説明

カテーテル

【課題】駆動シャフトがカテーテル本体内で後退移動したままの状態となることを防止し、カテーテル本体にキンク等の不具合が発生することを防止し得るカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテル1は、検査波が透過する窓部26を備えたカテーテル本体2と、検査波を検出する振動子ユニット41を備えるとともにカテーテル本体内に軸方向に進退移動可能に設けられる駆動シャフトと、駆動シャフトを先端側に向けて前進移動させる力を駆動シャフトに付勢する付勢部材と、を有するカテーテル1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管及び脈管等の生体管腔の診断に用いられるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管及び脈管などの生体管腔内に生じる狭窄部又は閉塞部の治療では、これらの性状を観察するため、又は治療後の状態を観察するため、超音波又は光等の検査波を利用して生体管腔の画像を取得する診断用のカテーテルが用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この種のカテーテルは、検査波が透過する窓部を備えたカテーテル本体と、検査波を送受信する検出器を備えるとともにカテーテル本体内に軸方向に進退移動可能に設けられる駆動シャフトと、を有している。そして、カテーテル内で駆動シャフトを基端側に向けて後退移動つまりプルバックしながら、検出器によって検査波を送受信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−97286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、駆動シャフトをプルバックしたままの状態で、血管挿入などの操作を誤って行うと、駆動シャフトによる支えがない部分でキンク等の不具合が発生する。キンク等が発生すると、カテーテルの交換が必要となってしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、駆動シャフトがカテーテル本体内で後退移動したままの状態となることを防止し、カテーテル本体にキンク等の不具合が発生することを防止し得るカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のカテーテルは、検査波が透過する窓部を備えたカテーテル本体と、前記検査波を検出する検出部を備えるとともに前記カテーテル本体内に軸方向に進退移動可能に設けられる駆動シャフトと、前記駆動シャフトを先端側に向けて前進移動させる力を前記駆動シャフトに付勢する付勢部材と、を有するカテーテルである。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明のカテーテルによれば、駆動シャフトを基端側に向けて誤って後退移動させた場合であっても、駆動シャフトの後退移動を解除すると、駆動シャフトは、付勢部材が付勢する力によって先端側に向けて前進移動する。このため、駆動シャフトがカテーテル本体内で後退移動したままの状態となることを防止でき、カテーテル本体にキンク等の不具合が発生することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態のカテーテルを示す概略構成図である。
【図2】カテーテル本体の先端部の長手方向断面図である。
【図3】内管をユニットコネクタに最も押しこんだときのカテーテルを示す図である。
【図4】内管をユニットコネクタから最も引き出したときのカテーテルを示す図である。
【図5】ハブの長手方向断面図である。
【図6】ユニットコネクタおよび中継コネクタの長手方向断面図である。
【図7】付勢部材の説明に使用する断面図である。
【図8】カテーテルと外部駆動装置との関係を示す図である。
【図9】第2の実施形態のカテーテルを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
(第1の実施形態)
図1を参照して、カテーテル1は、血管及び脈管などの生体管腔内に挿入されて生体管腔内を診断するためのものであり、長尺状で可撓性を有するカテーテル本体2と、カテーテル本体2の基端側に設けられ、操作者が操作するために生体管腔内に挿入されず操作者の手元側に配置される操作部3とを備える。なお、本明細書中では、カテーテル1の生体管腔内に挿入される側を先端側と称し、生体管腔内に挿入されない側を基端側と称する。
【0012】
第1の実施形態のカテーテル1は、概説すると、検査波が透過する窓部26を備えたカテーテル本体2と、検査波を検出する振動子ユニット41(検出部に相当する)を備えるとともにカテーテル本体2内に軸方向に進退移動可能に設けられる駆動シャフト42と、駆動シャフト42を先端側に向けて前進移動させる力を駆動シャフト42に付勢する付勢部材72(図6を参照)と、を有している。駆動シャフト42は、振動子ユニット41によって検査波を検出するときには、付勢部材72が付勢する力に抗して基端側に向けて後退移動する。カテーテル1はさらに、駆動シャフト42の基端部が接続されたハブ31と、ハブ31に基端部が固定されて先端側に向けて伸びるとともに駆動シャフト42が挿通される内管312(第1の管体に相当する)と、カテーテル本体2に接続された中継コネクタ33(第1のコネクタ部に相当する)と、中継コネクタ33に先端部が固定されて基端側に向けて伸びるとともに駆動シャフト42が挿通されて内管312と駆動シャフト42との間に入れ子式に挿入されるサポートチューブ7(第2の管体に相当する)と、を有している。付勢部材72は、サポートチューブ7を覆うように、かつ、内管312と中継コネクタ33との間に引っ張り力を付勢するように配置されている(図6および図7を参照)。以下、詳述する。
【0013】
図2に示すように、カテーテル本体2の中空形状を有するカテーテル本体部材22は、先端側へと延出され、また、カテーテル本体2の先端部でガイドワイヤ25を挿通させるガイドワイヤ挿通部21を覆うように、該ガイドワイヤ挿通部21と接着されている。ガイドワイヤ挿通部21は、その中心軸が、カテーテル本体2の中心軸に対して偏心して配置されている。
【0014】
ガイドワイヤ挿通部21の先端側には、生体管腔内挿入時にX線透視下でカテーテル1の先端位置を確認するためのマーカ24が配置されている。なお、マーカ24は、X線不透過性を有することによりX線透視下において造影性を有するものであるが、このようなマーカ24は、通常、CTスキャンにおいても造影性を有するため、CTスキャンにおいても使用することができる。
【0015】
ガイドワイヤ挿通部21にはカテーテル本体2の軸方向に沿って貫通されたガイドワイヤルーメン241が形成されており、ガイドワイヤ25はこのガイドワイヤルーメン241に挿入されて通り抜ける。ガイドワイヤ25は、カテーテル1を生体内に挿入する前に予め生体内の患部付近まで挿入され、カテーテル1を患部等の目的部まで導くために使用される。
【0016】
カテーテル本体2には、長手方向に沿って延在するワーキングルーメン23が形成されている。このワーキングルーメン23は、後述のイメージングコア40が該カテーテル本体2の軸方向にスライド可能に内蔵されている中空の通路である。
【0017】
カテーテル本体2の管壁は、ガイドワイヤ挿通部21よりも基端側が、光や超音波等の検査波を透過する窓部26となっている。本実施形態に係るカテーテル1は、超音波画像診断カテーテル(IVUS)を利用した超音波信号により画像を取得するカテーテルであり、窓部26を介して超音波を送受信することで、断層像を得ることができる。
【0018】
イメージングコア40は、生体管腔内組織に向けて超音波を送受信するための超音波振動子411をハウジング412内に収容した構成を有する振動子ユニット41と、振動子ユニット41を先端に取り付けるとともに回転動力を伝達する駆動シャフト42と、振動子ユニット41の先端側に取り付けられる回転安定コイル44と、を備える。
【0019】
超音波振動子411は、ワーキングルーメン23内を進退動可能な駆動シャフト42の先端に固定されている。固定方法は特に限定されず、例えば、接着剤や半田付けによって接着することができる。
【0020】
振動子ユニット41のハウジング412は、先端側が閉塞した筒状に形成され、基端側が駆動シャフト42に固定されている。固定方法は特に限定されず、例えば、接着剤や半田付けによって接着することができる。ハウジング412は、超音波振動子411の超音波の送受信部に当たる部分を切欠いて形成される開口部を有する。
【0021】
駆動シャフト42は、柔軟で、しかも後述するスキャナ装置81(図8を参照)において生成された回転の動力を振動子ユニット41に伝達可能な特性をもち、例えば、右左右と巻き方向を交互にしている3層コイルなどの多層コイル状の管体で構成されている。駆動シャフト42が回転の動力を伝達することによって、振動子ユニット41が回転し、血管及び脈管などの生体管腔内の患部を360度観察することができる。また、駆動シャフト42は、振動子ユニット41で検出された信号を操作部3に伝送するための信号線54(図5を参照)が内部に通されている。
【0022】
回転安定コイル44は、素線を螺旋状に巻回して形成されている。回転安定コイル44は、基端側がハウジング412に固定されており、超音波振動子411を安定的に回転させるためのガイドとなる。固定方法としては、前述と同様に特に限定されず、例えば、接着剤や半田付けにより接着することができる。
【0023】
回転安定コイル44は、金属材料で作製されることが好ましく、例えば、バネ鋼、ステンレス鋼、超弾性合金、コバルト系合金や、金、白金、タングステン等のX線不透過性金属又はこれらを含む合金等により作製されても良い。なお、回転安定コイル44を、金属材料以外で製造することもできる。
【0024】
操作部3は、図1に示すように、基端側に配置されたハブ31と、ハブ31と接続された内管312が進退可能に挿入されているユニットコネクタ32と、外管331を介してユニットコネクタ32に接続されるとともに、カテーテル本体2と操作部3とを接続する中継コネクタ33とを有する。
【0025】
ハブ31は、図5に示すように、駆動シャフト42および内管312を保持する。内管312がユニットコネクタ32および外管331の内部に押し込まれ、または引き出されることによって、駆動シャフト42が連動して操作部3およびカテーテル本体2内を軸方向にスライドする。内管312の押し込みおよび引き出しによる駆動シャフト42の移動の様子は、図3及び図4に示すようになる。
【0026】
内管312を最も押し込んだときには、図3に示すように、内管312は、カテーテル本体2側の端部が外管331のカテーテル本体2側端部付近、すなわち、中継コネクタ33付近まで到達する。そして、この状態では、振動子ユニット41は、カテーテル本体2のカテーテル本体部材22の先端付近に位置する。ハブ31における耐キンクプロテクタ57(図5を参照)の先端部がユニットコネクタ32の基端部に突き当たることによって、駆動シャフト42の前進が止まる。このとき、図2に示すように、イメージングコア40の先端とワーキングルーメン23の先端との間に隙間23aが生じるように、各部材の寸法が定めてある。隙間23aの寸法は製造公差を考慮して適宜の寸法に設定できるが、一例を挙げれば、例えば、約2ミリである。駆動シャフト42を最も前進させても、イメージングコア40の先端が壁面などに接触することがない。これによって、駆動シャフト42を最も前進させた状態でイメージングコア40を回転させても、イメージングコア40が破損することを防止することができる。
【0027】
また、内管312を最も引き出したときには、図4に示すように、内管312は、先端に形成されたストッパ313(図6参照)がユニットコネクタ32の内壁に引っかかり、引っかかった先端付近以外が露出する。そして、この状態では、振動子ユニット41は、内管312が引き出された分だけ操作部3の方に向かった場所に位置する。振動子ユニット41が回転しながら移動することによって、血管及び脈管などの三次元断層画像を作成することができる。
【0028】
次に、カテーテル1の各部のより詳細な構造について述べる。
【0029】
図5において概説すると、ハブ31は、ジョイント50と、雄コネクタ51と、ロータ52と、接続パイプ53と、信号線54と、ハブ本体55と、耐キンクプロテクタ57と、Oリングパッキンなどのシール部材58とを有する。
【0030】
ジョイント50は、カテーテル1の使用者手元側に開口部501を有し、雄コネクタ51及びロータ52を内部に配置した構成を有する。雄コネクタ51は、ジョイント50の開口部501側から外部駆動装置80(図8参照)が有する雌コネクタを連結することができ、これにより、外部駆動装置80と雄コネクタ51との機械的及び電気的接続が可能になる。
【0031】
外部駆動装置80は、図8に示すように、モータ等の駆動源を内蔵するスキャナ装置81と、スキャナ装置81を把持しモータ等により軸方向へ移動させる軸方向移動装置82と、スキャナ装置81と軸方向移動装置82を制御する制御部83と、振動子ユニット41によって得られた画像を表示する表示部84とを有する。軸方向移動装置82には、スキャナ装置81を把持固定するスキャナ把持部821と、移動時に窓部26が目的部からずれないように支えるカテーテル支持部822が含まれる。スキャナ装置81は、雄コネクタ51に接続することによって、振動子ユニット41からの信号の送受信を行うと同時に、駆動シャフト42を回転させる駆動力を伝達する。カテーテル支持部822は、ユニットコネクタ32におけるユニットコネクタ本体61中央部の窪み部61aに嵌まり込む。これによって、ハブ31を後退(プルバック)させたときに、カテーテル本体2が一緒に後退しないようにしている。図8に符号Aによって示される部分、およびこの部分につながっているイメージングコア40が、プルバック時に移動する。
【0032】
本実施形態のカテーテル1における超音波を利用した走査は、スキャナ装置81内のモータの回転運動を駆動シャフト42に伝達し、駆動シャフト42の先端に固定されたハウジング412を回転させることによって、振動子ユニット41で送受信される画像を略径方向に走査することによって行われる。ここで得られる超音波画像は、血管内の横断面像である。また、カテーテル1全体を手元側へ引っ張り、振動子ユニット41を長手方向に移動させることによって、血管内の軸方向にわたる包囲組織体における360度の断面画像を任意の位置まで走査的に得ることができる。
【0033】
ロータ52は、図5に示すように、接続パイプ53を保持しており、雄コネクタ51と一体的に回転する。接続パイプ53は、ロータ52の回転を駆動シャフト42に伝達するために、ロータ52側と反対の端部で駆動シャフト42を保持する。接続パイプ53の内部には信号線54が通されており、この信号線54は、一端を雄コネクタ51に、他端を駆動シャフト42内を通り抜けて振動子ユニット41に接続されている。振動子ユニット41における観察結果は、雄コネクタ51を介して外部駆動装置80に送信され、適当な処理を施され、画像として表示される。
【0034】
ハブ本体55には、内管312の一部が嵌挿され、内管312及びハブ本体55の周囲に耐キンクプロテクタ57が配置される。耐キンクプロテクタ57は、内管312の硬度とハブ本体55の硬度との中間の硬度を有する材料で形成されており、内管312がハブ本体55から露出する部位における剛性の急激な変化による内管312の折れ曲がり及びねじれなどを防止することができる。
【0035】
内管312内では、駆動シャフト42と内管312との間に、サポートチューブ7が配置される。このサポートチューブ7は、ハブ31側の端部で開口されており何にも保持されていない、すなわち自由端71を有している。サポートチューブ7は、図6に示す外管331まで伸びる。
【0036】
図6において概説すると、ユニットコネクタ32は、ユニットコネクタ本体61と、封止部材62と、カバー部材63と、パッキン64とを有する。なお、ユニットコネクタ本体61と、カバー部材63とを一つの成形品としてもよい。
【0037】
ユニットコネクタ本体61は、中継コネクタ33に取り付けられた外管331が挿入され、この外管331の内部にハブ31から伸びた内管312が挿入される。封止部材62は、ユニットコネクタ本体61と組み合わさってパッキン64を保持する。カバー部材63は、ユニットコネクタ本体61と組み合わさって外管331を保持する。
【0038】
また、ハブ31から伸びる内管312は、先端にストッパ313が形成されているので、ハブ31が最も引き出されたとき、すなわち、内管312が外管331から最も引き出されたときでも、ストッパ313がユニットコネクタ本体61の内壁に引っ掛かってユニットコネクタ32から内管312が抜けてしまうようなことがない。
【0039】
中継コネクタ33は、図1および図6に示すように、外管保持部65と、中継コネクタ本体66とを有する。外管保持部65は、外管331を保持する。また、外管保持部65の内面には、カテーテル本体2の基端側端部が連結されており、外管331から通り抜けた駆動シャフト42をカテーテル本体2に導入する経路が形成されている。この経路内には、さらに複数の管を挿入して、駆動シャフト42の座屈などを防止することもできる。
【0040】
外管保持部65の駆動シャフト42が通り抜ける出口部材332の内壁には、サポートチューブ7が固定されている。このサポートチューブ7は、ハブ31から伸びる内管312内に向かって伸びる。したがって、外管331に内管312が押し込まれるときには、その押し込みの向きと反対向きに内管312にサポートチューブ7が押し込まれていくことになる。外管331に内管312が押し込まれたり引き出されたりする際に、反対方向からサポートチューブ7も内管312に相対的に押し込まれたり引き出されたりするので、駆動シャフト42に撓む力が発生しても、サポートチューブ7によって撓む力を抑制し、折れ曲がりなどを防止することができる。
【0041】
中継コネクタ本体66は、外管保持部65の先端側に連結された耐キンクプロテクタであり、カテーテル本体2の外面を覆って保護しつつ、剛性の急激な変化によるカテーテル本体2の折れ曲がり(キンク)を防止している。
【0042】
図6および図7を参照して、付勢部材72は、サポートチューブ7を覆うように、かつ、内管312と中継コネクタ33との間に引っ張り力を付勢するように配置されている。付勢部材72は、たとえは、引っ張りコイルバネから構成される。図6には、付勢部材72が収縮した初期の状態が示され、図7には、付勢部材72が伸びている状態が示されている。
【0043】
次に、生体管腔内を観察するときのカテーテル1の操作について説明する。
【0044】
カテーテル1のカテーテル本体2を生体管腔内に挿入する前には、当該カテーテル1内を生理食塩液で満たすプライミング操作を行う。このプライミング操作を行うことによって、カテーテル1内の空気を除去し、血管などの生体管腔内に空気が入り込むことを防止することできる。
【0045】
次に、図8に示すように、カテーテル1を、外部駆動装置80に連結する。すなわち、雄コネクタ51を外部駆動装置80の雌コネクタに連結し、ユニットコネクタ本体61の窪み部61aを外部駆動装置80のカテーテル支持部822に嵌め込む。
【0046】
次に、ハブ31を押し込み、外管331に内管312が最も押し込まれた状態とする(図3参照)。この状態で、カテーテル本体2を体内に挿入していき、カテーテル本体2の先端が患部を越えてから挿入を止める。
【0047】
例えば、心臓の冠動脈血管にカテーテル1が挿入される場合、カテーテル1の挿入前にガイディングカテーテルが体内に挿入されるとともに、冠動脈血管の入口にガイディングカテーテルが留置される。
【0048】
その後、ガイドワイヤ25がガイディングカテーテルを通じて冠動脈血管の目的の箇所まで挿入される。そして、カテーテル1が、ガイディングカテーテル内のガイドワイヤ25に沿って挿入される。ガイディングカテーテルの基端には、ガイディングカテーテルに同軸的に連通する本体部とこの本体部から分岐したサイドポートとを有するY字状のYコネクタ(不図示)が連結されており、Yコネクタによって、カテーテル1とガイディングカテーテルとの間のクリアランス部のシール性が確保される。
【0049】
次に、カテーテル1を生体管腔内の目的部位に到達させた後、カテーテル本体2の位置を固定する。この状態で、駆動シャフト42を回転させながらプルバック操作することで、生体管腔の軸方向の画像取得を行うことが可能となる(図4参照)。
【0050】
プルバック操作は、カテーテル1の後端部に接続される軸方向移動装置82を制御部83により操作することによって行うことができる。取得されたデータは、制御部83でデジタル処理をされた後、イメージデータとして表示部84に表示される。
【0051】
本実施形態の作用効果を述べる。
【0052】
本実施形態のカテーテル1によれば、カテーテル本体2と、駆動シャフト42と、駆動シャフト42を先端側に向けて前進移動させる力を駆動シャフト42に付勢する付勢部材72と、を有するので、駆動シャフト42を基端側に向けて誤って後退移動させた場合であっても、駆動シャフト42の後退移動を解除すると、駆動シャフト42は、付勢部材72が付勢する復元力によって先端側に向けて前進移動する。このため、駆動シャフト42がカテーテル本体2内で後退移動したままの状態となることを防止でき、カテーテル操作をしたときにカテーテル本体2にキンク等の不具合が発生することを防止することが可能となる。
【0053】
また、輸送中においては、輸送に伴う振動などによってプルバックする現象を防ぐことができる。このため、包装を簡素化することができる。
【0054】
また、ワーキングルーメン23をプライミングする場合、プライミング操作の影響によって駆動シャフト42がプルバックしたときでも、自動的に先端側に向けて復元移動する。このため、カテーテル本体2にキンク等の不具合が発生することを防止することが可能となる。
【0055】
駆動シャフト42は、振動子ユニット41によって検査波を検出するときに付勢部材72が付勢する力に抗して基端側に向けて後退移動するので、検査波の検出に支障を来たすことはない。
【0056】
カテーテル1はさらに、ハブ31と、内管312と、中継コネクタ33と、サポートチューブ7と、を有し、付勢部材72は、サポートチューブ7を覆うように、かつ、内管312と中継コネクタ33との間に引っ張り力を付勢するように配置されている。これにより、付勢部材72は、駆動シャフト42を先端側に向けて前進移動させる力を駆動シャフト42に付勢することができる。また、サポートチューブ7を覆うように付勢部材72を配置していることから、サポートチューブ7の撓みを防止する効果も期待できる。
【0057】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。例えば、上記実施の形態では、超音波画像診断カテーテル(IVUS)を利用して診断する場合について説明したが、他の診断用カテーテルに適用することもできる。例えば、画像診断装置として、光干渉断層診断装置(OCT : Optical Coherence Tomography)も利用されるようになってきている。光干渉断層診断装置は、光源から射出された低コヒーレント光を測定光と参照光に分割した後、この測定光が測定対象に照射されたときの測定対象からの反射光、もしくは後方散乱光と参照光とを合波し、この反射光と参照光との干渉光の強度に基づいて断層画像を取得するもので、先端に光学レンズ及び光学ミラーを取り付けた光ファイバを内蔵したイメージングコアを内蔵したカテーテルを血管内に挿入し、光ファイバの先端側に配置したイメージングコアをラジアル走査させながら、血管内に光を照射し、生体組織からの反射光をもとに血管の断面画像を描出する。つまり、本発明を光干渉断層診断装置に適用した場合には、イメージングコアを光信号の送受信を行うための光ファイバを内蔵するものとし、光ファイバ先端にはカテーテルの径方向に光の進行方向を屈折させる反射部を設ける。また、光干渉断層診断装置としては波長掃引型の光源を用いて、参照光と信号光の光路長は変えることなく、光のスペクトル成分毎に干渉光強度を測定し、ここで得られたスペクトル干渉強度信号を計算機にてフーリエ変換に代表される周波数解析を行うことで、深さ位置に対応した反射光強度分布を取得するFD−OCT計測を用いても良い。
【0058】
なお、超音波画像診断カテーテル(IVUS)においては、駆動シャフト42を回転させながらプルバック操作することで、生体管腔の軸方向の画像取得を行うことが可能となるが、近赤外光を用いた光干渉式画像診断装置であれば、プルバック前に、ガイディングカテーテルの基端に連結されたYコネクタのサイドポートを通じて、血管内を造影剤入り生理食塩液等でフラッシュすることで、血液を排除させた状態で血管の画像取得を行うことが可能となる。したがって、検査波として、超音波だけでなく、光、磁場、音等の検出のために適用可能なあらゆるものを適用できる。
【0059】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態のカテーテル11を示す概略構成図である。第1の実施形態と共通する部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0060】
第2の実施形態のカテーテル11は、第1の実施形態と同様に、カテーテル本体2と、駆動シャフト42と、駆動シャフト42を先端側に向けて前進移動させる力を駆動シャフト42に付勢する付勢部材73と、を有している。第2の実施形態のカテーテル11はさらに、ハブ31と、内管312(管体に相当する)と、カテーテル本体2に接続されたユニットコネクタ32(第2のコネクタ部に相当する)と、を有している。そして、第2の実施形態にあっては、付勢部材73は、内管312を覆うように、かつ、ハブ31とユニットコネクタ32との間に引っ張り力を付勢するように配置されている。付勢部材73は、たとえは、引っ張りコイルバネから構成される。
【0061】
第2の実施形態における付勢部材73は、第1の実施形態と同様に、駆動シャフト42を基端側に向けて誤って後退移動させた場合であっても、駆動シャフト42の後退移動を解除すると、駆動シャフト42は、付勢部材73が付勢する復元力によって先端側に向けて前進移動する。このため、駆動シャフト42がカテーテル本体2内で後退移動したままの状態となることを防止でき、カテーテル操作をしたときにカテーテル本体2にキンク等の不具合が発生することを防止することが可能となる。
【0062】
また、輸送中においては、輸送に伴う振動などによってプルバックする現象を防ぐことができる。このため、包装を簡素化することができる。
【0063】
また、ワーキングルーメン23をプライミングする場合、プライミング操作の影響によって駆動シャフト42がプルバックしたときでも、自動的に先端側に向けて復元移動する。このため、カテーテル本体2にキンク等の不具合が発生することを防止することが可能となる。
【0064】
カテーテル11はさらに、ハブ31と、内管312と、ユニットコネクタ32と、を有し、付勢部材73は、内管312を覆うように、かつ、ハブ31とユニットコネクタ32との間に引っ張り力を付勢するように配置されている。これにより、付勢部材73は、駆動シャフト42を先端側に向けて前進移動させる力を駆動シャフト42に付勢することができる。また、内管312を覆うように付勢部材73を配置していることから、内管312の撓みを防止する効果も期待できる。
【符号の説明】
【0065】
1、11 カテーテル、
2 カテーテル本体、
7 サポートチューブ(第2の管体)、
23 ワーキングルーメン、
23a 隙間、
26 窓部、
31 ハブ、
32 ユニットコネクタ(第2のコネクタ部)、
33 中継コネクタ(第1のコネクタ部)、
40 イメージングコア、
41 振動子ユニット(検出部)、
42 駆動シャフト、
72 付勢部材、
73 付勢部材、
312 内管(第1の管体、管体)、
331 外管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査波が透過する窓部を備えたカテーテル本体と、
前記検査波を検出する検出部を備えるとともに前記カテーテル本体内に軸方向に進退移動可能に設けられる駆動シャフトと、
前記駆動シャフトを先端側に向けて前進移動させる力を前記駆動シャフトに付勢する付勢部材と、を有するカテーテル。
【請求項2】
前記駆動シャフトは、前記検出部によって前記検査波を検出するときに前記付勢部材が付勢する力に抗して基端側に向けて後退移動する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記駆動シャフトの基端部が接続されたハブと、
前記ハブに基端部が固定されて先端側に向けて伸びるとともに前記駆動シャフトが挿通される第1の管体と、
前記カテーテル本体に接続された第1のコネクタ部と、
前記第1のコネクタ部に先端部が固定されて基端側に向けて伸びるとともに前記駆動シャフトが挿通され、前記第1の管体と前記駆動シャフトとの間に入れ子式に挿入される第2の管体と、を有し、
前記付勢部材は、前記第2の管体を覆うように、かつ、前記第1の管体と前記第1のコネクタ部との間に引っ張り力を付勢するように配置されている、請求項1または請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記駆動シャフトの基端部が接続されたハブと、
前記ハブに基端部が固定されて先端側に向けて伸びるとともに前記駆動シャフトが挿通される管体と、
前記カテーテル本体に接続された第2のコネクタ部と、を有し、
前記付勢部材は、前記管体を覆うように、かつ、前記ハブと前記第2のコネクタ部との間に引っ張り力を付勢するように配置されている、請求項1または請求項2に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−223346(P2012−223346A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93232(P2011−93232)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】