説明

カテプシン阻害剤

本発明は、カテプシンK、L、S及びBの阻害剤を含めて、ただしこれらだけに限定されないシステインプロテアーゼ阻害剤である、下式(I)(式中、R、R、R及びRの意味は本明細書中に示されている)の新規クラスの化合物に関する。これらの化合物は、骨粗しょう症、骨関節炎、リウマチ様関節炎など骨吸収の阻害が指摘されている疾患を治療するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、タンパク質活性の阻害剤に関し、特にカテプシン阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のカテプシンがシステインプロテアーゼのパパインスーパーファミリーに属する。これらのプロテアーゼは、結合組織の正常な生理学的及び病理学的分解において機能する。カテプシンは、細胞内タンパク質分解及び代謝回転及び再構築において主要な役割を果たす。これらのカテプシンは、多種多様な組織に天然に存在する。これまで、いくつかのカテプシンが特定され、いくつかのソースによって配列決定されてきた。例えば、カテプシンB、F、H、L、K、S、W及びZがクローン化された。また、カテプシンKの配列は、参照によりその全体を本明細書に援用する、1996年5月9日に公開されたPCT出願第96/13523号、Khepri Pharmaceuticals, Inc.に見出すことができる。カテプシンLは、正常なリソソームタンパク質分解及びこれだけに限定されないが黒色腫の転移を含めたいくつかの病態に関係している。カテプシンSは、アルツハイマー病、並びに若年発症糖尿病、多発性硬化症、尋常性天ぽうそう、グレーブス病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎及び橋本甲状腺腫を含めて、ただしこれらだけに限定されないある種の自己免疫異常;喘息を含めて、ただしこれだけに限定されないアレルギー性疾患;並びに臓器移植又は組織移植片の拒絶を含めて、ただしこれらだけに限定されない同種免疫応答に関係している。腫瘍においてはカテプシンBレベルが増加し、この酵素が再分配され、腫瘍浸潤及び転移における役割が示唆される。また、異常なカテプシンB活性は、リウマチ様関節炎、骨関節炎、ニューモシスチスカリニ、急性すい炎、炎症性気道疾患、骨及び関節の障害などの病態と関係している。
【0003】
E−64(トランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド−(4−グアニジノ)ブタン)などのシステインプロテアーゼ阻害剤は、骨吸収を阻止するのに有効であることが知られている。参照によりその全体を本明細書に援用するDelaisse,J.M.等、1987、Bone 8:305−313を参照されたい。最近、カテプシンKがクローン化され、破骨細胞中で特異的に発現されることが見出された。参照によりそれら全体を援用する、Tezuka,K.等、1994、J Biol Chem 269:1106−1109;Shi,G.P.等、1995、FEBS Lett 357:129−134;Bromme,D.及びOkamoto,K.、1995、Biol Chem Hoppe Seyler 376:379−384;Bromme,D.等、1996、J Biol Chem 271:2126−2132;Drake,F.H.等、1996、J Biol Chem 271:12511−12516を参照されたい。クローニングと同時に、常染色体劣性疾患であり、骨吸収が減少する大理石骨病表現型を特徴とするピクノディスオストーシスが、カテプシンK遺伝子中に存在する変異に位置づけられた。これまで、カテプシンK遺伝子中で特定されたすべての変異は、不活性タンパク質をもたらすことが知られている。参照によりそれら全体を援用する、Gelb,B.D.等、1996、Science 273:1236−1238;Johnson,M.R.等、1996、Genome Res 6:1050−1055を参照されたい。したがって、カテプシンKは、破骨細胞によって媒介される骨吸収に関与すると考えられる。
【0004】
カテプシンKは37kDaプレプロ酵素として合成され、リソソーム区画に局在し、低pHにおいて成熟27kDa酵素におそらく自己活性化される。参照によりそれら全体を援用する、McQueney,M.S.等、1997、J Biol Chem 272:13955−13960;Littlewood−Evans,A.等、1997、Bone 20:81−86を参照されたい。カテプシンKは、アミノ酸レベルにおいて56%の配列が同一であるカテプシンSと最も密接な関係がある。カテプシンKのS基質特異性はカテプシンSのそれと類似しており、アルギニンなどの正に帯電した残基及びフェニルアラニン、ロイシンなどの疎水性残基に対してそれぞれP1位及びP2位が優先される。参照によりそれら全体を援用する、Bromme,D.等、1996、J Biol Chem 271:2126−2132;Bossard,M.J.等、1996、J Biol Chem 271:12517−12524を参照されたい。カテプシンKは、広いpH範囲で活性であり、pH4から8でかなりの活性を有し、したがって、pHが約4から5である破骨細胞の吸収窩において良好な触媒活性を示す。
【0005】
骨における主要なコラーゲンであるヒトI型コラーゲンは、カテプシンKの良好な基質である。参照によりその全体を本明細書に援用するKafienah,W.等、1998、Biochem J 331:727−732を参照されたい。カテプシンKに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたインビトロでの実験によれば、カテプシンK mRNAの翻訳がおそらくは抑制されるためにインビトロでの骨吸収が減少する。参照によりその全体を本明細書に援用する、Inui,T.等、1997、J Biol Chem 272:8109−8112を参照されたい。カテプシンKの結晶構造は決定されている。参照によりそれら全体を援用する、McGrath,M.E.等、1997、Nat Struct Biol 4:105−109;Zhao,B.等、1997、Nat Struct Biol 4:109−11を参照されたい。また、カテプシンKの選択的ペプチド系阻害剤が開発された。参照によりそれら全体を援用する、Bromme,D.等、1996、Biochem J 315:85−89;Thompson,S.K.等、1997、Proc Natl Acad Sci U S A 94:14249−14254を参照されたい。したがって、カテプシンK阻害剤は骨吸収を減少させることができる。かかる阻害剤は、骨粗しょう症などの骨吸収が関与する障害を治療するのに有用なはずである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、それを必要とする哺乳動物におけるカテプシン依存性症状又は病態を治療及び/又は予防することができる化合物を提供する。本発明は、一般式
【0007】
【化2】

の化合物を提供する。式中、Rは、R、R及びRと一緒に、水系媒体中で窒素のpKaを<6に減少させるのに十分な電子吸引性を有する非水素置換基であり、
はカテプシンの活性部位のSサブサイトに結合する置換基であり、
はカテプシンの活性部位のSサブサイトに結合する置換基であり、
はカテプシンの活性部位のSサブサイトに結合する置換基である。
【0008】
より具体的には、本発明は次式の化合物を提供する。
【0009】
【化3】

式中、Rはカテプシンの活性部位のSサブサイトに結合する置換基であり、Rはカテプシンの活性部位のSサブサイトに結合する置換基であり、Rはカテプシンの活性部位のSサブサイトに結合する置換基である。
【0010】
プロテアーゼ阻害剤の活性部位を表す特別な命名法が案出された。参照により本明細書に援用する米国特許第6,333,402号を参照されたい。基質の切れやすい結合のアミノ側の残基から始まり該結合から遠位方向に、残基はP、P、Pなどと命名される。切れやすい結合に続く残基はP’、P’、P’などと呼ばれる。全体構造がきわめて異なるタンパク質阻害剤の主鎖は、PとP’の間の領域がきわめて類似しており、P、P及びP’が特に高い類似性を有することが見出された。各プロテアーゼ活性部位は、基質又は阻害剤の残基P、Pなどの側鎖を受け入れるサブサイトS、Sなどを有し、基質又は阻害剤のP’、P’などの側鎖を受け入れるサブサイトS’、S’などを有することが一般に認められている。基質に対するプロテアーゼ特異性及びプロテアーゼに対する阻害剤特異性を与えるのは、SサブサイトとP側鎖の相互作用である。この命名法は、プロテアーゼの非ペプチド阻害剤を参照するために一般化され、プロテアーゼサブサイトS、Sなどと相互作用する非ペプチド阻害剤の領域はそれぞれP、Pなどと称される。
【0011】
ジペプチドカテプシン阻害剤中のP−Pアミド結合は、置換エチルアミン部分で置換することができる。R、R、R及びR基の電子吸引性は一緒になって生理学的pHにおいてP2アミンを非塩基性にする。したがって、この断片は、カテプシンのパパインファミリー全体の中で保存されているカテプシングリシンと重要な中性水素結合を形成することができる。
【0012】
アミドとアニリンのどちらもカルボニル基と水素結合を形成することができるが、代謝的障害を有する。エチルアミンは単独で塩基性であり、生体系においてプロトン化され、標的酵素への結合を抑制する電荷を生じる。電子吸引性が十分なR(又はより具体的にはトリフルオロエチルアミン)を用いると、このアミンはプロトン化されず、カテプシン活性部位において受容体酸素に対して優れた水素結合をもたらす。カテプシンにおいては重要な受容体酸素は活性部位のSサブサイトとSサブサイトの間に位置し、カテプシンKにおいてはこれはGly66である。この残基は、カテプシンB、F、H、K、L、L2、O、S、W及びZ、falcipain、falcipain−1並びにfalcipain 2を含めて、この全パパインタンパク質ファミリー中の保存された残基である。したがって、カテプシンのSサブサイトとSサブサイトを結合する阻害剤断片を連結する非塩基性エチルアミンリンカーを使用することによって、対応するアミドよりも強力な阻害が可能になる。
発明の詳細な説明
本発明は、化学式
【0013】
【化4】

を有し、C、O、N、S、P、F、Cl、Br又はIから各々独立に選択される70個以下の非水素原子を有する組成物に関する。式中、Rは、R、R及びRと一緒に、窒素の塩基度がpKa6未満に低下するような非水素電子吸引性置換基であり、
該組成の分子は、化学式中のCH−NH領域がSとSの間のカテプシンと有利に相互作用し、Rがカテプシン活性部位のSと有利に相互作用するがSとは有利に相互作用せず、Rがカテプシン活性部位のSと有利に相互作用するがSとは有利に相互作用せず、Rがカテプシン活性部位のSと有利に相互作用するがS及びSとは有利に相互作用しないように、カテプシンと相互作用する。
【0014】
本発明の一クラスにおいては、カテプシンはカテプシンB、F、H、K、L、L、O、S、W及びZから選択される。本発明のサブクラスにおいては、カテプシンはカテプシンK、L、S及びBから選択される。本発明のさらに別のサブクラスにおいては、カテプシンはカテプシンLである。本発明のさらに別のサブクラスにおいては、カテプシンはカテプシンSである。本発明のさらに別のサブクラスにおいては、カテプシンはカテプシンBである。本発明のさらに別のサブクラスにおいては、カテプシンはカテプシンFである。
【0015】
本発明の一クラスにおいては、Rは、カテプシン活性部位のサブサイトS、S及びSとそれぞれ有利に相互作用しない。本発明の別のクラスにおいては、Rは−CF、−CHF、−CHF、−CF及び−CHFRから選択され、Rはハロ、C1−3アルキル、C1−3アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ケト、シアノ、ヘテロシクリル、C3−8シクロアルキル、SO1−3アルキル、NH、NO又はO(C=O)C1−3アルキルから選択される1から4個の置換基で場合によっては置換されていてもよいC1−6アルキル、アリール又はヘテロアリールであり、mは0から2の整数である。
【0016】
本発明の一クラスにおいては、Rは、以下の3つの距離基準、すなわち、カテプシンのCα26の7Å以内であること、Cα68の8.5Å以内であること及びCα134の7Å以内であることを同時に満たす少なくとも1個の炭素又は硫黄原子を有する。本発明の別のクラスにおいては、Rは非極性領域を含む。本発明の別のクラスにおいては、Rは親油性領域を含む。
【0017】
本発明の一クラスにおいては、Rは、カテプシンのCα25の5Å以内の少なくとも1個の炭素原子を有する、カテプシン活性部位のサブサイトSに安定に収まる領域を含む。本発明の別のクラスにおいては、Rは非免疫原性である。
【0018】
本発明の一クラスにおいては、Rは、以下の2つの距離基準、すなわち、カテプシンのCα66の5.5Å以内であること及びCα60の7Å以内であることを同時に満たす少なくとも1個の炭素又は硫黄原子を有する。本発明の別のクラスにおいては、Rは非極性領域を含む。本発明の別のクラスにおいては、Rは親油性領域を含む。
【0019】
本発明の一クラスにおいては、窒素は6未満のpKaを有し、カテプシンのグリシン66のカテプシンアミドカルボニルと水素結合を形成する。
【0020】
本発明の一クラスにおいては、本化合物は1000ダルトン未満の分子量を有する。本発明の一クラスにおいては、本化合物はカテプシンのシステイン25と共有結合を形成する。本発明の一クラスにおいては、本化合物は、精製酵素アッセイにおいて10マイクロモル未満のIC50を有するカテプシンの活性部位に結合する。
【0021】
本発明の一クラスにおいては、請求項1に示される第二級アミンの窒素のpKaは水系媒体中で<5である。
【0022】
本明細書では「親油性」という用語は、別個の実体として、水よりも非極性溶媒(例えば、シクロヘキサン)に溶解する化合物を指す。分子に結合した状況における「親油基」という用語は、高い炭化水素含有量を有し、それによって非極性溶媒又は脂質相に対する高い親和性を基に付与する分子領域を指す。親油基は、例えば、炭素が30個未満のアルキル又はシクロアルキル鎖(好ましくは、n−アルキル)とすることができる。さらに説明すると、親油基としては、脂肪酸、エステル及びアルコール、他の脂質分子など天然及び合成の芳香族及び非芳香族部分に結合したアルキル鎖などが挙げられる。親油性分子の他の例は、アダマンタン、バックミンスターフラーレンなどのかご構造及びベンゼン、ペリレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタレン、ピレン、クリセン、ナフタセンなどの芳香族炭化水素である。本明細書の「親油基」という用語に具体的に含まれるものは、アルキル鎖、シクロアルキル鎖、アリール環又はヘテロアリール環の炭素及び結合水素である。本明細書の「親油基」という用語は二価の硫黄も含む。
【0023】
「実質的に相同」という用語は、アミノ酸配列と関連して使用されるときには、配列が実質的に同一又は類似しており、コンホメーションにおける相同性を生じ、したがって類似の生物活性を生じる配列を指す。この用語は、配列の共通の進化を意味するものではない。一般に、「実質的に相同な」配列は、所望の活性に関与することが知られている任意の領域に少なくともわたって、配列が少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%同一である。最も好ましくは、末端位置以外の5残基以下が異なる。少なくとも上述の領域における配列の相違は、「保存的修飾」の形であることが好ましい。
【0024】
「保存的修飾」は、(a)以下に示すアミノ酸の保存的置換及び(b)末端、ドメイン間の境界、ループ又は(例えば、X線回折分析又はNMRによってその構造を明瞭に分解することができないことによって示される)比較的高い移動度の他のセグメントにおける、アミノ酸の単一又は複数の挿入又は欠失として定義される。約5個以下のアミノ酸は、末端を除いて、特定の座位に挿入され又は欠失し、その修飾は、活性に重要な結合部位を含むことが知られている領域の外側であることが好ましい。
【0025】
保存的置換は、以下の5つのグループ、すなわち、(1)小さな脂肪族非極性又はわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)、(2)負に帯電した極性残基及びそのアミドAsp、Asn、Glu、Gln、(3)正に帯電した極性残基:His、Arg、Lys、(4)大きい脂肪族非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)及び(5)大きい芳香族残基:Phe、Tyr、Trpの1つの中での交換と本明細書では定義される。残基Pro、Gly及びCysは、コンホメーション上の特別な役割を有するので括弧に入れられている。Cysはジスルフィド結合の形成に関与する。Glyは鎖に柔軟性を与える。Proは、鎖に剛性を与え、アルファヘリックスを乱す。これらの残基は、ポリペプチドのある領域においては必須となり得るが、他の所では置換可能である。半保存的置換は、上記(1)、(2)及び(3)を含むスーパーグループ(a)又は上記(4)及び(5)を含むスーパーグループ(b)に限定される上記グループ(1)から(5)の2つのグループの間の交換であると定義される。
【0026】
本明細書の「カテプシン」又は「カテプシン類」という用語は、パパインファミリーに属し、すなわち酵素の活性型がパパインと同様に折りたたまれている酵素を指す(NCBI Conserved Domain Database http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/cddsrv.cgi?uid=15045中のConserved Domain smart00645.7)。ヒト、マウス、ウサギ、霊長類、ラット及びプラスモディウム ファルシパルム(plasmodium falciparum)におけるカテプシンのみを本明細書では参照する。具体的に含まれるヒトカテプシンはB、F、H、K、L、L2、O、S、W及びZであり、前記ヒトカテプシンのうち最も類似したものと(これらの酵素の活性型と比較して)80%を超える配列同一性を示すマウス、ウサギ、霊長類及びラットの酵素も具体的に含まれる。プラスモディウム ファルシパルム由来のfalcipain、falcipain−1及びfalcipain−2、並びにこれらのうち最も類似したものとやはりこれらの酵素の活性型と比較して80%を超える配列同一性を示すプラスモディウム ファルシパルム由来の任意の他の酵素も具体的に含まれる。
【0027】
カテプシン中の特定のアミノ酸残基(例えば、グリシン66)又はCα(例えば、Cα66)は、カテプシンKの活性型に使用される残基番号付けと図1に示される一次配列アラインメントの組み合わせによって本明細書では参照される。この配列アラインメントは、図中で標識されたヒトカテプシン及びfalcipain類に対するタンパク質の活性型の関連部分に対するものである。図において、本明細書で参照され鍵となる残基番号の一部は、並べられた配列の上に垂直に配列されて示されている。参照される他の残基番号は、最も近い番号の残基から数えることによって、又はカテプシンK配列を直接参照することによって見つけることができる。番号付けは、ヒトカテプシンKに対するSWISSPROTプライマリアクセッション#P43235に基づいて得られ、タンパク質の活性型CHAIN中の第1の残基(#P43235中の残基番号115)は本明細書では残基番号1に再設定される。本明細書の配列アラインメントは、他のヒトカテプシン及びfalcipain類に対してカテプシンK残基の参照を一般化するために使用される。マウス、ウサギ、霊長類及びラットカテプシン中の残基の表記は、以下に明示される最も相同性の高い配列に対する、デフォルトパラメータを用いた標準一次配列アラインメントによって示される。
【0028】
【化5】




【0029】
定義:本明細書の「有利に相互作用する」という用語における「有利に」という用語は、リガンド分子のコンピュータモデルがカテプシンのコンピュータモデルの活性部位に配置されてリガンド:カテプシン錯体を形成し、そのリガンド:カテプシン錯体がMMFF94s(T.A. Halgren、Journal of Computational Chemistry (1999)、20、pp.720−729)などの標準分子力学力場を用いてエネルギー最小化される分子モデリング計算の有利な結果を意味する。活性部位へのリガンドの最初の配置は「ドッキング」とも呼ばれ、本明細書で述べられるようにリガンドの置換基と酵素のサブサイトのリガンド:酵素相互作用が最適になるようになされる。活性部位のコンピュータモデルは、(非タンパク質原子を差し引いた)対象のカテプシンについて利用可能な場合にはX線結晶構造(例えば、カテプシンKのタンパク質データバンク登録1MEM)に基づき、X線結晶構造が利用不可能な場合には、X線構造が利用可能である最も類似したカテプシンに基づく相同性によって組み立てられた構造を使用することができ、又はX線構造が利用可能である最も類似したカテプシンを単にそのまま使用することができる。エネルギー最小化の始めにおいては、どのタンパク質原子もリガンドを収容するように調節されないが、エネルギー最小化中には、リガンドの6Å以内に少なくとも1個の原子を有するタンパク質側鎖全体はエネルギーを最小化しつつ移動することができる。酵素の主鎖原子は、エネルギー最小化中に移動することはできない。連続誘電性水溶媒を使用することができるが、その他の点ではSchrodinger Inc.のソフトウエアプログラムMacroModelにおけるそれと類似したデフォルトパラメータ及び標準分子力学エネルギー最小化の挙動が想定される。「モデリング計算の有利な結果」とは、エネルギー最小化が終了した後に、リガンドと活性部位の有害な立体的相互作用が存在せず、リガンドと活性部位のエネルギー安定化水素結合及び親油性相互作用が存在することを意味する。リガンドがシステイン−25の活性部位硫黄と共有結合を形成すると考えられる場合には、エネルギー最小化は、計算に供されたモデルのリガンド:カテプシン錯体中の共有結合を含むことができる。本明細書において特許請求されるリガンドとカテプシンの相互作用は、かかるエネルギー最小化から得られるリガンド:カテプシン錯体の形状に基づく。
【0030】
本発明の一実施態様においては、リガンドの置換基とSの有利な相互作用には、以下の3つの距離、すなわち、カテプシンのCα26の7Å以内であること、Cα68の8.5Å以内であること及びCα134の7Å以内であることを同時に満たす置換基の少なくとも1個の炭素又は二価の硫黄原子を有する必要がある。本発明の別の実施態様においては、リガンドの置換基とSの有利な相互作用には、残基67、68、134のうちの2個の残基の原子の5.5Å以内にある置換基の親油基の少なくとも1個の原子を有する必要がある。カテプシンBのみに関係する本発明の別の実施態様においては、リガンドの置換基とSの有利な相互作用には、置換基とカテプシンBのグルタミン酸209の水素結合を有する必要がある。
【0031】
本発明の一実施態様においては、リガンドの置換基とSの有利な相互作用には、以下の2つの距離、すなわち、カテプシンのCα66の5.5Å以内であること及びCα60の7Å以内であることを同時に満たす置換基の少なくとも1個の炭素又は二価の硫黄原子を有する必要がある。本発明の別の実施態様においては、リガンドの置換基とSの有利な相互作用には、残基60又は61のどちらかの残基のCα66及び原子の5.5Å以内にある置換基の親油基の少なくとも1個の原子を有する必要がある。本発明の別の実施態様においては、リガンドの置換基とSの有利な相互作用には、残基60又は61のどちらかの5.5Å以内にある置換基の親油基の少なくとも1個の原子を有する必要がある。
【0032】
本発明の一実施態様においては、リガンドの置換基とSの有利な相互作用には、Cα25の5Å以内にある置換基の少なくとも1個の炭素原子を有する必要がある。本発明の別の実施態様においては、リガンドの置換基とSの有利な相互作用には、残基25の活性部位システイン硫黄とリガンドの求電子性炭素、好ましくはカルボニル又はニトリル炭素との共有結合を有する必要がある。
【0033】
本発明の一実施態様においては、リガンドの化学式中のCH−NH領域と、SとSの間のカテプシンとの有利な相互作用は、Gly66のペプチド酸素の4Å以内にある化学式のN及びCα66の5.5Å以内にある化学式のC(Rと直接結合しているCのみを指す)を有する必要がある。本発明の別の実施態様においては、リガンドの化学式中のCH−NH領域と、SとSの間のカテプシンとの有利な相互作用には、残基66のアミドOに水素結合する化学式のNHを有する必要がある。
【0034】
本明細書では「アルキル」は、別段の記載がないかぎり1個から10個の炭素原子を有する分枝及び直鎖飽和脂肪族炭化水素基を含むものとする。例えば、「C−C10アルキル」におけるC−C10は、線状、分枝又は環式配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素を有する基を含むと定義される。例えば、「C−C10アルキル」としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどが具体的に挙げられる。
【0035】
「アルコキシ」又は「アルキルオキシ」は、酸素架橋によって結合した、別段の記載がないかぎり上で定義されたアルキル基である。
【0036】
「シクロアルキル」又は「炭素環」という用語は、別段の記載がないかぎり3個から8個の総炭素原子のアルカン環、又はこの範囲の任意の数のアルカン環(すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル)を意味するものとする。
【0037】
本明細書では「アリール」は、少なくとも1個の環が芳香族であり、各環が最高12原子の安定な単環式又は二環式炭素環を意味するものとする。かかるアリール成分の例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリル又はアセナフチルが挙げられる。アリール置換基が二環式であり1個の環が非芳香族である場合には、結合は芳香環を介すると理解される。
【0038】
本明細書では「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個の環が芳香族でありO、N及びSからなる群から選択される1個から4個のヘテロ原子を含む、各環が最高10原子の安定な単環式、二環式又は三環式環を表す。この定義の範囲内にあるヘテロアリール基としては、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、インドリニル、インドリル、インドラジニル(indolazinyl)、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフタピリジニル(naphthpyridinyl)、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル(tetrazolopyridyl)、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンズオキサゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロキノリニル、メチレンジオキシベンゼン、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、テトラヒドロキノリンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。ヘテロアリール置換基が二環式であり、1個の環が非芳香族であり又はヘテロ原子を含まない場合には、結合はそれぞれ芳香環又はヘテロ原子を含む環を介すると理解される。ヘテロアリールが窒素原子を含む場合には、対応するそのN−酸化物もこの定義に包含されると理解される。
【0039】
本明細書では「ハロ」又は「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含むことを当業者は理解されたい。「ケト」という用語はカルボニル(C=O)を意味する。本明細書では「アルコキシ」という用語は、分子の残部に酸素原子を介して結合したアルキル部分(アルキルは上で定義されている)を意味する。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシなどが挙げられる。
【0040】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、2個のヒドロキシ基が存在する場合にはそれらは同じ炭素原子上にないことを前提に、1個又は2個のヒドロキシ基で置換された、1個から6個の炭素原子の一価の線状炭化水素基又は3個から6個の炭素の一価の分枝炭化水素基を意味する。代表例としては、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピルなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0041】
本明細書では「複素環」又は「ヘテロシクリル」という用語は、O、N、S、SO又はSOからなる群から選択される1個から4個のヘテロ原子を含む、別段の記載がないかぎり5員環から10員環非芳香環を意味するものとし、二環式基を含む。したがって、「ヘテロシクリル」としては、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピペリジニル、テトラヒドロチオフェニルなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。複素環が窒素を含む場合には、対応するそのN−酸化物もこの定義に包含されると理解される。
【0042】
本発明は、式Iの化合物のN−酸化物誘導体及び保護誘導体も含む。例えば、式Iの化合物が酸化可能な窒素原子を含むときには、当分野で周知の方法によってこの窒素原子をN−酸化物に転化することができる。また、式Iの化合物がヒドロキシ、カルボキシ、チオールなどの基又は窒素原子を含む任意の基を含むときには、これらの基を適切な保護基で保護することができる。適切な保護基の包括的なリストは、その開示を参照によりその全体を本明細書に援用するT.W. Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons,Inc. 1981に見出すことができる。式Iの化合物の保護誘導体は、当分野で周知の方法によって調製することができる。
【0043】
上述の化合物と薬剤として許容される担体とを含む薬剤組成物も本発明の範囲に含まれる。本発明は、薬剤として許容される担体と本願に具体的に開示される化合物のいずれかとを含む薬剤組成物も包含すると企図される。本発明のこれらの側面及び他の側面は、本明細書に含まれる教示から明らかである。
【0044】
本発明の化合物の薬剤として許容される塩は、形成された無機酸又は有機酸として本発明の化合物の従来の無毒の塩を含む。例えば、従来の無毒の塩としては、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩、及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸から調製される塩が挙げられる。上記薬剤として許容される塩及び他の典型的な薬剤として許容される塩の調製は、参照により本明細書に援用するBerg等、”Pharmaceutical Salts”、J. Pharm. Sci.、1977:66:1−19にさらに詳細に記述されている。本発明の化合物の薬剤として許容される塩は、塩基性部分又は酸性部分を含む本発明の化合物から従来の化学方法によって合成することができる。一般に、塩基化合物の塩は、イオン交換クロマトグラフィーによって、或いは遊離塩基を化学量論的量又は過剰の所望の塩形成性無機酸又は有機酸と適切な溶媒又は溶媒の様々な組み合わせの中で反応させることによって、調製される。同様に、酸性化合物の塩は、適切な無機塩基又は有機塩基との反応によって形成される。
【0045】
本発明の化合物は、カテプシンの阻害剤であり、したがって、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるカテプシン依存性疾患又は症状の治療又は予防に有用である。具体的には、本発明の化合物は、カテプシンKの阻害剤であり、したがって、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるカテプシンK依存性疾患又は症状の治療又は予防に有用である。
【0046】
「カテプシン依存性疾患又は症状」とは、1種類以上のカテプシンの活性に依存する病態を指す。「カテプシンK依存性疾患又は症状」とは、カテプシンKの活性に依存する病態を指す。カテプシンK活性に関連する疾患としては、骨粗しょう症、グルココルチコイドによって誘発される骨粗しょう症、パジェット病、異常増加した骨代謝回転、歯周病、歯の損失、骨折、リウマチ様関節炎、骨関節炎、補綴周辺の骨溶解、骨形成不全症、肥満、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、若年発症糖尿病、多発性硬化症、尋常性天ぽうそう、グレーブス病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎及び橋本甲状腺腫、喘息、同種免疫応答、寄生虫感染、癌、転移性骨疾患、悪性高カルシウム血症、多発性骨髄腫などが挙げられる。特許請求の化合物を用いてかかる症状を治療する際には、必要な治療量は、具体的な疾患に応じて変わり、当業者は容易に確認することができる。治療と予防の両方が本発明の範囲によって企図されるが、これらの症状の治療は好ましい用途である。
【0047】
本発明の実施態様は、上記の化合物のいずれか又は薬剤組成物のいずれかの治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、それを必要とする哺乳動物においてカテプシン活性を阻害する方法である。
【0048】
実施態様の一クラスは、カテプシン活性がカテプシンK活性である方法である。
【0049】
本発明の別の実施態様は、上記の化合物のいずれか又は薬剤組成物のいずれかの治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、それを必要とする哺乳動物においてカテプシン依存性症状を治療又は予防する方法である。
【0050】
実施態様の一クラスは、カテプシン活性がカテプシンK活性である方法である。
【0051】
本発明の別の実施態様は、上記の化合物のいずれか又は薬剤組成物のいずれかの治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、それを必要とする哺乳動物において骨量の減少を阻止する方法である。本発明の別の実施態様は、上記の化合物のいずれか又は薬剤組成物のいずれかの治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、それを必要とする哺乳動物において骨量の減少を抑制する方法である。骨吸収の阻害におけるカテプシンK阻害剤の有用性は文献によって知られている。Stroup G.B.等、”Potent and selective inhibition of human cathepsin K leads to inhibition of bone resorption in vivo in a nonhuman primate.” J. Bone Miner. Res.、16:1739−1746;2001及びVotta, B.J.等、”Peptide aldehyde inhibitors of cathepsin K inhibit bone resorption both in vivo and in vitro.” J. Bone Miner. Res. 12:1396−1406;1997を参照されたい。
【0052】
本発明の別の実施態様は、上記の化合物のいずれか又は薬剤組成物のいずれかの治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、それを必要とする哺乳動物において骨粗しょう症を治療又は予防する方法である。骨粗しょうの治療又は予防におけるカテプシンK阻害剤の有用性は文献によって知られている。Saftig P.等、”Impaired osteoclast bone resorption leads to osteoporosis in cathepsin K−deficient mice.” Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13453−13458;1998を参照されたい。
【0053】
本発明の別の実施態様は、上記の化合物のいずれか又は薬剤組成物のいずれかの治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、それを必要とする哺乳動物においてリウマチ様関節炎を治療又は予防する方法である。関節周囲の骨の進行性破壊がリウマチ様関節炎(RA)患者における関節機能不全及び能力障害の主原因であることは文献によって知られている。Goldring SR、”Pathogenesis of bone erosions in rheumatoid arthritis”. Curr. Opin. Rheumatol. 14:406−10、2002を参照されたい。RA患者から得られた関節組織の分析によって、カテプシンK陽性破骨細胞が、リウマチ様の滑膜損傷に関連する病巣の骨吸収を媒介する細胞タイプである証拠が得られた。Hou,W−S等、”Comparision of Cathepsin K and S expression within the Rheumatoid and Osteoarthritic Synovium”、Arthritis Rheumatism 46:663−74、2002を参照されたい。また、全般的な骨量の減少は、重篤なRAに付随する罹患(morbility)の主原因である。股関節部骨折及び脊髄骨折の頻度は、慢性RA患者においてかなり増加する。Gould等、”Osteoclastic activation is the principal mechanism leading to secondary osteoporosis in rheumatoid arthritis”. J. Rheumatol. 25:1282−9、1998を参照されたい。関節下骨における再吸収の治療又は予防及び全般的な骨量の減少の治療又は予防におけるカテプシンK阻害剤の有用性は、リウマチ様関節炎の進行に対する薬理学的介入の合理的手法である。
【0054】
本発明の別の実施態様は、上記の化合物のいずれか又は薬剤組成物のいずれかの治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、それを必要とする哺乳動物において骨関節炎の進行を治療又は予防する方法である。骨関節炎(OA)は、関節軟骨表面の侵食、関節周囲の軟骨内骨化/骨増殖症並びに軟骨下骨硬化症及び嚢胞形成を含めて、関節の明確な変化を伴うことが文献によって知られている。Oettmeier R & Abendroth,K、”Osteoarthritis and bone: osteologic types of osteoarthritis of the hip”、Skeletal Radiol. 18:165−74、1989を参照されたい。最近、軟骨下骨硬化症がOAの惹起及び進行に寄与している可能性が示唆された。関節が繰り返しの衝撃荷重に反応して軟骨下骨が硬化すると、関節によって力を減衰及び分散させることが困難になり、関節は関節軟骨表面全体にわたってより大きな機械的応力にさらされる。これは、軟骨の摩耗及び線維化を加速する。Radin,EL及びRose RM、”Role of subchondral bone in the initiation and progression of cartilage damage.” Clin. Orthop. 213:34−40、1986を参照されたい。カテプシンK阻害剤などの抗吸収剤による過剰な関節下骨吸収の阻害によって、軟骨下骨代謝回転が阻害され、したがってOA進行に有利な影響を及ぼすことができる。上記仮説に加えて、最近、OA患者から得られた滑膜及び関節軟骨試料から、滑膜線維芽細胞、マクロファージ様細胞及び軟骨細胞においてカテプシンKタンパク質が発現することが確認された。Hou, W−S等、”Comparison of Cathepsin K and S expression within the Rheumatoid and Osteoarthritic Synovium”、Arthritis Rheumatism 46:663−74、2002及びDodd RA等、”Expression of Cathepsin K messenger RNA in giant cells and their precursors in human osteoarthritic synovial tissues”. Arthritis Rheumatism 42:1588−93、1999及びKonttinen等、”Acidic cysteine endoproteinase cathepsin K in the degeneration of the superficial articular hyaline cartilage in osteoarthritis”、Arthritis Rheumatism 46:953−60、2002を参照されたい。
したがって、これらの最近の研究によって、骨関節炎の進行に伴う関節軟骨中のII型コラーゲンの破壊におけるカテプシンKの役割が示された。したがって、本発明において記述される骨関節炎の治療又は予防におけるカテプシンK阻害剤の有用性は、2つの異なる機序を含む。1つは、破骨細胞によって進められる軟骨下骨代謝回転の阻害であり、2つめは、OA患者の滑膜及び軟骨におけるII型コラーゲン低下の直接阻害である。
【0055】
本発明の別の実施態様は、上記の化合物のいずれか又は薬剤組成物のいずれかの治療有効量を哺乳動物に投与する段階を含む、それを必要とする哺乳動物において癌を治療する方法である。カテプシンKはヒト乳癌において発現されることが文献によって知られている。Littlewood−Evans AJ等、”The osteoclast−associated protease cathepsin K is expressed in human breast carcinoma.” Cancer Res 57(23):5386−90、December 1,1997を参照されたい。
【0056】
本発明の例は、それを必要とする哺乳動物における骨粗しょう症の治療及び/又は予防用医薬品の調製における上記化合物のいずれかの使用である。本発明のさらに別の例は、カテプシン機能に関係する骨量の減少、骨吸収、骨折、転移性骨疾患及び/又は障害の治療及び/又は予防用医薬品の調製における上記化合物のいずれかの使用である。
【0057】
本発明の化合物は、標準の製薬業務に従って薬剤組成物中で単体で或いは好ましくは薬剤として許容される担体又は希釈剤と組み合わせて、ミョウバンなどの公知のアジュバントと場合によっては組み合わせて、哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができる。本化合物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸及び局所投与経路を含めて、経口又は非経口投与することができる。
【0058】
経口用錠剤の場合においては、一般に使用される担体としてはラクトース、コーンスターチなどが挙げられ、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤が一般に添加される。カプセル剤の経口投与の場合には、有用な希釈剤としてラクトース、乾燥コーンスターチなどが挙げられる。本発明による治療化合物の経口使用の場合には、選択された化合物は、例えば、錠剤又はカプセル剤の形で、或いは水溶液又は懸濁液として投与することができる。錠剤又はカプセル剤の形の経口投与の場合には、活性薬物成分は、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどの薬剤として許容される無毒の経口不活性担体と組み合わせることができる。液体剤形の経口投与の場合には、経口薬物成分は、エタノール、グリセリン、水などの任意の薬剤として許容される無毒の経口不活性担体と組み合わせることができる。さらに、所望又は必要であれば、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び着色剤を混合物に加えることもできる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、グルコース、ベータ−ラクトースなどの天然の糖、トウモロコシ甘味料、アラビアゴム、トラガカントなどの天然及び合成ゴム、又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形に使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。水性懸濁液が経口用に必要であるときには、活性成分は乳化剤及び懸濁剤と混合される。必要に応じて、ある種の甘味剤及び/又は香味料を添加することができる。筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内用途の場合には、活性成分の無菌溶液が通常調製され、溶液のpHは適切に調節及び緩衝されるべきである。静脈内用途の場合には、溶質の全濃度は、調製物を等張にするために制御されるべきである。
【0059】
本発明の化合物は、小さな単層小胞、大きい単層小胞、多層小胞などのリポソーム送達システムの形で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、ホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0060】
本発明の化合物は、化合物分子がカップリングする個々の担体としてモノクローナル抗体を使用して送達することもできる。本発明の化合物は、標的となり得る薬物担体として可溶性ポリマーとカップリングすることもできる。かかるポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルトアミド−フェノール、ポリエチレンオキシド−パルミトイル残基で置換されたポリリジンなどが挙げられる。また、本発明の化合物は、薬物を制御放出するのに有用な生分解性ポリマーの1クラス、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロック共重合体とカップリングすることができる。
【0061】
本発明の化合物は、骨粗しょう症、グルココルチコイドによって誘発される骨粗しょう症、パジェット病、異常増加した骨代謝回転、歯周病、歯の損失、骨折、リウマチ様関節炎、骨関節炎、補綴周辺の骨溶解、骨形成不全症、肥満、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、若年発症糖尿病、多発性硬化症、尋常性天ぽうそう、グレーブス病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎及び橋本甲状腺腫、喘息、同種免疫応答、寄生虫感染、癌、転移性骨疾患、悪性高カルシウム血症、多発性骨髄腫を治療又は予防するのに有用な公知の薬剤と組み合わせても有用である。今回開示される化合物と骨粗しょう症又は他の骨障害を治療又は予防するのに有用な他の薬剤との組み合わせは本発明の範囲内にある。当業者は、関係する薬物及び疾患の個別の特性に基づいて薬剤のどの組み合わせが有用であるかを識別することができるはずである。かかる薬剤としては、有機ビスホスホナート、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、破骨細胞プロトンATPase阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、インテグリン受容体拮抗物質、PTHなどの骨芽細胞同化剤、薬剤として許容されるそれらの塩及び混合物などが挙げられる。好ましい組み合わせは、本発明の化合物と有機ビスホスホナートである。別の好ましい組み合わせは、本発明の化合物とエストロゲン受容体モジュレーターである。別の好ましい組み合わせは、本発明の化合物とアンドロゲン受容体モジュレーターである。別の好ましい組み合わせは、本発明の化合物と骨芽細胞同化剤である。
【0062】
「有機ビスホスホナート」としては、化学式
【0063】
【化6】

の化合物などが挙げられるが、これだけに限定されない。式中、nは0から7の整数であり、A及びXは、nが0であるときにAとXの両方がH及びOHから選択されないように、H、OH、ハロゲン、NH、SH、フェニル、C1−C30アルキル、C3−C30分枝又はシクロアルキル、2個又は3個のNを含む二環構造体、C1−C30置換アルキル、C1−C10アルキル置換NH、C3−C10分枝又はシクロアルキル置換NH、C1−C10ジアルキル置換NH、C1−C10アルコキシ、C1−C10アルキル置換チオ、チオフェニル、ハロフェニルチオ、C1−C10アルキル置換フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル及びベンジルからなる群から独立に選択され、或いはAとXはそれらが結合している炭素原子又は原子と一緒にC3−C10環を形成する。
【0064】
上記化学式においては、アルキル基は、化学式に対して十分な原子が選択されるという条件で直鎖、分枝又は環式とすることができる。C1−C30置換アルキルは、多種多様な置換基を含むことができ、フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾニル(imidazonyl)、NH、C1−C10アルキル又はジアルキル置換NH、OH、SH及びC1−C10アルコキシからなる群から選択されるものを含む非限定的な例を含むことができる。
【0065】
上記化学式は、A及び/又はX置換基に対する複合炭素環式、芳香族及びヘテロ原子構造も包含するものとし、その非限定的な例としてはナフチル、キノリル、イソキノリル、アダマンチル及びクロロフェニルチオが挙げられる。
【0066】
ビスホスホナートの薬剤として許容される塩及び誘導体も本発明において有用である。塩の非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ金属、アンモニウム及びモノ、ジ、トリ又はテトラC1−C30アルキル置換アンモニウムからなる群から選択されるものが挙げられる。好ましい塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアンモニウム塩からなる群から選択されるものである。より好ましいのはナトリウム塩である。誘導体の非限定的な例としては、エステル、水和物及びアミドからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0067】
本発明の治療薬に関して本明細書では「ビスホスホナート」及び「ビスホスホナート類」という用語は、ジホスホナート、ビホスホン酸及びジホスホン酸並びにこれらの材料の塩及び誘導体も包含することに留意されたい。ビスホスホナート又はビスホスホナート類に関する具体的命名法の使用は、特に示さない限り本発明の範囲を限定するものではない。当業者によって現在使用されている命名法が複雑なので、本発明におけるビスホスホナート化合物の特定の重量又は百分率の表記は、本明細書において特に示さない限り酸活性重量基準である。例えば、「アレンドロネート、薬剤として許容されるその塩及びその混合物からなる群から選択される骨吸収阻害ビスホスホナート約5mg(アレンドロン酸活性重量基準)」という句は、選択されたビスホスホナート化合物の量がアレンドロン酸5mgに基づいて計算されたことを意味する。
【0068】
本発明に有用なビスホスホナートの非限定的な例としては、アレンドロン酸としても知られるアレンドロネート、アレンドロネートナトリウム、アレンドロネート一ナトリウム三水和物又は4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ビスホスホン酸一ナトリウム三水和物が挙げられる。
アレンドロネートは、1990年5月1日に発行されたKieczykowski他、米国特許第4,922,007号、1991年5月28日に発行されたKieczykowski他、同5,019,651号、1996年4月23日に発行されたDauer他、同5,510,517号、1997年7月15日に発行されたDauer他、同5,648,491号に記載されている。これらすべてを参照によりその全体を本明細書に援用する。
参照によりその全体を本明細書に援用する、1990年11月13日に発行されたIsomura他、米国特許第4,970,335号に記載のシクロヘプチルアミノメチレン−1,1−ビスホスホン酸、YM 175、山之内(以前はシマドロネートとして知られていたインカドロネート)。
1,1−ジクロロメチレン−1,1−ジホスホン酸(クロドロン酸)及び二ナトリウム塩(クロドロネート、Procter and Gamble)は、ベルギー特許第672,205号(1966)及びJ. Org. Chem 32、4111(1967)に記載されている。この両方を参照によりその全体を本明細書に援用する。
1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)−プロピリデン−1,1−ビスホスホン酸(EB−1053)。
1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(エチドロン酸)。BM−210955としても知られる1−ヒドロキシ−3−(N−メチル−N−ペンチルアミノ)プロピリデン−1,1−ビスホスホン酸、Boehringer−Mannheim(イバンドロネート)は、参照によりその全体を本明細書に援用する、1990年5月22日に発行された米国特許第4,927,814号に記載されている。
1−ヒドロキシ−2−イミダゾ−(1,2−a)ピリジン−3−イエチリデン(ミノドロネート)。
6−アミノ−1−ヒドロキシヘキシリデン−1,1−ビスホスホン酸(ネリドロネート(neridronate))。
3−(ジメチルアミノ)−1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ビスホスホン酸(オルパドロネート(olpadronate))。
3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ビスホスホン酸(パミドロネート)。
[2−(2−ピリジニル)エチリデン]−1,1−ビスホスホン酸(ピリドロネート(piridronate))は、参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許第4,761,406号に記載されている。
1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジニル)−エチリデン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロネート)。
参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許第4,876,248号に記載の(4−クロロフェニル)チオメタン−1,1−ジスホスホン酸(チルドロネート)。
1−ヒドロキシ−2−(1H−イミダゾル−1−イル)エチリデン−1,1−ビスホスホン酸(ゾレドロネート)。
【0069】
ビスホスホナートの非限定的な例としては、アレンドロネート、シマドロネート、クロドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、ピリドロネート、リセドロネート、チルドロネート及びゾレンドロネート(zolendronate)並びに薬剤として許容されるそれらの塩及びエステルが挙げられる。特に好ましいビスホスホナートは、アレンドロネート、特にアレンドロン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム又はアンモニウム塩である。好ましいビスホスホナートの例は、アレンドロン酸のナトリウム塩、特にアレンドロン酸の水和ナトリウム塩である。この塩は、水の整数モル又は水の非整数モルで水和することができる。好ましいビスホスホナートのさらなる例は、アレンドロン酸の水和ナトリウム塩、特に水和塩がアレンドロネート一ナトリウム三水和物であるときである。
【0070】
ビスホスホナート活性成分(active)の2個以上の混合物を利用できることがわかる。
【0071】
有機ビスホスホナートの正確な投与量は、投薬スケジュール、選択された特定のビスホスホナート、年齢、サイズ、性別及び哺乳動物又はヒトの状態、治療すべき障害の性質及び重症度、並びに他の関連する医学的要因及び物理的要因に応じて変わる。したがって、薬剤として有効な正確な量は、前もって特定することができず、治療奉仕者又は臨床家が容易に決定することができる。適切な量は、動物モデルからの定常的な実験法及びヒト臨床試験によって決定することができる。一般に、ビスホスホナートの適切な量は骨吸収阻害効果が得られるように選択され、すなわちビスホスホナートの骨吸収阻害量が投与される。ヒトの場合、ビスホスホナートの有効な経口用量は、一般に、約1.5から約6000μg/kg体重、好ましくは約10から約2000μg/kg体重である。アレンドロネート一ナトリウム三水和物の場合、投与される通常のヒト用量は、一般に、約2mg/日から約40mg/日、好ましくは約5mg/日から約40mg/日である。米国においては、アレンドロネート一ナトリウム三水和物の現在承認されている投与量は、骨粗しょう症予防用に5mg/日、骨粗しょう症治療用に10mg/日、及びパジェット病治療用に40mg/日である。
【0072】
別の投薬計画においては、ビスホスホナートは毎日以外の間隔、例えば週1回の投薬、週2回の投薬、隔週の投薬及び月2回の投薬で投与することができる。週1回の投薬計画では、アレンドロネート一ナトリウム三水和物は35mg/週又は70mg/週の投与量で投与される。
【0073】
「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」とは、機序にかかわらず受容体へのエストロゲンの結合を妨害又は阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレーターの例としては、エストロゲン、プロゲストーゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、TSE−424、タモキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノアート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン及びSH646が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0074】
「エストロゲン受容体ベータモジュレーター」は、エストロゲン受容体ベータを選択的にアゴナイズ(agonize)又は拮抗する化合物である(ER Agonizing ERは、ERによって媒介される事象を介して、トリプトファンヒドロキシラーゼ遺伝子(TPH、セロトニン合成において鍵となる酵素)の転写を増加させる。)。エストロゲン受容体ベータ作用物質の例は、その両方を参照によりそれら全体を援用する、2001年11月8日に公開されたPCT国際出願第01/82923号及び2002年5月20日に公開された同02/41835号に見ることができる。
【0075】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」とは、機序にかかわらず受容体へのアンドロゲンの結合を妨害又は阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレーターの例としては、フィナステリド及び他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール及びアビラテロンアセタートが挙げられる。
【0076】
「破骨細胞プロトンATPaseの阻害剤」とは、破骨細胞の頂端膜上にあり骨吸収プロセスにおいて重要な役割を果たすと報告されているプロトンATPaseの阻害剤を指す。このプロトンポンプは、骨粗しょう症及び関係する代謝病の治療及び予防に有用な可能性のある骨吸収阻害剤を設計するための興味深い標的である。参照によりその全体を本明細書に援用するC. Farina等、”Selective inhibitors of the osteoclast vacuolar proton ATPase as novel bone antiresorptive agents”、DDT、4:163−172(1999))を参照されたい。
【0077】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害剤を指す。HMG−CoAレダクターゼに対して抑制活性を有する化合物は、当分野で周知のアッセイによって容易に特定することができる。例えば、米国特許第4,231,938号6カラム及び国際公開第84/02131号30−33ページに記載又は引用されたアッセイを参照されたい。「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」及び「HMG−CoAレダクターゼの阻害剤」という用語は、本明細書において使用されるときには同じ意味を有する。
【0078】
使用することができるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例としては、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4,231,938号、同4,294,926号及び同4,319,039号参照)、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4,444,784号、同4,820,850号及び同4,916,239号参照)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4,346,227号、同4,537,859号、同4,410,629号、同5,030,447号及び同5,180,589号参照)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許第5,354,772号、同4,911,165号、同4,929,437号、同5,189,164号、同5,118,853号、同5,290,946号及び同5,356,896号参照)、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標);米国特許第5,273,995号、同4,681,893号、同5、489,691号及び同5,342,952号参照)及びセリバスタチン(リバスタチン及びBAYCHOL(登録商標)としても知られる;米国特許第5,177,080号参照)が挙げられるが、これらだけに限定されない。本発明の方法に使用することができるこれら及びさらに別のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の構造式は、M. Yalpani、”Cholesterol Lowering Drugs”、Chemistry & Industry、pp.85−89、February 5,1996の87ページ及び米国特許第4,782,084号及び同4,885,314号に記載されている。本明細書ではHMG−CoAレダクターゼ阻害剤という用語は、薬剤として許容されるすべてのラクトン及び開いた酸(open−acid)の形(すなわち、ラクトン環が開いて遊離酸を形成している)並びにHMG−CoAレダクターゼ抑制活性を有する化合物の塩及びエステル型を含み、そのために、かかる塩、エステル、開いた酸及びラクトン型の使用は本発明の範囲内に含まれる。ラクトン部分及びその対応する開いた酸の形を以下に構造I及びIIとして図示する。
【0079】
【化7】

開いた酸の形が存在し得るHMG−CoAレダクターゼ阻害剤においては、塩及びエステル型は開いた酸から好ましくは形成することができ、かかる形すべては本明細書で使用される「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」という用語の意味に含まれる。好ましくは、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤はロバスタチン及びシンバスタチン、最も好ましくはシンバスタチンから選択される。本明細書では、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤に関する「薬剤として許容される塩」という用語は、遊離酸を適切な有機又は無機塩基と反応させることによって一般に調製される、本発明に使用される化合物の無毒の塩、特にナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、テトラメチルアンモニウムなどの陽イオンから形成される塩、並びにアンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−パラクロロベンジル−2−ピロリジン−1’−イル−メチルベンズ−イミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのアミンから形成される塩を意味するものとする。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の塩のさらなる例としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物塩、エデト酸カルシウム、カンシラート、炭酸塩、塩化物塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストラート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソシナート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、硫酸メチル、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド及び吉草酸塩が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0080】
記載されたHMG−CoAレダクターゼ阻害剤化合物のエステル誘導体は、温血動物の血流に吸収されたときに薬物の形で放出し薬物の治療効力を改善するように開裂することができるプロドラッグとして働くことができる。
【0081】
上で使用される「インテグリン受容体拮抗物質」とは、αβインテグリンに対する生理学的リガンドの結合に選択的に拮抗し、それを阻害し又はそれに対抗する化合物、αβインテグリンに対する生理学的リガンドの結合に選択的に拮抗し、それを阻害し又はそれに対抗する化合物、αβインテグリンとαβインテグリンの両方に対する生理学的リガンドの結合に拮抗し、それを阻害し又はそれに対抗する化合物、及び毛細管内皮細胞上で発現される特定のインテグリンの活性に拮抗し、それを阻害し又はそれに対抗する化合物を指す。この用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの拮抗物質も指す。この用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの任意の組み合わせの拮抗物質も指す。H.N. Lode等、PNAS USA 96:1591−1596、1999は、自発的な腫瘍転移の根絶における抗血管形成αvインテグリン拮抗物質と腫瘍特異抗体−サイトカイン(インターロイキン−2)融合タンパク質の相乗効果を認めた。彼らの結果は、この組み合わせが、癌及び転移性腫瘍成長を治療する可能性を有することを示唆した。αβインテグリン受容体拮抗物質は、現在利用可能なすべての薬物の機序とは異なる新しい機序によって骨吸収を阻害する。インテグリンは、細胞−細胞及び細胞−マトリックス相互作用を媒介するヘテロ二量体の膜貫通接着受容体である。α及びβインテグリンサブユニットは、非共有結合的に相互作用し、二価の陽イオンに依存する様式で細胞外基質リガンドに結合する。破骨細胞上で最も豊富なインテグリンはαβ(>10/破骨細胞)であり、これは細胞骨格組織において細胞遊走及び分極に重要な律速の役割を果たすと考えられる。αβ拮抗効果は、骨吸収の阻害、最狭窄の阻止、黄斑変性症の阻止、関節炎の阻止並びに癌及び転移性増殖の阻止から選択される。
【0082】
「骨芽細胞同化剤」とは、PTHなどの骨を構築する薬剤である。副甲状腺ホルモン(PTH)又はそのアミノ末端断片及び類似体の間欠投与は、動物及びヒトにおいて、骨量の減少を予防し、抑止し、部分的に逆転させ、骨形成を刺激することが示された。考察については、D.W. Dempster等、”Anabolic actions of parathyroid hormone on bone”、Endocr Rev 14:690−709、1993を参照されたい。いくつかの研究によって、骨形成を刺激しそれによって骨量及び骨強度を増加させる副甲状腺ホルモンの臨床上の利点が示された。結果は、RM Neer等、New Eng J Med 344 1434−1441、2001に報告された。
【0083】
また、PTHrP−(1−36)などの副甲状腺ホルモン関連タンパク質断片又は類似体は、強力な抗カルシウム尿効果を示し[M.A. Syed等、”Parathyroid hormone−related protein−(1−36) stimulates renal tubular calcium reabsorption in normal human volunteers: implications for the pathogenesis of humoral hypercalcemia of malignancy”、JCEM 86:1525−1531(2001)参照]、骨粗しょう症を治療する同化剤としての可能性も有し得る。
【0084】
一定用量として処方される場合には、かかる組み合わせ生成物は、下記投与量範囲内の本発明の化合物とその承認された投与量範囲内の他の活性薬剤とを使用する。或いは、本発明の化合物は、組み合わせ処方が不適当なときには、公知の許容される薬剤と逐次的に使用することができる。
【0085】
本発明の化合物に関して「投与」という用語及びその変形(例えば、化合物を「投与すること」)は、治療を必要とする動物の系に化合物又は化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグが1個以上の他の活性薬剤(例えば、細胞毒性薬など)と組み合わせて提供されるときには、「投与」及びその変形は、化合物又はそのプロドラッグと他の薬剤との同時及び逐次導入を含むと各々理解される。本発明は、本発明の化合物のプロドラッグをその範囲に含む。一般に、かかるプロドラッグは、本発明の化合物の機能的誘導体であり、必要とされる化合物にインビボで容易に変換され得る。したがって、本発明の治療方法において、「投与すること」という用語は、具体的に開示される化合物又は具体的に開示されなくてもよいが患者に投与された後に指定の化合物にインビボで変換される化合物を用いた、記載されるさまざまな症状の治療を包含するものとする。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための従来の手順は、例えば、参照によりその全体を本明細書に援用する”Design of Prodrugs”、ed. H. Bundgaard、Elsevier、1985に記載されている。これらの化合物の代謝産物としては、本発明の化合物を生物学的環境に導入することによって生成される活性種などが挙げられる。
【0086】
本明細書では「組成物」という用語は、指定成分を指定量で含む生成物、及び各指定成分を指定量で組み合わせて直接的又は間接的に得られる任意の生成物を包含するものとする。
【0087】
本明細書では「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家によって求められる、組織、系、動物又はヒトにおける生物学的又は医学的応答を誘発する活性化合物又は薬剤の量を意味する。
【0088】
本明細書では疾患を「治療する」又は疾患の「治療」という用語は、疾患を予防すること、すなわち疾患に曝された又は疾患にかかりやすい恐れがあるが疾患の徴候をまだ経験も示しもしていない哺乳動物において疾患の臨床症状を発生させないこと、疾患を阻止すること、すなわち、疾患又はその臨床症状の発生を抑止又は抑制すること、或いは疾患を軽減すること、すなわち、疾患又はその臨床症状を退行させることを含む。
【0089】
本明細書では「骨吸収」という用語は、破骨細胞が骨を分解するプロセスを指す。
【0090】
本発明は、薬剤として許容される担体又は希釈剤を伴う又伴はない本発明の化合物の治療有効量の投与を含む、骨粗しょう症又は他の骨障害の治療において有用な薬剤組成物も包含する。本発明の適切な組成物としては、本発明の化合物と薬理学的に許容される担体、例えば、pHレベルが例えば7.4の食塩水とを含む水溶液が挙げられる。この溶液は、患者の血流中に局所的大量瞬時投与によって導入することができる。
【0091】
本発明の化合物がヒト対象に投与されるときには、1日用量は、通常、処方する医師によって決定され、投与量は、一般に、個々の患者の年齢、体重及び応答並びに患者の症候の重症度に応じて変わる。
【0092】
一適用例においては、カテプシン依存性症状の治療を行う哺乳動物に化合物の適切な量が投与される。本発明の経口投与量は、示された効果に対して使用されるときには、約0.01mg/kg体重/日(mg/kg/日)から約100mg/kg/日、好ましくは0.01から10mg/kg/日、最も好ましくは0.1から5.0mg/kg/日の範囲である。経口投与の場合、組成物は、活性成分0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100及び500ミリグラムを含む錠剤の形で好ましくは提供され、治療される患者の症状によって投与量が調節される。医薬品は、一般に、活性成分約0.01mgから約500mg、好ましくは、活性成分約1mgから約100mgを含む。静脈内の場合、最も好ましい用量は、定速注入中約0.1から約10mg/kg/分の範囲である。有利には、本発明の化合物は、単一の1日量で投与することができ、或いは全1日用量を1日2回、3回又は4回の分割用量で投与することができる。また、本発明に好ましい化合物は、適切な鼻腔内ビヒクルの局所的使用によって、又は当業者に周知の経皮皮膚貼付薬の剤形を用いた経皮経路によって、鼻腔内形式で投与することができる。経皮送達システムの形で投与するために、投与は投与計画を通して間欠的ではなく連続的であることは言うまでもない。
【0093】
本発明の化合物は、カテプシンによって媒介される症状を治療するのに有用な他の薬剤と併用することができる。かかる組み合わせの個々の成分は、治療中の異なるときに別個に、或いは分割又は単一混合剤形で同時に投与することができる。したがって、本発明は、かかる同時又は交互の治療計画すべてを包含すると理解され、「投与すること」という用語はそれに応じて解釈すべきである。本発明の化合物とカテプシンによって媒介される症状を治療するのに有用な他の薬剤との組み合わせの範囲は、エストロゲン機能に関係する障害を治療するのに有用な任意の薬剤組成物とのあらゆる組み合わせを原則的には含むと理解される。
【0094】
したがって、本発明の範囲は、有機ビスホスホナート、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、破骨細胞プロトンATPaseの阻害剤、HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、インテグリン受容体拮抗物質、PTHなどの骨芽細胞同化剤並びに薬剤として許容されるそれらの塩及び混合物から選択される第2の薬剤と組み合わせた特許請求される化合物の使用を包含する。
【0095】
本発明のこれらの側面及び他の側面は、本明細書に含まれる教示から明らかである。
【0096】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細は、付随する上記記載に示されている。本明細書に記載されたものと類似又は等価なあらゆる方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書本文及び特許請求の範囲から明白である。明細書及び添付された特許請求の範囲においては、単数形は、状況が明確にそれ以外のことを指示するのでなければ、複数の指示対象を含む。特に断らない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に引用されるすべての特許及び刊行物を参照により本明細書に援用する。
【0097】
上記記載は説明のためだけにあり、開示された厳密な形式に本発明を限定するものではなく、本明細書に添付の特許請求の範囲によって限定するものである。
【0098】
スキーム
本発明の化合物は、下記スキーム1に従って調製することができる。すなわち、α−アミノエステルは、ハロアルキルケトンに添加して、TiCl、MgSO、トリフルオロ酢酸イソプロピルなどの脱水剤の存在下でイミンに脱水することができるアミナールを形成することができる。シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤によるイミンの還元によってアミンが得られる。エステル加水分解及び適切に置換されたアミノアセトニトリルを用いたアミド形成によって本発明の化合物が得られる。D系上の置換基がハロゲンである場合には、適切なボロン酸を用いたパラジウム触媒の鈴木カップリングによって本発明の別の化合物が得られる。或いは、適切なアミンを用いた銅触媒又はパラジウム触媒Buchwaldカップリングによって本発明の別の化合物が得られる。或いは、パラジウム触媒カルボキシル化とそれに続く適切なアミンを用いたアミド形成によって本発明の別の化合物が得られる。
【0099】
【化8】

【0100】
本発明の化合物は、下記スキーム2に従って調製することもできる。ケトン又はアルデヒドは、アミノアルコールと縮合して環式アミナールを生成することができる。グリニャール試薬又は有機リチウム試薬3当量で処理して適切なアルキル化アミノアルコールを得る。Jones酸化又はHIO/CrOなどのクロム系を用いて、或いは二段階酸化(例えば、塩化オキサリル/DMSO/EtNとそれに続くNaClO)によって、アルコールを酸化して対応するカルボン酸を得る。スキーム1に記載のペプチドカップリング及び鈴木反応によって本発明の化合物を得る。
【0101】
【化9】

【0102】
本発明の化合物は、下記スキーム3に従って調製することもできる。ケトン又はアルデヒドは、アミノアルコールと縮合して非環式アミナールを生成することができる。複数当量のグリニャール試薬又は有機リチウム試薬で処理して適切なアルキル化アミノアルコールを得る。このアルコールは、スキーム2に記載の方法によって本発明の化合物に転化することができる。
【0103】
【化10】

【0104】
本発明の化合物は、スキーム4によって調製することもできる。適切に置換されたアセタートは、(LDA、KHMDS、NaH又はnBuLiを含めて、ただしこれらだけに限定されない)適切な塩基を用いてエノール化し、パラホルムアルデヒドで処理してジオールを生成することができる。このジオールは、DASTなどのフッ素化試薬を用いて二フッ化物に転化することができる。次いで、エステルの加水分解とそれに続くクルチウス転位によってアミンが得られる。このアミンは適切に置換されたアルファ−ブロモエステルを置換してアルファ−アミノエステルを生成することができる。これは、スキーム1に記載の方法によって本発明の化合物に転化することができる。
【0105】
【化11】

【0106】
本発明の化合物は、下記スキーム5に従って調製することもできる。アルデヒド又はヘミアセタールは、アルコール部分を適切な保護基で保護し、水を共沸除去しながら、アミノアルコールと縮合することができる。得られたイミンをグリニャール試薬又は有機リチウム試薬で処理して適切なアルキル化アミノアルコールを得る。次いで、アルコール保護基を除去することができ、アルコールは、スキーム2に記載の方法によって、又は鈴木反応をまず実施し、続いてアルコールをHIO/CrOで酸化し、次いでペプチドカップリングによって、本発明の化合物に転化することができる。
【0107】
【化12】

【0108】
本発明の化合物は、下記スキーム6に従って調製することもできる。スキーム1、2又は5に記載のアルファ−アミノアミドとアルファ−アミノ酸のペプチドカップリングとそれに続く生成第一級アミドの脱水(Voegel,J.J.;Benner,S.A. Helv. Chem. Acta 1996、79、1863)によって本発明の化合物が生成する。
【0109】
【化13】

【0110】
スキーム2、3及び5の始めに使用されるアミノアルコールのいくつかの合成は、スキーム7から11に記載されている。例えば、R=Meである(2S)−2−アミノ−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オールの合成は下記スキーム7に記載されている。2箇所が保護された(diprotected)適切なアスパラギン酸から出発して、標準の文献手順(すなわち、混合無水物形成とそれに続くNaBH還元)によってカルボキシ基をアルコールに還元することができる。次いで、保護された2−アミノ−4−メチルペンタン−1,4−ジオール(R=Me)を適切なグリニヤール又は有機リチオ化反応によって生成することができる。最後に、ヒドロキシ部分をDASTなどのフッ素化剤を用いて所望のフルオロに転化することができる。次いで、このアミノアルコールの保護体又は非保護体をスキーム1、2、3及び5によって本発明の化合物に転化することができる。
【0111】
【化14】

【0112】
4−フルオロロイシノールもスキーム8によって合成することができる。4,5−デヒドロロイシンは、下記スキームに記載のとおり(4S)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)−1,3−オキサゾリジン−2−オンに転化される。次いで、この中間体は、HF−ピリジンなどのフッ化水素処理試薬で処理されて(4S)−4−(2−フルオロ−2−メチルプロピル)−1,3−オキサゾリジン−2−オンを生成する。次いで、塩基加水分解(すなわち、Ba(OH)又はNaOH)によって(2S)−2−アミノ−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オールを得る。
【0113】
【化15】

【0114】
R=Meである4,4−ジフルオロ−L−ノルバリンの合成は下記スキーム9に記載されている。2箇所が保護された適切なセリンから出発して、(PhO)MeIなどの試薬を用いてヨウ素化を実施することができる。得られたヨウ化物の亜鉛化(zincation)をZn−Cu合金及びTMSClを用いて進めることができる。次いで、得られた亜鉛酸塩は、塩化アルカノイルとパラジウム触媒カップリング反応を起こしてケトンを生成することができる。最後に、ケトン部分をDASTなどのフッ素化剤を用いて所望のジフルオロ誘導体に転化することができる。次いで、このアミノ酸又はアミノアルコールの保護体又は非保護体をスキーム1、2、3及び5によって本発明の化合物に転化することができる。
【0115】
【化16】

【0116】
本発明に使用されるアミノアルコールは、スキーム10によって合成することもできる。保護アミノ酸は、EtOHなどの溶媒又はEtOHとTHFなどの混合溶媒系中で、LiClなどの添加剤を伴う又は伴わないNaBHなどの還元剤を用いて還元される。次いで、アミノ保護基は、保護基の性質に応じた適切な方法によって除去される。
【0117】
【化17】

【0118】
本発明に使用される(2S,4S)−2−アミノ−5,5,5−トリフルオロ−4−メチルペンタン−1−オールの合成はスキーム11に記載されている。N−ベンゾイル−5,5,5−トリフルオロロイシン(Ojiima等 J. Org. Chem.、1989、54、4511−4522)は、還流条件下で6M HClなどの酸水溶液を用いて加水分解することができる。次いで、アミノ酸HCl塩中間体は、N−アセチル−5,5,5−トリフルオロロイシンに転化され、アミノ基キラル中心は酵素的な方法によって分割される(Synthetic Communications、1996、26、1109−1115)。次いで、単離された5,5,5−トリフルオロ−L−ロイシンはカルバミン酸ベンジルなどの保護基で保護され、カルボン酸基はエステル化される。次いで、4位における2種類のジアステレオマーはフラッシュカラムクロマトグラフィーによって分離される。次いで、鏡像異性体の一方の(2S,4S)保護アミノ酸は、スキーム10に記載されたアミノアルコールに転化される。
【0119】
【化18】

【0120】
が水素でありRがアリール又はヘテロアリールである本発明の化合物は、以下に示すスキーム12によって調製することもできる。アリール又はヘテロアリールアルデヒドとアルコール部分が適切な保護基で保護されたアミノアルコールとの縮合と、それに続く式ハロ−(D)−Li又はハロ−(D)−MgX(式中、Dは発明の概要で定義されたとおりである)のグリニヤール又は有機リチウム試薬を用いた生成イミンの処理と、それに続く酸素保護基の除去によって、アルキル化アミノアルコールが得られる。次いで、アルキル化アミノアルコールは、スキーム2に記載の方法によって、又はまず式R−B(OH)のボロン酸エステルを用いて鈴木反応を実施し、次いでアルコールをHIO/CrOなどの適切な酸化剤で酸化して酸を生成し、最後に酸を前記ペプチドカップリング条件下でアミノアセトニトリルで処理することによって、本発明の化合物に転化される。
【0121】
【化19】

【0122】
本発明の化合物は、下記スキーム13に従って調製することもできる。ヨウ化ナトリウムの存在下、ジメチルホルムアミドなどの適切な有機溶媒中の、適切にN−保護されたアミノ酸誘導体とオキセタントシラートの反応によって、対応するオキセタンエステルが得られ、これをジボランで処理してオルトエステルを得る。アミノ保護基を除去してアミンが得られ、これを上記反応条件下で式RCHOのアルデヒド(式中、Rはアリール又はヘテロアリールである)又は式RC(OH)(OR)のヘミアセタール(式中、Rはアルキル基である)と縮合させてイミンを得る。イミンを上記反応条件下でグリニヤール又は有機リチウム試薬で処理してN−アルキル化誘導体を得る。オルトエステルを除去すると対応するカルボン酸が生成し、次いでこれはペプチドカップリング条件下でアミノアセトニトリルと縮合され、続いて上述した鈴木反応によって本発明の化合物に転化される。
【0123】
【化20】

【0124】
本発明の化合物は、スキーム14に示すとおりに調製することもできる。適切なR、R、R、R及びR基を含むハロゲン化アリールをビス(ピナコラート)ジボロンとカップリングさせてアリールピナコラートを生成することができる。これをR−臭化物と鈴木条件下でカップリングさせて本発明の化合物を得ることができる。
【0125】
【化21】

【0126】
本発明の化合物は、下記スキーム15に従って調製することもできる。スキーム1、2又は5に記載の適切に置換されたアミノ酸とアルファ−アミノエステル、アルコール又はケトンとのペプチドカップリングによって本発明の化合物が生成する。アルファ−アミノアルコールの場合、生成物アルコールの酸化によって本発明の化合物であるケトンが得られる。アルファ−アミノエステルの場合、生成物エステルの加水分解とそれに続く適切なアミンとのアミド形成によって本発明の化合物であるアミドが得られる。
【0127】
【化22】

【0128】
スキーム1、2、6及び15に示す酸は、スキーム16に示すとおりに調製することもできる。適切に置換された臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル又はベンジルトリフラート(鏡像異性でもラセミでもよい)は、塩基条件下でアルファアミノエステルとカップリングさせることができる。次いで、塩基水溶液で加水分解して、本発明の実施例に転化することができる酸が得られる。
【0129】
【化23】

【0130】
以下の実施例に本発明の選択された化合物の合成を説明する。これらの実施例は特許請求される本発明を説明するものであって、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。表1は、具体例が、それに対して活性であるカテプシン(例えば、カテプシンK)の活性部位に結合したときに、本明細書に記載された距離判定基準にどのように合致するかを示す。
【実施例1】
【0131】
−(シアノメチル)−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエチル)−L−ロイシンアミドの合成
【0132】
【化24】

【0133】
L−ロイシンメチルエステル塩酸塩(975mg、5.37mmol)のジクロロメタン(30mL)溶液に2,2,2−トリフルオロアセトフェノン(0.75mL、5.34mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(3.5mL、20mmol)を添加した。TiCl(0.55mL、5.0mmol)の0.45mLジクロロメタン溶液を滴下し、その混合物を終夜撹拌した。次いで、追加のTiCl(0.4mL、3.6mmol)を添加し、その混合物を3時間撹拌した。NaCNBH(1050mg、16.7mmol)のMeOH(20mL)溶液を添加し、その混合物を2時間撹拌した。1N NaOHに注ぎ、酢酸エチル(2×)で抽出した。有機相を1N NaOH及び塩水で洗浄し、次いでMgSOで脱水し、蒸発させた。ISCOカラムクロマトグラフィー(30%から90%酢酸エチル/へキサン勾配)によって精製してメチルN−(2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエチル)−L−ロイシナートを得た。
【0134】
メチルN−(2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエチル)−L−ロイシナート(150mg、0.50mmol)の2:1 THF/MeOH室温溶液に1M LiOHを添加した。混合物を終夜撹拌し、濃縮した。残渣を酢酸エチルとpH3.5リン酸緩衝液に分配した。有機相を塩水で洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮してN−(2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエチル)−L−ロイシンを得た。
【0135】
N−(2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエチル)−L−ロイシン(149mg、0.50mmol)、アミノアセトニトリル塩酸塩(102mg、1.1mmol)及びPyBOP(260mg、0.50mmol)の混合物をDMF(5mL)に溶解した。トリエチルアミン(0.3mL、2.1mmol)を添加し、混合物を終夜撹拌し、次いでpH3リン酸緩衝液に注ぎ、3:1エーテル/酢酸エチルで抽出した。有機相をNaHCO飽和水溶液及び塩水で洗浄し、MgSOで脱水し、蒸発させた。ISCOカラムクロマトグラフィー(20%から50%酢酸エチル/へキサン勾配)によって精製して、N−(シアノメチル)−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエチル)−L−ロイシンアミドをジアステレオマーの1:1混合物として得た。
【0136】
MS(+APCI):313.9[M+1]。
【実施例2】
【0137】
−[1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミドの合成
【0138】
【化25】

【0139】
実施例1の方法を用いて、N−[1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミドを調製した。
【0140】
MS(−ESI):403.9、405.9[M−1]
【実施例3】
【0141】
−(シアノメチル)−N−{[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル][4−(メチルスルホニル)フェニル]メチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0142】
【化26】

【0143】
段階1:メチルN−{(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メチレン}−L−ロイシナート
(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メタノン(202mg、0.59mmol)、L−ロイシンメチルエステル塩酸塩(328mg、2.0mmol)及びカンファースルホン酸(52mg、0.22mmol)のトルエン溶液をDean−Starkトラップを用いて18時間還流した。溶媒を減圧除去し、生成した残渣をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製して、標記化合物と出発(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メタノンの1:1混合物を得た。
【0144】
段階2:メチルN−{(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メチル}−L−ロイシナート
段階1から得られたメチルN−{(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メチレン}ロイシナートと(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メタノンの1:1混合物(185mg、約0.2mmol)の酢酸/メタノール(1:3、4mL)溶液に固体添加漏斗を用いて水素化ホウ素ナトリウム(約400mg)を30分ごとに2日間にわたって分割添加した(添加は夜間は停止された)。反応混合物をEtOAcと水に分配し、有機層をNaSOで脱水し、濃縮した。生成した混合物をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製した。メチルN−{(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メチル}−L−ロイシナートは無色のゴムとして得られ、(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メタノールは白色固体として得られた。
【0145】
段階3:N−{(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メチル}−L−ロイシン
段階2から得られたメチルN−{(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メチル}−L−ロイシナート(81mg、0.17mmol)のTHF(1mL)とMeOH(0.5mL)の溶液に1N LiOH(0.3mL、0.3mmol)を添加した。生成した混合物を室温で18時間撹拌し、次いでEtOAcと水+1N HCl(0.5mL)に分配した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、減圧濃縮して、無色ゴム状の標記化合物を得た。
【0146】
段階4:N−{(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メチル}−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミド
段階3から得られたN−{(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メチル}−L−ロイシン(76mg、0.17mmol)、HATU(146mg、0.38mmol)、アミノアセトニトリル塩酸塩(52mg、0.56mmol)の−10℃冷却DMF(1.1mL)溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.13mL、0.75mmol)を添加した。反応を室温で18時間進行させ、EtOAcと水に分配した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製して無色ゴム状の標記化合物を得た。
【0147】
段階5:N−(シアノメチル)−N−{[4−(メチルスルホニル)フェニル][4’−(メチルチオ)−1,1’−ビフェニル−4−イル]メチル}−L−ロイシンアミド
段階4から得られたN−{(4−ブロモフェニル)[4−(メチルスルホニル)フェニル]メチル}−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミド(72mg、0.15mmol)、4−(メチルチオ)フェニルボロン酸(37mg、0.22mmol)のエチレングリコールジメチルエーテル(lmL)溶液と2M炭酸ナトリウム水溶液の不均一混合物を減圧脱気し、窒素パージした。
【0148】
この混合物に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ジクロロメタン錯体(19mg、0.023mmol)を添加し、続いて脱気し窒素パージした。反応混合物を効率的に撹拌しながら85℃で16時間加熱した。反応混合物をEtOAcとNHOAc水溶液25%w/vに分配した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製して無色ゴム状の標記化合物を得た。
【0149】
段階6:N−(シアノメチル)−N−{[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル][4−(メチルスルホニル)フェニル]メチル}−L−ロイシンアミド
−(シアノメチル)−N−{[4−(メチルスルホニル)フェニル][4’−(メチルチオ)−1,1’−ビフェニル−4−イル]メチル}−L−ロイシンアミド(63mg、0.12mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物(2mg、0.006mmol)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(4mg、0.01mmol)の溶液に30%w/v過酸化水素水溶液(100μL、0.9mmol)を添加し、生成した混合物を室温で10分間撹拌した。反応混合物をEtOAcと水+1M NaHSO(約3:1)に分配した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製して無色ゴム状の標記化合物を得た。
【0150】
MS(+ESI):568.2[M+1]
【実施例4】
【0151】
(シアノメチル)−N{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0152】
【化27】

【0153】
段階1:(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−メチルペンタン−2−アミン
L−ロイシノール(6.0g)の室温ジクロロメタン(100mL)溶液にトリエチルアミン(11mL)、DMAP(0.1g)及び塩化t−ブチルジメチルシリル(8.5g)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、次いで水を添加した。有機層を分離し、水層をジクロロメタンでさらに抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去して標記化合物を得た。残渣を次の反応にそのまま使用した。H NMR(CDCOCD) δ 3.48(m、2H)、3.32(m、1H)、2.76(m、1H)、1.78(m、1H)、1.22−1.02(m、2H)、0.88(m、15H)、0.06(s、6H)。
【0154】
段階2:(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−メチル−N−[(1E)−2,2,2−トリフルオロエチリデン]ペンタン−2−アミン
段階1から得られた(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−メチルペンタン−2−アミン(50g)とトリフルオロアセトアルデヒド(trifluoroacetaldehyde)メチルヘミアセタール(35mL)のトルエン(300mL)溶液を16時間加熱還流した。加熱還流中に水はDean−Starkトラップに収集された。溶媒を減圧蒸発させ、残渣をSiO上でへキサンと酢酸エチル(9:1)を溶離剤として用いて精製して標記化合物を得た。
【0155】
H NMR(CDCOCD) δ 7.88(m、1H)、3.76−3.45(m、3H)、1.60−1.25(m、3H)、0.88(m、15H)、0.06(s、3H)、0.04(s、3H)。
【0156】
段階3:(2S)−2−{[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4−メチルペンタン−1−オール
n−BuLi(2.5Mへキサン溶液、42mL)を1,4−ジブロモベンゼン(25.8g)の−70℃ THF(400mL)溶液に添加し、その混合物を25分間撹拌した。次いで、(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−メチル−N−[(1E)−2,2,2−トリフルオロエチリデン]ペンタン−2−アミン(31g)のTHF(30mL)溶液を滴下し、その混合物を1.5時間撹拌した。次いで、それを酢酸エチル(500mL)、水(2L)、氷(300g)及び塩化アンモニウム(100g)の混合物に激しく撹拌しながら徐々に注いだ。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(2×500mL)でさらに抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去して残渣を得た。これをそのまま使用した。上で得られた残渣をTHF(250mL)に溶解し、溶液を0℃に冷却したフッ化t−ブチルアンモニウム(110mL)の1M THF溶液を滴下し、その混合物を4時間反応させた。それを酢酸エチル(300mL)、水(2L)及び塩化アンモニウム(100g)に激しく撹拌しながら注いだ。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(2×100mL)でさらに抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去して残渣を得た。これをSiO上で溶離剤として酢酸エチルとへキサン(1:5から1:4)の勾配を用いて精製して標記化合物を得た。
【0157】
H NMR(CDCOCD) δ 7.6(2H、d)、7.45(2H、d)、4.55(1H、m)、3.65−3.7(1H、m)、3.5−3.55(1H、m)、3.25−3.35(1H、m)、2.6−2.7(1H、m)、2.25−2.35(1H、m)、1.65−1.75(1H、m)、1.3−1.4(1H、m)、1.2−1.3(1H、m)、0.75−0.9(6H、dd)。
【0158】
段階4:(2S)−4−メチル−2−({(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルチオ)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}アミノ)ペンタン−1−オール
段階3から得られた臭化物(27.7g)、4−(メチルチオ)フェニルボロン酸(15.7g)、2M NaCO(100mL)及びn−プロパノール(500mL)からなる懸濁液に窒素気流を15分間通した。次いで、Pd(OAc)とPPhの1:3混合物(3.5g)を添加し、反応物を70℃に加温し、窒素下で8時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(500mL)で希釈し、水(2L)と氷(500g)の上に注いだ。酢酸エチル層を分離し、水層を酢酸エチル(200mL)でさらに抽出した。混合酢酸エチル抽出物を0.5N NaOH(2×200mL)、NHCl水溶液、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去して残渣を得た。これをSiO上のクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサンの勾配(1:4から1:3)を用い、再度アセトンとトルエン(1:10)を用いて精製した。加温されたへキサン(200mL)に残渣を溶解し、その溶液を撹拌しながら0℃に冷却した。得られた固体をろ過し、乾燥して標記化合物を得た。
【0159】
H NMR(CDCOCD) δ 7.7(2H、d)、7.65(2H、d)、7.6(2H、d)、7.35(2H、d)、4.5−4.6(1H、m)、3.7(1H(OH)、m)、3.5−3.6(1H、m)、3.3−3.4(1H、m)、2.7(1H、m)、2.5(3H、s)、2.3−2.4(1H(NH)、m)、1.65−1.75(1H、m)、1.2−1.4(3H、m)、0.8−0.9(6H、dd)。
【0160】
段階5:(2S)−4−メチル−2−({(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}アミノ)ペンタン−1−オール
段階4から得られたスルフィド(19g)の0℃トルエン(400mL)溶液にNaWO・2HO(0.16g)及びBuNHSO(0.81g)を添加した。次いで、30%過酸化水素(12.2mL)を徐々に添加し、混合物を室温で4.5時間撹拌した。その混合物を氷、希チオ硫酸ナトリウム水溶液及び酢酸エチルの混合物に徐々に注いだ。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(2×100mL)でさらに抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去して残渣を得た。これをSiO上で溶離剤として酢酸エチルとへキサン(1:1)を用いて精製して生成物を得た。
【0161】
H NMR(CDCOCD) δ 8.05(2H、d)、8.0(2H、d)、7.85(2H、d)、7.7(2H、d)、4.6−4.7(1H、m)、3.75(1H、m)、3.6(1H、m)、3.35−3.45(1H、m)、3.2(3H、s)、2.7−2.8(1H、m)、2.35−2.45(1H、m)、1.7−1.8(1H、m)、1.2−1.5(2H、m)、0.8−0.95(6H、dd)。
【0162】
段階6:N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンの調製
IO/CrO(0.44M CHCN溶液529mL;以下の注記参照)の懸濁液を0℃に冷却し、段階5から得られたアルコール(20g)のCHCN(230mL)溶液を滴下した。その混合物を0から5℃で3.5時間撹拌した。それをpH4 NaHPO(1.5L)に激しく撹拌しながら注ぎ、混合物をジエチルエーテル(3×250mL)で抽出した。混合エーテル抽出物を水と塩水(1:1)、希NaHSO水溶液及び塩水で洗浄した。有機抽出物を硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過し、溶媒を蒸発乾固させて残渣を得た。これを後続の精製のために2つのバッチに分けた。
【0163】
上で得られた粗製酸(10g)を酢酸イソプロピル(250mL)に溶解し、冷0.1N NaOH(3×250mL)で抽出した。混合抽出物をジエチルエーテル(250mL)で洗浄し、次いで6N HClでpH4に徐々に酸性化した。カルボン酸を酢酸イソプロピル(2×250mL)で抽出し、酢酸イソプロピル層を脱水し、濃縮して本質的に純粋な生成物を得た。これを次の段階にそのまま使用した。
【0164】
注:酸化試薬(HIO/CrO)は、HPLC等級CHCN(水0.5%を含む)を用い水を添加しなかった以外は、Tetrahedron Letters 39(1998)5323−5326に記載のとおり調製された。
【0165】
H NMR(CDCOCD) δ 8.05(2H、d)、7.95(2H、d)、7.8(2H、d)、7.65(2H、d)、4.45−4.55(1H、m)、3.55−3.6(1H、m)、3.2(3H、s)、2.8−3.0(ブロード m、NH/OH) 1.95−2.05(1H、m)、1.55−1.6(2H、m)、0.9−1.0(6H、m)。
段階7:N(シアノメチル)−N{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの調製
段階7から得られた酸(9g)のDMF(200mL)溶液に、ベンゾトリアゾル−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(11.6g)、アミノアセトニトリル塩酸塩(3.94g)を添加し、その混合物を0℃に冷却した。トリエチルアミン(9.9mL)を滴下し、混合物を室温に加温し、16時間撹拌した。それを氷と炭酸水素ナトリウム飽和水溶液の中に注ぎ、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。混合抽出物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去した。残渣をSiO上のクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサン(1:1)を用いて精製した。次いで、標記化合物をジエチルエーテル中で16時間撹拌し、ろ過し、乾燥させた(mp 140.5℃)。
【0166】
H NMR(CDCOCD) δ 8.0(2H、d)、7.95(2H、d)、7.8(2H、d)、7.65(2H、d)、4.35−4.45(1H、m)、4.1−4.2(2H、m)、3.45−3.55(1H、m)、3.15(3H、s)、2.65−2.7(1H、m)、1.85−1.95(1H、m)、1.4−1.6(2H、m)、0.85−0.95(6H、m)。
【実施例5】
【0167】
−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの調製
【0168】
【化28】

【0169】
段階1:ベンジル(3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−ヒドロキシブタノアート
N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−アスパラギン酸4−ベンジルエステル(30g)をジメトキシエタン(90mL)に溶解し、その溶液を−5℃に冷却した。N−メチルモルホリン(10.32mL)、続いてクロロギ酸イソブチル(12.7mL)を温度が−10℃未満に維持されるように添加した。混合物を0.5時間熟成させた。固体を素早くろ過し、ジメトキシエタン(90mL)で洗浄した。−50℃に冷却されたろ液に水素化ホウ素ナトリウム(4.4g)を水溶液(45mL)として、温度が−30℃から−15℃に維持されるように慎重に添加した。すべての水素化物が添加された後に、水(500mL)を温度が−15℃未満に維持されるように添加した。懸濁液をろ過し、固体を水(400mL)で洗浄し、乾燥させてベンジル(3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−ヒドロキシブタノアートを得た。
【0170】
H NMR(CDCOCD) δ 7.3−7.45(5H、m)、5.85−5.95(1H、NH)、5.15(2H、s)、3.95−4.1(2H、m)、3.5−3.7(2H、m)、2.55−2.75(2H、m)、1.4(9H、s)。
【0171】
段階2:ベンジル[(4S)−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−イル]アセタート
段階1から得られ、ジクロロエタン(925mL)に溶解されたアルコール(95.7g)にピリジン(625mL)を添加し、混合物を0から5℃に冷却した。無水p−トルエンスルホン酸無水物(105.7g)を添加し、混合物を室温に加温し、1時間撹拌した。次いでそれを90℃に2時間加熱した。混合物を冷却し、ジクロロメタン(1000mL)で希釈し、1N HCl(3×600mL)で洗浄した。有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を減圧除去した。残渣をSiO上のクロマトグラフィーにかけ1:1の比率の酢酸エチルとへキサン、続いて酢酸エチルを用いて精製して、ベンジル[(4S)−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−イル]アセタートを得た。
【0172】
H NMR(CDSOCD) δ 7.8(1H、NH)、7.3−7.45(5H、m)、5.05−5.15(2H、m)、4.4−4.5(1H、m)、4.1−4.2(1H、m)、4.0−4.05(1H、m)、3.6−3.8(2H、m)。
【0173】
段階3:(4S)−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1,3−オキサゾリジン−2−オン
臭化メチルマグネシウム(3Mジエチルエーテル溶液227mL)をトルエン(340mL)とTHF(340mL)の混合物に−20℃で添加した。次いで、段階2から得られたエステル(40g)を温かいTHF溶液(170mL)として温度を−10℃未満に維持しながら滴下し、混合物を2時間熟成した。次いで、その混合物を水(1000mL)と酢酸(200mL)の混合物に徐々に添加し、その混合物を室温で2時間撹拌した。水層を分離し、有機層を水(2×200mL)で抽出した。ジクロロメタン及び連続抽出装置を用いて生成物を混合水層から抽出した。ヘプタンを利用してジクロロメタン抽出物を蒸発乾固させた。残渣をSiO上のクロマトグラフィーにかけエタノールとジクロロメタン(1:30)を用いて精製して(4S)−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1,3−オキサゾリジン−2−オンを得た。
【0174】
H NMR(CDCOCD) δ 6.1−6.4(1H、NH)、4.45−4.55(1H、m)、4.1−4.2(1H、m)、3.95−4.05(1H、m)、3.7(1H、s)、1.65−1.85(2H、m)、1.25(6H、m)。
【0175】
段階4:(4S)−4−(2−フルオロ−2−メチルプロピル)−1,3−オキサゾリジン−2−オン
段階3から得られたアルコール(47.8g)をジクロロメタン(100mL)溶液として(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド(48.5g)の−70℃ジクロロメタン(500mL)溶液に添加した。混合物を室温に加温し、1時間撹拌した。次いで、それをNaHCO飽和水溶液(800mL)の0℃混合物に慎重に添加した。有機層を分離し、NaHCO飽和水溶液で洗浄した。その水溶液をジクロロメタン(100mL)でさらに抽出し、混合ジクロロメタン層を脱水し、濃縮した。残渣をSiO上のクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサン(1:5)、続いて酢酸エチルを用いて精製して(4S)−4−(2−フルオロ−2−メチルプロピル)−1,3−オキサゾリジン−2−オンを得た。
【0176】
H NMR(CDSOCD) δ 7.6(1H、NH)、4.4−4.5(1H、m)、3.95−4.05(1H、m)、3.9−3.95(1H、m)、1.8−1.95(2H、m)、1.25−1.4(6H、2s)。
【0177】
段階5:(2S)−2−アミノ−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オール
段階4から得られ、90%エチルアルコール水溶液(216mL)に溶解されたフルオロ誘導体(21.0g)に水酸化カリウム(21.9g)を添加した。混合物を4時間加熱還流し、室温に冷却した。次いで、混合物を濃縮し、トルエン(3×300mL)と同時蒸発させた。残渣をジクロロメタン(500mL)に溶解し、0.5時間撹拌した。懸濁液をセライトによってろ過し、セライトをジクロロメタン(3×100mL)で洗浄した。ろ液を濃縮乾固して(2S)−2−アミノ−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オールを得た。
【0178】
H NMR(CDOD) δ 3.4−3.5(1H、m)、3.2−3.3(1H、m)、3.0−3.1(1H、m)、1.5−1.7(2H、m)、1.35(3H、s)、1.3(3H、s)。
【0179】
段階6:(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−2−アミン
段階5から得られたアミノアルコール(21.0g)をジクロロメタン(300mL)に溶解し、その溶液を0℃に冷却した。4−(ジメチルアミノ)ピリジン(0.051g)及び塩化tert−ブチルジメチルシリル(21g)、続いてトリエチルアミン(25mL)を添加した。その混合物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を0℃塩化アンモニウム飽和水溶液に徐々に注ぎ、ジクロロメタン(3×300mL)で抽出した。有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を減圧除去して(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−2−アミンを得た。
【0180】
H NMR(CDOD) δ 3.6−3.65(1H、m)、3.4−3.5(1H、m)、3.1−3.2(1H、m)、1.6−1.8(2H、m)、1.35−1.45(6H、m)、0.93(9H、s)、0.1(6H、s)。
【0181】
段階7:(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−フルオロ−4−メチル−N−[(1E)−2,2,2−トリフルオロエチリデン]ペンタン−2−アミン
段階6から得られ、ベンゼン(126mL)に溶解されたアミン(31.5g)にトリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール(21.6mL)を添加した。その溶液をDean−Starkトラップを用いて終夜加熱還流して水を収集した。反応混合物を室温に冷却し、濃縮乾固した。残渣をSiO上で4%酢酸エチルのへキサン溶液を用いて精製して(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−2−アミンを得た。
【0182】
H NMR(CDCOCD) δ 7.9−7.95(1H、m)、3.75−3.85(1H、m)、3.7−3.75(1H、m)、3.53−3.6(1H、m)、1.9−2.0(2H、m)、1.3−1.4(6H、m)、0.9(9H、s)、0.1(3H、s)、0.05(3H、s)。
【0183】
段階8:(2S)−2−{[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オール
1,4−ジブロモベンゼン(0.26g)の−75℃ THF(4mL)溶液にn−BuLi(2.5Mへキサン溶液0.42mL)を添加し、その混合物を20分間熟成した。段階7から得られたイミン(0.329g)のTHF(2mL)溶液を添加し、その混合物を2時間熟成した。次いで、混合物を水(50mL)、NHCl(1g)及び砕氷の混合物に添加した。それを酢酸エチル(2×25mL)で抽出し、混合酢酸エチル層を脱水し、蒸発乾固させた。
【0184】
ジブロモベンゼン(1.2g)、n−BuLi(1.84mL)及びイミン(1.38g)を用いた以外は同じ手順を繰り返し、反応混合物を上記の通り処理した。両方の調製物から得られた混合残渣をTHF(10mL)に溶解し、0℃に冷却した。フッ化n−テトラブチルアンモニウム(1M THF溶液6mL)を添加し、その混合物を+5℃で16時間撹拌した。それを水(50mL)、塩化アンモニウム(1g)及び砕氷の混合物に注ぎ、有機層を分離した。その水溶液を酢酸エチル(2×15mL)でさらに抽出し、混合有機層を脱水し、濃縮した。残渣をSiO上で酢酸エチルとへキサン(1:5)を用いて精製して(2S)−2−{[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4−フルオロ−4−メチルペンタン−1−オールを得た。
【0185】
H NMR(CDCOCD) δ 7.65(2H、m)、7.5(2H、m)、4.5−4.6(1H、m)、3.8(1H、m)、3.6(1H、m)、3.3−3.4(1H、m)、2.85−2.0(1H、m)、2.55(1H、m)、1.7−1.9(2H、s)、1.3−1.4(6H、m)。
【0186】
段階9:N−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−4−フルオロ−L−ロイシン
IO/CrO(0.44M CHCN溶液66mL;注)の懸濁液を0℃に冷却し、段階8から得られたアルコール(1.55g)のCHCN(5mL)溶液を滴下した。その混合物を0から5℃で3.5時間撹拌した。それをpH4 NaHPO(200mL)に激しく撹拌しながら注ぎ、その混合物をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。混合エーテル抽出物を水と塩水(1:1)、続いて希NaHSO水溶液及び塩水で洗浄した。それを硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過し、溶媒を蒸発乾固させて、次の段階にそのまま使用されたN−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−4−フルオロ−L−ロイシンを得た。
【0187】
注:酸化試薬(HIO/CrO)は、HPLC等級CHCN(水0.5%を含む)を用い水を添加しなかった以外は、Tetrahedron Letters 39(1998)5323−5326に記載のとおり調製された。
【0188】
段階10:N−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド
ジイソプロピルエチルアミン(4.2mL)を、段階9から得られた酸(1.5g)、1−アミノ−1−シクロプロパンカルボニトリル塩酸塩(1.18g)、O−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(1.94g)及びジメチルホルムアミド(5mL)の0℃懸濁液に添加し、その混合物を室温で48時間反応させた。次いで、それを氷と希塩化アンモニウム水溶液の上に注いだ。混合物を酢酸エチルとエーテル(1:1)で抽出し、混合有機層をpH3希NaHPO及び塩水で洗浄した。溶媒を蒸発乾固させ、残渣をSiO上のクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサン(1:2)を用いて精製して、次の段階に十分な純度のN−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドを得た。
【0189】
H NMR(CDCOCD) δ 8.15(1H、NH)、7.6(2H、m)、7.45(2H、m)、4.35−4.45(1H、m)、3.45−3.55(1H、m)、1.9−2.1(2H、m)、1.75−1.85(1H、NH)、1.35−1.55(8H、m)、1.1−1.15(1H、m)、0.95−1.05(1H、m)。
【0190】
段階11:N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{[(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルチオ)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド
段階10から得られた臭化物(0.338g)、4−(メチルチオ)フェニルボロン酸(0.252g)、2M NaCO(0.8mL)及びDMF(4mL)からなる懸濁液に窒素気流を15分間通した。次いで、PdCl・dppf(0.1g)を添加し、反応物を85℃に加温し、窒素下で5時間撹拌した。その混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(10mL)で希釈し、水(50mL)と氷に注いだ。酢酸エチル層を分離し、水層を酢酸エチルでさらに抽出した。混合酢酸エチル抽出物を脱水し、溶媒を減圧除去した。残渣をSiO上のクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサン(1:2)を用いて精製して、N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルチオ)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドを得た。
【0191】
H NMR(CDCOCD) δ 8.15(1H、NH)、7.1−7.2(4H、m)、7.5−7.55(2H、m)、7.35−7.4(2H、m)、4.3−4.4(1H、m)、3.45−3.55(1H、m)、2.75−2.8(1H、NH)、2.5(3H、s)、1.9−2.05(2H、m)、1.3−1.5(8H、m)、1.0−1.1(1H、m)、0.85−0.95(1H、m)。
【0192】
段階12:N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの調製
段階11から得られたスルフィド(0.265g)のトルエン(5mL)とジクロロメタン(5mL)の0°溶液にNaWO・2HO(0.002g)及びn−BuNHSO(0.01g)を添加した。次いで、30%過酸化水素(0.137mL)を徐々に添加し、その混合物を室温で3時間撹拌した。その混合物を氷、希チオ硫酸ナトリウム水溶液及び酢酸エチルの混合物に徐々に注いだ。有機層を分離し、水層を酢酸エチルでさらに抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去して残渣を得た。これをSiO上で溶離剤として酢酸エチル、へキサン及びジクロロメタン(1:1:0.1)を用いて精製した。残渣をジエチルエーテル中ですり潰してN−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドを得た。
【0193】
H NMR(CDCOCD) δ 8.2(1H、NH)、8.05−8.1(2H、m)、7.95−8.0(2H、m)、7.8(2H、m)、7.65(2H、m)、4.35−4.45(1H、m)、3.5−3.6(1H、m)、3.2(3H、s)、2.8−2.9(1H、NH)、1.9−2.1(2H、m)、1.3−1.5(8H、m)、1.05−1.15(1H、m)、0.9−1.0(1H、m)。
【実施例6】
【0194】
−[1−(3−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミドの合成
【0195】
【化29】

【0196】
2,2,2−トリフルオロアセトフェノンが1−(3−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンで置換された実施例1に記載の手順を用いて標記化合物を調製した。
【0197】
MS(+ESI):406.0、408.1[M+1]
【実施例7】
【0198】
−(シアノメチル)−N−[2,2,2−トリフルオロ−1−(4−ピペラジン−1−イルフェニル)エチル]−L−ロイシンアミド
【0199】
【化30】

【0200】
段階1:N−(1−{4−[4−(tert−ブチルカルボキシラート)ピペラジン−1−イル]フェニル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミド
−[1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミド(実施例2)(100mg、0.25mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(2.3mg、0.0025mmol)、ビフェニル−2−イル(ジ−tert−ブチル)ホスフィン(3mg、0.01mmol)、リン酸カリウム(74mg、0.35mmol)及びtert−ブチルピペラジン−1−カルボキシラート(56mg、0.3mmol)のジメトキシエタン(0.5mL)溶液を−78℃に冷却し、高真空下で3分間ポンプ注入し、次いで窒素をフラスコに入れた。次いで、その混合物を80℃で1時間加熱した。室温に冷却後、混合物をシリカゲルカラムに直接かけ、酢酸エチル/へキサンで溶出させて標記化合物を得た。
【0201】
段階2:N−(シアノメチル)−N−[2,2,2−トリフルオロ−1−(4−ピペラジン−1−イルフェニル)エチル]−L−ロイシンアミド
段階1から得られた化合物(139mg、0.27mmol)の1,4−ジオキサン(0.5mL)溶液にメタンスルホン酸(53uL、0.82mmol)を添加し、その混合物を終夜撹拌した。次いで、酢酸エチルを添加し、その混合物を飽和炭酸水素ナトリウム、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィーにかけ93%ジクロロメタン、0.6%水酸化アンモニウム及び6.4%メタノールで溶出させて精製して標記化合物を得た。
【0202】
MS(+ESI):412.2[M+1]
【実施例8】
【0203】
【化31】

【0204】
−((1S)−1−{4’−[1−(アミノカルボニル)シクロプロピル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの合成
段階1:1−(4−ブロモフェニル)シクロプロパンカルボニトリルの調製
4−ブロモフェニルアセトニトリル(18.0g)の水酸化ナトリウム(50%W/W水溶液)22mLの室温溶液に1−ブロモ−2−クロロエタン(12.0mL)及び塩化ベンジルトリメチルアンモニウム(627mg)を添加した。その混合物を60℃で終夜加熱した。反応混合物を室温に冷却し、ジエチルエーテルを添加した(300mL。エーテル層を水(100mL)、塩化水素(100mL、10%HCl水溶液)及び塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去した。残渣をジエチルエーテルとへキサンを用いてすり潰して精製して標記化合物を得た。
H NMR(CDCOCD) δ 7.60(2H、d)、7.35(2H、d)、1.74−1.80(2H、m)、1.52−1.57(2H、m)。
【0205】
段階2:1−(4−ブロモフェニル)シクロプロパンカルボン酸の調製
段階1から得られた1−(4−ブロモフェニル)シクロプロパンカルボニトリル(13g)のエチルアルコール(110mL)室温溶液に水酸化ナトリウム(25%W/W NaOH水溶液)溶液56mLを添加した。その混合物を100℃で終夜加熱した。それを室温に冷却し、氷と塩化水素(1N)に注ぎ、ジクロロメタン(2×100mL)で抽出した。混合抽出物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去して標記化合物を得た。
【0206】
H NMR(CDCOCD) δ 7.50(2H、d)、7.35(2H、d)、1.53−1.60(2H、m)、1.18−1.22(2H、m)。
【0207】
段階3:1−(4−ブロモフェニル)シクロプロパンカルボキサミドの調製
段階2から得られた1−(4−ブロモフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1.5g)の−15℃クロロホルム(60mL)溶液にクロロギ酸イソブチル(900μL)及びトリエチルアミン(1.1mL)を徐々に添加した。その反応混合物を−15℃で2時間撹拌した。次いで、それをアンモニアガスで飽和させ、−15℃で10分間撹拌した。反応混合物を室温で1時間静置し、次いで水(60mL)に注ぎ、分配した。水層をジクロロメタン(2×60mL)で抽出した。混合抽出物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去した。残渣をジエチルエーテルとへキサンを用いて精製して標記化合物を得た。
【0208】
H NMR(CDCOCD) δ 7.54(2H、d)、7.40(2H、d)、6.45(1H、bs)、5.96(1H、bs)、1.42−1.48(2H、m)、0.98−1.02(2H、m)。
【0209】
段階4:N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]エチル}−L−ロイシンアミドの調製
実施例5、段階9から得られたN−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミド(2.0g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(1.24g)及び酢酸カリウム(1.53g)のDMF(40mL)懸濁液に窒素気流を15分間通した。次いで、触媒[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタン(181mg)の錯体(1:1)を添加し、その混合物を窒素下で65℃に終夜加温した。その混合物を室温に冷却し、酢酸エチルとへキサン(1:1、100mL)で希釈し、水(50mL)と氷(50g)の上に注いだ。有機層を分離し、水層を酢酸エチルとへキサン(1:1、3×50mL)でさらに抽出した。混合抽出物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去すると残渣が生成し、それをSiO上のクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサン(1:3から1:2)を用いて精製して標記化合物を得た。
【0210】
H NMR(CDCOCD) δ 8.15(1H、bs)、7.78(2H、d)、7.50(2H、d)、4.31−4.40(1H、m)、3.47−3.54(1H、m)、2.72−2.80(2H、m)、1.32−1.48(9H、m)、1.05−1.11(1H、m)、0.87−0.95(1H、m)。
【0211】
段階5:N−((1S)−1−{4’−[1−(アミノカルボニル)シクロプロピル]ビフェニル−4−イル}−2,2,2−トリフルオロエチル)−N−(1−シアノシクロプロピル)−4−フルオロ−L−ロイシンアミドの調製
段階4から得られたボロナート(150mg)、段階3から得られた1−(4−ブロモフェニル)シクロプロパンカルボキサミド(110mg)及び2M NaCO(400μL)のDMF(4mL)溶液に窒素気流を15分間通した。次いで、触媒[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタン(12mg)の錯体(1:1)を添加し、その混合物を窒素下で80℃に3時間加温した。その混合物を室温に冷却し、氷(10g)と炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(20mL)に注ぎ、50%酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。混合抽出物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去すると残渣が生成し、それをSiO上のクロマトグラフィーにかけ溶離剤として酢酸エチルとへキサン(50から70%)を用いて精製し、続いてジエチルエーテルを用いてスイッシュして標記化合物を得た。
【0212】
H NMR(CDCOCD) δ 8.20(1H、bs)、7.75(2H、d)、7.70(2H、d)、7.60(2H、d)、7.55(2H、d)、6.37(1H、bs)、5.87(1H、bs)、4.35−4.43(1H、m)、3.52−3.58(1H、m)、1.92−2.05(2H、m)、1.42−1.50(6H、m)、1.35−1.42(4H、m)、1.03−1.12(3H、m)、0.92−0.98(1H、m)。
【実施例9】
【0213】
−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4,4−ジフルオロ−L−ノルバリンアミド
【0214】
【化32】

【0215】
段階1:メチルN−((ベンジルオキシ)カルボニル)−3−ヨード−L−アラニナートの調製
カルボベンジルオキシ−L−セリン(25g、104mmol)の酢酸エチル(200mL)溶液にジアゾメタンのエーテル溶液を淡黄色が持続するまで添加した。溶媒を減圧蒸発させた。その残渣にN,N−ジメチルホルムアミド(400mL)及びヨウ化メチルトリフェノキシホスホニウム(50g、110mmol)を添加した。その混合物を15分間撹拌し、次いで、メタノール(15mL)を添加し、次いでその混合物を20%チオ硫酸ナトリウム上に注ぎ、酢酸エチル:へキサン(2L)の1:1混合物で抽出した。有機層を水、塩水(3×)で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させた。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサンを用いて精製した。得られた化合物をジエチルエーテル/へキサン中ですり潰し、ろ過し、風乾してメチルN−((ベンジルオキシ)カルボニル)−3−ヨード−L−アラニナートを得た。
【0216】
段階2:メチルN−((ベンジルオキシ)カルボニル)−4−オキソ−L−ノルバリナートの調製
段階1から得られたメチルN−((ベンジルオキシ)カルボニル)−3−ヨード−L−アラニナート(10g、27.5mmol)、亜鉛−銅合金(3.3g)のベンゼン(110mL)溶液及びN,N−ジメチルアセトアミド(7.4mL)の混合物を超音波浴中で2時間超音波処理した。この期間にわたって、1,2−ジブロモエタン(0.24mL)及びクロロトリメチルシラン(0.17mL)を3分割して添加した。次いで、この混合物に塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.958g、1.4mmol)及び塩化アセチル(2.5mL、35.2mmol)を添加し、その混合物を70℃で2時間加熱した。室温に冷却後、その混合物をセライト上で酢酸エチルを用いてろ過し、次いで有機層を塩化アンモニウム飽和溶液、塩水(2×)で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させた。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサンを用いて精製して、メチルN−((ベンジルオキシ)カルボニル)−4−オキソ−L−ノルバリナートを得た。
【0217】
段階3:メチルN−((ベンジルオキシ)カルボニル)−4,4−ジフルオロ−L−ノルバリナートの調製
メチルN−((ベンジルオキシ)カルボニル)−4−オキソ−L−ノルバリナート(1.3g、4.65mmol)のジクロロメタン(20mL)とメタノール(0.019mL)の0℃溶液にDAST(2.46mL)を徐々に添加した。氷浴を除去し、熱水(57℃)浴で置換した。熱水浴を3回交換し、次いで、混合物を室温で終夜撹拌した。その混合物を冷飽和NaHCO上に徐々に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させた。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサンを用いて精製して、メチルN−((ベンジルオキシ)カルボニル)−4,4−ジフルオロ−L−ノルバリナートを得た。
【0218】
段階4:ベンジル(1S)−3,3−ジフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)ブチルカルバメートの調製
メチルN−((ベンジルオキシ)カルボニル)−4,4−ジフルオロ−L−ノルバリナート(1.59g、5.29mmol)のエタノール(50mL)溶液に塩化リチウム(919mg)を添加し、その混合物を10分間撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(820mg)を徐々に添加し、その混合物を2時間撹拌した。次いで、水素化ホウ素ナトリウム(100mg)を追加し、撹拌を30分間続けた。その混合物を水(20mL)で希釈し、1N HClで徐々に中和し、続いて一定分量の水を添加した。その混合物を酢酸エチル(2×)で抽出し、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させてベンジル(1S)−3,3−ジフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)ブチルカルバメートを得た。
【0219】
段階5:(2S)−1−((tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ)−4,4−ジフルオロペンタン−2−アミンの調製
(段階4から得られた)ベンジル(1S)−3,3−ジフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)ブチルカルバメートのエタノール(25mL)溶液に木炭担持パラジウム(10%、150mg)を添加し、その混合物をH雰囲気(風船)下で2時間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、その混合物をセライトによってろ過した。溶媒を減圧蒸発させた。残渣をジクロロメタン(15mL)に溶解し、トリエチルアミン(1mL)、N,N−ジメチルアミノピリジン(10mg)及びクロロ−t−ブチルジメチルシラン(844mg)を添加した。その混合物を終夜撹拌し、次いで水及び塩水を添加した。その混合物を酢酸エチル(2×)で抽出し、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させて(2S)−1−((tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ)−4,4−ジフルオロペンタン−2−アミンを得た。
【0220】
段階6:(2S)−1−((tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ)−4,4−ジフルオロ−N−((1E)−2,2,2−トリフルオロエチリデン)ペンタン−2−アミンの調製
段階5から得られた(2S)−1−((tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ)−4,4−ジフルオロペンタン−2−アミンとトリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール(80%、0.9mL)のベンゼン(20mL)溶液をDean−Stark装置を用いて終夜還流した。溶媒を減圧蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ酢酸エチルとへキサンを用いて精製して(2S)−1−((tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ)−4,4−ジフルオロ−N−((1E)−2,2,2−トリフルオロエチリデン)ペンタン−2−アミンを得た。
【0221】
段階7:(2S)−2−(((1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ)−4,4−ジフルオロペンタン−1−オールの調製
1,4−ジブロモベンゼン(330mg)の−78℃ THF(5.2mL)溶液に2.5M n−BuLiのへキサン(0.52mL)溶液を添加し、その溶液を30分間熟成した。次いで、(2S)−1−((tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ)−4,4−ジフルオロ−N−((1E)−2,2,2−トリフルオロエチリデン)ペンタン−2−アミン(333mg)のTHF(5.2mL)溶液を添加した。その混合物を−78℃で45分間撹拌し、次いで冷飽和塩化アンモニウム上に注ぎ、酢酸エチル(2×)で抽出し、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させた。氷/水浴で冷却されたTHF(10mL)に残渣を溶解し、フッ化n−テトラブチルアンモニウム(1M THF溶液、1.5mL)を添加した。その混合物を0℃で1時間撹拌し、冷水に注ぎ、酢酸エチル(2×)で抽出し、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させて(2S)−2−(((1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ)−4,4−ジフルオロペンタン−1−オールを得た。
【0222】
段階8:N−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4,4−ジフルオロ−L−ノルバリンアミドの調製
IO/CrO(0.44M CHCN溶液27mL;注)の懸濁液を0℃に冷却し、段階7から得られたアルコール(740mg)のCHCN(10mL)溶液を滴下した。その混合物を0℃で4時間撹拌し、さらにHIO/CrO(0.44M CHCN溶液2×10mL)を添加した。次いで、その混合物をpH4 NaHPO緩衝剤に激しく撹拌しながら注ぎ、その混合物を酢酸エチルで抽出し、塩水(2×)、続いて希NaHSO水溶液及び塩水で洗浄した。その混合物を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過し、溶媒を蒸発乾固させてN−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−4,4−ジフルオロ−L−ノルバリンを得た。これを次の段階にそのまま使用した。
【0223】
注:酸化試薬(HIO/CrO)は、HPLC等級CHCN(水0.5%を含む)を用い水を添加しなかった以外は、Tetrahedron Letters 39(1998)5323−5326に記載のとおり調製された。
【0224】
上で得られた酸(340mg)、1−アミノ−1−シクロプロパンカルボニトリル塩酸塩(227mg)、ベンゾトリアゾル−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(498mg)及びジメチルホルムアミド(4.5mL)の混合物にトリエチルアミン(0.42mL)を添加し、その混合物を室温で48時間反応させた。次いで、それを希炭酸水素ナトリウム上に注いだ。その混合物をエチルエーテル(3×)で抽出し、混合有機層を塩水(3×)で洗浄し、ろ過された硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を蒸発乾固させ、残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィーにかけ酢酸エチル40%とへキサンを用いて精製してN−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−4,4−ジフルオロ−L−ノルバリンアミドを得た。
【0225】
MS(+ESI):454.1、456.2[M+1]
【実施例10】
【0226】
−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(シアノメチル)−4,4−ジフルオロ−L−ノルバリンアミド
【0227】
【化33】

【0228】
段階8において1−アミノ−1−シクロプロパンカルボニトリル塩酸塩でアミノアセトニトリル塩酸塩を置換した実施例9に記載の手順を用いて標記化合物を得た。
【0229】
MS(+ESI):428、430.1[M+1]
【実施例11】
【0230】
4−フルオロ−N−[(2R,3S)−2−メチル−4−オキソテトラヒドロフラン−3−イル]−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド
【0231】
【化34】

【0232】
段階1:N−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−4−フルオロ−N−[(2R,3S)−2−メチル−4−オキソテトラヒドロフラン−3−イル]−L−ロイシンアミド
実施例5、段階9から得られた酸(500mg)、(4S,5R)−4−アミノ−5−メチルジヒドロフラン−3(2H)−オン塩酸塩(227mg)(国際公開第00/69855号)、ベンゾトリアゾル−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(744mg)及びジメチルホルムアミド(7mL)の混合物にトリエチルアミン(0.63mL)を添加し、その混合物を室温で3時間反応させた。次いで、それを希炭酸水素ナトリウム上に注いだ。その混合物をエチルエーテル(3×)で抽出し、混合有機層を塩水(3×)で洗浄し、ろ過された硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を蒸発乾固させ、残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィーにかけ酢酸エチル30%とへキサンを用いて精製して標記化合物を得た。
【0233】
段階2:4−フルオロ−N−[(2R,3S)−2−メチル−4−オキソテトラヒドロフラン−3−イル]−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルチオ)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド
段階1から得られた臭化物(200mg)、4−(メチルチオ)フェニルボロン酸(104mg)、2M NaCO水溶液(0.51mL)及びDMF(3mL)の混合物15分間。PdCldppf(17mg)を−78℃に冷却し、高真空下で5分間ポンプ注入し、次いで窒素をフラスコに入れ、その混合物を80℃で加熱し、窒素下で3時間撹拌した。その混合物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム、塩水(3×)で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィーにかけ35%酢酸エチル/へキサンを溶離剤として用いて精製して標記化合物を得た。
【0234】
段階3:4−フルオロ−N−[(2R,3S)−2−メチル−4−オキソテトラヒドロフラン−3−イル]−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド
段階2から得られたスルフィド(120mg)の酢酸エチル(2mL)溶液にNaWO・2HO(1mg)及びn−BuNHSO(4mg)を添加した。次いで、30%過酸化水素(0.06mL)を徐々に添加し、その混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、過酸化水素(0.06mL)を追加した。次いで、その混合物に酢酸エチルを添加し、濃Na水溶液(2×)、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過し、溶媒を減圧蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィーにかけ55%酢酸エチル/へキサンを溶離剤として用いて精製して標記化合物を得た。
【0235】
MS(+ESI):559.1[M+1]
【実施例12】
【0236】
−(1−シアノ−1−メチルエチル)−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0237】
【化35】

【0238】
段階1:2−アミノ−2−メチルプロパンニトリル塩酸塩の調製
塩化アンモニウム(15.5g)の0℃水(50mL)溶液にアセトン(17mL)のジエチルエーテル(50mL)溶液を添加した。次いで、シアン化ナトリウム(11.9g)の水(35mL)溶液を、温度が10℃を決して超えない速度で徐々に添加した。シアン化物溶液の添加後、反応混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで終夜静置した。エーテル層を分離し、水層をジエチルエーテル(2×30mL)で抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去して残渣を得た。これをメチルアルコール(80mL)で希釈した。その溶液を−78℃で冷却し、アンモニアガスで飽和させた(プランジャー弁及びサーモウェルを備えたAce圧力管を使用した)。反応混合物を室温で2日間静置した。過剰のアンモニアを気流で追い出し、メチルアルコールを蒸発除去した。残渣をジエチルエーテル(50mL)に溶解し、0℃に冷却し、次いで塩化水素溶液(1.0Mジエチルエーテル溶液)40mLを添加した。その混合物を30分間撹拌し、ろ過して標記化合物を得た。
【0239】
H NMR(CDSOCD) δ 9.45(1H、s)、1.70(6H、s)。
【0240】
段階2:N−(1−シアノ−1−メチルエチル)−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの調製
実施例4、段階6から得られた酸(1.2g)のDMF(30mL)溶液にベンゾトリアゾル−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(1.55g)、段階1から得られた2−アミノ−2−メチルプロパンニトリル塩酸塩(720mg)を添加し、その混合物を0℃に冷却した。トリエチルアミン(1.3mL)を滴下し、混合物を室温に加温し、72時間撹拌した。それを氷と炭酸水素ナトリウム飽和水溶液の中に注ぎ、ジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。混合抽出物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去した。残渣をSiO上のクロマトグラフィーにかけ溶離剤として酢酸エチルとへキサン(1:2から1:1)の勾配を用いて精製し、続いてジエチルエーテルとへキサンを用いてすり潰して標記化合物を得た。
【0241】
H NMR(CDCOCD) δ 8.08(2H、d)、7.95(2H、d)、7.80(2H、d)、7.68(1H、bs)、7.65(2H、d)、4.32−4.42(1H、m)、3.43−3.52(1H、m)、3.20(3H、s)、2.65−2.75(1H、m)、1.90−2.00(1H、m)、1.57(3H、s)、1.52(3H、s)、1.52−1.57(1H、m)、1.40−1.50(1H、m)、0.90−0.98(6H、m)。
【実施例13】
【0242】
−(シアノメチル)−3−(1−メチルシクロプロピル)−N−{2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−アラニンアミド
【0243】
【化36】

【0244】
段階1:メチルN−(ジフェニルメチレン)−4−メチレンノルバリナート
メチルN−(ジフェニルメチレン)グリシナート(12.0g、47.4mmol)の0℃ THF(118mL)溶液に1Mカリウムtert−ブトキシドのTHF(49mL、49mmol)溶液を添加した。その混合物は明黄色になり、さらに約15分間撹拌した。3−ブロモ−2−メチルプロペン(5.2mL、51.3mmol)を添加し、その混合物を室温で2日間撹拌した。水でクエンチした後、混合物をEtOAcで抽出した。シリカゲル上でクロマトグラフィーにかけへキサン:EtOAc(6:1)で溶出させてジアルキル化生成物2.2gを極性のより低い成分として得たさらに溶出させると、標記化合物が極性のより高い成分として得られた。
【0245】
H NMR(アセトン−d) δ 7.62−7.18(m、10H)、4.72(s、1H)、4.64(s、1H)、4.20(dd、1H)、3.64(s、3H)、2.62(dd、1H)、2.50(dd、1H)、1.48(s、3H)。
【0246】
段階2:メチルN−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−4−メチレンノルバリナート
段階1から得られたメチルN−(ジフェニルメチレン)−4−メチレンノルバリナート(6.2g、20.2mmol)と0.5M HCl(60mL)水溶液の混合物を室温で終夜撹拌した。混合物全体をEtO(2×)で洗浄した。0℃に冷却後、1M NaOH(40mL、40mmol)水溶液、続いてEtOAc(50mL)及びクロロギ酸ベンジル(4mL、28mmol)を添加した。その混合物を0℃で2時間撹拌した。次いで、EtOAc層を分離し、水(2×)で洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。シリカゲル上でクロマトグラフィーにかけへキサン:EtOAc(6:1)、次いで(3:1)で溶出させて無色オイルの標記化合物を得た。
【0247】
H NMR(アセトン−d) δ 7.40−7.25(m、5H)、6.54(d、1H)、5.06(s、2H)、4.82(s、1H)、4.78(s、1H)、4.40(m、1H)、3.68(s、3H)、2.52(dd、1H)、2.40(dd、1H)、1.74(s、3H)。
【0248】
段階3:メチルN−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−3−(1−メチルシクロプロピル)アラニナート
0℃のCHCl(40mL)にジエチル亜鉛(2mL、19.5mmol)を添加し、続いてトリフルオロ酢酸(1.5mL、19.5mmol)のCHCl(8mL)溶液を滴下した。15分間撹拌した後、ジヨードメタン(1.6mL、20.0mmol)のCHCl(8mL)溶液を添加した。その混合物を15分間撹拌すると透明溶液が得られた。段階2から得られたメチルN−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−4−メチレンノルバリナート(2.75g、9.9mmol)の溶液を添加し、その混合物を室温で終夜撹拌した。0.1M HCl(50mL)水溶液でクエンチした後、CHCl層を分離し、希塩水で洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮して粗製標記化合物を得た。
【0249】
H NMR(アセトン−d) δ 7.35(m、5H)、6.58(d、1H)、5.08(m、2H)、4.40(m、1H)、3.68(s、3H)、1.75(dd、1H)、1.62(dd、1H)、1.08(s、3H)、0.45(m、1H)、0.22(m、3H)。
【0250】
段階4:ベンジル2−ヒドロキシ−1−[(1−メチルシクロプロピル)メチル]エチルカルバメート
段階3から得られた粗製エステルのEtOH(40mL)とTHF(40mL)の0℃に冷却された溶液にLiCl(1.7g)、続いてNaBH(1.6g)を添加した。その混合物を室温で終夜撹拌し、0.5M HCl水溶液でクエンチし、EtOAcで抽出した。EtOAc抽出物を希塩水(2×)で洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。クロマトグラフィーによって精製して無色オイルの標記化合物2gを得た。
【0251】
H NMR(アセトン−d) δ 7.35(m、5H)、5.98(d、1H)、5.06(m、2H)、3.85(m、1H)、3.72(t、1H)、3.50(m、2H)、1.60(dd、1H)、1.34(dd、1H)、1.05(s、3H)、0.40−0.15(m、4H)。
【0252】
段階5:2−アミノ−3−(1−メチルシクロプロピル)プロパン−1−オール
ベンジル2−ヒドロキシ−1−[(1−メチルシクロプロピル)メチル]−エチルカルバメート(2.0g、7.6mmol)と10%Pd/C(200mg)のEtOH(80mL)溶液と、1M HCl水溶液2mLとの混合物をH雰囲気(風船)で終夜撹拌した。触媒をろ過除去し、ろ液を濃縮して標記化合物を得た。
【0253】
H NMR(メタノール−d) δ 3.72(dd、1H)、3.40(dd、1H)、3.22(m、1H)、1.50−1.30(m、2H)、1.06(s、3H)、0.45−0.25(m、4H)。
【0254】
段階6:N−(シアノメチル)−3−(1−メチルシクロプロピル)−N−{2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−アラニンアミド
標記化合物は、段階5から得られたアミノアルコールから実施例5、段階6から12に記載のと同じ方法によって調製された。
【0255】
H NMR(アセトン−d) δ 8.06(br s、1H)、8.00(d、2H)、7.94(d、2H)、7.78(d、2H)、7.62(d、2H)、4.48(m、1H)、4.12(m、2H)、3.55(m、1H)、3.16(s、3H)、1.64(m、2H)、1.10(s、3H)、0.48−0.20(m、4H)。
【0256】
MS(+ESI):494(MH)。
【実施例14】
【0257】
−(シアノメチル)−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−{4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル]フェニル}エチル)−L−ロイシンアミドの合成
【0258】
【化37】

【0259】
段階1:N−{1−[4−(ヒドロキシカルボニル)フェニル]−2,2,2−トリフルオロエチル}−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミド
ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(58mg、0.08mmol)、トリフェニルホスフィン(155mg、0.59mmol)及びN−[1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミド(実施例2、1.2g、3.0mmol)の混合物のトリブチルアミン(2.5mL)と水(0.6mL)の溶液をテフロン被覆磁気棒を備えた鋼鉄製容器(steel bomb)に入れた。この系を一酸化炭素で3回パージし(各回100psi(0.7MPa))、最後にこのガスを圧力300psi(2MPa)で充填した。反応混合物を連続撹拌しながら160℃で20時間加熱した。次いで、系を室温に冷却し、圧力を開放し、生成した残渣をEtOAcと水+塩酸水溶液に分配してpHを2.5から3.0に調節した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOAc、へキサン及び酢酸を溶離剤として用いて精製して、黄色のオレンジ泡状の標記化合物を得た。
【0260】
段階2:N−(シアノメチル)−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−{4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル]フェニル}エチル)−L−ロイシンアミド
段階1から得られたN−{1−[4−(ヒドロキシカルボニル)フェニル]−2,2,2−トリフルオロエチル}−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミド(480mg、1.3mmol)とベンゾトリアゾル−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスホナート(1.35g、2.6mmol)のDMF(8mL)溶液にN−メチルピペラジン(0.29mL、2.6mmol)、続いてトリエチルアミン(0.54mL、3.9mmol)を徐々に添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。生成した混合物をEtOAcと水+塩酸水溶液に分配してpHを2.5から3.0に調節した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけMeOH、EtOAcと濃NHOHを溶離剤として用いて精製して白色泡状の標記化合物を得た。
【0261】
MS(+ESI):454.3[M+1]
【実施例15】
【0262】
−{(1S)−1−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキソプロピル}−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0263】
【化38】

【0264】
段階1:N−(tert−ブトキシカルボニル)−N−メトキシ−N−メチル−L−メチオニンアミド
N−Boc−L−メチオニン(1.0g、4.0mmol)、O−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(3.3g、8.7mmol)及びN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(1.0g、10.2mmol)のDMF(15mL)氷冷溶液にトリエチルアミン(2.2mL、15.8mmol)を滴下した。生成した混合物を室温で18時間撹拌し、次いでEtOAcとNaHCO半飽和水溶液に分配した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製して無色シロップ状の標記化合物を得た。
【0265】
段階2:tert−ブチル{(1S)−1−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキソプロピル}カルバメート
段階1から得られたN−(tert−ブトキシカルボニル)−N−メトキシ−N−メチル−L−メチオニンアミド(200mg、0.68mmol)の−78℃に冷却されたTHF溶液にメチルリチウム1.4Mのへキサン(1.1mol、1.5mmol)溶液を添加した。反応物をこの温度で2時間撹拌し、次いで酢酸アンモニウム25%w/v水溶液で冷クエンチ(cold−quench)した。混合物をEtOAcで抽出し、有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製して無色ゴム状の標記化合物を得た。
【0266】
段階3:(3S)−3−アミノ−5−(メチルチオ)ペンタン−2−オン、塩酸塩
段階2から得られたtert−ブチル{(1S)−1−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキソプロピル}カルバメート(140mg、0.57mmol)に塩化水素4.0Mの1,4−ジオキサン溶液(3mL、12mmol)を添加した。生成した混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、生成した残渣をトルエン(2×10mL)と共沸混合させて白色固体の標記化合物を得た。
【0267】
段階4:N−{(1S)−1−[2−(メチルチオ)エチル]−2−オキソプロピル}−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド
段階3から得られた(3S)−3−アミノ−5−(メチルチオ)ペンタン−2−オン、塩酸塩(104mg、0.57mmol)、N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシン(実施例4、段階6、127mg、0.2mmol)及びO−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(187mg、0.49mmol)のDMF(1mL)懸濁液を10℃に冷却し、次いでトリエチルアミン(115μL、0.83mmol)を徐々に添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。生成した混合物をEtOAcとNaHCO半飽和水溶液に分配した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製して白色泡状の標記化合物を得た。
【0268】
MS(+ESI):573.5[M+1]
【実施例16】
【0269】
−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル−L−メチオニンアミドの合成
【0270】
【化39】

【0271】
(3S)−3−アミノ−5−(メチルチオ)ペンタン−2−オン、塩酸塩でL−メチオニンアミド塩酸塩を置換した実施例15、段階4に記載の手順を用いて標記化合物を得た。これをEtOAcとへキサン(1:2)から結晶化させて白色固体を得た。
【0272】
MS(+ESI):574.3[M+1]
【実施例17】
【0273】
N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル−L−メチオニンの合成
【0274】
【化40】

【0275】
段階1:メチルN−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル−L−メチオニナート
(3S)−3−アミノ−5−(メチルチオ)ペンタン−2−オン、塩酸塩でメチルL−メチオニナート塩酸塩を置換した実施例15、段階4に記載の手順を用いて標記化合物を得た。これをEtOAcとへキサン(1:2)から結晶化させて白色固体を得た。
MS(+ESI):589.3[M+1]
【0276】
段階2:N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル−L−メチオニン
段階1から得られたメチルN−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル−L−メチオニナート(100mg、0.17mmol)のTHF(2mL)とMeOH(0.5mL)の氷冷溶液に1.0N LiOH(0.25mL、0.25mmol)を滴下し、生成した溶液を室温で18時間撹拌した。その溶液をEtOAcと水+1N HCl(1mL)に分配した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOH、EtOAc及びAcOHを溶離剤として用いて精製して白色泡状の標記化合物を得た。これをEtOAcとへキサン(6mL、1:2)から結晶化させて白色固体を得た。
【0277】
MS(+ESI):575.0[M+1]
【実施例18】
【0278】
−[(1S)−1−シアノ−3−(メチルチオ)プロピル]−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0279】
【化41】

【0280】
実施例16から得られたN−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル−L−メチオニンアミド(350mg、0.6mmol)とピリジン(85μL、1.05mmol)の1,4−ジオキサン溶液を10℃に冷却した。次いで、無水トリフルオロ酢酸(65μL、0.46mmol)を滴下し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をEtOAcと水に分配した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製して無色ゴム状の標記化合物を得た。
【0281】
MS(+ESI):556.3[M+1]
【実施例19】
【0282】
N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル−N−メチル−L−メチオニンアミドの合成
【0283】
【化42】

【0284】
実施例17から得られたN−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル−L−メチオニン(100mg、0.17mmol)、メチルアミン塩酸塩(35mg、0.52mmol)及びO−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(150mg、0.39mmol)のDMF(1mL)懸濁液を10℃に冷却し、次いでトリエチルアミン(110μL、0.79mmol)を徐々に添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した。生成した混合物をEtOAcとNaHCO半飽和水溶液に分配した。有機層をNaSOで脱水し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーにかけEtOAcとへキサンを溶離剤として用いて精製して白色泡状の標記化合物を得た。これをEtOAcとへキサンから結晶化させて白色固体を得た。
【0285】
MS(+ESI):588.1[M+1]
【実施例20】
【0286】
(2S)−2−{[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4,4−ジクロロ−N−(1−シアノシクロプロピル)ブタンアミドの合成
【0287】
【化43】

【0288】
段階1 エチル(2S)−2−アミノ−4,4−ジクロロブタノアート
氷冷エタノール25mLに塩化アセチル(2.0mL、28mmol)を滴下した。次いで、[Chem.−Ztg 114、249−251(1990)及びSynthesis 1996、1419に従って調製された](S)−2−アミノ−4,4−ジクロロブタン酸(1.0g、5.8mmol)を一括添加した。その混合物を18時間還流し、濃縮し、残渣を飽和NaHCO溶液とジクロロメタンに分配した。有機層を分配し、脱水し(NaSO)、ろ過し、濃縮してオイル状残渣を得た。シリカゲル充填物にこれを通して精製し、30%酢酸エチルのへキサン溶液で溶出させて純粋な標記化合物を得た。
【0289】
段階2 エチル(2S)−2−{(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4,4−ジクロロブタノアート
[J. Am. Chem. Soc. 1983、105、2343−2350に従って調製された]エチル(2S)−2−アミノ−4,4−ジクロロブタノアート(298mg、1.49mmol)、(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチルトリフルオロアセテート(862mg、2.2mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(284mg、2.2mmol)をN雰囲気下60℃で6時間適切に加熱した。混合物をNaHCO溶液と酢酸エチルに分配した。有機層を分離し、脱水し(NaSO)、ろ過し、濃縮した。ISCOカラムクロマトグラフィー(2%から15%酢酸エチル/へキサン勾配)によって精製してジアステレオマーの87:13混合物として標記化合物を得た。
【0290】
MS(+APCI):438.8[M+1]及び440.8[M+3]。
【0291】
段階3 (2S)−2−{[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4,4−ジクロロブタン酸
エチル(2S)−2−{[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4,4−ジクロロブタノアート(325mg、0.74mmol)のTHF(5mL)溶液にトリメチルシラノール酸カリウム(178mg、1.39mmol)を添加した。その混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで濃縮した。残渣を酢酸エチルと1N HClに分配した。有機層を分離し、脱水し(NaSO)、ろ過し、濃縮して標記化合物をオイルとして得た。これを次の段階にそのまま使用した。
【0292】
MS(−APCI):407.9[M−1]。
【0293】
段階4 (2S)−2−{[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4,4−ジクロロ−N−(1−シアノシクロプロピル)ブタンアミド
(2S)−2−{[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエチル]アミノ}−4,4−ジクロロブタン酸(275mg、0.67mmol)、1−アミノ−1−シクロプロパンカルボニトリル塩酸塩(159mg、1.34mmol)及びHATUカップリング試薬(305mg、0.8mmol)の混合物をDMF(4mL)に溶解した。トリエチルアミン(0.3mL、2.1mmol)を添加し、その混合物を終夜撹拌し、次いでNaHCO溶液と酢酸エチルに注いだ。有機層を分離し、塩水、1N HCl及び再度塩水で洗浄した。有機層を分離し、脱水し(NaSO)、ろ過し、濃縮してオイル393mgを得た。これをカラムクロマトグラフィーにかけ6:3:1トルエン:酢酸エチル:ジクロロメタンで溶出させて精製した。純粋な生成物をジエチルエーテルを用いてスイッシュして、白色固体の標記化合物をジアステレオマーの85:15混合物として得た。
【0294】
MS(−APCI):471.9[M−1]。
【0295】
H NMR(500MHz、DMSO−d) 「主異性体」、δ 8.95(s、1H)、7.61(d、2H、7.38(d、2H)、6.19(dd、1H)、4.38−4.25(m、1H)、3.45−3.38(bs、2H)、2.5−2.3(m、2H)、1.43−1.32(m、2H)、1.02−0.95(m、1H)、0.75−0.68(m、1H)。
【0296】
H NMR(500MHz、DMSO−d) 「副異性体」、δ 8.89(s、1H)、7.65−7.61(m、1H)、7.43(d、1H)、6.23−6.19(m、1H)、4.38−4.25(m、1H)、3.45−3.38(bs、2H)、2.5−2.3(m、2H)、1.43−1.32(m、2H)、1.02−0.95(m、1H)、0.75−0.68(m、1H)。
【実施例21】
【0297】
−(1−シアノシクロプロピル)−N−{(1S)−2,2−ジフルオロ−1−[4−(3−メチル−2−チエニル)フェニル]エチル}−L−ロイシンアミド
【0298】
【化44】

【0299】
段階1:(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−N−[(1Z)−2,2−ジフルオロエチリデン]−4−メチルペンタン−2−アミンの調製
(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−メチルペンタン−2−アミン(実施例4、段階1、8.5g、36.8mmol)及びジフルオロアセトアルデヒドエチルヘミアセタール(5.0g、39.7mmol)の混合物のベンゼン溶液をDean−starkトラップを用いて終夜還流した。溶媒を減圧除去した。残渣を短いシリカカラムを通過させ、へキサン:EtOAc(10:1)で溶出させて淡黄色オイルの標記化合物を得た。
【0300】
H NMR(CDCOCD) δ 7.72(m、1H)、6.12(dt、1H)、3.70(dd、1H)、3.54(dd、1H)、3.36(m、1H)、1.48(m、2H)、1.32(m、1H)、0.95−0.78(m、15H)、0.06(s、3H)、0.02(s、3H)。
【0301】
段階2:(2S)−2−{[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジフルオロエチル]アミノ}−4−メチルペンタン−1−オールの調製
n−BuLi(2.5Mへキサン溶液、1.43mL)を1,4−ジブロモベンゼン(884mg)の−70℃THF(8.5mL)溶液に添加し、その混合物を15分間撹拌した。次いで、(2S)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−メチル−N−[(1E)−2,2−ジフルオロエチリデン]ペンタン−2−アミン(1.0g)のTHF(8.5mL)溶液を滴下し、その混合物を1.5時間撹拌した。次いで、それを冷塩化アンモニウム飽和溶液に激しく撹拌しながら徐々に注いだ。3分割した酢酸エチルでそれを抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去して残渣を得た。これをSiO上で溶離剤としてへキサンと酢酸エチル(90:10から75:25)の勾配を用いて精製して標記化合物を得た。上で得られた化合物(200mg)をCHCN(4mL)に溶解し、その溶液を0℃に冷却した。HF−ピリジン(40M)を滴下し、その混合物を16時間反応させた。それを炭酸水素ナトリウム飽和溶液に注ぎ、酢酸エチルを添加し、それを激しく振とうした。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(2×50mL)でさらに抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去して残渣を得た。これをSiO上で溶離剤としてへキサンと酢酸エチル(80:20から60:40)の勾配を用いて精製して標記化合物を得た。
【0302】
H NMR(CDCOCD) δ 7.6(2H、d)、7.45(2H、d)、6.0(1H、dt)、4.25(1H、m)、3.65(1H、t)、3.5−3.55(1H、m)、3.3−3.35(1H、m)、2.55−2.65(1H、m)、2.15−2.25(1H、m)、1.6−1.7(1H、m)、1.3−1.4(1H、m)、1.2−1.3(1H、m)、0.9(3H、d)、0.8(3H、d)。
【0303】
段階3:N−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジフルオロエチル]−L−ロイシンの調製
IO/CrO(0.4M CHCN溶液5.5mL;以下の注記参照)の懸濁液を0℃に冷却し、段階2から得られたアルコール(250mg)のCHCN(3.7mL)溶液を滴下した。その混合物を0から5℃で3.5時間撹拌した。その後、酸化剤2.0mLを添加した。1.5時間後、これをNaHPO緩衝剤(10mL中0.4g)に激しく撹拌しながら注ぎ、その混合物をジエチルエーテル(3×20mL)で抽出した。混合エーテル抽出物を水と塩水(1:1)、希NaHSO水溶液及び塩水で洗浄した。有機抽出物を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過し、溶媒を蒸発乾固させて残渣を得た。これをさらに精製せずに使用した。
【0304】
注:酸化試薬(HIO/CrO)は、HPLC等級CHCN(水0.5%を含む)を用い水を添加しなかった以外は、Tetrahedron Letters 39(1998)5323−5326に記載のとおり調製された。
【0305】
H NMR(CDCOCD) δ 7.55(2H、d)、7.4(2H、d)、6.05(1H、dt)、3.95−4.05(1H、m)、3.45(1H、t)、2.7−3.0(ブロード m、NH/OH)、1.85−1.95(1H、m)、1.5(2H、t)、0.95(3H、d)、0.9(3H、d)。
【0306】
段階4:N−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジフルオロエチル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−L−ロイシンアミドの調製
段階3から得られた酸(258mg)のDMF(2mL)溶液にO−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(337mg)、1−アミノシクロプロパンカルボニトリル塩酸塩(175mg)を添加した。撹拌1分後、ジイソプロピルエチルアミン(0.45mL)を滴下し、その混合物を16時間撹拌した。それを炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に注ぎ、酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。混合抽出物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去した。残渣をSiO上のクロマトグラフィーにかけへキサンと酢酸エチル(80:20から50:50)を用いて精製した。
【0307】
H NMR(CDCOCD) δ 8.05(1H、m)、7.55(2H、d)、7.4(2H、d)、6.05(1H、dt)、3.95−4.05(1H、m)、3.25−3.3(1H、m)、2.4−2.45(1H、m)、1.8−1.9(1H、m)、1.4−1.55(2H、m)、0.95−1.1(2H、m)、0.95(6H、t)。
【0308】
段階5:N1−(1−シアノシクロプロピル)−N2−{(1S)−2,2−ジフルオロ−1−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]エチル}−L−ロイシンアミドの調製
段階4から得られた臭化アリール(5.23g)とビス(ピナコラート)ジボロン(3.8g)のDMF(60mL)溶液に酢酸カリウム(3.7g)及びPdCldppf(309mg)を添加した。その懸濁液に窒素気流を1分間通した。反応混合物を80℃で16時間加熱した。それを室温に冷却し、分液漏斗に移した。NaHCO飽和溶液(約120mL)及びEtOAc(100mL)を添加した。有機層を分離し、2分割したEtOAc(2×100mL)で水層をさらに抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮した。粗製材料をシリカゲル(80:20から50:50 hex/EtOAc)で精製して所望のボロナートを得た。
【0309】
H NMR(CDCOCD) δ 8.15(bs、NH)、7.72(2H、d)、7.40(2H、d)、6.02(1H、dt)、3.95(1H、m)、3.25(1H、q)、2.38(1H、m)、1.72(1H、m)、1.27−1.50(16H、m)、0.85−1.05(8H、m)。
【0310】
段階6:N−(1−シアノシクロプロピル)−N−{(1S)−2,2−ジフルオロ−1−[4−(3−メチル−2−チエニル)フェニル]エチル}−L−ロイシンアミドの調製
密封可能なマイクロ波用管中で、段階6から得られたアリールボロナート(200mg)、2−ブロモ−3−メチルチオフェン(115mg)、2M NaCO(0.65mL)、DMF(4.3mL)及びPdCldppf(11mg)からなる懸濁液に窒素気流を1分間通した。次いで、混合物を120℃(吸収レベル:高)で500秒間(固定保持時間:オフ)マイクロ波(SmithCreator)加熱した。それを室温に冷却し、酢酸エチル(20mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム飽和溶液に注いだ。酢酸エチル層を分離し、水層を酢酸エチル(2×15mL)でさらに抽出した。混合酢酸エチル抽出物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去すると残渣が得られた。これをSiO上のクロマトグラフィーにかけへキサンと酢酸エチルの勾配(80:20から50:50 hex/EtOAc)を用いて精製した。
【0311】
H NMR(CDCOCD) δ 8.13(bs、NH)、7.50(4H、s)、7.37(1H、d)、6.97(1H、d)、6.05(1H、t)、4.00(1H、m)、3.30(1H、m)、2.42(1H、m)、2.32(3H、s)、1.85(1H、m)、1.40−1.53(2H、m)、1.30−1.40(2H、m)、0.85−1.03(8H、m)。
【実施例22】
【0312】
(1−シアノトリル)−N{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0313】
【化45】

【0314】
N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシン(実施例4、段階6、21mg、0.046mmol)の混合物のDMF(1.4mL)溶液に2−フェニルグリシノニトリル塩酸塩(8.6mg、0.051mmol)を添加する。N−メチルモルホリン(41μL、0.368mmol)及びN−プロピルホスホン酸無水物、環式三量体50%(55μL、0.092mmol)を順次添加し、その混合物を終夜撹拌した。揮発性物質をGenevac HT−4中で蒸発させた。残渣を、BTMAカルボナートシリカゲルで30分間処理されたCHCl(5mL)に溶解し、SiOH SPEカートリッジ(500mg)によってろ過した。その溶液をAmberlyst A−21で処理し、再度ろ過した。溶液を濃縮して各エピマーの1:1混合物を得た。
【0315】
MS(−ESI):556.0[M−1]
【実施例23】
【0316】
(シアノシクロプロピル)−N{(1S)−2,2−ジフルオロ−1−[2’,4’−ジフルオロ−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0317】
【化46】

【0318】
段階6の2−ブロモ−3−メチルチオフェンが1−ブロモ−2,4−ジフルオロベンゼンで置換された実施例21に記載の手順を用いて、標記化合物を白色固体として得た。
【0319】
MS(+API):448.1[M+1]
【実施例24】
【0320】
ベンジル3−オキソ−4−[(N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル)アミノ]アゼパン−1−カルボキシラートの合成
【0321】
【化47】

【0322】
段階1:ベンジル3−ヒドロキシ−4−[(N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル)アミノ]アゼパン−1−カルボキシラート
N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシン(実施例4、段階6、605mg、1.37mmol)、ベンジル4−アミノ−3−ヒドロキシアゼパン−1−カルボキシラート(国際公開第0134565号、J. Med. Chem. 44、1380、2001、326mg、1.23mmol)及びPyBOP(724mg、1.39mmol)のDMF 10mLの0℃溶液にトリエチルアミン(0.45mL、3.2mmol)を添加した。その混合物を1時間撹拌し、室温に1時間加温し、次いでNaHCOとエーテルに分配した。有機相をpH3.5リン酸緩衝液、次いで塩水で洗浄し、MgSOで脱水した。シリカゲルクロマトグラフィー(65%酢酸エチル:へキサンから100%酢酸エチルの勾配)によって精製して標記化合物を各異性体の混合物として得た。
【0323】
段階2:ベンジル3−オキソ−4−[(N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル)アミノ]アゼパン−1−カルボキシラート
ベンジル3−ヒドロキシ−4−[(N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル)アミノ]アゼパン−1−カルボキシラート(98mg、0.14mmol)のジクロロメタン(3mL)0℃溶液にDess−Martinペルヨージナンを添加した。その混合物を室温に加温し、15時間撹拌し、次いで酢酸エチルと1M NaOHに分配した。有機相を塩水で洗浄し、MgSOで脱水した。シリカゲルクロマトグラフィー(40%から70%酢酸エチル:へキサン勾配)によって精製して各ジアステレオマーの混合物として標記化合物を得た。
【0324】
MS(+ESI):688.4[M+1]
【実施例25】
【0325】
−[3−オキソ−1−(ピリジン−2−イルスルホニル)アゼパン−4−イル]−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミドの合成
【0326】
【化48】

【0327】
段階1:N−(3−ヒドロキシアゼパン−4−イル)−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド
ベンジル3−ヒドロキシ−4−[(N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシル)アミノ]アゼパン−1−カルボキシラート(実施例24、段階1,710mg、1.03mmol)と10%Pd/C(490mg)の混合物の2:1 EtOH:EtOAc(80mL)溶液に水素を流し、水素風船下で2時間撹拌した。反応混合物をセライトによってろ過し、濃縮して標記化合物を得た。
【0328】
段階2:N−[3−ヒドロキシ−1−(ピリジン−2−イルスルホニル)アゼパン−4−イル]−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド
−(3−ヒドロキシアゼパン−4−イル)−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド(567mg、1.02mmol)のジクロロメタン(10mL)0℃溶液にトリエチルアミン(0.25mL、1.8mmol)及び塩化2−ピリジンスルホニル(204mg、1.15mmol)を添加した。その混合物を室温に1時間加温し、次いでジクロロメタンとNaHCOに分配した。有機相を塩水で洗浄し、綿を通してろ過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(70%酢酸エチル:へキサンから100%酢酸エチルの勾配)によって精製して標記化合物を各異性体の混合物として得た。
【0329】
段階3:N−[3−オキソ−1−(ピリジン−2−イルスルホニル)アゼパン−4−イル]−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド
−[3−ヒドロキシ−1−(ピリジン−2−イルスルホニル)アゼパン−4−イル]−N−{(1S)−2,2,2−トリフルオロ−1−[4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−4−イル]エチル}−L−ロイシンアミド(460mg、0.73mmol)のジクロロメタン(15mL)室温溶液にDess−Martinペルヨージナン(420mg、1.0mmol)を添加した。その混合物を1時間撹拌し、次いでジクロロメタンで希釈し、1M NaOH、次いで塩水で洗浄した。有機相を綿に通してろ過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(60%酢酸エチル:へキサンから100%酢酸エチルの勾配)によって精製して標記化合物を各ジアステレオマーの混合物として得た。
【0330】
MS(+ESI):695.3[M+1]
【実施例26】
【0331】
−[(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メチル]−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミドの合成
【0332】
【化49】

【0333】
段階1:(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メタノール
1,4−ジブロモベンゼン(9.1g、38mmol)のTHF(80mL)溶液を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(16mL、2.5Mへキサン溶液)を滴下した。15分後、p−アニスアルデヒド(5g、THF4.5mL中37mmol)を滴下した。さらに20分後、反応混合物をメタノール(5mL)及び塩化アンモニウム飽和水溶液(100mL)でクエンチした。反応混合物を酢酸エチル各100mLで3回抽出し、混合有機層を塩水(50mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムを用いて脱水し、減圧濃縮して標記化合物を得た。これを次の段階に直接使用した。
【0334】
段階2:メチルN−[(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メチル]−L−ロイシナート
(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メタノール(1.15g、3.9mmol)を臭化テトラブチルアンモニウム(130mg、0.4mmol)と一緒にジクロロメタン(4mL)に溶解した。次いで、48%臭化水素酸水溶液(3.3mL)を添加し、その反応混合物を40時間激しく撹拌した。生成物を水(20mL)とジクロロメタン(30mL)に分配し、硫酸マグネシウムを用いて脱水した。有機層を約10mLに濃縮し、L−ロイシンメチルエステル(遊離塩基)をジクロロメタン(20mL)溶液として添加し、続いてトリエチルアミン(3mL)を添加した。反応混合物を35℃で20分間撹拌した(白色沈殿物が出現した)。反応物をエーテル(50mL)と水(30mL)に取った。これらの相を分離し、有機層を塩化アンモニウム飽和水溶液(30mL)及び塩水(30mL)で洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水し減圧濃縮した後、メチルN[(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メチル]−L−ロイシナートを得た。これをシリカゲル上で10%酢酸エチル、90%へキサンを用いて精製した。
【0335】
段階3:N−[(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メチル]−L−ロイシン
メチルN−[(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メチル]−L−ロイシナート(1.25g、3mmol)の約2:1:1 THF/MeOH/水60mL室温溶液に水酸化リチウム一水和物(250mg、6mmol)を添加した。その混合物を終夜撹拌し、濃縮した。残渣をジクロロメタン(50mL)とpH3.5リン酸緩衝液(50mL)に分配した。水相を分離しジクロロメタン各50mLで2回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮して固体を得た。これを最小量の冷ジクロロメタン中ですり潰してN−[(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メチル]−L−ロイシンを得た。
【0336】
段階4:N−[(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メチル]−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミド
N−[(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メチル]−L−ロイシン(149mg、0.37mmol)とアミノアセトニトリル塩酸塩(87mg、0.73mmol)の混合物をジメチルホルムアミド5mLに溶解した。HATU(153mg、0.403mmol)を一括添加し、続いてトリエチルアミン(0.18mL、1.31mmol)を添加した。その混合物を終夜撹拌し、次いでpH4リン酸緩衝液(40mL)に注ぎ、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を水各50mLで3回で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて脱水し、減圧濃縮した。シリカゲル(30%酢酸エチル/へキサン)によって精製してN−[(4−ブロモフェニル)(4−メトキシフェニル)メチル]−N−(シアノメチル)−L−ロイシンアミドを得た。
【0337】
MS(+ESI):443.9[M+1]。
【0338】
カテプシン結合
実施例1から26の各々を以下の手順に供した。コンピュータによって作製されたモデルにおいて、化合物のエネルギーはカテプシンKの活性部位において最小化された。カテプシンKのコンピュータ作製モデルはタンパク質データバンク登録1MEMの結晶構造に基づいており、水素が付加されたが、エネルギー最小化の始めにおいて非水素のエネルギー最小化は行われなかった(したがって、タンパク質側鎖は、X線結晶構造の形状を保持した)。化合物の結合配向は、以下の仮定に基づいて決定された。すなわち、1)共有結合は、化合物中の「1」と標識された求電子性炭素間のS1において形成される。これによって、本発明の化学式と組み合わせて、RとRに対応する分子断片が決定される。2)本発明の式に対応する化合物の断片の場合、アミン水素はGly66の酸素と水素結合を形成し、したがってこれらの2個の原子間の距離は4Å未満である。3)R及びRに対応する化合物の各断片は、それぞれ、化合物の化学構造上の標識炭素原子に従ってカテプシンサブサイトS及びSに配置された。例えば、表1中のカテプシンCαに対する距離が表1に記載の距離の1オングストローム以内であるように、構造中の「2」と標識された炭素はSに配置され、「3」と標識された炭素はSに配置された。これらの配置は手操作で近似的に行われたが、有利な相互作用をもたらすように意図的に配置された。ラセミ混合物として合成された化合物の場合、本発明の化学式に対応する鏡像異性体が計算に使用された。エネルギー最小化は、ソフトウエアMacroModelによりMMFFs力場を用いて実施された。化合物の全原子は移動することができるが、カテプシンKの場合には化合物の6Å以内の原子を有するタンパク質側鎖のみ移動することができる。この場合、側鎖全体が移動することができる。水に対応する連続溶媒オプションを有するエネルギー最小化のデフォルトパラメータが選択された。化合物に対するエネルギー最小化の結果は好都合なものであった。すなわち、リガンドとカテプシンKの活性部位との有害な立体的相互作用は存在せず、活性部位とリガンドの有利な相互作用(親油性相互作用及び水素結合)が表1に記載の距離によって確認される。表1に、上述したように化合物とカテプシンKによって形成されたエネルギー最小のリガンド−酵素複合体から得られる距離を示す。「Gly66 H結合」の列は、化合物のアミン水素とGly66の酸素との間に形成される水素結合の距離である。表1中のR2の下にある3つの列は、カテプシン中のCαに対応するCα標識が頭に付く。これらの列は、カテプシン中の示されたCαと、その化合物の構造中の「2」と標識された炭素との距離を示す。同様に、表1中の「R3」の下にある2つの列は、カテプシン中の示されたCαと、その化合物の構造中の「3」と標識された炭素との距離を示す。カテプシン中の残基25のシステイン硫黄と、その化合物の構造中の「1」と標識された求電子性炭素との共有結合によって、その化合物の構造中の「1」と標識された炭素の<5Åの距離が確保された。したがって、実施例1から26は、本明細書に記載された距離判定基準に合致する。
【0339】
【表1】

【0340】
精製酵素アッセイ
本願において開示される化合物は、以下のアッセイにおいて活性を示した。また、本願において開示される化合物は、以前に開示された化合物よりも薬理学的プロファイルが向上している。
【0341】
カテプシンKアッセイ
試験化合物500μMから0.0085μMの段階希釈物(1/3)がジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製された。次いで、各希釈物のDMSO 2μLをアッセイ緩衝剤50μL(MES、50mM(pH5.5);EDTA、2.5mM;DTT、2.5mM及び10%DMSO)及びヒトカテプシンK(0.4nM)のアッセイ緩衝溶液25μLに添加した。アッセイ溶液を振とうプレート上で5から10秒間混合し、室温で15分間インキュベートした。Z−Leu−Arg−AMC(8μM)のアッセイ緩衝剤25μL溶液をアッセイ溶液に添加した。クマリン脱離基(AMC)の加水分解に続いて、分光蛍光分析(Exλ=355nm;Emλ=460nm)を10分間行った。用量反応曲線の標準数学モデルに実験値をフィッティングさせることによって阻害割合を計算した。
【0342】
カテプシンLアッセイ
試験化合物500μMから0.0085μMの段階希釈物(1/3)がジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製された。次いで、各希釈物のDMSO 2μLをアッセイ緩衝剤50μL(MES、50mM(pH5.5);EDTA、2.5mM;DTT、2.5mM及び10%DMSO)及びヒトカテプシンL(0.5nM)のアッセイ緩衝溶液25μLに添加した。アッセイ溶液を振とうプレート上で5から10秒間混合し、室温で15分間インキュベートした。Z−Leu−Arg−AMC(8μM)のアッセイ緩衝剤25μL溶液をアッセイ溶液に添加した。クマリン脱離基(AMC)の加水分解に続いて、分光蛍光分析(Exλ=355nm;Emλ=460nm)を10分間行った。用量反応曲線の標準数学モデルに実験値をフィッティングさせることによって阻害割合を計算した。
【0343】
カテプシンBアッセイ
試験化合物500μMから0.0085μMの段階希釈物(1/3)がジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製された。次いで、各希釈物のDMSO 2μLをアッセイ緩衝剤50μL(MES、50mM(pH5.5);EDTA、2.5mM;DTT、2.5mM及び10%DMSO)及びヒトカテプシンB(4.0nM)のアッセイ緩衝溶液25μLに添加した。アッセイ溶液を振とうプレート上で5から10秒間混合し、室温で15分間インキュベートした。Z−Leu−Arg−AMC(8μM)のアッセイ緩衝剤25μL溶液をアッセイ溶液に添加した。クマリン脱離基(AMC)の加水分解に続いて、分光蛍光分析(Exλ=355nm;Emλ=460nm)を10分間行った。用量反応曲線の標準数学モデルに実験値をフィッティングさせることによって阻害割合を計算した。
【0344】
カテプシンSアッセイ
試験化合物500μMから0.0085μMの段階希釈物(1/3)がジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製された。次いで、各希釈物のDMSO 2μLをアッセイ緩衝剤50μL(MES、50mM(pH5.5);EDTA、2.5mM;DTT、2.5mM及び10%DMSO)及びヒトカテプシンS(20nM)のアッセイ緩衝溶液25μLに添加した。アッセイ溶液を振とうプレート上で5から10秒間混合し、室温で15分間インキュベートした。Z−Leu−Arg−AMC(8μM)のアッセイ緩衝剤25μL溶液をアッセイ溶液に添加した。クマリン脱離基(AMC)の加水分解に続いて、分光蛍光分析(Exλ=355nm;Emλ=460nm)を10分間行った。用量反応曲線の標準数学モデルに実験値をフィッティングさせることによって阻害割合を計算した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式
【化1】

を有し、C、O、N、S、P、F、Cl、Br又はIから各々独立に選択される70個以下の非水素原子を有し、化合物の分子は、前記化学式中のCH−NH領域がS2とS3の間のカテプシンと有利に相互作用し、Rがカテプシン活性部位のS1と有利に相互作用するが活性部位のS3とは有利に相互作用せず、Rがカテプシン活性部位のS2と有利に相互作用するが活性部位のS3とは有利に相互作用せず、Rがカテプシン活性部位のS3と有利に相互作用するが活性部位のS2又はS1とは有利に相互作用しないように、カテプシンと相互作用する、化合物。
(式中、Rは、R、R及びRと一緒に、窒素の塩基度がpKa6未満に低下するような非水素電子吸引性置換基である)
【請求項2】
前記カテプシンがカテプシンB、F、H、K、L、L、O、S、W又はZから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記カテプシンがカテプシンK、L、S又はBから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がカテプシン活性部位のサブサイトS、S及びSそれぞれと有利に相互作用しない、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、以下の3つの距離基準、すなわち、カテプシンのCα26の7Å以内であること、Cα68の8.5Å以内であること及びCα134の7Å以内であることを同時に満たす少なくとも1個の炭素又は硫黄原子を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、以下の2つの距離基準、すなわち、カテプシンのCα66の5.5Å以内であること及びCα60の7Å以内であることを同時に満たす少なくとも1個の炭素又は硫黄原子を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
窒素が、6未満のpKaを有し、カテプシンのグリシン66のカテプシンアミドカルボニルと水素結合を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が非極性領域を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が親油性領域を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
が非極性領域を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
が親油性領域を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の第二級アミンの窒素のpKaが水系媒体中で<5である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
が−CF、−CHF、−CHF、−CF及び−CHFRから選択される基であり、Rがハロ、C1−3アルキル、C1−3アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ケト、シアノ、ヘテロシクリル、C3−8シクロアルキル、SO1−3アルキル、NH、NO又はO(C=O)C1−3アルキルから選択される1から4個の置換基で場合によっては置換されていてもよいC1−6アルキル、アリール又はヘテロアリールであり、mが0から2の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
が、カテプシンのCα25の5Å以内の少なくとも1個の炭素原子を有する、カテプシン活性部位のサブサイトSに安定に収まる領域を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
前記カテプシンがカテプシンB、F、H、K、L、L、O、S、W又はZから選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記化合物がカテプシンのシステイン25の硫黄と共有結合を形成する、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
が非免疫原性である、請求項14に記載の化合物。
【請求項18】
前記化合物が、精製酵素アッセイにおいて10マイクロモル濃度未満のIC50を有するカテプシンの活性部位に結合する、請求項14に記載の化合物。
【請求項19】
共有結合が前記化合物の求電子性カルボニル炭素に対して形成される、請求項14に記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物とカテプシンの間で共有結合が形成されない、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
薬剤として許容される担体に付随して、請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩を含む、薬剤組成物。
【請求項22】
カテプシン活性を阻害する医薬品、又は哺乳動物におけるカテプシン依存性症状を治療し、若しくは予防する医薬品、又は哺乳動物における骨量の減少を阻止し、若しくは骨量の減少を抑制する医薬品、又は哺乳動物における骨粗しょう症を治療し、若しくは予防する医薬品、又は哺乳動物におけるリウマチ様関節炎症状を治療し、若しくは予防する医薬品、又は哺乳動物における骨関節炎の進行を治療し、若しくは予防する医薬品、又は哺乳動物における癌を治療する医薬品の製造における請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩の使用。
【請求項23】
薬物療法に使用するための、請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物又はその薬剤として許容される塩。
【請求項24】
請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物又は薬剤として許容されるその塩の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるカテプシン依存性症状を治療し、若しくは予防する方法、又は哺乳動物における骨量の減少を阻止し、若しくは骨量の減少を抑制する方法、又は哺乳動物における骨粗しょう症を治療し、若しくは予防する方法、又は哺乳動物におけるリウマチ様関節炎症状を治療し、若しくは予防する方法、又は哺乳動物における骨関節炎の進行を治療し、若しくは予防する方法、又は哺乳動物における癌を治療する方法。

【公表番号】特表2007−503401(P2007−503401A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524194(P2006−524194)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001577
【国際公開番号】WO2005/021487
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】