説明

カバーガラスを標本スライドガラスに覆い被せるためのカバーガラス装着モジュール

【課題】カバーガラスを覆い被せるカバーガラス装着位置において標本スライドガラスを確実に、かつ、すばやく配置調節する。
【解決手段】顕微鏡的な調査のためにカバーガラスを標本スライドガラスに覆い被せるためのカバーガラス装着モジュールであって、棚又は標本スライドガラスホルダーからカバーガラス装着位置へ、カバーガラスが装着された標本スライドガラスを運搬する運搬装置と、カバーガラスを覆い被せるためのカバーガラス装着位置において標本スライドガラスを配置調節するための配置調節手段とを有するカバーガラス装着モジュールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡的な調査のためにカバーガラスを標本スライドガラスに覆い被せるためのカバーガラス装着モジュールであって、棚又は標本スライドガラスホルダーから、標本スライドガラスにカバーガラスを載置するカバーガラス装着位置へ、標本スライドガラスを運搬するための運搬装置と、カバーガラスを覆い被せるためのカバーガラス装着位置において標本スライドガラスを配置調節(ausrichten)するための配置調節手段とを有するカバーガラス装着モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
病理学的な調査のために、染色された標本又は組織学的な切片などの組織サンプルは、標本スライドガラスに固定されてカバーガラスが装着される。この仕方でカバーガラスが装着された標本は、次に、顕微鏡下で調査することができる。カバーガラスを覆い被せること、又は、個々の標本スライドガラスにカバーガラスを装着することを自動化されたプロセスで実行するカバーガラス装着装置は、特に、カバーガラスを顕微鏡的な標本スライドガラスに覆い被せることに適する。このプロセスのために、組織サンプルを有する複数の標本スライドガラスが棚又は標本スライドガラスホルダーの区画ないしスロットに置かれる。標本スライドガラスを有する棚はカバーガラス装着ユニットへカップル係合されており、そこに棚から各標本スライドガラスが取り出されて、包埋材(付着性の)又は同様のものが標本スライドガラスに塗布される。次に、標本スライドガラス上の組織サンプルを閉塞(ないしシール)するために、カバーガラスが標本スライドガラスに覆い被せられる。
【0003】
カバーガラスが標本スライドガラス上に正確に位置することを保障するために、標本スライドガラスへのカバーガラスの載置は、カバーガラス及び標本スライドガラスの正確な配置調節を必要とする。その理由は、カバーガラスが標本スライドガラスを越えて外側に突き出ている場合には、カバーガラスがダメージを受けたり、破損するリスクがあるからである。その後の解析を実行する人が、突き出たカバーガラスによって傷を負うこともあり得るだろう。
【0004】
独国特許DE 699 26 803 T2号は、標本スライドガラスにカバーガラスを装着する装置であって、運搬スライダーの上側の端に、標本スライドガラスを棚から取り出して、カバーガラス装着位置へ運搬する連行板を含む装置を既に開示している。運搬の間には、包埋材が標本スライドガラスに塗布される。次に、カバーガラス装着位置において、マガジンから取り出されたカバーガラスが標本スライドガラスに覆い被せられる。カバーガラスに関する標本スライドガラスの正確な配置調節は、構成要素の寸法、及び、カバーガラスのマガジンとカバーガラス装着位置との相互の間隔がお互いに調節されることによって保障される。
【0005】
独国特許DE 10 2008 047 575 A1号に記載の標本スライドガラスにカバーガラスを装着する装置は、構成要素間の互いに関する正しい位置を保障するために、カバーガラスに相対的な間隔における標本スライドガラスの休止位置を配置調節することができる手段を備える。このために、標本スライドガラスは、ベースフレームの特別な受け取り領域においてカバーガラス装着位置に配置される。ベースフレームは、カバーガラスと標本スライドガラスとの間の空間的な偏差を感知するセンサユニットを含む。カバーガラスのマガジンとベースフレームとの間の相対的な位置を変更する複数の調節ネジが、偏差値に基づいて操作される。しかしながら、この意味合いにおいて、ベースフレームにおけるカバーガラスの相対的な位置は訂正することができない。この位置において起こるミス配置は、標本スライドガラスに覆い被せられたカバーガラスの配置ずれを生じ得るし、そして、それによってカバーガラスが装着された標本スライドガラスはダメージを受け得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許DE 699 26 803 T2号
【特許文献2】独国特許公開DE 10 2008 047 575 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、短い処理時間での高いレベルの処理信頼性を保障することができるように、カバーガラスを覆い被せるカバーガラス装着位置において標本スライドガラスを確実に、かつ、すばやく配置調節することが可能なカバーガラス装着モジュールを利用可能にすることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの視点において、顕微鏡的な調査のために、標本スライドガラスにカバーガラスを覆い被せるためのカバーガラス装着モジュールが提供される。このカバーガラス装着モジュールは、棚又は標本スライドガラスホルダーから、標本スライドガラスにカバーガラスを載置するカバーガラス装着位置に、標本スライドガラスを運搬する運搬装置と、カバーガラスを覆い被せるカバーガラス装着位置において標本スライドガラスを配置調節する配置調節手段と、を有する。前記配置調節手段は、複数の移動可能な方向調節顎状部材を含み、当該方向調節顎状部材の閉塞方向調節によって、標本スライドガラスがカバーガラス装着位置に配置調節されるようになること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の装置によれば、短い処理時間での高いレベルの処理信頼性を保障することができるように、カバーガラスを覆い被せるカバーガラス装着位置において標本スライドガラスを確実に、かつ、すばやく配置調節することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係るカバーガラス装着モジュールを有するカバーガラス装着装置の部分的に断片化した透視図である。
【図2】図2は、図1のカバーガラス装着モジュールの斜視図である。
【図3】図3は、図2のカバーガラス装着モジュールの頂上からの斜視図である。
【図4】図4は、図2のカバーガラス装着モジュールの運搬装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、以下の形態が可能である。なお、本願の特許請求の範囲に付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるための補助であり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0012】
(形態1)
上記の一視点に記載のとおり、顕微鏡的な調査のために、標本スライドガラスにカバーガラスを覆い被せるためのカバーガラス装着モジュールであって、棚又は標本スライドガラスホルダーから、標本スライドガラスにカバーガラスを載置するカバーガラス装着位置に、標本スライドガラスを運搬する運搬装置と、カバーガラスを覆い被せるカバーガラス装着位置において標本スライドガラスを配置調節する配置調節手段と、を有し、前記配置調節手段は、複数の移動可能な方向調節顎状部材(ジョー)を含み、当該方向調節顎状部材の閉塞方向調節によって、標本スライドガラスがカバーガラス装着位置に配置調節されるようになること、を特徴とするカバーガラス装着モジュールが提供される。
【0013】
(形態2)
本発明において、長辺側で標本スライドガラスを固定するように配置された少なくとも3つの方向調節顎状部材を備えることが好ましい。
【0014】
(形態3)
本発明において、標本スライドガラスの配置調節のために、方向調節顎状部材が標本スライドガラスに向かって旋回(verschwenkbar)(回転:rotatorisch)可能なように構成されることが好ましい。
【0015】
(形態4)
本発明において、標本スライドガラスの配置調節(Ausrichten、alignment)のために、方向調節顎状部材が標本スライドガラスに対して平行移動の様式(translatorisch)で移動可能であることが好ましい。
【0016】
(形態5)
本発明において、カバーガラスが装着された標本スライドガラスを棚に運搬して戻すための、運搬装置が備えられることが好ましい。
【0017】
(形態6)
本発明において、標本スライドガラスを超えて垂直方向に延在して、覆い被せるべきカバーガラスのガイドを形成するように、方向調節顎状部材が構成されることが好ましい。
【0018】
(形態7)
本発明において、カバーガラス装着モジュールが標本スライドガラスに包埋材を塗布するための少なくとも1つの塗布装置と関連付けられ、当該塗布装置は、標本スライドガラスが棚からカバーガラス装着位置に運搬されている間に、標本スライドガラスに包埋材を塗布することが可能なように配置されることが好ましい。
【0019】
(形態8)
本発明において、カバーガラス装着モジュールが、棚のための少なくとも1つの棚置き場と関連付けられ、各ステップで、運搬装置によって別々の標本スライドガラスを棚からカバーガラス装着位置へ運搬することと、運搬して再度戻すことが可能なように、棚置き場が段階的(ステップ状)に垂直方向に移動可能であることが好ましい。
【0020】
(形態9)
本発明において、運搬装置をコントロールするための、棚置き場の垂直方向動作の際に、棚における標本スライドガラスの存在を感知する少なくとも1つのセンサを備えることが可能であることが好ましい。
【0021】
(形態10)
本発明において、運搬装置は、実質的に平行移動の様式で前後に移動可能であり、運搬装置は、カバーガラス装着位置から離れた短辺で標本スライドガラスを掴むエジェクタを含み、カバーガラス装着位置における標本スライドガラスの短辺に指向するように配置された実質的にC字型のブラケットを含み、C字型ブラケットは、運搬の間には標本スライドガラスの側部が外側に外れることを防止し、そして、標本スライドガラスを棚に戻す時には標本スライドガラスを押し出すように構成されることが好ましい。
【0022】
本発明の更なる課題は、本願において提案される解決策を容易に実行できるようにして、低コスト化することである。
【0023】
本発明の前記課題は、複数の方向調節顎状部材(Orientierungsbacken)の閉塞方向調節によって、標本スライドガラスがカバーガラス装着位置に配置調節されるように、配置調節手段が複数ないし多数の移動可能な方向調節顎状部材によって構成されることで、本発明によって達成される。カバーガラスの装着は、標本スライドガラスを棚から取り出して、カバーガラス装着位置へ運搬し、方向調節顎状部材によって単純な仕方でカバーガラス装着操作のために正しく配置調節するような仕方で実行される。処理信頼性のために、個々の標本スライドガラスの各々は、カバーガラス装着位置において直接的に配置調節される。その結果、配置調節操作は、ほとんど時間を消費することなく高度に再現可能である。カバーガラス装着操作の後に、標本スライドガラスは運搬装置によって棚へ運搬して戻すことができる。本願において提案される解決策は、設置スペースをほとんど必要とせず、可能な限り最良のカバーガラス装着結果に所要時間が最適化された解決策を提供する。
【0024】
少なくとも3つの方向調節顎状部材(ジョー)を備え、当該方向調節顎状部材が標本スライドガラスをその長辺で固定する仕方で配置されることが特に有利になることは、実証されている。更に、このことは、標本スライドガラスの短辺側に噛み合うスライディング機構の使用が、スライドガラスを運搬することを可能にする。配置調節手段と標本スライドガラスとは異なる端の運搬手段とを物理的に分ける結果として、カバーガラス装着操作を特に急速に実行することが可能である。このことに対する固有の貢献が標本スライドガラスをその長辺側で掴むことによって達成され、標本スライドガラスを更に容易に配置調節することができる。
【0025】
配置調節操作という意味合いにおいて、方向調節顎状部材が標本スライドガラスに対して(に向って)旋回すること、すなわち、方向調節顎状部材が標本スライドガラスに対しての回転動作を実行することから、特に単純な構成が得られる。しかしながら、標本スライドガラスに対して平行移動の様式で移動するような仕方で方向調節顎状部材を構成することも可能である。これら2つのケースの各々において、標本スライドガラスを掴むため、そして解放するために、ほんの小さな、又は、ほんの短い動作のみが必要とされる。
【0026】
カバーガラス装着モジュールを実装したカバーガラス装着装置の特に省スペースな構成を達成するために、カバーガラスが装着された標本スライドガラスを運搬装置が棚へ運搬して戻すような仕方で、運搬装置を実装することもできる。このことは、かなりの利点、特に、いわゆる棚処理(プロセッシング)という意味合いにおける利点を提供するので、追加の出力棚を省くことができる。
【0027】
本発明の更なる実施形態によれば、カバーガラス装着位置において方向調節顎状部材が標本スライドガラスを越えて垂直方向に延在するように実装されることによって、方向調節顎状部材は、標本スライドガラスに対しての動作という意味合いにおいて、カバーガラスを装着する間のカバーガラスの安全なガイダンスに寄与することができる。このことは、適用されるカバーガラスが標本スライドガラスを越えて突き出ることを防止する。
【0028】
カバーガラス装着モジュールが標本スライドガラスに包埋材を塗布するための少なくとも1つの塗布装置と関連付けられていれば特に有利になることは、証明されている。塗布装置は、棚からカバーガラス装着位置へ標本スライドガラスを運搬する間に、包埋材を標本スライドガラスに塗布できるような仕方で配置される。このことは、標本スライドガラス上の包埋材の最適な分布を保障し、カバーガラス装着操作の所要時間を相当に減少させる。
【0029】
本発明の更なる実施形態は、カバーガラス装着モジュールが棚のための少なくとも1つの棚置き場)と関連付けられていること、そして、各ステップで、運搬装置によって別々の標本スライドガラスを棚からカバーガラス装着位置へ運搬することと、運搬して再度戻すことが可能なように、棚置き場が段階的(ステップ状)に垂直方向に移動可能であること、を提供する。標本スライドガラスがカバーガラス装着ユニットの作動周期に従って利用可能になるように、棚の新たなるスロットを棚の単純な垂直方向動作によって移動させることができる。このことは、棚から標本スライドガラスを取り出す対応する運搬機構及び取出機構の構成を単純化する。
【0030】
棚置き場の垂直方向動作の際に棚における標本スライドガラスの存在を感知する少なくとも1つのセンサを、運搬装置を制御するために備えることができる。例えば、棚にたった1枚の標本スライドガラスしかないことがあり得るが、カバーガラスを装着するプロセスのタイムシーケンスを最適化するために、下方に方向づけられた索引動作という意味合いにおいて、実際に標本スライドガラスが存在する位置(ないしは、棚のスロット)へのみ移動することが有用である。このことは、好ましくは光学的なセンサの仕方で、作動プロセスの間に検出される。棚の処理操作の所要時間は、そらによって、かなり最小化することができる。センサ装置は、更に、取り出し操作に関して、標本スライドガラスの正しい垂直方向位置付けを保障することに寄与する。
【0031】
本発明の改良形態において、運搬装置は、実質的に平行移動の(ないし直線的な)運動様式で前後に移動可能であり、運搬装置は、カバーガラス装着位置から離れた短辺で標本スライドガラスを掴むエジェクタを含み、カバーガラス装着位置における標本スライドガラスの短辺に指向するように配置された実質的にC字型のブラケット(把持部材)を含む。実質的にC字型のブラケット(C-foermigen Buegle)は、運搬の間には標本スライドガラスの側部が外側に外れることを防止し、そして、標本スライドガラスを棚に運搬して戻す時には標本スライドガラスを押し出すように構成される。C字型ブラケットは、この目的のために、例えば、標本スライドガラスに対して隣接する側面のガイダンス表面を含むことができ、そして、それを動作方向に関して配置調節することができる。運搬装置の利点は、特に一度カバーガラスが装着されて再び戻される標本を受け容れることが意図された棚を使用することで明確である。前後動作は、標本スライドガラスの急速な循環又は急速な交換を可能にするが、設置スペースをほとんど必要としない。棚から標本スライドガラスを取り出すエジェクタの部分での直線状の移動は、標本スライドガラスが傾かず、むしろ、外れることなくカバーガラス装着位置へ到着することを更に保障する。C字型のブラケットは、標本スライドガラスが安全にガイドされる様式で棚に運搬されて戻ることを保障する。
【0032】
本発明は、図面に記載された例示の実施例を参照して、以下に更に説明されるだろう。記載される、及び/又は、図面に表された全ての特徴は、個々に又は任意の組み合わせにおいて、請求項におけるグループ分け又は内部参照とは無関係に、本発明の目的物を構成する。
【実施例】
【0033】
図1に示した一実施例に係るカバーガラス装着装置1は、標本スライドガラスのための棚3をカバーガラス装着装置1の内側に運搬する把握運搬装置2を内部に含む。棚3は、染色装置からカバーガラス装着装置へ、研究員が挿入することもできるし、自動運搬システムによって運搬することもできる。把握運搬装置2は、棚3を、カバーガラス装着モジュール4を含むカバーガラス装着ユニット5に運搬する役割を果たす。カバーガラス装着ユニット5において、棚に存在する標本スライドガラスに、図示されない装置によって、カバーガラスが装着される。一度、棚3に存在する全ての標本スライドガラスにカバーガラスが装着されると、カバーガラスが装着された標本スライドガラスを有する棚3は、カバーガラス装着装置1から取り出すことができる。
【0034】
カバーガラス装着モジュール4の更なる詳細図が図2に示される。棚3は、把握運搬装置2によって、ガイダンスシステム7に垂直方向に向かって連結した棚置き場6に挿入される。棚置き場6は、垂直方向に(矢印ABの方向に)、運転システム8を介して移動させることができる。ガイダンスシステム7は、実質的に水平に配置調節されたカバーガラス装着モジュール4と関連付けられる。カバーガラス装着モジュール4は、スライドガラス押出部として構成される運搬装置9(前後に、つまり、水平であり、矢印CDの方向に移動することができる)を含む。エジェクタ10及びC字型ブラケット11は、運搬装置9の一部である。
【0035】
棚3に配置された標本スライドガラス12は、図2における水平方向に向けられており、標本スライドガラスは、互いに上下となるように、かつ、ラベル記載区画が手前方向を向くように装填される。図2において、棚3の最も低い位置に存在する標本スライドガラスは、エジェクタ10及びC字型ブラケット11と同一の水平平面に位置する。エジェクタ10は、標本スライドガラス12の短辺(カバーガラス装着位置から離隔した側の短辺であって、標本スライドガラスにおける矢印のD側に対応する短辺)と隣接する。標本スライドガラス12は、その前側がC字型ブラケット11の中で矢印C方向に向いた状態で設置される。運搬装置9の矢印C方向への押出動作の結果として、標本スライドガラス12は、カバーガラス装着位置13(標本スライドガラス12にカバーガラスが載置される位置)へ運搬(移動)される。押出動作の間に、エジェクタ10は標本スライドガラス12をカバーガラス装着位置13へ押し出し、C字型ブラケット11は標本スライドガラス12が外れることを防止する。取り外し操作を開始する前に、モジュール(図示されない)は、カバーガラスが正しく取り上げられているか否かをチェックする。カバーガラスが破損していた場合や、2枚のカバーガラスが取り上げられた場合には、取り外し動作は、正しくカバーガラスが取り上げられるまで遅延される。このことは、カバーガラスが利用できなくなっていた場合にも、包埋材が標本スライドガラス12に適用されることを防止する。
【0036】
一度、標本スライドガラス12にカバーガラスが装着されると、運搬装置9は、矢印D方向に戻り、そして、C字型ブラケット11を使用して標本スライドガラス12を棚3のスロットに押し出す。それによって標本スライドガラス12にカバーガラスを装着するプロセスは完了し、棚3にある次の標本スライドガラスにカバーガラスを装着するプロセスを開始することができる。このために、運転システム8は、棚置き場6の下方(矢印A方向)に方向づけられた索引動作を行い、標本スライドガラス12(ちょうど、棚に戻された)の上に配置された標本スライドガラスがエジェクタ10及びC字型ブラケット11の間に配置されるようになる。この意味合いにおいて、センサ(図示しない)は、標本が棚3の現在の位置のみに存在する場合に、下方に方向付けられた索引動作が停止することを保障する。次のカバーガラスが装着されるべき標本スライドガラスへの下方に方向づけられた索引動作を行った場合には、運搬装置9は、次の標本スライドガラス12をカバーガラス装着位置13に押し出す。運搬装置9の前後の動作は、ベルトドライブ機構を有するステッピングモーター14経由で生じる。一度カバーガラスの装着が完了すると、標本スライドガラス12は棚3に戻される。この手法は、棚3における全ての標本スライドガラスにカバーガラスが装着されるまで繰り返すことができる。最終的に、棚3は、把握運搬装置2によって、再度、カバーガラス装着モジュール4から取り出すことができる。
【0037】
標本スライドガラスに包埋材を塗布するための塗布装置15は、水平な矢印C方向において棚3とカバーガラス装着位置13との間に配置される。塗布装置は、ベースフレーム16の軸支点を中心として旋回可能なように取り付けられ、包埋材を標本スライドガラス12に塗布するための中空針17を含む。中空針は、棚3とカバーガラス装着位置13との間の標本スライドガラスのそばを通過する経路上を中心旋回する。標本スライドガラス12の取り外し動作の間に、包埋材は、標本スライドガラスの中心線に沿って、特定の長さにわたって、標本スライドガラス12に塗布される。包埋材のきれいな(sauberer)塗布は、標本スライドガラスの側部が外側に外れることをC字型ブラケット11が防止することによって保障される。運搬装置9の運転システムと、塗布装置15の運転システムとの協働は、包埋材の量及び塗布形態に影響を与え得る。
【0038】
カバーガラスを覆い被せるためのカバーガラス装着位置13に標本スライドガラス12を適切に配置調節するために、方向調節顎状部材、ないしジョー(Orientierungsbacken)18の形態の配置調節手段が備えられ、カバーガラス装着位置13において標本スライドガラス12がその長辺の外側で掴まれる。図3の斜視平面図に示されるように、3つの方向調節顎状部材18がカバーガラス装着位置13に配置される。
【0039】
一度標本スライドガラス12が運搬装置9によってカバーガラス装着位置13におけるC字型ブラケット11とエジェクタ10との間に運ばれると、方向調節顎状部材18は、標本スライドガラス12に対して旋回すること(verschwenken)によって閉鎖方向に運動する(締め付ける)。この意味合いにおいて、方向調節顎状部材18は、回転動作を標本スライドガラスに接触するまで実行する。標本スライドガラス12は、閉鎖方向操作の結果として中心に向かうようになり、方向調節顎状部材18、C字型ブラケット11及びエジェクタ10によるガイダンス操作の組み合わせが、棚3からの各標本スライドガラス12がカバーガラス装着位置13において一様に配置調節されることを保障する。このことは、カバーガラスが中心に置かれ、そして、横方向への突出が防止されることを保障する。高いレベルの再現性は、個々のカバーガラス装着操作に対してポジティブな影響を有する。方向調節顎状部材18は、標本スライドガラス12を越えて垂直な方向に延長するように構成(配設)される。従って、それらは、標本スライドガラス12に後者を覆い被せる間のカバーガラスのガイダンスに寄与する。方向調節顎状部材は、カバーガラス装着モジュール4の実質的な下に位置する運転システム19によって運転される。一度カバーガラスの装着が実行されると、標本スライドガラスは、運搬装置9及びC字型ブラケット11によって棚3に運搬される。
【0040】
棚3の開放端の位置に配置された保持装置20は、標本スライドガラスの棚3からの落下を防止するために備えられる。まさにカバーガラスが装着されようとする標本スライドガラスを棚3から取り出す操作と、最も直近にカバーガラスが装着された標本スライドガラスを保持装置20の下のスロットを通って棚3に戻す操作は、同時に行うことができる。
【0041】
図4は、運搬装置9、棚3及び標本スライドガラス12の分割図を示す。運搬装置9は、U字型のフレーム21を有する。エジェクタ10はフレーム21の一方の端に取り付けられ、それに対し、C字型ブラケット11はフレーム21の他方の端に留め付けられる。個々の構成要素から組み立てる代わりに、運搬装置9全体を完成体(ユニット)として構成することもできる。
【0042】
図4において、標本スライドガラス12は棚3の外側に位置し、標本スライドガラス12の一方の端に備えられたエジェクタ10によって棚3の外に押し出されている。標本スライドガラス12の他方の端にはC字型ブラケット11が配置され、C字型ブラケット11は標本スライドガラス12の周り(長辺の端部)に部分的にフィットする。この文脈において、ガイダンスの(内)表面22は、C字型ブラケット11の内側に配設され、標本スライドガラス12の一対の長辺(の端部)に対して接触するようになる。これらのガイダンス表面22は、棚3からの取り外しの際、及び、カバーガラス装着操作の後に標本スライドガラス12を棚3に再挿入する際に、標本スライドガラス12の側部が外側(側方)に外れることを防止する。
【0043】
運搬装置9における標本スライドガラス12のガイダンスを促進するために、追加の挿入補助器24がスロット23の隣に(棚3とカバーガラス装着位置13との間に)配置される。
【0044】
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 カバーガラス装着装置
2 把握運搬装置
3 棚
4 カバーガラス装着モジュール
5 カバーガラス装着ユニット
6 棚置き場
7 ガイダンスシステム
8 ガイダンスシステムの運転システム
9 運搬装置
10 エジェクタ
11 C字型ブラケット
12 標本スライドガラス
13 カバーガラス装着位置
14 ステッピングモーター
15 塗布装置
16 ベースフレーム
17 中空針
18 方向調節顎状部材(Orientierungsbacken)
19 方向調節顎状部材の運転システム
20 保持装置
21 フレーム
22 ガイダンス表面
23 スロット
24 挿入補助器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡的な調査のために、標本スライドガラス(12)にカバーガラスを覆い被せるためのカバーガラス装着モジュールであって、
棚(3)又は標本スライドガラスホルダーから、標本スライドガラス(12)にカバーガラスを載置するカバーガラス装着位置(13)に、標本スライドガラス(12)を運搬する運搬装置(9)と、
カバーガラスを覆い被せるカバーガラス装着位置(13)において標本スライドガラス(12)を配置調節する配置調節手段と、を有し
前記配置調節手段は、複数の移動可能な方向調節顎状部材(18)を含み、当該方向調節顎状部材(18)の閉塞方向調節によって、標本スライドガラス(12)をカバーガラス装着位置(13)に配置調節すること、
を特徴とするカバーガラス装着モジュール。
【請求項2】
長辺側で標本スライドガラス(12)を固定するように配置された少なくとも3つの方向調節顎状部材(18)を備えること、
を特徴とする請求項1に記載のカバーガラス装着モジュール。
【請求項3】
標本スライドガラスの配置調節のために、方向調節顎状部材(18)が標本スライドガラス(12)に向かって旋回(回転)可能なように構成されること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のカバーガラス装着モジュール。
【請求項4】
標本スライドガラスの配置調節のために、方向調節顎状部材(18)が標本スライドガラス(12)に対して平行移動の様式で移動可能であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のカバーガラス装着モジュール。
【請求項5】
カバーガラスが装着された標本スライドガラス(12)を棚(3)に運搬して戻すための、運搬装置(9)が備えられること、
を特徴とする請求項1に記載のカバーガラス装着モジュール。
【請求項6】
標本スライドガラス(12)を超えて垂直方向に延在して、覆い被せるべきカバーガラスのガイドを形成するように、方向調節顎状部材(18)が構成されること、
を特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカバーガラス装着モジュール。
【請求項7】
カバーガラス装着モジュールが標本スライドガラス(12)に包埋材を塗布するための少なくとも1つの塗布装置(15)と関連付けられ、
当該塗布装置(15)は、標本スライドガラス(12)が棚(3)からカバーガラス装着位置(13)に運搬されている間に、標本スライドガラス(12)に包埋材を塗布することが可能なように配置されること、
を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカバーガラス装着モジュール。
【請求項8】
カバーガラス装着モジュールが、棚(3)のための少なくとも1つの棚置き場(6)と関連付けられ、
各ステップで、運搬装置(9)によって別々の標本スライドガラス(12)を棚(3)からカバーガラス装着位置(13)へ運搬することと、運搬して再度戻すこととが可能なように、棚置き場(6)が段階的(ステップ状)に垂直方向に移動可能であること、
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のカバーガラス装着モジュール。
【請求項9】
運搬装置(9)をコントロールするための、棚置き場(6)の垂直方向動作の際に、棚(3)における標本スライドガラス(12)の存在を感知する少なくとも1つのセンサを備えることが可能であること、
を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカバーガラス装着モジュール。
【請求項10】
運搬装置(9)は、実質的に平行移動の様式で前後に移動可能であり、
運搬装置(9)は、カバーガラス装着位置(13)から離れた短辺で標本スライドガラス(12)を掴むエジェクタ(10)を含み、
カバーガラス装着位置(13)における標本スライドガラス(12)の短辺に指向するように配置された実質的にC字型のブラケット(11)を含み、
C字型ブラケット(11)は、運搬の間には標本スライドガラス(12)の側部が外側に外れることを防止し、そして、標本スライドガラス(12)を棚(3)に戻す時には標本スライドガラス(12)を押し出すように構成されること、
を特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のカバーガラス装着モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−155324(P2012−155324A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10283(P2012−10283)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】