説明

カテーテル用ハンドル

【課題】(1)構成部品を変更することなく、カテーテルチューブの先端部分のカーブ形状の異なるカテーテルを構成できるカテーテル用ハンドルを提供すること。(2)カテーテルチューブの先端部分を一方向に曲げる場合と他方向に曲げる場合とで、異なるカーブ形状を実現するバイディレクションタイプのカテーテルを構成できるハンドルを提供すること。
【解決手段】カテーテルチューブ10の基端側に装着されるハンドル本体21と、ハンドル本体21に対して回転自在に装着され、チューブ10の先端部分を撓ませるための操作用ワイヤ31,32の基端が固定される回転板22とを備え、回転板22には、操作用ワイヤ31,32の経路を規定するための円弧状のガイドレール231−233,241−243が、回転板22の回転軸を中心とする同心円の円周上に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテル用ハンドルに関し、更に詳しくは、カテーテルチューブの基端側に装着されて先端偏向操作可能カテーテルを構成するカテーテル用ハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用カテーテルは、通常、カテーテルチューブの基端(近位端)側にハンドルが装着されてなる。
カテーテル用ハンドルとしては、カテーテルの種類に応じて種々のものが提案されている。例えば、カテーテルの先端部分(遠位端)を、カテーテル用ハンドルを操作して曲げたり伸ばしたりしたい場合がある。このようにカテーテルの先端部分を手元側で操作して偏向させるための機構として、ハンドル本体に対して回転自在に装着された回転板に操作用ワイヤの基端を連結し、この回転板を回転操作することによりカテーテルの先端の向きを変化(偏向)させる機構が紹介されている(特許文献1参照)。
【0003】
図10Aは、従来のカテーテル用ハンドルの内部構造の一例を示している。
同図に示すカテーテル用ハンドルは、カテーテルチューブ(図示省略)の基端側に装着されるハンドル本体1と、ハンドル本体1に対して回転自在に装着され、カテーテルチューブの先端部分を撓ませるための操作用ワイヤ2a,2bの基端が固定される回転板3Aとを備えている。同図において、4は回転板3Aの回転軸、5は回転板3Aの摘み、6は操作用チューブ(操作用ワイヤ2a,2bの挿通チューブ)、7a,7bはワイヤ留め具である。回転板3Aには円環状のガイドレール8Aが形成されている。このガイドレール8Aは、回転板3A内における操作用ワイヤ2a,2bの経路を規定することによって、回転板3Aの回転操作に伴う操作用ワイヤ2a,2bの引張量を確保するものである。
【0004】
図10Aに示すように、操作用チューブ6から回転板3A内に延び出た操作用ワイヤ2aは、回転板3Aの右側において、円環状のガイドレール8Aの外周に沿って配置され、ワイヤ留め具7aにより回転板3Aに固定されている。
一方、操作用チューブ6から回転板3A内に延び出た操作用ワイヤ2bは、回転板3Aの左側において、円環状のガイドレール8Aの外周に沿って配置され、ワイヤ留め具7bによって回転板3Aに固定されている。
【0005】
そして、図10Aに示した状態から、矢印9aの方向に回転板3Aを回転させると、ガイドレール8Aの外周に沿って配置された操作用ワイヤ2aが引っ張られることにより、ハンドル本体1の先端側に装着されているカテーテルチューブの先端部分が右側に曲がる(偏向する)。
一方、矢印9bの方向に回転板3Aを回転させると、ガイドレール8Aの外周に沿って配置された操作用ワイヤ2bが引っ張られることにより、ハンドル本体1の先端側に装着されているカテーテルチューブの先端部分が左側に曲がる(偏向する)。
【0006】
図10Aに示したような構造のハンドルを備えた先端偏向操作可能カテーテルにおいて、回転板を一定角度回転したときのカテーテルチューブの先端部分のカーブ形状(曲がりの大きさ)は、回転板を回転したときの操作用ワイヤの引張量(移動量)が多いほど大きくなり、操作用ワイヤの引張量は、通常、回転板内における操作用ワイヤの経路(回転板内に進入してからワイヤ留め具に至るまでの操作用ワイヤの長さ)が長いほど長くなる。
【0007】
このため、回転操作に伴う先端部分の曲がりを更に大きくしたい場合には、回転板3Aに代えて、外周(径)の大きい環状のガイドレールが形成された回転板、例えば、図10Bに示すように、ガイドレール8Aよりも直径の大きい円環状のガイドレール8Bが形成された回転板3Bをハンドル本体1に装着することにより、回転板の回転操作に伴う操作ワイヤの経路を長くすることができる。
【0008】
一方、回転操作に伴う先端部分の曲がりを小さくしたい場合には、回転板3Aに代えて、外周(径)の小さい環状のガイドレールが形成された回転板、例えば、図10Cに示すような、ガイドレール8Aより直径の小さい円環状のガイドレール8Cが形成された回転板3Cをハンドル本体1に装着することによって、回転板の回転操作に伴う操作ワイヤの経路を短くすることができる。
【0009】
上記のように、従来のカテーテル用ハンドルにおいては、カテーテルチューブの先端部分のカーブ形状(曲がりの大きさ)に応じて、異なる回転板(異なる径のガイドレールが形成された成型品)をハンドル本体に装着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−230471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、カテーテルチューブの先端部分のカーブ形状に応じて異なる回転板を成型してハンドル本体に装着することは煩雑であり、製造コストの点から好ましくない。このため、複数のカーブ形状に対応することができる回転板を備えたカテーテル用ハンドルの提供が望まれていた。
【0012】
一方、バイディレクション(bidirection)タイプの先端偏向操作可能カテーテルにおいて、カテーテルチューブの先端部分を一方向(例えば右側)に曲げる場合と、他方向(例えば左側)に曲げる場合とで、異なるカーブ形状を実現できるものが求められている。
しかし、上記のような回転板(回転板3A〜3C)を備えた従来のハンドルによっては、左右のカーブ形状が異なる先端偏向操作可能カテーテルを構成することはできない。
【0013】
また、バイディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテルにおいて、回転操作によって一方のワイヤが引張状態になったときには、他方のワイヤに弛みが生じ、この弛み部分が、回転板の外部にはみ出てしまうことがある。
【0014】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第1の目的は、構成部品を変更することなく、カテーテルチューブの先端部分のカーブ形状(曲がりの大きさ)の異なるカテーテルを構成することができるカテーテル用ハンドルを提供することにある。
本発明の第2の目的は、カテーテルチューブの先端部分を一方向に曲げる場合と他方向に曲げる場合とで、異なるカーブ形状を実現するバイディレクションタイプのカテーテルを構成することができるカテーテル用ハンドルを提供することにある。
本発明の第3の目的は、一方のワイヤが引張状態となっているときに、他方のワイヤの弛み部分が回転板の外部にはみ出るようなことがないカテーテル用ハンドルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明のカテーテル用ハンドルは、カテーテルチューブの基端側に装着されるハンドル本体と、
このハンドル本体に対して回転自在に装着され、前記カテーテルチューブの先端部分を撓ませるための操作用ワイヤの基端が固定される回転板とを備え、
前記回転板には、この回転板内における前記操作用ワイヤの経路を規定するための円弧状または円環状の複数本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円の円周上に形成されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成のカテーテル用ハンドルによれば、回転板において同心円上に形成された複数本のガイドレールの中から、操作用ワイヤの経路を規定するガイドレールとして、1本(シングルディレクションタイプを構成する場合)または2本(バイディレクションタイプを構成する場合に両側から1本ずつ)を選択して、当該ガイドレールに巻き付けることにより、先端偏向操作可能カテーテルを構成することができる。
【0017】
ここに、回転板の回転操作に伴う操作用ワイヤの引張量(移動量)は、通常、回転板における操作用ワイヤの経路が長いほど長くなる。
従って、同心円上に形成されている複数本のガイドレールのうち、最も外側に位置するガイドレールを、操作用ワイヤの経路を規定するガイドレールとして選択した場合には、回転操作に伴う操作用ワイヤの引張量、延いては、カテーテルチューブの先端部分の曲がりの大きさが最大となる。逆に、最も内側に位置するガイドレールを、操作用ワイヤの経路を規定するガイドレールとして選択した場合には、回転操作に伴う操作用ワイヤの引張量、延いては、カテーテルチューブの先端部分の曲がりの大きさが最小となる。
【0018】
このように、回転板において同心円上に形成されている複数本のガイドレールの中から操作用ワイヤの経路を規定するガイドレールを選択することにより、回転操作に伴う操作用ワイヤの引張量を変更・調整することができるので、この回転板を交換することなく、カテーテルチューブの先端部分のカーブ形状(曲がりの大きさ)の異なる先端偏向操作可能カテーテルを構成することができる。
【0019】
(2)双方向に偏向するバイディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテルを構成する本発明のカテーテル用ハンドルにおいて、
前記回転板の一方の側には、前記カテーテルチューブの先端部分を第1方向に撓ませるための第1操作用ワイヤの基端が固定されるとともに、前記回転板内における前記第1操作用ワイヤの経路を規定するための複数本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円弧状に形成され、
前記回転板の他方の側には、前記カテーテルチューブの先端部分を第2方向に撓ませるための第2操作用ワイヤの基端が固定されるとともに、前記回転板内における前記第2操作用ワイヤの経路を規定するための複数本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円弧状に形成されていることが好ましい。
【0020】
このような構成のカテーテル用ハンドルによれば、回転板の一方の側において、同心円弧状に形成された複数本のガイドレールの中から、第1操作用ワイヤの経路を規定する1本のガイドレールを選択し、回転板の他方の側において、同心円弧状に形成された複数本のガイドレールの中から、第2操作用ワイヤの経路を規定する1本のガイドレールを選択することにより、バイディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテルを構成することができる。
なお、回転板における「一方の側」および「他方の側」は、回転板の回転軸を通る直線により分割される各領域を意味する。
【0021】
そして、回転板の一方の側において、同心円弧状に形成された複数本のガイドレールの中から第1操作用ワイヤの経路を規定する1本のガイドレールを選択(変更)することにより、回転操作に伴う第1操作用ワイヤの引張量、延いては、カテーテルチューブの先端部分の第1方向の曲がりの大きさを調整することができる。
また、回転板の他方の側においても、同心円弧状に形成された複数本のガイドレールの中から第2操作用ワイヤの経路を規定する1本のガイドレールを選択(変更)することにより、回転操作に伴う第2操作用ワイヤの引張量、延いては、カテーテルチューブの先端部分の第2方向の曲がりの大きさを調整することができる。
【0022】
また、このような構成のカテーテル用ハンドルによれば、第1操作用ワイヤの引張量と第2操作用ワイヤの引張量とを別々に調整することができるので、カテーテルチューブの先端部分を第1方向に曲げる場合と第2方向に曲げる場合とで、異なるカーブ形状を実現するバイディレクションタイプのカテーテルを構成することができる。
【0023】
(3)上記(2)のカテーテル用ハンドルにおいて、前記回転板の一方の側には、前記回転板内における前記第1操作用ワイヤの経路を規定するための3本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円弧状に形成され、
前記回転板の他方の側には、前記回転板内における前記第2操作用ワイヤの経路を規定するための3本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円弧状に形成されていることが好ましい。
【0024】
このような構成のカテーテル用ハンドルによれば、回転板を変更することなく、9つのパターン(第1方向および第2方向の各々において3パターン)のカーブ形状を実現するバイディレクションタイプのカテーテルを構成することができる。
【0025】
(4)上記(3)のカテーテル用ハンドルにおいて、前記回転板の一方の側において同心円弧状に形成されている3本のガイドレールと、前記回転板の他方の側において同心円弧状に形成されている3本のガイドレールとは、中心角および対応する円弧の半径が互いに同一であって、前記中心角は80〜100°であることが好ましい。
【0026】
このような構成のカテーテル用ハンドルによれば、同心円弧状に形成されたガイドレールの中心角が80°以上であることにより、回転操作に伴う操作用ワイヤの引張量(異なるガイドレールを選択したときの引張量の差)を十分に確保することができる。
また、回転板の回転操作に伴って、第1操作用ワイヤおよび第2操作用ワイヤの一方が引張状態にあるときには、他方のワイヤに弛みを生じるが、上記中心角が100°以下であることにより、同心円弧状のガイドレールを含む同心円上に、ガイドレールの非形成領域を十分に確保することができ、この非形成領域に、他方のワイヤの弛み部分を収容することができる。
更に、同心円弧状に形成されたガイドレールの中心角が100°以下であることにより、回転板の回転操作に伴って引っ張られているワイヤ(例えば、第1操作用ワイヤ)が、このワイヤとは反対側にあるガイドレール(例えば、第2操作用ワイヤの経路を規定するガイドレール)の端部と接触することを回避することができる。
【0027】
(5)一方向にのみ偏向するシングルディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテルを構成する本発明のカテーテル用ハンドルにおいて、
前記回転板には、前記カテーテルチューブの先端部分を撓ませるための操作用ワイヤの基端が固定されるとともに、前記回転板内における前記操作用ワイヤの経路を規定するためのガイドレールとして、円環状ガイドレールと、この円環状ガイドレールの外側に位置する少なくとも1本の円弧状ガイドレールとが、それぞれ、前記回転板の回転軸を中心とする同心円の円周上に形成されていることが好ましい。
【0028】
このような構成のカテーテル用ハンドルによれば、回転板において、同心円の円周上に形成されている円環状ガイドレールおよび円弧状ガイドレールの中から、操作用ワイヤの経路を規定するガイドレールを選択することにより、シングルディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテルを構成することができる。
また、円環状ガイドレールおよび円弧状ガイドレールの中から、操作用ワイヤの経路を規定するガイドレールを選択(変更)することによって、回転操作に伴う操作用ワイヤの引張量、延いては、カテーテルチューブの先端部分の曲がりの大きさを調整することができる。
【0029】
(6)上記(5)のカテーテル用ハンドルにおいて、前記回転板には、前記カテーテルチューブの先端部分を撓ませるための操作用ワイヤの基端が固定されると共に、前記回転板内における前記操作用ワイヤの経路を規定するためのガイドレールとして、円環状ガイドレールと、この円環状ガイドレールの外側に位置する第1円弧状ガイドレールと、この第1円弧状ガイドレールの外側に位置する第2円弧状ガイドレールとが、それぞれ、前記回転板の回転軸を中心とする同心円の円周上に形成されていることが好ましい。
このような構成のカテーテル用ハンドルによれば、回転板を交換することなく、3つのパターンのカーブ形状を実現するシングルディレクションタイプのカテーテルを構成することができる。
【0030】
(7)上記(6)のカテーテル用ハンドルにおいて、前記第1円弧状ガイドレールおよび前記第2円弧状ガイドレールの中心角が150〜170°であることが好ましい。
このような構成のカテーテル用ハンドルによれば、円弧状ガイドレールの中心角が150°以上であることにより、円弧状ガイドレールによって経路が規定される操作用ワイヤの回転操作に伴う引張量(ガイドレール間における引張量の差)を十分に確保することができる。
また、円弧状ガイドレールの中心角が150°以上であることにより、円弧状ガイドレール(第1円弧状ガイドレールまたは第2円弧状ガイドレール)によって経路が規定された操作用ワイヤが回転板の回転操作に伴って引っ張られているときに、この操作用ワイヤと、円環状ガイドレールとが接触することを回避することができる。
また、円弧状ガイドレールの中心角が170°以下であることにより、円環状ガイドレールによって経路が規定された操作用ワイヤと、円弧状ガイドレール(特に、第1円弧状ガイドレール)の端部とが接触することを回避することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のカテーテル用ハンドルによれば、カテーテルチューブの先端部分のカーブ形状(曲がりの大きさ)が異なるカテーテルを、回転板を変更(交換)することなく構成することができ、カーブ形状の異なる先端偏向操作可能カテーテルにおける構成部品の共通化を図ることができる。
また、同心円弧状のガイドレールが両側に形成されている回転板を備えてなる本発明のカテーテル用ハンドルによれば、カテーテルチューブの先端部分を第1方向に曲げる場合と第2方向に曲げる場合とで、異なるカーブ形状を実現するバイディレクションタイプのカテーテルを構成することができる。
さらに、回転板の両側に形成された同心円弧状のガイドレールの中心角が80〜100°であることにより、一方のワイヤが引張状態となっているときに、他方のワイヤの弛み部分が回転板の外部にはみ出るようなことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るハンドルを備えた電極カテーテルを示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るハンドルの内部構造を示す説明図である。
【図3A】図2に示したハンドルの回転板を時計回りに一定角度回転させたときの内部構造を示す説明図である。
【図3B】図2に示したハンドルの回転板を反時計回りに一定角度回転させたときの内部構造を示す説明図である。
【図4A】ハンドルの回転板を図3Aに示した状態にしたときの電極カテーテルを示す正面図である。
【図4B】ハンドルの回転板を図3Bに示した状態にしたときの電極カテーテルを示す正面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るハンドルを備えた電極カテーテルを示す正面図である。
【図6A】本発明の他の実施形態に係るハンドルの内部構造を示す説明図である。
【図6B】本発明の他の実施形態に係るハンドルの内部構造を示す説明図である。
【図6C】本発明の他の実施形態に係るハンドルの内部構造を示す説明図である。
【図7A】図6Aに示したハンドルの回転板を時計回りに一定角度回転させたときの内部構造を示す説明図である。
【図7B】図6Bに示したハンドルの回転板を時計回りに一定角度回転させたときの内部構造を示す説明図である。
【図7C】図6Cに示したハンドルの回転板を時計回りに一定角度回転させたときの内部構造を示す説明図である。
【図8A】ハンドルの回転板を図7Aに示した状態にしたときの電極カテーテルを示す正面図である。
【図8B】ハンドルの回転板を図7Bに示した状態にしたときの電極カテーテルを示す正面図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態に係るハンドルの内部構造を示す説明図である。
【図10A】従来のカテーテル用ハンドルの内部構造を示す説明図である。
【図10B】従来のカテーテル用ハンドルの内部構造を示す説明図である。
【図10C】従来のカテーテル用ハンドルの内部構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明のカテーテル用ハンドルについて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1乃至図4Bに示す本実施形態のカテーテル用ハンドル20は、バイディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテルである電極カテーテルを構成するハンドルであって、カテーテルチューブ10の基端側に装着されるハンドル本体21と、このハンドル本体21に対して回転自在に装着される回転板22とを備え、
回転板22の一方の側(図2において右側)には、カテーテルチューブ10の先端部分を第1方向(図1において矢印Aで示す方向)に撓ませるための第1操作用ワイヤ31の基端がワイヤ留め具41によって固定されるとともに、回転板22内における第1操作用ワイヤ31の経路を規定することができる3本のガイドレール231、232、233が、回転板22の回転軸220を中心とする同心円弧状に形成され、
回転板22の他方の側(図2において左側)には、カテーテルチューブ10の先端部分を第2方向(図1において矢印Bで示す方向)に撓ませるための第2操作用ワイヤ32の基端がワイヤ留め具42によって固定されるとともに、回転板22内における第2操作用ワイヤ32の経路を規定することができる3本のガイドレール241、242、243が、回転板22の回転軸220を中心とする同心円弧状に形成されている。
【0034】
本実施形態のハンドル20を備えた電極カテーテルは、例えば、心臓における不整脈の診断または治療に用いられるものであり、図1に示すように、ハンドル20が装着されるカテーテルチューブ10を有している。
【0035】
カテーテルチューブ10は、中空のチューブ部材で構成してあり、軸方向に沿って同じ特性のチューブで構成してもよいが、比較的可撓性に優れた先端部分と、先端部分に対して軸方向に一体に形成され、先端部分よりも比較的に剛性のある基端部分とを有することが好ましい。
なお、図1、図4Aおよび図4Bでは、カテーテルチューブ10の長さが短く図示してあるが、実際には、ハンドル20の軸方向長さよりも数倍〜数十倍程度に長い。
【0036】
カテーテルチューブ10は、例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタンなどの合成樹脂で構成される。
カテーテルチューブ10の外径は通常0.6〜3mm程度であり、その内径は0.5〜2.5mm程度である。
【0037】
カテーテルチューブ10の先端部には、先端電極11と、複数のリング状電極12とが装着されている。先端電極11およびリング状電極12に接続される導線は、それぞれが絶縁された状態で、カテーテルチューブ10の軸方向ルーメンに通されている。
【0038】
先端電極11およびリング状電極12は、例えばアルミニウム、銅、ステンレス、金、白金など、電気伝導性の良好な金属で構成される。先端電極11およびリング状電極12の外径は、特に限定されないが、カテーテルチューブ10の外径と同程度であることが好ましく、通常0.5〜3mm程度である。
【0039】
カテーテルチューブ10の先端部分の内部には首振り部材が収容してある。首振り部材としては特に限定されるものではなく、例えば板バネなどで構成されている。この首振り部材としての板バネには、操作用ワイヤ(図1において図示省略)の先端が接続固定されている。
【0040】
本実施形態における操作用ワイヤは、カテーテルチューブ10の先端部分を第1方向(図1において矢印Aで示す方向)に撓ませるための第1操作用ワイヤ31と、カテーテルチューブ10の先端部分を第2方向(図1において矢印Bで示す方向)に撓ませるための第2操作用ワイヤ32とからなる。
【0041】
カテーテルチューブ10の基端には、本実施形態のハンドル20が装着されている。
このハンドル20は、ハンドル本体21と、このハンドル本体21に対して回転自在に装着された回転板22とを備えている。ハンドル20からは、先端電極11およびリング状電極12に電気的に接続される導線の引き出し線(図示省略)が引き出される。
図2に示すように、第1操作用ワイヤ31および第2操作用ワイヤ32は、それぞれ、操作用チューブ13から回転板22内に延び出ており、それぞれの基端は、ワイヤ留め具41,42によって回転板22に固定されている。
【0042】
ハンドル20を構成する回転板22は、カテーテルチューブ10の先端部分の首振り操作(偏向移動操作)を行うための部品である。
図1に示したように、カテーテルチューブ10の先端部分が直線状に伸びている状態にあるとき、回転板22は、図2に示した状態(姿勢)になっている。
【0043】
図2に示すように、回転板22の右側には、第1小径円弧状レール231と、第1中間径円弧状レール232と、第1大径円弧状レール233とからなる3本のガイドレールが、回転板22の回転軸220を中心とする同心円弧状に形成されている。
一方、回転板22の左側には、第2小径円弧状レール241と、第2中間径円弧状レール242と、第2大径円弧状レール243とからなる3本のガイドレールが、回転板22の回転軸220を中心とする同心円弧状に形成されている。
【0044】
図2に示した状態(姿勢)において、回転板22の右側において同心円弧状に形成されている3本のガイドレール(第1小径円弧状レール231、第1中間径円弧状レール232、第1大径円弧状レール233)と、回転板22の左側において同心円弧状に形成されている3本のガイドレール(第2小径円弧状レール241、第2中間径円弧状レール242、第2大径円弧状レール243)とは同じ大きさの中心角(α)を有している。
【0045】
また、回転板22の右側に形成された3本のガイドレールと、回転板22の左側に形成された3本のガイドレールにおいて、対応するガイドレール(第1小径円弧状レール231と第2小径円弧状レール241、第1中間径円弧状レール232と第2中間径円弧状レール242、第1大径円弧状レール233と第2大径円弧状レール243)の半径も同一である。
すなわち、第1小径円弧状レール231と第2小径円弧状レール241とは、回転軸220を中心とするひとつの(小径の)円周上に形成され、第1中間径円弧状レール232と第2中間径円弧状レール242とは、回転軸220を中心とするひとつの(中間径の)円周上に形成され、第1大径円弧状レール233と第2大径円弧状レール243とは回転軸220を中心とするひとつの(大径の)円周上に形成されている。
【0046】
図2に示した態様において、回転板22内における第1操作用ワイヤ31は、第1小径円弧状レール231の外周に沿って配置され(すなわち、この第1小径円弧状レール231により第1操作用ワイヤ31の経路が規定され)、その基端がワイヤ留め具41により回転板22に固定されている。
【0047】
一方、回転板22内における第2操作用ワイヤ32は、第2大径円弧状レール243の外周に沿って配置され(すなわち、この第2大径円弧状レール243によって第2操作用ワイヤ32の経路が規定され)、その基端がワイヤ留め具42によって回転板22に固定されている。
【0048】
同心円弧状に形成された3本のガイドレールの中心角(α)としては、80〜100°であることが好ましく、好適な一例を示せば90°である。
この中心角(α)が80°以上であることにより、回転板22内における操作ワイヤの経路(回転板内に進入してからワイヤ留め具で固定されるまでの操作用ワイヤの長さ)を十分に確保することができ、これにより、回転板22の回転操作に伴う操作用ワイヤの引張量、および、異なるガイドレールを選択したときの引張量の差を十分に確保することができる。
【0049】
また、この中心角(α)が100°以下であることにより、同心円弧状のガイドレールを含む同心円上に、ガイドレールの非形成領域を十分に確保することができる。
例えば、図2に示すように、上側および下側においてガイドレールの非形成領域が確保されている。
【0050】
ここに、上側の非形成領域に対する中心角(θ1 )としては100〜80°であることが好ましく、好適な一例を示せば90°である。
また、下側の非形成領域に対する中心角(θ2 )としては100〜80°であることが好ましく、好適な一例を示せば90°である。
【0051】
そして、これらの非形成領域に、回転板22の回転操作(一方のワイヤの引張操作)に伴って生じた他方のワイヤの弛み部分を収容すること、換言すれば、回転板22の中心方向に弛み部分を内側に逃がすことができるので、環状のガイドレールを使用した場合に問題となるワイヤの弛み部分が回転板22の外部にはみ出すようなことを確実に防止することができる。
【0052】
また、上記の同心円弧の中心角(α)が100°以下であることにより、ガイドレールの基端とワイヤ留め具との間に一定の離間距離(スペース)を確保することができ、これにより、ガイドレールの基端から延び出るワイヤの基端部分を、ワイヤ留め具の位置までスムーズに(必要に応じて内側に湾曲させながら)案内することができ、ワイヤの基端部分がキンクしたり、回転板22の外側にはみ出したりすることを防止することができる。 ここに、ワイヤ留め具(ワイヤ留め具41またはワイヤ留め具42)と回転軸220を結ぶ直線と、回転軸220とガイドレール(231,232,233または241,242,243)の基端を結ぶ直線とのなす角度(θ3 )は30〜35°であることが好ましい。
【0053】
更に、上記の同心円弧の中心角(α)が100°以下であることにより、回転板22の回転操作に伴って引っ張られているワイヤ(例えば、図3Aに示すように、第1小径円弧状レール231により経路が規定された第1操作用ワイヤ31)が、このワイヤとは反対側にあるガイドレール(例えば、第2大径円弧状レール243)の端部と接触(干渉)することを確実に防止することができ、ガイドレールとの干渉に起因する引張量の変化、操作上の違和感、ワイヤの断線などの問題を回避することができる。
【0054】
本実施形態のハンドル20において、回転板22を、両側にある摘み221を使用して図1および図2に示すA1方向に回転させると、図3Aに示すように、第1小径円弧状レール231により経路が規定された第1操作用ワイヤ31が引っ張られるとともに、第2大径円弧状レール243により経路が規定された第2操作用ワイヤ32が緩む(このときの回転板22の回転角度は、例えば51〜52°である)。
この結果、カテーテルチューブ10の先端部分は、図1の矢印Aに示す第1方向に首振り動作して、図4Aに示すような形状となる。ここに、回転板22の回転操作に伴って引張状態にある第1操作用ワイヤ31は、回転板22の一方の側(図2の右側)に形成されている3本のガイドレールのうち、最小径の第1小径円弧状レール231により経路が規定されているので、回転操作に伴う引張量は相対的に小さく、図4Aに示したように、カテーテルチューブ10の先端部分の曲がりも比較的小さいものである。
【0055】
なお、図3Aに示したように、第2操作用ワイヤ32に生じた弛み部分は、ガイドレールの非形成領域に収容されており、回転板22の外部にはみ出すようなことはない。また、引張状態にある第1操作用ワイヤ31と、第2大径円弧状レール243の端部とが接触することもない。
【0056】
一方、ハンドル20の回転板22を、図1および図2に示すB1方向に回転させると、図3Bに示すように、第2大径円弧状レール243によって経路が規定された第2操作用ワイヤ32が引っ張られるとともに、第1小径円弧状レール231により経路が規定された第1操作用ワイヤ31が緩む(このときの回転板22の回転角度は、例えば51〜52°である)。
この結果、カテーテルチューブ10の先端部分は、図1の矢印Bに示す第2方向に首振り動作し、図4Bに示すような形状となる。ここに、回転板22の回転操作に伴って引張状態にある第2操作用ワイヤ32は、回転板22の他方の側(図2の左側)に形成されている3本のガイドレールのうち、最大径の第2大径円弧状レール243により経路が規定されているので、回転操作に伴う引張量は相対的に大きく、図4Bに示したように、カテーテルチューブ10の先端部分の曲がりも比較的大きいものである。
【0057】
なお、図3Bに示したように、第1操作用ワイヤ31に生じた弛み部分は、ガイドレールの非形成領域に収容されており、回転板22の外部にはみ出すようなことはない。また、引張状態にある第2操作用ワイヤ32と、第1大径円弧状レール233の端部とが接触することもない。
【0058】
上記のような構成の電極カテーテル、すなわち、本実施形態のハンドル20により構成され、回転板22内における第1操作用ワイヤ31の経路を第1小径円弧状レール231によって規定するとともに、第2操作用ワイヤ32の経路を第2大径円弧状レール243によって規定する先端偏向操作可能カテーテルによれば、カテーテルチューブ10の先端部分を第1方向に曲げる場合と第2方向に曲げる場合とで、異なるカーブ形状を実現することができる。
【0059】
本実施形態のハンドル20を使用し、第1小径円弧状レール231、第1中間径円弧状レール232および第1大径円弧状レール233の中から第1操作用ワイヤ31の経路を規定するガイドレールを選択し、選択したガイドレールの外周に沿って第1操作用ワイヤ31を配置し(当該ガイドレールに第1操作用ワイヤ31を巻き付け)、第1操作用ワイヤ31の基端をワイヤ留め具41によって回転板22に固定するとともに、第2小径円弧状レール241、第2中間径円弧状レール242および第2大径円弧状レール243の中から第2操作用ワイヤ32の経路を規定するガイドレールを選択し、選択したガイドレールの外周に沿って第2操作用ワイヤ32を配置し(当該ガイドレールに第2操作用ワイヤ32を巻き付け)、第2操作用ワイヤ32の基端をワイヤ留め具42によって回転板22に固定することにより、バイディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテルを構成することができる。
【0060】
本実施形態のハンドル20によれば、カテーテルチューブ10の先端部分のカーブ形状(曲がりの大きさ)が異なるバイディレクションタイプのカテーテルを、構成部品である回転板22を変更(交換)することなく構成することができるので、カーブ形状の異なる先端偏向操作可能カテーテルの製造にあたり、構成部品の共通化を図ることができる。
【0061】
具体的には、本実施形態のハンドル20により下記(1)〜(9)の先端偏向操作可能カテーテルを構成することができる。これらのうち、(2)〜(4)、(6)〜(8)のカテーテルは、カテーテルチューブ10の先端部分を第1方向に曲げるときのカーブ形状と、第2方向に曲げるときのカーブ形状とが異なる非対称形のカテーテルである。
【0062】
(1)第1操作用ワイヤ31の経路が第1小径円弧状レール231により規定され、第2操作用ワイヤ32の経路が第2小径円弧状レール241により規定されたカテーテル。
(2)第1操作用ワイヤ31の経路が第1小径円弧状レール231により規定され、第2操作用ワイヤ32の経路が第2中間径円弧状レール242により規定されたカテーテル。(3)第1操作用ワイヤ31の経路が第1小径円弧状レール231により規定され、第2操作用ワイヤ32の経路が第2大径円弧状レール243により規定されたカテーテル(図1乃至図4Aに示した電極カテーテル)。
(4)第1操作用ワイヤ31の経路が第2中間径円弧状レール232により規定され、第2操作用ワイヤ32の経路が第2小径円弧状レール241により規定されたカテーテル。(5)第1操作用ワイヤ31の経路が第2中間径円弧状レール232により規定され、第2操作用ワイヤ32の経路が第2中間径円弧状レール242により規定されたカテーテル。
(6)第1操作用ワイヤ31の経路が第2中間径円弧状レール232により規定され、第2操作用ワイヤ32の経路が第2大径円弧状レール243により規定されたカテーテル。(7)第1操作用ワイヤ31の経路が第1大径円弧状レール233により規定され、第2操作用ワイヤ32の経路が第2小径円弧状レール241により規定されたカテーテル。
(8)第1操作用ワイヤ31の経路が第1大径円弧状レール233により規定され、第2操作用ワイヤ32の経路が第2中間径円弧状レール242により規定されたカテーテル。(9)第1操作用ワイヤ31の経路が第1大径円弧状レール233により規定され、第2操作用ワイヤ32の経路が第2大径円弧状レール243により規定されたカテーテル。
【0063】
<第2実施形態>
図5乃至図8Bに示す本実施形態のカテーテル用ハンドル25は、シングルディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテル(電極カテーテル)を構成するハンドルであって、カテーテルチューブ15の基端側に装着されるハンドル本体26と、このハンドル本体26に対して回転自在に装着される回転板27とを備え、回転板27には、カテーテルチューブ15の先端部分を撓ませるための操作用ワイヤ33の基端が固定されるとともに、回転板27内における操作用ワイヤ33の経路を規定するためのガイドレールとして、円環状ガイドレール281と、その外側に位置する第1円弧状ガイドレール282と、その外側に位置する第2円弧状ガイドレール283とが、それぞれ、回転板27の回転軸270を中心とする同心円の各々の円周上に形成されている。
なお、本実施形態を示す図5乃至図8Bにおいて、第1実施形態と同一または対応する構成要素には、同一の符号を用いている。
【0064】
本実施形態のハンドル25を備えた電極カテーテルは、例えば、心臓における不整脈の診断または治療に用いられるものであり、図5に示すように、ハンドル25が装着されるカテーテルチューブ15を有している。
【0065】
カテーテルチューブ15は、第1実施形態に係るカテーテルチューブ10と同様の構成である。
カテーテルチューブ15の先端近傍の内部には首振り部材が収容してあり、首振り部材としては特に限定されるものではなく、例えば板バネなどで構成されている。
この首振り部材としての板バネには、カテーテルチューブ15の先端部分を一方向(図5において、矢印Aで示す方向)に撓ませるための操作用ワイヤ33(図5において図示省略)の先端が接続固定されている。
【0066】
カテーテルチューブ15の基端には、本実施形態のハンドル25が装着されている。
このハンドル25は、ハンドル本体26と、このハンドル本体25に対して回転自在に装着された回転板27とを備えている。
【0067】
ハンドル25を構成する回転板27は、カテーテルチューブ15の先端部分の首振り操作(偏向移動操作)を行うための部品である。
首振り部材に先端が固定されている操作用ワイヤ33は、操作用チューブ13から回転板27内に延び出ており、操作用ワイヤ33の基端は、ワイヤ留め具43によって回転板27に固定されている。
【0068】
図5に示したように、カテーテルチューブ15の先端部分が直線状に伸びている状態にあるときに、回転板27は、図6A〜図6Cに示した状態(摘み271が上側にある状態)になっている。
【0069】
図6A〜図6Cに示すように、本実施形態のハンドル25を構成する回転板27には、円環状ガイドレール281と、同心円弧状の2本のガイドレール(第1円弧状ガイドレール282、第2円弧状ガイドレール283)とが、回転板27の回転軸270を中心とする同心円の各々の円周上に形成されている。
【0070】
これらのガイドレールの中から操作用ワイヤ33の経路を規定するガイドレールを選択し、選択したガイドレールの外周に沿って操作用ワイヤ33を配置し(当該ガイドレールに操作用ワイヤ33を巻き付け)、その基端をワイヤ留め具43によって回転板27に固定することにより、シングルディレクションタイプのカテーテルを構成することができる。
【0071】
例えば、図6Aに示すように、操作用チューブ13から回転板27内に延び出た操作用ワイヤ33を第1円弧状ガイドレール282の外周に沿って配置する(巻き付ける)ことにより構成される電極カテーテルにおいて、回転板27を、図5および図6Aに示すA1方向に回転させると、第1円弧状ガイドレール282により経路が規定された操作用ワイヤ33が引っ張られて図7Aに示すような状態となる。
この結果、この電極カテーテルにおけるカテーテルチューブ15の先端部分は、図5の矢印Aに示す方向に首振り動作して、図8Aに示すような形状となる。
【0072】
このときの回転板27の回転角度としては、例えば90〜94°である。
なお、図6Aにおいて、回転板27を左右に分割する直線(同図において一点鎖線で示す)と、回転軸220と円弧状のガイドレール(第1円弧状ガイドレール282および第2円弧状ガイドレール283)の先端を結ぶ直線と、のなす角度(θ4 )は35〜45°であることが好ましく、好適な一例を示せば40°である。
【0073】
また、図6Bに示すように、操作用チューブ13から回転板27内に延び出た操作用ワイヤ33を円環状ガイドレール281の外周に沿って配置する(巻き付ける)ことにより構成される電極カテーテルにおいて、回転板27を、図5に示すA1方向に回転させると、円環状ガイドレール281により経路が規定された操作用ワイヤ33が引っ張られて図7Bに示すような状態となる。
この結果、この電極カテーテルにおけるカテーテルチューブ15の先端部分は、図5の矢印Aに示す方向に首振り動作して、図8Bに示すような形状となる。
この態様における操作用ワイヤ33は、第1円弧状ガイドレール282の半径より小さい半径の円環状ガイドレール281により経路が規定されているので、回転操作に伴う引張量は相対的に小さく、図8Bに示したように、カテーテルチューブ15の先端部分の曲がりも図8Aと比較して小さいものである。
【0074】
さらに、図6Cに示すように、操作用チューブ13から回転板27内に延び出た操作用ワイヤ33を第2円弧状ガイドレール283の外周に沿って配置する(巻き付ける)ことにより構成される電極カテーテルにおいて、回転板27を、図5に示すA1方向に回転させると、第2円弧状ガイドレール283により経路が規定された操作用ワイヤ33が引っ張られて図7Cに示すような状態となる。
この態様における操作用ワイヤ33は、第1円弧状ガイドレール282の半径より大きい半径の第2円弧状ガイドレール283により経路が規定されているので、回転操作に伴う引張量は相対的に大きく、カテーテルチューブ15の先端部分の曲がりの程度は、図8Aに示したものより更に大きくなる。
【0075】
本実施形態のハンドル25を構成する回転板27に形成された第1円弧状ガイドレール282および第2円弧状ガイドレール283の中心角(β)としては150〜170°であることが好ましく、更に好ましくは150〜160°、好適な一例を示せば155°である。
中心角(β)が150°以上であることによって、第1円弧状ガイドレール282または第2円弧状ガイドレール283によって経路が規定される操作用ワイヤ33の引張量を十分に確保することができる。
また、中心角(β)が150°以上であることにより、第1円弧状ガイドレール282または第2円弧状ガイドレール283によって経路が規定された操作用ワイヤ33が、回転板27の回転操作に伴って引っ張られているとき(図7Aまたは図7Cで示した状態)に、この操作用ワイヤ33が、円環状ガイドレール281に接触することを回避することができる。
一方、中心角(β)が170°以下であることにより、図6Bに示したように、円環状ガイドレール281によって経路が規定された操作用ワイヤ33が、第1円弧状ガイドレール282の端部に接触することを回避することができる。
【0076】
本実施形態のハンドル25によれば、カテーテルチューブ15の先端部分のカーブ形状(曲がりの大きさ)が異なるシングルディレクションタイプのカテーテルを、構成部品である回転板27を変更(交換)することなく構成することができるので、カーブ形状の異なる先端偏向操作可能カテーテルの製造にあたり、構成部品の共通化を図ることができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明のカテーテル用ハンドルはこれらに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、回転板上において、同心円の各々の円周上に形成されるガイドレールは3本に限定されるものではなく、図9に示すように、円環状ガイドレール281と円弧状ガイドレール282とが形成されている回転板(第2実施形態に係る回転板27に形成されていた第2円弧状ガイドレール283が形成されていない回転板27’)であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 カテーテルチューブ
11 先端電極
12 リング状電極
13 操作用チューブ
20 ハンドル
21 ハンドル本体
22 回転板
220 回転軸
221 摘み
231 第1小径円弧状レール
232 第1中間径円弧状レール
233 第1大径円弧状レール
241 第2小径円弧状レール
242 第2中間径円弧状レール
243 第2大径円弧状レール
31 第1操作用ワイヤ
32 第2操作用ワイヤ
41 ワイヤ留め具
42 ワイヤ留め具
15 カテーテルチューブ
27 回転板
270 回転軸
271 摘み
25 ハンドル
26 ハンドル本体
281 円環状ガイドレール
282 第1円弧状ガイドレール
283 第2円弧状ガイドレール
25 ハンドル
33 操作用ワイヤ
43 ワイヤ留め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルチューブの基端側に装着されるハンドル本体と、
このハンドル本体に対して回転自在に装着され、前記カテーテルチューブの先端部分を撓ませるための操作用ワイヤの基端が固定される回転板とを備え、
前記回転板には、この回転板内における前記操作用ワイヤの経路を規定するための円弧状または円環状の複数本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円の円周上に形成されていることを特徴とするカテーテル用ハンドル。
【請求項2】
双方向に偏向するバイディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテルを構成する請求項1に記載のカテーテル用ハンドルであって、
前記回転板の一方の側には、前記カテーテルチューブの先端部分を第1方向に撓ませるための第1操作用ワイヤの基端が固定されるとともに、前記回転板内における前記第1操作用ワイヤの経路を規定するための複数本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円弧状に形成され、
前記回転板の他方の側には、前記カテーテルチューブの先端部分を第2方向に撓ませるための第2操作用ワイヤの基端が固定されるとともに、前記回転板内における前記第2操作用ワイヤの経路を規定するための複数本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円弧状に形成されていることを特徴とするカテーテル用ハンドル。
【請求項3】
前記回転板の一方の側には、前記回転板内における前記第1操作用ワイヤの経路を規定するための3本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円弧状に形成され、
前記回転板の他方の側には、前記回転板内における前記第2操作用ワイヤの経路を規定するための3本のガイドレールが、前記回転板の回転軸を中心とする同心円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカテーテル用ハンドル。
【請求項4】
前記回転板の一方の側において同心円弧状に形成されている3本のガイドレールと、前記回転板の他方の側において同心円弧状に形成されている3本のガイドレールとは、中心角および対応する円弧の半径が互いに同一であって、前記中心角は80〜100°であることを特徴とする請求項3に記載のカテーテル用ハンドル。
【請求項5】
一方向にのみ偏向するシングルディレクションタイプの先端偏向操作可能カテーテルを構成する請求項1に記載のカテーテル用ハンドルであって、
前記回転板には、前記カテーテルチューブの先端部分を撓ませるための操作用ワイヤの基端が固定されるとともに、前記回転板内における前記操作用ワイヤの経路を規定するためのガイドレールとして、円環状ガイドレールと、この円環状ガイドレールの外側に位置する少なくとも1本の円弧状ガイドレールとが、それぞれ、前記回転板の回転軸を中心とする同心円の円周上に形成されていることを特徴とするカテーテル用ハンドル。
【請求項6】
前記回転板には、前記カテーテルチューブの先端部分を撓ませるための操作用ワイヤの基端が固定されるとともに、前記回転板内における前記操作用ワイヤの経路を規定するためのガイドレールとして、円環状ガイドレールと、この円環状ガイドレールの外側に位置する第1円弧状ガイドレールと、この第1円弧状ガイドレールの外側に位置する第2円弧状ガイドレールとが、それぞれ、前記回転板の回転軸を中心とする同心円の円周上に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のカテーテル用ハンドル。
【請求項7】
前記第1円弧状ガイドレールおよび前記第2円弧状ガイドレールの中心角が150〜170°であることを特徴とする請求項6に記載のカテーテル用ハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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