説明

カバノキアレルギーに対するワクチン用ペプチド

本発明は、カバノキアレルギーを予防又は治療するためのペプチドを含む組成物に関し、具体的には、前記アレルギーを予防又は治療するためのペプチドの最適な組合せに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、カバノキ(birch)アレルギーを予防又は治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
T細胞が抗原を認識するには、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と結合した状態でその細胞表面上に抗原断片(ペプチド)を提示する抗原提示細胞(APC)が必要である。T細胞は、その抗原特異的T細胞受容体(TCR)を使用し、APCによって提示された抗原断片を認識する。かかる認識は、免疫系に対するトリガーとして作用し、認識された抗原を根絶するための一連の反応を生じさせる。
【0003】
ヒトなどの生物の免疫系によって外部の抗原が認識されると、場合によっては、アトピー状態として知られる疾患が生じ得る。アトピー状態の例は、喘息、アトピー性皮膚炎及びアレルギー性鼻炎を含むアレルギー性疾患である。この疾患群においては、Bリンパ球が、外部由来の抗原に結合するIgEクラスの抗体を産生し(ヒトにおいて)、該抗原は、この関係においては、これらの分子がアレルギー反応を誘発することから、アレルゲンと称される。アレルゲン特異的IgEの産生は、やはりアレルゲンによって活性化される(アレルゲンに対して特異的である)Tリンパ球に依存する。アレルゲン特異的IgE抗体は、好塩基球やマスト細胞などの細胞の表面に、これらの細胞によるIgEの表面受容体の発現によって結合する。
【0004】
表面に結合したIgE分子がアレルゲンによって架橋されると、これらのエフェクター細胞の脱顆粒が生じ、ヒスタミン、5−ヒドロキシトリプタミンなどの炎症性メディエーター、及びスルフィドロイコトリエン(sulphidoleukotrienes)などの脂質メディエーターの放出が引き起こされる。喘息などのある種のアレルギー性疾患は、IgE依存性の現象に加えて、IgE非依存性の現象を特徴とする。
【0005】
アレルギー性IgE媒介性疾患は、現在、症状の軽減又は予防をもたらす薬剤で治療されている。かかる薬剤の例は、抗ヒスタミン剤、β2作動薬及びグルココルチコステロイドである。また、IgE媒介性疾患には、アレルゲン成分又はアレルゲン抽出物の定期的な注射を含む脱感作手順によって治療されているものもある。脱感作治療は、アレルゲンについてIgEと競合するIgG反応を誘導し得、又はアレルゲンに対するIgEの合成を阻止する特異的サプレッサーT細胞を誘導し得る。この形態の治療は、必ずしも効果的であるわけではなく、深刻な副作用、特に全身性アナフィラキシーショックを誘発する危険性をもたらす。これは直ちに認識されアドレナリンで治療されない限り致命的になり得る。他の外来抗原に対する免疫反応性を変化させることなく、又はアレルギー反応自体を誘発することなく、特定のアレルゲンに対する望まれないアレルギー性免疫反応を減少又は解消する治療的処置は、アレルギーの個体に非常に有益となる。
【0006】
花粉アレルゲンは、ヒト及び動物におけるアレルギー性疾患の主因として認識されており、その例として、喘息、アレルギー性鼻炎及びアレルギー性皮膚炎が挙げられる。米国の人口の少なくとも10%は、何度も様々な度合いで花粉アレルギーに罹患している。樹木花粉に存在するタンパク質、特にブナ目(order Fagales)の樹木、例えば、カバノキ、ハンノキ(alder)、ハシバミ(hazel)、シデ(hornbeam)、オーク(oak)などに由来するものは特に重要である。これらの種のうち、カバノキ花粉アレルゲンは、樹木花粉に対するアレルギー反応のイニシエーターとして最も頻度が高い(Jarolim et al:Allergy 1989;44(6):385−95)。例えば、枯草熱(hayfever)患者のおよそ25%は、カバノキ花粉に反応する。枯草熱は、くしゃみ、鼻水及び目のかゆみを特徴とする一種の季節性アレルギーの一般用語である。樹木花粉アレルギーは、典型的には4月頃(北半球において)に生じるカバノキ花粉シーズンを伴う春の間に最も深刻となる。しかし、ハンノキ、ハシバミなどのいくつかの関連したタイプの樹木は、早ければ1月(北半球)に空中に花粉を放出できる。これらの後、3月にニレ(elm)、ヤナギ(willow)及びセイヨウトネリコ(ash)が続き、4月の終わり及び5月の初めにオークが続く。
【0007】
米国の成人において、枯草熱は5番目に主要な慢性疾患であり、仕事の欠勤の主因であり、毎年ほぼ400万の欠勤日又は就業損失日をもたらし、失われた総生産力として7億ドル超の総経費が生じていると算出されている。アレルギーはまた、子供においても最も高い頻度で報告される慢性病態であり、40%超の子供について活動を制限している。毎年、米国において、アレルギーは1700万件の外来診療患者を占め、枯草熱などの季節性アレルギーはこれらアレルギー診療の半分超を占める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、治療的又は予防的治療は、樹木アレルギーを患っているか、又は患う危険性のあるヒトに対して非常に有益となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明者らは、カバノキ種の花粉中の主要なアレルゲンに由来する特定のペプチド断片が、これらのアレルゲンに対して個体を脱感作するのに有用であることを発見した。カバノキ(科名:Betulucaea)のBet v2、Bet v1、Bet v3、Bet v4、Bet v6及びBet v7に由来するペプチド断片が特に有用である。
【0010】
本発明のペプチドは、ペプチド−MHC相互作用を予測するインシリコ解析、及びMHCクラスII結合アッセイの使用により、MHCクラスII結合性T細胞エピトープとして選択された。相同性によって、さらなるエピトープを同定した。
【0011】
ペプチド免疫に基づく脱感作への取り組みに伴う困難性は、免疫化に使用されるペプチドのための基準として、アレルゲンの適切なサイズ及び領域をどのように選択するかにある。選択されるペプチドのサイズは極めて重要である。ペプチドが小さすぎる場合には、ワクチンは免疫反応を誘導するのに効果的ではないだろう。ペプチドが大きすぎる場合、又は抗原全体が個体に導入される場合には、アナフィラキシーなどの副作用を誘導する危険性があり、これは致命的ともなり得る。
【0012】
本発明のポリペプチドは、T細胞特異性を保持するように選択されているものの、分子全体のIgE結合性エピトープのコンフォメーションを保持することを可能にする重要な三次構造を有さないほどに十分に小さなサイズである。従って、本発明のポリペプチドは、マスト細胞や好塩基球などの細胞上での、隣接する特異的IgE分子の有意な架橋を誘導せず、結果として、有意なヒスタミン放出を引き起こさない。
【0013】
本発明の利点は、ペプチドが主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子を広く標的化できることである。T細胞受容体(TCR)は、その特異性において非常に多様性がある。多様性は、抗体分子と同様に、細胞内の遺伝子組換え現象を介して生じる。TCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)遺伝子によりコードされる分子と結合した短鎖ペプチドの形態で抗原を認識する。これらの遺伝子産物は、移植時に使用される「組織型」を生じさせる分子と同一であり、ヒト白血球型抗原分子(HLA)とも称され、これらの用語は交換可能に使用され得る。個々のMHC分子はペプチド結合溝を有し、この溝は、その形状及び電荷に起因して、限られたペプチドグループのみを結合させることができる。1つのMHC分子によって結合されたペプチドは、他のMHC分子によって必ずしも結合されない場合がある。
【0014】
抗原やアレルゲンなどのタンパク質分子が、Bリンパ球、樹状細胞、単球、マクロファージなどの抗原提示細胞に取り込まれる場合、当該分子は細胞内で酵素的に分解される。分解プロセスにより分子のペプチド断片が生じ、それらが適切なサイズ、電荷及び形状である場合には、次いで特定のMHC分子のペプチド結合溝内で結合し得、その後、抗原提示細胞の表面上に提示され得る。ペプチド/MHC複合体が十分な数で抗原提示細胞表面上に存在する場合には、次いで、それらは、適切なペプチド/MHC−特異的T細胞受容体を有するT細胞を活性化し得る。
【0015】
MHCの多型性に起因して、ヒトなどの非近交系集団の個体は、その細胞表面上に、種々の組合せのMHC分子を発現することになる。MHC分子が異なれば、それは、ペプチドのサイズ、電荷及び形状に基づき、同じ分子に由来する異なるペプチドに結合することができるため、個体が異なれば、そのMHC分子上に結合された異なるレパートリーのペプチドが提示されることになる。ヒトなどの非近交系集団における普遍的なMHC結合性ペプチドエピトープの同定は、近交系動物(ある系統の実験用マウスなど)におけるものよりも困難である。個体間のMHC発現の差異、並びにこれがもたらすペプチドの結合及び提示における固有の相違に基づけば、ヒトの脱感作療法に有用となる単一のペプチドを同定することができる可能性は低い。
【0016】
しかし、本発明のペプチドは、複数の異なるMHC分子を標的とすることによってヒト集団にわたって広範囲の効果を提供する。そのため、本発明のペプチドを用いて製剤化されたワクチンは広範な有用性を有する。従って、本発明は、
(i)SEQ ID NO:74(BIR12B;AKYMVIQGEPGRVIRGK)、SEQ ID NO:72(BIR11;FPQFKPQEITGIMK)、SEQ ID NO:71(BIR10;GSVWAQSSSFPQFK)、SEQ ID NO:73(BIR12A;PTGMFVAGAKYMVIQGR)、SEQ ID NO:75(BIR13;IKYMVIQGEAGAVIRGK)及びSEQ ID NO:76(BIR14;EAGAVIRGKKGSGGIT)のポリペプチドの少なくとも1つ、又はそれらのいずれかの変異体、並びに
(ii)SEQ ID NO:53(Bir02J;PAARMFKAFILEGDKLVPK)、SEQ ID NO:48(Bir01I;FNYETETTSVIPAARK)、SEQ ID NO:54(Bir04;PGTIKKISFPEGFPFKYV)、SEQ ID NO:67(Bir09;ETLLRAVESYLLAHSDAY)、SEQ ID NO:60(BIR07;SNEIKIVATPDGGSILK)及びSEQ ID NO:63(Bir07C;SNEIKIVATPEGGSILK)のポリペプチドの少なくとも1つ、又はそれらのいずれかの変異体
[前記変異体は、
(I)(i)若しくは(ii)で特定された対応するポリペプチドの配列を含む、30アミノ酸長までのより長いポリペプチド、又は
(II)(i)若しくは(ii)で特定された対応するポリペプチドの配列と少なくとも65%の相同性を有する配列(この配列は、前記対応するポリペプチドに対して寛容化することができる)を含む、9〜30アミノ酸長のポリペプチド;又は
(III)(i)若しくは(ii)で特定された対応するポリペプチドの配列の少なくとも9個連続したアミノ酸配列、若しくは前記少なくとも9個連続したアミノ酸と少なくとも65%の相同性を有する配列(この少なくとも9個連続したアミノ酸の配列、若しくは相同配列は、前記対応するポリペプチドに対して寛容化することができる)を含む、9〜30アミノ酸長のポリペプチド
である]
を含む、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に使用するのに適した組成物を提供する。
【0017】
本発明はさらに、
(a)Bir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体;
(b)Bir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体;
(c)Bir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体;
(d)Bir04(PGTIKKISFPEGFPFKYV)又はその変異体;
(e)Bir09(ETLLRAVESYLLAHSDAY)又はその変異体;
(f)Bir16A(AERERIFKRFDANGEGK)又はその変異体;
(g)Bir07(SNEIKIVATPDGGSILK)又はその変異体;
(h)Bir07C(SNEIKIVATPEGGSILK)又はその変異体;
(i)Bir011(FPQFKPQEITGIMK)又はその変異体;
(j)Bir15(SLNTLRLRRIFDLFDK)又はその変異体;
[前記変異体は、
(I)(a)〜(j)で特定された対応するポリペプチドの配列を含む、30アミノ酸長までのより長いポリペプチド、又は
(II)(a)〜(j)で特定された対応するポリペプチドの配列と少なくとも65%の相同性を有する配列(この配列は、前記対応するポリペプチドに対して寛容化することができる)を含む、9〜30アミノ酸長のポリペプチド;又は
(III)(a)〜(j)で特定された対応するポリペプチドの配列の少なくとも9個連続したアミノ酸の配列、若しくは前記少なくとも9個連続したアミノ酸と少なくとも65%の相同性を有する配列(この少なくとも9個連続したアミノ酸の配列、若しくは相同配列は、前記対応するポリペプチドに対して寛容化することができる)を含む、9〜30アミノ酸長のポリペプチド
である]
から選択される少なくとも3つの異なるポリペプチドを含む、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に使用するのに適した組成物を提供する。
【0018】
(本明細書中で言及する配列の説明)
SEQ ID NO:1〜80は、表1〜8に記載のように、本発明のポリペプチド配列を提供する。SEQ ID NO:1〜34及び45〜70は、Bet v1に由来するペプチドに対応する。SEQ ID NO:71〜76は、Bet v2に由来するペプチドに対応する。SEQ ID NO:35、36及び77は、Bet v3に由来するペプチドに対応する。SEQ ID NO:37〜39、78及び79は、Bet v4に由来するペプチドに対応する。SEQ ID NO:40〜43及び80は、Bet v6に由来するペプチドに対応する。SEQ ID NO:44は、Bet v7に由来するペプチドに対応する。
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、寛容化に使用することができるペプチドに関する。かかるペプチドは、SEQ ID NO:1〜80のいずれかに示される配列を含むか、該配列からなるか、又は実質的に該配列からなってよい。これら特異的ペプチドの変異体も使用されてよい。変異体は、SEQ ID NO:1〜80のいずれか、又はSEQ ID NO:1〜80のいずれかの相同体のいずれかの断片である配列を含むか、該配列からなるか、又は実質的に該配列からなってよい。
【0020】
本発明はまた、寛容化によるカバノキアレルギーの予防又は治療に使用するための、本発明のポリペプチドを含む製品及び製剤、並びに本発明のポリペプチドを発現することができるポリヌクレオチドを含む組成物、製品及びベクターも提供する。典型的には、かかる寛容化は、SEQ ID NO:1〜80のいずれかに存在するエピトープ(例えば、MHCクラスII結合性T細胞エピトープ)に対するものとなる。
【0021】
樹木種
カバノキ科(Betulaceae)に由来する樹木の種は、一般にはカバノキ(birch)として知られ、世界中において、樹木アレルギー、特に、枯草熱などの樹木花粉と関連するアレルギーの大部分に関与する。他の重要な樹木種としては、ハンノキ、ハシバミ、シデ及びオークが挙げられる。
【0022】
例えばシダレカンバ(Silver Birch)(ベツラ・ペンデュラ(Betula pendula))などのカバノキ樹木は、およそ3.5からおよそ7の土壌pHを有する、広範な生息環境に耐性がある。それらは、ヨーロッパの大部分及びアジアの一部を原産とするが、世界中に広がっており、北半球の温帯、寒帯及び北極帯(arctic zones)、特にカナダ及び北アメリカの他の地域で見られる。典型的には、カバノキ樹木は、4月と5月の間に開花する(北半球)。
【0023】
カバノキ花粉アレルゲンのペプチド断片
本発明者らは、MHCクラスII結合性T細胞エピトープを含む、特定のカバノキ花粉アレルゲンタンパク質の領域を同定した。本発明者らはまた、主要なカバノキ花粉アレルゲン内のMHCクラスII結合性T細胞エピトープに対応する領域が、前記アレルゲンの異なるアイソフォーム間で高度に保存されていることも示す。この情報に基づき、各タンパク質の関連領域に由来するペプチドは、そのタンパク質の全てのアイソフォームに対する寛容化によりカバノキアレルギーを予防又は治療するのに適している。
【0024】
本発明のペプチドは、タンパク質アレルゲンBet v2(SEQ ID NO:71〜76)、Bet v1(SEQ ID NO:1〜34及び45〜70)、Bet v3(SEQ ID NO:35、36及び77)、Bet v4(SEQ ID NO:37〜39、78及び79)、Bet v6(SEQ ID NO:40〜43及び80)及びBet v7(SEQ ID NO:44)に直接由来するか、又はその相同体により得られる。「ペプチド」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。上記タンパク質はまた、本明細書において「アレルゲン」とも称される。表1〜7には、本発明のペプチドの配列(SEQ ID NO:1〜80)を記載し、各ペプチドが由来する親タンパク質を示す。本発明の組成物は、SEQ ID NO:1〜80から選択される少なくとも1つのポリペプチド、又はそれらのいずれかの変異体を含む。
【0025】
換言すれば、本発明は、SEQ ID NO:1〜80のいずれかから選択される少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの異なるポリペプチド又はそれらのいずれかの変異体を含む、寛容化によるカバノキアレルギーの予防又は治療に使用するための組成物を提供する。選択したポリペプチドのいずれもが、SEQ ID NO:1〜80のいずれか1つにより定義される元の配列と同一の配列の変異体でないことが好ましい。換言すれば、3つ又は4つのポリペプチドのそれぞれは、SEQ ID NO:1〜80のいずれか1つにより定義される、異なる元の基準配列であるか、又はSEQ ID NO:1〜80のいずれか1つにより定義される、異なる元の基準配列の変異体であることが好ましい。
【0026】
好ましくは、組成物は、2つ以上のアレルゲンに由来するポリペプチドを含む。例えば、組成物は、Bet v2に由来する1つ以上のポリペプチド又はその変異体と、Bet v1に由来する1つ以上のポリペプチド又はその変異体とを含んでよい。追加のポリペプチドには、Bet v3、Bet v4、Bet v6及び/又はBet v7に由来するものが任意選択で含まれていてもよい。従って、ある実施態様において、組成物は、
(i)SEQ ID NO:74、72、71、73、75及び76(Bet v2に由来するもの)のポリペプチドの少なくとも1つ、又は本明細書で定義したとおりのそれらのいずれかの変異体;並びに
(ii)SEQ ID NO:1〜34及び45〜70(Bet v1に由来するもの)のポリペプチドの少なくとも1つ、又はそれらのいずれかの変異体;並びに、任意選択で
(iii)以下のポリペプチドの少なくとも1つ:
(a)SEQ ID NO:35、36及び77(Bet v3に由来するもの)、若しくは本明細書で定義するとおりのそれらのいずれかの変異体;並びに/又は
(b)SEQ ID NO:37〜39、78及び79(Bet v4に由来するもの)、若しくは本明細書で定義するとおりのそれらのいずれかの変異体;並びに/又は
(c)SEQ ID NO:40〜43及び80(Bet v6に由来するもの)、若しくは本明細書で定義するとおりのそれらのいずれかの変異体;並びに/又は
(d)SEQ ID NO:44(Bet v7に由来するもの)、若しくは本明細書で定義するとおりのそれらの変異体、
を含む。
【0027】
従って、組成物は、上記で定義されるような、グループ(i)から選択される1つ以上のポリペプチド、グループ(ii)から選択される1つ以上のポリペプチド、及び任意選択でグループ(iii)(a)〜(d)に由来する1つ以上のポリペプチドの任意の組合せを含んでいてもよい。グループ(i)、(ii)、及び(iii)(a)〜(d)は、上記のように、異なるBetアレルゲンに由来するペプチドに対応する。異なるBetアレルゲンに由来するポリペプチドの組合せは、2つ以上のカバノキ花粉アレルゲンに由来する寛容化エピトープ(tolerising epitopes)を提供することにより、一般集団において観察される広範なカバノキ花粉アレルギーを考慮に入れてよい。
【0028】
上記で定義されるように選択される組成物の非限定的な例として、
SEQ ID NO:74、72、71、73、75及び76から選択される1つ、2つ若しくはそれ以上のポリペプチド又はそれらのいずれか変異体、グループ(ii)から選択される少なくとも1つのポリペプチド又はそれらのいずれかの変異体、及び任意選択でグループ(iii)(a)及び/又は(b)から選択される少なくとも1つのポリペプチド又はその変異体;又は
SEQ ID NO:74、72、71、73、75及び76から選択される1つ、2つ若しくはそれ以上ポリペプチド又はそれらのいずれかの変異体、グループ(ii)から選択される2つ、3つ、4つ若しくは5つのポリペプチド又はそれらのいずれかの変異体、及び任意選択でグループ(iii)(a)及び/又は(b)から選択される少なくとも1つのポリペプチド又はその変異体;又は
SEQ ID NO:74、72、71、73、75及び76から選択される1つ、2つ若しくはそれ以上のポリペプチド又はそれらのいずれかの変異体、グループ(ii)から選択される2つ、3つ、4つ若しくは5つのポリペプチド又はそれらのいずれかの変異体、及びグループ(iii)(b)に由来する少なくとも1つのポリペプチド、
が挙げられる。
【0029】
一実施態様において、組成物は、
(i)SEQ ID NO:74(BIR12B;AKYMVIQGEPGRVIRGK)、SEQ ID NO:72(BIR11;FPQFKPQEITGIMK)、SEQ ID NO:71(BIR10;GSVWAQSSSFPQFK)、SEQ ID NO:73(BIR12A;PTGMFVAGAKYMVIQGR)、SEQ ID NO:75(BIR13;IKYMVIQGEAGAVIRGK)及びSEQ ID NO:76(BIR14;EAGAVIRGKKGSGGIT)のポリペプチドの少なくとも1つ、又はそれらのいずれかの変異体、並びに
(ii)SEQ ID NO:53(Bir02J;PAARMFKAFILEGDKLVPK)、SEQ ID NO:48(Bir01I;FNYETETTSVIPAARK)、SEQ ID NO:54(Bir04;PGTIKKISFPEGFPFKYV)、SEQ ID NO:67(Bir09;ETLLRAVESYLLAHSDAY)、SEQ ID NO:60(BIR07;SNEIKIVATPDGGSILK)及びSEQ ID NO:63(Bir07C;SNEIKIVATPEGGSILK)のポリペプチドの少なくとも1つ、又はそれらのいずれかの変異体、
を含む。別の実施態様において、組成物は、上記で選択されない、(i)若しくは(ii)の少なくとも1つの追加のポリペプチド、又はその変異体をさらに含む。別の実施態様において、組成物は、SEQ ID NO:77(BIR15;SLNTLRLRRIFDLFDK)若しくはSEQ ID NO:78(BIR16A;AERERIFKRFDANGEGK)の少なくとも1つの追加のポリペプチド、又はそれらのいずれかの変異体をさらに含む。好ましい実施態様において、組成物は、
(a)ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体;
(b)ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体;及び
(c)ポリペプチドBir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体;
を含む。
【0030】
特に好ましい実施態様において、組成物は、ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体、ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体、ポリペプチドBir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体、ポリペプチドBir04(PGTIKKISFPEGFPFKYV)又はその変異体、ポリペプチドBir09(ETLLRAVESYLLAHSDAY)又はその変異体、ポリペプチドBir07C(SNEIKIVATPEGGSILK)又はその変異体、及びポリペプチドBir16A(AERERIFKRFDANGEGK)又はその変異体を含み、任意選択でさらなるポリペプチドを含まなくてもよい。
【0031】
さらに特に好ましい実施態様において、組成物は、ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体、ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体、ポリペプチドBir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体、ポリペプチドBir04(PGTIKKISFPEGFPFKYV)又はその変異体、ポリペプチドBir07C(SNEIKIVATPEGGSILK)又はその変異体、ポリペプチドBir16A(AERERIFKRFDANGEGK)又はその変異体、及びポリペプチドBir09B(KEMGETLLRAVESYLLAHS)又はその変異体を含み、任意選択でさらなるポリペプチドを含まなくてもよい。
【0032】
さらに特に好ましい実施態様において、組成物は、ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体、ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体、ポリペプチドBir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体、ポリペプチドBir04(PGTIKKISFPEGFPFKYV)又はその変異体、ポリペプチドBir07C(SNEIKIVATPEGGSILK)又はその変異体、及びポリペプチドBir16A(AERERIFKRFDANGEGK)又はその変異体を含み、任意選択でさらなるポリペプチドを含まなくてもよい。
【0033】
本発明はまた、本発明のペプチド、変異体又は組成物を含む製品も提供する。本発明は、
(i)SEQ ID NO:74(BIR12B;AKYMVIQGEPGRVIRGK)、SEQ ID NO:72(BIR11;FPQFKPQEITGIMK)、SEQ ID NO:71(BIR10;GSVWAQSSSFPQFK)、SEQ ID NO:73(BIR12A;PTGMFVAGAKYMVIQGR)、SEQ ID NO:75(BIR13;IKYMVIQGEAGAVIRGK)及びSEQ ID NO:76(BIR14;EAGAVIRGKKGSGGIT)のポリペプチドの少なくとも1つ、又は(I)〜(III)で定義したとおりのそれらのいずれかの変異体、並びに
(ii)SEQ ID NO:53(Bir02J;PAARMFKAFILEGDKLVPK)、SEQ ID NO:48(Bir01I;FNYETETTSVIPAARK)、SEQ ID NO:54(Bir04;PGTIKKISFPEGFPFKYV)、SEQ ID NO:67(Bir09;ETLLRAVESYLLAHSDAY)、SEQ ID NO:60(BIR07;SNEIKIVATPDGGSILK)、及びSEQ ID NO:63(Bir07C;SNEIKIVATPEGGSILK)のポリペプチドの少なくとも1つ、又は(I)〜(III)で定義したとおりのそれらのいずれかの変異体
を含み、異なるポリペプチドのそれぞれが、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に、同時に、別々に、又は連続的に使用するためのものである、製品を提供する。
【0034】
SEQ ID NO:1〜80のポリペプチドの変異体について本明細書で言及する。SEQ ID NO:1〜80のいずれかの変異体は、典型的には機能的である。機能的とは、変異体が、
(a)SEQ ID NO:1〜80の対応するポリペプチドと同一のMHCクラスII分子に結合する配列を含むか、若しくは該配列からなるか;及び/又は
(b)SEQ ID NO:1〜80の対応するポリペプチドを認識するT細胞により認識される配列を含むか、若しくは該配列からなるか;及び/又は
(c)カバノキアレルギーを有する個体において、遅発相反応(late phase response)を誘導できるか;及び/又は
(d)対応するポリペプチドに対して個体を寛容化できる、
ものであることを意味する。
【0035】
T細胞による認識は、ペプチド又は変異体が、T細胞サンプル中においてT細胞増殖を誘導できるかを測定することにより試験されてよい。T細胞サンプルがカバノキアレルギーを有する個体から得られた場合、遅発相反応の誘導をこのような方法で試験してもよい。T細胞増殖誘導試験の方法は当分野で周知であり、かかる方法の1つを実施例8にて例証する。
【0036】
SEQ ID NO:1〜80の変異体は短縮化(truncation)、例えば、ポリペプチドのN末端及び/又はC末端から1つ以上のアミノ酸を除去することなどによって得られる断片であってよい。断片は、T細胞エピトープを構成する核となる9個のアミノ酸が実質的に破壊されていない限り、1つ以上の内部欠失によっても生じ得る。
【0037】
例えば、SEQ ID NO:1の変異体はSEQ ID NO:1の断片、すなわちより短い配列を含んでよい。これは、SEQ ID NO:1のN末端又はC末端から1つ、2つ、3つ又は4つのアミノ酸が欠失したものを含んでよい。かかる欠失はSEQ ID NO:1の両端から生じ得る。
【0038】
SEQ ID NO:1の変異体は、SEQ ID NO:1の端部(1つ又は複数)を超えて伸びる、さらなるアミノ酸(例えば、ペプチドが由来する親タンパク質の配列に由来する)を含んでよい。ポリペプチドの変異体は、典型的には、SEQ ID NO:1〜80の対応するポリペプチドの配列を含む20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30アミノ酸長までのより長いポリペプチドであってよい。
【0039】
変異体は上記の欠失及び付加を組み合わせたものを含んでよい。例えば、アミノ酸はSEQ ID NO:1の一方の端部から欠失してもよいが、全長の親タンパク質配列に由来するさらなるアミノ酸が、SEQ ID NO:1の他方の端部に付加されてもよい。上記変異体についての考察と同じ考察がSEQ ID NO:2〜80にも当てはまる。
【0040】
或いは、変異体は、SEQ ID NO:1〜80の対応するポリペプチドの配列と少なくとも65%の配列同一性を有する配列を含む、9〜30、11〜20、又は13〜17アミノ酸長のポリペプチドであってよい。より好ましくは、適切な変異体は、SEQ ID NO:1〜80の対応するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%のアミノ酸同一性を有して(comprise)よい。
【0041】
変異体は、SEQ ID NO:1〜80の対応するポリペプチドの配列の少なくとも9個(例えば、少なくとも10、11、12又は13個)又はそれ以上連続したアミノ酸と少なくとも65%の配列同一性である配列を含むか、又は該少なくとも65%の配列同一性を有する配列を含む、9〜30、11〜20又は13〜17アミノ酸長のポリペプチドであってよい。これらの連続したアミノ酸は、典型的には、例えば、本明細書で言及するMHC分子のいずれかと結合するMHCクラスIIエピトープを含んでよい。
【0042】
変異体ペプチドは、SEQ ID NO:1〜80のいずれかのアミノ酸配列、又はその断片から1つ以上のアミノ酸が置換されたものを含んでよい。変異体ペプチドは、SEQ ID NO:1〜80のいずれかの少なくとも9個以上連続したアミノ酸と少なくとも65%の配列同一性を有する配列を含んでよい。より好ましくは、適切な変異体は、SEQ ID NO:1〜80のいずれかの少なくとも9個連続したアミノ酸と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%のアミノ酸同一性を有してよい。このアミノ酸同一性レベルは、ペプチドのどの部分で見られてもよいが、核となる領域であることが好ましい。アミノ酸同一性レベルは、少なくとも9個連続したアミノ酸にわたるものであるが、比較ペプチドのサイズによっては、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、又は少なくとも16個若しくは少なくとも17個のアミノ酸であってもよい。従って、上記で特定したレベルの同一性はいずれも、配列の全長にわたるものであってもよい。
【0043】
アミノ酸配列との関連で、「配列同一性」とは、以下のパラメータによりClustalW(Thompsonら、1994、上掲)を用いて評価した場合に、示された値を有する配列をいう:
ペアワイズアラインメントパラメータ−方法:正確(accurate)、マトリクス:PAM、ギャップオープンペナルティ(Gap open penalty):10.00、ギャップ伸長ペナルティ(Gap extension penalty):0.10;マルチプルアラインメントパラメータ−マトリクス:PAM、ギャップオープンペナルティ:10.00、遅延の同一性%(% identity for delay):30、ペナライズエンドギャップ(Penalize end gaps):オン、ギャップ分離距離(Gap separation distance):0、ネガティブマトリクス(Negative matrix):なし、ギャップ伸長ペナルティ:0.20、残基特異的ギャップペナルティ(Residue−specific gap penalties):オン、親水性ギャップペナルティ(Hydrophilic gap penalties):オン、親水性残基:GPSNDQEKR。特定の残基における配列同一性は、単に誘導体化されているだけである同一の残基を含むことが意図される。
【0044】
変異体ペプチドは、SEQ ID NO:1〜80のいずれかから1個、2個、3個、4個、5個若しくはそれよりも多くのアミノ酸、又は10個までのアミノ酸を置換したものを含んでよい。好ましくは、置換変異体は、1つ以上のアミノ酸を同数のアミノ酸で置換したもの、及び保存アミノ酸を置換したものを含む。例えば、アミノ酸は、類似した性質を有する別のアミノ酸、例えば、別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸又は別の脂肪族アミノ酸で置換することができる。適切な置換体(substituent)を選択するために使用することができる20種の主要なアミノ酸のいくつかの性質は、以下のとおりである:
【0045】
【表1】

【0046】
さらなる変異体には、天然に存在するアミノ酸の代わりに、配列中に現れているアミノ酸がその構造類似体であるものが含まれる。配列中で使用されるアミノ酸はまた、ペプチドの機能が著しく悪影響を受けない限り、修飾、例えば標識されていてもよい。ペプチドが、SEQ ID NO:1〜80のいずれかの配列又はその断片と異なる配列を有する場合には、置換は、配列の全長にわたって、SEQ ID NO:1〜80のいずれかの配列の内部、又はSEQ ID NO:1〜80のいずれかの配列の外部で起こってもよい。例えば、付加、欠失、置換、修飾などの本明細書に記載の変異は、SEQ ID NO:1〜80のいずれかの配列の内部で起こってもよい。変異体ペプチドは、1個、2個、3個、4個又はそれよりも多くのアミノ酸の置換がなされたSEQ ID NO:1〜80のいずれかのアミノ酸配列を含んでいてもよく、又は実質的に該アミノ酸配列からなっていてもよい。変異体ペプチドは、SEQ ID NO:1〜80のいずれかよりも大きい親タンパク質の断片を含んでいてもよい。この実施態様において、置換、修飾などの本明細書に記載の変異は、SEQ ID NO:1〜80のいずれかの配列の内部及び/又は外部で起こってもよい。例えば、1つ以上の正に荷電した残基が、SEQ ID NO:1〜80のいずれかのペプチドの天然配列のN末端及び/又はC末端に付加されてもよい。
【0047】
本発明の変異体ペプチドは9〜30アミノ酸長(9及び30を含む)である。好ましくは、それらは9〜20アミノ酸長であってもよく、またより好ましくは13〜17アミノ酸長であってもよい。該ペプチドは、SEQ ID NO:1〜80のいずれか1つのペプチド配列と同じ長さであってもよい。
【0048】
該ペプチドは、例えば、タンパク質分解による切断によって、ポリペプチドアレルゲンから化学的に誘導されていてもよく、又は例えば、ポリペプチドアレルゲンのアミノ酸配列を利用し、該配列に基づきペプチドを合成することによって、ポリペプチドアレルゲンから知的な意味(intellectual sense)で誘導されていてもよい。ペプチドは当分野で周知の方法を用いて合成してもよい。
【0049】
「ペプチド」という用語は、アミノ酸残基がペプチド(−CO−NH−)結合によって連結されている分子だけでなく、ペプチド結合が逆向きにされた分子も含む。かかるレトロインベルソ(retro−inverso)ペプチド模倣体は、例えば、Meziereら(1997)J.Immunol.159,3230〜3237に記載された方法などの当分野で公知の方法を用いて調製されてよい。このアプローチは、側鎖の配向ではなく主鎖に関する変化を含む疑似ペプチドを調製することを含む。Meziereら(1997)は、少なくともMHCクラスII及びヘルパーT細胞応答について、こうした疑似ペプチドが有用であることを示している。CO−NHペプチド結合の代わりにNH−CO結合を含むレトロインバース(retro−inverse)ペプチドは、タンパク質分解に対して遥かに耐性がある。
【0050】
同様に、アミノ酸残基の炭素原子間の間隔を保持する適切なリンカー部分が使用されることを条件として、ペプチド結合を完全になくすことができ、該リンカー部分がペプチド結合と実質的に同じ電荷分布及び実質的に同じ平面性を有している場合、特に好ましい。エキソ型タンパク質分解消化(exoproteolytic digestion)に対する感受性を減少させる助けとなるように、ペプチドをそのN末端又はC末端でブロックすることが好都合であり得ることも理解されるであろう。例えば、ペプチドのN末端アミノ基をカルボン酸と反応させることによって保護することができ、ペプチドのC末端カルボキシル基をアミンと反応させることによって保護することができる。修飾の他の例としては、グリコシル化及びリン酸化が挙げられる。別の可能な修飾は、R又はKの側鎖アミンの水素をメチレン基で置き換えてもよい(−NH2(R)−NH(Me)又は−N(Me)2)。
【0051】
本発明によるペプチドの類似体は、ペプチドのインビボの半減期を増加又は減少させるペプチド変異体も含んでよい。本発明に従って使用される、ペプチドの半減期を増加させることが可能な類似体の例としては、該ペプチドのペプトイド類似体、該ペプチドのD−アミノ酸誘導体及びペプチド−ペプトイドハイブリッドが挙げられる。本発明に従って使用される、変異体ポリペプチドのさらなる実施態様は、D−アミノ酸形態のポリペプチドを含む。L−アミノ酸ではなくD−アミノ酸を用いてポリペプチドを調製することで、通常の代謝過程によるかかる薬剤の望まれない分解が大きく減少し、その投与頻度とともに、投与することが必要な薬剤量が減少する。
【0052】
本発明によって提供されるペプチドは、親タンパク質鎖をコードする一次転写物の選択的スプライシングによって生成するmRNAによってコードされる親タンパク質のスプライス変異体に由来していてもよい。ペプチドはまた、少なくともアレルゲンのMHC結合特性を保持する、親タンパク質のアミノ酸変異体、グリコシル化変異体及び他の共有結合誘導体に由来していてもよい。例示的な誘導体としては、本発明のペプチドが、置換、化学的手段、酵素的手段又は他の適切な手段により、天然に存在するアミノ酸以外の部分について共有結合的に修飾されている分子が挙げられる。さらに、種々のダニにおいて見出される親タンパク質の天然に存在する変異体が挙げられる。かかる変異体は、対立遺伝子変異体によってコードされていてもよく、また選択的スプライシング変異体を表していてもよい。
【0053】
上記変異体は、ペプチドの合成の間に若しくは産生後の修飾により、又はペプチドが組換え型である場合には部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発若しくは核酸の酵素による切断及び/若しくはライゲーションという公知の技術を用いて調製されてよい。
【0054】
本発明の実施態様のいずれかにおいて、本明細書に記載の変異体の典型的な例は以下のとおりであってよい:
− Bir01Iの変異体は、Bir01F(FNYETEATSVIPAARK)、Bir01G(FNYEIEATSVIPAARK)若しくはBir01H(FNYEIETTSVIPAARK)であり;及び/又は
− Bir02Jの変異体は、Bir02E(PAARLFKAFILEGDTLIPK)、Bir02G(PAARLFKAFILEGDNLIPK)、Bir02I(PAARMFKAFILD)若しくはBir02D(PAARMFKAFILDGDKLVPK)であり;及び/又は
− Bir09の変異体は、Bir09A(GETLLRAVESYLLAHS)、Bir09B(KEMGETLLRAVESYLLAHS)若しくはBir09C(KEKGETLLRAVESYLLAHS)から選択され;及び/又は
− Bir16Bの変異体は、Bir16A(AERERIFKRFDANGEGK)である。
【0055】
SEQ ID NO:1〜80は、MHCクラスII結合に必要な最小必須配列である典型的には9アミノ酸の核からなるT細胞エピトープを含むポリペプチド配列であることが理解されるだろう。しかし、SEQ ID NO:1〜80のポリペプチドはまた、核に隣接する追加の残基を含んでもよい。従って、ペプチドは、エピトープの機能に影響を及ぼすことなくいくつかの残基が修飾されていてもよい、T細胞エピトープを含む領域を含んでよい。従って、例えば、SEQ ID NO:1〜80のいずれかの配列はその溶解度を高めるために改変されてよく、従って、SEQ ID NO:1〜80のいずれかの変異体は、好ましくは、SEQ ID NO:1〜80の対応するポリペプチドよりも、同等条件下で、より可溶性である。ペプチドの溶解度を評価する方法は、当分野で周知であり、かかる方法の1つを実施例9で例証する。
【0056】
溶解し難い薬剤を対象に投与すると、望ましくない非寛容化炎症反応を引き起こすため、溶解度の向上は、本発明のペプチドが由来するアレルゲンに対して対象を寛容化するのに有利である。ペプチドの溶解度は、T細胞エピトープを含む領域に隣接する残基を改変することによって向上させることができる。本発明のペプチドは、それが、
(i)T細胞エピトープに隣接するペプチド残基のN末端側:ペプチドが由来するタンパク質の配列中の前記残基のすぐN末端側の1〜6個の連続したアミノ酸に対応する1〜6個の連続したアミノ酸;及び/又は
(ii)T細胞エピトープに隣接するペプチド残基のC末端側:ペプチドが由来するタンパク質の配列中の前記残基のすぐC末端側の1〜6個の連続したアミノ酸に対応する1〜6個の連続したアミノ酸;又は
(iii)T細胞エピトープに隣接するペプチド残基のN末端側及びC末端側の双方:アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタメート及びアスパルテートから選択される少なくとも1つのアミノ酸
を含むように、より可溶性であるように操作することができる。
【0057】
任意選択で、さらに、ペプチドは、
(i)ペプチドの天然配列中の任意のシステイン残基が、セリン若しくは2−アミノ酪酸で置換され;及び/又は
(ii)ペプチドの天然配列のN末端若しくはC末端における3つまでのアミノ酸の中の、T細胞エピトープに含まれていない任意の疎水性残基が欠失し;及び/又は
(iii)ペプチドの天然配列のN末端若しくはC末端における4個までのアミノ酸の中の配列Asp−Glyを含む、T細胞エピトープに含まれていない任意の2つの連続したアミノ酸が欠失し;及び/又は
(iv)1つ以上の正に荷電した残基が、ペプチドの天然配列のN末端及び/若しくはC末端に付加される
ように、より可溶性であるように操作することができる。
【0058】
好ましくは、本発明のペプチド及び変異体は、T細胞サンプルの少なくとも20%においてT細胞増殖を引き起こすことができ、ここで各サンプルは、集団において異なるカバノキアレルギー個体から得られるものである。好ましくは、本発明の組成物は、カバノキアレルギーの個体のパネルから得られたT細胞のサンプルの30%以上において、T細胞増殖を誘導することができる。より好ましくは、組成物は、パネルにおける感作された個体から得られたサンプルの35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上又は90%以上において、T細胞増殖を誘導することができる。カバノキアレルギーの個体のパネルにおける個体数は、1よりも大きい任意の数、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも80又は少なくとも100の個体であってよい。
【0059】
本発明のペプチド、変異体及び組成物は、T細胞増殖は引き起こすが、感作された個体に由来する豊富(enriched)な好塩基球又はマスト細胞の調製物からのヒスタミン放出はもたらさない場合が好ましい。ヒスタミンはいくらか放出され得るが、ペプチド、変異体及び組成物は、有意な量のヒスタミンを放出させないことが好ましい。有意なヒスタミン放出は、個体からの白血球のサンプルが、インビトロで組成物により刺激された場合に、利用できる全白血球ヒスタミンの20%以上を放出することであると考えることができる。本発明のペプチド、変異体又は組成物は、個体からの白血球のサンプルが、インビトロで組成物により刺激された場合に、利用できる全白血球ヒスタミンの5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満の放出をもたらすことが好ましい。典型的には、通常の個体は、およそ150 ng/107細胞の白血球のヒスタミン含量を有する。
【0060】
TCRに結合することができる適切なペプチド又は変異体は、実験的に得ることができ、又は既知の基準に従って選択することができる。単一ペプチド内に、MHC抗原結合溝の内部で結合に寄与する特定の残基、及びT細胞受容体の超可変領域と相互作用する他の残基が存在する(Allenら(1987) Nature 327:713〜5)。
【0061】
T細胞受容体相互作用に寄与する残基の範囲内で、所与のペプチド残基を置換することに対するT細胞活性化の依存性に関する階層性が実証されている。いくつかのグループが、異なるアミノ酸で置換された1つ以上のT細胞受容体接触残基を有しているペプチドを用いて、T細胞活性化の過程に対する重要な影響を実証している。Evavold及びAllen((1991)Nature 252:1308〜10)は、T細胞増殖とサイトカイン産生とに関係がないことを実証した。このインビトロモデルにおいては、ヘモグロビンの残基64〜76に特異的なT細胞クローン(I−Ekとの関連において)に、グルタミン酸の代わりのアスパラギン酸による保存的置換がなされているペプチド類似体が負荷(challenged)された。この置換により、類似体がI−Ekに結合する能力は有意には妨げられなかった。
【0062】
この類似体をT細胞クローンにインビトロで負荷した後、そのクローンがB細胞応答を助ける能力と同様に、IL−4分泌は維持されたが、増殖は検出されなかった。その後の研究において、同じグループは、T細胞媒介性細胞溶解がサイトカイン産生から分離していることを実証した。この場合、前者は不変のままであったが、後者は障害された。改変されたペプチドリガンドのインビボの有効性は、McDevitt及び同僚により、EAE(実験的アレルギー性脳脊髄炎)のマウスモデルにおいて最初に実証された(Smilekら(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:9633〜9637)。このモデルにおいて、EAEは、MBP(ミエリン塩基性タンパク質)の脳炎誘発性ペプチドAc1−11による免疫によって誘導される。アラニン残基による4位(リジン)における置換により、ペプチドが生成され、このペプチドは、その制限要素(restricting element)(Aαuu)にはよく結合したが、感受性PL/JxSJLF1系統において非免疫原性であり、さらに、脳炎誘発性ペプチドによる免疫の前又は後のいずれかに投与された場合、EAEの発症を予防した。従って、T細胞の種々の機能を誘導するペプチドの能力に影響する残基をペプチド中に同定することができる。
【0063】
有利には、ペプチドは、T細胞増殖及び脱感作の誘導に有利であるように設計することができる。Metzler及びWraithは、ペプチド−MHC親和性を増大させる置換がなされたペプチドの寛容誘導能の向上を実証している(Metzler及びWraith(1993)Int Immunol〜:1159〜65)。改変されたペプチドリガンドが、クローン化T細胞において、長期間且つ強いアネルギーを引き起こし得ることが、Sloan−Lancasterら(1993)Nature363:156〜9によって実証された。
【0064】
本発明の組成物は、アレルゲンに感作されている個体において遅発相反応を誘導することができる。「遅発相反応(late phase response)」という用語は、Allergy and Allergic Diseases(1997)A.B.Kay(編), Blackwell Science, 1113〜1130頁に示されている意味を含む。遅発相反応は、任意の遅発相反応(LPR)であってよい。ペプチドは、遅発型喘息反応(late asthmatic response)(LAR)若しくは遅発型鼻炎反応(late rhinitic response)又は遅発型皮膚反応(late phase skin response)若しくは遅発型眼球反応(late phase ocular response)を誘導することができることが好ましい。特定のペプチドがLPRを生じさせ得るか否かは当分野で周知の方法を用いて判定することができる。特に好ましい方法は、Cromwell O, Durham SR, Shaw RJ, Mackay J及びKay AB, Provocation tests and measurements of mediators from mast cells and basophils in asthma and allergic rhinitis, 於:Handbook of Experimental Immunology (4) 127章, 編集者:Weir DM, Blackwell Scientific Publications, 1986に記載されている方法である。
【0065】
従って、本発明の個々のペプチド及び変異体は、アレルゲンに感作された個体において、LPRを誘導することができることが好ましい。アレルゲンに個体が感作されているか否かは、周知の手順、例えば、アレルゲン抽出物溶液を用いる皮膚プリックテスト、皮膚LPRの誘導、病歴、アレルゲン負荷、及びアレルゲン特異的IgEの測定のための放射性アレルゲン吸着試験(radioallergosorbent test)(RAST)などによって判定することができる。特定の個体が治療の利益を受けると期待されるか否かは、例えば、かかる試験に基づき医師が判定することができる。
【0066】
アレルゲンに対して個体を脱感作又は寛容化することは、適切に感作された個体において、アレルゲンによって誘導されるアレルギー性組織反応を抑制すること又は弱めることを意味する。T細胞は選択的に活性化することができ、その後非応答性にすることができることが示されている。さらに、こうしたT細胞をアネルギー化すること(anergising)又はなくすことは、特定のアレルゲンに対して患者を脱感作することにつながる。脱感作は、アレルゲン又はアレルゲン由来ペプチドの二度目の投与及びさらなる投与の際に、そのアレルゲン又はアレルゲン由来ペプチドに対する応答の減少、又は好ましくはかかる応答の消失として現れる。二度目の投与は、脱感作を起こさせるために、適切な期間が経過した後にすることができ、この期間は1日〜数週間の任意の期間であることが好ましい。約2週間の間隔が好ましい。
【0067】
本発明の組成物は、カバノキアレルギーの個体においてLPRを誘導することができるが、組成物が患者を治療するために使用される場合、次の(好ましくはより多い)用量を与えることができるように、観察可能なLPRは起こらないが、その反応がT細胞を部分的に脱感作するのに十分となるように、十分に低い濃度の組成物が使用されることが好ましいことなどを理解するべきである。このようにして、完全な脱感作は与えるが、大抵は患者においてLPRを誘導することがないように用量を増大させる。とはいえ、該組成物又はペプチドは、投与されるよりも高い濃度でそのようにすることが可能である。
【0068】
本発明の組成物は、集団からのカバノキアレルギーの個体のパネルの50%以上において遅発相反応を誘導することが好ましい。より好ましくは、組成物は、パネルにおける感作された個体の55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上又は90%以上においてLPRを誘導することができる。組成物が、対象のパネルの特定のパーセンテージでLPRを誘導することができるか否かは、当分野で周知の方法によって判定することができる。
【0069】
核酸及びベクター
本発明の組成物及び製品を構成する個々のペプチドは、直接投与してもよく、又はコード配列からの発現により間接的に投与してもよい。例えば、上記ペプチドのいずれかなどの本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供されてよい。従って、本発明のペプチドは、それをコードし且つ発現することができるポリヌクレオチドから製造されてよく、また該ポリヌクレオチドの形態で送達されてよい。本発明のペプチドの使用、送達又は投与への本明細書におけるどの言及も、それをコードするポリヌクレオチドからの発現を介した、かかるペプチドの間接的な使用、送達又は投与を含むことが意図される。
【0070】
従って、本発明は、発現されると、寛容化によるカバノキアレルギーの予防又は治療に使用するための本発明の組成物の産生をもたらす、少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む、寛容化によるカバノキアレルギーの予防又は治療に使用するための組成物を提供する。
【0071】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、任意の長さの重合体形態のヌクレオチド、すなわち、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドのいずれか、又はこれらの類似体をいう。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ及びプライマーが挙げられる。本発明のポリヌクレオチドは、単離された形態又は精製された形態で提供されてよい。選択されたポリペプチドを「コードする」核酸配列は、適切な調節配列(regulatory sequences)の制御下に置かれたときにインビボで転写され(DNAの場合)、ポリペプチドへと翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。コード配列の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドン及び3'(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決まる。本発明では、かかる核酸配列として、ウイルス、原核生物又は真核生物のmRNAに由来するcDNA、ウイルス又は原核生物のDNA又はRNAに由来するゲノム配列、さらには合成DNA配列を挙げることができるが、これらに限定されない。転写終結配列は、コード配列の3'側に位置してよい。
【0072】
本発明のポリヌクレオチドは、Sambrookら(1989, Molecular Cloning − a laboratorymanual;Cold Spring Harbor Press)において例として記載された当分野で周知の方法に従って合成することができる。
【0073】
本発明のポリヌクレオチド分子は、挿入された配列に機能できるように連結(operably linked)された制御配列(control sequence)を含み、従って、標的とする対象においてインビボで本発明のペプチドが発現することを可能にする発現カセットの形態で提供されてよい。典型的には、これらの発現カセットは、核酸免疫用試薬としての使用に適したベクター(例えば、プラスミド又は組換えウイルスベクター)内で提供される。かかる発現カセットは、宿主対象に直接投与されてよい。或いは、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを、宿主対象に投与してもよい。ポリヌクレオチドは、遺伝子ベクターを用いて調製し、且つ/又は投与することが好ましい。適切なベクターは、十分な量の遺伝情報を運ぶことができ、本発明のペプチドを発現させることができる、任意のベクターであってよい。
【0074】
発現ベクターは、分子生物学の分野で日常的に構築されており、例えば、プラスミドDNA、並びに本発明のペプチドを発現させるために、必要な場合であり且つ正しい配向で位置している、適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサー及び他の要素、例えばポリアデニル化シグナルなどの使用を伴ってもよい。他の適切なベクターは当業者に明らかである。このことに関するさらなる例として、本発明者らはSambrookらを引用する。
【0075】
従って、かかるベクターを細胞に送達し、そのベクターからの転写を起こさせることにより本発明のポリペプチドを提供することができる。従って、本発明はまた、本発明の異なるポリペプチドをコードする4つ以上のポリヌクレオチド配列を含む、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に使用するためのベクターも提供する。好ましくは、ベクター中の本発明の又は本発明で使用するためのポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現をもたらすことができる制御配列に、機能できるように連結されており、すなわち、ベクターは発現ベクターである。
【0076】
「機能できるように連結された(operably linked)」とは、そのように記載された構成成分がその通常の機能を果たすように構成されている、構成要素の配置を指す。従って、核酸配列に機能できるように連結されたプロモーターなどの所与の調節配列は、適切な酵素が存在する場合、その配列の発現をもたらすことができる。プロモーターは、その配列の発現を導くように機能する限り、その配列と連続している必要はない。従って、例えば、翻訳されないが転写はされる介在配列がプロモーター配列と核酸配列との間に存在し得、プロモーター配列はそれでもなお、コード配列に「機能できるように連結されている」と見なすことができる。
【0077】
多くの発現系が当分野で記述されており、それらはそれぞれ、典型的には、発現制御配列に機能できるように連結された目的の遺伝子又はヌクレオチド配列を含むベクターからなる。これらの制御配列には、転写プロモーター配列並びに転写開始配列及び転写終結配列が含まれる。本発明のベクターは、例えば、複製起点を備え、任意に前記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターを備え、任意にプロモーターのレギュレーターを備える、プラスミドベクター、ウイルスベクター又はファージベクターであってよい。「プラスミド」とは、染色体外遺伝因子の形態のベクターである。ベクターは、1種以上の選択マーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合のアンピシリン耐性(resistence)遺伝子、又は真菌ベクターについての耐性遺伝子を含むことができる。ベクターは、例えば、DNA又はRNAを産生するためにインビトロで使用することができ、又は宿主細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞をトランスフェクト又は形質転換するために使用することができる。ベクターはまた、例えば、ポリペプチドをインビボで発現させるために、インビボで使用されるように適合させることもできる。
【0078】
「プロモーター」は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び調節するヌクレオチド配列である。プロモーターとしては、誘導性プロモーター(この場合、プロモーターに機能できるように連結されたポリヌクレオチド配列の発現は、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導される)、抑制性(repressible)プロモーター(この場合、プロモーターに機能できるように連結されたポリヌクレオチド配列の発現は、分析物、補因子、調節タンパク質などによって抑制される)及び構成的プロモーターが挙げられる。「プロモーター」又は「制御要素(control element)」という用語は、全長のプロモーター領域、及びこれらの領域の機能的(例えば、転写又は翻訳を制御する)部分を含むことが意図される。
【0079】
本発明によるポリヌクレオチド、発現カセット又はベクターは、さらにシグナルペプチド配列を含むことができる。一般に、シグナルペプチド配列は、シグナルペプチドが発現されるようにプロモーターに機能できるように連結して挿入され、やはりプロモーターに機能できるように連結したコード配列によってコードされるポリペプチドの分泌を促進する。
【0080】
典型的には、シグナルペプチド配列は10〜30個のアミノ酸、例えば15〜20個のアミノ酸のペプチドをコードする。これらのアミノ酸は大部分が疎水性であることが多い。典型的な状況では、シグナルペプチドは、そのシグナルペプチドを有する成長する(growing)ポリペプチド鎖を発現細胞の小胞体に向ける。シグナルペプチドは小胞体内で切り離され、ゴルジ体を通じてポリペプチドを分泌させる。従って、本発明のペプチドは、個体内の細胞からの発現及びこうした細胞からの分泌によって、個体に提供することができる。
【0081】
或いは、本発明のポリヌクレオチドを適切な方法で発現させ、抗原提示細胞の表面において、MHCクラスII分子によって本発明のペプチドを提示させることができる。例えば、本発明のポリヌクレオチド、発現カセット又はベクターは、抗原提示細胞に向けられる場合があり、又はコードされたペプチドの発現が、かかる細胞において優先的に刺激され又は誘導される場合がある。
【0082】
ある実施態様において、ポリヌクレオチド、発現カセット又はベクターは、アジュバントをコードし、又はアジュバントはその他の方法で提供されることとなる。本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、特異的に又は非特異的に抗原特異的免疫応答を改変し、高め、方向づけ、方向を変え、増強し又は開始することができる任意の物質又は組成物をいう。
【0083】
目的のポリヌクレオチドは、本発明のペプチドを産生させる際に、インビトロ、エクスビボ又はインビボで使用することができる。かかるポリヌクレオチドは、寛容化によるアレルギーの予防又は治療において投与又は使用することができる。
【0084】
遺伝子送達の方法は当分野で公知である。例えば、米国特許第5,399,346号、第5,580,859号及び第5,589,466号を参照されたい。核酸分子は、例えば標準的な筋肉内注射又は皮内注射;経皮的粒子送達;吸入;局所又は経口、鼻腔内投与方法又は粘膜投与方法などによって、レシピエント対象内に直接的に導入することができる。或いは、該分子は、対象から取り出された細胞中にエクスビボで導入することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチド、発現カセット又はベクターは、エクスビボで個体のAPC内に導入することができる。目的の核酸分子を含む細胞は、核酸分子によってコードされるペプチドに対して免疫応答が開始され得るように対象内に再導入される。かかる免疫化に使用される核酸分子は概して本明細書において「核酸ワクチン」という。
【0085】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、実質的に単離された形態で存在し得る。これらは、これらの意図された使用を妨げない担体又は希釈剤と混合することができ、それでもなお実質的に単離されていると見なすことができる。これらはまた、実質的に精製された形態とすることもでき、この場合、これらは、製剤のタンパク質、ポリヌクレオチド、細胞又は乾燥質量の概ね少なくとも90%、例えば少なくとも95%、98%又は99%を構成(comprise)することとなる。
【0086】
抗原提示細胞(APC)
本発明は、本発明のペプチドをその表面上に提示し、その後に治療に使用され得るAPC集団の産生方法のインビトロの使用を包含する。かかる方法は、患者から得られた細胞のサンプルで、エクスビボで実施することができる。従って、このようにして産生されたAPCは、寛容化によるカバノキアレルギーの治療又は予防に使用することができる医薬品を形成する。この細胞は個体の免疫系に認容されるはずである。なぜならば、該細胞はその個体に由来するからである。従って、このようにして産生された細胞の、それがもともと得られた個体への送達は、本発明の治療に関する実施態様を形成する。
【0087】
製剤及び組成物
本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター及び細胞は、単独で又は組み合わせて個体に提供することができる。本発明の分子又は細胞は、それぞれ、単離された形態、実質的に単離された形態、精製された形態又は実質的に精製された形態で個体に提供することができる。例えば、他のペプチドを実質的に含まない本発明のペプチドを、個体に提供することができる。或いは、標準的なペプチドカップリング試薬を用いて、組成物中の4つ以上のペプチドを、一緒に化学的にカップリングさせ、好ましいエピトープを含む単一のペプチドを提供することができる。かかるペプチドは、個々のペプチドのようにヒスタミン放出がないことを確証するために、好塩基球のヒスタミン放出についてスクリーニングする。さらなる実施態様において、組成物中の4つ以上のペプチドは、単一のポリペプチド鎖の一部として、すなわちコードするポリヌクレオチドから組換え手段によって、提供することができる。4つ以上のペプチドは、連続するように融合させることができ、或いは適切なリンカーによって分離することができる。
【0088】
本発明によるペプチド、ポリヌクレオチド又は組成物は、未加工の形態で提供することが可能であり得るが、これらを医薬製剤として提供することが好ましい。従って、本発明のさらなる態様によれば、本発明により、1つ以上の薬学的に許容される担体又は希釈剤及び任意選択で1つ以上の他の治療成分とともに本発明による組成物、ベクター又は製品を含む、寛容化によるカバノキアレルギーの予防又は治療に使用する医薬製剤が提供される。担体(1つ又は複数)は、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。典型的には、注射用担体及び最終的な製剤は無菌であり、発熱物質を含まない。担体又は希釈剤は、チオグリセロール又はチオアニソールであることが好ましい。
【0089】
本発明のペプチド、ポリヌクレオチド又は細胞を含む組成物の製剤化は、標準的な医薬製剤化学及び方法論を利用して行うことができ、これらはすべて当業者に容易に利用できる。
【0090】
例えば、1つ以上の本発明の分子又は細胞を含む組成物を1つ以上の薬学的に許容される賦形剤又はビヒクルと組み合わせることができる。賦形剤又はビヒクルの中には、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が存在していてもよい。これらの賦形剤、ビヒクル及び補助物質は一般に、組成物を受ける個体において免疫応答を誘導しない製薬用薬剤であり、過度の毒性なしで投与することができる。薬学的に許容される賦形剤としては、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール、チオグリセロール及びエタノールなどの液体が挙げられるが、これらに限定されない。その中に、薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩も含めることができる。薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル及び補助物質の詳細な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co., ニュージャージー州 1991)において入手できる。
【0091】
かかる組成物は、ボーラス投与又は継続投与に適した形態で、調製し、包装し又は販売することができる。注射用組成物は、アンプルなどの単位投薬形態、又は保存剤を含む複数回投与容器を用いて、調製し、包装し、又は販売することができる。組成物としては、懸濁液、溶液、油性又は水性のビヒクルを用いたエマルション、ペースト、及び埋め込み型の徐放性製剤又は生分解性製剤が挙げられるが、これらに限定されない。かかる組成物は、懸濁剤、安定化剤又は分散剤を含むがこれらに限定されない、1つ以上のさらなる成分をさらに含んでいてもよい。非経口投与用組成物の1つの実施態様において、有効成分は、適切なビヒクル(例えば無菌の発熱物質を含まない水)を用いて再構成するための乾燥した(例えば粉末又は顆粒)形態で提供されてから、再構成された組成物が非経口投与される。医薬組成物は、無菌の注射用の水性若しくは油性の懸濁液若しくは溶液の形態で、調製し、包装し、又は販売することができる。この懸濁液又は溶液は、公知の技術に従って製剤化することができ、活性成分に加えて、本明細書中で記載した分散剤、湿潤剤又は懸濁剤などのさらなる成分を含んでいてもよい。かかる無菌の注射製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒、例えば水又は1,3−ブタンジオールなどを用いて調製することができる。他の許容される希釈剤及び溶媒としては、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、及び合成モノグリセリド又はジグリセリドなどの不揮発性油が挙げられるが、これらに限定されない。
有用な他の非経口的に投与できる(parentally−administrable)組成物としては、微結晶形態で、リポソーム製剤で、又は生分解性高分子系の構成成分として、活性成分を含む組成物が挙げられる。徐放用組成物又は埋め込み用組成物は、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性のポリマー又は難溶性の塩などの薬学的に許容されるポリマー材料又は疎水性材料を含んでいてもよい。
【0092】
或いは、本発明のペプチド又はポリヌクレオチドは、粒子状担体に封入し、吸着させ、又は結合させることができる。適切な粒子状担体としては、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来する粒子状担体、並びにポリ(ラクチド)及びポリ(ラクチド−コ−グリコリド)に由来するPLG微粒子が挙げられる。例えば、Jefferyら(1993)Pharm. Res.10:362〜368を参照されたい。他の粒子状の系及びポリマー、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジンなどのポリマー並びにこれらの分子の結合体も使用することができる。
【0093】
本明細書において言及したどのペプチド、ポリヌクレオチド又は細胞の製剤も、物質の性質及び送達方法などの要因に依存することになる。かかる物質は、いずれも種々の投薬形態で投与することができる。それは、経口で(例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性若しくは油性の懸濁液、分散性の散剤若しくは顆粒剤として)、局所的に、非経口的に、皮下に、吸入により、静脈内に、筋肉内に、胸骨内に(intrasternally)、経皮的に、皮内に、舌下に、鼻腔内に(instranasally)、口腔内に、又は点滴技術によって、投与することができる。該物質は坐剤として投与することもできる。医師は特定の個体ごとに必要とされる投与経路を決定することができる。
【0094】
本発明の製剤組成物は、有害反応を引き起こすことなく有効であるように、適切な濃度の各ペプチド/ポリヌクレオチド/細胞を含むことになる。典型的には、組成物中の各ペプチドの濃度は0.03〜200 nmol/mlの範囲内となる。より好ましくは、0.3〜200 nmol/ml、3〜180 nmol/ml、10〜150 nmol/ml、50〜200 nmol/ml又は30〜120 nmol/mlの範囲内となる。組成物又は製剤は、95%若しくは98%よりも高い純度、又は少なくとも99%の純度を有するべきである。
【0095】
本発明の1つの側面において、本発明のポリペプチド/ポリヌクレオチド/細胞と組み合わせてアジュバントを使用することができる。アジュバントは、本発明のポリペプチド/ポリヌクレオチド/細胞の効果を増強するのに十分な量で投与することが好ましく、その逆も同様である。アジュバント又は他の治療剤は、本発明の分子の効果を増強する薬剤であってもよい。例えば、他の薬剤は、本発明のペプチド又は細胞に対する応答を高める免疫調節性分子、又はアジュバントであってもよい。
【0096】
従って、一実施態様において、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞又は組成物は、1つ以上の他の治療剤と組み合わせて治療に使用される。これらの薬剤は、別々に、同時に、又は連続的に投与することができる。これらの薬剤は、同一の組成物又は異なる組成物中に入れて投与することができる。従って、本発明の方法においては、さらなる治療剤を用いて対象を治療することもできる。
【0097】
従って、本発明の分子及び/又は細胞を含み、1つ以上の他の治療用分子も含む組成物を製剤化することができる。或いは、本発明の組成物は、併用療法の一部としての1つ以上の他の治療用組成物と、同時に、連続的に、又は別々に使用することができる。
【0098】
アジュバントの非限定的な例としては、ビタミンD、ラパマイシン、並びにデキサメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン及びトリアムシノロンなどのグルココルチコイドステロイドが挙げられる。好ましいグルココルチコイドはデキサメタゾンである。
【0099】
治療方法及び治療される個体
本発明は、上記のアレルゲンに対してヒトの個体を脱感作又は寛容化することができ、従ってカバノキアレルギーの予防又は治療に有用なペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター及び細胞に関する。本発明は、寛容化によるカバノキアレルギーの予防又は治療に使用するための組成物、製品、ベクター及び製剤を提供する。本発明はまた、単独又は組み合わせのいずれかで、上記の本発明のポリペプチド/ポリヌクレオチド/細胞を投与することを含む、カバノキアレルギーの個体の寛容化方法又は脱感作方法も提供する。
【0100】
本発明の組成物若しくは製剤により治療され、又は該組成物若しくは製剤を提供される個体はヒトであることが好ましい。治療される個体は、アレルゲンに感作されているか、感作される危険性があるか、又は感作されている疑いがあることがわかっているものであってもよいことが理解されるであろう。個体は、当分野で周知の技術及び本明細書に記載の技術を用いて感作について試験することができる。或いは、個体はカバノキアレルギーの家族歴を有するものであってもよい。個体はカバノキに曝露されるとアレルギー症状を示し得るため、カバノキに対する感作について個体を試験することは必要ではないことがある。曝露によって、例えば、カバノキ植物、又はカバノキ植物に由来する物質若しくは製品、又は上記のいずれかを含む(containing)か若しくは含む(comprising)物質若しくは製品に近接することが意味される。典型的には、カバノキ植物に由来する物質又は製品はカバノキ花粉である。近接によって、上記の物品から10メートル以下、5メートル以下、2メートル以下、1メートル以下又は0メートルが意味される。アレルギー症状としては、目のかゆみ、鼻水、呼吸困難、赤い皮膚のかゆみ又は発疹を挙げることができる。
【0101】
治療される個体はどのような年齢のものであってもよい。しかしながら、個体は、好ましくは1〜90歳、5〜60歳、10〜40歳、又はより好ましくは18〜35歳の年齢群に入っていてもよい。
【0102】
治療される個体は、白人集団に代表的な頻度の範囲内のMHCアレル頻度を有する集団に由来していることが好ましい。11個の一般的なDRB1アレルファミリーについて基準集団のアレル頻度を表1に示す(データは、HLA Facts Book, Parham及びBarberより)。
【0103】
【表2】

【0104】
基準頻度は、頻度を報告する複数の研究の解析によって得られたものであり、示した数値は平均値である。従って、治療される個体は、表1で言及したアレル(少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、又はすべてのアレルなど)について、基準集団と同等のMHCアレル頻度、例えばそれらの数値プラス又はマイナス1%、2%、3%、5%、10%、15%又は20%の範囲内のアレル頻度を有する集団に由来することが好ましい。
【0105】
個体は、次のDRB1アレルのアレル頻度が、
4−少なくとも9%
7−少なくとも10%
11−少なくとも8%
である集団に由来することが好ましい。
【0106】
個体は、少なくとも2週間、1箇月間、6箇月間、1年間又は5年間、カバノキアレルギーを有していたものであってもよい。個体は、アレルギーによって引き起こされる発疹、鼻づまり、鼻汁及び/又は咳嗽で苦しんでいるものであってもよい。個体は、カバノキアレルギーを治療する他の組成物/化合物を投与されていたものであってもよく、投与されていなかったものであってもよい。個体は、
・温帯気候、寒帯気候若しくは北極帯気候、及び/又は
・約3.5から約7.5までの範囲の典型的な土壌pH
を有する地理的領域に住んでいるものであってもよい。
【0107】
典型的には、個体は特定の季節にカバノキ花粉アレルギーを患っている。季節は、典型的にはカバノキの開花期に相当し、これは、典型的には春、好ましくは早春(例えば、北半球では4月〜5月)である。典型的には、アレルギーの個体は、ベツラ(Betula)亜属、例えば、ベツラ・ペンデュラ(Betula pendula)又はベツラ・プベセンス(Betula pubescens)などのいずれかの樹木に由来するカバノキ花粉のアレルギーである。
【0108】
併用免疫療法
多くの個体は、いくつかのポリペプチド抗原に対してアレルギーがあり、又は脱感作することが必要であり得るため、本発明は、複数の抗原に対してアレルギーがある個体を脱感作する手段も提供する。個体において、最初のポリペプチド抗原又はアレルゲンに対して誘導される「寛容」は、その個体において、他の抗原に対する寛容を提供するために、他の抗原に対する不適切な免疫応答を下方制御することができる「寛容原性環境(tolerogenic environment)」をつくり出し得る。
【0109】
この知見は、複数のアレルゲンに対してアレルギーがある個体は非常に短縮された期間で治療できること、及びあるアレルゲン(例えばピーナッツ)に対するアレルギーが重篤であるが、他のアレルゲン(例えばネコ鱗屑)に対してはアレルギーがより穏やかである個体は、より穏やかなアレルゲンに対する寛容を確立させ、次いでこの寛容原性環境を使用して、他のより強烈なアレルゲンに対する寛容を提供する治療法から利益を享受し得ること、を意味する。また、自己免疫障害を患い、さらに無関係の抗原若しくはアレルゲンに感作された(又はその他の方法で免疫された)個体は、その無関係の抗原又はアレルゲンに対する寛容を最初に確立させ、次いでこの寛容原性環境を使用して、自己免疫障害と関連する自己抗原に対する寛容を提供する治療計画から利益を享受し得る。
【0110】
従って、上記のカバノキアレルゲン及び1つ以上のさらなる異なるポリペプチド抗原に対するカバノキアレルギー個体の脱感作方法が提供される。この方法は、最初の工程において、本明細書中に記載した本発明による組成物/製品/製剤(一次組成物)を個体に投与することを必要とし、この投与は、カバノキアレルゲンに対する低応答性状態を生じさせるのに十分な様式で行われる。カバノキアレルゲンに対する低応答性状態が確立された後、又は少なくとも脱感作に向かう変化が起こった後、該方法では、個体が感作されるべき第二の異なるポリペプチド抗原を含む二次組成物の投与が必要となる。二次組成物の投与は、一次組成物の使用によって確立された寛容原性環境を利用するように行われ、このとき、第二の異なるポリペプチド抗原に対する寛容をこれで確立することが可能となる。二次組成物は、最初の一次組成物又はカバノキアレルゲンのより大きな断片のいずれかと同時投与される。「同時投与される」によって、同時(simultaneous)投与又は同時期(concurrent)投与のいずれかが意味され、例えば、それらの2つのものが、同一の組成物中に存在するか、又はほぼ同時に、しかし異なる部位において、別個の組成物として投与される場合であり、及び異なる時間に別個の組成物としてポリペプチド抗原を送達することである。例えば、二次組成物は、最初の組成物の送達の前又は後に、同一の部位又は異なる部位において送達することができる。送達間のタイミングは、約数秒間隔から約数分間隔の範囲にわたってもよく、約数秒間隔から数時間間隔の範囲にわたってもよく、約数秒間隔から数日間隔の範囲にまでもわたってよい。さらに、異なる送達方法を使用してもよい。
【0111】
第二のポリペプチド抗原は、カバノキアレルゲンとは異なるアレルゲンであることが好ましい。本発明の方法での使用に適したアレルゲンは、当然のことながら、公知の方法を用いて得ること及び/又は生産することができる。適切なアレルゲンの種類としては、イエダニアレルゲン、花粉、動物鱗屑(特にネコ鱗屑)、イネ科草本(grass)、カビ、ダスト、抗生物質、刺咬昆虫毒、並びに種々の環境アレルゲン(化学物質及び金属を含む)、薬物アレルゲン及び食物アレルゲンが挙げられるが、これらに限定されない。一般的な樹木アレルゲンとしては、ハコヤナギ、ポプラ(popular)、セイヨウトネリコ、カバノキ、カエデ、オーク、ニレ、ヒッコリー、及びペカンの樹木に由来する花粉が挙げられ;一般的な植物アレルゲンとしては、ヨモギ、ブタクサ、ヘラオオバコ、スイバ(sorrel−dock)及びアカザに由来するものが挙げられ;植物接触アレルゲンとしては、有毒オーク、ツタウルシ及びイラクサに由来するものが挙げられ;一般的なイネ科草本アレルゲンとしては、ホソムギ、オオアワガエリ、ジョンソングラス(Johnson)、ギョウギシバ(Bermuda)、ウシノケグサ及びイチゴツナギのアレルゲンが挙げられ;一般的なアレルゲンは、アルテルナリア(Alternaria)、フザリウム(Fusarium)、ホルモデンドラム(Hormodendrum)、アスペルギルス(Aspergillus)、ミクロポリスポラ(Micropolyspora)、ムコール(Mucor)及び好熱性放線菌などのカビ又は真菌からも得ることができ;表皮性アレルゲンは、ハウスダスト若しくは有機粉塵(典型的には真菌由来)、又は羽毛及びイヌ鱗屑などの動物源から得ることができ;一般的な食物アレルゲンとしては、牛乳及びチーズ(乳製品(diary))、卵、コムギ、ナッツ(例えばピーナッツ)、海産食品(例えば甲殻類)、エンドウマメ、マメ並びにグルテンのアレルゲンが挙げられ;一般的な環境アレルゲンとしては、金属(ニッケル及び金)、化学物質(ホルムアルデヒド、トリニトロフェノール及びテレビン油)、ラテックス、ゴム、繊維(綿又は羊毛)、バーラップ、染毛剤、化粧品、洗剤及び香料のアレルゲンが挙げられ;一般的な薬物アレルゲンとしては、局所麻酔薬及びサリチル酸塩のアレルゲンが挙げられ;抗生物質アレルゲンとしては、ペニシリン、テトラサイクリン及びスルホンアミドのアレルゲンが挙げられ;一般的な昆虫アレルゲンとしては、ハチ毒、スズメバチ毒及びアリ毒、並びにゴキブリ腎杯(calyx)のアレルゲンが挙げられる。特によく特徴づけられたアレルゲンとしては、主要なネコアレルゲンFel d 1、ハチ毒ホスホリパーゼA2(PLA)(Akdisら (1996) J. Clin. Invest. 98:1676〜1683)、及びエピトープが複数(multi-epitopic)の組換えイネ科草本アレルゲンrKBG8.3(Caoら (1997)Immunology 90:46〜51)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの適切なアレルゲン及び他の適切なアレルゲンは、市販されており、且つ/又は公知技術に従って、抽出物として容易に調製することができる。
【0112】
好ましくは、第二のポリペプチドアレルゲンは、以下のアレルゲン配列及びデータベースアクセッション番号(NCBI Entrezアクセッション番号)のリストから選択される、樹木花粉アレルゲン全体(whole tree pollen allergen)又はアレルゲン断片である。NCBIは国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology information)であり、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の一部門である。データベースへのアクセスを求めることができるNCBIのウェブサイトは、www.ncbi.nlm.nih.gov/である。アレルゲン配列及びデータベースアクセッション番号(NCBI Entrezアクセッション番号):
【0113】
オリーブ樹木
オリーブ配列
416610 Ole e 1
EDIPQPPVSQFHIQGQVYCDTCRAGFITELSEFIPGASLRLQCKDKENGDVTFTEVGYTRAEGLYSMLVERDHKNEFCEITLISSGRKDCNEIPTEGWAKPSLKFKLNTVNGTTRTVNPLGFFKKEALPKCAQVYNKLGMYPPNM
【0114】
樹木アレルゲンシークエンス(主にカバノキ)の配列:
130975 Bet v2
MSWQTYVDEHLMCDIDGQASNSLASAIVGHDGSVWAQSSSFPQFKPQEITGIMKDFEEPGHLAPTGLHLGGIKYMVIQGEAGAVIRGKKGSGGITIKKTGQALVFGIYEEPVTPGQCNMVVERLGDYLIDQGL
1942360 Bet v2
MSWQTYVDEHLMCDIDGQGEELAASAIVGHDGSVWAQSSSFPQFKPQEITGIMKDFEEPGHLAPTGLHLGGIKYMVIQGEAGAVIRGKKGSGGITIKKTGQALVFGIYEEPVTPGQCNMVVERLGDYLIDQGL
166953 Bet v2
MSWQTYVDEHLMCDIDGQASNSLASAIVGHDGSVWAQSSSFPQFKPQEITGIMKDFEEPGHLAPTGLHLGGIKYMVIQGEAGAVIRGKKGSGGITIKKTGQALVFGIYEEPVTPGQCNMVVERLGDYLIDQGL
541814 Bet v2
MSWQTYVDEHLMCDIDGQASNSLASAIVGHDGSVWAQSSSFPQFKPQEITGIMKDFEEPGHLAPTGLHLGGIKYMVIQGEAGAVIRGKKGSGGITIKKTGQALVFGIYEEPVTPGQCNMVVERLGDYLIDQGL
2488678 Bet v2
MSWQTYVDEHLMCDIDGQASNSLASAIVGHDGSVWAQSSSFPQFKPQEITGIMKDFEEPGHLAPTGLHLGGIKYMVIQGEAGAVIRGKKGSGGITIKKTGQALVFGIYEEPVTPGQCNMVVERLGDYLIDQGL
1829894 Bet v2
MSWQTYVDEHLMCDIDGQASNSLASAIVGHDGSVWAQSSSFPQFKPQEITGIMKDFEEPGHLAPTGLHLGGIKYMVIQGEAGAVIRGKKGSGGITIKKTGQALVFGIYEEPVTPGQCNMVVERLGDYLIDQGL
1168696 Bet v3
MPCSTEAMEKAGHGHASTPRKRSLSNSSFRLRSESLNTLRLRRIFDLFDKNSDGIITVDELSRALNLLGLETDLSELESTVKSFTREGNIGLQFEDFISLHQSLNDSYFAYGGEDEDDNEEDMRKSILSQEEADSFGGFKVFDEDGDGYISARELQMVLGKLGFSEGSEIDRVEKMIVSVDSNRDGRVDFFEFKDMMRSVLVRSS
809536 Bet v4
MADDHPQDKAERERIFKRFDANGDGKISAAELGEALKTLGSITPDEVKHMMAEIDTDGDGFISFQEFTDFGRANRGLLKDVAKIF
543675 Que a I−クエルカス・アルバ(Quercus alba)=オーク樹木(断片)
GVFTXESQETSVIAPAXLFKALFL
543509 Car b I−カルピヌス・ベツルス(Carpinus betulus)=シデ樹木(断片)
GVFNYEAETPSVIPAARLFKSYVLDGDKLIPKVAPQAIXK
543491 Aln g I−アルヌス・グルチノサ(Alnus glutinosa)=ハンノキ樹木(断片)
GVFNYEAETPSVIPAARLFKAFILDGDKLLPKVAPEAVSSVENI
1204056 Rubisco
VQCMQVWPPLGLKKFETLSYLPPLSSEQLAKEVDYLLRKNLIPCLEFELEHGFVYREHNRSPGYYDGRYWTMWKLPMFGCNDSSQVLKELEECKKAYPSAFIRIIGFDDK
【0115】
さらなる樹木アレルゲン配列(NCBI Entrezアクセッション番号):
131919;128193;585564;1942360;2554672;2392209;2414158;1321728;1321726;1321724;1321722;1321720;1321718;1321716;1321714;1321712;3015520;2935416;464576;1705843;1168701; 1168710;1168709;1168708;1168707;1168706;1168705;1168704;1168703;1168702;1842188;2564228;2564226;2564224;2564222;2564220;2051993;1813891;1536889;534910;534900;534898;1340000;1339998;2149808;66207;2129477;1076249; 1076247;629480;481805;81443;1361968;1361967;1361966;1361965;1361964;1361963;1361962;1361961;1361960;1361959;320546;629483 ;629482;629481;541804;320545;81444;541814:;629484;474911;452742;1834387;298737;298736;1584322;1584321;584320;1542873;1542871;1542869;1542867;1542865;1542863;1542861;1542859;1542857;1483232;1483230;1483228;558561;551640;488605;452746;452744;452740;452738;452736;452734;452732;452730;452728;450885;17938;17927;17925;17921;297538;510951;289331;289329;166953。
【0116】
シダー(cedar)配列
493634 Cry j IB前駆体(precursor)
MDSPCLVALLVFSFVIGSCFSDNPIDSCWRGDSNWAQNRMKLADCAVGFGSSTMGGKGGDLYTVTNSDDDPVNPPGTLRYGATRDRPLWIIFSGNMNIKLKMPMYIAGYKTFDGRGAQVYIGNGGPCVFIKRVSNVIIHGLYLYGCSTSVLGNVLINESFGVEPVHPQDGDALTLRTATNIWIDHNSFSNSSDGLVDVTLTSTGVTISNNLFFNHHKVMSLGHDDAYSDDKSMKVTVAFNQFGPNCGQRMPRARYGLVHVANNNYDPWTIYAIGGSSNPTILSEGNSFTAPNESYKKQVTIRIGCKTSSSCSNWVWQSTQDVFYNGAYFVSSGKYEGGNIYTKKEAFNVENGNATPHLTQNAGVLTCSLSKRC
493632 Cry j IA前駆体
MDSPCLVALLVLSFVIGSCFSDNPIDSCWRGDSNWAQNRMKLADCAVGFGSSTMGGKGGDLYTVTNSDDDPVNPAPGTLRYGATRDRPLWIIFSGNMNIKLKMPMYIAGYKTFDGRGAQVYIGNGGPCVFIKRVSNVIIHGLHLYGCSTSVLGNVLINESFGVEPVHPQDGDALTLRTATNIWIDHNSFSNSSDGLVDVTLSSTGVTISNNLFFNHHKVMLLGHDDAYSDDKSMKVTVAFNQFGPNCGQRMPRARYGLVHVANNNYDPWTIYAIGGSSNPTILSEGNSFTAPNESYKKQVTIRIGCKTSSSCSNWVWQSTQDVFYNGAYFVSSGKYEGGNIYTKKEAFNVENGNATPQLTKNAGVLTCSLSKRC
1076242 Cry j II前駆体−スギ(Japanese cedar)
MAMKLIAPMAFLAMQLIIMAAAEDQSAQIMLDSVVEKYLRSNRSLRKVEHSRHDAINIFNVEKYGAVGDGKHDCTEAFSTAWQAACKNPSAMLLVPGSKKFVVNNLFFNGPCQPHFTFKVDGIIAAYQNPASWKNNRIWLQFAKLTGFTLMGKGVIDGQGKQWWAGQCKWVNGREICNDRDRPTAIKFDFSTGLIIQGLKLMNSPEFHLVFGNCEGVKIIGISITAPRDSPNTDGIDIFASKNFHLQKNTIGTGDDCVAIGTGSSNIVIEDLICGPGHGISIGSLGRENSRAEVSYVHVNGAKFIDTQNGLRIKTWQGGSGMASHIIYENVEMINSENPILINQFYCTSASACQNQRSAVQIQDVTYKNIRGTSATAAAIQLKCSDSMPCKDIKLSDISLKLTSGKIASCLNDNANGYFSGHVIPACKNLSPSAKRKESKSHKHPKTVMVENMRAYDKGNRTRILLGSRPPNCTNKCHGCSPCKAKLVIVHRIMPQEYYPQRWICSCHGKIYHP
1076241 Cry j IIタンパク質−スギ(Japanese cedar)
MAMKFIAPMAFVAMQLIIMAAAEDQSAQIMLDSDIEQYLRSNRSLRKVEHSRHDAINIFNVEKYGAVGDGKHDCTEAFSTAWQAACKKPSAMLLVPGNKKFVVNNLFFNGPCQPHFTFKVDGIIAAYQNPASWKNNRIWLQFAKLTGFTLMGKGVIDGQGKQWWAGQCKWVNGREICNDRDRPTAIKFDFSTGLIIQGLKLMNSPEFHLVFGNCEGVKIIGISITAPRDSPNTDGIDIFASKNFHLQKNTIGTGDDCVAIGTGSSNIVIEDLICGPGHGISIGSLGRENSRAEVSYVHVNGAKFIDTQNGLRIKTWQGGSGMASHIIYENVEMINSENPILINQFYCTSASACQNQRSAVQIQDVTYKNIRGTSATAAAIQLKCSDSMPCKDIKLSDISLKLTSGKIASCLNDNANGYFSGHVIPACKNLSPSAKRKESKSHKHPKTVMVKNMGAYDKGNRTRILLGSRPPNCTNKCHGCSPCKAKLVIVHRIMPQEYYPQRWMCSRHGKIYHP
541803 Cry j I前駆体−スギ(Japanese cedar)
MDSPCLVALLVLSFVIGSCFSDNPIDSCWRGDSNWAQNRMKLADCAVGFGSSTMGGKGGDLYTVTNSDDDPVNPPGTLRYGATRDRPLWIIFSGNMNIKLKMPMYIAGYKTFDGRGAQVYIGNGGPCVFIKRVSNVIIHGLHLYGCSTSVLGNVLINESFGVEPVHPQDGDALTLRTATNIWIDHNSFSNSSDGLVDVTLSSTGVTISNNLFFNHHKVMLLGHDDAYSDDKSMKVTVAFNQFGPNCGQRMPRARYGLVHVANNNYDPWTIYAIGGSSNPTILSEGNSFTAPNESYKKQVTIRIGCKTSSSCSNWVWQSTQDVFYNGAYFVSSGKYEGGNIYTKKEAFNVENGNATPQLTKNAGVLTCSLSKRC
541802 Cry j I前駆体−スギ(Japanese cedar)
MDSPCLVALLVFSFVIGSCFSDNPIDSCWRGDSNWAQNRMKLADCAVGFGSSTMGGKGGDLYTVTNSDDDPVNPAPGTLRYGATRDRPLWIIFSGNMNIKLKMPMYIAGYKTFDGRGAQVYIGNGGPCVFIKRVSNVIIHGLYLYGCSTSVLGNVLINESFGVEPVHPQDGDALTLRTATNIWIDHNSFSNSSDGLVDVTLTSTGVTISNNLFFNHHKVMSLGHDDAYSDDKSMKVTVAFNQFGPNCGQRMPRARYGLVHVANNNYDPWTIYAIGGSSNPTILSEGNSFTAPNESYKKQVTIRIGCKTSSSCSNWVWQSTQDVFYNGAYFVSSGKYEGGNIYTKKEAFNVENGNATPHLTQNAGVLTCSLSKRC
【0117】
送達方法
本発明の組成物は、製剤化された後、種々の公知の経路及び技術を用いてインビボで対象に送達することができる。例えば、組成物は、注射用溶液、懸濁液又はエマルションとして提供することができ、通常の針及び注射器を用いて、又は液体ジェット式注射システムを用いて、非経口注射、皮下注射、表皮注射、皮内注射、筋肉内注射、動脈内注射、腹腔内注射、静脈内注射によって投与することができ、又はパッチを用いて投与することができる。組成物はまた、皮膚又は粘膜組織に局所的に、例えば鼻腔内、気管内、腸管内(intestinal)、直腸内、又は膣内などに投与することもでき、又は呼吸器投与若しくは肺内投与に適した微細に分割された噴霧剤として提供することもできる。他の投与様式としては、経口投与、坐剤、舌下投与、及び能動的又は受動的な経皮送達技術が挙げられる。
【0118】
本発明のペプチドが投与される場合、そのペプチドが適切な抗原提示細胞と接触する能力を有することになり、且つこれ又はこれらが個体のT細胞と接触する機会を有することになる体内の部位にペプチドを投与することが好ましい。APCが投与される場合、そのAPCが個体の適切なT細胞と接触し、且つ該T細胞を活性化する能力を有することになる体内の部位にAPCを投与することが好ましい。
【0119】
送達レジメン
ペプチド/ポリヌクレオチド/細胞(例えば複数のペプチドを含む組成物など)の投与は、上記の任意の適切な方法によるものであってよい。ペプチドの適切な量は、実験的に決定することができるが、典型的には下に示す範囲内である。各ペプチドの単回投与は、患者が有益な効果を有するのに十分なものであり得るが、ペプチドが1回よりも多く投与される場合、有益となり得ることが理解されるであろう。この場合、典型的な投与レジメンは、例えば、1週間に1回又は2回を6箇月毎に2〜4週間、又は1日1回を4〜6箇月毎に1週間のものであり得る。理解されるように、各ペプチド若しくはポリヌクレオチド、又はペプチド及び/若しくはポリヌクレオチドの組み合わせは、単独で、又は組み合わせて、患者に投与することができる。
【0120】
投与用量は、組成物の性質、投与経路並びに投与レジメンのスケジュール及びタイミングを含む、多くの要因に依存することとなる。本発明の分子の適切な用量は、投与1回あたり、およそ15μgまで、20μgまで、25μgまで、30μgまで、50μgまで、100μgまで、500μgまで、又はそれよりも多い用量程度のものであり得る。適切な用量は、15μg未満であってよいが、少なくとも1 ng、又は少なくとも2 ng、又は少なくとも5 ng、又は少なくとも50 ng、又は少なくとも(least)100 ng、又は少なくとも500 ng、又は少なくとも1μg、又は少なくとも10μgであり得る。本発明のいくつかの分子については、使用される用量はより多くてもよく、例えば1 mgまで、2 mgまで、3 mgまで、4 mgまで、5 mgまで、又はそれよりも多い用量であってもよい。かかる用量は、選択された経路による投与に適切な容量を可能にするのに適した濃度で、液体製剤として提供することができる。
【0121】
キット
本発明はまた、容器中にキットの形態で包装された、本発明の治療に使用するのに適した、本明細書中に記載した成分の組み合わせにも関する。かかるキットは、本発明の治療を可能にする一連の成分を含むことができる。例えば、キットは、本発明の1つ以上の異なるペプチド、ポリヌクレオチド及び/若しくは細胞、又は本発明の1つ以上のペプチド、ポリヌクレオチド若しくは細胞、並びに同時投与若しくは連続的投与若しくは別々の投与に適した1つ以上のさらなる治療剤を含むことができる。任意選択で、キットは、他の適切な試薬(1つ以上)又は使用説明書などを含んでいてもよい。
【0122】
本発明を以下の実施例によって説明する。
【実施例】
【0123】
実施例1
MHCクラスII結合性調査
この研究の目的は、8種の最も一般的なヒトMHCクラスII HLA−DRB1*アロタイプに対して強い親和性を有するペプチドの別個のパネルを同定することである。主要なカバノキアレルゲンBet v1、Bet v2、Bet v3、Bet v4、Bet v6において結合性ペプチドを同定するために、市販のEpiMatrixアルゴリズム(EpiVax Inc.)を使用してインシリコのアプローチを用いた。これは、MHCクラスII HLA−DR分子の結合溝の内部に収容される可能性について、ある配列からのペプチドを生物情報学的に解析するものである。
【0124】
EpiMatrixは、選択されたMHC分子のそれぞれに結合する推定確率によって、任意のポリペプチド配列に由来する、8アミノ酸重複する9アミノ酸残基の配列をランク付けするマトリクスに基づくアルゴリズムである。(De Grootら, AIDS Research and Human Retroviruses 13:539〜41 (1997))。マトリクスモチーフをつくり出す手順は、Schaferら, Vaccine 16:1880〜4 (1998)によって公開された。この実施例においては、HLA DR1、HLA DR3、HLA DR4、HLA DR7、HLA DR8、HLA DR11、HLA DR13及びHLA DR15について結合可能性を評価する。タンパク質配列中の各9マーのフレームをスコア化することにより推定MHCリガンドを選択する。このスコアは、9マーの配列を、各MHCアレルに結合することが知られているアミノ酸配列のマトリクスと比較することによって得られる。遡及研究により、EpiMatrixが、公開されたMHCリガンドを正確に予測することが実証されている(Jesdaleら, 於Vaccines '97 (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, ニューヨーク州, 1997))。複数のMHC分子に結合するペプチドをうまく予想することも確認されている。
【0125】
各アレルゲンについてのEpiMatrixデータは、以下のいずれかとして示される:
・各アレルについての結合(Z)スコア及び8個のアレルについての「ヒット」数を有する、重複する9マーのペプチドデータ(予測されるバインダーの上位5%以上のZスコア):又は
・データベースの複数の配列の解析のデータが、タンパク質の全ての変異体についての結合の概要を与えるために「クラスター化(clustered)」されている、クラスターレポート。
「EpiMatrixヒット」は、当該配列内の8個のアレルについての高い予測Z結合スコアの数を意味し、一方「EpiMatrixクラスタースコア」は、クラスターの長さに対して正規化したヒット数から得られる。従って、クラスタースコアは、ランダムペプチド標準に対する、予測された凝集MHC結合特性の過剰又は不足である。10を超えるスコアは広範なMHC結合特性を示すものとみなされる。
【0126】
EpiMatrix解析はBet v1の公知のアイソフォームの全配列について実施し、その対応するNCBIアクセッション番号を以下に列挙する:
【0127】
【表3】

【0128】
表2のアクセッション番号によりインデックス化された、さらなる公知のBet v1配列についてもEpimatrix解析を実施した。
【0129】
これらの解析により、良好なMHCクラスII結合性を有すると予測される上記配列に由来する核となるペプチド(及びその隣接配列)が同定された。これらの配列を以下の表1及び2に示す。示されるように、同定されたペプチドの多くが、異なるBet v1アイソフォーム間で高度に保存されている。
【0130】
表1及び2において、「主要配列中の残基」は、解析した配列内のペプチドの位置を示す。核となるペプチド(中央部の太字で強調したアミノ酸)によって、解析中に同定された実際の結合性配列が規定される。安定化する隣接部(flanks)(N末端及びC末端、太字ではない)は、核となる配列とともに使用するために含めたものであり、典型的にはペプチドの製造を助けるのに必要である。「ヒット数」は、試験したすべてのMHCの種類に対する、配列内の高い予測結合親和性の数をいう。「EpiMatrixクラスタースコア」は、クラスターの長さに対して正規化したヒット数から得られる。従って、クラスタースコアは、ランダムペプチド標準に対する、予測された凝集MHC結合特性の過剰又は不足である。10を超えるスコアは広範なMHC結合特性を示すものとみなされる。
【0131】
【表4】

【0132】
表1A
Bet v1のEpiMatrix解析。配列:P15494:予測される複数のHLA DRアレル結合領域:FNYETETTSVIPAARLFKAFILDGDNLF(4−31)。
【0133】
【表5】

【0134】
【表6】

【0135】
実施例2
Bet v3の公知のアイソフォームの全配列(NCBIアクセッション番号:P43187)について、上記EpiMatrix解析を実施した。これらの解析により、良好なMHCクラスII結合性を有すると予測される上記配列に由来する核となるペプチド(及びその隣接配列)が同定された。これらの配列を以下の表3に示す。表3の見出し及び注釈は上記表1と同様である。
【0136】
【表7】

【0137】
P43187の残基80〜94の配列、TVKSFTREGNIGLQF(ペプチドID NO:P55、SEQ ID NO:36)も良好なMHCクラスII結合性を有すると予測された。
Bet v3に由来する他のカバノキアレルゲン配列のさらなるインシリコ解析を本明細書に示す:
【0138】
表3A
Bet v3のEpiMatrix解析。配列:GI1168696_SPP43187:予測される複数のHLA DRアレル結合領域SLNTLRLRRIFDLFDK(35−50)。
【0139】
【表8】

【0140】
実施例3
Bet v4の公知のアイソフォームの全配列(NCBIアクセッション番号:Q39419、CAA73147)について、上記EpiMatrix解析を実施した。これらの解析により、良好なMHCクラスII結合性を有すると予測される上記配列に由来する核となるペプチド(及びその隣接配列)が同定された。これらの配列を以下の表4に示す。表4の見出し及び注釈は上記表1と同様である。
【0141】
【表9】

【0142】
実施例4
Bet v6の公知のアイソフォームの全配列(NCBIアクセッション番号:O65002)について、上記EpiMatrix解析を実施した。これらの解析により、良好なMHCクラスII結合性を有すると予測される上記配列に由来する核となるペプチド(及びその隣接配列)が同定された。これらの配列を以下の表5に示す。表5の見出し及び注釈は上記表1と同様である。
【0143】
【表10】

【0144】
実施例5
Bet v7の公知のアイソフォームの全配列(NCBIアクセッション番号:CAC84116)について、上記EpiMatrix解析を実施した。これらの解析により、良好なMHCクラスII結合性を有すると予測される上記配列に由来する核となるペプチド(及びその隣接配列)が同定された。これらの配列を以下の表6に示す。表6の見出し及び注釈は上記表1と同様である。
【0145】
【表11】

【0146】
実施例5A
Bet v2に由来する他のカバノキアレルゲン配列のさらなるインシリコ解析を本明細書に示す:
【0147】
表6A
Bet v2のEpiMatrix解析。配列:GI1942360_PDB1CQA:予測される複数のHLA DRアレル結合領域:SVWAQSSSFPQFKPQEITGIMK(33−54)。
【0148】
【表12】

【0149】
表6B
Bet v2のEpiMatrix解析。配列:GI1942360_PDB1CQA:予測される複数のHLA DRアレル結合領域:IKYMVIQGEAGAVIRGKKGSGG(72−93)。
【0150】
【表13】

【0151】
実施例6
実施例1〜5Aで実施した解析に基づいて、次のアッセイでのスクリーニングのために表7に示す以下のペプチドを設計した。溶解度及び他の物理化学的特性を高めるために、天然配列の修飾を設計手順に含めた。例えば、Bir12Aについて、親(parent)の62−77Rの残基は、Bir12Aのペプチド配列が親配列の残基62〜77に対応し、溶解度を高めるためにそのC末端に追加のR残基を有することを示す。同様に、Bir01F、G、H及びIについて、親の4−18Kの残基は、これらのペプチド配列が親配列の残基4〜18に対応し、溶解度を高めるためにそのC末端に追加のK残基を有することを示す。
【0152】
【表14】

【0153】
実施例7
インビトロの結合解析
MHCクラスIIに結合する可能性があると同定されたペプチドを、水性の酸性環境での溶解性についてプレスクリーニングし、ペプチドをインビトロMHCクラスII結合アッセイにおいて試験する。
【0154】
方法
使用するアッセイは競合的MHCクラスII結合アッセイであり、このアッセイでは、それぞれのペプチドを、調べるそれぞれのヒトMHCクラスIIアロタイプから既知のコントロール結合物(binder)を置換するその能力について解析する。この研究で使用するアロタイプ及びコントロールペプチドは典型的には以下に示したものである。
【0155】
【表15】

【0156】
競合アッセイにおいて、表1〜7のペプチドをそれぞれ解析し、コントロールペプチドと比較した相対的結合性についてスクリーニングする。競合アッセイの性質に起因して、各ペプチドのデータは、コントロールペプチドのIC50に対するそれ自体のIC50の比として測定する。従って、コントロールペプチドと同等のIC50値を有するペプチドは同一の結合親和性を有するが、1未満の比を有するペプチドはより高い親和性を有し、1よりも大きな比を有するペプチドはより低い親和性を有する。
【0157】
水溶液中での溶解性は、ペプチドが効果的な治療剤であるための必須の基準である。従って、溶解性スクリーニングの結果として、多数の結合性の記録(register)における、大きな疎水性アミノ酸残基の頻度が高い非常に疎水性の高いペプチドは排除されることになる。このことは、雑多なHLA−DRB1*結合物(binders)の特徴である。1つ以上のMHCクラスIIアロタイプに結合するペプチドを同定する。かかるペプチドは、MHC構造の相同性により、試験していない同様のアロタイプに結合する能力を有することが期待される。
【0158】
実施例8
以下の方法を、実施例7と同じペプチドに適用する。
【0159】
細胞増殖アッセイ
PBMC(試験するすべてのパラメータについて140×106個の細胞を要する)で、細胞増殖アッセイを行う。放射標識化合物3H−チミジンの取り込みによって増殖を測定する。より詳細には、適切な抗原又はペプチド濃縮物100μlを96ウェルプレートの適切なウェルの中に分配する。次いで、プレートを37℃、5%CO2の加湿インキュベーターの中に最長4時間まで置く。上記の単離されたPBMCを室温で、完全培地中2×106細胞/mlの濃度に調製する。次いで、抗原/ペプチドを含む96ウェルプレートの各ウェルの中に、細胞溶液100μlを分配する。次いで、プレートを6〜8日間インキュベートする。各ウェルにトリチウム化チミジンストック溶液(無血清RPMI培地中1.85 MBq/ml)10μlを加えることによって、培養物をトリチウム化チミジン溶液でパルスする。次いで、プレートを8〜16時間インキュベーターに戻しておく。次いで、Canberra Packard FilterMate 196セルハーベスターを用いて培養物を集める。適切なβ線シンチレーションカウンターを用いて、乾燥させたろ過マットをカウントする。
【0160】
ペプチドを含むウェルからのカウントを、培地単独を含むウェル(1つのグループにつき12ウェル)と統計的に比較する。ノンパラメトリックマンホイットニー(Mann−Whitney)検定を使用する。すべての対象について同じ統計的検定を使用する。培地のみのウェルとペプチドで刺激したウェルとの間の統計的に有意な差は、ペプチドによるPBMCの陽性刺激とみなす。
【0161】
サイトカイン放出アッセイ
36個のペプチドを小規模で製造した(およそ10 mgのバッチサイズ、非GMP)。各ペプチドの純度はHPLCにより少なくとも95%であった。ペプチド及びコントロール(ネガティブコントロールは培地であり、ポジティブコントロールはブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)25 ng/ml及びカバノキ花粉アレルゲン全体の抽出物100μg/mlであった)を含む96ウェル培養プレートを予め調製し、アッセイ日前に−20℃で保存した。200μg/ml濃度のペプチドを含む100μl体積でペプチドをウェルに添加し、その後に100μlの細胞を添加して最終アッセイ濃度が100μg/mlとなるようにした。
【0162】
フィコール(Ficoll)密度勾配遠心分離によって、ヘパリン処置した血液から末梢血単核球(PBMC)を単離した。次いで、5×106細胞/mlのPBMC懸濁液の100μlアリコートを各ウェルに添加し、37℃、5%CO2加湿インキュベーター中に5日間置いた。刺激の後、多重ビーズアッセイにより試験するために培養上清(100μl)を集めた。
【0163】
解凍した培養上清に対して多重サイトカインビーズアッセイ(IL−10、IL−13、インターフェロンガンマ(IFN−g))を製造業者の使用説明書に従って実施した。各培養上清サンプルについて単一の測定を実施した。多重アッセイ完了後、アッセイで作成された検量線から内挿法によって個々のサイトカインレベルを決定した。IL−13及びIFN−gアッセイについては100 pg/ml超を、IL−10アッセイについてはバッククラウンドの>4倍を陽性の結果とみなした。試験した47のカバノキアレルギー対象(subject)のうち応答する数を、3つのサイトカインについて、各ペプチドについて計算した。IL−13又はIFN−gの結果を表9に要約する。
【0164】
表8
応答%は、各ペプチドが100 pg/mlの閾値を超えるIL−13又はIFN−gを誘導した対象の割合を示す。
【0165】
【表16】

【0166】
ワクチンに含めるためには、高い割合の対象で陽性反応を誘導するペプチドが望ましい。示されるように、トップの成績の(top performing)ペプチドは、Bir02J(02シリーズのトップ)、Bir 01I(01シリーズのトップ)及びBir12Bであった。いずれのワクチンのコアも、理想的にはこれらのペプチドを含むべきである。2番目に成績のよいペプチドは、Bir04及びBir09(09シリーズのトップ)であり、これらは、Bir02J、Bir01I及びBir12Bのコア混合物に添加されてよい。3番目に成績のよいペプチドは、Bir07、Bir07C、Bir11及びBir16Aであった。このグループの追加ペプチドをワクチン混合物に添加して、さらに範囲を増加させてよい。Bir15は、4番目に成績のよいペプチドであり、これもワクチン混合物に添加されてよい。種々のシリーズの他のペプチドに関しては、望ましい順にBir01F、01G又は01Hが、Bir01Iの有用な変異体であり;Bir02E、02G、02I又は最後は02Dが、Bir02Jの有用な変異体であり;Bir09A、09B又は最後は09Cが、Bir09の有用な変異体であり;且つBir16BがBir16Aの有用な変異体である。従って、可能性のある好ましい混合物には、Bir02J、Bir01I、Bir12B、Bir04、Bir09、Bir07C及びBir16Aが含まれる。Bir11及び/又はBir15は、含まれてもよく、或いはBir07C及び/又はBir16Aの代わりであってもよい。
【0167】
IL−10の放出に関しては、IL−13又はIFN−g産生について3つのトップペプチドのうちの1つとして上記で挙げたBir01Iが、49%の個体でIL−10応答を誘導した。Bir02Iも高い割合(43%)の個体でIL−10産生を誘導した。強力なIL−10誘導ペプチドを含めることは、ワクチン接種後の耐性誘導に役立ち得る。
【0168】
実施例9−溶解度スクリーニング
A)イントロダクション
【0169】
【表17】

【0170】
B)溶解度試験
260 mMトレハロースを含み、3.0〜7.0のpH範囲に及び、2 mM HCIで修正(modified)された溶液を加えた一連のマトリックスを付属(Appendix)2に示すように調製した。9個のペプチドのそれぞれの溶解度は、付属1に従って、それぞれのマトリックスにおいて評価した。最初に溶解性は得られたが、その後溶液からペプチドが沈殿した場合には、追加量の関連マトリックスを添加して、およそ200μMのペプチド溶解度を試して得た。
【0171】
使用したカバノキ参照ペプチドの詳細を表9−2に示す。全てのペプチドは、Bachem AG、Bubendorf、Switzerlandにより製造された。
【0172】
【表18】

【0173】
C)結果
溶解度スクリーニングの結果を以下の表9−3から9−8に示す。
【0174】
【表19】

【0175】
【表20】

【0176】
【表21】

【0177】
【表22】

【0178】
【表23】

【0179】
【表24】

【0180】
【表25】

【0181】
実施例9−付属(Annex)1
ペプチド溶解度研究
溶解度手順
調製物ビヒクル(formulation vehicles)を調製し、pH測定を行った。
・ペプチドの計量
− 各評価にはおよそ1 mgが必要であった。
− その後の溶解度評価に適切な容器、すなわち透明なガラスのHPCLバイアル(スクリューキャップを有する)に物質を分配した。
・溶解度の評価(各マトリックスについて)
− マトリックスのアリコート(50から100〜L)を必要に応じて添加した。
− ペプチドの溶解性は目視検査により読み取った。
− 溶媒の各アリコート添加後のサンプルの特徴の説明を記録した。
− 24時間後に溶解性の目視評価を繰り返した。
・24時間後に溶液からペプチドが沈殿している場合には、追加のバッファーを添加して、最終濃度をおよそ0.2 mMとした(1 mL当たり200 nmolは、およそ0.35 mg/mLと同等とすべきである)。
・ペプチド溶解度の計算(最初の評価)
− 計量された粉末の絶対量に基づく。
− ペプチド分子量並びにペプチド含量及び純度を用いて、溶解性が得られたモル濃度を測定する。
【0182】
計算(Calculalions)
溶解度(mg/ml)「そのまま(as is)」=(重量(mg)/希釈物(μl))×1000
溶解度(mg/ml)=(重量(mg)/希釈物(μl))×1000×含量%×純度%
溶解度(μmol/ml)=(重量(mg)/希釈物(μl))1000×含量%×純度%×(1/分子量(MolWt))×1000
【0183】
実施例9−付属(Annex)2
最初の溶解度及び安定性スクリーニングのためのバッファー
10 mMの緩衝剤濃度で各マトリックスを調製した。各バッファーは、260 mMのトレハロース二水和物(FW 378.3)を含んだ。
【0184】
マトリックスの調製
示す手順は、100 mLの各バッファーの調製のためのものであるが、量を調整するたことにより別量を調製することもできる。
・クエン酸ナトリウム及びリン酸二水素カリウムの0.1 Mストック溶液を調製した。
・260 mMと等価な重量のトレハロース二水和物を、70〜80 mLの脱イオン蒸留水を含む適切な混合容器に移し溶解させた。
・10 mLの適切な0.1 Mストックバッファー溶液を混合容器に添加し、撹拌した。
・必要に応じて、2 mMの塩酸又は0.1 Mの水酸化ナトリウムを添加することにより、マトリックスのpHを所望の値に調整した。
・溶液を最終的に100重量gに希釈し、pHを再評価した。
【0185】
最初の溶解度及び安定性スクリーニングのためのバッファーを、バッファー塩又はpH調整剤(modifier)/pHとして示す:
2 mM HCl及び260 mMトレハロース二水和物/pH 2.65
10 mMクエン酸ナトリウム及び260 mMトレハロース二水和物/pH 3.01
10 mMクエン酸ナトリウム及び260 mMトレハロース二水和物/pH 3.99
10 mMクエン酸ナトリウム及び260 mMトレハロース二水和物/pH 5.02
10 mMクエン酸ナトリウム及び260 mMトレハロース二水和物/pH 6.01
10 mMリン酸二水素カリウム及び260 mMトレハロース二水和物/pH 6.03
10 mMリン酸二水素カリウム及び260 mMトレハロース二水和物/pH 7.03
【0186】
実施例10−ヒスタミン放出アッセイ
このアッセイの目的は、治療の間にアレルギー反応を引き起こし得るヒスタミン放出をもたらす血中好塩基球(組織マスト細胞の代わりとして)を活性化することができるかどうかを同定することであった。高い頻度でヒスタミン放出を誘導するペプチド混合物を含む組成物は、ワクチンとしての使用に適さないと見なされる場合がある。
【0187】
ヒスタミン放出には、好塩基球の表面での隣接する特異的IgE分子の架橋が必要である。評価するペプチドは、小さく(11〜18アミノ酸長)、そのため該ペプチドがその分子全体のIgE結合性エピトープのコンフォメーションを保持することを可能にする有意な三次構造は有さないはずである。さらに、溶液中のペプチド単量体は、IgEによって結合されている場合であっても、隣接するIgE分子を架橋できるものであってはならない。
【0188】
カバノキアレルギー対象から得た新鮮な末梢全血からのヒスタミン放出を評価した。アッセイをするには実際的ではない組織マスト細胞の代わりとして、末梢血好塩基球を使用した。上記実施例1〜9の結果に基づき、適切として同定されたペプチド混合物とともに血液をインビトロでインキュベートした。具体的には、以下の混合物を評価した:
混合物1−BIR01I、BIR02J、BIR04、BIR12B、BIR16A、BIR07C
混合物2−BIR01I、BIR02J、BIR04、BIR12B、BIR16A、BIR07C、BIR09
混合物3−BIR01I、BIR02J、BIR04、BIR12B、BIR16A、BIR07C、BIR09B
混合物4−BIR01I、BIR02I、BIR04、BIR12B、BIR16A、BIR07C
混合物5−BIR01I、BIR02I、BIR04、BIR12B、BIR16A、BIR07C、BIR09
混合物6−BIR01I、BIR02I、BIR04、BIR12B、BIR16A、BIR07C、BIR09B
【0189】
カバノキアレルゲン全体の抽出物に応答したヒスタミン放出を各対象について測定し、好塩基球感作を確認した。各アッセイにおいて、細胞を2回凍結/解凍することによって生じさせた総ヒスタミン放出を表すポジティブコントロールを含めた。自発的なヒスタミン放出についてのネガティブコントロールは、バッファーのみで細胞をインキュベートすることにより生じさせた。
【0190】
Immunotechヒスタミン放出イムノアッセイ(Immunotech Histamine Release Immunoassay)キットを製造業者の使用説明書に従って使用して、アッセイを行った。マイクロタイタープレートのウェルにおいて、血中好塩基球にペプチド混合物、アレルゲン全体又はバッファーをインビトロで負荷した後、上清を取り出し、サンプル中のヒスタミンをアシルヒスタミンに転換させた。アシル化したサンプルを競合的アシルヒスタミンELISAによって試験した。
【0191】
ペプチド混合物を、ヒスタミン放出を誘導するその能力について、5 log10の範囲(1〜10,000 ng/mL)にわたってアッセイした。アッセイした濃度範囲は、治療の間に達成され得るペプチドの理論的なインビボ用量に基づいて選択した。例えば、5リットルの血液量に入る各ペプチドの用量31μg(およそ3 nmol/ペプチド等価)は、ヒスタミン放出アッセイの用量範囲の下限である6 ng/mlの血中濃度をもたらすことになる。同一濃度範囲にわたって、カバノキアレルゲン全体の抽出物を使用した。
【0192】
各希釈溶液について単一の測定を行った。ELISAが完了した後、ELISAアッセイで作成した検量線から内挿法によって、個々のヒスタミンレベルを決定した。希釈度を考慮して、サンプルからの結果を調整した。ペプチド/アレルゲン調製物の2つ以上の連続希釈物が、凍結解凍したポジティブコントロールにおいて見られた総ヒスタミン放出の15%よりも多く(ポジティブコントロールの15%よりも多く)を誘発した場合、又は試験した最も高い濃度(ペプチドについて10μg/mL)でポジティブコントロールの15%よりも大きい単一の値が得られた場合、これを「陽性のヒスタミン放出」とみなした。
【0193】
研究の間に合計40回のヒスタミン放出アッセイを完了させた。これらのうち5回のアッセイは、例えば、培養液プラスバッファーのネガティブコントロールのウェルにおける容認し難いほど高いレベル(ポジティブコントロールの15%を超える)の自発的な放出などに起因して、適切なQCコントロールを満たすことができなかったので排除した。
【0194】
試験した混合物の全てが良好なヒスタミン放出特性を示した。研究所見を以下に要約する:(WA=アレルゲン全体)
【0195】
【表26】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)SEQ ID NO:74(BIR12B;AKYMVIQGEPGRVIRGK)、SEQ ID NO:72(BIR11;FPQFKPQEITGIMK)、SEQ ID NO:71(BIR10;GSVWAQSSSFPQFK)、SEQ ID NO:73(BIR12A;PTGMFVAGAKYMVIQGR)、SEQ ID NO:75(BIR13;IKYMVIQGEAGAVIRGK)及びSEQ ID NO:76(BIR14;EAGAVIRGKKGSGGIT)のポリペプチドの少なくとも1つ、又はそれらのいずれかの変異体、並びに
(ii)SEQ ID NO:53(Bir02J;PAARMFKAFILEGDKLVPK)、SEQ ID NO:48(Bir01I;FNYETETTSVIPAARK)、SEQ ID NO:54(Bir04;PGTIKKISFPEGFPFKYV)、SEQ ID NO:67(Bir09;ETLLRAVESYLLAHSDAY)、SEQ ID NO:60(BIR07;SNEIKIVATPDGGSILK)及びSEQ ID NO:63(Bir07C;SNEIKIVATPEGGSILK)のポリペプチドの少なくとも1つ、又はそれらのいずれかの変異体
[前記変異体は、
(II)(i)若しくは(ii)で特定された対応するポリペプチドの配列を含む、30アミノ酸長までのより長いポリペプチド、又は
(II)(i)若しくは(ii)で特定された対応するポリペプチドの配列と少なくとも65%の相同性を有する配列(この配列は、前記対応するポリペプチドに対して寛容化することができる)を含む、9〜30アミノ酸長のポリペプチド;又は
(III)(i)若しくは(ii)で特定された対応するポリペプチドの配列の少なくとも9個連続したアミノ酸配列、若しくは前記少なくとも9個連続したアミノ酸と少なくとも65%の相同性を有する配列(この少なくとも9個連続したアミノ酸の配列、若しくは相同配列は、前記対応するポリペプチドに対して寛容化することができる)を含む、9〜30アミノ酸長のポリペプチド
である]
を含む、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に使用するのに適した組成物。
【請求項2】
請求項1で選択されていない、(i)若しくは(ii)の少なくとも1つの追加のポリペプチド、又はその変異体をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
SEQ ID NO:77(BIR15;SLNTLRLRRIFDLFDK)若しくはSEQ ID NO:78(BIR16A;AERERIFKRFDANGEGK)の少なくとも1つの追加のポリペプチド、又はそれらのいずれかの変異体をさらに含む、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
(a)ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体;
(b)ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体;及び
(c)ポリペプチドBir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体;
を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
− Bir01Iの前記変異体が、Bir01F(FNYETEATSVIPAARK)、Bir01G(FNYEIEATSVIPAARK)若しくはBir01H(FNYEIETTSVIPAARK)であり;及び/又は
− Bir02Jの前記変異体が、Bir02E(PAARLFKAFILEGDTLIPK)、Bir02G(PAARLFKAFILEGDNLIPK)、Bir02I(PAARMFKAFILD)若しくはBir02D(PAARMFKAFILDGDKLVPK)であり;及び/又は
− Bir09の前記変異体が、Bir09A(GETLLRAVESYLLAHS)、Bir09B(KEMGETLLRAVESYLLAHS)若しくはBir09C(KEKGETLLRAVESYLLAHS)から選択され;及び/又は
− Bir16Aの前記変異体が、Bir16B(AERERIFKRFDAGGEGK)である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(a)Bir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体;
(b)Bir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体;
(c)Bir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体;
(d)Bir04(PGTIKKISFPEGFPFKYV)又はその変異体;
(e)Bir09(ETLLRAVESYLLAHSDAY)又はその変異体;
(f)Bir16A(AERERIFKRFDANGEGK)又はその変異体;
(g)Bir07(SNEIKIVATPDGGSILK)又はその変異体;
(h)Bir07C(SNEIKIVATPEGGSILK)又はその変異体;
(i)Bir011(FPQFKPQEITGIMK)又はその変異体;
(j)Bir15(SLNTLRLRRIFDLFDK)又はその変異体;
[前記変異体は、
(I)(a)〜(j)で特定された対応するポリペプチドの配列を含む、30アミノ酸長までのより長いポリペプチド、又は
(II)(a)〜(j)で特定された対応するポリペプチドの配列と少なくとも65%の相同性を有する配列(この配列は、前記対応するポリペプチドに対して寛容化することができる)を含む、9〜30アミノ酸長のポリペプチド;又は
(III)(a)〜(j)で特定された対応するポリペプチドの配列の少なくとも9個連続したアミノ酸の配列、若しくは前記少なくとも9個連続したアミノ酸と少なくとも65%の相同性を有する配列(この少なくとも9個連続したアミノ酸の配列、若しくは相同配列は、前記対応するポリペプチドに対して寛容化することができる)を含む、9〜30アミノ酸長のポリペプチド
である]
から選択される少なくとも3つの異なるポリペプチドを含む、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に使用するのに適した組成物。
【請求項7】
(a)ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体;
(b)ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)及びBir01I(FNYETETTSVIPAARK)の少なくとも1つ、又はそれらのいずれかの変異体;並びに
(c)上記で選択されていない、(a)から(j)の少なくとも1つの追加のポリペプチド
を含む、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体、ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体、ポリペプチドBir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体、及び上記で選択されていない、(a)から(j)の少なくとも1つの追加のポリペプチドを含む、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体、ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体、ポリペプチドBir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体、ポリペプチドBir04(PGTIKKISFPEGFPFKYV)又はその変異体、ポリペプチドBir09(ETLLRAVESYLLAHSDAY)又はその変異体、ポリペプチドBir07C(SNEIKIVATPEGGSILK)又はその変異体、及びポリペプチドBir16A(AERERIFKRFDANGEGK)又はその変異体を含み;任意選択で、さらなるポリペプチドを含まなくてもよい、請求項6〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体、ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体、ポリペプチドBir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体、ポリペプチドBir04(PGTIKKISFPEGFPFKYV)又はその変異体、ポリペプチドBir07C(SNEIKIVATPEGGSILK)又はその変異体、ポリペプチドBir16A(AERERIFKRFDANGEGK)又はその変異体、及びポリペプチドBir09B(KEMGETLLRAVESYLLAHS)又はその変異体を含み、任意選択でさらなるポリペプチドを含まなくてもよい、請求項6〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
ポリペプチドBir12B(AKYMVIQGEPGRVIRGK)又はその変異体、ポリペプチドBir02J(PAARMFKAFILEGDKLVPK)又はその変異体、ポリペプチドBir01I(FNYETETTSVIPAARK)又はその変異体、ポリペプチドBir04(PGTIKKISFPEGFPFKYV)又はその変異体、ポリペプチドBir07C(SNEIKIVATPEGGSILK)又はその変異体、及びポリペプチドBir16A(AERERIFKRFDANGEGK)又はその変異体を含み、任意選択でさらなるポリペプチドを含まなくてもよい、請求項6〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
− Bir01Iの前記変異体が、Bir01F(FNYETEATSVIPAARK)、Bir01G(FNYEIEATSVIPAARK)若しくはBir01H(FNYEIETTSVIPAARK)であり;及び/又は
− Bir02Jの前記変異体が、Bir02E(PAARLFKAFILEGDTLIPK)、Bir02G(PAARLFKAFILEGDNLIPK)、Bir02I(PAARMFKAFILD)若しくはBir02D(PAARMFKAFILDGDKLVPK)であり;及び/又は
− Bir09の前記変異体が、Bir09A(GETLLRAVESYLLAHS)、Bir09B(KEMGETLLRAVESYLLAHS)若しくはBir09C(KEKGETLLRAVESYLLAHS)から選択され;及び/又は
− Bir16Aの前記変異体が、Bir16B(AERERIFKRFDAGGEGK)である、
請求項6〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
− 集団におけるカバノキ花粉アレルギーの個体のパネルの少なくとも50%若しくは少なくとも60%を寛容化することができ、及び/又は
− 少なくとも1つのさらなるポリペプチドを合計で13の独特の/異なるポリペプチドまで含み、さらなるポリペプチドが、
(a)上記で選択されなかったSEQ ID NO:1〜80のいずれか中の少なくとも9個以上連続したアミノ酸と少なくとも65%の配列同一性を有する配列を含み;且つ
(b)9〜30アミノ酸長のものである、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
9〜20アミノ酸長又は13〜17アミノ酸長のものである前記ポリペプチドを少なくとも1つを含み、且つ/又は前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1〜80のいずれかと少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
1つ以上のポリペプチドが、
(i)N末端のアセチル化;
(ii)C末端のアミド化;
(iii)アルギニン及び/又はリジンの側鎖アミンの1つ以上の水素のメチレン基による置換;
(iv)グリコシル化;並びに
(v)リン酸化
から選択される1つ以上の修飾を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
ペプチドの少なくとも1つが、
(i)T細胞エピトープに隣接するペプチド残基のN末端側:ペプチドが由来するタンパク質の配列中の前記残基のすぐN末端側の2個〜6個の連続したアミノ酸に対応する1個〜6個の連続したアミノ酸;及び/又は
(ii)T細胞エピトープに隣接するペプチド残基のC末端側:ペプチドが由来するタンパク質の配列中の前記残基のすぐC末端側の1個〜6個の連続したアミノ酸に対応する1個〜6個の連続したアミノ酸;又は
(iii)T細胞エピトープに隣接するペプチド残基のN末端側及びC末端側の双方:アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選択される少なくとも1つのアミノ酸
を含むように、可溶性であるように操作されており、
該ポリペプチドが少なくとも3.5 mg/mlの溶解度を有し、T細胞エピトープが3.5 mg/ml未満の溶解度を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
ペプチドの少なくとも1つが、さらに
(i)ペプチドの天然配列中の任意のシステイン残基が、セリン若しくは2−アミノ酪酸で置換され;且つ/又は
(ii)ペプチドの天然配列のN末端若しくはC末端における3つまでのアミノ酸の中の、T細胞エピトープに含まれていない疎水性残基が欠失し;且つ/又は
(iii)ペプチドの天然配列のN末端若しくはC末端における4個までのアミノ酸の中の配列Asp−Glyを含む、T細胞エピトープに含まれていない任意の2つ連続したアミノ酸が欠失し;且つ/又は
(iv)1つ以上の正に荷電した残基が、ペプチドの天然配列のN末端及び/若しくはC末端に付加される
ように、可溶性であるように操作されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
各ポリペプチドが、0.03〜200 nmol/ml、0.3〜200 nmol/ml、50〜200 nmol/ml又は30〜120 nmol/mlの範囲の濃度を有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
薬学的に許容される担体若しくは希釈剤をさらに含み、並びに/又は任意選択で、グルココルチコイド、ビタミンD及び/若しくはラパマイシンから選択される1つ以上のアジュバンドを含んでいてもよく、且つ/又はさらなるペプチドを含まない、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
発現すると、請求項1〜17のいずれか1項に定義したとおりの組成物の産生をもたらす少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に使用するための組成物。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか1項に定義したとおりの異なるポリペプチドをコードする4つ以上のポリヌクレオチド配列を含む、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に使用するためのベクター。
【請求項22】
(i)SEQ ID NO:74(BIR12B;AKYMVIQGEPGRVIRGK)、SEQ ID NO:72(BIR11;FPQFKPQEITGIMK)、SEQ ID NO:71(BIR10;GSVWAQSSSFPQFK)、SEQ ID NO:73(BIR12A;PTGMFVAGAKYMVIQGR)、SEQ ID NO:75(BIR13;IKYMVIQGEAGAVIRGK)及びSEQ ID NO:76(BIR14;EAGAVIRGKKGSGGIT)のポリペプチドの少なくとも1つ、又は請求項1(I)〜(III)で定義したとおりのそれらのいずれかの変異体、並びに
(ii)SEQ ID NO:53(Bir02J;PAARMFKAFILEGDKLVPK)、SEQ ID NO:48(Bir01I;FNYETETTSVIPAARK)、SEQ ID NO:54(Bir04;PGTIKKISFPEGFPFKYV)、SEQ ID NO:67(Bir09;ETLLRAVESYLLAHSDAY)、SEQ ID NO:60(BIR07;SNEIKIVATPDGGSILK)、及びSEQ ID NO:63(Bir07C;SNEIKIVATPEGGSILK)のポリペプチドの少なくとも1つ、又は請求項1(I)〜(III)で定義したとおりのそれらのいずれかの変異体
を含み、異なるポリペプチドのそれぞれが、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に、同時に、別々に、又は連続的に使用するためのものである、製品。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物;請求項21に記載のベクター;又は請求項22に記載の製品;及び薬学的に許容される担体若しくは希釈剤、並びに任意選択で、グルココルチコイド、ビタミンD及びラパマイシンから選択される1つ以上のアジュバントを含む、寛容化によるカバノキ花粉アレルギーの予防又は治療に使用するための医薬製剤。
【請求項24】
経口投与、鼻腔内投与、局所投与、皮下投与、舌下投与、皮内投与、口腔内投与、表皮投与、又は吸入、注入若しくはパッチによる投与のために製剤化された、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
さらなるポリペプチドアレルゲンに対する個体の寛容化に使用するためのさらなるポリペプチドアレルゲンをさらに含む、請求項1〜20のいずれか1項で定義されたとおりの組成物、又は請求項22で定義されたとおりの製品。
【請求項26】
T細胞が請求項1で定義されたとおりの組成物を認識するかどうかのインビトロでの判定方法であって、前記T細胞を前記組成物に接触させ、前記T細胞が前記組成物によって刺激されるかどうかを検出することを含む、方法。
【請求項27】
個体が、カバノキ花粉アレルギーを有しているか、又は有する危険性があるかどうかを判定するために行なわれる、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2013−519717(P2013−519717A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553390(P2012−553390)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000206
【国際公開番号】WO2011/098778
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(509330965)サーカッシア リミテッド (7)
【Fターム(参考)】