説明

カテーテルとコネクタ片とを含む装置、及びカテーテルの通過のための弁

密封されかつ同時に点滴カテーテル(6)の可動性及び正確な位置決めを可能にするアクセスルートを提供するために、点滴カテーテル(6)と、気管内チューブに取り付けるためのコネクタ片1とを含む装置が提案されている。コネクタ片(1)は、チューブに取り付けるための遠位端部(1a)と、換気及び/又は吸引装置に取り付けるための近位端部(1b)とを有しており、カテーテル(6)の挿入のために働きかつ弁(2)が配置された分枝部(5)を有する。弁(2)は、少なくとも一部の領域において、弾性変形可能な材料から形成されており、カテーテル(6)の挿入によって開放されることができる。弁はさらに、近位側貫通孔(21)を有しており、この近位側貫通孔の内壁は、カテーテル(6)と内壁との間における流体の軸方向流れに対するシールを提供する手段を有しており、弁は、貫通孔から遠位方向に、くちばし区分(22)を有しており、このくちばし区分は、くちばし先端部(23)において、通常は閉鎖されているスリット(24)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤及びその他の液体を患者の肺に供給するための装置、特に、微細に分散された肺表面活性剤を肺内に点滴するための、カテーテル及びコネクタ片を含む装置、及びカテーテルの通過のための弁、特にコネクタ片に受容されるための弁に関する。装置は、気管内チューブ又は気管内挿入管に取り付けられることができる。
【0002】
従来技術
臨床分野において、気管内チューブ又は気管内挿入管はしばしば患者の呼吸を補助するために使用される。これらの管はほとんどの場合、換気装置に加えて、患者の気管及び気管支に蓄積する粘液及びその他の液体を除去するための吸引装置をも含む。これらの装置は、適切なコネクタ片によって気管内チューブに取り付けられている。
【0003】
さらに、例えば肺損傷の場合には肺を薬剤によって治療することが必要であるか、又は気道に薬剤を投与することが望ましい。治療及び/又は薬剤の投与は直接肺内に行われることができる。より良好な取込みにより、適切な薬剤は特に、例えばここで引用される国際公開第95/032992号パンフレットに記載されているような微細に分散された肺表面活性剤である。
【0004】
肺への薬剤の供給が患者に関してできるだけ問題なく、患者の状態が不都合な影響を受けないように、取外し可能な点滴カテーテルが、コネクタ片を介して気管内チューブ内へ直接に導入され、肺内の所望の位置に到達させられる。したがって、チューブ、換気装置又は吸引装置を取り外すことは不要である。外套面において、カテーテルには、気道への挿入深さを監視するためのマークが設けられていることができる。さらに、放射線不透過性マークが、カテーテルの先端の近くの外套面に配置されることができ、X線映像を利用して極めて正確な位置決めを可能にする。
【0005】
気管内チューブへの吸引装置、換気装置及びカテーテルの取付けを可能にするコネクタ片が米国特許第6575944号明細書に記載されている。
【0006】
一般的な形式のコネクタ片においては、カテーテルを、液体がコネクタ片からカテーテルを越えて逃げることができないように固定することが重要である。さらに、所望の位置に到達した後に、カテーテルは、滑らないように固定されなければならない。このことは、例えばねじ山が設けられたキャップを使用して行われ、ねじ山は、コネクタ片に螺合させられると、締付け顎によってカテーテルを固定する。前記シーリングはほとんどの場合、一方向弁、例えば通常の状態において、すなわちカテーテルが取り外されている場合には閉鎖され、カテーテルが挿入されると開放し、カテーテルの導入を許容しかつ同時にカテーテルを密にシールするようになっているダックビルバルブと呼ばれるもの、を用いることによって達成される。しかしながら、従来技術において使用されるバルブにおいて、十分なシールを保証するために、弁はカテーテルを極めて密に包囲しなければならないが、このことはカテーテルの可動性を妨げ、チューブへの挿入時により大きな力が加えられることになり、ひいては、カテーテルの正確な位置決めをより困難にし、怪我の危険性を増大させるということを鑑みると問題を生じる。これに対して、チューブの保持が緩すぎると、特に換気がほとんどの場合呼気終末陽圧において行われるので、液体及び/又は換気ガスの望ましくない漏れ出しを生じるおそれがある。
【0007】
発明の開示
したがって、本発明の目的は、密封されておりかつ同時にカテーテルの移動性及び正確な位置決めを可能にするアクセスルートを提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する、点滴カテーテル及び関連するコネクタ片を含む装置と、請求項6の特徴を有する弁とによって達成された。有利な実施形態は従属請求項に示されている。
【0009】
点滴カテーテル及び関連するコネクタ片を含む本発明による装置は、気管内チューブに取り付けられることができる。弁は、点滴カテーテルを通過させるために働きかつ、コネクタ片に挿入されることができ、カテーテルが挿入されていない時にはカテーテルアクセスルートを閉鎖する。カテーテルの挿入時には、カテーテルの外壁と弁開口との間の流体流れが最小化されることが保証される。
【0010】
つまり、本発明による装置は、点滴カテーテルとコネクタ片とを含み、コネクタ片は、気管内チューブに取り付けるための遠位端部と、換気及び/又は吸引装置に取り付けるための近位端部とを有している。コネクタ片はさらに、カテーテルの挿入のために働く、弁が受容座部に配置された分枝部を有する。弁は、弾性変形可能な材料を有しており、カテーテルを挿入することによって開放されることができる。弁はさらに、近位側貫通孔を有しており、この近位側貫通孔の内壁は、カテーテルと内壁との間の流体の軸方向流れに対してシールするための手段を有しており、貫通孔から遠位方向に、くちばし区分を有しており、このくちばし区分は、くちばし先端部において、通常は閉鎖されているスリットを有している。くちばし先端部を備えた設計と、カテーテルが分枝部の方向から挿入されることができるようにコネクタ片に嵌め込まれた弁の位置とは、カテーテルチューブが取り外された時に、くちばし先端部のスリットが、換気及び/又は吸引装置の内部過圧によって互いに押し付けられることを保証する。これにより、カテーテルは、弁の貫通孔を通じてコネクタ片に挿入されることができ、次いで弁を開放させ、その後、カテーテルはさらに分枝部を通ってコネクタ片内へ、及びチューブを介して肺内の所望の位置へ到達する。内壁に設けられたシール手段は、薬剤がチャージされた液体又はガス(例えば換気ガス)カテーテルを通って漏れ出すことができる状況と、その結果薬剤の所望の用量が患者に投与されない状況とを回避する。したがって、シール手段は、呼吸器官への微生物の望ましくない進入をも回避する。カテーテルは、カテーテルが依然として容易に可動かつ位置決め可能であるように、シーリング手段によって包囲されている。対照的に、点滴カテーテルが挿入されていない状態(弁の通常状態)においては、弁のくちばし先端部における閉鎖されたスリットが、液体又はガスの通過を阻止する。
【0011】
分枝部に取り付けるためにカテーテルの遠位端部に設けられた結合キャップと、カテーテルの近位端部領域に設けられた結合キャップとの間において、前記カテーテルは特に好適には、カテーテルを包囲した保護フィルムを有している。このことは、結合キャップの近傍における微生物の進入を阻止する一方、カテーテルがほぼフィルムを介して手によって案内されることができるのでカテーテルの無菌の取扱いを可能にする。別の好適な実施形態において、点滴カテーテル及び/又はコネクタ片には、梱包、包装、運搬、開梱及び取扱い時の汚染又は微生物進入を回避するために、液体及び/又はガス通路の全ての端部に取り外し可能な保護キャップが取り付けられる。保護キャップは好適には、最終的な使用の直前に取り外される。
【0012】
同様に、カテーテルは好適には、その長さに沿って、チューブに対するカテーテルの遠位端部の位置を使用者に示すマークを有する。このことは、カテーテルの正確な位置決め、ひいては、肺への薬剤の目標の定まった局所的な投与を可能にする。別の好適な実施形態において、前記マークは、カテーテルの全ての側から読取り可能である。別の好適な実施形態において、コネクタ片は、カテーテルのマークの視覚的な読取りを可能にする透明な材料に基づき、フラッグウィンドウを含むがこれに限定されない、カテーテルの正確な位置を読み取るための手段を有する。
【0013】
カテーテルは好適には、遠位端部の近傍に放射線不透過性インジケータをも有し、付加的に、患者の身体におけるカテーテルの位置がX線映像を利用して視覚的に監視されるようにする。
【0014】
コネクタ片に存在する分枝部は、コネクタ片の遠位端部を通過する長手方向軸線に対して、20゜〜70゜、好適には25゜〜55゜、より好適には35゜〜45゜の角度を形成している。このことは、遠位方向へのカテーテルの挿入を容易にする。
【0015】
弾性材料を有する本発明による弁は、近位側の貫通孔を含み、この貫通孔の内径は、カテーテルと内壁との間の流体の軸方向流れに対するシールを提供する手段を有しており、貫通孔から遠位方向に、弁はくちばし区分を有しており、このくちばし区分は、くちばし先端部において、通常は閉鎖されているスリットを有している。カテーテルは貫通孔を通じて挿入されることができ、次いでカテーテルは弁を開放させる。これと同時に、内壁に設けられたシール手段は、薬剤を含んだ液体又はガスがカテーテルを越えて逃げ出すのを阻止し、微生物の望ましくない進入をも阻止する。カテーテルは、カテーテルが依然として容易に可動及び位置決め可能であるようにシール手段によって包囲されている。カテーテルが挿入されていない場合、弾性材料の復元力がスリットを閉鎖する(弁の通常状態)。閉鎖されたスリットは弁のくちばし先端部における液体又はガスの通過を阻止する。スリットは、例えば、通常状態において、向き合った長い側が互いに密に当接するように設計されている。シール作用はこの場合、材料、例えばシリコーンの適切な選択によって補助されることができる。
【0016】
本発明による装置において及び本発明による弁において、シール手段によって規定された内径は有利には0.05mm〜0.2mm、好適にはカテーテルの外径よりも小さな0.1mm〜0.15mmである。正確な数値は、材料組合せと絶対寸法との間の所望の適合に依存する。最も信頼できる機能はより狭い範囲にあることがわかった。このように、カテーテルが弁に挿入された場合、シール手段はカテーテルの外壁に圧力を加え、この圧力が気密及び液密の包囲を可能にする。しかしながら、前述の範囲内の適合を選択することによって、この圧力は高すぎることはなく、さらに、カテーテルの位置決めのために重要な良好な摺動性をカテーテルに提供し、さらに、患者の気道に対する損傷につながるおそれがあるカテーテルの突然の移動(固着−滑り効果)を阻止する。
【0017】
本発明による装置における及び本発明による弁の貫通孔は好適には、分枝部の受容座部に弁を位置決めするためにシーリングアバットメントとして働くフランジを備えた外壁を有する。これらの手段によって達成される正確な位置決め及びシールは有利である。なぜならば、これらは内壁及びくちばし先端部の機能を補助するからである。アバットメントはさらに、分枝部における対応する受容座部の構造的に単純な構成を可能にする。
【0018】
フランジは好適には、横方向平坦部によって規定された区分を有しており、これらの平坦部は区分の中央において交差しており、中央は丸み付けされており、各平坦部は、くちばし開口におけるスリットに対して平行でかつ区分の中央に位置する接線に対して6゜の角度を形成している。この区分の補助により、受容座部における弁の正確な回転方向位置決めが達成され、これにより、例えば、長手方向範囲におけるくちばし先端部は、挿入された装着カテーテルの可能な曲率の程度に適応させられることができる。
【0019】
本発明による装置と本発明による弁とのシール手段がシーリングリップを含み、このシーリングリップがさらに、好適には内壁に周方向で配置されているならば特に有利である。シーリングリップは、容易に製造されるが、カテーテルの周囲に特に有効なシールをも提供し、ひいては、流体又は薬剤の逃げ出し及び微生物の進入に対して増大した安全性を保証することが分かった。
【0020】
本発明による装置及び本発明による弁において、シーリング手段が2つのシーリングリップを有しており、これらのシーリングリップが好適には内壁に周方向で配置されていると特に有利である。この形式では、前の段落において言及された利点はさらに強化される。さらに、第2のシーリングリップは、例えば対象物の外部作用又は事前の不注意な取扱いによって第1のシーリングリップが損傷された場合に、付加的な保護を提供する。
【0021】
好適には、1つ又は複数のシーリングリップは、所定の曲率半径を有する実質的にベル状の断面を有する。カテーテルの挿入時、この形状は、良好なシールを提供しながら低いすべり摩擦を生じるように変形することができる。
【0022】
この場合、シーリングリップの曲率半径は最大でも0.25mmであると特に有利である。この値は、優れたシールを提供しながらすべり摩擦を十分に低く保つことが分かった。
【0023】
2つ以上のシーリングリップの場合、リップの間の結合領域に"谷"が形成され、この谷も曲率半径を有する。この曲率は当然ながらシーリングリップの頂点の曲率の逆である。特に好適には、シーリングリップの間の結合領域の曲率半径は最大でも0.1mmである。これにより、リップは離れすぎることはない。
【0024】
遠位方向で、リップは再び弁の内壁プロフィルに移行する。本発明による装置及び本発明による弁において、くちばし区分に向かって延びかつくちばし区分に最も近く位置するリップの部分の曲率半径は、最大でも0.3mmである。この場合にも、リップの有効幅を制限されており、その結果、カテーテルの通過時の過剰摩擦が制限される。上述のローリングプロセスは単純化される。
【0025】
円筒基本形状から出発して、本発明による装置及び本発明による弁のくちばし区分は好適には、互いに向き合って位置した平坦部を介して楔状に狭まっている。くちばし区分のこの形状は、カテーテルの挿入時に、向き合った平坦部の押出しによって弁の容易な開放を可能にする。弁が戻る場合の閉鎖も、より信頼できるものにされている。
【0026】
特に好適には、弁の長手方向軸線と、くちばし区分の2つの平坦部のそれぞれとの間の角度は、約26゜〜28゜である。この値は、容易な開放及び閉鎖状態における十分なシールに関して最も適切な値であることが証明された。この値の上下への僅かなずれは、不利ではない。
【0027】
本発明による装置及び本発明による弁の好適な実施形態において、弁は、分枝部の受容座部における環状カバーによって固定されている。このカバーは、各使用毎に使捨て弁として交換される弁の迅速かつ単純な挿入及び交換と、確実な固定とを可能にする。環状カバーはここでは弁の外側におけるフランジと相互作用する。
【0028】
最後に、受容座部が、環状蓋を所定の位置に確実にスナップ係合させるためのスナップ係合リップを有すると特に有利である。これにより、カバーは誤って落下することがなく、確実な固定及びシールを可能にし、環状のカバーが規定された位置に到達したことの触覚及び聴覚における指示を提供する。
【0029】
別の好適な実施形態において、圧力損失をさらに回避又は最小化するために及び/又は液体の逆流を回避又は最小化するために、液体通路内に一方向弁が付加的に設けられる。一方向弁は、カテーテルの液体通路の端部内のあらゆるところ又はこの端部に、好適にはカテーテル内に設けられるか、又はカテーテルの噴射部(図3aの6a)に直接結合されている。
【0030】
別の好適な実施形態において、コネクタ片は、カテーテルを結合するために使用されるフランジに加え、別の装置、例えば吸引装置を結合するために使用可能な別のフランジをも有する。図5に示された好適な実施形態において、吸引装置に結合されるフランジは、原理的に、カテーテルを結合するために使用可能なフランジと同一である。
【0031】
別の好適な実施形態において、コネクタ片は、点滴カテーテル及び/又は吸引カテーテル等の装置をコネクタ片の遠位端部1aに向かって案内するための手段を有する。好適な実施形態において、案内するためのこのような手段は、点滴カテーテルのための1つのフランジを備えたコネクタ片のために図4に示された案内リップ(11a及び/又は11b)、及び2つのフランジ、すなわち点滴カテーテルのための1つのフランジ及び例えば吸引カテーテルのための1つのフランジ、を備えたコネクタ片のために図6に示された案内リップ(11a及び/又は11b)である。
【0032】
発明の実施形態
以下に図1から図6までによる例示的な実施形態に基づき発明を説明する。
【0033】
図1(a)には、本発明の実施形態によるコネクタ片(1)が縦断面図で示されている。コネクタ片は、気管内チューブ(図示せず)に取り付けるための遠位側開口1aと、換気及び/又は吸引装置(同様に図示せず)に取り付けるための反対側の近位側開口1bとを有する。分枝部5は、コネクタ片1から横方向に突出しておりかつ、コネクタ片と一体的に形成されている。分枝部5の長手方向軸線51は、コネクタ片1の長手方向軸線11に対して40゜の角度を形成している。コネクタ片5の近位側端部5cは、カテーテルが分枝部5に挿入されていないときには閉鎖キャップ4によって閉鎖されることができる。閉鎖キャップは、例えば、取り外されたときに紛失されないように、ループ4aによって分枝部5に取り付けられていることができる。図1bに示されているように、分枝部の内周に沿って、内径の段部形成及び拡大によって受容座部5aが形成されており、弁2、例えばダックビルバルブと呼ばれるものが、この受容座部5aに挿入されることができる。分枝部から近位方向に、別の段部5dが内周に沿って形成されており、環状カバー3を受容するためのアバットメントとして働く。弁は、このようなカバーによって受容座部5aに確実に保持されることができる。さらに近位方向において、内周に沿ってビード状のスナップ係合リップ5bが設けられており、環状カバー3は、弁2を固定するために設けられた位置にスナップ係合するために、このスナップ係合リップを越えて押し込まれなければならない。この構成は、使用者が常にカバー3を受容座部5d内へ十分に深く押し込むことを保証し、このことはカバー3が脱落するのを防止する。
【0034】
弁2は、弾性変形可能な材料、例えばシリコーンから一片で形成されており、弁の壁部は本質的に、半分包囲された中空体を規定している。互いに垂直な縦断面を示した図2a及び図2bに示されたように、弁の近位端部に貫通孔21が設けられており、カテーテルは、この貫通孔21を通じて弁に挿入されることができる。実質的にベル状の2つのシーリングリップ25は、貫通孔21の内壁に環状に形成されており、これらのシーリングリップ25は、実際の直径を、カテーテルの公称外径よりも小さな0.1〜0.15mmである値Dまで狭めている。
【0035】
以下の寸法は、3.25mmのカテーテルの公称外径に基づく。この場合、シーリングリップを備えない内壁の直径が3.7mmであるのに対し、D=3.1mmである。シーリングリップ25自体は、R1=R1′=0.25mmの曲率半径を有する。曲率半径R1及びR1′は互いに異なるように選択されることも可能である。2つのシーリングリップの間には、"谷"が配置されており、この谷の曲率半径R2=0.1mmである。遠位側のシーリングリップが再び弁の内壁に移行する位置において、関連する曲率半径R3=0.3mmである。
【0036】
遠位方向において、開口21には、くちばし区分22が隣接している。くちばし区分22は実質的に円筒状の基本形状を有しており、この基本形状は、くちばし先端部23に向かって、互いに向き合って位置する2つの平坦部27a及び27bを介して楔状に狭まっている。それぞれの平坦部は、弁の長手方向に位置する直線に対してα=27.1゜の角度を形成している。くちばし先端部自体は平坦であるが、頂点まで狭まっていることもできる。くちばし先端部において、2つの平坦部27a及び27bの仮想交差線に対して平行に、スリット24が形成されており、このスリットは、(例えば射出成形によって)弁を形成した後にくちばし先端部に切り込まれる。カテーテルが挿入されていない通常状態においては、スリットは閉鎖されており、弾性材料であることにより、流体が通過しないように弁をシールしている。スリットの長さは実質的に、弁2の(狭窄されていない)内壁直径に等しい、言い換えれば、この例示的実施形態においては3.7mmである。カテーテルの挿入時、カテーテルの先端が楔形の平坦部27a及び27bの内面に接触し、これらの内面を曲げ、スリット24は口状に開放し、カテーテルが貫通案内されることができる。
【0037】
図2b及び図2cに示されているように、周縁フランジ26が近位側端部において弁の外側に形成されている。弁2が分枝部3に嵌め込まれている場合、このフランジ26は、受容座部5a(分枝部の内径の段部)に当接し、これにより弁2を位置決めするために働く。さらに、フランジの円周の区分は、さもなければ円形であるフランジの有効半径を減じる平坦部26a,26bを特徴とする。この区分の平坦部26a,26bは、区分の中央における接線に対して角度β=6゜を形成している。平坦部の交差個所(区分の中央)は、丸み付けられており、R4=3.9mmの曲率半径を有している。中央を通過するフランジ半径は、くちばし先端部におけるスリット24の向きに対して垂直である。この場合、平坦部26a,26bを使用して、スリット24を備えた弁2を、対応する受容座部内に嵌め込み、制御された向きでこのことを行うことが可能である。
【0038】
最後に、図3a及び図3bには、カテーテル6自体が示されている。カテーテルは、閉鎖キャップ61及び62における開口を通じて案内されており、閉鎖キャップは、遠位側において、コネクタ片1の分枝部5への取付けのために、近位側において、肺表面活性剤を備えた薬剤供給ラインへの取付けのために、働く。カテーテル6は保護スリーブ63によって包囲されており、保護スリーブは、キャップ内側部分61aとキャップ外側部分61bとの間、又はルーアーコネクタ62aとキャップ外側部分62bとの間に締め付けられかつ接着されることによって、結合キャップ61,62に取り付けられている。カテーテル6は長さに沿ってマーク65を有しており、これらのマークは、患者の体内へのカテーテルの挿入深さを視覚的に表すようになっている。さらに、カテーテル6の遠位端部の近くにおいて、放射線不透過性マーク66が設けられており、この放射線不透過性マークは、リアルタイムX線映像を利用して患者の体内でのカテーテル先端部の位置決めを可能にする。
【0039】
当業者は、ここに示された実施例から引き出されかつ本発明の範囲に含まれる別の有利な実施形態を疑いなく見ることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1a】発明の実施形態によるコネクタ片の断面図である。
【図1b】図1aに示された、挿入された弁を備えた分枝部の拡大した詳細図である。
【図2a】本発明による弁の縦断面図である。
【図2b】図2aに示された断面に対して垂直な断面における、弁の縦断面図である。
【図2c】図2aに示された弁の近位側から見た図である。
【図3a】本発明の実施形態によるカテーテルの縦断面図である。
【図3b】カテーテルの側面図である。
【図4】1つのフランジと、案内リップ11a及び11bを備えた、本発明によるコネクタ片の縦断面図である。
【図5】2つのフランジを備えた本発明の実施形態によるコネクタ片の縦断面図である。
【図6】2つのフランジと、案内リップ11a及び11bを備えた、本発明の実施形態によるコネクタ片の縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 コネクタ片、 1a 遠位側開口、 1b 近位側開口、 2 弁、 3 環状カバー、 4a ループ、 5 分枝部、 5a 受容座部、 5b スナップ係合リップ、 5c 近位側端部、 5d 段部、 6 カテーテル、 11 長手方向軸線、 21 貫通孔、 22 くちばし区分、 24 スリット、 25 シーリングリップ、 26 フランジ、 26a,26b 平坦部、 27a,27b 平坦部、 51 軸線、 61,62 閉鎖キャップ、 63 保護スリーブ、 65 マーク、 66 放射線不透過性マーク
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
点滴カテーテル(6)と、気管内チューブに取り付けるためのコネクタ片(1)とが設けられており、該コネクタ片が、前記気管内チューブに取り付けるための遠位側端部(1a)と、換気及び/又は吸引装置に取り付けるための近位側端部(1b)とを有しており、カテーテルを挿入するために働く分枝部(5)が設けられており、該分枝部に弁(2)が配置されており、該弁(2)が、近位側貫通孔(21)を有しておりかつ少なくとも一部の領域において、弾性変形可能な材料から形成されておりかつカテーテル(6)を挿入することによって開放させられることができるようになっている装置において、
前記近位側貫通孔(21)の内壁が、カテーテル(6)と前記内壁との間における流体の軸方向流れに対してシールする手段を有しており、前記弁(2)が、近位側貫通孔(21)から遠位方向にくちばし区分(22)を有しており、該くちばし区分がくちばし先端部(23)において、通常は閉鎖されているスリット(24)を有することを特徴とする、装置。
【請求項2】
分枝部(5)への取付けのための遠位側結合キャップ(61)と、カテーテル(6)の近位側端部領域に設けられた近位側結合キャップ(62)との間において、前記カテーテル(6)が、カテーテルを包囲する保護フィルム(63)を有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
カテーテル(6)が、カテーテルの長さに沿って、チューブに対するカテーテル(6)の遠位端部の位置を使用者に示すマーク(65)を有する、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
カテーテル6が、遠位端部の近くにおいて放射線不透過性インジケータ(66)を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
分枝部(5)の長手方向軸線(51)と、コネクタ片(1)の遠位端部(1a)を通る長手方向軸線(11)とによって形成された角度が、35゜〜45゜である、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
近位側貫通孔(21)を有しておりかつ、少なくとも一部の領域において、弾性変形可能な材料から形成されておりかつ、カテーテル(6)の挿入によって開放されることができる弁(2)において、
弁(2)の近位側貫通孔(21)の内壁が、カテーテル(6)と内壁との間における流体の軸方向流れに対するシールを提供する手段を有しており、前記近位側貫通孔(21)から遠位方向に、弁(2)がくちばし区分(22)を有しており、該くちばし区分が、くちばし先端部(23)において、通常は閉鎖されているスリット(24)を有することを特徴とする、弁。
【請求項7】
シーリング手段によって規定された内径(D)が、0.05mm〜0.2mm、好適には、カテーテルの外径(A)よりも小さな0.1mm〜0.15mmである、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置又は弁。
【請求項8】
貫通孔(21)が、分枝部(5)の受容座部(5a)に弁(2)を位置決めするためのシーリングアバットメントとして働くフランジ(26)を備えた外壁を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置又は弁。
【請求項9】
フランジ(26)が、2つの横方向平坦部(26a,25b)によって規定された区分を有しており、前記平坦部が、区分の中央において交差しており、該中央が好適には丸み付けられており、さらに好適には、それぞれの平坦部が、くちばし開口におけるスリットに対して平行でありかつ区分の中央に位置する接線に対して約6゜の角度を形成している、請求項8記載の装置又は弁。
【請求項10】
シーリング手段が、好適には内壁に周方向に配置されたシーリングリップ(25)を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置又は弁。
【請求項11】
シーリング手段が、好適には内壁に周方向に配置された2つのシーリングリップ(25)を含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置又は弁。
【請求項12】
シーリングリップ(25)が、好適には一定の曲率半径を備えた実質的にベル状の断面を有する、請求項10又は11記載の装置又は弁。
【請求項13】
シーリングリップ(25)の曲率半径(R1,R1′)が最大でも0.25mmである、請求項12記載の装置又は弁。
【請求項14】
シーリングリップ(25)の間の結合領域が、最大でも0.1mmの曲率半径(R2)で湾曲させられている、請求項11記載の装置又は弁。
【請求項15】
弁(2)が、くちばし区分と、隣接するシーリングリップ(25)との間の移行部において、最大でも0.3mmの曲率半径(R3)で湾曲させられている、請求項12から14までのいずれか1項記載の装置又は弁。
【請求項16】
くちばし区分(22)が、円筒状基本形状から始まって、互いに向き合って位置した平坦部(27a,27b)を介して楔状に狭まっている、請求項1から15までのいずれか1項記載の装置又は弁。
【請求項17】
弁(2)の長手方向と、くちばし区分(22)の2つの平坦部(27a,27b)との間の角度(α)が、約26゜〜約28゜である、請求項1から16までのいずれか1項記載の装置又は弁。
【請求項18】
弁(2)が、分枝部(5)に環状カバー(3)によって固定されることができる、請求項1から17までのいずれか1項記載の装置又は弁。
【請求項19】
受容座部(5a)が、環状蓋(3)を所定の位置に確実にスナップ係合させるためのスナップ係合リップ(5b)を有する、請求項1から18までのいずれか1項記載の装置又は弁。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−534098(P2008−534098A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503501(P2008−503501)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061096
【国際公開番号】WO2006/103233
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany
【Fターム(参考)】