説明

カテーテル

【課題】 血管の狭窄部や閉塞部に薬液を血流を確保しながら行なう。
【解決手段】 血管(11)の患部(12)を、膨脹させたバルーン(22)により拡げ、次いで、バルーン(22)を収縮させて、薬液噴出側孔(32)を患部(12)に対向させ、薬液を患部(12)に投与する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は血管の狭窄部や閉塞部の拡張および拡張組織に薬剤投与をなすためのカテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】血管の狭窄部や閉塞部の拡張および拡張組織に薬剤投与をなすPTCA用カテーテルは、特開平10−118195号公報に開示される如く、公知である。この種の公知なカテーテルの基本構成を図8と図9とに示す。カテーテル1は、内部にルーメン(バルーン拡張流体と薬剤供給通路)を備えるチューブ2、チューブ2の基端に設けたガイドワイヤ3の挿入部4、たとえば食塩水を含むバルーン拡張流体用供給部5、薬剤供給部6を有すコネクタ7、チューブ2の先端部にその前後端を密着させたアウタバルーン8、およびその内部のインナバルーン9とを備え、ポート10により供給された薬剤が、血管11の狭窄部や閉塞部12に位置するナイロンやPET等からなるアウタバルーン8を拡張しかつその表面の孔12を介して薬剤を患部に投与する。血管11の狭窄部や閉塞部12はポート14からの流体によりナイロンやPET等からなるインナバルーン9を拡張させることで拡げられ、血流を確保可能とさせる。
【0003】カテーテル1の患部12への挿入は血管11へ経皮的に差込んだガイドワイヤ3に対してチューブ2の中心孔を通し、チューブ2をガイドワイヤ3に沿って移動させることで可能となる。バルーン8、9の位置は、チューブ2につけた造影用マーカ(図示なし)を外部から追跡することで確認できる。
【0004】薬剤の投与と、血管の狭窄部や閉塞部の拡張をなした後バルーン8、9を収縮させ、ガイドワイヤに沿って体外へと取出し、ガイドワイヤも次いで体外へ抜出すことで治療を終了させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来例では、バルーンの上流と下流側との間の血流は、チューブ内に設けた上流側に開口した通路を介して血液をガイドワイヤ周囲から下流側へ流すことがなされる。この考えは、特開平9−117510号公報にも教示されるが、チューブ内の小さな通路を介しての血流の確保は、血流が充分でなく長時間の薬剤の投与を不可能にし、薬剤の投与効果が期待した程得られないことがあり、改善が望れる。又、特開平9−117510号公報は、薬液投与部が病変部にくるようカテーテルをずらした後、バルーンを拡張し血管を閉塞するが、これが血管壁を傷害させてしまう恐れがあり、必ずしも好ましい手法ではない。
【0006】それ故に、本発明は、前述した従来技術の不具合を解消させることを解決すべき課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述した課題を解決するために、基本的には、バルーンを膨らませて血管の狭窄部や閉塞部を拡張させた後、バルーンを収縮させ、血流を充分確保させた状態で、患部に薬剤を投与させる技術手段を用いる。
【0008】具体的には、本発明は、血管内に挿入したガイドワイヤに沿って進退自在なチューブ、チューブの先端部に配したバルーン、チューブの基端部に取付けられ、バルーン膨張用の流体の注入排出部および薬剤注入口を少なくとも有するコネクタ、バルーンの膨脹により血管の狭窄部や閉塞部の患部を拡張後、バルーンを収縮させ、バルーンを患部から移動させてからチューブの側孔を患部と対向させる装置を有し、バルーンを収縮させ血流を確保した状態でチューブの側孔より薬剤を患部に投与させることを特徴とするカテーテルを提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】図1と図2を参照して本発明の第一実施例を説明する。カテーテル20は、血管内に挿入され得るポリウレタンやナイロン等の生体に適合する弾性材からなるチューブ21と、チューブ21の先端部に配されかつナイロンやPET等の薄いシートからなる袋状のバルーン22と、チューブ21の基端部に設けられ、バルーンポート23、ワイヤガードポート24および薬液供給ポート25を有するコネクタ26とを有す。
【0010】チューブ21は、血管内に挿入されチューブ21の血管内の動きのガイド役をなすガイドワイヤ27と薬液を流す第1のルーメン28を画定するインナチューブ29と、インナチューブ29のまわりに、バルーン22を膨張させる食塩水を含む流体を通す第2のルーメン30を画定するアウタチューブ31とからなる。バルーン22はその一端をアウタチューブ31の外周面にかつその他端をインナチューブ29の外周面に密着させ、第2のルーメン30をバルーン22に開口させる。
【0011】インナチューブ29の先端部であって、バルーン22の先位部に1条又は2条のらせん状に複数個の離間した0.1〜0.5mmφの側孔32を穿ける。この側孔32は、第1のルーメン28を介して供給された薬液を、好ましくは間欠的に噴出させる働きをする。インナチューブ29の外周面に離間した複数の金属製の造影用マーカ33を固定させる。マーカ33の一つは、バルーン22の位置を追跡できるようバルーン22の内部に位置させる。インナチューブ29内を通るガイドワイヤ27は、インナチューブ29の先端開口より延出するが、インナチューブ29の先端を絞り、該先端開口の断面積に対するガイドワイヤ27の断面積の比を60%以上とさせることで、血液の第1のルーメン28への流入を防止させる。
【0012】図3から図5を参照して操作を説明する。血管11内に挿入したガイドワイヤ27を案内とさせてチューブ21を血管11内に送り込み、血管11の狭窄部や閉塞部の患部12に対向させて、収縮したバルーン22を位置させる。この位置の確認は造影用マーカ33を利用して行なう。図4に示すように、患部12とバルーン22とを対向させると、バルーン22内に第2のルーメン30を介して流体をバルーン22内に流入させ、バルーン22を膨張させ、患部12を外側へ変形させる。該血管11の変形を確認した後に流体を抜きバルーン22を収縮させ、チューブ21を後退させ、インナチューブ29の側孔32を患部12に対向させる。
【0013】図5に示す如く、患部12に側孔32が対向したことを造影用マーカ33で確認すると、第1のルーメン28を介してコネクタ26により薬液を供給し、側孔32から患部12へ薬液を投与する。好ましくは、薬液投与は間欠的に行なう。薬液投与中、チューブ21は血液の流れを充分に確保しているので、薬剤の投与時間を必要なだけ取ることができる。
【0014】図6に、第二実施例を示す。第一実施例と共通する構成部分には同一符号を記し、その説明を省略する。本例では、インナチューブ29とアウタチューブ31との間にミドルチューブ34を配し、インナチューブ29とミドルチューブ34との間にバルーン用流体供給ルーメン35、ミドルチューブ34とアウタチューブ31との間に薬液供給ルーメン36を画定する。アウタチューブ31のバルーン22の後位部に1条又は2条のらせん状に穿設した複数の離間した側孔32′を配す。
【0015】バルーン22の一端はアウタチューブ31とミドルチューブ34との間に固定させ、バルーン用流体供給ルーメン35をバルーン22内に開口させ、薬液供給ルーメン36を閉口とさせる。
【0016】使用手順は図3及び図4と同じであり、バルーン22を収縮させた後、チューブ21を前進させ、側孔32′を患部12に対向させ、薬液を患部12に投与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例の断面図である。
【図2】図1の矢視II−IIよりみた断面図である。
【図3】バルーンを患部に対向させた図である。
【図4】バルーンを膨脹させた状態を示す図である。
【図5】薬液を患部に投与している状態を示す図である。
【図6】本発明の別の例を示す図である。
【図7】図6の矢視VII−VIIよりみた断面図である。
【図8】従来のカテーテルの断面図である。
【図9】従来のバルーン膨脹を示す図である。
【符号の説明】
11 血管
12 患部
20 カテーテル
21 チューブ
22 バルーン
26 コネクタ
27 ガイドワイヤ
29 インナチューブ
31 アウタチューブ
32、32′ 側孔
33 造影用マーカ
34 ミドルチューブ
35、36 ルーメン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 血管内に挿入したガイドワイヤに沿って進退自在なチューブ、チューブの先端部に配したバルーン、チューブの基端部に取付けられ、バルーン膨張用の流体の注入排出部および薬剤注入口を少なくとも有するコネクタ、バルーンの膨脹により血管の狭窄部や閉塞部の患部を拡張後、バルーンを収縮させ、バルーンを患部から移動させてからチューブの側孔を患部と対向させる装置を有し、バルーンを収縮させ血流を確保した状態でチューブの側孔より薬剤を患部に投与させることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】 チューブがガイドワイヤを通しかつ薬剤を供給するための第1のルーメンを画定するインナチューブと、インナチューブのバルーン膨脹用流体を通す第2のルーメンを画定するアウタチューブからなり、バルーンの一端がアウタチューブにかつ他端インナチューブに密着し、側孔がインナチューブに設けられている請求項1記載のカテーテル。
【請求項3】 チューブがガイドワイヤを通すインナチューブと、インナチューブの周りに配されかつバルーン内にバルーン膨脹用の流体を供給する第1のルーメンを画定するミドルチューブと、ミドルチューブの周囲に配されかつ薬剤を供給する第2のルーメンを画定するアウタチューブとを有し、バルーンの一端がミドルチューブとアウタチューブの共端間に密着されかつ他端がインナチューブに、密着させられ、薬剤投与用の側孔がアウタチューブに穿けられていることを特徴とする請求項1記載のカテーテル。
【請求項4】 複数の側孔が1条もしくは2条らせん状に配置される請求項2又は3のカテーテル。
【請求項5】 バルーンの内部に造影用マーカが配されている請求項4記載のカテーテル。
【請求項6】 側孔より薬剤を間欠的に供給する請求項4記載のカテーテル。
【請求項7】 心臓の拡張収縮に同期した間欠的薬剤噴出を行なわせる装置を有する請求項4記載のカテーテル。
【請求項8】 インナチューブの先端開口とガイドワイヤとがシール機能を有する請求項4記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2000−14789(P2000−14789A)
【公開日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−185433
【出願日】平成10年6月30日(1998.6.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)