説明

カテーテルキット、ガイドワイヤ及びカテーテル

【課題】
本発明は、ガイドワイヤとカテーテルとを一体的に操作することが可能であり、しかも、ガイドワイヤの先端部を回転させて所望の分岐血管を選択することが容易なカテーテルキットを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のカテーテルキットは、近位部、遠位部及び内腔を有するカテーテルと、先端部及び後端部を有するガイドワイヤとからなるカテーテルキットであって、ガイドワイヤの先端部の外側面には拡径部が形成されており、遠位部における内腔の内側面には、近位開口部から遠位開口部までガイドワイヤを内腔内に挿通した際に拡径部と当接可能な当接部が形成されており、拡径部及び当接部のうちの少なくとも一の部分は、低摩擦性材料から形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルキット、ガイドワイヤ及びカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳、心臓、肝臓又は腹部等の臓器の疾患や、血管等の管腔の疾患を治療する治療方法として、インターベンショナルラジオロジー(以下、IVR治療ともいう)が知られている。
【0003】
IVR治療では、放射線透視像や超音波像を観察しながら経皮的に血管内に挿入したカテーテル等の医療用機械器具を脳、心臓、肝臓又は腹部等の臓器の病変部まで導入した後、治療薬、塞栓物質、造影剤等を投与したり、血栓等の吸引をすることにより病変部の治療を行う。
【0004】
IVR治療に使用されるカテーテルとしては、例えば、経皮的冠動脈形成術等に使用されるガイディングカテーテルのように硬質で大径なカテーテルではなく、充分に柔軟であり、かつ、外径及び内径が小さいマイクロカテーテルが使用されることが多い。
マイクロカテーテルは、外径及び内径が小さいので、上述した臓器に複雑に張り巡らされた血管の中でも、特に細径であり、湾曲した末梢血管に形成された深部の病変部まで到達可能であり、治療薬等を深部の病変部へ確実に投与することができるからである。
【0005】
このようなマイクロカテーテルをIVR治療に使用する場合には、通常、手技者は、まず、病変部近くまでガイドワイヤを進めた後、マイクロカテーテルの内腔にガイドワイヤを挿通させて病変部近くまでマイクロカテーテルを進める。
【0006】
次に、治療薬等を確実に投与するため、マイクロカテーテルの遠位部を病変部に位置決めする作業が行われるのであるが、この作業において手技者は、例えば、マイクロカテーテルを左手で保持固定しつつ、右手でガイドワイヤを押し進めて病変部へとガイドワイヤを接近させる。その後、今度はガイドワイヤを右手で保持固定しつつ、左手でマイクロカテーテルをガイドワイヤに沿わせて押し進める。このような一連の作業を繰り返し行う。
すなわち、手技者は、尺取虫の動作のように、両手を使用してマイクロカテーテルとガイドワイヤとを交互に押し進めることとなる。
【0007】
しかしながら、このような従来の手技方法では、手技者の両手が塞がっており、作業の自由度が低く、また、マイクロカテーテルの遠位部を病変部に正確に位置決めすることが困難であるという問題がある。
【0008】
係る問題を解決するためのカテーテルキットとして、特許文献1には、ガイドワイヤと、ガイドワイヤが内腔を挿通するカテーテルとからなるカテーテルキットであって、ガイドワイヤの先端部にバルーンやエラストマー製O−リング等からなる拡張可能セグメントが形成されており、拡張可能セグメントが拡張状態になると、拡張可能セグメントとカテーテルの内腔の一部とが接触してカテーテルキットが血管内を一体的に移動することができるように形成されたカテーテルキットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−175497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のカテーテルキットは、次に掲げる課題がある。
【0011】
1.拡張可能セグメントとしてバルーンを採用した場合には、バルーンを拡張及び収縮させるための拡張用液体を流通させるためのルーメンや機構等をガイドワイヤの内部に形成する必要があり、ガイドワイヤの構造が複雑化してしまう。
【0012】
2.ガイドワイヤの構造が複雑化する結果、ガイドワイヤの柔軟性が低くなり、また、より細径の血管に発生した病変部の治療を目的としてガイドワイヤ等を小径化することが困難であるという問題がある。
【0013】
3.拡張可能セグメントとしてエラストマー製O−リングを採用した場合には、O−リングを能動的に拡張し、カテーテルの内腔の一部と接触させるためのハンドルを基端部に形成する必要があり、やはりガイドワイヤの構造が複雑化してしまい、上記1.と同様の問題がある。
【0014】
4.O−リングとカテーテルの内腔の一部とが接触した状態でカテーテルキットが血管内を一体的に移動するためには、O−リングとカテーテルの内腔の一部との摩擦抵抗が大きくなければならないとされており、それゆえ、O−リングの材質としてエラストマーを採用している。
ここで、分岐血管を選択する場合には、カテーテルの遠位部からガイドワイヤの先端部を前方へ突出させた状態で、ガイドワイヤの先端部を回転させて所望の分岐血管を選択してから、カテーテルをガイドワイヤに追従させることにより分岐血管へとカテーテルを進めることがある。
しかしながら、特許文献1に記載のカテーテルキットでは、O−リングとカテーテルの内腔の一部との摩擦抵抗が大きいので、O−リングが形成されたガイドワイヤのみをカテーテルの内腔内で回転させるのが困難であり、分岐血管を適切に選択し難いという問題がある。特に、複雑に入り組んだ深部の血管等においては、この傾向が顕著であり困難である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
課題1.〜4.を解決することができる本発明に係るカテーテルキットは、
近位部及び遠位部を有しており、前記近位部に開口した近位開口部から前記遠位部に開口した遠位開口部まで連通する内腔が形成されたカテーテルと、
先端部及び後端部を有しており、前記先端部が前記近位開口部から挿入されて前記遠位開口部まで前記内腔内を挿通可能に形成されたガイドワイヤと、からなるカテーテルキットであって、
前記先端部の外側面には、拡径部が形成されており、
前記遠位部における前記内腔の内側面には、前記近位開口部から前記遠位開口部まで前記ガイドワイヤを前記内腔内に挿通した際に前記拡径部と当接可能な当接部が形成されており、
前記拡径部及び前記当接部のうちの少なくとも一の部分は、低摩擦性材料から形成されていることを特徴とする。
なお、本明細書において、低摩擦性材料とは、カテーテルキットが体外にあり血液等の体液と接触していない乾燥状態で摩擦抵抗が低い材料、及び、カテーテルキットが血管等の管腔内に挿入され、体液と接触した状態で摩擦抵抗が低い材料のことをいい、具体的に例示すると、ステンレスやNi−Ti合金等の金属材料、ヒアルロン酸等の親水性材料、ポリウレタン系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンあるいは直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレンやポリプロピレン、及び、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種類の材料をいう。採用しうる親水性材料の具体例については、後述する。
【0016】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記拡径部の形状は、前記先端部側から前記後端部側に向かって外径が傾斜しながら拡径したテーパ状であり、
前記当接部の形状は、前記遠位開口部側から前記近位開口部側に向かって前記内腔の内径が傾斜しながら拡径したテーパ状であることが望ましい。
【0017】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記当接部は、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂又は親水性材料から形成されており、
前記拡径部は、金属材料又は親水性材料から形成されていることが望ましい。
【0018】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記拡径部は、前記ガイドワイヤの中心軸を形成するコアシャフトと、前記コアシャフトの外周に巻回された第一コイル体と、前記第一コイル体の外周に巻回された第二コイル体と、からなることが望ましい。
【0019】
本発明のカテーテルキットにおいて、
前記先端部は、一定方向にシェイピングされていることが望ましい。
【0020】
本発明に係るガイドワイヤは、上記いずれかの本発明のカテーテルキットに使用されるガイドワイヤである。
【0021】
本発明に係るカテーテルは、上記いずれかの本発明のカテーテルキットに使用されるカテーテルである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るカテーテルキットを模式的に示す全体図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、図1に示すカテーテルキットを用いて分岐血管を選択する様子を示した説明図である。
【図3】図1に示すカテーテルキットの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照しつつ、本実施形態のカテーテルキットについて説明する。
なお、図1において、カテーテルの遠位部側及びガイドワイヤの先端部側が体内に挿入される部分であり、カテーテルの近位部側及びガイドワイヤの後端部側が医師等の手技者によって操作される部分である。
図1においては、カテーテル及びガイドワイヤが長尺であるので、その中間部分を省略して示している。また、便宜上、ガイドワイヤの先端部とコアシャフトの先端部とを同じ符号で示し、ガイドワイヤの後端部とコアシャフトの後端部とを同じ符号で示している。
【0024】
図1に示すカテーテルキット1は、近位部11及び遠位部12を有しており、近位部11に開口した近位開口部11aから遠位部12に開口した遠位開口部12aまで連通する内腔13が形成されたカテーテル10と、先端部21及び後端部22を有しており、先端部21が近位開口部11aから挿入されて遠位開口部12aまで内腔13内を挿通可能に形成されたガイドワイヤ20とからなる。
【0025】
ガイドワイヤ20の先端部21の外側面21aには、拡径部21bが形成されている。
【0026】
遠位部12における内腔13の内側面13aには、近位開口部11aから遠位開口部12aまでガイドワイヤ20を内腔13内に挿通した際に拡径部21bと当接可能な当接部13bが形成されている。
【0027】
拡径部21b及び当接部13bのうちの少なくとも一の部分は、低摩擦性材料から形成されている。
【0028】
ガイドワイヤ20の先端部21の外側面21aに形成された拡径部21bと、カテーテル10の遠位部12における内腔13の内側面13aに形成された当接部13bとは、ガイドワイヤ20をカテーテル10の内腔13内に挿通した場合に互いに当接可能に形成されている。
【0029】
それゆえ、図示しない手技者がガイドワイヤ20の後端部22を把持してガイドワイヤ20を押込操作した場合には、ガイドワイヤ20の拡径部21bがカテーテル10の当接部13bと当接することにより、カテーテル10がガイドワイヤ20の動きに追従して押込操作されることとなる。つまり、手技者は、従来のように尺取虫様に両手を使用せずとも、カテーテルキット1を片手で一体的に操作することが可能であり、作業の自由度が高く、カテーテル10の遠位部12を病変部に正確に位置決めすることができる。しかも、バルーンやO−リングのように、拡張及び収縮動作に必要な複雑な構造を必要とせず、ガイドワイヤ20を小径化してより細径の血管の病変に適した構成とすることができる。
【0030】
また、拡径部21b及び当接部13bのうちの少なくとも一の部分が、低摩擦性材料から形成されている。そのため、カテーテル10を固定した状態で、カテーテル10の内腔13内に挿通されたガイドワイヤ20の先端部21を容易に回転させることができる。
従って、図2(a)の使用図に示すように、本管Xから分岐した分岐血管Yを選択する場合には、例えば、カテーテル10の遠位開口部12aからガイドワイヤ20の先端部21を前方へ突出させた状態で、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させて所望の分岐血管Yを容易に選択することができる。
そして、その後は、図2(b)の使用図に示すように、カテーテル10をガイドワイヤ2に追従させて分岐血管Yへとカテーテル10をスムーズに進めることができる。
【0031】
なお、分岐血管を選択する場合において、ガイドワイヤの先端部は、必ずしもカテーテルの遠位開口部から前方に突出している必要はない。例えば、ガイドワイヤの先端部が一定方向にシェイピングされている場合には、ガイドワイヤの先端部をカテーテルの遠位開口部から突出させずに内腔内に収容することにより、ガイドワイヤの先端部の形状に沿ってカテーテルの遠位部の形状を変化させた状態とし、分岐血管を選択してもよい。
【0032】
以下、本実施形態に係るカテーテルキットのより具体的な構成について、説明する。
【0033】
拡径部21bの形状は、先端部21側から後端部22側に向かって外径が傾斜しながら拡径したテーパ状であり、当接部13bの形状は、遠位開口部12a側から近位開口部11a側に向かって内腔13の内径が傾斜しながら拡径したテーパ状である。
そのため、ガイドワイヤ20を内腔13内に挿入し、拡径部21bと当接部13bとが当接した場合においても、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させた際の拡径部21bと当接部13bとの摩擦抵抗が低く、ガイドワイヤ20の先端部21を容易に回転させることができる。
特に、カテーテルキット1を深部の病変部近傍まで導いた場合であっても、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させやすく、細径の血管をより選択しやすい。
【0034】
拡径部21bは、ステンレスやNi−Ti合金等の金属材料又はヒアルロン酸等の親水性材料から形成されている。
また、当接部13bは、ポリウレタン系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE等のフッ素系樹脂又は親水性材料から形成されている。
そのため、カテーテルキット1を深部の病変部近傍まで導いた場合であっても、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させやすく、細径の血管をより選択しやすい。
これらの中では、拡径部21bが金属材料又は親水性材料から形成されており、当接部13bがフッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂又は親水性材料から形成されていることが望ましい。ガイドワイヤ20の先端部21をより回転させやすいからである。
【0035】
また、拡径部21bは、ガイドワイヤ20の中心軸を形成するコアシャフト23と、コアシャフト23の外周に巻回された第一コイル体24と、第一コイル体24の外周に巻回された第二コイル体25とからなる。
このように拡径部21bが2重コイル構造を有しているので変形しにくく、拡径部21bと当接部13bとが当接した場合には、拡径部21bによってより確実に当接部13bを押し込むことによりカテーテル10を進めることができる。
【0036】
また、先端部21は、一定方向にシェイピングされている。
それゆえ、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させることにより、血管を選択しやすくなる。
なお、ガイドワイヤ20の先端部21がシェイピングされていても、通常、カテーテル10の遠位部12は柔軟性を有しておりある程度は変形可能であるので、ガイドワイヤ20を内腔13へ挿入したり、抜去したりすることに対して障害となることはない。
【0037】
以下、本実施形態に係るカテーテルキットのその他の構成について、説明する。
【0038】
まず、カテーテル10の構成について詳述する。
【0039】
カテーテル10は、半径方向に内側から順に内層14、内層14上に形成された補強部材15、補強部材15が埋め込まれた中間層16、中間層16上に形成された外層17、及び、上述した当接部13bが形成されており最先端に位置する先端チップ18からなる。
【0040】
内層14は樹脂から形成された中空管であり、内部にガイドワイヤ20を挿入可能な内腔13を有している。
内層14を形成する樹脂材料としては、例えば、PTFE等のフッ素系樹脂が望ましい。ガイドワイヤ20との摺動抵抗が少なくなるからである。
【0041】
補強部材15としては、例えば、複数の素線を編んでなる編組や、単一又は複数の素線を巻回してなるコイル等を採用してもよい。
図1に示す例では、補強部材15として編組を使用している。
【0042】
編組又はコイルを構成する素線の材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、タングステン線等の材料が挙げられる。
上記ステンレスとしては、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス及び析出硬化ステンレス等のステンレスが挙げられる。
これらのなかでは、オーステナイト系ステンレスであることが望ましく、特にSUS304、SUS316又はSUS316Lであることがより望ましい。
【0043】
中間層16及び外層17を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。これらの中では、ポリアミドエラストマーが望ましい。
【0044】
先端チップ18は、カテーテル1の遠位側開口部12aを構成する円筒状の部材である。
【0045】
先端チップ18の内側面には、遠位開口部12a側から近位開口部11a側に向かって内腔13の内径が傾斜しながら拡径したテーパ状の当接部13bが形成されている。
【0046】
テーパ状の当接部13bにおける内腔13の最小径は、0.1〜0.4mmであり、最大径は、0.2〜0.5mmであることが望ましい。
また、テーパ状の当接部13bの長さは、1〜50mmであることが望ましい。
テーパ状の当接部13bの最小径、最大径及び長さが上記範囲内にあると、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させた際の拡径部21bと当接部13bとの摩擦抵抗がより低くなり、ガイドワイヤ20の先端部21を容易に回転させることができる。
【0047】
当接部13bを含めた先端チップ18全体は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE等のフッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂又は親水性材料から形成されている。
この中では、先端チップ18は、ポリウレタン系樹脂から形成されていることが、血管内壁の損傷防止の観点から望ましい。
【0048】
また、先端チップ18のうちで、少なくとも当接部13bには、親水性材料がコーティングされていることが、ガイドワイヤ20の拡径部21bとの摩擦抵抗が少なくなる点で望ましい。
【0049】
先端チップ18には、タングステンやビスマス等の放射線不透過性の粉末が65〜90重量%含有されていてもよいし、白金やタングステン等から形成された放射線不透過性のリングが埋め込まれていてもよい。手技中の視認性を高めることができるからである。
【0050】
次に、ガイドワイヤ20の構成について詳述する。
【0051】
ガイドワイヤ20は、先端部21及び後端部22を有しておりガイドワイヤ20の中心軸を形成するコアシャフト23と、先端部21の外周に巻回された第一コイル体24と、第一コイル体24の外周に巻回された第二コイル体25とから形成されている。
【0052】
コアシャフト23は、細径の先端部21と、先端部21に結合したテーパ状の中間部26と、中間部26に結合した大径の後端部22とから形成されている。
そのため、コアシャフト23は、後端部22側から先端部21側に向かうにつれて徐々に剛性が低く柔軟になっている。
【0053】
第二コイル体25は、単一の素線27をらせん状に巻回することにより形成されており、内部に貫通孔を有する管状体である。
形状について具体的に説明すると、第二コイル体25は、第二コイル体25の最も後端側に位置している大径部28と、大径部28と連結しているテーパ部28aと、テーパ部28aと連結しており、第二コイル体25の最も先端側に位置している小径部29とから形成されている。
【0054】
テーパ部28aの最小径は、0.05〜0.35mmであり、最大径は、0.15〜0.45mmであることが望ましい。
また、テーパ部28aの長さは、1〜50mmであることが望ましい。
テーパ部28aの最小径、最大径及び長さが上記範囲内にあると、ガイドワイヤ20の先端部21を回転させた際の拡径部21bと当接部13bとの摩擦抵抗がより低くなり、ガイドワイヤ20の先端部21を容易に回転させることができる。
【0055】
第二コイル体25の内部には、コアシャフト23の先端部21、コアシャフト23の中間部26の一部、並びに、コアシャフト23の先端部21及び中間部26の一部を覆っている第一コイル体24が挿入されている。
【0056】
第一コイル体24は、複数の素線30をらせん状に巻回することにより形成された多条コイル体であり、内部に貫通孔を有する管状体である。
そのため、第一コイル体24は、単一の素線を巻回してなる単条コイルに比べて、塑性変形を生じにくい。また、第一コイル体24の一方の端部を回転させた場合には、他方の端部が追従して回転しやすく、回転追従性が高い。回転追従性が高い第一コイル体24がガイドワイヤ20の先端部21に配置されているので、ガイドワイヤ20の先端部21をより容易に回転させることができる。
【0057】
第一コイル体24は、第二コイル体25の小径部29の最先端から後端側に離間した位置の内側に先端部31を有しており、第二コイル体25のテーパ部28aの内側に後端部32を有している。
【0058】
このような構成を有することにより、拡径部21bは、ガイドワイヤ20の中心軸を形成するコアシャフト23と、コアシャフト23の外周に巻回された第一コイル体24と、第一コイル体24の外周に巻回された第二コイル体25とから形成されているのである。
【0059】
第一コイル体24を形成する素線30又は第二コイル体25を形成する素線27を形成する材料としては、例えば、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、タングステン線等の材料が挙げられる。
上記ステンレスとしては、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス及び析出硬化ステンレス等のステンレスが挙げられる。
これらのなかでは、オーステナイト系ステンレスであることが望ましく、特にSUS304、SUS316又はSUS316Lであることがより望ましい。
第二コイル体25は、拡径部21bの外側面を形成しているので、このような構成を有する場合には、拡径部21bがステンレスやNi−Ti合金等の金属材料から形成されることになる。
【0060】
また、第二コイル体25の外側面の一部又は全部には、親水性材料が形成されていてもよい。
上記親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミドのブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸塩等が挙げられる。
これらの中では、ヒアルロン酸塩がより望ましい。
第二コイル体25は、拡径部21bの外側面を形成しているので、このような構成を有する場合には、拡径部21bが親水性材料から形成されることになる。
【0061】
コアシャフト23の先端部21の最先端と、第二コイル体25の小径部29の最先端とは、先端ロウ付け部33により互いに固定されている。
【0062】
先端ロウ付け部33の形状は、円錐状であり、該円錐の頂点がガイドワイヤ20の最先端を形成している。
【0063】
コアシャフト23の中間部26と、第二コイル体25の大径部28の最後端とは、後端ロウ付け部34により互いに固定されている。
その他、第二コイル体25とコアシャフト23とは、一個又は複数個、任意の位置に形成された中間ロウ付け部35により互いに固定されている。なお、中間ロウ付け部35は、形成されていなくともよい。
【0064】
第一コイル体24の最先端とコアシャフト23の先端部21とは、内側先端ロウ付け部36により互いに固定されており、第一コイル体24の最後端と中間部26とは、内側後端ロウ付け部37により互いに固定されている。
なお、第一コイル体24と、コアシャフト23の先端部21及び中間部26とを互いに固定する内側中間ロウ付け部が一個又は複数個、任意の位置に形成されていてもよい。
【0065】
ガイドワイヤ20の先端部21は、その最先端がカテーテル10の遠位開口部12aから前方へ突出することが可能な程度の長さを有している。
また、遠位開口部12aから前方へ突出したガイドワイヤ20の先端部21は、一定角度で一定方向に曲がっており、シェイピングされている。
シェイピング角度は、目標とする病変部が存在する血管の内径にもよるが、例えば、5〜40°が望ましく、シェイピング長さは、例えば、0.5〜5mmであることが望ましい。
【0066】
カテーテル10の近位部11には、コネクタ30が取り付けられている。
コネクタ30の内部には、カテーテル10の内腔13及び近位側開口部11aと連通した内腔が形成されており、ガイドワイヤ20を挿通させることができる。
【0067】
(変形例)
本発明に係るカテーテルキットにおいて、拡径部21bの形状は、図3に示すように、ガイドワイヤ20の先端部21の外側面に形成されたリング状の突起であり、当接部13bの形状は、遠位開口部12a側に位置する内腔13の最小径が拡径部21bの最大径より小さく、近位開口部11a側に位置する内腔13の最大径が拡径部21bの最大径より大きい段差形状であってもよい。
図3に示す実施形態においても、拡径部21bは、上述した低摩擦性材料から形成されている。また、拡径部21bの形状は、当接部13bと当接可能な形状であれば、リング状に限定されず、例えば、半径方向外側に突出した一個又は複数個のコブ状の突起であってもよい。
なお、図3における各符号を付した構成は、図1における各符号を付した構成にそれぞれ対応している。
【0068】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、ガイドワイヤは、コアシャフトと、コアシャフトの外周に巻回された第二コイル体と、必要なロウ付け部とから形成されており、第一コイル体が配置されていないものであってもよい。
すなわち、拡径部は、ガイドワイヤの中心軸を形成するコアシャフトと、コアシャフトの外周に巻回された第二コイル体と、からなるものであってもよい。
【0069】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、ガイドワイヤの先端部は一定方向にシェイピングされておらず、後端部から先端部にかけて略直線状であってもよい。
【0070】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、ガイドワイヤの先端部は、カテーテルの遠位開口部から前方に突出していなくてもよく、この場合、ガイドワイヤの先端部は、一定方向にシェイピングされていることが望ましい。
【0071】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、ガイドワイヤの種類は、上述したコアシャフトとコイルとからなるコイル式ガイドワイヤに限定されず、コアシャフトとコアシャフトの外周を被覆する樹脂とからなるプラスチッククラッド式ガイドワイヤ又はその他の種類のガイドワイヤであってもよい。
【0072】
本発明に係るカテーテルキットにおいて、当接部は、上述したように先端チップの内側面に形成されていてもよいし、遠位開口部側に位置する内層の内側面に形成されていてもよい。
【0073】
本発明のカテーテルキットは、肝臓疾患治療用として特に適したものであるが、本発明のカテーテルキットは、心臓、脳等の各種の臓器の疾患治療にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 カテーテルキット
10 カテーテル
11 近位部
12 遠位部
11a 近位開口部
12a 遠位開口部
13 内腔
13b 当接部
20 ガイドワイヤ
21 ガイドワイヤ又はコアシャフトの先端部
22 ガイドワイヤ又はコアシャフトの後端部
21b ガイドワイヤの拡径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位部及び遠位部を有しており、前記近位部に開口した近位開口部から前記遠位部に開口した遠位開口部まで連通する内腔が形成されたカテーテルと、
先端部及び後端部を有しており、前記先端部が前記近位開口部から挿入されて前記遠位開口部まで前記内腔内を挿通可能に形成されたガイドワイヤと、からなるカテーテルキットであって、
前記先端部の外側面には、拡径部が形成されており、
前記遠位部における前記内腔の内側面には、前記近位開口部から前記遠位開口部まで前記ガイドワイヤを前記内腔内に挿通した際に前記拡径部と当接可能な当接部が形成されており、
前記拡径部及び前記当接部のうちの少なくとも一の部分は、低摩擦性材料から形成されていることを特徴とするカテーテルキット。
【請求項2】
前記拡径部の形状は、前記先端部側から前記後端部側に向かって外径が傾斜しながら拡径したテーパ状であり、
前記当接部の形状は、前記遠位開口部側から前記近位開口部側に向かって前記内腔の内径が傾斜しながら拡径したテーパ状である請求項1に記載のカテーテルキット。
【請求項3】
前記当接部は、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂又は親水性材料から形成されており、
前記拡径部は、金属材料又は親水性材料から形成されている請求項2に記載のカテーテルキット。
【請求項4】
前記拡径部は、前記ガイドワイヤの中心軸を形成するコアシャフトと、前記コアシャフトの外周に巻回された第一コイル体と、前記第一コイル体の外周に巻回された第二コイル体と、からなる請求項3に記載のカテーテルキット。
【請求項5】
前記先端部は、一定方向にシェイピングされている請求項4に記載のカテーテルキット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のカテーテルキットに使用されるガイドワイヤ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のカテーテルキットに使用されるカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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