説明

カテーテル

【課題】瘻孔に挿入しやすいばかりでなく、所定臓器の内部における固定力も十分に高めることができ、また、内部に挿入する器具等の動作抵抗を減らして、円滑な操作性を得ることができるカテーテルを提供する。
【解決手段】患者の瘻孔に挿入されるチューブ本体11と、その先端側に設けられ、胃壁内側に留置されてチューブ本体11を設置位置に固定するバンパー部20と、を備え、バンパー部20は複数の帯状片21から成り、各帯状片21は、チューブ本体11を瘻孔に挿脱する際に、チューブ本体11の外周面に沿って萎むよう縮径する一方、胃壁内側では、元の湾曲した状態に拡径してチューブ本体11を設置位置に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体表面から体内の所定臓器の壁部にかけて形成された瘻孔に挿入され、体外から前記所定臓器の内部に流体物を供給するためのカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主に食物等の経口摂取が困難な患者に対しては、手術により体表面から胃の壁をつなぐ瘻孔を形成してカテーテルを留置し、このカテーテルを通して水分や栄養等を胃内部に流入させる処置が普及している。かかる胃瘻用のカテーテルでは、事故(自己)抜去が問題となるため、胃内部における固定力(カテーテルの抜き去り抵抗)が必要となるが、患者の負担を小さくするために、挿入しやすい形状や柔らかい材料を採用すると、胃内部での固定力が低下してしまうという問題があった。
【0003】
このように相反する問題を解決し得る従来の技術として、例えば、特許文献1に開示されている胃瘻カテーテルが知られている。これは、カテーテルチューブの先端に4箇所連結したバンパ構成体から成るバンパが設けられており、これらバンパ構成体の各々の基端はカテーテルチューブの先端に固着され、バンパ構成体の先端はカテーテルチューブに摺動可能に挿嵌させた内筒に固定されている。
【0004】
かかる胃瘻カテーテルでは、内筒をカテーテルチューブの先端から押し出す方向に動かすと、バンパ構成体は直線化するように変形し、内筒に対する押圧力を解除すると、バンパ構成体は拡径した状態に復元すると共に、内筒はカテーテルチューブの内部を基端側に向けて摺動することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−136007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の従来技術では、各々のバンパ構成体の先端は、それぞれカテーテルチューブに直接的には固着されておらず、カテーテルチューブに摺動可能に挿嵌された内筒に固定されている。従って、カテーテルチューブに抜き去り方向の力が加わった場合、各々のバンパ構成体はチューブの軸方向に伸びるように変形しやすく、胃壁の内部における固定力の向上を期待することができず、あるいは留置に十分な固定力を得ることができない虞さえあった。
【0007】
また、胃瘻カテーテルの内部においては、カテーテルチューブの内側に内筒が挿嵌されている2重構造となっているため、胃瘻カテーテルの内壁には段差が生じている。そのため、カテーテルチューブ内に内視鏡等を挿通させる際に、前記段差の部位に内視鏡等の先端が引っ掛かりやすく、操作上問題となるばかりでなく、内筒に対して余計な力が加わりやすくなり、前述したようなバンパ構成体の変形を不用意に招く可能性が高いという問題もあった。
【0008】
以上のような従来のカテーテルに関する問題点に鑑みて、本件発明者らは既に特願2011−227880号により、患者の瘻孔に挿入されるチューブ本体の先端側に固定されたバンパー部を複数の帯状片から構成し、チューブ本体を瘻孔に挿脱する際に、各帯状片それぞれが萎むよう縮径する一方、胃壁内側では、元の湾曲した状態に拡径してチューブ本体を設置位置に固定するようにしたことにより、瘻孔に挿脱しやすいばかりでなく、所定臓器の内部における固定力が十分に高く、また、内部に挿入する器具等の円滑な操作性を得られるカテーテルを提案している。
【0009】
ところが、このようなタイプのカテーテルでは、次のような問題を解決するための改良が望まれることになった。すなわち、接触性潰瘍の発症を抑える点と応力に対するバンパー部の変形を抑える点とから帯状片の幅寸法を大きく取ることが好ましいのであるが、帯状片の幅寸法を大きく取った場合、瘻孔から挿脱する際にチューブ本体の外周面に沿って萎む帯状片同士がそれらの接合部付近で干渉し、体内に挿入しやすいスリムな形状になり難いという問題点が新たに浮上した。
【0010】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、瘻孔に挿入し易いばかりでなく、所定臓器の内部における固定力も十分に高めることができ、また、内部に挿入する器具等の動作抵抗を減らして、円滑な操作性を得ることができ、しかも、帯状片の幅寸法を大きく取っても瘻孔に挿脱することが容易なカテーテルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]体表面から体内の所定臓器の壁部にかけて形成された瘻孔に挿入され、体外から前記所定臓器の内部に流体物を供給するためのカテーテル(10)において、
前記瘻孔に挿入された状態に設置されるチューブ本体(11)と、該チューブ本体(11)の先端側に設けられ、前記所定臓器の壁部内側に留置されてチューブ本体(11)を設置位置に固定するバンパー部(20)と、を備え、
前記バンパー部(20)は、弾性変形可能な材質により形成された複数の帯状片(21)から成り、各帯状片(21)は、それぞれ基端が前記チューブ本体(11)の先端側途中の外周面に一体に連なり、前記チューブ本体(11)の軸心より放射状に拡がり先端側に向かい湾曲して延びた後、それぞれ先端が前記チューブ本体(11)の先端開口縁に一体に連なり、
前記各帯状片(21)は、前記チューブ本体(11)を前記瘻孔に挿脱する際に、チューブ本体(11)の外周面に沿って萎むよう縮径する一方、前記所定臓器の壁部内側では、元の湾曲した状態に拡径してチューブ本体(11)を設置位置に固定することを特徴とするカテーテル(10)。
【0012】
[2]前記チューブ本体(11)の内側は、その基端から先端にかけて遮るものがない一続きの内腔となり、その内周面は凹凸形状がなく滑らかに連なることを特徴とする[1]に記載のカテーテル(10)。
【0013】
[3]前記チューブ本体(11)を、その先端側途中より先端開口(13)にかけて少なくとも内周面が漸次縮径するテーパー形状に形成すると共に、該テーパー形状の外周側に当該部位の弾性変形を防止する剛性のある受け部(14)を設け、
前記チューブ本体(11)を前記瘻孔に挿入する際に、チューブ本体(11)内に挿入した状態で挿入力を与えるための棒状の挿入具(A)の先端が、前記受け部(14)を介してその内側の内周面に当接するように設定したことを特徴とする[1]または[2]に記載のカテーテル(10)。
【0014】
[4]体表面から体内の所定臓器の壁部にかけて形成された瘻孔に挿入され、体外から前記所定臓器の内部に流体物を供給するためのカテーテル(10A,10B)において、
前記瘻孔に挿入された状態に設置されるチューブ本体(11A,11B)と、該チューブ本体(11A,11B)の先端側に設けられ、前記所定臓器の壁部内側に留置されてチューブ本体(11A,11B)を設置位置に固定するバンパー部(20)と、を備え、
前記バンパー部(20)は、弾性変形可能な材質により形成された複数の帯状片(21)から成り、各帯状片(21)は、それぞれ基端が前記チューブ本体(11A,11B)の先端開口縁に一体に連なり、前記チューブ本体(11A,11B)の軸心の延長線より放射状に拡がりつつ湾曲して延びた後、それぞれ先端が前記チューブ本体(11A,11B)の先端開口縁より軸心の延長線上に延出した弾性体(15,16)に一体に連なり、
前記各帯状片(21)は、前記チューブ本体(11A,11B)を前記瘻孔に挿脱する際に、前記弾性体(15,16)を中心にして萎むよう縮径する一方、前記所定臓器の壁部内側では、元の湾曲した状態に拡径してチューブ本体(11A,11B)を設置位置に固定することを特徴とするカテーテル(10A,10B)。
【0015】
[5]前記弾性体(15)は、前記チューブ本体(11A)の先端開口縁の外周方向に並ぶように連結された複数の棒状体(17)と、各棒状体(17)の先端側が連結され、前記チューブ本体(11A)を前記瘻孔に挿入する際に、チューブ本体(11A)内に挿入した状態で挿入力を与えるための棒状の挿入具(A)の先端が当接する受け部(19)と、から成り、該受け部(19)に前記各帯状片(21)の先端をそれぞれ連結したことを特徴とする[4]に記載のカテーテル(10A)。
【0016】
[6]前記弾性体(16)は、前記チューブ本体(11B)の先端開口縁より軸心の延長線を中心として螺旋状に延びるコイル体(18)と、該コイル体(18)の先端側が連結され、前記チューブ本体(11B)を前記瘻孔に挿入する際に、チューブ本体(11B)内に挿入した状態で挿入力を与えるための棒状の挿入具(A)の先端が当接する受け部(19)と、から成り、該受け部(19)に前記各帯状片(21)の先端をそれぞれ連結したことを特徴とする[4]に記載のカテーテル(10B)。
【0017】
[7]前記チューブ本体(11,11A,11B)の基端側に設けられ、体表面上に留置される外部ストッパー(30)を備え、
前記外部ストッパー(30)は、チューブ本体(11,11A,11B)の外周より軸心と直交する方向に平面的に延出し、その一端側に可撓片(32)を介してチューブ本体(11,11A,11B)の基端開口を塞ぐボタン状の蓋部(33)が一体に設けられていることを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5]または[6]に記載のカテーテル(10,10A,10B)。
【0018】
[8]前記バンパー部(20)における各帯状片(21)の基端同士が隣り合う接合部分(23)に、前記チューブ本体(11,11A,11B)の軸心方向に向かって切り欠かれ、各帯状片(21)が萎むように縮径する際に基端同士の干渉を防ぐ凹陥部(210)を設けると共に、
前記バンパー部(20)における各帯状片(21)の先端同士が隣り合う接合部分(24)に、前記チューブ本体(11,11A,11B)の軸心方向に向かって切り欠かれ、各帯状片(21)が萎むように縮径する際に先端同士の干渉を防ぐ凹陥部(211)を設けたことを特徴とする[1],[2],[3],[4],[5],[6]または[7]に記載のカテーテル(10,10A,10B)。
【0019】
[9]前記凹陥部(210,211)は、前記帯状片(21)の先端および基端それぞれにおける前記帯状片(21)の幅を狭くする方向に抉られた丸みを持った形状に形成されたことを特徴とする[8]に記載のカテーテル(10,10A,10B)。
【0020】
[10]前記帯状片(21)の少なくとも先端側の接合部分(24)に設けた凹陥部(211)に、前記チューブ本体(11,11A,11B)の軸心方向に沿って前記凹陥部(211)を抉った抉り部(212)を設けたことを特徴とする[8]または[9]に記載のカテーテル(10,10A,10B)。
【0021】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載のカテーテル(10)によれば、チューブ本体(11)とその先端側のバンパー部(20)を瘻孔に挿入する際には、チューブ本体(11)の内側に例えば棒状のオブチュレーター等を挿入し、このオブチュレーターを介してチューブ本体(11)を軸方向に押し込むことができる。
【0022】
ここでバンパー部(20)は、弾性変形可能な複数の帯状片(21)から成り、各帯状片(21)は基端と先端が、それぞれチューブ本体(11)に一体に連なるように固定されている。よって、チューブ本体(11)を瘻孔に挿脱する際、各帯状片(21)はチューブ本体(11)の外周面に沿って萎むよう縮径するため、カテーテル(10)の瘻孔への挿入や引き抜きを容易に行うことができる。
【0023】
また、バンパー部(20)を所定臓器の壁部内側に突き抜けさせた後に、チューブ本体(11)からオブチュレーター等を抜き去ると、バンパー部(20)の各帯状片(21)は、それぞれチューブ本体(11)の軸心より放射状に拡径した元の湾曲した状態に復元する。このため、各帯状片(21)は、瘻孔周囲の壁部内側に接触して抜け止めとなる。
【0024】
特に、各帯状片(21)の基端と先端は、それぞれチューブ本体(11)に一体に連なるように固定されているから、チューブ本体(11)に多少の力が加わったとしても、各帯状片(21)が萎むように縮径することはない。よって、瘻孔に挿入しやすいばかりでなく、所定臓器の内部における固定力も十分に高めることができる。
【0025】
前記[2]に記載のカテーテル(10)によれば、前記チューブ本体(11)の内側は、その基端から先端にかけて遮るものがない一続きの内腔となり、その内周面は凹凸形状がなく滑らかに連なる。これにより、カテーテル(10)の内部に挿入する内視鏡に代表される器具等の動作抵抗を減らして、円滑な操作性を得ることができる。
【0026】
前記[3]に記載のカテーテル(10)によれば、前記チューブ本体(11)を、その先端側途中より先端開口(13)にかけて少なくとも内周面が漸次縮径するテーパー形状に形成すると共に、該テーパー形状の外側に当該部位の弾性変形を防止する剛性のある受け部(14)を設ける。ここでチューブ本体(11)は、前記バンパー部(20)と同様に通常は弾性変形可能な材質により形成される。
【0027】
そして、前記チューブ本体(11)を瘻孔に挿入する際に、チューブ本体(11)内に挿入した状態で挿入力を与えるための前記オブチュレーター等の挿入具(A)の先端が、前記受け部(14)を介してその内側の内周面に当接する。このように、受け部(14)をテーパー形状の外周側に設けることで、内周側には挿入具(A)の先端を引っ掛けるための凹凸形状が要らなくなり、内周面が滑らかに連なるにも拘わらず、挿入具(A)の先端を係止することが可能となる。
【0028】
また、別のカテーテル(10A,10B)として、前記[4]のように構成しても良い。すなわち、前記バンパー部(20)を構成する複数の帯状片(21)は、それぞれ基端がチューブ本体(11A,11B)の先端開口縁に一体に連なり、チューブ本体(11A,11B)の軸心の延長線より放射状に拡がりつつ湾曲して延びた後、それぞれ先端がチューブ本体(11A,11B)の先端開口縁より軸心の延長線上に延出した弾性体(15,16)に一体に連なっている。
【0029】
このように、チューブ本体(11A,11B)の軸心の延長線上に延出した弾性体(15,16)に、それぞれ先端が連結された各帯状片(21)は、チューブ本体(11A,11B)を瘻孔に挿脱する際、前記弾性体(15,16)を中心にして萎むよう縮径する一方、所定臓器の壁部内側では、元の湾曲した状態に拡径する。かかる構成によっても、チューブ本体(11A,11B)を設置位置に確実に固定することができる。特に、弾性体(15,16)によって各帯状片(21)は、放射状に拡径して湾曲した状態に保持されるから、不用意な力が加わっても誤って容易に抜けてしまう虞はない。
【0030】
前記弾性体(15)としては、例えば前記[5]のように構成すると良い。すなわち、前記弾性体(15)は、チューブ本体(11A)の先端開口縁の外周方向に並ぶように連結された複数の棒状体(17)と、各棒状体(17)の先端側が連結され、チューブ本体(11A)を瘻孔に挿入する際に前記挿入具(A)の先端が当接する受け部(19)と、から成り、該受け部(19)に前記各棒状体(17)の先端をそれぞれ連結する。かかる弾性体(15)により、各帯状片(21)を放射状に拡径して湾曲した状態に保持することができる。
【0031】
また、別の弾性体(16)として、例えば前記[6]のように構成しても良い。すなわち、前記弾性体(16)は、チューブ本体(11B)の先端開口縁より軸心の延長線を中心として螺旋状に延びるコイル体(18)と、該コイル体(18)の先端側が連結され、チューブ本体(11B)を瘻孔に挿入する際に前記挿入具(A)の先端が当接する受け部(19)と、から成り、該受け部(19)に前記各帯状片(21)の先端をそれぞれ連結する。かかる弾性体(16)によっても、各帯状片(21)を放射状に拡径して湾曲した状態に保持することができる。
【0032】
前記[7]に記載のカテーテル(10,10A,10B)によれば、前記チューブ本体(11,11A,11B)の基端側に設けられ、体表面上に留置される外部ストッパー(30)を備え、この外部ストッパー(30)は、チューブ本体(11,11A,11B)の外周より軸心と直交する方向に平面的に延出し、その一端側に可撓片(32)を介してチューブ本体(11,11A,11B)の基端開口を塞ぐボタン状の蓋部(33)が一体に設けられている。
【0033】
これにより、カテーテル(10,10A,10B)は体表面からも外部ストッパー(30)によって確実に固定され、また、外部ストッパー(30)が体外に向かって延び出て邪魔になることもない。さらに、外部ストッパー(30)は、チューブ本体(11,11A,11B)の基端開口の開閉機構を兼ねることができる。
【0034】
前記[8]に記載のカテーテル(10,10A,10B)によれば、バンパー部(20)における各帯状片(21)の先端同士が隣り合う接合部分(24)および基端同士が隣り合う接合部分(23)それぞれに凹陥部(211,210)を設けてある。よって、帯状片(21)を幅寸法の大きいものとしても、凹陥部(210,211)を設けてある部分の幅寸法は小さくなる。すなわち、隣り合う帯状片(21)同士の間隔が広がり、以って各帯状片(21)が萎むように縮径する際に先端同士の干渉および基端同士の干渉を防ぐことができる。
【0035】
また、各帯状片(21)が萎むように縮径する際に、凹陥部(210,211)を形成した部分の変形が他所の変形よりも大きくなるので、各帯状片(21)の幅寸法の大きいものであっても、よりスリムになるように帯状片(21)を萎ませることができる。
【0036】
前記[9]に記載のカテーテル(10,10A,10B)によれば、凹陥部(210,211)は、帯状片(21)の先端および基端それぞれにおける帯状片(21)の幅を狭くする方向に抉られた丸みを持った形状に形成した。これにより、各帯状片(21)が萎むように縮径する際に、凹陥部(210,211)を形成した部分の変形が一層に大きくなり、各帯状片(21)の幅寸法の大きいものであっても、一層にスリムになるように帯状片(21)を萎ませることができる。
【0037】
前記[10]に記載のカテーテル(10,10A,10B)によれば、帯状片(21)の少なくとも先端側の接合部分(24)に設けた凹陥部(211)には、チューブ本体(11,11A,11B)の軸心方向に沿って凹陥部(211)を抉った抉り部(212)が設けられているので、凹陥部(211)を設けた部分の肉厚が薄くなっている。これにより、各帯状片(21)の幅寸法の大きいものであっても、凹陥部(211)を形成した部分の変形をさらに大きくすることができるので、帯状片(21)をさらにスリムに萎ませることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係るカテーテルによれば、チューブ本体を瘻孔に挿脱する際、各帯状片はそれぞれ萎むよう縮径するため、カテーテルの瘻孔への挿入や引き抜きを容易に行うことができる。
【0039】
しかも、各帯状片は、所定臓器の壁部内側では放射状に拡径し、瘻孔周囲の壁部内側に接触する湾曲した状態に復元するため、チューブ本体に多少の力が加わったとしても、各帯状片が容易に変形することはなく、留置した状態での固定力も十分に高めることができる。
【0040】
また、チューブ本体の内側は、その基端から先端にかけて遮るものがない一続きの内腔となり、その内周面は凹凸形状がなく滑らかに連なることにより、カテーテルの内部に挿入する内視鏡に代表される器具等の動作抵抗を減らして、円滑な操作性を得ることができる。
【0041】
また、バンパー部における各帯状片の先端同士が隣り合う接合部分および基端同士が隣り合う接合部分それぞれに凹陥部を設けてあるので、帯状片を幅寸法の大きいものとしても各帯状片が萎むように縮径する際に先端同士の干渉および基端同士の干渉を防ぐことができるとともに凹陥部を形成した部分の変形が他所の変形よりも大きくなり、スリムになるように帯状片を萎ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るカテーテルを上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1実施の形態に係るカテーテルを下方から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施の形態に係るカテーテルを示す正面図である。
【図4】本発明の第1実施の形態に係るカテーテルを示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施の形態に係るカテーテルを示す底面図である。
【図6】本発明の第1実施の形態に係るカテーテルを示す縦断面図である。
【図7】本発明の第1実施の形態に係るカテーテルにオブチュレーターを挿入した状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第1実施の形態に係るカテーテルの設置状態を示す説明図である。
【図9】バンパー部の変形例を示す斜視図である。
【図10】バンパー部の変形例を示す側面図である。
【図11】図10のA−A視断面図である。
【図12】変形例のバンパー部の先端側を示す底面図である。
【図13】変形例のバンパー部の基端側を示す図11と同様の断面図である。
【図14】変形例のバンパー部の帯状片の基端側を拡大して示す拡大図である。
【図15】変形例のバンパー部の先端側を拡大して示す拡大図である。
【図16】図15におけるバンパー部の先端側に設けた凹陥部を拡大して示す拡大図である。
【図17】本発明の第2実施の形態に係るカテーテルを上方から見た斜視図である。
【図18】本発明の第3実施の形態に係るカテーテルを上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面に基づき、本発明を代表する各種実施の形態を説明する。
図1〜図8は、本発明の第1実施の形態を示している。
本実施の形態に係るカテーテル10は、体表面から体内の所定臓器の壁部にかけて形成された瘻孔に挿入され、体外から所定臓器の内部に流体物を供給するためのものである。以下、所定臓器を胃として、患者の腹部と胃壁との間に形成された瘻孔に挿入され、流体物として流動食を胃内に供給する場合を例に説明する。
【0044】
図1に示すように、カテーテル10は、例えばポリウレタン、エチレンプロピレン共重合体、シリコーンゴム等の合成樹脂により成形されており、瘻孔に挿入された状態に設置されるチューブ本体11と、該チューブ本体11の先端側に設けられ、胃壁内側に留置されてチューブ本体11を設置位置に固定するバンパー部20と、前記チューブ本体11の基端側に設けられ、体表面上に留置される外部ストッパー30と、を備えて成る。
【0045】
チューブ本体11は、円筒形に上下方向に伸びており、その基端は次述する外部ストッパー30に開口する状態で接続され、基端開口はそのまま注入口12となっている。また、チューブ本体11の先端は、そのまま先端開口13となっており、前記注入口12と連通している。図6に示すように、チューブ本体11の内径は、その基端から先端側途中までは同一径となっているが、先端側途中より先端開口13にかけては、内周面は漸次縮径するテーパー形状に形成されている。
【0046】
チューブ本体11の内側は、その基端から先端にかけて遮るものがない一続きの内腔となり、その内周面は凹凸形状がなく滑らかに連なるように成形されている。また、チューブ本体11におけるテーパー形状の外周側には、当該部位の弾性変形を防止する剛性のある受け部14が設けられている。かかる受け部14は、後述するが棒状の挿入具であるオブチュレーターAの先端部を受けるための部位となり、正確にはテーパー形状の先端となる先端開口13の外周を取り囲むリング状の部材である。
【0047】
受け部14の具体的な材質は例えば、金属として、タングステン、ステンレス鋼、ニッケル‐チタン合金、また汎用樹脂として、高密度ポリエチレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、さらにエンジニアリング樹脂として、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、フッ素樹脂、ポリエーテルスルホン、PEEK樹脂等を採用すると良い。
【0048】
バンパー部20は、弾性変形可能な材質により形成された4枚の帯状片21,21…から成り、各帯状片21は、それぞれ基端がチューブ本体11の先端側途中の外周面に一体に連なり、チューブ本体11の軸心より放射状に拡がり先端側に向かい湾曲して延びた後、それぞれ先端がチューブ本体11の先端開口13の縁に一体に連なっている。各帯状片21の具体的な材質としては、前記チューブ本体11と同様にポリウレタン、エチレンプロピレン共重合体、シリコーンゴム等の合成樹脂を用いると良い。
【0049】
各帯状片21は、チューブ本体11を瘻孔に挿脱する際に、チューブ本体11の外周面に沿って萎むように縮径する。一方、各帯状片21は、胃壁内側に到達すると、元の湾曲した状態に拡径するように復元する。ここで、各帯状片21が縮径した形態が、瘻孔に対して挿脱できる状態であり、各帯状片21が拡径した形態では、抜け止め用のストッパーとして作用する状態である。
【0050】
さらに詳しく言えば、4枚の帯状片21,21…は互いに等間隔に配され、それぞれ四方に正面視において半円形の弧状に湾曲して、基端と先端がチューブ本体11に対して一体に固着されている。各帯状片21の上半部の内面側には、凹溝が長手方向に延びるように形成され、略U字形断面となっている。また、各帯状片21の下半部の外面側には、凸条断面形のリブ22が長手方向に延びるように形成されている。
【0051】
外部ストッパー30は、チューブ本体11の基端側の外周より軸心と直交する方向に平面的に延出する体表保持片31と、この体表保持片31の一端側に可撓片32を介して一体に連結され、チューブ本体11の注入口12を塞ぐボタン状の蓋部33と、を有している。外部ストッパー30の具体的な材質も、前記チューブ本体11やバンパー部20と同様にポリウレタン、エチレンプロピレン共重合体、シリコーンゴム等の合成樹脂を用いると良い。
【0052】
体表保持片31は、図示した形状に一体成形されており、チューブ本体11の全体が瘻孔より体内に入り込むことを防ぐための部位である。可撓片32は、体表保持片31の一端側より水平方向に延びる細幅状の部位であり、その付け根となる一端側より曲げたり、急な角度で屈曲させることができる。
【0053】
蓋部33は、チューブ本体11の注入口12に嵌合可能な栓形に設けられており、可撓片32を折り曲げて蓋部33を注入口12に押し当てることにより注入口12に嵌合し、チューブ本体11の基端側を閉塞することができる。また、可撓片32を引っ張って、蓋部33を注入口12から取り外すことにより、チューブ本体11の基端側を開口させることができるようになっている。
【0054】
次に、第1実施の形態に係るカテーテル10の作用について説明する。
患者にカテーテル10を設置する場合には、予め体表皮から胃の内部に至る瘻孔を造設しておく。そして、図7に示すように、チューブ本体11の注入口12から下方に向ってオブチュレーターAを挿入する。オブチュレーターAの先端部がチューブ本体11の先端側にある受け部14の内側に到達した後、バンパー部20を瘻孔にあてがってオブチュレーターAを下方へ押し下げる。
【0055】
すると、各バンパー部20は、それぞれチューブ本体11の外周面に沿って萎むよう縮径する。かかる縮径した状態のバンパー部20と共にチューブ本体11は、瘻孔の奥まで容易に挿入することができる。このようにチューブ本体11を瘻孔に挿入する際、オブチュレーターAの先端部は、前記受け部14の内側に位置するチューブ本体11のテーパー形状の内周面に当接するため、オブチュレーターAからチューブ本体11に挿入力を伝えることができる。
【0056】
バンパー部20が患者の胃内に入ったところで、オブチュレーターAをチューブ本体11から引き抜く。図8(a)に示すように、各帯状片21は、元の湾曲し拡径した状態に復元し、各帯状片21の上半部の上面側が胃壁の内面に接触することになる。これにより、バンパー部20は抜け止め用のストッパーとして作用し、カテーテル10は瘻孔に設置されて容易に抜け出ることはなく、患者の腹部に取り付けられた状態に維持することができる。
【0057】
特に、各帯状片21の基端と先端は、それぞれチューブ本体11に一体に連なるように固定されているから、チューブ本体11に多少の力が加わったとしても、各帯状片21が萎むように縮径することはない。よって、本実施の形態に係るカテーテル10は、患者の瘻孔に挿入しやすいばかりでなく、胃の内部における固定力も十分に高めることができる。さらに、各帯状片21の下半部の外面側にはリブ22があるため、図8(b)に示すように、チューブ本体11に引っ張り上げる力が加わっても、各帯状片21は容易に座屈するようなことはなく、拡径した状態が維持され、高い固定力を得ることができる。
【0058】
その後、外部ストッパー30にある蓋部33でチューブ本体11の注入口12を塞ぐことにより、カテーテル10の設置は終了する。かかる状態で外部ストッパー30の体表保持片31は、瘻孔の周囲の体表面に接することにより、チューブ本体11の全体が瘻孔より体内に入り込むことを防止する。このように、カテーテル10は体表面からも外部ストッパー30によって確実に固定される。また、外部ストッパー30が体外に向かって延び出て邪魔になることもない。
【0059】
カテーテル10を介して患者の胃内部に流動食や栄養剤等の流体物を供給する際は、外部ストッパー30の蓋部33を注入口12から取り外し、チューブ本体11の内部に図示省略した供給用のカテーテルチューブを挿入する。かかる状態で、カテーテルチューブに流体物を導入すると、流体物はチューブ本体11の内部を介して患者の胃内に供給される。そして、流動食等の供給後には、蓋部33で注入口12を閉塞すれば良い。このように、外部ストッパー30はチューブ本体11の注入口12の開閉機構も兼ねている。
【0060】
図7に示すように、チューブ本体11の内側は、その基端から先端にかけて遮るものがない一続きの内腔となり、その内周面は凹凸形状がなく滑らかに連なる。これにより、カテーテル10の内部に前記供給用のカテーテルチューブや、内視鏡に代表される器具等を挿入する際に内周面に引っ掛かる虞はなく、動作抵抗も減らすことができ、円滑な操作性を得ることができる。
【0061】
前述したように、オブチュレーターAの先端部を受けるための受け部14は、チューブ本体11の基端側におけるテーパー形状の外周側に設けられている。これにより、チューブ本体11の基端側におけるテーパー形状の内周側には、オブチュレーターAの先端部を引っ掛けるための凹凸形状が要らなくなり、内周面が滑らかに連なるにも拘わらず、オブチュレーターAの先端部を係止することが可能となる。
【0062】
図9から図16までは、バンパー部20の変形例を示している。図9は、バンパー部の変形例を示す斜視図であり、図10は、バンパー部の変形例を示す側面図であり、図11は、図10のA−A視断面図であり、図12は、バンパー部の先端側を示す底面図である。また、図13は、図11と同様の断面図であり、図14は、変形例のバンパー部の帯状片の基端側を拡大して示す拡大図であり、図15は、変形例のバンパー部の先端側を拡大して示す拡大図であり、図16は、図15におけるバンパー部の先端側に設けた凹陥部211を拡大して示す拡大図である。
【0063】
これらの図に示したように、バンパー部20における各帯状片21の基端同士が隣り合う接合部分23には、チューブ本体11の軸心方向に向かって切り欠かれた凹陥部210が設けられている。図13における破線25は、接合部分23に凹陥部210を設けない場合の帯状片21の輪郭を示している。
【0064】
この凹陥部210を設けることにより、帯状片21の凹陥部210間の幅寸法は、凹陥部210を設けていない部分の幅寸法よりも必然的に小さくなる。したがって、接触性潰瘍の発症を抑えたり、応力に対するバンパー部20の変形を抑えたりするために帯状片21の幅寸法を大きく取っても、バンパー部20は、各帯状片21が萎むように縮径する際に基端同士が接合部分23で干渉することが無くなる。
【0065】
また、帯状片21の凹陥部210間の幅寸法が小さくなることにより、各帯状片21が萎むように縮径する際に凹陥部210間での変形が大きくなる。これにより、体内に挿入し易いスリムな形状になるように帯状片21を萎ませることが容易になる。
【0066】
一方、各帯状片21の先端同士が隣り合う接合部分24にもチューブ本体11の軸心方向に向かって切り欠かれた凹陥部211が設けられている。この凹陥部211は、基端側の凹陥部210と同様の形状のものでもよいが、図12,15,16に明瞭に示したように、帯状片21の幅を狭くする方向に抉られた丸みを持った形状に形成されている。
【0067】
これにより、凹陥部211間の幅寸法をより小さくすることができ、各帯状片21が萎むように縮径する際に凹陥部211間での変形がより容易に大きくなる。したがって、体内に挿入し易いスリムな形状になるように帯状片21を萎ませることがより容易になる。なお、基端側の接合部分23に設けた凹陥部210もこのような帯状片21の幅を狭くする方向に抉られた丸みを持った形状に形成してもよい。
【0068】
さらに図16に示したように、先端側の接合部分24に設けた凹陥部211には、チューブ本体11の軸心方向に沿って、基端側から先端に向かって凹陥部211の一部を抉った抉り部212が設けられている。したがって、各帯状片21は、凹陥部211を設けた接合部分24の肉厚が薄くなっている。これにより、各帯状片21の幅寸法を大きくしても、凹陥部211を形成した部分の変形を大きくすることができるので、各帯状片21をさらにスリムに萎ませることができる。
【0069】
なお、図16では抉り部212を帯状片21の片面側から抉って設けてあるが、両面から抉って設けても良い。また、抉り部212は、帯状片21の先端側の接合部分24に設けた凹陥部211の一部を抉って形成されているが、基端側の接合部分23に設けた凹陥部210に形成しても良い。
【0070】
図17は、本発明の第2実施の形態を示している。
本実施の形態に係るカテーテル10Aは、前述した第1実施の形態に係るカテーテル10と基本的な構成は共通するが、バンパー部20の各帯状片21の先端を支持する構造が異なっている。なお、第1実施の形態と同種の部位には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0071】
本実施の形態では、バンパー部20の各帯状片21は、それぞれ基端がチューブ本体11Aの先端開口縁に一体に連なり、チューブ本体11Aの軸心の延長線より放射状に拡がりつつ湾曲して延びた後、それぞれ先端がチューブ本体11Aの先端開口縁より軸心の延長線上に延出した弾性体15に一体に連なっている。
【0072】
前記弾性体15は、チューブ本体11Aの先端開口縁の外周方向に並ぶように連結された4本の棒状体17と、各棒状体17の先端側が連結され、チューブ本体11Aを前記瘻孔に挿入する際に前記オブチュレーターAの先端部が当接する受け部19と、から成る。ここで受け部19は、前記受け部14と同様に内周面が漸次縮径するテーパー形状に形成されたリング状の部位であり、この受け部19の先端開口縁に前記各帯状片21の先端がそれぞれ一体に連結されている。
【0073】
このようなカテーテル10Aによれば、弾性体15の各棒状体17によって各帯状片21の先端は、チューブ本体11Aの軸心に対向する位置に保持され、チューブ本体11Aに挿入させたオブチュレーターAの先端部を受け部19に当接させて、オブチュレーターAからチューブ本体11Aに挿入力を伝えることができる。この時、各帯状片21は、弾性体15を中心にして萎むよう縮径して瘻孔を挿通する。
【0074】
バンパー部20が患者の胃内に入ったところで、オブチュレーターAをチューブ本体11Aから引き抜くと、各帯状片21は、元の湾曲し拡径した状態に復元し、各帯状片21の上半部の上面側が胃壁の内面に接触する。これにより、チューブ本体11Aを設置位置に固定することができる。特に、弾性体15によって各帯状片21は、放射状に拡径して湾曲した状態に保持されるから、不用意な力が加わっても誤って容易に抜けてしまう虞はない。
【0075】
図18は、本発明の第3実施の形態を示している。
本実施の形態に係るカテーテル10Bは、前述した第2実施の形態に係るカテーテル10Aと基本的な構成は共通するが、弾性体16の構造が異なっている。なお、第1,2実施の形態と同種の部位には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0076】
本実施の形態でも、前記第2実施の形態と同様に、バンパー部20の各帯状片21は、それぞれ基端がチューブ本体11Bの先端開口縁に一体に連なり、チューブ本体11Bの軸心の延長線より放射状に拡がりつつ湾曲して延びた後、それぞれ先端がチューブ本体11Bの先端開口縁より軸心の延長線上に延出した弾性体16に一体に連なっている。
【0077】
ここで弾性体16は、前記弾性体15とは異なり、チューブ本体11Bの先端開口縁より軸心の延長線を中心として螺旋状に延びるコイル体18と、該コイル体18の先端側が連結され、チューブ本体11Bを瘻孔に挿入する際に前記オブチュレーターAの先端部が当接する受け部19と、から成る。このような弾性体16によっても、前記弾性体15の場合と同様に各帯状片21を放射状に拡径して湾曲した状態に保持することができる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、前記各実施の形態では、カテーテル10,10A,10Bを設置する所定臓器として胃を例に説明したが、他にも腸や膀胱等の他の臓器に適用しても良い。
【0079】
また、前記各実施の形態におけるチューブ本体11,11A,11Bの長さや、バンパー部20および外部ストッパー30の具体的な形状は図示したものには限定されない。特にバンパー部20は、4個の帯状片21が四方に広がるように構成したが、帯状片21の数は4個に限られるものではなく、3個あるいは5個以上設けるようにしても良い。
【0080】
また、前記第1実施の形態における受け部14は、チューブ本体11の内周面に凹凸として現れなければよく、チューブ本体11の外周のみならず、例えば、硬質の合成樹脂をインサート成形したり、あるいは、チューブ本体11の内周面の基準面と同一面上に連なるように設けても良い。もちろん、円周方向に延びるリング状に限られるものではない。
【0081】
さらに、前記第2,3実施の形態における弾性体15,16の具体的な構成も、複数の棒状体17あるいはコイル体18と、受け部19との組み合わせに限定されることなく、チューブ本体11A,11Bの先端開口縁より軸心の延長線上に延出して弾性変形可能な他の構造を採用してもかまわない。
【0082】
さらにまた、変形例として説明したバンパー部20に設けた凹陥部210,211や抉り部212は、前記第2,3実施の形態におけるバンパー部20に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係るカテーテルは、体表面から体内の所定臓器の壁部にかけて形成された瘻孔に挿入され、体外から前記所定臓器の内部に流体物を供給するものであり、特に胃瘻用カテーテルに適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
10…カテーテル
11…チューブ本体
12…注入口
13…先端開口
14…受け部
15…弾性体
16…弾性体
17…棒状体
18…コイル体
19…受け部
20…バンパー部
21…帯状片
22…リブ
23…接合部分
24…接合部分
30…外部ストッパー
31…体表保持片
32…可撓片
33…蓋部
210…凹陥部
211…凹陥部
212…抉り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体表面から体内の所定臓器の壁部にかけて形成された瘻孔に挿入され、体外から前記所定臓器の内部に流体物を供給するためのカテーテルにおいて、
前記瘻孔に挿入された状態に設置されるチューブ本体と、該チューブ本体の先端側に設けられ、前記所定臓器の壁部内側に留置されてチューブ本体を設置位置に固定するバンパー部と、を備え、
前記バンパー部は、弾性変形可能な材質により形成された複数の帯状片から成り、各帯状片は、それぞれ基端が前記チューブ本体の先端側途中の外周面に一体に連なり、前記チューブ本体の軸心より放射状に拡がり先端側に向かい湾曲して延びた後、それぞれ先端が前記チューブ本体の先端開口縁に一体に連なり、
前記各帯状片は、前記チューブ本体を前記瘻孔に挿脱する際に、チューブ本体の外周面に沿って萎むよう縮径する一方、前記所定臓器の壁部内側では、元の湾曲した状態に拡径してチューブ本体を設置位置に固定することを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記チューブ本体の内側は、その基端から先端にかけて遮るものがない一続きの内腔となり、その内周面は凹凸形状がなく滑らかに連なることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記チューブ本体を、その先端側途中より先端開口にかけて少なくとも内周面が漸次縮径するテーパー形状に形成すると共に、該テーパー形状の外周側に当該部位の弾性変形を防止する剛性のある受け部を設け、
前記チューブ本体を前記瘻孔に挿入する際に、チューブ本体内に挿入した状態で挿入力を与えるための棒状の挿入具の先端が、前記受け部を介してその内側の内周面に当接するように設定したことを特徴とする請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
体表面から体内の所定臓器の壁部にかけて形成された瘻孔に挿入され、体外から前記所定臓器の内部に流体物を供給するためのカテーテルにおいて、
前記瘻孔に挿入された状態に設置されるチューブ本体と、該チューブ本体の先端側に設けられ、前記所定臓器の壁部内側に留置されてチューブ本体を設置位置に固定するバンパー部と、を備え、
前記バンパー部は、弾性変形可能な材質により形成された複数の帯状片から成り、各帯状片は、それぞれ基端が前記チューブ本体の先端開口縁に一体に連なり、前記チューブ本体の軸心の延長線より放射状に拡がりつつ湾曲して延びた後、それぞれ先端が前記チューブ本体の先端開口縁より軸心の延長線上に延出した弾性体に一体に連なり、
前記各帯状片は、前記チューブ本体を前記瘻孔に挿脱する際に、前記弾性体を中心にして萎むよう縮径する一方、前記所定臓器の壁部内側では、元の湾曲した状態に拡径してチューブ本体を設置位置に固定することを特徴とするカテーテル。
【請求項5】
前記弾性体は、前記チューブ本体の先端開口縁の外周方向に並ぶように連結された複数の棒状体と、各棒状体の先端側が連結され、前記チューブ本体を前記瘻孔に挿入する際に、チューブ本体内に挿入した状態で挿入力を与えるための棒状の挿入具の先端が当接する受け部と、から成り、該受け部に前記各帯状片の先端をそれぞれ連結したことを特徴とする請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記弾性体は、前記チューブ本体の先端開口縁より軸心の延長線を中心として螺旋状に延びるコイル体と、該コイル体の先端側が連結され、前記チューブ本体を前記瘻孔に挿入する際に、チューブ本体内に挿入した状態で挿入力を与えるための棒状の挿入具の先端が当接する受け部と、から成り、該受け部に前記各帯状片の先端をそれぞれ連結したことを特徴とする請求項4に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記チューブ本体の基端側に設けられ、体表面上に留置される外部ストッパーを備え、
前記外部ストッパーは、チューブ本体の外周より軸心と直交する方向に平面的に延出し、その一端側に可撓片を介してチューブ本体の基端開口を塞ぐボタン状の蓋部が一体に設けられていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記バンパー部における各帯状片の基端同士が隣り合う接合部分に、前記チューブ本体の軸心方向に向かって切り欠かれ、各帯状片が萎むように縮径する際に基端同士の干渉を防ぐ凹陥部を設けると共に、
前記バンパー部における各帯状片の先端同士が隣り合う接合部分に、前記チューブ本体の軸心方向に向かって切り欠かれ、各帯状片が萎むように縮径する際に先端同士の干渉を防ぐ凹陥部を設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記凹陥部は、前記帯状片の先端および基端それぞれにおける前記帯状片の幅を狭くする方向に抉られた丸みを持った形状に形成されたことを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記帯状片の少なくとも先端側の接合部分に設けた凹陥部に、前記チューブ本体の軸心方向に沿って前記凹陥部を抉った抉り部を設けたことを特徴とする請求項8または9に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図17】
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【図18】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−99514(P2013−99514A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209892(P2012−209892)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【出願人】(391016705)クリエートメディック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】