説明

カテーテルキット、ガイドワイヤ及びカテーテル

【課題】ガイドワイヤとカテーテルとを一体的に操作することが可能なカテーテルキットを提供する。
【解決手段】近位部11、遠位部12及び内腔13を有するカテーテル10と、先端部21及び後端部22を有するガイドワイヤ20とからなるカテーテルキット1であって、ガイドワイヤ20の先端部21の外側面には拡径部21bが形成されており、遠位部12における内腔13の内側面には、内腔13の中心軸方向に突出した遠位側突出部13bと、内腔13の中心軸方向に突出しており遠位側突出部13bよりも近位部11側に位置する近位側突出部13cと、遠位側突出部13b及び近位側突出部13cの間に形成された収容部13dとが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルキット、ガイドワイヤ及びカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳、心臓、肝臓又は腹部等の臓器の疾患や、血管等の管腔の疾患を治療する治療方法として、インターベンショナルラジオロジー(以下、IVR治療ともいう)が知られている。
【0003】
IVR治療では、内腔が形成されたカテーテルと、カテーテルの内腔内に挿通されるガイドワイヤとを組み合わせてなるカテーテルキットを使用する。
【0004】
カテーテルキットを用いたIVR治療では、放射線透視像や超音波像を観察しながら、経皮的に血管内に挿入したカテーテルキットを脳、心臓、肝臓又は腹部等の臓器の病変部まで導入した後、治療薬、塞栓物質、造影剤等を投与したり、血栓等の吸引をしたりすることにより病変部の治療を行う。
【0005】
より詳細にIVR治療の手技について説明すると、手技者は、まず経皮的に血管内に挿入したガイドワイヤを病変部近くまで進めた後、カテーテルの内腔にガイドワイヤを挿通させて病変部近くまでカテーテルを進める。
【0006】
次に、カテーテルの内腔を介して治療薬等を確実に投与するため、カテーテルの遠位部を目的とする病変部に位置決めする作業が行われる。
この作業において手技者は、例えば、カテーテルを左手で保持固定しつつ、右手でガイドワイヤを所望の血管を次々選択しつつ押し進めて病変部へとガイドワイヤを少しずつ接近させる。ガイドワイヤがある程度押し進められた後、今度はガイドワイヤを右手で保持固定しつつ、左手でカテーテルをガイドワイヤに沿わせて押し進める。
すなわち、手技者は、尺取虫の動作のように、両手を使用してカテーテルとガイドワイヤとを交互に押し進める動作を繰り返すことにより、カテーテルの遠位部を目的とする病変部に位置決めする。
【0007】
しかしながら、このような従来のカテーテルキットを用いた手技方法では、手技者の両手が塞がっており、作業の自由度が低く、また、カテーテルの遠位部を目的とする病変部に正確に位置決めするのに高い技術を要するという問題がある。
【0008】
係る問題を解決するためのカテーテルキットとして、特許文献1には、ガイドワイヤと、ガイドワイヤが内腔を挿通するカテーテルとからなるカテーテルキットであって、ガイドワイヤの先端部にバルーンやエラストマー製O−リング等からなる拡張可能セグメントが形成されており、拡張可能セグメントが拡張状態になると、拡張可能セグメントとカテーテルの内腔の一部とが接触してカテーテルキットが血管内を一体的に移動することができるように形成されたカテーテルキットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−175497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のカテーテルキットは、次に掲げる課題がある。
【0011】
1.拡張可能セグメントとしてバルーンを採用した場合には、バルーンを拡張及び収縮させるための拡張用液体を流通させるためのルーメンや機構等をガイドワイヤの内部に形成する必要があり、ガイドワイヤの構造が複雑化してしまう。
【0012】
2.ガイドワイヤの構造が複雑化する結果、ガイドワイヤの柔軟性が低くなり、また、より細径の血管に発生した病変部の治療を目的としてガイドワイヤ等を小径化することが困難であるという問題がある。
【0013】
3.拡張可能セグメントとしてエラストマー製O−リングを採用した場合には、O−リングを能動的に拡張し、カテーテルの内腔の一部と接触させるためのハンドルを基端部に形成する必要があり、やはりガイドワイヤの構造が複雑化してしまい、上記1.と同様の問題がある。
【0014】
4.カテーテルキットは、ガイドワイヤに形成された拡張可能セグメントとカテーテルの内腔の一部とが接触した状態で、血管内を一体的に移動する。この一体的な移動を達成するために、拡張可能セグメントとカテーテルの内腔の一部とが接触した際に生じる摩擦抵抗を利用しているのであるが、摩擦抵抗よりも大きな押込力や引張力がガイドワイヤに加えられた場合には、比較的容易に拡張可能セグメントとカテーテルの内腔の一部との接触が解除されてしまい、もはや一体的な移動をすることができなくなる。
特に、複雑に入り組んだ深部の血管等においては、この傾向が顕著であり、一体的な移動が困難になり、手技者によるカテーテルキットの自由な操作が妨げられることがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
課題1.〜4.を解決することができる本発明に係るカテーテルキットは、
近位部及び遠位部を有しており、前記近位部に開口した近位開口部から前記遠位部に開口した遠位開口部まで連通する内腔が形成されたカテーテルと、
先端部及び後端部を有しており、前記先端部が前記近位開口部から挿入されて前記遠位開口部まで前記内腔内を挿通可能に形成されたガイドワイヤと、からなるカテーテルキットであって、
前記先端部の外側面には、拡径部が形成されており、
前記遠位部における前記内腔の内側面には、前記内腔の中心軸方向に突出した遠位側突出部と、前記内腔の中心軸方向に突出しており前記遠位側突出部よりも前記近位部側に位置する近位側突出部と、前記遠位側突出部及び前記近位側突出部の間に形成された収容部と、が形成されており、
前記遠位側突出部、前記近位側突出部及び前記収容部は、前記ガイドワイヤを前記内腔内に挿通させる際に前記拡径部が前記収容部に収容されるように形成されており、かつ、前記ガイドワイヤを前記内腔内から抜去する際に前記拡径部が前記収容部から開放されるように形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記遠位側突出部の突出長は、前記近位側突出部の突出長よりも大きいことが望ましい。
【0017】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記拡径部及び前記近位側突出部のうちの少なくとも一の部分は、変形可能な弾性材料から形成されていることが望ましい。
【0018】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記遠位側突出部及び前記収容部のうちの少なくとも一の部分は、低摩擦性材料から形成されていることが望ましい。
なお、本明細書において、低摩擦性材料とは、カテーテルキットが体外にあり血液等の体液と接触していない乾燥状態で摩擦抵抗が低い材料、及び、カテーテルキットが血管等の管腔内に挿入され、体液と接触した状態で摩擦抵抗が低い材料のことをいい、具体的に例示すると、ステンレスやNi−Ti合金等の金属材料、ヒアルロン酸等の親水性材料、ポリウレタン系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンあるいは直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレンやポリプロピレン、及び、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の材料をいう。採用しうる親水性材料の具体例については、後述する。
【0019】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記弾性材料は、エラストマーを含んでおり、前記低摩擦性材料は、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂又は親水性材料を含んでいることが望ましい。
【0020】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記拡径部は、前記先端部の外側面に形成されたリング状の突起からなることが望ましい。
【0021】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記先端部は、一定方向にシェイピングされていることが望ましい。
【0022】
本発明に係るガイドワイヤは、前記いずれかの本発明のカテーテルキットに使用されるガイドワイヤであることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るカテーテルは、前記いずれかの本発明のカテーテルキットに使用されるカテーテルであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るカテーテルキットにおいて、拡径部が収容部に収容された様子を模式的に示す全体図である
【図2】本発明に係るカテーテルキットにおいて、拡径部が収容部から開放された様子を模式的に示す全体図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、図1に示す拡径部が収容部に収容されたカテーテルキットを用いて分岐血管を選択する様子を示した説明図である。
【図4】本発明に係るカテーテルキットの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1及び図2を参照しつつ、本実施形態のカテーテルキットについて説明する。
なお、図1及び図2において、カテーテルの遠位部側及びガイドワイヤの先端部側が体内に挿入される部分であり、カテーテルの近位部側及びガイドワイヤの後端部側が医師等の手技者によって操作される部分である。
図1及び図2においては、カテーテル及びガイドワイヤが長尺であるので、その中間部分を省略して示している。また、便宜上、ガイドワイヤの先端部とコアシャフトの先端部とを同じ符号で示し、ガイドワイヤの後端部とコアシャフトの後端部とを同じ符号で示している。
【0026】
図1及び図2に示すカテーテルキット1は、近位部11及び遠位部12を有しており、近位部11に開口した近位開口部11aから遠位部12に開口した遠位開口部12aまで連通する内腔13が形成されたカテーテル10と、先端部21及び後端部22を有しており、先端部21が近位開口部11aから挿入されて遠位開口部12aまで内腔13内を挿通可能に形成されたガイドワイヤ20とからなる。
【0027】
ガイドワイヤ20の先端部21の外側面21aには、拡径部21bが形成されている。
【0028】
遠位部12における内腔13の内側面13aには、内腔13の中心軸方向に突出した遠位側突出部13bと、内腔13の中心軸方向に突出しており遠位側突出部13bよりも近位部11側に位置する近位側突出部13cと、遠位側突出部13b及び近位側突出部13cの間に形成された収容部13dとが形成されている。
【0029】
遠位側突出部13b、近位側突出部13c及び収容部13dは、ガイドワイヤ20を内腔13内に挿通させる際に拡径部21bが収容部13dに収容されるように形成されており、かつ、ガイドワイヤ20を内腔13内から抜去する際に拡径部21bが収容部13dから開放されるように形成されている。
【0030】
遠位側突出部13b、近位側突出部13c及び収容部13dは、ガイドワイヤ20を内腔13内に挿通させる際に拡径部21bが収容部13dに収容されるように形成されているので、手技者がガイドワイヤ20の後端部22を把持してガイドワイヤ20を押込操作した場合には、図1に示すように、収容部13dに収容されたガイドワイヤ20の拡径部21bと収容部13dの遠位側突出部13bとが当接することにより、カテーテル10がガイドワイヤ20の動きに追従して一体的に押込操作されることになる。
【0031】
一方、拡径部21bが収容部13dに一旦収容された状態から手技者がガイドワイヤ20を比較的弱い力で引張操作した場合には、収容されたガイドワイヤ20の拡径部21bと収容部13dの近位側突出部13cとが当接することにより、カテーテル10がガイドワイヤ20の動きに追従して引張操作されることになる。
【0032】
また、遠位側突出部13b、近位側突出部13c及び収容部13dは、ガイドワイヤ20を内腔13内から抜去する際に拡径部21bが収容部13dから開放されるように形成されているので、手技者がガイドワイヤ20を比較的大きな力で引張操作(抜去操作)した場合には、図2に示すように、収容されたガイドワイヤ20の拡径部21bが収容部13dから開放され、カテーテル10の内腔13からガイドワイヤ20を抜去することができる。
【0033】
つまり、手技者は、従来のように尺取虫様に両手を使用せずとも、カテーテルキット1を片手で一体的に操作することが可能であり、作業の自由度が高く、カテーテル10の遠位部12を病変部に正確に位置決めすることができる。
また、バルーンやO−リングのように、拡張及び収縮動作に必要な複雑な構造を必要とせず、ガイドワイヤ20を小径化してより細径の血管の病変に適した構成とすることができる。
さらに、ガイドワイヤ20の押込操作及び引張操作を行う場合においても、拡径部21bが収容部13dに収容されているので、ガイドワイヤ20とカテーテル10とを一体的に操作しやすく、その後の抜去操作により、ガイドワイヤ20を容易にカテーテル10の内腔13から抜去することができる。
【0034】
以下、本実施形態に係るカテーテルキットのより具体的な構成について、説明する。
【0035】
図2に示すように、遠位側突出部13bの突出長Lは、近位側突出部13cの突出長lよりも大きい。
そのため、押込操作時には、収容部13dに収容された拡径部21bと収容部13dの遠位側突出部13bとがより確実に当接しやすくなり、カテーテルキット1を一体的に押込操作しやすくなる。
一方、抜去操作時には、拡径部21bが収容部13dの近位側突出部13cに引っかかりにくく、収容部13dからより容易に開放されやすいので、ガイドワイヤ20の抜去が容易である。
【0036】
遠位側突出部13bの突出長Lは、0.1〜0.6mmであることが望ましく、近位側突出部13cの突出長lは、0.05〜0.5mmであることが望ましい。
収容部13dの長さは、1〜50mmであることが望ましい。
【0037】
遠位側突出部13b及び収容部13dのうちの少なくとも一の部分は、低摩擦性材料から形成されている。そのため、カテーテル10を固定した状態で、カテーテル10の内腔13内に挿通されたガイドワイヤ20の先端部21を容易に回転させることができる。
従って、図3(a)に示すように、本管Xから分岐した分岐血管Yを選択する場合には、例えば、カテーテル10の遠位開口部12aからガイドワイヤ20の先端部21を前方へ突出させた状態で、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させて所望の分岐血管Yを容易に選択することができる。
そして、その後は、図3(b)に示すように、カテーテル10をガイドワイヤ20に追従させて分岐血管Yへとカテーテル10をスムーズに進めることができる。
特に、カテーテルキット1を深部の病変部近傍まで導いた場合であっても、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させやすく、細径の血管をより選択しやすい。
遠位側突出部13b及び収容部13dは、ともに低摩擦性材料から形成されていることが望ましい。
【0038】
低摩擦性材料としては、例えば、ステンレスやNi−Ti合金等の金属材料、ヒアルロン酸等の親水性材料、ポリウレタン系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンあるいは直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレンやポリプロピレン、及び、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の材料が挙げられる。
低摩擦性材料は、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂又は親水性材料を含んでいることが望ましい。
【0039】
なお、分岐血管を選択する場合において、ガイドワイヤの先端部は、必ずしもカテーテルの遠位開口部から前方に突出している必要はない。例えば、ガイドワイヤの先端部が一定方向にシェイピングされている場合には、ガイドワイヤの先端部をカテーテルの遠位開口部から突出させずに内腔内に収容することにより、ガイドワイヤの先端部の形状に沿ってカテーテルの遠位部の形状を変化させた状態とし、分岐血管を選択してもよい。
【0040】
拡径部21b及び近位側突出部13cのうちの少なくとも一の部分は、変形可能な弾性材料から形成されている。
それゆえ、抜去操作時には、拡径部21b及び近位側突出部13cのうちの少なくとも一の部分が変形し、拡径部21bが収容部13dからより開放されやすくなるので、ガイドワイヤ20の抜去が極めてスムーズである。
拡径部21b及び近位側突出部13cは、ともに変形可能な弾性材料から形成されていることがより望ましい。
【0041】
弾性材料としては、例えば、エラストマー、天然ゴム、またはイソプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の各種合成ゴム、ポリアミド系、ポリエステル系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
変形可能な弾性材料は、エラストマーを含んでいることが望ましく、各種熱可塑性エラストマーを含んでいることがより望ましい。
【0042】
変形状態でない自由状態における拡径部21bの形状は、図1に示すように、ガイドワイヤ20の先端部21の外側面に形成されたリング状の突起である。
拡径部21bの突起は、拡径部21bが収容部13dに収容された場合に、遠位側突出部13bと当接するように形成されている。
また、拡径部21bの突起が変形可能な弾性材料から形成されている場合には、図2に示すように、拡径部21bが近位側突出部13cと当接したとしても拡径部21bが変形し、拡径部21bが収容部13dから開放される。
なお、拡径部21bの突起は、近位側突出部13cと当接しないことにより、ガイドワイヤ20を内腔13内から抜去する際に拡径部21bが収容部13dから開放されるように形成されていてもよい。
【0043】
拡径部21bの最大突出長Pは、0.05〜0.6mmであることが望ましい。
拡径部21bの長さは、1〜50mmであることが望ましい。
【0044】
また、先端部21は、一定方向にシェイピングされている。
それゆえ、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させることにより、血管を選択しやすくなる。
なお、ガイドワイヤ20の先端部21がシェイピングされていても、通常、カテーテル10の遠位部12は柔軟性を有しておりある程度は変形可能であるので、ガイドワイヤ20を内腔13へ挿入したり、抜去したりすることに対してそれほど障害となることはない。
【0045】
以下、本実施形態に係るカテーテルキットのその他の構成について、説明する。
【0046】
まず、カテーテル10の構成について詳述する。
【0047】
カテーテル10は、半径方向に内側から順に内層14、内層14上に形成された補強部材15、補強部材15が埋め込まれた中間層16、中間層16上に形成された外層17、及び、上述した収容部13dが形成されており最先端に位置する先端チップ18からなる。
【0048】
内層14は樹脂から形成された中空管であり、内部にガイドワイヤ20を挿入可能な内腔13を有している。
内層14を形成する樹脂材料としては、例えば、PTFE等のフッ素系樹脂が望ましい。ガイドワイヤ20との摺動抵抗が少なくなるからである。
【0049】
補強部材15としては、例えば、複数の素線を編んでなる編組や、単一又は複数の素線を巻回してなるコイル等を採用してもよい。
図1及び図2に示す例では、補強部材15として編組を使用している。
【0050】
編組又はコイルを構成する素線の材料としては、例えば、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス又は析出硬化ステンレス等のステンレス、Ni−Ti合金等の超弾性合金、タングステン、放射線不透過性金属である白金、金、タングステン等の材料から形成されていることが望ましい。
【0051】
中間層16及び外層17を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。これらの中では、ポリアミドエラストマーが望ましい。
【0052】
先端チップ18は、カテーテル1の遠位側開口部12aを構成する円筒状の部材である。
先端チップ18の内側面には、上述した構成の遠位側突出部13b、近位側突出部13c及び収容部13dが形成されている。
【0053】
先端チップ18には、タングステンやビスマス等の放射線不透過性の粉末が65〜90重量%含有されていてもよいし、白金やタングステン等から形成された放射線不透過性のリングが埋め込まれていてもよい。手技中の視認性を高めることができるからである。
【0054】
次に、ガイドワイヤ20の構成について詳述する。
【0055】
ガイドワイヤ20は、先端部21及び後端部22を有しておりガイドワイヤ20の中心軸を形成するコアシャフト23と、先端部21の外周に巻回された第一コイル体24と、第一コイル体24の外周に巻回された第二コイル体25とから形成されている。
【0056】
コアシャフト23は、細径の先端部21と、先端部21に結合したテーパ状の中間部26と、中間部26に結合した大径の後端部22とから形成されている。
そのため、コアシャフト23は、後端部22側から先端部21側に向かうにつれて徐々に剛性が低く柔軟になっている。
【0057】
第二コイル体25は、単一の素線27をらせん状に巻回することにより形成されており、内部に貫通孔を有する略直線状の管状体である。
【0058】
第二コイル体25の内部には、コアシャフト23の先端部21、コアシャフト23の中間部26の一部、並びに、コアシャフト23の先端部21及び中間部26の一部を覆っている第一コイル体24が挿入されている。
【0059】
第一コイル体24は、複数の素線30をらせん状に巻回することにより形成された多条コイル体であり、内部に貫通孔を有する略直線状の管状体である。
そのため、第一コイル体24は、単一の素線を巻回してなる単条コイルに比べて、塑性変形を生じにくい。また、第一コイル体24の一方の端部を回転させた場合には、他方の端部が追従して回転しやすく、回転追従性が高い。回転追従性が高い第一コイル体24がガイドワイヤ20の先端部21に配置されているので、ガイドワイヤ20の先端部21をより容易に回転させることができる。
【0060】
第一コイル体24は、第二コイル体25の最先端から後端側に離間した位置の内側に先端部31を有しており、拡径部21bの内側に後端部32を有している。
【0061】
第一コイル体24を形成する素線30又は第二コイル体25を形成する素線27を形成する材料としては、例えば、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、タングステン線等の材料が挙げられる。
上記ステンレスとしては、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス及び析出硬化ステンレス等のステンレスが挙げられる。
これらのなかでは、オーステナイト系ステンレスであることが望ましく、特にSUS304、SUS316又はSUS316Lであることがより望ましい。
【0062】
コアシャフト23の先端部21の最先端と、第二コイル体25の最先端とは、先端ロウ付け部33により互いに固定されている。
【0063】
先端ロウ付け部33の形状は、円錐状であり、該円錐の頂点がガイドワイヤ20の最先端を形成している。
【0064】
コアシャフト23の中間部26と、第二コイル体25の最後端とは、後端ロウ付け部34により互いに固定されている。
その他、第二コイル体25とコアシャフト23とは、一個又は複数個、任意の位置に形成された中間ロウ付け部35により互いに固定されている。なお、中間ロウ付け部35は、形成されていなくともよい。
【0065】
第一コイル体24の最先端とコアシャフト23の先端部21とは、内側先端ロウ付け部36により互いに固定されており、第一コイル体24の最後端と中間部26とは、内側後端ロウ付け部37により互いに固定されている。
なお、第一コイル体24と、コアシャフト23の先端部21及び中間部26とを互いに固定する内側中間ロウ付け部が一個又は複数個、任意の位置に形成されていてもよい。
【0066】
ガイドワイヤ20の先端部21は、その最先端がカテーテル10の遠位開口部12aから前方へ突出することが可能な程度の長さを有している。
また、遠位開口部12aから前方へ突出したガイドワイヤ20の先端部21は、一定角度で一定方向に曲がっており、シェイピングされている。
シェイピング角度は、目標とする病変部が存在する血管の内径にもよるが、例えば、5〜40°が望ましく、シェイピング長さは、例えば、0.5〜5mmであることが望ましい。
【0067】
カテーテル10の近位部11には、手技者が把持することによりカテーテル10とガイドワイヤ20とを一体的に操作可能なコネクタ30が取り付けられている。
コネクタ30の内部には、カテーテル10の内腔13及び近位側開口部11aと連通した内腔が形成されており、ガイドワイヤ20を挿通させることができる。
【0068】
(変形例)
本発明に係るカテーテルキットにおいて、遠位側突出部の突出長と、近位側突出部の突出長とは、略同一であってもよい。
この場合において、拡径部及び近位側突出部のうちの少なくとも一の部分が変形可能な弾性材料から形成されていることにより、ガイドワイヤを内腔内から抜去する際に拡径部が収容部から容易に開放されるように形成されていることが望ましい。
【0069】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、先端チップ全体が変形可能な弾性材料から形成されており、遠位側突出部及び収容部のうちの少なくとも一の部分が低摩擦性材料によりコーティングされていてもよい。
これにより、近位側突出部が変形可能な弾性材料から形成されており、遠位側突出部及び収容部のうちの少なくとも一の部分が低摩擦性材料から形成されている構成とすることができる。
【0070】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、ガイドワイヤは、コアシャフトと、コアシャフトの外周に巻回された第二コイル体と、必要なロウ付け部とから形成されており、第一コイル体が配置されていないものであってもよい。
【0071】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、拡径部は、第二コイル体の一部を形成する素線がコアシャフトとの間により大きなスペースを空けて巻回されてなるコブ状体であってもよい(図4参照)。係るコブ状体からなる拡径部は、素線とコアシャフトとの間にスペースが形成されているため、ある程度変形可能であり、上述した変形可能な弾性体と同様の効果を発揮することができる。なお、図4の各符号を付した構成は、図1及び図2の各符号を付した構成に対応している。
また、拡径部は、先端部の外周面に形成されており半径方向外側に突出した複数個の突起から形成されていてもよい。
【0072】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、ガイドワイヤの先端部は一定方向にシェイピングされておらず、後端部から先端部にかけて略直線状であってもよい。
【0073】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、ガイドワイヤの先端部は、カテーテルの遠位開口部から前方に突出していなくてもよく、この場合、ガイドワイヤの先端部は、一定方向にシェイピングされていることが望ましい。
【0074】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、ガイドワイヤの種類は、上述したコアシャフトとコイルとからなるコイル式ガイドワイヤに限定されず、コアシャフトとコアシャフトの外周を被覆する樹脂とからなるプラスチッククラッド式ガイドワイヤ又はその他の種類のガイドワイヤであってもよい。
【0075】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、遠位側突出部、近位側突出部及び収容部は、上述したように先端チップの内側面に形成されていてもよいし、遠位開口部側に位置する内層の内側面に形成されていてもよい。
【0076】
本発明のカテーテルキットは、心臓、肝臓、脳等の各種の臓器の疾患治療に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 カテーテルキット
10 カテーテル
11 近位部
12 遠位部
11a 近位開口部
12a 遠位開口部
13 内腔
13a 内腔の内側面
13b 遠位側突出部
13c 近位側突出部
13d 収容部
20 ガイドワイヤ
21 ガイドワイヤ又はコアシャフトの先端部
22 ガイドワイヤ又はコアシャフトの後端部
21b ガイドワイヤの拡径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位部及び遠位部を有しており、前記近位部に開口した近位開口部から前記遠位部に開口した遠位開口部まで連通する内腔が形成されたカテーテルと、
先端部及び後端部を有しており、前記先端部が前記近位開口部から挿入されて前記遠位開口部まで前記内腔内を挿通可能に形成されたガイドワイヤと、からなるカテーテルキットであって、
前記先端部の外側面には、拡径部が形成されており、
前記遠位部における前記内腔の内側面には、前記内腔の中心軸方向に突出した遠位側突出部と、前記内腔の中心軸方向に突出しており前記遠位側突出部よりも前記近位部側に位置する近位側突出部と、前記遠位側突出部及び前記近位側突出部の間に形成された収容部と、が形成されており、
前記遠位側突出部、前記近位側突出部及び前記収容部は、前記ガイドワイヤを前記内腔内に挿通させる際に前記拡径部が前記収容部に収容されるように形成されており、かつ、前記ガイドワイヤを前記内腔内から抜去する際に前記拡径部が前記収容部から開放されるように形成されていることを特徴とするカテーテルキット。
【請求項2】
前記遠位側突出部の突出長は、前記近位側突出部の突出長よりも大きい請求項1に記載のカテーテルキット。
【請求項3】
前記拡径部及び前記近位側突出部のうちの少なくとも一の部分は、変形可能な弾性材料から形成されている請求項2に記載のカテーテルキット。
【請求項4】
前記遠位側突出部及び前記収容部のうちの少なくとも一の部分は、低摩擦性材料から形成されている請求項3に記載のカテーテルキット。
【請求項5】
前記弾性材料は、エラストマーを含んでおり、
前記低摩擦性材料は、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂又は親水性材料を含んでいる請求項4に記載のカテーテルキット。
【請求項6】
前記拡径部は、前記先端部の外側面に形成されたリング状の突起からなる請求項5に記載のカテーテルキット。
【請求項7】
前記先端部は、一定方向にシェイピングされている請求項6に記載のカテーテルキット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のカテーテルキットに使用されるガイドワイヤ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のカテーテルキットに使用されるカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111338(P2013−111338A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261441(P2011−261441)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】