説明

カバジタキセルの新規の抗腫瘍的使用

本発明は、特にタキサンベースの治療に応じない患者についての前立腺癌、特に転移性前立腺癌の治療薬として使用するためのプレドニゾンまたはプレドニゾロンと組み合わせた、塩基形態、水和物形態または溶媒和物の形態であり得る式(I)の化合物に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタキサンベースの治療に応じない患者のための転移性であり得る前立腺癌の治療におけるカバジタキセルの新規の抗腫瘍的使用に関する。特に、本発明は、ドセタキセルベースのレジメンで以前に治療されている去勢抵抗性転移性前立腺癌を有する患者の治療(依然として対処されていない医療ニーズ)におけるカバジタキセルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は全世界の男性の大部分が罹患し、2002年の世界的な症例数は680000である。2010年までの新規の年間症例数は900000と予想される(CA Cancer J.Clin.,2005,55,74−108)。前立腺癌は、肺癌に次いで男性が最も頻繁に罹患する癌である。
【0003】
前立腺癌は、一般に、最初に男性ホルモンの枯渇(即ち、精巣の外科的切除)(The Current State of Hormonal Therapy for Prostate Cancer CA Cancer J.Clin.,May 2002;52:154−179)または放射線治療(External beam radiation therapy for prostate cancer CA Cancer J.Clin.,Nov.2000;50:349−375)によって治療される。抗アンドロゲンまたはホルモンの操作を使用した治療は、応答の持続時間が短く、生存期間のいかなる改善も認められない。
【0004】
細胞傷害性化学療法の使用は日常的な治療ではないが、症状の緩和およびPSA(前立腺特異的抗原)レベルの低下における役割が確立されている。単剤療法では30%を超える応答は得られておらず、PSAレベルに及ぼす影響との組み合わせを試験した。生存期間に及ぼす影響は認められず、その上、特に高齢患者に及ぼすこれらの治療の毒性が問題である。何故なら、腫瘍に加えて、高齢患者は一般に関連する健康上の問題を抱えており、骨髄の貯蔵量が制限されるからである。
【0005】
最近まで、使用されている化学療法は、シクロホスファミド、アントラサイクリン(ドキソルビシンまたはミトキサントロン)およびエストラムスチンに制限されており、これらの治療の効果は比較的凡庸である。コルチコイドのみの投与またはミトキサントロンのプレドニゾンまたはヒドロコルチゾンのいずれかとの同時投与後の患者において姑息的効果が認められた。第二相試験後、ミトキサントロンのコルチコイドとの組み合わせは、ホルモン抵抗性前立腺癌の基準治療として認識されていた。最近になって、エストラムスチンまたはプレドニゾンと組み合わせたドセタキセルでの治療により、ホルモン枯渇に抵抗性を示す癌の治療が可能となっており(Advances in Prostate Cancer Chemotherapy:A New Era Begins CA Cancer J.Clin.,Sep.2005;55:300−318)、生存期間が2.4ヶ月に改善された。
【0006】
一般に、疾患の異質性および治療応答基準に関するコンセンサスの欠如に起因して進行性前立腺癌における応答の評価が困難であることが認められている。多数の転移性前立腺癌を有する患者は、測定可能な疾患を持たないが、主に骨転移の症状を示す。PSAレベルの測定は、新規の候補の評価手段であり、腫瘍の測定手段(これが可能である場合、骨腫瘍の測定、生活の質の測定および疼痛の測定)でもあることが見出されている。
【0007】
さらに、癌は使用薬剤(特に、タキサン)に耐性を示すようになり、可能な治療の選択肢が制限され得る。幾つかのタキサン耐性機構が記載されている(P−糖タンパク質(P−gp)mdr−1遺伝子の発現、タキサン機構改変、チューブリン遺伝子の変異など)(Drug Resistance Updates 2001,4(1),3−8;J.Clin.Onc.1999,17(3),1061−1070を参照のこと。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】CA Cancer J.Clin.,2005,55,74−108
【非特許文献2】The Current State of Hormonal Therapy for Prostate Cancer CA Cancer J.Clin.,May 2002;52:154−179
【非特許文献3】External beam radiation therapy for prostate cancer CA Cancer J.Clin.,Nov.2000;50:349−375
【非特許文献4】Advances in Prostate Cancer Chemotherapy:A New Era Begins CA Cancer J.Clin.,Sep.2005;55:300−318
【非特許文献5】Drug Resistance Updates 2001,4(1),3−8;J.Clin.Onc.1999,17(3),1061−1070
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとしている技術的問題点は、特にタキサンベースの治療に応じない患者(ドセタキセル(商品名タキソテール(登録商標)で販売されている。)ベースのレジメンで以前に治療されている去勢抵抗性転移性前立腺癌を有する患者など)の前立腺癌治療のための新規の治療選択肢(依然として対処されていない医療ニーズ)を提供することである。
【0010】
2006年以来カバジタキセルに関する4つの臨床試験が公知である。3つの単剤療法を使用した試験により、最大許容投与量および限界量での毒性を決定することができ、これらの試験を乳房腫瘍、肉腫および前立腺腫瘍に対して行った。10から30mg/mの用量を3時間毎に使用した。アジュバント(即ち、術後)として、または第一選択治療としてタキサンおよびアントラサイクリンを以前に投与された乳癌患者に対して第二相試験を行った。応答レベルは、アジュバントについては14.6%であり、第二選択治療については9.5%であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式:
【0012】
【化1】

のカバジタキセルを含む新規の抗腫瘍性の薬学的治療の使用に関する。
【0013】
本発明はまた、前立腺癌を有する患者の治療方法であって、有効量の抗腫瘍薬カバジタキセルを前記患者に投与することを含む方法に関する。
【0014】
この抗腫瘍薬は、無水塩基、水和物または溶媒和物の形態であり得、前立腺癌治療(特にタキサンベースの治療に応じない患者(ドセタキセルベースのレジメンで以前に治療されている患者など)の治療)を意図する。この化合物を、好ましくは、進行性転移性疾患患者に投与する。特に、化合物を、去勢抵抗性前立腺癌を有する患者に投与する。カバジタキセルを、好ましくは、特にプレドニゾンおよびプレドニゾロンから選択したコルチコイドと組み合わせて投与する。このコルチコイドを、好ましくは、1日量10mgで経口投与する。
【0015】
本発明の幾つかの態様では、カバジタキセルを、ドセタキセルベースのレジメンで以前に治療されているホルモン不応性前立腺癌を有する患者の治療薬として用いるためにプレドニゾンと組み合わせて投与する。
【0016】
本発明の幾つかの態様では、カバジタキセルを、20mg/mと25mg/mとの間の(各投与について定義した)用量で投与する。カバジタキセルは、アセトン溶媒和物の形態であり得る。より詳細には、カバジタキセルのアセトン溶媒和物は、5重量%と8重量%との間、好ましくは5重量%と7重量%との間のアセトンを含む。
【0017】
本発明の幾つかの態様では、カバジタキセルを、15mg/mと25mg/mとの間の用量で静脈内注入によって投与し、この抗腫瘍薬の投与サイクルを、各カバジタキセル投与の間に3週間の間隔にて繰り返すことができる。この間隔を、事前のカバジタキセル投与に対する耐性に応じて、1から2週間延長することができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、有効量のカバジタキセルにより、全生存の増加、部分的応答、腫瘍サイズの減少、転移の減少、完全寛解、部分的寛解、安定な疾患または完全な応答からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果が得られる。
【0019】
本発明はまた、臨床的に証明された安全で有効な量のカバジタキセルを含む前立腺癌を有する患者を治療する薬学的組成物に関する。
【0020】
本発明のさらなる実施形態は、カバジタキセルの使用方法、治療方法、促進方法、および提供方法を含む。
【0021】
本発明はまた、包装および製品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、カバジタキセル研究における全生存のカプラン・マイヤー曲線を示す。
【図2】図2は、カバジタキセル研究における無増悪生存率のカプラン・マイヤー曲線を示す。
【図3】図3は、ベースライン特性によって定義された患者の下位集団における全生存の全例解析を示す。ハザード比1未満はカバジタキセル群を支持する一方で、1超はミトキサントロン群を支持する。CIは信頼区間を示す。
【図4】図4は、治療中のベースラインからECOGパフォーマンスステータスが変化した患者集団を図示する(安全性解析対象集団(safety population))。
【図5】図5は、治療中の現疼痛強度スコア(Present Pain Intensity score)がベースラインから変化した患者集団を図示する(ITT)。
【図6】図6は、治療サイクルによるPPIおよび鎮痛スコアについての平均曲線下面積を図示する。
【図7】図7は、平均AUC鎮痛スコアを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
「有効量」は、本明細書中で使用する場合、治療すべき癌に影響を及ぼす薬学的化合物(カバジタキセルなど)の量を意味する。
【0024】
「臨床的に証明された」は、本明細書中で使用する場合、FDA承認基準を満たすのに十分な臨床的有効性の結果を意味する。
【0025】
去勢抵抗性前立腺癌は、本明細書中で使用する場合、ホルモン不応性前立腺癌と同義である。
【0026】
「患者」には、本明細書中で使用する場合、ヒトおよび動物の両方が含まれる。1つの実施形態では、患者はヒトである。
【0027】
カバジタキセルは、タキソイドファミリーに属し、式:
【0028】
【化2】

を有する。
【0029】
カバジタキセルの化学名は、4α−アセトキシ−2α−ベンゾイルオキシ−5β,20−エポキシ−1β−ヒドロキシ−7β,10β−ジメトキシ−9−オキソ−11−タキセン−13α−イル (2R,3S)−3−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオナートである。カバジタキセルは、(2α,5β,7β,10β,13α)−4−アセトキシ−13−({(2R,3S)−3−[(tertブトキシカルボニル)アミノ]−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロパノイル}オキシ)−1−ヒドロキシ−7,10−ジメトキシ−9−オキソ−5,20−エポキシタクス−11−エン−2−イルベンゾアートの同義語として公知である。
【0030】
この化合物およびこの調製方法は、WO96/30355、EP0817779B1およびUS5847170(本明細書中で参照により組込まれる。)に記載されている。カバジタキセルを、塩基形態(上記式を参照のこと。)または水和物形態で投与することができる。カバジタキセルは、溶媒和物(即ち、活性成分分子の結晶への結晶化溶媒の組み込みによって特徴づけられる分子複合体)でもあり得る(この点において、J.Pharm.Sci.1975、64(8)、1269−1288の1276頁を参照のこと。)。特に、カバジタキセルは、アセトン溶媒和物、より詳細には、WO2005/02846に記載の溶媒和物であり得る。カバジタキセルは、5重量%と8重量%との間、好ましくは5重量%と7重量%との間のアセトン(%は、アセトン含有量/アセトン+カバジタキセルの含有量×100を意味する。)を含むカバジタキセルのアセトン溶媒和物であり得る。アセトン含有量の平均値は7%であり、これはおよそアセトン化学量論を示し、アセトン1分子を含む溶媒和物については6.5%である。下記の手順により、カバジタキセルのアセトン溶媒和物の調製が可能である。
【0031】
20±5℃(室温)で940mlの精製水を、207gの4α−アセトキシ−2α−ベンゾイルオキシ−5β,20−エポキシ−1β−ヒドロキシ−7β,10β−ジメトキシ−9−オキソ−11−タキセン−13α−イル (2R,3S)−3−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオナートを約92重量%で含む約2リットルのアセトン溶液に添加し、この後に20mlの水および20mlのアセトンの混合物中のアセトン/水から単離した2gの4α−アセトキシ−2α−ベンゾイルオキシ−5β,20−エポキシ−1β−ヒドロキシ−7β,10β−ジメトキシ−9−オキソ−11−タキセン−13α−イル (2R,3S)−3−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオナートの懸濁液を播種する。得られた混合物を約10から22時間撹拌し、1.5リットルの精製水を4から5時間かけて添加する。この混合物を60から90分間撹拌し、次いで、懸濁液を減圧下で濾過する。ケーキをフィルタ上で450mlのアセトンおよび550mlの精製水から調製した溶液で洗浄し、次いで、減圧下(0.7kPa)にて55℃で4時間オーブン乾燥させる。197gの4α−アセトキシ−2α−ベンゾイルオキシ−5β,20−エポキシ−1β−ヒドロキシ−7β,10β−ジメトキシ−9−オキソ−11−タキセン−13α−イル (2R,3S)−3−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオナートアセトン(0.1%水および7.2%アセトン(理論量:化学量論溶媒については6.5%)を含む。)が得られる。
【0032】
カバジタキセルを、静脈内投与などによって非経口投与することができる。静脈内注入による投与に適切なカバジタキセルの剤型は、界面活性剤、共溶媒、グルコースまたは塩化ナトリウムなどから選択される賦形剤の存在下でカバジタキセルを水に溶解した形態である。例えば、カバジタキセルの剤型を、滅菌バイアル中に含まれるカバジタキセルのプレミックス溶液(80mgのカバジタキセル+2mlの溶媒+ポリソルベート80)を6mlの水およびエタノールの溶液(13重量%の95%エタノール)を含む滅菌バイアルで希釈して灌流バッグ中に再希釈される状態にある8mlの溶液を得ることによって調製することができる。この再希釈される状態にある溶液中のカバジタキセル濃度は約10mg/mlである。次いで、灌流液を、適量のこの再希釈される状態にある溶液を水およびグルコース(約5%)または塩化ナトリウム(約0.9%)を含む灌流バッグへ注入することによって調製する。
【0033】
2つの異なる薬学的調製物としてカバジタキセルをコルチコイド(プレドニゾンまたはプレドニゾロンなど)と組み合わせて投与することができる。
【0034】
従って、本発明の1つの態様は、前立腺癌の治療方法であって、必要とする患者に有効量のカバジタキセルをコルチコイド(プレドニゾンまたはプレドニゾロンなど)と組み合わせて投与することを含む方法である。
【0035】
組み合わせを、治療すべき患者(年齢、体重、治療歴など)に応じたプロトコール(医師によって決定することができる。)に従って繰り返し投与する。本発明の1つの態様では、カバジタキセルを、灌流によって3週間の各投与の間に間隔をおいた断続的プログラムに従って患者に投与する。この期間を、先行する投与に対する耐性に応じて1から2週間延長することができる。サイクル数の中央値は6である。プレドニゾンまたはプレドニゾロンを、例えば、治療継続期間を通して1日あたり1回投与する形態で毎日投与することができる。2つの抗腫瘍薬の用量の例を、「実施例」に記載している。現在推奨されている用量は、1時間の注入で投与される25mg/mのカバジタキセルおよび経口投与される10mg/日のプレドニゾンまたはプレドニゾロンである。
【0036】
本発明の幾つかの態様では、治療すべき患者は、ホルモン療法に耐性を示し(即ち、ホルモン不応性)、ドセタキセルで以前に治療されている前立腺癌を有する。幾つかの態様では、患者は、ドセタキセルでの治療中または治療後に進行した前立腺癌を有する。幾つかの態様では、患者は、少なくとも225mg/mの蓄積用量のドセタキセルで以前に治療されていた。1つの特定の態様では、患者は、ホルモン療法の6ヶ月後またはドセタキセル治療中またはドセタキセル治療後に疾患の進行が認められた。別の特定の態様では、患者は、ホルモン療法の3ヶ月後またはドセタキセル治療後に疾患の進行が認められた。
【0037】
本発明の幾つかの態様では、治療すべき患者は、測定可能な腫瘍を有し、MRIまたはX線体軸断層撮影法(axial tomographic scan)(CTスキャン)によって少なくとも1cmの内蔵または軟組織の転移性病変による疾患の進行を示し得る。
【0038】
本発明の幾つかの態様では、治療すべき患者は、測定不可能な腫瘍を有し、1週間間隔での3回の測定によるPSAレベルの増加または新規の病変の出現が認められ得る。
【0039】
本発明の幾つかの態様では、治療すべき患者は、精巣摘除によるかLHRHアゴニストを使用した去勢、アンドロゲンの排除またはエストラムスチンでの単剤療法を受けていた。
【0040】
1つの好ましい態様では、治療すべき患者の平均余命は少なくとも2ヶ月であるべきである。
【0041】
幾つかの態様では、治療は、ミトキサントロンを以前に投与された患者や225mg/m未満のドセタキセルを投与される患者や40%を超える骨髄が除去された照射療法を受けた患者、試験4週間以内に治療を受けた患者、神経障害または口内炎(脳または髄膜に関与する。)を有する患者、ポリソルベートまたはプレドニゾンに対して重症過敏症を示した患者(血液分析が相当な好中球、ヘモグロビンまたは血小板の減少、ビリルビンおよび/または肝臓酵素およびクレアチニンの増加を示す。)や心臓障害または抗生物質を必要とする感染症を有する患者を含まない。
【0042】
本発明の1つの態様は、ホルモン不応性転移性前立腺癌を有する患者の生存期間の増大方法であって、プレドニゾンまたはプレドニゾロンと組み合わせて患者に臨床的に証明された有効量のカバジタキセルを投与することを含む方法を含む。1つの特定の態様では、患者はドセタキセルを含むレジメンで事前に治療されている。
【0043】
カバジタキセルを、嘔気および嘔吐を防止または調節するかカバジタキセル治療に対する過敏症を防止または調節するための薬物と組み合わせて投与することができる。好ましくは、患者に、例えば、カバジタキセルの各投与の少なくとも30分前に薬物を使用して前投薬する。
【0044】
本発明の1つの態様は、カバジタキセルで治療した前立腺癌を有する患者における重症過敏反応のリスクを軽減する方法であって、カバジタキセルの投与前に過敏症を防止するための薬物を患者に投与することを含む方法を含む。
【0045】
カバジタキセルに対する重症過敏反応が起こり得る。重症過敏反応には全身性皮疹/紅斑、低血圧および気管支痙攣が含まれ得る。患者は、特に第1および第2の注入中に過敏反応を細密に観察されるはずである。過敏反応はカバジタキセル注入の開始後数分以内で起こり得るので、低血圧および気管支痙攣の治療のための施設および装置を利用できるようにすべきである。重症過敏反応が起きた場合、カバジタキセル注入を直ちに中止すべきであり、適切な治療を施すべきである。カバジタキセル治療に対する過敏症を防止するために使用することができる薬物の例には、抗ヒスタミン薬(デクスクロロフェニラミン(例えば、5mg)およびジフェンヒドラミン(例えば、25mg)または等価な抗ヒスタミン薬など)およびコルチコステロイド(デキサメタゾン(例えば、8mg)または等価なステロイドなど)が含まれる。
【0046】
これにもかかわらず、カバジタキセルを、カバジタキセルに対する重症過敏反応の病歴を有する患者に投与すべきではなく、禁忌であり得る。投与される処方物に応じて、カバジタキセルはまた、ポリソルベート80を使用して処方した他の薬物に対する過敏反応の病歴を有する患者に禁忌であり得る。
【0047】
本発明の1つの態様は、
a)包装材料、
b)カバジタキセル、および
c)包装材料内に含まれる重症過敏反応が起こり得ることを示すラベルまたは添付文書
を含む製品を含む。
【0048】
カバジタキセル治療の使用により、胃腸管の症状(例えば、嘔気、嘔吐および下痢など)が起こり得る。下痢および電解質不均衡に関連する死亡が報告されている。従って、患者を、必要に応じて、水分補給し、止痢薬または制吐薬で治療することもできる。患者がグレード3以上の下痢を経験してる場合、治療の遅延または投薬量の軽減が必要であり得る。
【0049】
従って、本発明の方法は、カバジタキセルと組み合わせた過敏症を防止するための薬物または嘔気および嘔吐を防止または調節するための薬物を投与することを含む。
【0050】
嘔気および嘔吐を防止または調節するために使用することができる薬物の例には、ヒスタミンHアンタゴニストおよび制吐薬(オンダンセトロン、グラニセトロンおよびドラセトロンなど)が含まれる。
【0051】
カバジタキセルを使用した治療の可能性のある副作用は、好中球数の減少によって特徴づけられる好中球減少症である。不運なことに、多数の好中球減少症による死亡が報告されている。従って、好中球減少症をモニタリングするために血球数を頻繁に得るか、実施しなければならない。好中球減少症が起こる場合、カバジタキセル治療を中止し、好中球数が1,500/mm超のレベルに回復した場合に再開することができる。好中球数が1,500細胞/mm以下の患者にカバジタキセルを投与すべきではない。
【0052】
従って、本発明はまた、カバジタキセルを患者に投与すること、患者の血球数をモニタリングすることおよび好中球レベルを測定することを含む、カバジタキセルで前立腺癌を治療する方法に関する。1つの態様では、本方法は、さらに、好中球減少症が起こった場合にカバジタキセル治療を中止することおよび場合により好中球数が1,500/mm超のレベルに回復した場合にカバジタキセル治療を再開することを含む。1つの態様では、モニタリングは、患者からの血液サンプルの採取を含む。
【0053】
好中球数を、当業者に周知の手順に従って決定することができる。
【0054】
本発明の1つの態様は、好中球減少症の治療に有用な薬剤と組み合わせてカバジタキセルを投与することを含む、好中球減少症の合併症リスクを軽減する方法である。かかる好中球減少症の治療薬は、例えば、好中球の産生および機能を制御する造血成長因子(ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)など)である。本発明の1つの特定の態様では、好中球減少症は併発好中球減少症である。併発好中球減少症には、発熱性好中球減少症、長期の好中球減少症または好中球減少性感染が含まれる。好ましい実施形態では、好中球減少症の治療薬を、カバジタキセルの投与前に投与する。
【0055】
本発明の特定の態様は、カバジタキセルで治療した前立腺癌を有する患者における好中球減少症の合併症リスクを軽減する方法であって、カバジタキセルでの患者の治療中に一定間隔で患者中の血球数をモニタリングすること、患者が発熱性好中球減少症または長期の好中球減少症を経験している場合にカバジタキセルの用量を軽減すること、患者の好中球数が1,500細胞/mm以下である場合にカバジタキセル治療を中止すること、および場合によって、患者の好中球数が1,500細胞/mm以上のレベルに回復する場合にカバジタキセル治療を再開することを含む方法を含む。
【0056】
1つの特定の態様では、G−CSFでの一次予防を、長期の好中球減少症由来の合併症を増大させ易くする高リスクの臨床的特徴(65歳超、パフォーマンスステータスの不良、発熱性好中球減少症の病歴、以前放射線を照射した部位の拡大(extensive prior radiation ports)、栄養不良状態または他の重篤な共存症)を有する患者において考慮すべきである。G−CSFおよび二次予防の治療使用を、好中球減少症の合併症リスクが増大していると見なされる全患者において考慮すべきである。
【0057】
別の態様では、全血球計算値のモニタリングを、必要に応じてこの用量を調整することができるようにサイクル1中に週1回およびこの後の各治療サイクル前に行う。従って、好中球減少症の合併症リスクを減少させるための別の態様は、患者中の血球数のモニタリングおよびカバジタキセル用量の調整を含む。用量の修正例を、実施例2中に記載している。
【0058】
本発明の1つの態様は、
a)包装材料、
b)カバジタキセル、および
c)包装材料内に含まれる好中球数が1,500細胞/mm以下の患者にカバジタキセルを投与すべきではないことを示すラベルまたは添付文書
を含む製品を含む。
【0059】
腎不全の症例を、当業者に公知の手順に従って同定し、積極的に管理すべきである。腎不全は、敗血症、脱水症または閉塞性尿路疾患に関連し得る。さらに、肝機能障害(例えば、総ビリルビンがULN以上またはASTおよび/またはALTが1.5×ULN以上)はカバジタキセル濃度を増加させ得るので、カバジタキセルを肝障害患者に投与すべきではない。
【0060】
カバジタキセルは、妊婦に投与した場合に胎児に害を及ぼし得る。
【0061】
1日量10mgで投与したプレドニゾンまたはプレドニゾロンは、カバジタキセルの薬物動態に影響を及ぼさない。
【0062】
カバジタキセルは、主にCYP3Aによって代謝される。強力なCYP3Aインヒビター(例えば、ケトコナゾール、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、アタザナビル、インジナビル、ネファゾドン、ネフィルナビル、リトナビル、サキナビル、テリスロマイシン、ボリコナゾール)の併用投与により、カバジタキセル濃度が増加し得る。従って、カバジタキセルの強力なCYP3Aインヒビターとの同時投与は回避すべきである。中程度のCYP3Aインヒビターの併用には注意を払うべきである。本発明の1つの態様は、患者をCYP3Aインヒビターで治療するかどうかを決定すること、CYP3Aインヒビターでの治療を中止することおよびカバジタキセルを患者に投与することを含む、前立腺癌を有する患者の治療方法である。
【0063】
強力なCYP3Aインデューサー(例えば、フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピン、リファブチン、リファペンチン、フェノバルビタール)の併用投与により、カバジタキセル濃度が減少し得る。従って、カバジタキセルの強力なCYP3Aインデューサーとの同時投与は回避すべきである。従って、本発明の1つの態様は、患者をCYP3Aインデューサーで治療するかどうかを決定すること、CYP3Aインデューサーでの治療を中止することおよびカバジタキセルを患者に投与することを含む、前立腺癌を有する患者の治療方法である。
【0064】
さらに、患者は、セイヨウオトギリソウの摂取も控えるべきである。
【0065】
本発明の幾つかの態様では、カバジタキセルを、AUC約991ng・h/mL(CV34%)が得られる量で投与する。
【0066】
本発明の幾つかの態様では、カバジタキセルを、Cmax約226ng・h/mL(CV107%)が得られる量で投与する。
【0067】
本発明の幾つかの態様では、カバジタキセルを、血漿クリアランス48.5L/h(CV39%)が得られる量で投与する。
【0068】
本発明の1つの態様は、カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、予想される購入者が目視できる位置に、転移性前立腺癌を有する患者におけるカバジタキセルの平均Cmaxが226ng/mL(CV107%)であったことを予想される購入者に通知する文書を含む、包装である。
【0069】
本発明の別の態様は、カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、予想される購入者が目視できる位置に、転移性前立腺癌を有する患者におけるカバジタキセルの平均AUCが991ng・h/mL(CV34%)であったことを予想される購入者に通知する文書を含む、包装である。
【0070】
本発明の別の態様は、カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、予想される購入者が目視できる位置に、カバジタキセルの血漿クリアランスが48.5L/h(CV39%)であることを予想される購入者に通知する文書を含む、包装である。
【0071】
種々の教材を使用して、本明細書中に記載の方法に従った適切な処方、調剤および患者のコンプライアンスを確実にすることができる。例えば、種々の文献および他の資料(例えば、処方情報、添付文書、投薬ガイド、医師情報シート、医療従事者情報シート、医学雑誌の広告および製品のウェブサイトなど)に、カバジタキセル摂取のリスクおよび利点を記載することができる。
【0072】
本発明はまた、カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、前記ラベルが、以下のメッセージの1つ以上:
a)ドセタキセルを含むレジメンで事前に治療されたホルモン不応性転移性前立腺癌を有する患者におけるプレドニゾンと組み合わせたカバジタキセルの有効性および安全性を評価したこと、
b)全部で755人の患者を、プレドニゾンmgの毎日の経口投与と共にカバジタキセル25mg/mを3週間毎に最大10サイクル投与するか、プレドニゾン10mgの毎日の経口投与と共にミトキサントロン12mg/mを3週間毎に最大10サイクル静脈内投与するためにランダム化したこと、または
c)サイクル数の中央値がカバジタキセル群で6であり、ミトキサントロン群で4であったこと
を含む、包装に関する。
【0073】
本発明はまた、カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、前記ラベルが、以下のメッセージの1つ以上:
a)好中球減少性の死亡が報告されていること、
b)好中球減少症をモニタリングするために血球数を頻繁に得るべきであること、または
c)好中球数が1,500細胞/mm以下である場合にカバジタキセルを投与すべきではないこと
を含む包装に関する。
【0074】
本発明はまた、カバジタキセル使用の促進方法であって、該方法は、以下の:
a)好中球減少性の死亡が報告されていること、
b)好中球減少症をモニタリングするために血球数を頻繁に得るべきであること、
c)好中球数が1,500細胞/mm以下である場合にカバジタキセルを投与すべきではないこと、
d)重症過敏症が起こり得ること、
e)重症過敏症を引き起こす可能性があり、重症過敏症には全身性皮疹/紅斑、低血圧および気管支痙攣(brochospasm)が含まれ得ること、
f)激しい反応を引き起こした場合に直ちにカバジタキセルを中止すること、
g)激しい反応を引き起こした場合に直ちにカバジタキセルを中止し、適切な治療を施すこと、または
h)カバジタキセルまたはポリソルベート80を使用して処方した薬物に対する重症過敏反応の病歴を有する患者においてカバジタキセルが禁忌であること
から選択される少なくとも1つのメッセージをレシピエントに伝達する段階を含む、方法に関する。
【0075】
本発明はまた、カバジタキセルを提供する方法であって、前記カバジタキセルを、以下の:
a)好中球減少性の死亡が報告されていること、
b)好中球減少症をモニタリングするために血球数を頻繁に得るべきであること、
c)好中球数が1,500細胞/mm以下である場合にカバジタキセルを投与すべきではないこと、
d)重症過敏症が起こり得ること、
e)重症過敏症を引き起こす可能性があり、重症過敏症には全身性皮疹/紅斑、低血圧および気管支痙攣(brochospasm)を含まれ得ること、
f)激しい反応を引き起こした場合に直ちにカバジタキセルを中止すること、
g)激しい反応を引き起こした場合に直ちにカバジタキセルを中止し、適切な治療を施すこと、または
h)カバジタキセルまたはポリソルベート80を使用して処方した薬物に対する重症過敏反応の病歴を有する患者においてカバジタキセルが禁忌であること
を示す情報と共に提供する方法に関する。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
カバジタキセルを使用した治療またはミトキサントロンに基づいた基準治療のいずれかをそれぞれプレドニゾンまたはプレドニゾロンと組み合わせて患者に投与する臨床試験を行った。
【0077】
より具体的には、ホルモン療法、化学療法および照射療法を以前に受けているが、ドセタキセル治療中または治療後(蓄積用量が225mg/m超)に進行した、RECIST基準によって測定可能な転移性去勢抵抗性転移性前立腺癌または、PSAレベルの上昇または新規の病変、ECOG(米国東海岸癌臨床試験グループ)パフォーマンスステージ0−2および適切な臓器機能(患者は、好中球が1,500細胞/mm超、血小板が100,000細胞/mm超、ヘモグロビンが10g/dL超、クレアチニンが1.5×正常上限(ULN)、総ビリルビンが1×ULN未満、ASTが1.5×ULN未満およびALTが1.5×ULN未満である必要があった。)が認められる測定不可能な疾患を有する18歳超の患者を、ミトキサントロン12mg/mまたはカバジタキセル25mg/mのいずれかとの10mg/日のプレドニゾンの投与(共に3週間毎に投与した。)にランダム化した。
【0078】
最近の6ヶ月以内に鬱血性心不全または心筋梗塞の病歴を有する患者または非制御の心不整脈、狭心症および/または高血圧症を有する患者は、研究に含めなかった。
【0079】
以下の720人の患者を、臨床試験に含めることを計画した:カバジタキセル+プレドニゾン群およびミトキサントロン+プレドニゾン群のそれぞれ360人。755人の患者(年齢の中央値68;84%白人)が実際に参加し、カバジタキセルおよびプレドニゾン/プレドニゾロン群が378人、ミトキサントロンおよびプレドニゾン/プレドニゾロン群が377人であった。治療サイクルの最大数は、カバジタキセルについては10であり、ミトキサントロンについては10であった。治療サイクル数の中央値は、カバジタキセルについては6であり、ミトキサントロンについては4であった。ドセタキセル治療の事前用量の中央値は、カバジタキセル群については576mg/mであり、ミトキサントロン群については529mg/mであった。追跡期間の中央値は12.8ヶ月であった。
【0080】
結果の測定を、算入日と同一の試験によって行う。MRIおよびスパイラルコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを使用することが好ましい。
【0081】
結果を、以下の基準(RECISTガイドラインを参照のこと。)に従って評価する。
【0082】
全生存(OS):研究算入日から死亡日までの期間
完全応答(CR):病変の消失
部分応答(PR):病変の最大直径の少なくとも30%の減少
進行(PD):病変の最大直径の合計の少なくとも20%の増加または1つ以上の新規の病変の出現
安定病態(SD):PRに含めるには不十分な腫瘍の減少およびPDに含めるには不十分な腫瘍の増加。
【0083】
応答基準を最初に確立してから少なくとも4週間後に測定値を確認する。
【0084】
無増悪生存率(PFS)は、進行がPSA、腫瘍または疼痛のいずれかの増加である場合の研究算入日および進行日または死亡日からの期間である。
【0085】
カバジタキセルとプレドニゾンとの組み合わせがタキサンの安全プロフィールを有する十分に許容される組み合わせであることが見出された。この試験で調査した用量(LD2:25mg/mカバジタキセル+10mg/m/日プレドニゾン)で、カバジタキセルを投与した患者は、ミトキサントロンと比較して統計的に有意に長い全生存(OS)を示した(p<0.0001)。ハザード比は、カバジタキセルを支持する0.70(95%Cl.0.59、0.83)であり、死亡リスクの30%減少に相当していた。カバジタキセル群患者の生存期間の中央値は、ミトキサントロン群の12.7ヶ月と比較して15.1ヶ月であった。とりわけ、ECOGパフォーマンスステータス、以前の化学療法レジメンの数および年齢と無関係に生存期間の延長が認められた。ドセタキセル不応性であり、ドセタキセル治療中に進行した3番目の患者で利点も認められた。
【0086】
治療患者に関連するデータを表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
最も早い腫瘍進行と定義した無憎悪生存期間(PFS)、PSAまたは疼痛もミトキサントロン群と比較してカバジタキセル群で統計的に有意に長く(p<0.0001、ハザード比=0.74(95%Cl、0.64、0.86)、無増悪生存率の中央値は1.4ヶ月に対して2.8ヶ月であった。応答比およびPSAについてのPFSおよび腫瘍評価はカバジタキセルを支持して統計的に有意であった一方で、応答比および疼痛についてのPFSは統計的に有意な差異を示さなかった。
【0089】
最も頻繁なグレード3/4の毒性は好中球減少症であり、ミトキサントロン群(58.0%)と比較してカバジタキセル群(81.7%)で頻度が高かった。発熱性好中球減少症の比率はカバジタキセル群で7.5%であり、ミトキサントロン群で1.3%であった。
【0090】
最も一般的な(>20%)グレード1−4の副作用は、貧血、白血球減少症、好中球減少症、血小板減少症、下痢、疲労、嘔気、嘔吐、無力症および便秘であった。
【0091】
最も一般的な(>5%)グレード3−4のカバジタキセル投与患者の副作用は、好中球減少症、白血球減少症、貧血、発熱性好中球減少症、下痢、疲労および無力症であった。
【0092】
以下の表に示すように、リスク因子による下位集団解析および多変量解析は、OSの結果がカバジタキセルを支持することで一貫していることを示した。
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】


【0095】
【表4】

【0096】
両群における治療中止の主な理由は疾患の進行であった(表5)。送達された相対用量強度の中央値は、カバジタキセル群で96.1%およびミトキサントロン群で97.3%であった。カバジタキセル群では、75%超の患者に計画した用量強度の90%超を投与した。全体的に見て、ミトキサントロン治療クールの5.1%は、カバジタキセル治療クールの9.8%と比較して用量が減少した。ミトキサントロンおよびカバジタキセルのそれぞれについて全治療クールの6.3%および7%が9日間以下遅延し、クールの1.6%および2.3%が9日間超遅延した(表5を参照のこと。)。
【0097】
【表5】

【0098】
本研究の結果を、図1、2および3にさらに図示する。
【0099】
[実施例2]
表6は、カバジタキセルで治療した患者の副作用のための投薬量の修正例を示す。
【0100】
【表6】

【0101】
患者が20mg/mでこれらの反応のいずれかを経験し続ける場合、カバジタキセル治療を中止する。
【0102】
[実施例3]
治療中のパフォーマンスステータスおよび疼痛スコア
【0103】
方法
ECOG PS、疼痛測定および鎮痛薬消費を、各治療サイクル前および研究治療の終了時に評価した。
【0104】
疼痛評価:マクギル・メルザック質問表由来の現疼痛強度(PPI)スケール(Melzack R.Pain 1975;1:277−99)。鎮痛薬消費(モルヒネ等価物)由来の平均鎮痛スコア(AS)を、各評価前の1週間計算した。PPIおよびASの曲線下面積(AUC)を、台形式によって計算した。PPIおよびASの累積AUCを、各患者について利用可能なデータの最後のサイクルまで計算した。サイクル1からサイクル10の治療群の平均AUCを比較した。
【0105】
結果
パフォーマンスステータスは、治療期間中のほとんどの患者で安定なままであり、群間で類似していた。図4を参照のこと。
【0106】
全体的に見て、PPIスコアは同程度であった。CbzP群で男性の21.3%およびMP群で18.2%ベースラインから改善された。図5を参照のこと。
【0107】
CbzP群はPPIの平均曲線下面積(AUC)がより低く、特にサイクル7から10中で重症度の低い疼痛が示唆された。図6を参照のこと。
【0108】
鎮痛薬の使用は、群間で同程度であった(より低いASの平均AUCは、より少ない疼痛に対する薬物使用を意味する。)。図7を参照のこと。
【0109】
結論
CbzPでの治療がより長いにもかかわらず、ECOG PSの悪化は認められなかった。
【0110】
現疼痛強度スコアは改善された(CbzPでの男性の21%対MPでの18%アーム)。疼痛スコアの評価により、治療中にCbzP群において重症度の低い疼痛が示唆された。
【0111】
疼痛に対する薬物使用は、群間で同様であった。
【0112】
[実施例4]
母集団薬物動態解析を、170人の固形腫瘍を有する患者において10から30mg/mの用量範囲で毎週または3週間毎にて行った。
【0113】
母集団薬物動態解析に基づいて、カバジタキセル25mg/mの3週間毎の静脈内投与後に、転移性前立腺癌を有する患者の平均Cmaxは226ng/mL(CV107%)であり、注入1時間後に到達された(Tmax)。転移性前立腺癌を有する患者の平均AUCは991ng・h/mL(CV34%)であった。進行性固形腫瘍を有する患者において10から30mg/mで用量比例性からの大きな逸脱は認められなかった。定常状態での分布容積(Vss)は4,864Lであった(BSAの中央値1.84mの患者については2,643L/m)。
【0114】
母集団薬物動態解析に基づいて、転移性前立腺癌を有する患者におけるカバジタキセルの血漿クリアランスは48.5L/h(CV39%;BSAの中央値1.84mの患者については26.4L/h/m)である。1時間の静脈内注入後、カバジタキセルの血漿濃度を、α、βおよびγ半減期がそれぞれ4分、2分および95時間の3区画PKモデルによって記載することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

の化合物であって、
前立腺癌の治療薬として使用するために、プレドニゾンまたはプレドニゾロンと組み合わせた、塩基形態、水和物形態または溶媒和物の形態であり得る、化合物。
【請求項2】
治療される患者がタキサンベースの治療に応じない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
治療される患者がドセタキセルベースのレジメンで以前に治療されている、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前立腺癌が進行性転移性疾患である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前立腺癌が去勢抵抗性前立腺癌またはホルモン不応性前立腺癌である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
アセトン溶媒和物の形態の、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
アセトン溶媒和物が5重量%と8重量%との間、好ましくは5重量%と7重量%との間のアセトンを含む、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
プレドニゾンまたはプレドニゾロンを10mg/日の用量で投与し、15mg/mと25mg/mとの間の用量で投与する、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
25mg/mの用量で投与する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
新規のサイクルとして3週間毎にかかる化合物の投与を繰り返すことを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
サイクル数の中央値が6である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
ドセタキセルベースのレジメンで事前に治療されている去勢抵抗性転移性前立腺癌を有する患者またはホルモン不応性前立腺癌を有する患者の治療薬として使用するためのプレドニゾンと組み合わせた、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
カバジタキセルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
AUC約991ng・h/mL(CV34%)が得られる量で投与される、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
max約226ng・h/mL(CV107%)が得られる量で投与される、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
血漿クリアランス48.5L/h(CV39%)が得られる量で投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
患者中の血球数をモニタリングし、および好中球レベルを測定することをさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記モニタリングすることが患者由来の血液サンプルを採取することを含む、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
好中球数が1,500細胞/mm以下の患者におけるカバジタキセル治療を中止することをさらに含む、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1から19で定義される化合物を含む薬学的組成物。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか一項に定義される化合物で治療した前立腺癌を有する患者における好中球減少症の合併症リスクを軽減する方法であって、患者の治療中に一定間隔で患者中の血球数をモニタリングすること、患者が発熱性好中球減少症または長期の好中球減少症を経験している場合に化合物の用量を軽減すること、患者の好中球数が1,500細胞/mm以下である場合に治療を中止することおよび場合によって、患者の好中球数が1,500細胞/mm以上のレベルに回復する場合に治療を再開することを含む、方法。
【請求項22】
化合物の投与前にG−CSFを患者に投与することをさらに含み、前記患者が好中球減少症の合併症リスクが増加していると見なされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から16のいずれか一項に定義される化合物で治療している前立腺癌を有する患者における重症過敏反応のリスクを軽減する方法であって、患者に薬物を投与してカバジタキセルの投与前に過敏症を防止することを含む、方法。
【請求項24】
ホルモン不応性転移性前立腺癌を有する患者の生存期間を増大させる方法であって、プレドニゾンまたはプレドニゾロンと組み合わせて患者に臨床的に証明された有効量の請求項1から16のいずれか一項に定義される化合物を投与することを含む、方法。
【請求項25】
a)包装材料、
b)カバジタキセル、および
c)該包装材料内に含まれる好中球数が1,500細胞/mm以下の患者にカバジタキセルを投与すべきではないことを示すラベルまたは添付文書
を含む製品。
【請求項26】
a)包装材料、
b)カバジタキセル、および
c)該包装材料内に重症過敏反応が起こり得ることを示すラベルまたは添付文書
を含む製品。
【請求項27】
カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、前記ラベルが、以下のメッセージの1つ以上:
a)ドセタキセルを含むレジメンで事前に治療されたホルモン不応性転移性前立腺癌を有する患者におけるプレドニゾンと組み合わせたカバジタキセルの有効性および安全性を評価したことか、
b)全部で755人の患者を、プレドニゾンmgの毎日の経口投与と共にカバジタキセル25mg/mを3週間毎に最大10サイクル投与するか、プレドニゾン10mgの毎日の経口投与と共にミトキサントロン12mg/mを3週間毎に最大10サイクル静脈内投与するためにランダム化したことか、
c)サイクル数の中央値が該カバジタキセル群で6であり、該ミトキサントロン群で4であったこと
を含む、包装。
【請求項28】
カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、前記ラベルが、以下のメッセージの1つ以上:
a)好中球減少性の死亡が報告されていることか、
b)好中球減少症をモニタリングするために血球数を頻繁に得るべきであることか、
c)好中球数が1,500細胞/mm以下である場合にカバジタキセルを投与すべきではないこと
を含む、包装。
【請求項29】
カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、前記ラベルが、転移性前立腺癌を有する患者におけるカバジタキセルの平均Cmaxが226ng/mL(CV107%)であったことを読み手に通知する文書を含む、包装。
【請求項30】
カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、前記ラベルが、転移性前立腺癌を有する患者におけるカバジタキセルの平均AUCが991ng・h/mL(CV34%)であったことを読み手に通知する文書を含む、包装。
【請求項31】
カバジタキセルおよびラベルを含む包装であって、前記ラベルが、カバジタキセルの血漿クリアランスが48.5L/h(CV39%)であることを読み手に通知する文書を含む、包装。
【請求項32】
カバジタキセル使用の促進方法であって、該方法は、以下の:
a)好中球減少性の死亡が報告されていることか、
b)好中球減少症をモニタリングするために血球数を頻繁に得るべきであることか、
c)好中球数が1,500細胞/mm以下である場合にカバジタキセルを投与すべきではないことか、
d)重症過敏症が起こり得ることか、
e)重症過敏症を引き起こす可能性があり、および重症過敏症には全身性皮疹/紅斑、低血圧および気管支痙攣が含まれ得ることか、
f)激しい反応を引き起こした場合に直ちにカバジタキセルを中止することか、
g)激しい反応を引き起こした場合に直ちにカバジタキセルを中止し、適切な治療を施すことか、
h)カバジタキセルまたはポリソルベート80を使用して処方した薬物に対する重症過敏反応の病歴を有する患者においてカバジタキセルが禁忌であること
から選択される少なくとも1つのメッセージをレシピエントに伝達する段階を含む、方法。
【請求項33】
カバジタキセルを提供する方法であって、前記カバジタキセルを、以下の:
a)好中球減少性の死亡が報告されていることか、
b)好中球減少症をモニタリングするために血球数を頻繁に得るべきであることか、
c)好中球数が1,500細胞/mm以下である場合にカバジタキセルを投与すべきではないことか、
d)重症過敏症が起こり得ることか、
e)重症過敏症を引き起こす可能性があり、および重症過敏症には全身性皮疹/紅斑、低血圧および気管支痙攣が含まれ得ることか、
f)激しい反応を引き起こした場合に直ちにカバジタキセルを中止することか、
g)激しい反応を引き起こした場合に直ちにカバジタキセルを中止し、適切な治療を施すことか、
h)カバジタキセルまたはポリソルベート80を使用して処方した薬物に対する重症過敏反応の病歴を有する患者においてカバジタキセルが禁忌であること
を示す情報と共に提供する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−509394(P2013−509394A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535996(P2012−535996)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054866
【国際公開番号】WO2011/051894
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(500152119)アバンテイス・フアルマ・エス・アー (65)
【Fターム(参考)】