/3)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製した。ついで各希釈物からの2μLのDMSOを50μLのアッセイバッファー(MES,50mM(pH5.5);EDTA,2.5mM;DTT,2.5mMおよび10%DMSO)、およびアッセイバッファー溶液中の25μLのヒトカテプシンL(0.5nM)に加えた。該アッセイ溶液をシェーカープレート上で5〜10秒間混合し、室温で15分間インキュベートした。25μLのアッセイバッファー中のZ−Leu−Arg−AMC(8μM)を該アッセイ溶液に加えた。クマリン脱離基(AMC)の加水分解を行った後、分光蛍光分析(Exλ=355nm;Emλ=460nm)を10分間行った。用量反応曲線に関する標準的な数学モデルに実験値を当てはめることにより、抑制率(%)を計算した。
【0231】
カテプシンBアッセイ
500μMから0.0085μMへと下がる、試験化合物の系列希釈物(1/3)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製した。ついで各希釈物からの2μLのDMSOを50μLのアッセイバッファー(MES,50mM(pH5.5);EDTA,2.5mM;DTT,2.5mMおよび10%DMSO)、およびアッセイバッファー溶液中の25μLのヒトカテプシンB(4.0nM)に加えた。該アッセイ溶液をシェーカープレート上で5〜10秒間混合し、室温で15分間インキュベートした。25μLのアッセイバッファー中のZ−Leu−Arg−AMC(8μM)を該アッセイ溶液に加えた。クマリン脱離基(AMC)の加水分解を行った後、分光蛍光分析(Exλ=355nm;Emλ=460nm)を10分間行った。用量反応曲線に関する標準的な数学モデルに実験値を当てはめることにより、抑制率(%)を計算した。
【0232】
カテプシンSアッセイ
500μMから0.0085μMへと下がる、試験化合物の系列希釈物(1/3)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製した。ついで各希釈物からの2μLのDMSOを50μLのアッセイバッファー(MES,50mM(pH5.5);EDTA,2.5mM;DTT,2.5mMおよび10%DMSO)、およびアッセイバッファー溶液中の25μLのヒトカテプシンS(20nM)に加えた。該アッセイ溶液をシェーカープレート上で5〜10秒間混合し、室温で15分間インキュベートした。25μLのアッセイバッファー中のZ−Leu−Arg−AMC(8μM)を該アッセイ溶液に加えた。クマリン脱離基(AMC)の加水分解を行った後、分光蛍光分析(Exλ=355nm;Emλ=460nm)を10分間行った。用量反応曲線に関する標準的な数学モデルに実験値を当てはめることにより、抑制率(%)を計算した。
【0233】
ラットにおける薬物動態学
ラットにおける経口(PO)薬物動態学
方法:
Guidelines of the Canadian Council on Animal Careに従い、該動物を収容し、飼育し、世話する。
【0234】
雄Sprague Dawleyラット(250〜400g)を各PO血中レベル研究の前に一晩絶食させる。
【0235】
該ラットを監禁箱(restrainer)内に一緒に配置し、該箱をしっかりと閉じる。尾部先端への小さな(1mm以下)孔の穿刺によりゼロ血液サンプルを得る。ついで該尾部を先端から根本へのしっかりした穏やかな動きでさすって、尾部から血液を搾り出す。約0.5mLの血液をヘパリン化バキュテーナーチューブ内に集める。
【0236】
化合物を、必要に応じて、10mL/kgの標準投与容量で調製し、食道内への16ゲージの3”ガバージュ針に通して経口投与する。
【0237】
後続の血液採取は、尾部への再度の穿刺の必要が無いこと以外はゼロ血液サンプルと同様に行う。該尾部を1片のガーゼで清潔にし、適切に表示されたチューブ内に、前記と同様にしてさすって絞り入れる。
【0238】
サンプリングの直後に、血液を遠心し分離し、血漿を、明確に表示されたバイアル内に入れ、分析時まで冷凍庫内に保存する。
【0239】
PO投与後のラット血中レベルの測定のための典型的な時点は以下のとおりである。
0、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、24時間。
【0240】
4時間の時点での採血の後、任意量の食物をラットに与える。該研究中、水は常時与える。
【0241】
ビヒクル
POラット血中レベル測定においては、以下のビヒクル(対応する用量体積のもの)を使用することが可能である。
PEG 200/300/400(水中、0〜60%): 10mg/kg以下
メトセル(Methocel)(水中、0.5%〜1.0%):10mg/kg以下
Tween 80(水中、1〜10%): 10mL/kg以下
PO血中レベルのための化合物は懸濁形態でありうる。より良好な均一性のためには、該懸濁液をソニケーター内に約5分間配置することが可能である。
【0242】
分析のためには、アリコートを、所望により内部標準を含有していてもよい1.2〜1.5容量のアセトニトリルで希釈し、遠心分離してタンパク質沈殿物を除去する。上清をC−18 HPLCカラム上に直接的に注入し、それと共に質量分析(MS)または紫外線吸光度(UV)または蛍光(Fluo)検出を行う。所望により内部標準を含有していてもよいアセトニトリル中に既知量の薬物を含有する清潔な血液サンプルを使用して作成した標準曲線に対して定量化を行う。所望により内部標準を含有していてもよい追加的なアセトニトリルを加えて、該サンプルの場合に行ったものに対応する初期血液量の1.2〜1.5容量にする。i.v.とp.o.とで曲線下面積(AUC)を比較することにより、バイオアベイラビリティ(F)を評価する。
【0243】
【数1】

および
AUC=(C1+C2)(T2−T1)/2
式中、Cは、与えられた時間TにおけるMSまたはUVまたはFluoによる測定濃度である。
【0244】
ラットにおける静脈内薬物動態学
方法:
Guidelines of the Canadian Council on Animal Careに従い、該動物を収容し、飼育し、世話する。
【0245】
雄Sprague Dawleyラット(325〜375g)非絶食ラットをこれらの研究において使用する。
【0246】
化合物は、必要に応じて、1mL/kgの標準投与容量で調製する。
【0247】
静脈内投与のための、意識のあるラットへの投与は、25ゲージ針を使用して頚動脈を介して行う。これがゼロ時点となる。
【0248】
尾部先端への孔(1〜2mm)の穿刺により5分の採血を行う。ついで該尾部を先端から根本へのしっかりした穏やかな動きでさすって、尾部から血液を搾り出す。約0.5mLの血液をヘパリン化収集バイアル内に集める。後続の血液採取は、尾部への再度の穿刺の必要が無いこと以外は同様に行う。該尾部を1片のガーゼで清潔にし、適切に表示されたチューブ内に、前記と同様にしてさすって絞り入れる。
【0249】
I.V.投与後のラット血中レベルの測定のための典型的な時点は以下のとおりである。
0、5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、
または
0、5分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、24時間。
【0250】
ビヒクル
IVラット血中レベル測定においては、以下のビヒクルを使用することが可能である。
デキストロース: 1mL/kg
Moleculosol 25%: 1mL/kg
DMSO(ジメチルスルホキシド): 動物1kg当たり0.1mLまでの用量体積の10%に制限
PEG 200: 20%無菌水と混合されて80%以下 − 1mL/kg。
【0251】
デキストロースの場合、溶液が濁っている場合にはいずれかの炭酸水素ナトリウムを加えることが可能である。
【0252】
分析のためには、アリコートを、所望により内部標準を含有していてもよい1.2〜1.5容量のアセトニトリルで希釈し、遠心分離してタンパク質沈殿物を除去する。上清をC−18 HPLCカラム上に直接的に注入し、それと共に質量分析(MS)または紫外線吸光度(UV)または蛍光(Fluo)検出を行う。所望により内部標準を含有していてもよいアセトニトリル中に既知量の薬物を含有する清潔な血液サンプルを使用して作成した標準曲線に対して定量化を行う。所望により内部標準を含有していてもよい追加的なアセトニトリルを加えて、該サンプルの場合に行ったものに対応する初期血液量の1.2〜1.5容量にする。i.v.とp.o.とで曲線下面積(AUC)を比較することにより、バイオアベイラビリティ(F)を評価する。
【0253】
【数2】

および
AUC=(C1+C2)(T2−T1)/2
式中、Cは、与えられた時間TにおけるMSまたはUVまたはFluoによる測定濃度である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、RおよびRは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、所望によりC1−3アルキルで置換されていてもよいC3−4シクロアルキルを形成し;
は、1〜4個のフルオロまたは1〜4個のクロロで置換されたC1−6アルキルであり;
は、1〜5個のハロで置換されたC1−6アルキルであり;
は水素でありまたは所望により1〜5個のハロで置換されていてもよいC1−6アルキルであり;
各Dは、独立して、アリールまたはヘテロアリールであり;
は水素でありまたは1〜2個のヒドロキシルまたは2〜6個のハロで置換されていてもよいC1−6アルキルであり;
は、所望により2〜5個のハロで置換されていてもよいC1−6アルキルであり;
nは2である。)
の化合物またはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体。
【請求項2】
およびRが、これらが結合している炭素原子と一緒になって、シクロプロピルを形成している、請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体。
【請求項3】
Dがフェニルである、請求項2記載の化合物またはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体。
【請求項4】
が水素であり、RがCFである、請求項3記載の化合物またはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体。
【請求項5】
が、2個または3個のフルオロで置換されたC1−3アルキルである、請求項4記載の化合物またはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体。
【請求項6】
−(1−シアノシクロプロピル)−N−(1−{4’−[2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)プロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−N−(1−{4’−[2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−N−(1−{4’−[2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−[1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド
またはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
−(l−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1R)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1S)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[(1S)−3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[(1R)−3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(R)−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−((1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−{4’−[1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)プロピル]ビフェニル−4−イル}エチル)−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1R)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1S)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1S)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−(1−シアノシクロプロピル)−N−((1S)−1−{4’−[(1R)−2,2−ジフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド;
−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド
またはその医薬上許容される塩、立体異性体もしくはN−オキシド誘導体である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
請求項1記載の化合物と医薬上許容される担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項9】
骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、ページェット病、異常に増加した骨ターンオーバー、歯周病、歯喪失、骨折、慢性関節リウマチ、骨関節症、補装具周囲(periprosthetic)の骨溶解、骨形成不全、アテローム性動脈硬化症、肥満、緑内障、慢性閉塞性肺疾患、転移性骨疾患、悪性疾患の高カルシウム血症または多発性骨髄腫の治療を要する哺乳動物における請求項1記載の化合物の治療的有効量でのそのような治療に有用な医薬の製造における、請求項1の化合物の使用。
【請求項10】
請求項1記載の化合物と、有機ビスホスホナート、エストロゲン受容体モジュレーター、エストロゲン受容体ベータモジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、破骨細胞プロトンATPアーゼのインヒビター、HMG−CoAレダクターゼのインヒビター、インテグリン受容体アンタゴニスト、骨芽細胞同化物質、ビタミンD、合成ビタミンD類似体、非ステロイド性抗炎症薬、選択的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、インターロイキン−1ベータのインヒビター、LOX/COXインヒビター、RANKLインヒビターならびにこれらの医薬上許容される塩および混合物よりなる群から選ばれる別の物質とを含んでなる医薬組成物。
【請求項11】
骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、ページェット病、異常に増加した骨ターンオーバー、歯周病、歯喪失、骨折、慢性関節リウマチ、骨関節症、補装具周囲(periprosthetic)の骨溶解、骨形成不全、アテローム性動脈硬化症、肥満、緑内障、慢性閉塞性肺疾患、転移性骨疾患、悪性疾患の高カルシウム血症または多発性骨髄腫の治療を要する哺乳動物におけるそのような治療に有用な医薬の製造における、請求項1記載の化合物と、有機ビスホスホナート、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、破骨細胞プロトンATPアーゼのインヒビター、HMG−CoAレダクターゼのインヒビター、インテグリン受容体アンタゴニスト、骨芽細胞同化物質、ビタミンD、合成ビタミンD類似体、非ステロイド性抗炎症薬、選択的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター、インターロイキン−1ベータのインヒビター、LOX/COXインヒビター、RANKLインヒビターならびにこれらの医薬上許容される塩および混合物よりなる群から選ばれる別の物質との使用。

【公表番号】特表2008−520590(P2008−520590A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541606(P2007−541606)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001764
【国際公開番号】WO2006/056047
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】