説明

カバーフィルム上にて遮断効果を有するオルモサーを備えた皮膚又は経皮治療システム

本発明は、気体、臭気及び易揮発性物質に対して遮断効果を有するカバーフォイルを備えた皮膚又は経皮治療システムに関する。本発明は、カバーフォイルに少なくとも一つの基体、及び無機−有機ハイブリッドポリマー(オルモサー)から構成された少なくとも一つの層が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体、芳香剤及び易揮発性物質に対して遮断効果を有するカバーフィルムを備えた、皮膚又は経皮治療システムに関し、同システムは、カバーフィルムが少なくとも一つの支持層と、無機−有機ハイブリッドポリマー(オルモサー(ormocer))から構成された層とから構成されていることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
皮膚治療システムは、薬剤の、局所的に作用する物質を、皮膚患部又はその下方に位置する筋肉患部に接触させるシステムであり、いわゆる薬用硬膏剤の全てがこのカテゴリーに所属する。一方、経皮治療システムは、皮膚を介して活性化合物を血液循環中に運搬し、その結果として全身に作用させる。
【0003】
両方のシステムは、本来、カバーフィルム(支持層)と、活性化合物の貯蔵部又は活性化合物を含有するマトリクスと、剥離可能な保護フィルム(レリースライナー)とから構成されている。カバーフィルムは、貼付中でも皮膚又は経皮治療システム上に残留して、一方では活性化合物含有マトリクス若しくは貯蔵部を機械的に保護し、他方では活性化合物を気体、例えば酸素及び水蒸気の作用から保護し、又は易揮発性の活性化合物の部分的な蒸発を防止する。
【0004】
支持層として作用するカバーフィルム及び剥離可能な保護フィルムの双方は、概して有機ポリマーから構成されている。これらフィルムの適当な材料の例は、低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、これらポリマーの少なくとも二種から構成されるコポリマー、又はこれらポリマーの混合物である。カバーフィルムは、システム使用中、皮膚上に残留するため、患者により貼付される間、適度な心地よさを確実にするために出来る限りの可撓性及び伸縮性を有する必要がある。非可撓性のフィルムは、折り目の形成を招き、皮膚内に切り込まれる。特にLDPE及びHDPEは、適度な可撓性及び伸縮性を備えたカバーフィルムを形成する。しかしながら、上述したポリマーの全部、及び特に二種のポリエチレンは、程度は異なるが、活性化合物の良好な貯蔵システムを構成する不都合を有している。その結果、貯蔵中及び/又は使用中に、活性化合物は、その飽和濃度に到達するまで、気体空間を経由して貯蔵部又は活性化合物含有マトリクスからカバーフィルム中へ移動し得る。それによって、皮膚を介して浸透するための、マトリクス又は貯蔵部内に存在する活性化合物の量が最小となり、また皮膚又は経皮治療システムの放出動力学が最小となる。
【0005】
独国特許公開第19922368A1号には、薬剤支持材用の材料としての、水溶性ポリマーと、重合により結合された結合二酸化ケイ素構成単位(bound silicon dioxide building blocks)とから構成されているポリマー組成物が開示されている。しかしながら、この組成物はオルモサーに該当するものではない。
【0006】
独国特許第19519593号には、揮発性活性化合物の放出用の経皮治療システムが開示されており、該システムは、活性化合物に対して本質的に不浸透性を有し、熱可塑性の有機ポリマーから構成されている支持層を備えている。
【0007】
国際特許出願第95/07817号には、酸素及び湿度に対して不浸透性を有し、ナイロン、並びに/又は、エチレン及びビニルアルコールから構成されたコポリマーを、熱可塑性有機ポリマーと共に抽出して製造される、多数層フィルムが開示されている。
【0008】
例えばアルミニウム又は金属酸化物等で被覆する等、ポリマーを金属層と組み合わせることによって、可撓性又は伸縮性のポリマー層に対する気体又は揮発性活性化合物の浸透性を低減するか、又は完全に防止することが既に提案されている。しかしながら残念なことに、このような組合せは、このシステムの可撓性、特に伸縮性を著しく損なう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、良好な可撓性を備えるとともに、易揮発性の、又は高蒸気圧を有する活性化合物に対して抜群の遮断効果を有する、皮膚又は経皮治療システムを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、無機−有機ハイブリッドポリマー、即ちいわゆるオルモサーで被覆された有機ポリマーから構成されたカバーフィルムを使用することによって達成される。
【0011】
無機−有機ハイブリッドポリマー、即ちいわゆるオルモサーは、ここ数年知られている。オルモサーは、以下の方法にて二ステップで製造される:最初に、有機修飾酸化ケイ素を制御下で加水分解及び縮合して無機網状構造を合成する。その際、他の金属アルコキシド(Ti、Zr及びAlアルコキシド)との共縮合も可能である。次のステップでは、無機網状構造に結合した重合可能な基が、熱又はUV処理の結果として互いに反応する。それ故、このようなハイブリッドポリマーは、図1に概略的に示す構造式を有する。
【0012】
オルモサーの製造及び性質は、以下の公報に開示されている:欧州特許公開第0358011A2号、欧州特許公開第0373451A1号、欧州特許公開第0610831A2号、欧州特許第0644908B1号、欧州特許公開第0792846A1号、欧州特許公開第0934989A号。これらの公報は、本開示の一部として本願にて明白に挙げられる。
【0013】
以前は、良好な遮断特性と共に満足すべき伸縮性を有する皮膚又は経皮システム用のカバーフィルムを製造することは不可能であったが、驚くべき事に、良好な遮断効果が既知であるオルモサーでポリマーフィルムを被覆すると、伸縮性が損なわれていない、又は無視できる程度に損なわれたカバーフィルムが形成されることが見いだされた。1μm〜10μmの厚さを有するオルモサー層が、特に適当である。
【0014】
支持層として作用するカバーフィルム及び剥離可能な保護フィルムの双方は、一般には有機ポリマーで構成されることが好ましい。これらフィルムに適した材料の例は、低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルエステル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、これらポリマーの少なくとも二種から構成されるコポリマー、又はこれらポリマーの混合物である。カバーフィルムは、システム使用中、皮膚上に残留するため、患者により貼付される間、適度な心地よさを確実にするために出来る限りの可撓性及び伸縮性を有する必要がある。非可撓性フィルムは、折り目の形成を招き、皮膚内に切り込まれる。特にLDPE及びHDPEは、適度な可撓性及び伸縮性を備えたカバーフィルムを形成する。
【0015】
オルモサー被覆可撓性カバーフィルムの適合性を研究するため、厚さ175μmのHDPEフィルムに、上述した組成物からなるオルモサーラッカーを被覆した。両面被覆されたフィルムを、ニコチンを含む気体空間内に導入して、40℃で4〜8週間インキュベートした後の、フィルムによる活性化合物の取り込みを測定した。この研究の結果を図2に示す。
【0016】
同様に本発明によるカバーフィルムは、良好な伸長性を有し、即ちその結果良好な伸縮性を有し、伸長状態においても遮断性が保存されることも証明し得る。この証明のために、ハイブリッドポリマーオルモサーで被覆されたHDPEフィルムを3%伸長して、ニコチンに4〜8週間露出した後の活性化合物の取り込みを測定した。結果を表3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】オルモサーの概略的な構造式を示す図である。
【図2】40℃で4〜8週間保管した後の、オルモサーで被覆されたHDPEフィルム中へのニコチン取り込みを示すグラフである。
【図3】40℃で4〜8週間保管した後の、オルモサーで被覆され、伸長されたHDPEフィルム中へのニコチン取り込みを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離可能な保護層と、少なくとも一種の活性化合物を含有する貯蔵部又はマトリクス層と、気体、芳香剤及び易揮発性の物質に対して遮断効果を有するカバーフィルムとを備え、該カバーフィルムは、少なくとも一つの支持層と、オルモサーから構成された少なくとも一つの層とから構成されている、皮膚又は経皮治療システム。
【請求項2】
オルモサーは、有機修飾された二酸化ケイ素の加水分解縮合によって得られたものである、請求項1に記載の皮膚又は経皮治療システム。
【請求項3】
支持層は、少なくとも一種の有機ポリマーから構成されている、請求項1又は2に記載の皮膚又は経皮治療システム。
【請求項4】
有機ポリマーは、低密度若しくは高密度ポリエチレン、又はポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエステル若しくはポリエステル、これらポリマーの少なくとも二種の混合物、又は該ポリマーの少なくとも二種のモノマーから構成された少なくとも一種のコポリマーから構成される請求項3に記載の皮膚又は経皮治療システム。
【請求項5】
支持層は、ポリエチレンテレフタレートから構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の皮膚又は経皮治療システム。
【請求項6】
オルモサー層は1μm〜10μmの厚さを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の皮膚又は経皮治療システム。
【請求項7】
オルモサー層は、該層が活性化合物含有層に隣接するように支持層上に適用されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の皮膚又は経皮治療システム。
【請求項8】
各場合において、支持層の両面に少なくとも一つのオルモサー層が適用されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の皮膚又は経皮治療システム。
【請求項9】
易揮発性の活性化合物を包含する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の皮膚又は経皮治療システム。
【請求項10】
活性化合物がニコチンである、請求項9に記載の皮膚又は経皮治療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501768(P2007−501768A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522271(P2006−522271)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008221
【国際公開番号】WO2005/016320
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】