説明

カバーの組み付け構造

【課題】カバーの差込爪をパネルの差込孔に差し込み、この差し込み状態のまま、カバーの係合爪をパネルの係合穴に掛け留めてパネルの開口を塞ぐカバーの組み付け構造であっても、係合爪を係合穴に掛け留めているときに、差込爪が差込孔から抜け落ちることを防止できる組み付け構造を提供すること。
【解決手段】カバー10は、自身に形成されている差込爪12をパネル30の開口32の縁に形成されている差込孔36に差し込み、この差し込み状態のまま、さらに、自身に形成されている係合爪16、16、16をパネル30の開口32の縁に形成されている係合穴40、40、40に掛け留めてパネル30の開口32を塞ぐことができるように構成されている。パネル30における差込孔36の近傍には、突起42が形成されている。一方、差込爪12には、突起42を引っ掛け可能な孔12aまたはフック112aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーの組み付け構造に関し、詳しくは、カバーに形成されている差込爪をパネルの開口の縁に形成されている差込孔に差し込み、この差し込み状態のまま、カバーに形成されている係合爪をパネルの開口の縁に形成されている係合穴に掛け留めてパネルの開口を塞ぐカバーの組み付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネルに形成されている開口を塞ぐようにカバーを組み付ける技術が既に知られている。ここで、下記特許文献1には、図7〜8に示すように、カバー(例えば、ヒューズカバー)210に形成されている差込爪212、212をパネル(例えば、インストルメントパネル)230の開口232の縁に形成されている差込孔236、236に差し込み、この差し込み状態のまま、カバー210に形成されている係合爪216、216、216をパネル230の開口232の縁に形成されている係合穴240、240、240に掛け留めることで、パネル230に形成されている開口232を塞ぐようにカバー210を組み付ける技術が開示されている。これにより、簡便にパネル230の開口232を塞ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−16331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、図9に示すように、カバー210の差込爪212、212をパネル230の差込孔236、236に差し込んだ状態のまま、カバー210の係合爪216、216、216をパネル230の係合穴240、240、240に掛け留めるとき、カバー210は差込爪212を中心に回転することとなっている(図9(A)において、想像線aが回転の中心を示している)。このとき、図9(A)に示すように、この回転軸から異なる距離に3個の係合爪216、216、216が形成されている場合、差込爪212に近い係合爪216が係合穴240に掛かり始めると、カバー210の回転の中心は差込爪212からこの係合爪(差込爪212から近い係合爪216)216へと切り替わる(図9(B)において、想像線bが切り替わった後の回転の中心を示している)。そのため、カバー210に対して差込爪212の抜け方向にモーメントが作用することとなり、結果として、差込爪212、212が差込孔236、236から抜け落ちることがあった。
一方、上述した特許文献1では、鉤部を差し込んだ後に係合突起を係合させてインストルメントパネルに形成されている切欠開口部を塞ぐようにカバーを組み付ける技術が開示されている。この技術でも、鉤部を、上述した従来技術のように、高さ方向の異なる位置に複数の係合突起のある製品へ設けた場合、上述した問題点と同様に、ある係合突起を中心として回転のモーメントが加わり、鉤部が抜け落ちることがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、カバーの差込爪をパネルの差込孔に差し込み、この差し込み状態のまま、カバーの係合爪をパネルの係合穴に掛け留めてパネルの開口を塞ぐカバーの組み付け構造であっても、係合爪を係合穴に掛け留めているときに、差込爪が差込孔から抜け落ちることを防止できる組み付け構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、カバーに形成されている差込爪をパネルの開口の縁に形成されている差込孔に差し込み、この差し込み状態のまま、カバーに形成されている係合爪をパネルの開口の縁に形成されている係合穴に掛け留めてパネルの開口を塞ぐカバーの組み付け構造であって、パネルにおける差込孔の近傍には、突起が形成されており、差込爪には、突起を引っ掛け可能な孔またはフックが形成されており、係合爪を係合穴に掛け留めるとき、差込孔への差込爪の差し込みに伴って、この差込爪に形成された孔またはフックが差込孔の近傍に形成された突起に引っ掛けられた状態となっていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、従来技術の説明と同様に、パネルの開口を塞ぐようにカバーを組み付けることができる。この組み付けのとき、パネルに形成された突起が差込爪に形成された係合孔に引っ掛かるため、カバーに対して差込爪の抜け方向にモーメントが作用しても、差込爪が差込孔から抜け落ちることがない。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカバーの組み付け構造であって、突起は、差込孔に差込爪を差し込むときの手前側に位置する面が、この差込方向に向けて傾斜を成す傾斜面とるように形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、差し込まれた差込爪の先端は突起を容易に乗り越えることができる。そのため、突起を係合孔に容易に引っ掛けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るカバーの組み付け構造を示す分解斜視図であり、インストルメントパネルにカバーを組み付ける前の状態を、インストルメントパネルの表面(意匠面)側から見た状態を示している。
【図2】図2は、図1を、逆(インストルメントパネルの裏面)側から見た状態を示している。
【図3】図3は、図1の組み付け状態におけるIII−III線断面図であり、(A)は、組み付け始めの状態を示しており、(B)は、組み付け中の状態を示しており、(C)は、組み付け後の状態を示している。
【図4】図4は、本発明の実施例2に係るカバーの取り付け構造を示す分解斜視図であり、インストルメントパネルにカバーを組み付ける前の状態を、インストルメントパネルの表面(意匠面)側から見た状態を示している。
【図5】図5は、図4を、逆(インストルメントパネルの裏面)側から見た状態を示している。
【図6】図6は、図4の組み付け状態におけるVI−VI線断面図であり、(A)は、組み付け始めの状態を示しており、(B)は、組み付け中の状態を示しており、(C)は、組み付け後の状態を示している。
【図7】図7は、従来技術に係るカバーの組み付け構造を示す分解斜視図であり、インストルメントパネルにカバーを組み付ける前の状態を、インストルメントパネルの表面(意匠面)側から見た状態を示している。
【図8】図8は、図7を、逆(インストルメントパネルの裏面)側から見た状態を示している。
【図9】図9は、図7の組み付け状態におけるIX−IX線断面図であり、(A)は、組み付け始めの状態を示しており、(B)は、組み付け中の状態を示しており、(C)は、組み付け後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、図1〜3を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、カバーおよびパネルの例として、車両(図示しない)に設けられるヒューズカバー10およびインストルメントパネル30を例に説明していく。
【0010】
はじめに、図1〜2を参照して、ヒューズカバー10およびインストルメントパネル30を個別に説明していく。
【0011】
最初に、ヒューズカバー10から説明する。ヒューズカバー10は、後述するインストルメントパネル30に形成されている略矩形状の開口32を塞ぐための蓋部材である。そのため、このヒューズカバー10も、インストルメントパネル30の開口32に嵌め込み可能に略矩形状に形成されている。
【0012】
このヒューズカバー10における短辺側の両縁のうち、一方側の縁(図1〜2において、下側の縁)には、その両端に差込爪12、12が形成されている。この差込爪12、12には、後述する突起42、42を引っ掛け可能な係合孔12a、12aが形成されている。
【0013】
一方、このヒューズカバー10における長辺側の両縁(図1〜2において、左右の両縁)には、係合片14、14が向かい合うように形成されている。また、このヒューズカバー10における長辺側の両縁のうち、一方側の縁(図1〜2において、表面(意匠面)側から見て左側の縁)には、その長手方向に沿って適宜の間隔で3個の係合爪16、16、16が形成されている。
【0014】
また、このヒューズカバー10の表面には、作業者の指を指し込み可能な凹部18が形成されている。なお、このヒューズカバー10は、その差込爪12、12、係合片14、14、係合爪16、16、16および凹部18と共に、剛性を有する合成樹脂によって一体成形されている。
【0015】
次に、インストルメントパネル30を説明する。インストルメントパネル30は、車両の内部において、意匠面を形成するための内装部材である。なお、この実施例1では、各図において、インストルメントパネル30の一部のみを示している。このことは、後述する実施例2においても同様である。
【0016】
このインストルメントパネル30には、上述したように、略矩形状の開口32が形成されている。この開口32を介して、その内部に配置されているヒューズ(図示しない)を着脱することができる。
【0017】
このインストルメントパネル30の内面には、その開口32の縁に沿って矩形枠状のリブ34が形成されている。このリブ34には、上述した差込爪12、12、係合片14、14および係合爪16、16、16にそれぞれ対応するように、差込孔36、36、係合溝38、38および係合穴40、40、40がそれぞれ形成されている。
【0018】
また、このインストルメントパネル30の内面のうち、差込孔36、36の近傍の内面には、上述した突起42、42が形成されている。この突起42は、その差込孔36に差込爪12を差し込むときの手前側に位置する面が、この差し込み方向に向けて傾斜を成す傾斜面42aとなるように形成されている。なお、このインストルメントパネル30は、その開口32、リブ34、差込孔36、36、係合溝38、38および係合穴40、40、40と共に、剛性を有する合成樹脂によって一体成形されている。
【0019】
続いて、図3を参照して、上述したインストルメントパネル30にヒューズカバー10を組み付ける手順を説明する。まず、ヒューズカバー10の差込爪12、12をインストルメントパネル30の差込孔36、36に差し込む作業を行う(図3(A)参照)。すると、この差し込みに伴って、インストルメントパネル30に形成された突起42、42が差込爪12、12に形成された係合孔12a、12aに引っ掛かる(図3(B)参照)。
【0020】
このとき、既に説明したように、突起42、42には傾斜面42a、42aが形成されているため、差し込まれた差込爪12、12の先端は突起42、42を容易に乗り越える。これにより、突起42、42を係合孔12a、12aに容易に引っ掛けることができる。
【0021】
次に、この引っ掛かり状態のまま、ヒューズカバー10の表面(意匠面)を指で押し込んで、ヒューズカバー10をインストルメントパネル30の開口32に嵌め込む作業を行う。これにより、ヒューズカバー10の係合爪16、16、16がインストルメントパネル30の係合穴40、40、40にそれぞれ掛かり始める。
【0022】
これらの記載が、特許請求の範囲に記載の「係合爪を係合穴に掛け留めるとき、差込孔への差込爪の差し込みに伴って、この差込爪に形成された孔またはフックが差込孔の近傍に形成された突起に引っ掛けられた状態となっている」に相当する。
【0023】
このとき、ヒューズカバー10の係合片14、14もインストルメントパネル30の係合溝38、38に差し込まれ始める。やがて、この掛りと差し込みが完了すると、ヒューズカバー10の組み付けも完了する。このようにして、従来技術の説明と同様に、インストルメントパネル30の開口32を塞ぐようにヒューズカバー10を組み付けることができる(図3(C)参照)。
【0024】
なお、組み付けられたヒューズカバー10をインストルメントパネル30から取り外すときには、ヒューズカバー10の凹部18に指を差し込み、この差し込んだ指の先端を凹部18の壁面に引っ掛けてヒューズカバー10を引っ張り出せばよい。
【0025】
本発明の実施例1に係るヒューズカバー10の組み付け構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、従来技術の説明と同様に、インストルメントパネル30の開口32を塞ぐようにヒューズカバー10を組み付けることができる。この組み付けのとき、インストルメントパネル30に形成された突起42、42が差込爪12、12に形成された係合孔12a、12aに引っ掛かるため、ヒューズカバー10に対して差込爪12の抜け方向にモーメントが作用しても、差込爪12、12が差込孔36、36から抜け落ちることがない。
【0026】
また、この構成によれば、突起42、42には傾斜面42a、42aが形成されている。そのため、差し込まれた差込爪12、12の先端は突起42、42を容易に乗り越えることができる。したがって、突起42、42を係合孔12a、12aに容易に引っ掛けることができる。
【0027】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、図4〜6を用いて説明する。この実施例2は、既に説明した実施例1と比較すると、ヒューズカバー10の差込爪12とインストルメントパネル30の突起42との引っ掛かりの構成を異なる構成で実施した形態である。なお、この異なる構成以外の構成は、実施例2でも実施例1と同様であるため、実施例1と同一または均等な構成の部材には、図面において同一符号を付すことで、重複する説明は省略することとする。
【0028】
図4〜5に示すように、ヒューズカバー10の差込爪12、12には、突起42、42を引っ掛け可能なフック112a、112aが形成されている。そして、この実施例2においても、実施例1の説明と同様に、インストルメントパネル30の開口32を塞ぐようにヒューズカバー10を組み付けることができる。
【0029】
この組み付けのとき、図6に示すように、実施例1の説明と同様に、インストルメントパネル30に形成された突起42、42が差込爪12、12に形成されたフック112a、112aに引っ掛かるため、ヒューズカバー10に対して差込爪12の抜け方向にモーメントが作用しても、差込爪12、12が差込孔36、36から抜け落ちることがない。
【0030】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例1、2では、カバーおよびパネルの例として、車両(図示しない)に設けられるヒューズカバー10およびインストルメントパネル30を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、カバー部材およびパネル部材であれば、各種部材に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
10 ヒューズカバー(カバー)
12 差込爪
12a 係合孔
16 係合爪
30 インストルメントパネル(パネル)
32 開口
36 差込孔
40 係合穴
42 突起
42a 傾斜面
112a フック




【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーに形成されている差込爪をパネルの開口の縁に形成されている差込孔に差し込み、この差し込み状態のまま、カバーに形成されている係合爪をパネルの開口の縁に形成されている係合穴に掛け留めてパネルの開口を塞ぐカバーの組み付け構造であって、
パネルにおける差込孔の近傍には、突起が形成されており、
差込爪には、突起を引っ掛け可能な孔またはフックが形成されており、
係合爪を係合穴に掛け留めるとき、差込孔への差込爪の差し込みに伴って、この差込爪に形成された孔またはフックが差込孔の近傍に形成された突起に引っ掛けられた状態となっていることを特徴とするカバーの組み付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載のカバーの組み付け構造であって、
突起は、差込孔に差込爪を差し込むときの手前側に位置する面が、この差込方向に向けて傾斜を成す傾斜面とるように形成されていることを特徴とするカバーの組み付け構造。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−201328(P2011−201328A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67557(P2010−67557)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】