説明

カテーテル固定具

【課題】固定時に患者にあまり負担をかけずにカテーテルを安定的に固定することができるとともに、省スペースで操作することができるカテーテル固定具を提供すること。
【解決手段】本発明は、管状のカテーテル1を固定するための固定具11に関する。このカテーテル固定具11は、板状の固定具本体21と、それと別体で構成された固定部材41と、回転連結軸45とを備える。板状の固定具本体21は、カテーテル保持溝25が形成された保持部22と一対の翼片23a,23bとを有する。回転連結軸45は、固定具本体21と固定部材41とを連結し、固定部材41の回転軸C1を兼ねる。回転連結軸45を中心として固定部材41を固定具本体21の平面方向に沿って回転動作させる。すると、カテーテル保持溝25が固定部材41により被覆されてカテーテル1が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルを患者の皮膚に固定する際に用いられるカテーテル固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場においては、カテーテルを用いた治療や診断が広く実施されている。このようなカテーテルは、使用する際にカテーテル先端部を治療や診断に適した部位に確実に留めておく必要があるため、一般的に皮膚の外に出ている体外部が患者に固定される。
【0003】
患者に固定する手段として、カテーテルを患者の体表に固定する際に用いられるカテーテル固定具が従来提案されている。この種のカテーテル固定具は、例えば、軟質樹脂からなる固定具本体と、固定具本体よりも剛性の高い金属または樹脂からなる固定部材とを備えている。
【0004】
固定具本体には、カテーテルを挿入配置可能な保持部が設けられている。カテーテルを挿入配置した状態では、カテーテルのほぼ全周が保持部により覆われる。固定具本体に対しては、十分な補強効果を付与するために、固定具本体の上方向から固定部材が被せられる。その結果、保持部が締め付けられてカテーテルが確実に固定されるようになっている。
【0005】
なお、このようなカテーテル固定具の従来技術としては他にもいくつか提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。固定具本体と固定部材とは別々に構成されているものがあるほか、互いに連結されて一体化されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−154012号公報
【特許文献2】特開2008−212434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のカテーテル固定具では、固定部材を固定具本体の垂直方向から被せて嵌合させる際に、皮膚に対して押圧力が付加される。このため、皮膚が圧迫され、患者に物理的な負担がかかってしまうという問題がある。
【0008】
また、固定具本体と固定部材とが別々に構成されている従来のカテーテル固定具の場合、一方の構成部品を紛失してしまうおそれがあった。また、固定部材を使用せず固定具本体のみを使用して固定してしまうおそれがあり、推奨される固定状態が得られないという欠点があった。
【0009】
さらに、固定具本体と固定部材とが互いに連活されて一体化している従来のカテーテル固定具では、2つの構成部品を例えばストラップ等により連結しているにすぎないため、紛失防止以上の効果を奏するものとなっていない。よって、依然として改良の余地があった。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定時に患者にあまり負担をかけずにカテーテルを安定的に固定することができるとともに、構成部品を紛失する心配のないカテーテル固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして上記課題を解決するための手段1〜6を以下に列挙する。
【0012】
[1]管状のカテーテルを固定するための固定具であって、カテーテル保持溝が形成された保持部と一対の翼片とを有する板状の固定具本体と、前記固定具本体とは別体で構成され前記カテーテル保持溝を被覆可能な固定部材と、前記固定具本体と前記固定部材とを連結するとともに前記固定部材の回転軸を兼ねる回転連結軸とを備え、前記回転連結軸を中心として前記固定部材を前記固定具本体の平面方向に沿って回転動作させることにより、前記カテーテル保持溝が前記固定部材により被覆されて前記カテーテルが固定されることを特徴とするカテーテル固定具。
【0013】
従って、手段1に記載の発明によると、回転軸を兼ねる回転連結軸を中心として固定部材を固定具本体の平面方向に沿って回転動作させることができる。そしてこの動作によりカテーテル保持溝を固定部材により被覆することによって、カテーテルが安定的に固定される。このとき、固定部材は固定具本体の平面方向に沿って押圧されるため、皮膚に対して垂直方向に押圧力が付加されにくくなる。よって、患者にあまり負担をかけずにカテーテルを固定することができる。また、別体で構成された固定具本体と固定部材とが回転連結軸により連結され一体化しているため、構成部品の紛失を未然に防止することができる。
【0014】
[2]前記固定部材の回転動作完了時に前記保持部が前記固定部材により押圧されて前記カテーテル保持溝が狭められることを特徴とする手段1に記載のカテーテル固定具。
【0015】
従って、手段2に記載の発明によると、保持部が固定部材により押圧され、カテーテル保持溝が狭められる結果、保持部によりカテーテルが締め付けられて安定的にかつ強固に固定される。
【0016】
[3]平面視円弧状のガイド部を前記固定具本体の前記保持部に設け、前記ガイド部に係止可能な平面視円弧状の被ガイド部を前記固定部材の自由端側に設けたことを特徴とする手段1または2に記載のカテーテル固定具。
【0017】
従って、手段3に記載の発明によると、ガイド部に被ガイド部が係止可能であるため、固定部材を固定具本体の平面方向に沿ってガイドしつつ、回転連結軸を中心として固定部材をスムーズに回転させることができる。また、固定部材が回転終了位置に至ったときには、固定部材が固定具本体から外れにくくなる。
【0018】
[4]前記固定部材に円筒状の前記回転連結軸を設けるとともに、前記翼片に形成された貫通穴に前記回転連結軸を回転可能に軸支させたことを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載のカテーテル固定具。
【0019】
従って、手段4に記載の発明によると、翼片に形成された貫通穴を利用して回転連結軸を軸支しているため、軸支のための構造部を別に設ける必要がなく、構造の複雑化や高コスト化を回避しやすくなる。また、回転連結軸が円筒状であるため、貫通穴に軸支した状態でもその部分が閉塞されず、実質的に貫通穴としての機能を維持することができる。さらにこの構成によると、回転軸部分の剛性を比較的高くすることができる。
【0020】
[5]前記固定具本体の前記保持部の上面に、回転動作中の前記固定部材の裏面に摺接して前記固定部材を通過時に持ち上げる隆起部を突設したことを特徴とする手段1乃至4のいずれか1項に記載のカテーテル固定具。
【0021】
従って、手段5に記載の発明によると、回転動作中の固定部材が隆起部のある箇所を通過する際に、隆起部の上端が固定部材の裏面に摺接することで、固定部材が持ち上げられる。このため、カテーテル保持溝に配置されているカテーテルを避けて固定部材を回転動作させることができ、固定部材がカテーテルに引っ掛かりにくくなる。さらに、隆起部を設けておくことで、固定部材を回転させる方向を容易に把握することができる。
【0022】
[6]前記固定部材の回転動作完了時に前記隆起部が係合可能な凹部を前記固定部材の裏面に設けたことを特徴とする手段5に記載のカテーテル固定具。
【0023】
従って、手段6に記載の発明によると、固定部材の凹部が固定具本体の隆起部の位置に到達したときに凹部に隆起部が係合する。その際、術者は指先にクリック感を得るため、回転動作が完了して完全な固定状態になったことを触感をもって把握することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、請求項1〜6に記載の発明によると、固定時に患者にあまり負担をかけずにカテーテルを安定的に固定することができるとともに、構成部品を紛失する心配のないカテーテル固定具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は本発明を具体化した実施形態におけるカテーテル固定具の固定具本体を示す斜視図、(b)は固定具本体を示す平面図、(c)は固定具本体を示す正面図、(d)は固定具本体を示す底面図、(e)は固定具本体を示す側面図。
【図2】(a)は上記カテーテル固定具の固定部材を下方から見たときの斜視図、(b)は固定部材を示す平面図、(c)は固定部材を示す正面図、(d)は固定部材を示す側面図。
【図3】(a)は上記カテーテル固定具において回転動作の開始時の状態を示す平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく上方から見た斜視図。
【図4】(a)は上記カテーテル固定具において回転動作の途中の状態を示す平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく上方から見た斜視図。
【図5】(a)は上記カテーテル固定具において回転動作の完了状態を示す平面図、(b)は同じく正面図、(c),(d)は同じく上方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施の形態のカテーテル固定具11を図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0027】
本実施形態のカテーテル固定具11は、管状のカテーテル1を固定する際に用いる医療機器である。このカテーテル固定具11は、図3〜図5に示されるように、基本的に2つの部品(固定具本体21及び固定部材としてのカバー41)により構成されている。
【0028】
図1,図3等に示されるように、固定具本体21は平面視長円形状の板状部材であり、比較的軟質な合成樹脂材料(例えばポリアミド系エラストマー)を用いて形成されている。ポリアミド系エラストマーのほか、例えばポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、軟質ポリウレタン、ポリアミド系エラストマー等といった軟質の合成樹脂材料を選択してもよい。ここで、固定具本体21は直接皮膚に接触する部材であるので、患者に与える違和感を軽減するために可撓性・弾性を有する材料を用いることが好ましい。また、固定具本体21を形成している合成樹脂材料は、カテーテル1の管状体材料よりも軟質であることが望ましい。その理由は、固定具本体21にカテーテル1を保持させて押圧力を付加したときにカテーテル1が変形して内腔が潰れてしまうのを回避するためである。
【0029】
固定具本体21は一対の翼片23a,23bを有している。これらの翼片23a,23bには円形状の穴24a,24bが設けられている。これらの穴24a,24bは、縫合糸を挿通させるための貫通穴である。なお、固定具本体21の裏面側には、固定具本体21を皮膚に接着固定するための粘着層が、粘着剤の塗布あるいは粘着シートの貼付により形成されていてもよい。また、使用前の状態においてその粘着層を保護するための離型フィルムが貼着されていてもよい。図1(d)に示されるように、翼片23bの裏面側において穴24bを含む領域には、D字状の凹部31が設けられている。
【0030】
固定具本体21の上面側には、固定具本体21において他の部分よりも厚肉に形成された保持部22が配置されている。この固定具本体21では、保持部22が翼片23aの一部及び翼片23bの全体を占めている。この保持部22には、カテーテル1を保持可能なカテーテル保持溝25が形成されている。カテーテル保持溝25は、固定具本体21を横断する方向に沿って延びるとともに、固定具本体21の上面側にて開口している。なお、カテーテル保持溝25の断面形状は限定されないが、本実施形態では一部が狭窄した形状を有している。
【0031】
図1,図3等に示されるように、この保持部22において穴24aとカテーテル保持溝25との間の位置には、円弧状部位27が設けられている。円弧状部位27の一端には、カバー41を係合させる際の導入部分となる切欠部26が形成されている。図1(a),(c),(e)等に示されるように、円弧状部位27の下側部分には、平面視円弧状のガイド部としてのガイド溝28が形成されている。このガイド溝28は、円弧に沿った方向に向かって徐々に狭くなるように形成されている(図1(e)参照)。
【0032】
図2,図3等には固定部材としてのカバー41が示されている。このカバー41は、固定具本体21を構成している合成樹脂材料よりも硬質の合成樹脂材料(例えばポリプロピレン)を用いて形成されている。ポリプロピレンのほか、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、硬質ポリウレタン、ABS等といった硬質の合成樹脂材料を選択してもよい。カバー41を構成するは平板状のカバー本体42は、表面43を有するとともに、保持部22の上面29に接触して配置される裏面44を有している。このカバー41は、裏面44側を保持部22の上面29に接触させた状態で保持部22を全体的に覆うことができる程度の大きさを有している。なお、本実施形態のカバー41は、保持部22よりも若干大きく、かつ、固定具本体21の3/4程度の大きさの部品となっている。
【0033】
図2(a),(c),(d)に示されるように、カバー41の固定端E2側の中央部かつカバー41の裏面44側には、回動軸C1を兼ねる回転連結軸45が一体的に突設されている。この回転連結軸45は、中心孔46を有する円筒状であり、小径部48とその先端に位置するテーパ状の大径部47とによって構成されている。この回転連結軸45は、固定具本体21の穴24bに対して嵌着可能である。回転連結軸45を穴24bに嵌着した状態では、カバー41が固定具本体21に対して回転可能に軸支される。また、回転連結軸45の大径部47がカバー41の裏面44の凹部31に位置することにより、回転連結軸45の抜け止めが図られる。
【0034】
一方、図2(a)〜(d)に示されるように、固定端E2の反対側にあるカバー41の自由端E1側においてその裏面44側には、自由端E1の縁部に沿って円弧状突条51が設けられている。円弧状突条51において固定端E2側を向く側面の下部には、平面視円弧状の被ガイド部としての被ガイド凸部52が一体的に形成されている。この被ガイド凸部52の上面は、円弧における一端から他端に向かって緩やかに傾斜している(図2(a)参照)。そして、この被ガイド凸部52は、平面視円弧状のガイド溝28に対して係脱可能となっている。また、カバー本体42において被ガイド凸部52の直上位置には、スリット状の開口部53が形成されている。
【0035】
図1(a),(b),(c),(e)に示されるように、固定具本体21の保持部22の上面29における所定箇所には、断面台形状ないし断面半球状をした隆起部32が突設されている。この隆起部32は、回転動作中のカバー41の裏面44に摺接することで、カバー41を通過時に持ち上げる役割を果たすものである。より具体的にいうと、隆起部32は、保持部22の上面29であって、かつ、回転連結軸45が軸支される側の穴24bとカテーテル保持溝25との間の位置に配設されている。なお、切欠部26がカバー41の係合時の導入部分であることから、隆起部32はカテーテル保持溝25を挟んで切欠部26のちょうど反対側に位置している。一方、図2(a),(b)に示されるように、カバー41の裏面44側において隆起部32に対応する位置には、カバー41の回転動作完了時に隆起部32が係脱可能な凹部33が設けられている。
【0036】
次に、上記のように構成された本実施形態のカテーテル固定具11を使用してカテーテル1を固定する手順を図3〜図5に基づいて説明する。
【0037】
例えば、カテーテル1の先端が経皮的に鎖骨下静脈に導かれ、残余のカテーテル1が患者の前胸部の穿刺部から皮膚の外に導出されているものとする。そして、カテーテル固定具11は、カテーテル1において皮膚の外に導出されている体外部に取り付けられるものとする。初期状態においては、図3(a)〜(c)に示すように、カバー41の自由端E1はカテーテル保持溝25から大きく離れた位置にあり、カテーテル保持溝25が完全に露出している。
【0038】
まず、カテーテル1の体外部を、固定具本体21の保持部22に形成されたカテーテル保持溝25に挿入する(図3(a)〜(c)を参照)。固定具本体21の裏面側に粘着層がある場合には、この段階で粘着層を介して固定具本体21を皮膚に接着してもよい。
【0039】
次に、カバー41を指で摘まみ、回転連結軸45を中心として図4(a)の時計周り方向に回転させる。その際、術者は隆起部32を見ることで、カバー41を回転させる方向を容易に把握することができる。回転動作中のカバー41が隆起部32のある箇所を通過する際には、隆起部32の上端がカバー41の裏面44に摺接することで、カバー41が持ち上げられる(図4(a)〜(c)参照)。従って、カバー41の裏面44側にて突出する円弧状突条51の下端が、カテーテル保持溝25に配置されているカテーテル1よりも一時的に高い位置となる。よって、カテーテル1を避けてカバー41を回転動作させることができ、円弧状突条51がカテーテル1に引っ掛かりにくくなる。
【0040】
そして、カバー41をさらに回転させて、被ガイド凸部52の一端を切欠部26に至らせるとともに、その位置からガイド溝28内に徐々に導入させる。このとき、被ガイド凸部52がガイド溝28に沿って摺動することでスムーズにガイドされる。カバー41が保持部22及びカテーテル保持溝25を全体的に覆う状態(即ち回転動作完了状態)になると、凹部33が隆起部32の位置に到達し、凹部33に隆起部32が係合する(図5(a)等参照)。その際、術者は指先にクリック感を得るため、回転動作が完了して完全な固定状態になったことを触感をもって把握することができる。なお、カバー41はそれ以上回転動作不能となる。ただし、カバー41は他方の翼片23aに設けられた穴24aを覆わないようになっている。
【0041】
このような状態に至ると、保持部22におけるガイド溝28の内面が、カバー41における被ガイド凸部52の先端面によって、カテーテル保持溝25の方向に押圧される。この押圧により、保持部22に変形が生じて、カテーテル保持溝25が狭められる。その結果、保持部22によりカテーテル1の体外部が締め付けられて安定的にかつ強固に固定される。なお、完全嵌合状態においては、カバー41の裏面44と保持部22の上面29とが接触状態になるとともに、カバー41により保持部22がほぼ全体的に覆われた状態となる。そしてこの後、必要に応じてカテーテル固定具11及び刺入部にドレッシングを貼り付けて保護するようにしてもよい。
【0042】
そして、カテーテル固定具11による固定を解除してカテーテル1を外したい場合には、上記回転動作時とは逆の動作を行う。ドレッシングを貼り付けてある場合には、まずそのドレッシングを剥離してカテーテル固定具11を露出させる。その際、カテーテル固定具11の上方向に力が加わりやすい反面、カバー41を離脱させる方向には力が加わりにくいため、ドレッシングと一緒にカバー41が外れるリスクが極めて小さくなる。なお、ガイド溝28に被ガイド凸部52が係止していることや、穴24bに回転連結軸45が嵌着していることも、カバー41の外れ防止に寄与している。次に、カバー41を反時計周りの方向に回転動作させて、カテーテル保持溝25を露出させる。その際、保持部22を押圧することで狭められていたカテーテル保持溝25が拡がり、カテーテル1の固定が解除されてカテーテル1を抜くことが可能となる。
【0043】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0044】
(1)本実施形態のカテーテル固定具11の構成によれば、回転軸C1を兼ねる回転連結軸45を中心としてカバー41を固定具本体21の平面方向に沿って回転動作させることができる。そしてこの動作によりカテーテル保持溝25をカバー41により被覆することによって、カテーテル1が安定的に固定される。このとき、カバー41は固定具本体21の平面方向に沿って押圧されるため、皮膚に対して垂直方向に押圧力が付加されにくくなる。よって、患者にあまり負担をかけずにカテーテル1を固定することができる。また、固定具本体と固定部材とがストラップで互いに連結されて一体化している従来のカテーテル固定具とは異なり、紛失防止以上の効果を奏する点で優れている。
【0045】
(2)また、別体で構成された固定具本体21とカバー41とが回転連結軸45により連結され一体化しているため、構成部品の紛失を未然に防止することができる。よって、固定具本体と固定部材とが別々に構成されている従来のカテーテル固定具とは異なり、カバー41を使用せず固定具本体21のみを使用してカテーテル1を固定してしまうおそれがない。従って、推奨される固定状態が確実に得られる点で優れている。
【0046】
(3)本実施形態のカテーテル固定具11の構成によれば、ドレッシングを剥がすときでも、カバー41を離脱させる方向に力が加わりにくい。よって、一緒にカバー41が外れる等といった不意の事態が起きにくくなる点で優れている。
【0047】
(4)本実施形態のカテーテル固定具11の構成によれば、カバー41の回転動作完了時にガイド溝28の内面が被ガイド凸部52の先端面によって、カテーテル保持溝25の方向に押圧される結果、カテーテル保持溝25が狭められる。その結果、保持部22によりカテーテル1の体外部が締め付けられて安定的にかつ強固に固定される。
【0048】
(5)本実施形態のカテーテル固定具11の構成によれば、ガイド部としてのガイド溝28に被ガイド部である被ガイド凸部52が係止可能である。このため、カバー41を固定具本体21の平面方向に沿ってガイドしつつ、回転連結軸45を中心としてカバー41をスムーズに回転させることができる。また、カバー41が回転終了位置に至ったときには、カバー41が固定具本体21から外れにくくなる。
【0049】
(6)本実施形態のカテーテル固定具11の構成によれば、一方の翼片23bに形成された穴24bを利用して回転連結軸45を軸支している。そのため、軸支のための構造部を別に設ける必要がなく、構造の複雑化や高コスト化を回避することができる。また、回転連結軸45が円筒状であるため、穴24bに軸支した状態でもその部分が閉塞されず、実質的に縫合糸を挿通させるための貫通穴としての機能を維持することができる。さらにこの構成によると、回転軸C1部分の剛性を比較的高くすることができる。従って、カバー41による押圧力が効果的に加わり、カテーテル保持溝25を左右方向から確実に狭めて、締め付けることができる。加えて、このような回転軸構造によれば、回転連結軸45が基本的に変形を伴わないので、カバー41をスムーズにかつ正しい軌跡を描きながら回転動作させることができる。
【0050】
(7)本実施形態のカテーテル固定具11では、固定部材であるカバー41の裏面44と保持部22の上面29とが接触した状態となるため、カテーテル固定具11の全体厚さを確実に抑えることができる。さらに、保持部22がカバー41により全体的に覆われることで、保持部22及びそこに保持されたカテーテル1がドレッシングに直接触れなくなる。このため、ドレッシング剥離に伴うカテーテル1のずれ等を防止することができる。
【0051】
(8)本実施形態では、カバー41が固定具本体21よりも硬質な合成樹脂材料からなるため、相対的に軟質の合成樹脂材料からなる保持部22が効率よく押圧される。従って、保持部22が確実に変形してカテーテル保持溝25が確実に狭められる。このため、保持部22によってカテーテル1がより強く締め付けられて固定される。また、本実施形態では、固定具本体21及びカバー41がともに合成樹脂材料製であって金属材料を使用していないことから、核磁気共鳴画像法(MRI)を用いた検査の際でも特に取り外す必要がないという利点がある。
【0052】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0053】
・上記実施形態では回転連結軸45を円筒状としたが、これに限定されず例えば中心孔がない円柱状であってもよい。
【0054】
・上記実施形態では、翼片23a,23bに形成された穴24a,24bのうちの一方のものを、回転連結軸45の軸支用穴として利用したが、軸支のための構造部をこれ以外の箇所に設けてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、カバー41を構成するカバー本体42側に回転連結軸45を一体形成したが、これに限定されない。例えば、固定具本体21側に回転連結軸45を一体形成し、カバー41側に軸支用の貫通穴を設けてもよい。あるいは、固定具本体21及びカバー41と別体で回転連結軸45を構成し、固定具本体21及びカバー41にそれぞれ設けた軸支用の貫通穴に回転連結軸45を挿通してもよい。
【0056】
・カバー41の平面形状は上記実施形態のものに限定されず、適宜変更することが可能である。例えば、カバー41は固定具本体21とほぼ同じ外形形状及び寸法を有するものであってもよい。
【0057】
・上記実施形態では、保持部22が押圧されることでカテーテル保持溝25を狭める構成であったが、必ずしもそうでなくてよい。
【0058】
・上記実施形態では、カバー41を不透明樹脂材料からなるものとしたが、透明樹脂材料からなるものとしてもよい。
【0059】
・上記実施形態のカテーテル固定具11において、固定具本体21及びカバー41に、それぞれ位置決めマークを設けてもよい。従ってこの構成によると、位置決めマークの相互の位置関係をもって、固定具本体21及びカバー41の位置決め状態を視覚を通じて容易に把握することできる。
【0060】
次に、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段1乃至6のいずれか1項において、前記固定具本体及び前記固定部材はともに樹脂製であること。
(2)上記手段1乃至6のいずれか1項において、前記固定部材は不透明樹脂材料からなること。
(3)上記手段1乃至6のいずれか1項において、前記カテーテル保持溝は前記固定具本体の略中央部を通るように配置されるとともに、前記固定具本体の表面側にて開口すること。
(4)上記手段1乃至6のいずれか1項において、前記固定部材は、前記固定具本体よりも硬質な材料からなること。
(5)上記手段1乃至6のいずれか1項において、前記固定具本体及び前記固定部材には、それぞれ位置決めマークが設けられていること。
(6)上記手段1乃至6のいずれか1項において、前記固定部材は、回転動作完了時に前記固定具本体からはみ出さないこと。
(7)上記手段1乃至6のいずれか1項において、前記固定部材は前記カテーテル保持溝及び前記保持部の上面を全体的に被覆して保護するカバーであること。
(8)上記手段1乃至6のいずれか1項において、前記固定部材は回転動作完了時に前記翼片に設けられた穴を覆わないこと。
(9)上記手段1乃至6のいずれか1項において、前記固定具本体は皮膚に固定可能であること。
(10)上記手段5または6において、前記隆起部は、前記保持部の上面であって、かつ、前記回転連結軸が軸支される側の前記穴と前記カテーテル保持溝との間の位置に配設されていること。
(11)上記手段5または6において、前記隆起部は、前記カテーテル保持溝を挟んでカバー係合時の導入部分のちょうど反対側に位置していること。
【符号の説明】
【0061】
1…カテーテル
11…カテーテル固定具
21…固定具本体
22…保持部
23a,23b…翼片
24a,24b…貫通穴
25…カテーテル保持溝
28…ガイド部としてのガイド溝
29…(保持部)上面
32…隆起部
33…凹部
41…固定部材としてのカバー
44…(固定部材の)裏面
45…回転連結軸
51…被ガイド部としての被ガイド凸部
C1…回転軸
E1…(固定部材の)自由端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のカテーテルを固定するための固定具であって、
カテーテル保持溝が形成された保持部と一対の翼片とを有する板状の固定具本体と、前記固定具本体とは別体で構成され前記カテーテル保持溝を被覆可能な固定部材と、前記固定具本体と前記固定部材とを連結するとともに前記固定部材の回転軸を兼ねる回転連結軸とを備え、
前記回転連結軸を中心として前記固定部材を前記固定具本体の平面方向に沿って回転動作させることにより、前記カテーテル保持溝が前記固定部材により被覆されて前記カテーテルが固定される
ことを特徴とするカテーテル固定具。
【請求項2】
前記固定部材の回転動作完了時に前記保持部が前記固定部材により押圧されて前記カテーテル保持溝が狭められることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル固定具。
【請求項3】
平面視円弧状のガイド部を前記固定具本体の前記保持部に設け、前記ガイド部に係止可能な平面視円弧状の被ガイド部を前記固定部材の自由端側に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のカテーテル固定具。
【請求項4】
前記固定部材に円筒状の前記回転連結軸を設けるとともに、前記翼片に形成された貫通穴に前記回転連結軸を回転可能に軸支させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカテーテル固定具。
【請求項5】
前記固定具本体の前記保持部の上面に、回転動作中の前記固定部材の裏面に摺接して前記固定部材を通過時に持ち上げる隆起部を突設したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカテーテル固定具。
【請求項6】
前記固定部材の回転動作完了時に前記隆起部が係合可能な凹部を前記固定部材の裏面に設けたことを特徴とする請求項5に記載のカテーテル固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−70887(P2013−70887A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213481(P2011−213481)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000228888)日本コヴィディエン株式会社 (170)
【Fターム(参考)】