説明

カバーフィルム貼着装置

【課題】 作業者がカバーフィルム貼着装置において巻回体を取扱う際に発生するカバーフィルムの品質に与える悪影響の軽減と、作業の手間を軽減するカバーフィルム貼着装置を提供することにある。
【解決手段】 長尺のカバーフィルムを巻回する巻回体から供給されたカバーフィルムをスライドガラスに貼着するカバーフィルム貼着装置であって、前記長尺のカバーフィルムを巻回する巻回体を収容自在な収容手段を少なくとも2つ備えていることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカバーフィルムの貼着装置に関し、更に詳細にはスライドガラスに貼付され、封入剤が滴下された検体標本に、長尺のカバーフィルムが巻回された巻回体から引き出されて所定長さに切断されたカバーフィルム片を貼着するカバーフィルム貼着装置における、カバーフィルムを巻回した巻回体の取扱が容易なカバーフィルム貼着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病理検査において、生体材料を薄切した薄切片をスライドガラスに添付してから染色処理を施した後に、薄切片の保護のためにカバーフィルム片をスライドガラス表面に貼着して顕微鏡にて観察することが行われている。
カバーフィルム片をスライドガラスに貼着するカバーフィルム貼着装置は、主として、複数枚の貼着前のスライドガラスと貼着後のスライドガラスの収容に使用されるバスケットが待機するバスケット待機手段、前記バスケットが収容されたバスケット収容槽、カバーフィルムが収容されたカバーフィルム供給手段、前記カバーフィルム供給手段から供給されたカバーフィルムを所定長に切断するための切断手段、及びバスケットから供給されたスライドガラスに溶剤を滴下して所定長のカバーフィルム片を貼着する貼着手段とから構成される。
【0003】
このカバーフィルム貼着装置によってスライドガラスにカバーフィルム片を貼着するには、バスケット待機手段に収容されているバスケットからスライドガラスをカバーフィルム片を貼着する貼着手段に載置して、カバーフィルム供給手段からカバーフィルムを切断手段に供給して所定長に切断し、その切断されたカバーフィルム片を事前に溶剤によって濡れているスライドガラスに適切な力を加えて貼着する。貼着後前記バスケットに貼着済みのスライドガラスを収容する。
【0004】
ところで、このカバーフィルム貼着装置において、巻回体からのカバーフィルムの供給が不可能になった場合には、使用中の巻回体をカバーフィルムが十分の長さ分巻回されている新しい巻回体と交換することになる。作業者はこのカバーフィルム貼着装置内の巻回体取り付け場所にある使用中の巻回体を取り外して、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付け、この巻回体からカバーフィルムの先頭を取り出して、カバーフィルム貼着装置に備えられた送りローラを介して切断手段に送る。その後、切断手段によって所定の長さに切断されたカバーフィルム片はカバーフィルム貼着手段に送られてカバーフィルム片の貼着が行われる。
【0005】
また、このカバーフィルム貼着装置を長期間稼動しない場合には、カバーフィルム貼着装置の巻回体取り付け場所に巻回体を載置したままにしておくと、巻回体に巻回されたカバーフィルムや巻回体から引き出されたカバーフィルムが湿気や有機溶剤の蒸気によってカバーフィルムの一面側に塗付されている接着剤の品質が劣化して貼着の品質に悪影響を与える恐れがあるので、巻回体から送りローラを介して切断手段に送られているカバーフィルムを巻回体に巻き戻してから、その巻回体を巻回体取り付け場所から取り外して、カバーフィルムの劣化が少ない雰囲気中に保管することがある。貼着作業を再開する場合には、前述した新しい巻回体を取り付ける際と同様の作業を行う。
【0006】
特に、バスケットに収容されているスライドガラスを貼着するためのカバーフィルムが不足した場合には、新しいカバーフィルムがスライドガラスに貼着されるまでスライドガラスは空気中に晒されることになり、その時間が長い場合には、スライドガラスに添付された薄切片が乾燥してひび割れしたりして、貴重な薄切片保護の面から好ましくない。
【0007】
そこで、特開2005−300323が出願された。それによると、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付ける際に、バスケット内に収容され得る最大枚数のスライドガラス全てに対してカバーフィルム片を貼着できる長さのカバーフィルムを冗長カバーフィルムとして確保することによって、解決している。
具体的には、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付ける際に、巻回体から引き出したカバーフィルムを送りローラに至るまで複数個のガイドローラを介して引き回しておき、巻回体に巻回されているカバーフィルムがなくなっても、複数個のガイドローラによって引き回されている冗長カバーフィルムによって、バスケット待機手段に置かれているバスケットに入れられたスライドガラスの全てを貼着できるという技術である。
【特許文献1】特開2005−300323号公報
【0008】
この技術について、図3によって説明する。図3に示すカバーフィルム供給手段1では、カバーフィルム4が巻回された巻回体2から引き出されたカバーフィルム4は、引出ローラ6から引き出されてカバーフィルム4の終端を検出するカバーフィルム終端検出センサ5を通過し、巻回体2の周囲に配設されたガイドローラ3a〜3dを引き回され、一対の送りローラ7に供給されている。
送りローラ7を通過したカバーフィルム4は、カバーフィルム支え台13上およびカバーフィルム支え台14上を介してカバーローラ11に送られ、所定長さを確保してからカバーフィルム切断手段8によって切断され、カバーフィルム片9として貼着ローラ12によって、バスケット待機手段にあるバスケット(図示せず)から取り出されたスライドガラス10に貼着される。カバーフィルム片9の貼着が終了したスライドガラス10はバスケット待機手段にある前記バスケットに送り込まれる。
検出センサ5から一対の送りローラ7までのカバーフィルム4の長さは、待機位置に位置するバスケット内に収容され得る最大枚数のスライドガラス10にカバーフィルム片9を貼着できる長さである。この様に、巻回体2の周囲に配設されたガイドローラ3a〜3dから成るカバーフィルム長確保手段を設けることによって、待機位置のバスケットに収容されているスライドガラス10の処理中に、カバーフィルム4の終点を検出する検出センサ5から検知信号が発せられても、待機位置のバスケットに収容されているスライドガラス10の全てにカバーフィルム片9を貼着できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のカバーフィルム貼着装置におけるこのカバーフィルム貼着装置上での巻回体の取り扱いにおいて、幾つかの問題点が散見される。
例えば、巻回体をカバーフィルム貼着装置の取り付け場所に取り付ける際に、巻回体からカバーフィルムの先頭を取り出して送りローラに送る作業が必要であり、この作業は手間であり、また、この作業の際に作業者が手でカバーフィルムを取り扱うのでカバーフィルムに傷をつけたり、手指の汚れが付着したりと、カバーフィルムの品質に悪影響を与える恐れがある。
さらに、バスケット内に収容され得る最大枚数のスライドガラス全てに対してカバーフィルム片を貼着したい場合には、新しい巻回体を巻回体取り付け場所に取り付ける際に、所定の長さのカバーフィルムを冗長カバーフィルムとして確保するように、巻回体から引き出したカバーフィルムを送りローラに至るまで複数個のガイドローラを介して引き回す作業が必要であり、この作業によってカバーフィルムに傷をつけたり、手指の汚れが付着したりと、カバーフィルムの品質に悪影響を与え易く、又この作業に時間が掛り手間である。
つまり、本発明が遂行する課題は、作業者がカバーフィルム貼着装置において巻回体を取扱う際に発生するカバーフィルムの品質に与える悪影響の軽減と、作業の手間を軽減するカバーフィルム貼着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するには、作業者が巻回体からカバーフィルムを取り出して行う作業を自動化することが有効であると考え検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、長尺のカバーフィルムを巻回する巻回体から供給されたカバーフィルムをスライドガラスに貼着するカバーフィルム貼着装置であって、前記長尺のカバーフィルムを巻回する巻回体を収容自在な収容手段を少なくとも2つ備えていることを特徴とするカバーフィルム貼着装置にある。
【0011】
かかる本発明において、収容手段に、前記巻回体を回転自在に支承する支承手段と、カバーフィルムを挟持自在な挟持手段を備えることで、前記カバーフィルムの先頭を容器外に容易に取り出すことができる。
また、カバーフィルム貼着装置に、挟持手段に挟持されたカバーフィルムを移動させる力を前記挟持手段に伝達自在な伝達手段を備えることで、カバーフィルムを容器内から外部にまたは容器外から内部に容易に移動することができる。
【0012】
また、収容手段を、カバーフィルムを貼着の用に供する位置に移動自在に形成することで、巻回体からのカバーフィルムの貼着手段への供給が容易に行える。
【0013】
さらに、収容手段をカバーフィルム貼着装置に載置自在に構成することで、収容手段をカバーフィルム貼着装置外に取り出して巻回体を容易に収容手段に収容することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、カバーフィルムを供給できる巻回体を収容した手段を少なくとも2つ有しているので、カバーフィルムを供給している巻回体に供給できるカバーフィルムがなくなっても、別の巻回体から自動でカバーフィルムを供給できる。自動でカバーフィルムを供給するので、作業者がカバーフィルムを取り扱うことがなく、カバーフィルムに傷が付くことも、手指の汚れが付着することもなくなる。さらに、作業者があわてて巻回体を交換する必要がなく、手間の軽減になる。
さらに、バスケットに収容されたスライドガラスの全てに貼着が終わらない間に巻回体からのカバーフィルムの供給が途絶えても、別の巻回体から自動で新しいカバーフィルムを供給するので、冗長カバーフィルム分を用意するための巻回体の周囲のガイドローラに引き回す作業が不要になる。引き回し作業がなくなるので、カバーフィルムに傷が付くことも、手指の汚れが付着することもなく、さらに作業者の手間の軽減になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の好適な実施例を図1と図2によって説明する。
図1は本発明のカバーフィルム貼着装置の上方からの概略を示した図であり、図2は本発明のカバーフィルム貼着装置の正面の概略を示した図である。カバーフィルム貼着装置は、主として、基台17にカバーフィルム供給部20とカバーフィルムを送る送りローラ7とカバーフィルムを所定の長さに切断する切断手段8と切断されたカバーフィルム片をスライドガラスに貼着する貼着手段16とを備えている。前記供給部20には、巻回体26を収容自在の収容手段22aと収容手段22bが並んで収容されており、収容手段22a、22bはそれぞれ巻回体26を回転自在に支承する支承手段23a、23bとカバーフィルム27を引き出しローラ28を介して挟持する挟持手段24を備える。挟持手段24は挟持ローラ対24a、24bで構成されており、両者間には弾性力が働いている。また、挟持ローラ対24a、24bの表面は弾性体物質で形成されており、カバーフィルムを挟持した際にカバーフィルム表面に傷がつきにくいようにしている。挟持ローラ対24a、24bはそれぞれ巻回体収容手段22aの側面に直角の軸を中心にして回転自在に支承されている。挟持ローラ対24a、24bは外部から駆動力を与えることによって回転自在である。駆動力を与えるために、挟持ローラ24aを支承する軸の延長線上に回転つまみ24cを設けてある。この回転つまみ24cに駆動力を与えるために、カバーフィルム貼着装置には駆動力を伝達する伝達手段29が備わっている。
【0016】
収容手段22aへの巻回体26の収容方法を説明する。空の収容手段22aに長尺のカバーフィルムが巻回された巻回体26を収容するには、収容手段22aを供給部20から完全に取り外して行う。収容手段22aの回転支持ローラ23a、23bが巻回体26の芯の内側に位置するように巻回体26を載置し、巻回体26からカバーフィルム27の先頭部分を取り出し、引き出しローラ28を介して挟持手段24の挟持ローラ対24a、24bに挟み挟持ローラ24aを回転することによって挟持ローラ対24a、24bの間を通して適当な長さだけ挟持ローラ対24a、24bから引き出して挟持しておく。次に収容手段22aを供給部20の底部に下げて所定の位置に収容して収容手段22aへの巻回体26の収容が終了する。なお、収容手段22a内部にカバーフィルム終端検出センサ30を具備することでカバーフィルム27の終端を検出できる。
なお、収容手段22aを供給部20の上方の巻回体26が収容できる位置まで引き上げてから、巻回体26の収容および取り出しを行っても良い。
【0017】
収容手段22aから最初にカバーフィルムを貼着手段に供給する場合には、伝達手段29から回転つまみ24cに駆動力を与えて収容手段22aに収容された巻回体からカバーフィルムを引き出して、送りローラ7に送る。送りローラ7は前記カバーフィルムをカバーフィルム支え台13を介して切断手段8に送る。切断手段8に送られたカバーフィルムの先頭が切断手段8を通る前に、回転自在に支承されているカバーフィルム支え台14がカバーフィルムの先頭の進行を遮るように回転して停止する。その後、カバーフィルムの先頭は切断手段8を通り過ぎてカバーフィルム支え台14の手前で止まり,カバーフィルムは切断される。切断されたカバーフィルム片は下方に落下して廃棄用容器15内に回収される。この切断動作によってカバーフィルム片の所定長さ分を得るための基点出しが行われたことになる。その後カバーフィルム支え台14はカバーフィルムの進行を遮らないような位置に回転して止まり、前記基点出し後に所定長さに切断されたカバーフィルム片はカバーローラ11を介して貼着ローラに送られてスライドガラスに貼着される。
【0018】
収容手段22aの巻回体からカバーフィルムを供給しなくなった場合には、カバーフィルム終端検出センサ30からカバーフィルム終了を知らせる信号が制御手段(図示せず)に送られて、制御手段は送りローラ対7及び挟持ローラ対24a、24bをカバーフィルムを巻回体から切断手段に送り出した回転とは逆に所定時間回転するように制御する。この動作によって収容手段22aの挟持手段24から送りローラ対7を介して切断手段8までの間にカバーフィルムが残っている場合には、収容手段22aから外部に出ているカバーフィルム27を収容手段22a内に引き込み、カバーフィルム27の先頭を送りローラ対7で挟持しない状態にすることができる。
その後、供給部20の動きを制御することで、収容手段22aが供給部20の奥に移動し、収容手段22bが送りローラ7にカバーフィルムを供給できる位置に移動する。収容手段22bから最初にカバーフィルムを供給する動作は、収容手段22aから最初にカバーフィルムを供給する場合と同様に行われる。
カバーフィルムの供給をしなくなった収容手段22aに収容されている巻回体を外部に取り除いてから、新しい巻回体を収容する。
【0019】
収容手段22bからの巻回体からカバーフィルムを供給しなくなった場合には、送りローラ対7及び挟持ローラ対24a、24bをカバーフィルムを巻回体から切断手段に送り出した回転とは逆に所定時間回転させる。この動作によって、収容手段22aの挟持手段24から送りローラ対7を介して切断手段8までの間にカバーフィルムが残っている場合には、収容手段22aから外部に出ているカバーフィルム27を収容手段22a内に引き込み、カバーフィルム27の先頭を送りローラ対7で挟持しない状態にすることができる。
その後、供給部20の動きを制御することで、収容手段22bが供給部20の手前に移動し、収容手段22aが送りローラ7にカバーフィルムを供給できる位置に移動する。収容手段22aから最初にカバーフィルムを供給する動作は、前記に述べた通りである。
カバーフィルムの供給をしなくなった収容手段22bに収容されている巻回体を外部に取り除いてから、新しい巻回体を収容する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るカバーフィルム貼着装置を説明する概略平面図である。
【図2】本発明に係るカバーフィルム装置を説明する概略正面図である。
【図3】従来のカバーフィルム貼着装置を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0021】
1 カバーフィルム供給手段
2 巻回体
3a、3b、3c、3d ガイドローラ
4 カバーフィルム
5 カバーフィルム終端検出センサ
6 引き出しローラ
7 送りローラ
8 カバーフィルム切断手段
9 カバーフィルム片
10 スライドガラス
11 カバーローラ
12 貼着ローラ
13、14 カバーフィルム支え台
15 廃棄用容器
16 貼着手段
17 基台
20 供給部
22a、22b 収容手段
23a、23b 回転支持ローラ
24 挟持手段
24a、24b 挟持ローラ
24c 回転つまみ
26 巻回体
27 カバーフィルム
28 引き出しローラ
29 伝達手段
30 カバーフィルム終端検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のカバーフィルムを巻回する巻回体から供給されたカバーフィルムをスライドガラスに貼着するカバーフィルム貼着装置であって、前記長尺のカバーフィルムを巻回する巻回体を収容自在な収容手段を少なくとも2つ備えていることを特徴とするカバーフィルム貼着装置。
【請求項2】
収容手段は、前記巻回体を回転自在に支承する支承手段と、カバーフィルムを挟持自在な挟持手段を備えている請求項1記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項3】
挟持手段に挟持されたカバーフィルムを移動させる力を前記挟持手段に伝達自在な伝達手段を備えている請求項1又は請求項2記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項4】
収容手段は、カバーフィルムを貼着の用に供する位置に移動自在である請求項1から請求項3のいずれかに記載のカバーフィルム貼着装置。
【請求項5】
収容手段は、カバーフィルム貼着装置に載置自在である請求項1から請求項4のいずれかに記載のカバーフィルム貼着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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