説明

カテーテル位置の検知における呼吸による影響の低減

【課題】被験者の体にガルバニック接触させて体電極を配置することと、被験者の体内にプローブを設置することとを含む方法を開示する。
【解決手段】この方法は、被験者の呼吸の間にプローブの位置を追跡することと、呼吸の間に体電極間のインピーダンスに関連付けられる指標を決定することとを更に含む。この方法はまた、プローブの位置を指標に関連付ける関数を計算することと、その関数を適用して、インピーダンスに関連付けられる、続く指標に基づいて呼吸の終末呼気の点を識別することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には生体内に配置された物体の位置を検知することに関し、より具体的には呼吸による影響の検出及び補正に関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲にわたる医療手技で、センサー、チューブ、カテーテル、分配装置、及び移植片などの物体を体内に配置することが必要となる。これらの手技の間に対象及びその周囲を視覚化する上で医師を支援するために、リアルタイム画像処理法がしばしば用いられる。しかしながら、多くの状況において、リアルタイム3次元画像処理は可能ではないか、あるいは望ましいものではない。その代わり、内部対象のリアルタイム空間座標を取得するためのシステムがしばしば利用される。これらのシステムにおいて、呼吸の影響を補正することが必要となり得る。
【0003】
参照によって本明細書に組み込まれる、ゴバリ(Govari)らへ付与された米国特許出願第2009/0030307号には、位置追跡のための方法が記載されており、その方法は、被験者の心臓内の基準位置に内部基準プローブを配置することと、その基準位置に対応する位置座標の範囲を規定するために、1回以上の呼吸サイクルの間にプローブの位置座標を収集及び処理することとを含む。
【0004】
参照によって本明細書に組み込まれる、ギルボア(Gilboa)らへ付与された米国特許第6,711,429号には、体内医療手技の間に体の少なくとも1つの対象点を表示するシステム及び方法が記載されている。この表示は、呼吸サイクルの全体を通じてカテーテルの位置を監視及び表示し、また少なくとも1回の呼吸サイクルにわたってその位置を平均することによって実現され得る。
【0005】
参照によって本明細書に組み込まれる、シュマラク(Shmarak)らへ付与された米国特許出願第2009/0182224号には、被験者の体内の検査組織に関連する組織タイミング信号を生成するための装置が記載されている。本開示は、呼吸軌跡を再構築することに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある実施形態は、ある方法を提供するものであり、その方法は、
被験者の体にガルバニック接触させて体電極を配置することと、
被験者の体内にプローブを設置することと、
被験者の呼吸の間にプローブの位置を追跡することと、
呼吸の間に体電極間のインピーダンスに関連付けられる指標を決定することと、
プローブの位置を指標に関連付ける関数を計算することと、
その関数を適用して、インピーダンスに関連付けられる、続く指標に基づいて呼吸の終末呼気の点を識別することとを含む。
【0007】
通常、終末呼気の点を識別することは、関数が既定の閾値未満であると評価することを含む。
【0008】
開示する実施形態において、プローブの位置を追跡することは、電磁追跡システムを使用して位置を決定することを含む。それに代わって、あるいはそれに加えて、プローブの位置を追跡することは、プローブと体電極との間の電流に応答して位置を算出することを含む。
【0009】
開示する別の実施形態において、指標を決定することは、プローブと体電極との間の電流をそれぞれ測定することを含む。それに代わって、あるいはそれに加えて、指標を決定することは、体電極間のインピーダンスをプローブの位置に関連付けるマトリクスを形成することを含む。マトリクスを形成することは、呼吸の方向を決定することを含む。この方法は、マトリクス及び方向に応答して呼吸の終末呼気の点を決定することを更に含む。この方法はまた、指標の変化率、マトリクス、及び方向に応答して呼吸の終末呼気の点を決定することを更に含んでもよい。
【0010】
本発明の実施形態によれば、ある装置が更に提供され、その装置は、
被験者の体にガルバニック接触させて配置される体電極と、
被験者の体内に設置されたプローブと、
プロセッサと、を備え、そのプロセッサは、
被験者の呼吸の間にプローブの位置を追跡し、
呼吸の間に体電極間のインピーダンスに関連付けられる指標を決定し、
プローブの位置を指標に関連付ける関数を計算し、
その関数を適用して、インピーダンスに関連付けられる、続く指標に基づいて呼吸の終末呼気の点を識別ように構成されている。
【0011】
本開示は、添付の図面と共になされる、本発明の実施形態の以下の詳細な説明によって、更に十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の実施形態による、ハイブリッド型カテーテルプローブを利用する位置検知システムの概略的絵画図。
【図1B】本発明の実施形態による、ハイブリッド型カテーテルの遠位端部を示す概略的詳細図。
【図2A】本発明の実施形態による、位置検知システムを操作するプロセスを概略的に示す流れ図。
【図2B】本発明の実施形態によるシステムの簡易ブロック図。
【図3】本発明の実施形態による、位置検知システムで使用される基準パッチのベクトル関係を示す概略図。
【図4】本発明の実施形態による有効電流位置(ACL)パッチ回路の概略図。
【図5】本発明の実施形態による、位置検知システムのフィルタ処理モジュールで使用されるフィルタの例示的なグラフを示している。
【図6】本発明の実施形態による、射影呼吸指標の概略的グラフ及び射影指標と時間との関係から導出されたパラメータを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
本発明のある実施形態は、患者、一般的には医療手技を受ける被験者の体内のプローブの位置を決定する方法を提供する。この方法は、被験者の呼吸によって生じる測定位置の誤差を補正するものである。
【0014】
呼吸を補正するために、プローブが被験者の体内に設置され、体電極が被験者の体にガルバニック接触させて配置される。プロセッサが、被験者の呼吸の間にプローブの位置を追跡する。加えて、プロセッサは、プローブの電極と体電極との間の電流を測定する。その電流から、プロセッサは、呼吸の間に、体電極間のインピーダンスの指標を呼吸指標として導出する。プロセッサは、指標のパラメータ化関数とプローブの位置との最適な相関を生成する。パラメータ化関数は、位置と呼吸指標とを相関させるマトリクスとして表現され得る。
【0015】
マトリクスが決定されると、そのマトリクスは、呼吸サイクル中の1つ以上の終末呼気の回数を決定するために使用され得る。
【0016】
システムの説明
以下の説明は、一例として、また少なくとも部分的に、1つの実施形態が、2つの位置決定座標副システムを有すると想定したものである。まず、プローブの磁場を測定することにより、電磁(EM)座標副システムが被験者体内のカテーテルプローブの位置を決定する。次に、プローブから被験者の体の上の種々の電極又はパッチに流れる電流を測定することによって、電流座標副システムがプローブの位置を決定する。この第2の副システムは、本明細書において改良型電流位置(ACL)副システムとも呼ばれる。これら2つの座標副システムは、以下で説明するように、ハイブリッド型カテーテルプローブを使用することにより、互いに位置合わせされ、このハイブリッド型カテーテルは、EM副システムの磁場を測定することができ、またACL副システムの電流の供給源として働くことができる。
【0017】
しかしながら、2つの座標副システムを用いることは有利となり得るが、本発明の実施形態にとって必須ではない。むしろ、本発明の実施形態は、本明細書で説明するACL副システムなどの1つの座標システムのみを必要とする。
【0018】
本明細書で説明するACL副システムと類似した追跡システムの態様が、メイア・バータル(Meir Bar-Tal)らへ付与された米国特許出願第2010/0079158号に記載されており、この米国特許出願は、本出願の譲受人らに付与されており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0019】
図1Aは、本発明の実施形態による、ハイブリッド型カテーテルプローブ20を利用する位置検知システム36の概略的絵画図であり、図1Bは、本発明の実施形態による、ハイブリッド型カテーテルの遠位端部を示す概略的詳細図である。このハイブリッド型カテーテルはまた、本明細書においてマッピングカテーテルと呼ばれることもある。医療専門家56がシステム36を操作すると想定される。
【0020】
一例として、以下の説明で特に明記しない限り、マッピングカテーテル20は、本明細書にて被験者40とも呼ばれる患者40の心臓38の心室内での侵襲手技において使用されると想定される。別法として、位置検知システム36が、他の体腔において、カテーテル20と類似したプローブと共に使用されてもよい。被験者40は、例えば電磁場発生コイル42を備える位置確認パッド43を被験者の下方に配置することによって発生した磁場に置かれる。コイル42によって発生された磁場は、カテーテル20の遠位端部に設置された電磁(EM)センサー22のコイル24、24及び28内に電気信号を発生させる。その電気信号は制御ユニット44に伝達され、制御ユニット44は、カテーテル20の位置及び方向の座標を決定するためにその信号を解析する。別法として、磁場センサー22内のコイルは、磁場を発生させるように駆動されてもよく、その磁場はコイル42によって検出される。
【0021】
制御ユニット44はプロセッサ46を備え、このプロセッサ46は通常、適切な信号処理回路を備えるコンピュータである。このプロセッサはメモリー47を使用するが、メモリー47は通常、揮発性データ記憶装置と不揮発性データ記憶装置の両方を含むものであり、このメモリー47内にオペレーティングシステム36のデータが記憶される。プロセッサは操作卓52を駆動するように結合されており、操作卓52は、カテーテル20の位置の視覚的表示54を提供してもよい。
【0022】
制御ユニット44は、交流駆動器56Iを備えており、プロセッサ46はこの交流駆動器56Iを使用して、マッピングカテーテル20の遠位端部に設置されたマッピング電極30、カテーテル電極32、及び導電性電極34に電流を供給する。プロセッサ46は、カテーテル20の各電極に供給される電流の交流周波数を種々に設定する。カテーテル電極は、カテーテルの挿入チューブに通されたワイヤーによって、制御ユニット44内の電流及び電圧測定回路に接続されている。
【0023】
制御ユニットは、本明細書において体電極とも呼ばれる体表面電極にワイヤーで接続されており、体表面電極は、ボタン電極、針電極、皮下プローブ、又はパッチ電極など、当該技術分野で既知の任意の種類の体電極であってよい。体電極は通常、被験者40の体表面とガルバニック接触し、被験者から生じる体表面電流を受け取る。以下の説明でパッチ電極又はパッチについて言及する場合、本発明の実施形態が、上述した任意の他の種類の電極を使用し得ることが理解されよう。
【0024】
いくつかの実施形態において、体電極のうちの1つ以上が、被験者40の体にガルバニック接触して、かつ被験者40の体の内部に配置されてもよい。通常、制御ユニット44は、例えば、内部に設置されたこれらの体電極がカテーテル20内のコイル24、26及び28と類似した追跡コイルを有するように構成されることにより、これらの体電極の位置を追跡する。特に明記しない限り、以下の説明は、簡潔にするため、体電極が被験者40の体に設置されることを想定したものである。当業者であれば、必要に応じて、被験者40の体の内部に配置される体電極に対応するように、この説明を適合させることが可能となろう。
【0025】
一例として、体表面電極は本明細書において、接着性皮膚パッチ60、62、64、66、68及び70を備えると想定され、これらの接着性皮膚パッチは、総称的に有効電流位置(ACL)パッチ60Pと呼ばれるか、あるいはiを1〜6の整数としてACLパッチインデックス「i」で示される。ACLパッチ60Pは、プローブの付近で被験者40の体表面上の任意の好都合な位置に置かれてよい。ACLパッチ60Pは通常、カテーテル20内のコイル24、26及び28と類似した、それぞれに関連付けられた追跡コイルを有する。本発明の別の実施形態において、体表面電極は個数において様々であってもよい。体表面電極は、マッピングカテーテルの電極から種々のマッピング電流を受け取り、その種々の電流が解析されて、カテーテル20の位置又は配置が決定される。したがって、カテーテル20はその位置を測定するための2つの構成要素を備え、一方の構成要素はシステム36のEM副システム内で動作するものであり、もう一方の構成要素はシステム36のACL副システム内で動作するものである。カテーテル20は、ハイブリッド型カテーテルとも称される。
【0026】
制御ユニット44はまた電圧発生器56Vを備えており、この電圧発生器56Vは接続ワイヤーでACLパッチ「i」に接続されており、プロセッサ46はその接続ワイヤーを使用してACLパッチのインピーダンスを測定する。
【0027】
駆動器56I及び発生器56Vからの電流は、異なる周波数で電流及び電圧を操作するプロセッサ46によって区別される。このようにして、ACLパッチに電圧を供給する発生器に対しては、固有の6つの周波数が、またカテーテルに電流を供給する駆動器に対しては、他の固有の複数の周波数が存在する。
【0028】
加えて、システム36において、他の非ハイブリッド型カテーテルが存在してもよく、その非ハイブリッド型カテーテルは、電極30、32、及び34と類似した1つ以上の電極を備えるが、センサー22などのセンサーを備えないものである。非ハイブリッド型カテーテルは、本明細書において調査カテーテルとも呼ばれ、この調査カテーテルの電極はまた、調査カテーテル導電性電極とも呼ばれる。システム36は、これらの調査カテーテルを追跡することが可能である。一例として、そのような非ハイブリッド型カテーテル21が図1Aに示されている。
【0029】
一実施形態において、電流駆動器56Iに関し、約90種類の周波数が存在し、そのため、最大90個のカテーテル電極がシステム36にて同時に追跡され得る。
【0030】
本明細書では一例として3個の接着性皮膚パッチ80、82、及び84を備えると想定される皮膚パッチが、通常、位置基準として使用するために被験者40の背中に置かれる。パッチ80、82、及び84は、本明細書において総称的に基準パッチ80Rと呼ばれる。各基準パッチ80RはEMセンサーを有しており、そのEMセンサーは概してセンサー22と類似したものであり、個々のパッチの位置をプロセッサ46に与える。基準パッチ80Rはワイヤーで制御ユニット44に接続される。
【0031】
システム36はまた、内部に置かれるカテーテルなどの基準位置センサーを備えてもよく、その基準位置センサーは、本明細書では心臓38であると想定される、身体40の運動器官の中に挿入され、その運動器官に対して実質的に一定の位置に維持される。ここで、基準センサーは、冠静脈洞基準カテーテル(CSRC)27を備えると想定され、本明細書において基準カテーテル27とも呼ばれる。カテーテル27は、ハイブリッド型カテーテルであっても非ハイブリッド型カテーテルであってもよい。
【0032】
通常、システム36は他の要素を備えるが、それらは、簡潔にするため図には示されておらず、必要に応じて以下の説明で言及される。例えば、システム36は、ECG同期信号を制御ユニット44に与えるために、1個以上の体表面電極から信号を受信するように結合されたECGモニターを備えてもよい。通常、システム36はまた、制御ユニット44によって操作される焼灼システムを備える。
【0033】
図1Aの構成は、単に構想を明確にする目的で選ばれた例示的な構成である。別の実施形態において、任意の他の好適な構成が用いられ得る。通常、プロセッサ46は汎用プロセッサを備え、その汎用プロセッサは、本明細書で説明する機能を実行するように、ソフトウェアでプログラムされる。そのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードされてもよく、あるいは、それに代わって、若しくはそれに加えて、磁気的、光学的、又は電子的メモリーなどの非一時的な有形のメディア上に提供及び/又は格納されてもよい。
【0034】
図2Aは、本発明の実施形態による、被験者に手技を実施する間にシステム36を操作するプロセスを概略的に示す流れ図100であり、図2Bは、本発明の実施形態によるシステムの簡易ブロック図である。
【0035】
基準系相関工程102において、EM基準系において測定された座標と、有効電流位置(ACL)基準系において測定された座標とが相関される。EM追跡副システム115は、EM基準系における測定値を生成し、ACL追跡副システム117は、本明細書において体座標系とも称されるACL系における測定値を生成する。EM追跡副システムは、コイル24、26、及び28によって生成された電磁場を用いて位置を測定する。ACL追跡副システムは、ACLパッチ60Pを流れる電流を用いて位置を測定する。
【0036】
特に明記しない限り、流れ図の以下の工程は中間処理モジュール119において実施され、その中間処理モジュール119は、体座標系モジュール119Aと、相関分析モジュール119Bと、パッチ電流較正モジュール119Cと、電流射影モジュール119Dと、終末呼気検出モジュール119Eと、パッチ有効面積補正モジュール119Fと、フィルタ処理モジュール119Gとを備える。
【0037】
ACLパッチ較正工程106において、プロセッサ46が、ACLパッチ内に電流を生成して個々のACLパッチインピーダンスの差を決定する。インピーダンスの差は、プロセッサによって測定されるACLパッチの電流に影響を及ぼす。
【0038】
工程102及び106は通常、システム36の動作開始時にのみ実施される。流れ図の残りの工程は通常、システムの動作中に、継続する形で実施される。
【0039】
パッチ補正工程108において、プロセッサ46はACLパッチ有効面積の変化を補正する。これらの変化は通常、一般には、発汗すること、及び被験者の皮膚からパッチが部分的に剥がれることを原因とする、パッチの導電性の変化などの要因によって生じる。プロセッサ46は、工程106で生成される電流と同等の電流を用いて、補正係数を決定する。
【0040】
電流射影工程110において、プロセッサは、追跡されているカテーテルに電流が注入されることよって生成されるACLパッチ内の電流を測定し、工程106及び108で決定された調整を電流に適用する。調整された電流は、追跡されているカテーテルの初期位置を決定するためだけでなく、呼吸指標を決定するためにも用いられる。呼吸指標は、手技を受ける被験者の呼吸の状態を表す、インピーダンス測定値に基づいた指標である。
【0041】
フィルタ処理工程112において、工程110で決定された時間変動位置及び時間変動呼吸指標がフィルタ処理されて、呼吸に関連付けられる非常に低い周波数を有する成分のみが通される。拍動する心臓に関連付けられる成分など、高周波数の成分はブロックされる。フィルタ処理工程112において、本明細書において呼吸指標速度とも称される呼吸指標の変化率もまた算出される。フィルタ処理された位置、指標、及び速度は、後の解析のために記憶される。
【0042】
フィルタ処理工程112の後、プロセスは、2つの経路のうちの一方に進む。まず、プロセスの初期化の間、訓練経路114に従う。次に、初期化が完了すると、操作経路116に従う。
【0043】
分析工程118での訓練経路114において、フィルタ処理された時間変動呼吸指標が、「訓練用」カテーテルのフィルタ処理された時間変動位置、すなわち、訓練の期間にわたって心臓内の固定位置に配置される位置と相関される。位置の相関を最良にする種々の指標の組み合わせが、相関マトリクスの形式で生成される。加えて、呼吸指標が分析されて、呼吸動作に対する「最も顕著な方向」のベクトルが決定される。
【0044】
比較120で示す訓練は通常、相関マトリクスによって生成される結果が事前に設定された許容範囲内となるまで継続する。
【0045】
この比較により、相関マトリクスによって生成された位置が、事前に設定された実際の位置の範囲内にあることが確認される。位置が事前に設定された範囲内となると、流れ図は操作経路116へと移行する。
【0046】
操作経路での検出工程122において、相関マトリクスと呼吸方向ベクトルが用いられて、更に次のフィルタ処理された呼吸指標(工程112で生成)が分析される。この分析により、終末呼気が発生するゲート点が推定される。この分析はまた、終末呼気の点の推定値が仮のものとして、あるいは最終的なものとして分類すべきかを決定するために、プロセッサ46によって閾値が用いられることを含む。
【0047】
位置決め工程124において、プロセッサ46は、カテーテルの呼吸軌跡に対応する、記憶した訓練用カテーテルの位置を呼び出す。この軌跡は、終末呼気の点にゲート(gated)されており、このゲートされた軌跡が用いられて、カテーテル、通常は訓練用カテーテル以外のカテーテルの呼吸移動が推定される。このようにして推定された呼吸位置が、実際のカテーテルの位置座標から減算されて、呼吸サイクル全体にわたって不変のカテーテル位置測定値が与えられる。
【0048】
以下の説明で、流れ図100の工程の各々について詳細に述べる。
【0049】
体座標系
図3は、本発明の実施形態による、基準パッチ80Rのベクトル関係を示す概略図である。パッチの初期位置がパッチ80、82、及び84として示されている。移動後の位置がパッチ80’、82’、及び84’として示されている。
【0050】
体座標系モジュール119Aにおいて、プロセッサ46は、流れ図100の基準系相関工程102を実施する際に、この関係を適用する。上述のように、システム36は、2つの追跡副システム、つまり、センサー22などのセンサーを使用するEM追跡副システム115と、パッチ60Pを流れる電流を用いるACL追跡副システム117とを備える。各副システムは、それぞれの基準系において動作する。EM追跡副システムは、パッド43に対して概ね固定されたEM基準系において動作する。ACL追跡副システムは、パッチ80Rに対して概ね固定されていると想定されるACL基準系、つまり体座標系(BCS)において動作する。パッチ80Rにより、副システムの一方で行われる測定を、もう一方の副システムに変換することが可能となる。基準パッチ80Rが被験者40の背中に取り付けられ、そのため、パッド43に対する被験者のいかなる運動も基準パッチのEMセンサーにおける信号の変化に反映される。
【0051】
まず、プロセッサ46は、基準パッチ80R上のEMセンサーから得られた信号を解析して、BCSの初期の基準系を決定する。通常、初期の基準系が決定された後、プロセッサはEMセンサーから得られる信号を周期的に解析して、BCS基準系の位置及び方向の変化を決定する。プロセッサは、予想される値を超えてシステムパラメータが変化したことを検出することができ、その場合には、初期に行ったプロセスに戻ることもできる。
【0052】
まず、プロセッサは、LP座標、すなわち位置確認パッド(LP)43に対して測定される座標におけるパッチ80Rの位置を、通常は約1秒間である時間patchInitTimeにわたって収集する。
【0053】
プロセッサは次いで、各パッチに対して、平均位置及び標準偏差を算出する。
【数1】

上式において、iはサンプルのインデックスであり、
Nは時間patchInitTimeにおけるサンプル数であり、
【数2】

はサンプルの値であり、
【数3】

はパッチlに対する
【数4】

の平均値であり、
【数5】

の標準偏差である。
【0054】

【数6】

の値が通常は約1mmである事前に設定された数値未満であると仮定すると、較正が認められ、この場合、これらの平均値すべての平均値
【数7】

がBCSの原点として設定される。
【数8】

【0055】
また、各パッチから原点までの動径ベクトルが算出され、後に用いるために保存される。
【数9】

【0056】
式(2)によって定義される平均ベクトル及び式(3)によって定義される3つのベクトルが図3に示されている。式(2)によって定義される原点に加えて、式(3)の3つのベクトルは、図においてパッチ80、82、及び84の間の破線で示される三角形を平面内に規定する。初期のBCSのx軸、y軸、及びz軸は、この三角形を用いて規定される。
【0057】
システム36の動作の間、パッチ80Rは、パッチ80’、82’、及び84’によって例示されるように移動してもよく、また、プロセッサ46は、パッチの新たな位置を周期的に、通常は約1秒の期間で測定する。本発明の実施形態は、較正段階で規定された軸がおよそ剛体として移動し、プロセッサ46が、追跡段階の間に、新たなパッチ80Rの位置からの軸の平行移動及び回転を決定すると想定したものである。この決定に先立って、新たなパッチ位置がフィルタ処理されてノイズが低減されるが、そのフィルタ処理は通常、以下の種類の低域フィルタを含むものである。
=ayi−1+(1−a)x、 (4)
上式において、y、yi−1は、現在及び以前の位置推定値であり、
は現在の位置測定値であり、
aは0〜1の係数である。
【0058】
通常、式(4)の「a」は、現在位置の推定値
【数10】

を決定する際に約0.5sの有効時間定数が存在するように選択される。
【0059】
その結果として、体の動きは一般に緩慢であるので、そのような時間定数がシステム36の性能に重大な影響を及ぼすことはない。
【0060】
フィルタ処理された位置
【数11】

は、実質的に式(3)に関して上述したように、座標の新たな原点ベクトル
【数12】

を決定するために使用される。
【0061】
フィルタ処理された位置
【数13】

から、プロセッサ46はまた、当業者には明らかとなる方法によって回転マトリクスTを決定し、軸の新たな方向を元の軸の方向と関連付ける。プロセッサは次いで、式(5)(以下)を用いて、各カテーテル先端部の位置測定値を元のBCS軸に再び変換する。
【数14】

上式において、TはTの転置であり、
【数15】

は、測定されたカテーテル先端部の位置を表わすベクトルであり、
【数16】

は、元のBCS軸に対するカテーテル先端部のベクトルである。
【0062】
このベクトル
【数17】

は、位置決め工程124において算出される。
【0063】
パッチ電流較正
理想的には、アースに対して測定される各ACLパッチのインピーダンスはゼロであるが、実際にそうなるとは限らない。インピーダンスがゼロと異なる場合、パッチを流れる測定電流は、カテーテル20などのカテーテルの予想位置の誤差につながることがあり、そのため、そのような誤差を低減するために、プロセッサ46は、パッチ較正工程106(図2A及び2B)で、パッチ電流較正モジュール119Cを使用してACLパッチに対して較正を実施する。この較正により、ゼロでないインピーダンスが、またパッチ間のインピーダンスの差が補正される。この較正によってプロセッサ46は、パッチインピーダンスがゼロである場合にパッチ内を流れる電流を推定することができる。
【0064】
ここで図4を参照するが、図4は、本発明の実施形態によるACLパッチ回路の概略図である。
【0065】
すべてのACLパッチは、概ね同じ回路を有している。各ACLパッチiは、除細動保護回路152と焼灼保護回路154とを備えている。これら2つの回路は、パッチとアースとの間で直列に接続されている。図4において、また各パッチiに関する以下の分析に関し、
jは、パッチによって伝達される周波数fを示す周波数インデックスである。
ijは、除細動保護回路152の既知のインピーダンスである。この既知のインピーダンスは通常、パッチボックスの製造業者によって与えられ得るか、あるいは回路152の解析から決定され得る。
ijは、焼灼保護回路154のインピーダンスである。この焼灼保護回路のインピーダンスは、以下で説明するパッチインピーダンス較正プロセスの間に推定される。
は、周波数fでパッチiを駆動する、電圧源56Vから得られる電圧である。
ijは、パッチiを通じて周波数fで測定された電流である。
ijは、パッチi上にて周波数fで測定された電圧である。
ijは、周波数fにおける、パッチi上での実際の電圧である。
【0066】
システム36のパッチインピーダンス較正手順において、プロセッサ46はそれぞれの電圧源56Vを使用して、対応する周波数fにて各パッチiに電流を注入する。注入された電流はまた、以下で説明するパッチ有効面積補正手順でも用いられる。
【0067】
プロセッサは、上記の2つの手順、すなわち、パッチインピーダンス較正手順と、パッチ有効面積補正手順を、通常は上述の訓練経路に従う間に適用する。プロセッサはまた、必要に応じて、操作経路に従う間に、これら2つの手順を適用してもよい。
【0068】
電流は種々の周波数jにて注入され、操作卓52はADC(アナログデジタル変換回路)を備え、プロセッサ46はこのADCを多重化して、Vijの値を順次的に、またIijの値を同時に測定する。
【0069】
パッチインピーダンス較正手順において、プロセッサは、通常は、測定周波数全体にわたって、各周波数jにおける比
【数18】

を発見し、最良の適合、典型的には最良の二次適合を発見することによって、Vij及びIijの値からqijの値を推定する。したがって、次式が得られる。
【数19】

【0070】
追跡段階の間、プロセッサ46は、種々の動作周波数fにおいて
【数20】

の値を測定する。
【0071】
以下の解析において、式(9)の表式が想定される。
【数21】

上式において、
【数22】

は、周波数fにてすべてのパッチ上で測定された電圧の合計であり、
【数23】

はクロネッカーのデルタである。
【0072】
周波数jで駆動される特定のパッチiに関し、焼灼保護回路154にオームの法則を適用すると、次式が得られる。
【数24】

これを整理すると、次式が得られる。
【数25】

【0073】
オームの法則と式(10)を図4の回路すべてに適用すると、特定のパッチiに関し、次式が得られる。
【数26】

上式において、Xijは、周波数jにおけるパッチiの全電圧である。
【0074】
式(11)の値は、体電導度マトリクスσを決定するために用いられ得るものであり、σは以下のマトリクス方程式で定義される。
−I=σ・X、又はσ=−I・X−1 (12)
上式において、Iはパッチ電流のマトリクスであり、Xはパッチ電圧のマトリクスである。
【0075】
パッチ電流はまた、ベクトルsとして記述されてもよい。式(12)における負号は、正の電流が体40に流入するという慣習を想定したものであり、正の電流はまた、体から流出するところを測定される。それに代わって、インピーダンスマトリクスImを用いる、式(12)と類似した式が、マトリクスIとXとを関連付けて記述されてもよい。
【0076】
当業者には理解されることであるが、体電導度マトリクスσとパッチ抵抗マトリクスRとの組み合わせであるシステム電導度マトリクスσ’は次式で与えられる。
σ’=(Id+σ・R−1・σ (13a)
上式において、Idは単位行列であり、
σは、式(12)で定義される電導度マトリクスであり、
は、周波数fで送信するカテーテルの、(zik+qik)をi番目の対角要素とするパッチ抵抗の対角行列である。
【0077】
電圧Vがシステムに印加される場合、システム内を流れる電流は次式で与えられる。
【数27】

上式において、Vは電圧ベクトルであり、
【数28】

は、周波数fにおける測定電流ベクトルである。
【0078】
式(13b)は、
【数29】

がパッチ抵抗の影響を受けることを示している。較正された電流は、パッチ抵抗に依存しないものであり、したがって周波数fに依存しないものであるが、次式で定義され得る。
【数30】

上式において、sは較正された電流ベクトルである。
【0079】
プロセッサ46は、ベクトルsで与えられる各パッチ内の推定電流値を、以下で説明するパッチ有効面積補正プロセスに渡す。
【0080】
パッチ有効面積補正
この節における説明は、パッチ補正工程108(図2A)について述べるものである。工程108において、プロセッサ46はパッチ有効面積モジュール119Fを使用して、ACLパッチiの有効面積の変化を補正するプロセスを実施する。この節において、パッチ60Pは、パッチi及びパッチjと呼ぶことによって区別される。ACLパッチの有効面積が変化する原因のいくつかは、一般的には発汗によって、パッチが患者の体40から部分的に剥がれること、及び皮膚の電導度が変化することである。パッチ有効面積補正モデルは、以下を想定したものである。
ij=G・C・C・dij (14)
上式において、Rijはパッチiとパッチjとの間のインピーダンスであり、
、Cは、パッチi及びパッチjの有効面積であり、
ijは、パッチiとパッチjとの間の距離であり、
Gは、とりわけ媒質の電導度の関数である比例定数である。
【0081】
面積補正プロセスを実施する際、プロセッサ46は、ソースパッチjから電流Iを生成し、他のパッチ内で受容された電流Iijの各々を測定する。プロセッサ46は、各ACLパッチごとにこのプロセスを実施し、したがって、N個のパッチに対し、プロセッサは合計でN(N−1)回の電流測定を行う。
【0082】
任意の2つのパッチi、jの間の推定インピーダンスmijは次式で与えられる。
【数31】

上式において、Vはパッチjを駆動する電圧である。
【0083】
式(15)から、正規化された推定インピーダンス
【数32】

が次式で与えられる。
【数33】

【0084】
プロセッサ46は、面積補正プロセスを実施する間に、式(16)を用いて
【数34】

の値を算出し、記憶する。
【0085】
パッチjで生成された電流Iは、パッチjと他のパッチとの間のインピーダンスに反比例して、他のパッチの間で分岐する。したがって、ソースパッチjから受信パッチiへ向かう電流Iijは次式で与えられる。
【数35】

【0086】
式(14)を式(17)に代入することにより、次式が与えられる。
【数36】

【0087】
ijの値を式(16)に代入し、単純化することにより、次式が得られる。
【数37】

上式において、nは1〜Nの整数であり、NはACLパッチの個数である。式(19)は以下のように記述されてもよい。
【数38】

【0088】
上述のように、プロセッサ46は、相対インピーダンス
【数39】

の値を決定している。
【0089】
式(20)において、パッチ間距離dijは、それぞれに関連付けられる追跡コイルを使用して(かつ、i=j、dij=0のとき)測定され得る。
【0090】
式(20)は、N個の未知の値、すなわち値C1、C2、...、CNを伴うN(N−1)個の連立方程式である。連立方程式(20)は、Cの相対値を発見するために用いられてもよい。この連立方程式は、
【数40】

となるタイプであり、Aは、
【数41】

とdijに依存するN(N−1)×Nマトリクスであり、
【数42】

はCのN値を表すベクトルである。当該技術分野において知られているように、Aの特異値分解(SVD)解析又はN×NマトリクスAAの固有ベクトル解析により、
【数43】

の解が得られる。
【0091】
プロセッサ46がマトリクスAAの固有ベクトル解析を実施すると想定すると、プロセッサは最小の固有値を持つ固有ベクトルを選択する。通常、マトリクスA及びA
【数44】

及びdijの値は、式(4)と類似したフィルタでフィルタ処理され、そのフィルタは、約10秒の時間定数を有するように調整される。最小の固有ベクトルは、本明細書においてEaと称される、6つの面積Cの正規化数に対応する。通常、プロセッサ46は、操作者56によって設定され得る期間で、Eaの値を周期的に算出する。一実施形態において、この期間は約1秒である。
【0092】
式(13c)から導出された推定電流ベクトルsは、ACLパッチ内の電流の各6つの値を与える。パッチの有効面積Eaを補正するために、プロセッサ46は、正規化された値の電流をそれぞれ形成する。
【数45】

上式において、(In6)は6次元の電流ベクトルである。
【0093】
この正規化は、電極が組織と接触すること、電極を囲む物質が不均質であること、及び/又はカテーテル電極に電流を注入する電流源が不安定であることなどが原因で生じ得るような、カテーテル電極の領域内における有効抵抗の変化を原因とする影響を除去するものである。
【0094】
電流射影
式(21)で与えられる6つの電流は、それらの合計が常に1であるので、5自由度を有するにすぎない。電流の更なる解析における特異性を防ぐために、電流射影工程110において、これら6つの電流は、射影マトリクスJを用いて、電流射影モジュール119Dにおいて5つの独立した数に変換される。射影マトリクスJは、以下のマトリクスの直交化によって導出される。
【数46】

結果として得られるマトリクスの最後の5つの行ベクトルのみを取る。
【0095】
直交化の後、直交化マトリクスの最後の5行は、次式で与えられる。
【数47】

【0096】
式(21)から得られる電流はしたがって、式(23)による5つの電流等価値に射影される。
(In5)=J・(In6) (23)
【0097】
式(23)の正規化を実施することに加えて、電流射影工程110において、プロセッサ46はまた呼吸指標を正規化する。呼吸指標は、被験者の呼吸によって生じたACLパッチ間の抵抗の変化を測定するものである。呼吸指標は一般に、その性質においてパッチ有効面積(C)と類似しており、この指標の表式は、式(20)を用いて導出される。式(20)から次式が得られる。
【数48】

【0098】
jに対して式(24)を平均化し、dij=1(i≠j);dij=0(i=j)と近似されると想定して、本発明者らはパッチiの呼吸指標RIを次式のように定義する。
【数49】

【0099】
RIがN次元ベクトルとして記述されると仮定すると、
【数50】

は対角要素を0とするN×NマトリクスMとして記述され、
【数51】

は、式(26)で与えられるマトリクスDとして記述され得る。
【数52】

【0100】
この場合、プロセッサ46は、2工程のプロセスに従って、以前の推定値RIi,t−1及び新たな測定値
【数53】

から新たなベクトルRIi,tを反復的に推定する。
【数54】

上式において、tはRIi,t及びRIi,t−1の生じる順序を示すパラメータである。
【0101】
ベクトルRIi,tは6次元であるが、自由度5を有する(式(21)の電流と同様)。以下の式(28)に示すように、式(27)から導出されたRIの値は、マトリクスJを乗算することによって、式(21)の電流と同じ方式で更に変換されて、5次元の呼吸指標ベクトルが与えられる。
(RI5)=J・(RI6) (28)
【0102】
フィルタ処理
図5は、本発明の実施形態による、フィルタ処理モジュール119Gで用いられるフィルタの例示的なグラフを示している。モジュール119Gにて実施されるフィルタ処理工程112は、EMシステムから導出される位置、すなわち式(5)で与えられる
【数55】

の値と、式(28)で与えられる5次元呼吸指標ベクトル(RI5)の双方をフィルタ処理する。以下では簡潔にするため、呼吸指標ベクトル(RI5)は(RI)とも呼ばれ、5つの要素RIを有している。このフィルタ処理は通常、信号のうちの呼吸周波数のみを保存し、心拍に起因する周波数を除去するために、通過周波数と拒否周波数との間で鋭く推移する、非常に低い周波数の低域フィルタを使用する。一実施形態において、モジュール119Gは有限要素応答(FIR)フィルタを含み、その有限要素応答フィルタは、グラフ180に示すように、0.2Hz未満の周波数に対しては0dBの除去率、0.7Hz超の周波数に対しては40dB以上の除去率を有する。
【0103】
モジュール119Gにおいて、FIRフィルタによって得られた呼吸指標の値はまた、ゼロを中心とするように(RI値に「DC」成分が加わらないように)調整される。この調整は、式(29)で定義されるような低域フィルタを使用して調整値を推定することによって行われてもよい。
=ayi−1+(1−α)x、 (29)
上式において、y、yi−1は、現在及び以前の調整値であり、
は現在のRI測定値であり、
αは0〜1の係数である。αは通常、現在の調整値を決定する際に約1sの有効時間定数が存在するように選択される。
【0104】
式(29)から得られるyの値を、FIRフィルタによって得られたRIの値から減算して、RIのDC成分が除去される。フィルタ処理され調整された呼吸指標ベクトルは、本明細書において(RIa)と称される。
【0105】
モジュール119Gはまた、呼吸速度、すなわち呼吸指標の変化率を算出し、その速度をフィルタ処理する。一実施形態において、呼吸指標RIの微分及びフィルタ処理は、指標を速度の核とたたみ込むことによって得られる。速度の核は、ガウス関数の微分によって導出され得るものであり、典型的な速度の核vのグラフがグラフ182に示されている。このたたみ込みは、式(30)に従うものである。
【数56】

上式において、Rvは呼吸指標RIの速度である。
【0106】
分析
初期化モードの間、すなわち訓練経路114において、フィルタ処理モジュール119Gで得られた値が分析工程118にて分析される。この分析では、相関分析モジュール119Bが使用される。初期化の開始時に、通常は医療手技の最初に、専門家56が、本明細書ではCSRC27と想定される基準センサーを、心臓38内の比較的一定した位置に配置する。このセンサーは通常、2つ以上の呼吸サイクルにわたって、すなわち、本明細書において訓練期間と称される約30秒間の期間にわたって、この位置に置かれる。
【0107】
訓練期間の間、プロセッサ46は、CSRC 27によって生成された位置値とフィルタ処理され調整された呼吸指標RIaを保存する。モジュール119Bによって実施される相関付けは、呼吸に起因する運動に関するものであるので、測定は、式(31)に従って決定される基準センサーの位置の平均値に対して実施される。
【数57】

上式において、
【数58】

は、サンプルiのセンサー位置であり、
【数59】

は、サンプルiの調整済みセンサー位置であり、
Kは、訓練期間におけるサンプルの総数である。
【0108】
中心値から非常に離れた可能性のある、例えば、センサーが急に動作する間に取得された可能性がある位置値及び呼吸指標値を使用することを回避するために、フィルタ処理位置は、そのような値を除去するように分類される。一実施形態において、
【数60】

の絶対値は、0〜20mmの間にあると想定され、その絶対値は、1mm幅の目を有するヒストグラムに分類される。ヒストグラムのうちのユーザーが選択した百分率内にある位置及びその位置に関連付けられる呼吸指標のみが、モジュール119Bによる更なる分析で用いられる。通常、90%台の百分率が選択される。この分類によって得られた呼吸指標ベクトルは、本明細書において(RIas)と呼ばれる。
【0109】
更なる分析における数値的な不安定性を防止するために、(RIas)の要素は1に近い値を有するように基準化される。この基準化は、(RIas)、RIaskの要素の各々RIasに、式(32)で与えられる共通の係数gを乗算することによって達成され得る。
【数61】

【0110】
(RIas)の要素に係数gを乗算することに加えて、単位要素がベクトル(RIas)に加算されて、式(33)で与えられる要素を有する6次元呼吸指標ベクトル(RI)が得られる。
【数62】

【0111】
呼吸指標RIとそれに対応する位置ベクトルrとの相関は、(3行、6列)の相関マトリクスCの形態をなすものであり、式(34)に従ってベクトル(RI)及びベクトルrから生成される。
【数63】

上式において、
【数64】

はベクトルrの積み重ね値であり、
【数65】

はベクトル(RI)の積み重ね値であり、
【数66】

の疑似逆行列である。
【0112】
相関マトリクスCは、パラメータ化された指標が位置ベクトルrとの最適な相関をなすように、種々の呼吸指標RIを効果的にパラメータ化する。
【0113】
比較120で示すように、分析工程118の最後の部において、マトリクスCは、式(35)に従って、マトリクスCとそれに対応するRIの値を用いて、r
【数67】

の値を推定することによって検証される。
【数68】

【0114】
推定値
【数69】

は、メモリー47に記憶されたrの測定値と比較される。この比較を行うことにより、予め定められた閾値範囲内の差が与えられ、分析工程118は、したがって訓練モード114は完成したと想定され、相関マトリクスCが操作モード116にて用いられる。通常、位置の推定値と測定値との差の二乗平均(RMS)は1mm未満であり、この差の最大値は3mm未満である。
【0115】
の推定値と測定値との差が、予め定められた許容限界内にない場合、訓練が継続する。
【0116】
相関マトリクスCを決定することに加えて、分析モジュール119Bは、呼吸動作の「最も顕著な方向」を呼吸方向ベクトル
【数70】

として決定する。一実施形態において、ベクトル
【数71】

は、式(36)のように、式(31)によって発見された調整済みセンサー位置をマトリクスRに積み重ねることによって算出される。
【数72】

【0117】
特異値分解(SVD)がマトリクスRに適用され、呼吸方向ベクトル
【数73】

が、最大固有値の固有ベクトルに等しくなるように想定される。
【0118】
終末呼気の検出
相関マトリクスC及び呼吸方向ベクトル
【数74】

が分析工程118で決定されると、プロセッサ46は、マトリクスと呼吸方向を終末呼気検出モジュール119Eに転送する。転送の後、プロセッサ46は、流れ図100の操作経路116に従う。モジュール119Eで実施される検出工程122において、プロセッサ46は、終末呼気がいつ発生するかを判定する。
【0119】
図6は、本発明の実施形態による、射影呼吸指標の概略的グラフ及び射影指標と時間との関係から導出されたパラメータを示している。このグラフは、モジュール119Eで生成された結果を示している。
【0120】
工程122において、プロセッサ46は、フィルタ処理モジュール119Gから導出されたフィルタ処理済み指標値の各組ごとに、最も顕著な呼吸方向に射影された指標を算出する。この射影は、式(37)に従って実施される。
【数75】

RIpは、時間kにおける射影された指標であり、
【数76】

C、及び
【数77】

は、式(36)、(34)、及び(33)を参照して上述したとおりのものである。
【0121】
グラフ200は、時間に対するRIpの例示的な値を示している。プロセッサはまた、式(38)に従って、射影された指標の速度を算出する。
【数78】

上式において、RIvは、時間kにおける射影された指標の速度であり、
【数79】

は上述のとおりであり、
C(3,5)は、最後の列を省略することによってマトリクスCから導出される(3行、5列)マトリクスであり、
Rvは、式(30)で与えられる呼吸指標の速度である。
【0122】
グラフ202は、時間に対するRIvの例示的な値を示している。
【0123】
通常、RIv、RIvMaxの最大値が使用されて、各呼吸サイクルの境界が決定される。RIvMaxの典型的な値が、グラフ202に点204で示されている。これらに対応するグラフ200上の点が点206である。
【0124】
前のRIvMaxの1s以内にある最大値は、心拍信号がフィルタ処理モジュール119Gに侵入することによって生じた可能性があるので、RIvMaxを誤って決定することを減じるため、プロセッサ46は通常、そのような最大値を無視する。
【0125】
RIvMaxを誤って決定することを更に減じるため、プロセッサ46は、特定のRIvMaxの、時間に伴う減衰値を算出してもよく、また、後のRIvMaxが、その減衰値で与えられるものよりも大きいことを確認してもよい。RIvMaxの減衰値は、以下の形の式を反復的に用いて算出され得る。
RIνMax=α(RIνMaxi−1−β)+β (39)
【0126】
一実施形態において、α=0.99、β=0.5である。通常、プロセッサ46は、予め定められた下限に減衰値を制限しながらも、減衰値がゼロに達することを防止する。
【0127】
破線208は、各RIvMaxに適用されたRIvMaxの減衰値を示している。グラフに示すように、続く各点204は、その前の点204からの減衰値を上回っている。
【0128】
プロセッサが有効な最大速度のRIvMaxを検出すると、プロセッサはRIp(グラフ200)の値を(前のRIvMaxに対応するものまで)分析して、RIpの最大値を決定する。点210として示すこれらの最小値は、終末呼気の点に対応している。
【0129】
終末呼気の点は、時間を単位とする点であり、RIpの値は、すべてのRIp値がゼロ以上となるように修正され得る。この修正を達成するために、プロセッサは通常、始点と終点の両方をゼロに設定して、隣接する終末呼気の点の間のRIp値に直線補間と平行移動(本明細書では一例として上昇である)とを施す。線212の各区間は補間の基礎となる線を示し、破線214は、本明細書においてRIe値と称される、平行移動され補間されたRIpの値を示している。
【0130】
上述した補間は、既知の2つの終末呼気の点の間における補間に依存している。本発明の実施形態において、最新の終末呼気の点が決定された後、プロセッサは、次の終末呼気の点が決定されるまで、時間i、
【数80】

におけるRIeの値を推定することができる。この推定は通常、最後に決定された終末呼気の点から、上述したものと類似した種類の平行移動を実施する。
【0131】
【数81】

値は、
【数82】

値をユーザー定義の閾値Thと比較することによって、すなわち条件
【数83】

が真となる時間を発見することによって、仮の次の終末呼気の点を予測するために用いられてもよい。Thの一般的な値は2である。通常、仮の次の終末呼気の点は、実際の終末呼気の点(RIpの最小値)が発見されるまで、正しいと想定される。実際の終末呼気の点は次いで、仮の点に取って代わる。
【0132】
上述した実施形態は一例として記載されたものであり、本発明は、本明細書において上に具体的に図示及び説明した内容に限定されないことが明らかとなろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれ、これらは、上述の説明を読めば当業者には思いつくものであり、先行技術では開示されていないものである。
【0133】
〔実施の態様〕
(1) 被験者の体にガルバニック接触させて体電極を配置することと、
前記被験者の前記体内にプローブを設置することと、
前記被験者の呼吸の間に前記プローブの位置を追跡することと、
前記呼吸の間に前記体電極間のインピーダンスに関連付けられる指標を決定することと、
前記プローブの前記位置を前記指標に関連付ける関数を計算することと、
前記関数を適用して、前記インピーダンスに関連付けられる、続く指標に基づいて前記呼吸の終末呼気の点を識別することと、を含む、方法。
(2) 前記終末呼気の点を識別することは、前記関数が既定の閾値未満であると評価することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記プローブの位置を追跡することは、電磁追跡システムを使用して前記位置を決定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記プローブの位置を追跡することは、前記プローブと前記体電極との間の電流に応答して前記位置を算出することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記指標を決定することは、前記プローブと前記体電極との間の電流をそれぞれ測定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記指標を決定することは、前記体電極間の前記インピーダンスを前記プローブの前記位置に関連付けるマトリクスを形成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記マトリクスを形成することは、前記呼吸の方向を決定することを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記マトリクス及び前記方向に応答して前記呼吸の前記終末呼気の点(end-experium points)を決定することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記指標の変化率、前記マトリクス、及び前記方向に応答して前記呼吸の前記終末呼気の点を決定することを含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 被験者の体にガルバニック接触させて配置される体電極と、
前記被験者の前記体内に設置されたプローブと、
プロセッサと、を備え、該プロセッサは、
前記被験者の呼吸の間に前記プローブの位置を追跡し、
前記呼吸の間に前記体電極間のインピーダンスに関連付けられる指標を決定し、
前記プローブの前記位置を前記指標に関連付ける関数を計算し、
前記関数を適用して、前記インピーダンスに関連付けられる、続く指標に基づいて前記呼吸の終末呼気の点を識別するように構成されている、装置。
【0134】
(11) 前記終末呼気の点を識別することは、前記関数が既定の閾値未満であると評価することを含む、実施態様10に記載の装置。
(12) 前記プローブの位置を追跡することは、電磁追跡システムを使用して前記位置を決定することを含む、実施態様10に記載の装置。
(13) 前記プローブの位置を追跡することは、前記プローブと前記体電極との間の電流に応答して前記位置を算出することを含む、実施態様10に記載の装置。
(14) 前記指標を決定することは、前記プローブと前記体電極との間の電流をそれぞれ測定することを含む、実施態様10に記載の装置。
(15) 前記指標を決定することは、前記体電極間の前記インピーダンスを前記プローブの前記位置に関連付けるマトリクスを形成することを含む、実施態様11に記載の装置。
(16) 前記マトリクスを形成することは、前記呼吸の方向を決定することを含む、実施態様15に記載の装置。
(17) 前記プロセッサは、前記マトリクス及び前記方向に応答して前記呼吸の前記終末呼気の点を決定するように構成されている、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記プロセッサは、前記指標の変化率、前記マトリクス、及び前記方向に応答して前記呼吸の前記終末呼気の点を決定するように構成されている、実施態様16に記載の装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体にガルバニック接触させて体電極を配置することと、
前記被験者の前記体内にプローブを設置することと、
前記被験者の呼吸の間に前記プローブの位置を追跡することと、
前記呼吸の間に前記体電極間のインピーダンスに関連付けられる指標を決定することと、
前記プローブの前記位置を前記指標に関連付ける関数を計算することと、
前記関数を適用して、前記インピーダンスに関連付けられる、続く指標に基づいて前記呼吸の終末呼気の点を識別することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記終末呼気の点を識別することは、前記関数が既定の閾値未満であると評価することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プローブの位置を追跡することは、電磁追跡システムを使用して前記位置を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プローブの位置を追跡することは、前記プローブと前記体電極との間の電流に応答して前記位置を算出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記指標を決定することは、前記プローブと前記体電極との間の電流をそれぞれ測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記指標を決定することは、前記体電極間の前記インピーダンスを前記プローブの前記位置に関連付けるマトリクスを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マトリクスを形成することは、前記呼吸の方向を決定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マトリクス及び前記方向に応答して前記呼吸の前記終末呼気の点を決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記指標の変化率、前記マトリクス、及び前記方向に応答して前記呼吸の前記終末呼気の点を決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
被験者の体にガルバニック接触させて配置される体電極と、
前記被験者の前記体内に設置されたプローブと、
プロセッサと、を備え、該プロセッサは、
前記被験者の呼吸の間に前記プローブの位置を追跡し、
前記呼吸の間に前記体電極間のインピーダンスに関連付けられる指標を決定し、
前記プローブの前記位置を前記指標に関連付ける関数を計算し、
前記関数を適用して、前記インピーダンスに関連付けられる、続く指標に基づいて前記呼吸の終末呼気の点を識別するように構成されている、装置。
【請求項11】
前記終末呼気の点を識別することは、前記関数が既定の閾値未満であると評価することを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記プローブの位置を追跡することは、電磁追跡システムを使用して前記位置を決定することを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記プローブの位置を追跡することは、前記プローブと前記体電極との間の電流に応答して前記位置を算出することを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記指標を決定することは、前記プローブと前記体電極との間の電流をそれぞれ測定することを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記指標を決定することは、前記体電極間の前記インピーダンスを前記プローブの前記位置に関連付けるマトリクスを形成することを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記マトリクスを形成することは、前記呼吸の方向を決定することを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセッサは、前記マトリクス及び前記方向に応答して前記呼吸の前記終末呼気の点を決定するように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記指標の変化率、前記マトリクス、及び前記方向に応答して前記呼吸の前記終末呼気の点を決定するように構成されている、請求項16に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−139506(P2012−139506A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−288915(P2011−288915)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(511099630)バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
【住所又は居所原語表記】4 Hatnufa Street, Yokneam 20692, Israel
【Fターム(参考)】