カバー層とともに伸張ストランドを組み込んだアッパーを有する履物物品
【課題】材料要素の数を減少させることによって、履物の質量および廃棄物を減少させ、それと同時に生産効率およびリサイクル性を向上させる。
【解決手段】履物物品は、靴底構造と、下地要素、ストランドおよびカバー層を含むアッパーとを有していてもよい。ストランドは、下地要素の外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの距離にわたって外部表面と実質的に平行である。カバー層は、少なくとも5センチメートルの距離にわたってストランドに沿って延び、ストランドはカバー層と下地要素との間に配置される。構成によっては、カバー層はストランドの両側に一組の縁部を有し、ストランドは少なくとも5センチメートルの距離にわたってカバー層の縁部間の実質的に中央に置かれ、外部表面の領域はカバー層の縁部を越えて露出される。
【解決手段】履物物品は、靴底構造と、下地要素、ストランドおよびカバー層を含むアッパーとを有していてもよい。ストランドは、下地要素の外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの距離にわたって外部表面と実質的に平行である。カバー層は、少なくとも5センチメートルの距離にわたってストランドに沿って延び、ストランドはカバー層と下地要素との間に配置される。構成によっては、カバー層はストランドの両側に一組の縁部を有し、ストランドは少なくとも5センチメートルの距離にわたってカバー層の縁部間の実質的に中央に置かれ、外部表面の領域はカバー層の縁部を越えて露出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カバー層とともに伸張ストランドを組み込んだアッパーを有する履物物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、履物物品は2つの主な要素、すなわち、アッパーおよび靴底(ソール)構造を有する。アッパーは、互いに縫い合わせた、または接着剤で貼り合わせた、複数の材料要素(例えば、織物、ポリマーシート層、発泡層、革、合成皮革)から形成されていることが多く、足を快適で確実に収容するために履物の内部に空洞を形成する。より具体的には、アッパーは、足の内側側部および外側側部に沿い、また足の踵部分を回り、足の甲およびつま先の部分の上に延びる構造を形成する。また、アッパーは、履物のフィット性を調節すると共にアッパー内部の空洞から足の出し入れを可能にする紐システムを組み込んでいてもよい。さらにアッパーは、紐システムの下に延びて履物の調節性および快適性を高めるベロを備えていてもよく、また踵部カウンターを組み込んでいてもよい。
【0003】
アッパーを形成する種々の材料要素は、アッパーの異なる領域に特定の特性を与える。例えば、織物要素は通気性を提供し、足から湿気を吸収できる。発泡層は圧縮して快適性を与え、革は耐久性および耐摩耗性を与えることができる。
靴底構造は、足と地面との間に配置されるようにアッパーの下部に固定されている。運動靴では、例えば、靴底構造はミッドソールおよびアウトソールを含む。ミッドソールは、ウォーキング中、ランニング中および他の歩行活動中の地面反力を減衰する(すなわち、クッション性を与える)ポリマー発泡材料から形成されてもよい。またミッドソールは、例えば、力をさらに減衰したり、安定性を向上させたり、または足の動きに影響を及ぼしたりする流体を充填した区室(チャンバ)、板、緩和部または他の要素を含んでいてもよい。アウトソールは、履物の接地要素を形成し、通常は地面捕捉性能(トラクション)を付与するテクスチュアリングを含んだ、耐久性および耐摩耗性を有するゴム材料から構成される。また、靴底構造は、履物の快適性を向上させるために、アッパー内部および足の下表面近くに配置される中敷きを含んでいてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料要素の数が増えるのに比例して、履物の総質量は増加する場合がある。また、材料要素の輸送、仕入れ、切断および接合に関連する時間および費用も増大する場合がある。その上、アッパーに組み込まれた材料要素の数が増えるに従って、切断および縫合工程からの廃棄物がかなりの程度たまるおそれがある。さらに、数少ない材料要素から形成された製品よりも、多くの材料要素を用いた製品の方が再利用の難しい場合がある。したがって、材料要素の数を減少させることによって、履物の質量および廃棄物を減少させることができ、それと同時に生産効率およびリサイクル性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アッパーと前記アッパーに固定された靴底構造とを有する履物物品が、以下に開示される。アッパーは、下地要素、ストランド(ひも)およびカバー層を含む。下地要素は、内部表面および反対側の外部表面を有する。ストランドは、外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの距離にわたって外部表面と実質的に平行である。カバー層は少なくとも5センチメートルの距離にわたってストランドに沿って延び、ストランドはカバー層と下地要素との間に配置されている。
【0006】
また、履物物品を製造する方法も開示される。本方法は、ストランドおよびカバー層を履物物品のアッパーの外部表面に対して同時に敷設する工程を含む。さらに、カバー層は当該外部表面に接着される。
本発明の態様を特徴づける新規性の利点および特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に説明される。しかし、新規性の利点および特徴についてさらに理解を得るために、本発明に関連した様々な構成および概念について記載および例示する以下の記述および添付図面を参照してもよい。
【0007】
本発明の上記の発明の概要および以下の発明を実施するための形態は、添付の図面を参照して読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】履物物品の外側側部の立面図である。
【図2】履物物品の内側側部の立面図である。
【図3】履物物品の図1における切断線3−3に沿った横断面図である。
【図4】履物物品の図1に示すアッパーの第1部分の斜視図である。
【図5】アッパーの第1部分の分解斜視図である。
【図6A】図4における切断線6A−6Aに沿ったアッパーの第1部分の横断面図である。
【図6B】図4における切断線6B−6Bに沿ったアッパーの第1部分の横断面図である。
【図7】履物物品の図1に示すアッパーの第2部分の斜視図である。
【図8】アッパーの第2部分の分解斜視図である。
【図9A】図7における切断線9A−9Aに沿ったアッパーの第2部分の横断面図である。
【図9B】図7における切断線9B−9Bに沿ったアッパーの第2部分の横断面図である。
【図10A】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10B】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10C】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10D】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10E】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10F】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10G】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図11A】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図11B】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図11C】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図11D】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図12A】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【図12B】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【図12C】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【図12D】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【図12E】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記の記述および添付図面により、伸張ストランドを組み込んだ履物物品の様々な構成を開示する。履物物品はウォーキングまたはランニングに適した一般的な構造を有するように開示される。また、この履物物品に関連した概念は、例えば、野球シューズ、バスケットボールシューズ、クロストレーニングシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズおよびハイキングブーツなど他の様々な履物タイプにも適用できる。こうした概念はまた、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴などの運動以外に使用されると一般に考えられる履物タイプにも適用できる。したがって、本明細書中に開示の様々な概念は、多種多様な履物タイプに当てはまる。履物の他に、伸張ストランドまたは伸張ストランドに関連した概念は、他の様々な製品に組み込まれてもよい。
【0010】
一般的な履物構造
靴底構造20およびアッパー30を含む履物物品10を図1〜図3に示す。参考として、図1および図2に示すように、履物10は前方(足前)領域11、中間領域12および踵領域13という3つの一般的な領域に分けられてもよい。また、履物10は外側側部14および内側側部15を含む。前方領域11は一般に、足指(つま先)、および中足骨を指骨に連結している関節に対応する履物10の部分を含む。中間領域12は一般に、足のアーチ部分に対応する履物10の部分を含み、踵領域13は踵骨を含む足の後方部分に対応する。外側側部14および内側側部15は、各領域11〜13を通して延び、履物10の反対側の側面に対応する。各領域11〜13および各側部14〜15は、履物10の正確な領域を区分するものではなく、むしろ、以下の説明の理解を助けるために、履物10の一般的な各領域を表すものである。また、履物10の他に、各領域11〜13および各側部14〜15も、靴底構造20、アッパー30およびそれらの各要素に適用される。
【0011】
靴底構造20はアッパー30に固定されており、履物10の着用時に足と地面との間に延びるものである。靴底構造20の主な要素としては、ミッドソール21、アウトソール22および中敷き23がある。ミッドソール21はアッパー30の下表面に固定され、ウォーキング中、ランニング中および他の歩行活動中に足と地面との間で圧縮される際に地面反力を減衰する(すなわち、クッション性を与える)圧縮可能なポリマー発泡要素(例えば、ポリウレタン発泡体またはエチルビニルアセテート発泡体)から形成されていてもよい。さらなる構成では、ミッドソール21は、力をさらに減衰したり、安定性を向上させたり、または足の動きに影響を及ぼしたりする流体を充填した区室(チャンバ)、板、緩和部もしくは他の要素を組み込んでいてもよく、または主に流体を充填した区室から形成されていてもよい。アウトソール22はミッドソール21の下表面に固定され、テキスチャが形成され地面捕捉性能を付与した耐摩耗性のゴム材から形成されていてもよい。中敷き23はアッパー30内部に位置され、足の下表面の下に延びるように配置される。このような靴底構造20に対する構成は、アッパー30に関連して用いられる靴底構造の一例を提供するが、靴底構造20に対する他の様々な従来の構成または従来にない構成も利用してよい。したがって、アッパー30と共に用いる靴底構造20または任意の靴底構造の構成および特徴は大幅に変化してもよい。
【0012】
アッパー30は靴底構造20に固定され、靴底構造20に対して足を収容し固定するために履物10内部に空洞を画定する下地要素31を含んでいる。より具体的には、下地要素31の内部表面が、空洞の少なくとも一部をアッパー30内部に形成している。図示するように、下地要素31は足を収容するために形作られ、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上を通って、踵を回り、足の下に延びている。他の構成では、下地要素31は、単に足の一部の上にまたはその部分に沿って延びており、それによってアッパー30内部に空洞の一部分だけを形成する。少なくとも踵領域13に位置する足首開口部32によって、下地要素31内部の空洞までアクセスできるようにしている。靴紐33が様々な靴紐開口部34を貫通して延び、靴紐開口部34は下地要素31を貫通している。この靴紐33によって、着用者が足の大きさに対応するようにアッパー30の寸法を変えることができる。より詳細には、靴紐33によって、着用者が足のまわりのアッパー30をしっかりと締めることができ、また、着用者が空洞から(すなわち、足首開口部32を通して)足を出し入れしやすいようにアッパー30を緩めることができる。さらに、下地要素31は、靴紐33の下に延びるベロ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0013】
下地要素31の様々な部分は、互いに縫い合わせた、または接着した1つ以上の複数の材料要素(例えば、織物、ポリマーシート、発泡層、革、合成皮革)から形成され、履物10内部に空洞を形成する。図3を参照すると、下地要素31は単一の材料層から形成されているように示しているが、それぞれ異なる特性を与える複数の材料層から形成されていてもよい。上述のように、下地要素31は、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上を通って、踵を回り、足の下に延びる。さらに、下地要素31の内部表面は足(または足に着用したソックス)と接触するのに対して、下地要素31の外部表面はアッパー30の外部表面の少なくとも一部を形成する。下地要素31を形成する材料要素はアッパー30に様々な特性を与えてもよいが、伸張要素40が外側側部14および内側側部15それぞれに固定され、より具体的には、下地要素31の外部表面に固定される。したがって、アッパー30の外部表面の大部分は、下地要素31および伸張要素40の組み合わせによって形成される。
【0014】
伸張要素40は様々なストランド41を組み込んでいる。図1および図2を参照すると、ストランド41は、外側側部14および内側側部15のどちらにも(a)靴紐開口部34と靴底構造20との間をほぼ鉛直方向に、かつ、(b)前方領域11と踵領域13との間をほぼ水平方向に延びる。また図3を参照すると、種々のストランド41はそれぞれ下地要素31と複数のカバー層42の1つとの間に位置されている。伸張要素40は側部14および15の両方に位置されているが、履物10の構成によっては側部14および15のどちらか一方に限定されてもよい。伸張要素40は、例えば、外側側部14の一部(例えば、中間領域12に限定)を通して延びるだけでもよく、または外側側部14および内側側部15の大部分を形成するように伸張されてもよい。すなわち、伸張要素40の一般的な構成を有し、ストランド41とカバー層42とを含む単一要素は、外側側部14および内側側部15の両方を通して延びていてもよい。他の構成では、さらなる要素が伸張要素40に接合されてもよい。
【0015】
ウォーキング中、ランニング中または他の歩行活動中、履物10の空洞内部の足はアッパー30を伸展させる傾向がある。すなわち、足の運動によって引っ張られると、下地要素31を含むアッパー30を形成する材料要素の多くが伸展する。ストランド41も伸展してよいが、一般にアッパー30を形成する他の材料要素(例えば、下地要素31およびカバー層42)よりも低い度合いで伸展する。したがって、ストランド41をそれぞれ位置して、特定の方向に伸展しにくい構造部品または力が集中する位置を補強する構造部品をアッパー30内に形成してもよい。一例として、靴紐開口部34と靴底構造20との間に延びる種々のストランド41は、内側から外側の方向に(すなわち、アッパー30を取り囲む方向に)伸展しにくい。また、靴紐33の張力による伸展に抵抗するため、このようなストランド41は靴紐開口部34にも隣接して配置され、靴紐開口部34から放射状に外方に広がる。別の例として、前方領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41は、長手方向に(すなわち、領域11〜13をそれぞれ貫通する方向に)伸展しにくい。したがって、ストランド41を位置して伸展しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。
【0016】
伸張要素の構成
伸張要素40を含むアッパー30の第1部分を図4〜図6Bに示す。上述したように、伸張要素40はストランド41およびカバー層42を含んでおり、ストランド41はカバー層42と下地要素31の外部表面との間に配置されている。本構成では、ストランド41は下地要素31の外部表面に隣接しており、下地要素31の外部表面と実質的に平行である。ストランド41はまた、カバー層42の内部表面に隣接しており、カバー層42の表面と実質的に平行である。上述したように、ストランド41は伸張しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。ストランド41は、下地要素31およびカバー層42の表面または平面と実質的に平行であることによって、アッパー30の平面と一致する方向に伸展しにくい。位置によって、ストランド41は(例えば、縫い合わせた結果)下地要素31を貫通して延びてもよいが、下地要素31を貫通して延びる領域が伸展を可能にしてもよく、それによってストランド41の全体的な能力が低下して伸展が制限される。その結果、ストランド41は一般にそれぞれ下地要素31の外部表面に隣接し、少なくとも12ミリメートルの距離にわたって下地要素31の外部表面と実質的に平行であり、また、下地要素31の外部表面に隣接し、少なくとも5センチメートル以上の距離全体にわたって下地要素31の外部表面と実質的に平行であってもよい。
【0017】
各カバー層42は実質的に一定の間隔の2つの互いに反対側の縁部43を画定し、ストランド41を縁部43間の中央に置いてもよい。図3および図6Aを参照して、例えば、様々なカバー層42はストランド41上に延び、カバー層42の中央に隆起または突出した領域を形成する。すなわち、中心に位置されたストランド41によって、カバー層42の中央に突出した領域を形成する。カバー層42はストランド41を下地要素31に固定するのを助け、その上、摩擦または摩耗からストランド41を保護するのも助けることから、ストランド41は縁部43を基準として中央に置かれることが多い。しかし、履物10の構成によっては、ストランド41をカバー層42の中央からずらして置いてもよい。ストランド41が下地要素31の外部表面に隣接して5センチメートル以上の距離にわたって実質的に平行である領域において、縁部43は5センチメートル以上の距離にわたって実質的に一定の間隔を保持していてもよい。
【0018】
カバー層42は縁部43の間でストランド41の長さに沿って連続していてもよいが、他の様々な構成を示していてもよい。例えば、カバー層42に、下地要素31またはストランド41の領域を露出する様々な開口部または打ち抜き孔を画定してもよい。別の例として、カバー層42はストランド41の長さに沿って隙間または他の不連続部分を有していてもよい。すなわち、カバー層42の複数の区分がストランド41上に延びて、その区分間に隙間が存在してもよい。
【0019】
下地要素31の外部表面の領域が縁部43を越えて露出される。上述したように、アッパー30の外部表面の大部分は、下地要素31および伸張要素40の組み合わせによって形成されている。伸張要素40の構成によっては、カバー層42はポリマーシートから形成されていてもよいのに対して、下地要素31は織物材料から形成されていてもよい。ポリマーシートは一般に織物より通気性、透湿性、透水性が劣ることから、伸張要素40を含むアッパー30の領域は下地要素31が露出される領域より透過性が劣る場合がある。しかし、下地要素31の外部表面の領域が縁部43を越えて露出されるアッパー30の領域は、透過性を維持したまま、履物10を着用時に空気、湿った空気、熱せられた空気または汗がアッパー30から出ていく程度を高める。
【0020】
伸張要素40を含むアッパー30の第2部分を図7〜図9Bに示す。かかるアッパー30の領域では、第1の方向に(例えば、前方領域11と踵領域13との間を長手方向に)延びるストランド41およびカバー層42が、第2の方向に(例えば、靴紐開口部34から靴底構造20まで)延びるストランド41およびカバー層42と交差する。伸張要素40の部分が互いに交差する領域では、アッパー30は、少なくとも下地要素31から形成される第1層と、カバー層42の1つから形成される第2層と、カバー層42の別の1つから形成される第3層とを含む層構成を有する。さらに、互いに交差する少なくとも2つのストランド41はこの層構成内に位置される。
【0021】
ストランド41は任意の一般的な一次元材料から形成されてもよい。本発明に対して用いるように、「一次元材料」という用語またはその変形は、幅および厚みより実質的に大きい長さを示す一般に細長い材料を包含することを意図している。したがって、ストランド41に好適な材料として、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル酸、絹、綿、炭素、ガラス、アラミド(例えば、パラ系アラミド繊維およびメタ系アラミド繊維)、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー、銅、アルミニウムおよび鋼から形成される種々のフィラメント、繊維、ヤーン、糸、ケーブルまたはロープが挙げられる。フィラメントは長さが不定で、ストランド41として個々に用いてもよい。一方、繊維は比較的長さが短く、一般に紡績または加撚工程を経て、好適な長さのストランドを生成する。ストランド41に用いた個々のフィラメントは、単一の材料(すなわち、単成分フィラメント)から形成されてもよく、または複数の材料(すなわち、二成分フィラメント)から形成されてもよい。同様に、異なるフィラメントが異なる材料から形成されていてもよい。一例として、ストランド41として用いるヤーンは、一般的な材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよく、2種以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよく、または2種以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよい。また、同様の概念が、糸、ケーブルまたはロープにも当てはまる。ストランド41の厚みは、例えば、0.03ミリメートル〜5ミリメートルを超える範囲で著しく変化してもよい。一次元材料は、断面の幅と厚みとが実質的に等しい(例えば、円形または正方形の断面)ことが多いが、厚みより幅の方が大きいもの(例えば、長方形、楕円形またはその他の細長い断面)もある。幅が大きいにもかかわらず、材料の長さが材料の幅および厚みよりも実質的に大きい場合、材料が一次元的であると考えられる。
【0022】
カバー層42ならびに下地要素31の部分は、任意の一般的に二次元材料から形成されてもよい。本発明に対して用いるように、「二次元材料」という用語またはその変形は、厚みより実質的に大きい長さおよび幅を表す一般に平坦な材料を包含することを意図している。したがって、カバー層42に好適な材料として、例えば、様々な織物、ポリマーシート、または織物とポリマーシートとの組み合わせが挙げられる。織物は一般に、例えば、(a)接着、融合、連結によって繊維の織物から直接生成されていて不織布およびフェルトを構成するか、または(b)ヤーンの機械加工によって形成して不織布もしくはニット生地を生成するか、どちらかの方法によって生成された繊維、フィラメントもしくはヤーンから製造される。織物は、一方向に伸展または複数方向に伸展するように配置された繊維を組み込んでもよく、例えば、通気性のある耐水バリヤを形成する被膜を含んでいてもよい。ポリマーシートは、押出、圧延、またはポリマー材料から形成されて、ほぼ平坦な態様を示す。また、二次元材料は積層材料、または織物、ポリマーシートまたは織物とポリマーシートとを組み合わせた2つ以上の層を含む層状材料を包含していてもよい。織物およびポリマーシートに加えて、他の二次元材料をカバー層42に用いてもよい。二次元材料は、平滑な表面またはほぼテクスチャのない表面を有していてもよいが、中には、テクスチャまたは、例えば、ディンプリング、凸部、ひだもしくは各種パターンなどの他の表面特性を示すものもある。表面特性があるにもかかわらず、二次元材料はほぼ平坦なままであり、厚みより実質的に大きい長さおよび幅を示す。構成によっては、さらに良好な透過性を付与するために、カバー層42にメッシュ材または有孔材を用いてもよい。
【0023】
カバー層42は様々な材料から形成されてもよいが、カバー層42に熱可塑性ポリマー材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン)を組み込むと、カバー層42と下地要素31との間を接着しやすくなり、さらにカバー層42と下地要素31との間にストランド41を固定しやすくなる。例としては、カバー層42は、(a)熱可塑性ポリマーシート、(b)熱可塑性ポリマー材料から形成されたフィラメントもしくは繊維を含む織物、または(c)織物と熱可塑性ポリマーシートとの組み合わせであってもよい。これらの構成のうちいずれも、カバー層42の熱可塑性ポリマー材料を加熱することによって、ストランド41および下地要素31の両方で接着剤を形成してもよい。他の構成では、下地要素31は熱可塑性ポリマー材料を組み込んでいてもよい。さらなる状況として、履物10の審美性を向上させるために、カバー層42はストランド41を視認できる少なくとも部分的に透明なポリマー材料から形成されてもよい。
【0024】
上記の説明に基づくと、伸張要素40は一般にストランド41およびカバー層42を含んでおり、ストランド41は下地要素31の外部表面とカバー層42との間に位置している。ストランド41は下地要素31およびカバー層42のいずれか一方を貫通してもよいが、ストランド41は一般に下地要素31およびカバー層42の表面に隣接し、これらの表面と12ミリメートルを超える長さ、さらに5センチメートルを超える長さにわたって平行である。様々な一次元材料がストランド41に使用されてもよいが、1つのまたはそれ以上の二次元材料を下地要素31およびカバー層42に用いてもよい。さらに、カバー層42が例えば熱可塑性ポリマー材料を含む場合、熱可塑性ポリマー材料を加熱することによって、カバー層42とアッパー30の他の要素との間を接着させてもよい。
【0025】
構造部品
従来のアッパーは複数の材料層から形成され、アッパーの様々な領域にそれぞれ異なる特性を与えていた。使用中にアッパーが著しい引張力を受け、その引張力に抵抗するために1つまたはそれ以上の材料層がアッパーの領域に配置される。すなわち、履物の使用中に発生する引張力に抵抗するために、アッパーの特定の部分に個々の層が組み込まれる。一例として、長手方向に伸展耐性を与えるために、織布地をアッパーに組み込んでもよい。織布地は、互いに直角で織り合せるヤーンから形成される。長手方向へ伸展しにくくするために織布地をアッパーに組み込むと、長手方向に配向されたヤーンだけが長手方向の伸展耐性に貢献し、一般に長手方向に直交するヤーンは長手方向の伸展耐性に貢献しない。したがって、織布地におけるヤーンの約2分の1は、長手方向の伸展耐性には不要である。この例の延長として、アッパーの異なる領域に要する伸展耐性の程度は変化してもよい。アッパーの領域によっては比較的高度の伸展耐性を要するものもあるが、他のアッパーの領域は比較的低度の伸展耐性を要する場合がある。織布地は高度および低度の両方の伸展耐性を要する領域で利用できるため、低度の伸展耐性を要する領域には織布地におけるヤーンが不要な場合もある。この例では、こうした不要なヤーンは、履物に有用な特性を付加することなく、履物の総質量を増やす。同様の概念が、例えば、耐摩耗性、柔軟性、空気透過性、クッション性および吸湿性のうち1つ以上に対して利用される革およびポリマーシートなどの他の材料に当てはまる。
【0026】
上記の説明の概要として、複数の材料層から形成された従来のアッパーに用いられる材料が、アッパーの所望の特性にあまり貢献しない不要な部分を有していてもよい。伸展耐性に関して、例えば、層は必要または所望するよりも(a)より多数の伸展耐性の方向または(b)より高度な伸展耐性を与える材料を有しているかもしれない。したがって、このような材料の不要な部分は、あまり有用な特性を与えることなく、履物の総質量および費用を増やすものである。
【0027】
上述した従来の層構造とは対照的に、アッパー30は不要な材料の存在を最小限に抑えるように構成されている。下地要素31は足を覆うものであるが、比較的質量が少なくてもよい。伸張要素40は種々のストランド41を含んでいるが、特定の方向および位置に伸展耐性を与えるように配置され、ストランド41の数は所望する伸展耐性の程度を与えるように選択される。したがって、ストランド41の配向、位置および量は、特定の目的に合った構造部品を提供するように選択される。
【0028】
以下の説明における参考として、4つのストランド群51〜54を図1および図2に明示する。ストランド群51は、足首開口部32に最も近い靴紐開口部34から下方へ延びる種々のストランド41を含む。同様に、ストランド群52および53は、他の靴紐開口部34から下方へ延びる種々のストランド41を含む。さらに、ストランド群54は、前方領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41を含む。
【0029】
靴紐開口部34および44と靴底構造20との間に延びる種々のストランド41は内側から外側の方向に伸展しにくいが、これは靴紐33の張力によるものであってもよい。より具体的には、ストランド群51の種々のストランド41は、足首開口部32に最も近い靴紐開口部44を貫通して延びる靴紐33の部分から協働的に伸展に抵抗する。また、ストランド群51が靴紐開口部44から離れて延びる場合、外方へ放射状に延び、それによって靴紐33からの力をアッパー30の領域全体に分散させる。同様の概念がストランド群52および53にも当てはまる。前方領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41は長手方向に伸展しにくい。より具体的には、ストランド群54の種々のストランド41は、長手方向に協働的に伸展に抵抗し、ストランド41の数は領域11〜13によって特定の程度の伸展耐性を提供するように選択される。さらに、ストランド群54のストランド41はまた、ストランド群51〜53の各ストランド41と交差して、領域11〜13にかけて比較的連続した伸展耐性を与える。
【0030】
履物10の特定の構成および履物10の意図された用途に応じて、下地要素31およびカバー層42は、例えば、非伸展性材料、一方向に伸展する材料、または二方向に伸展する材料であってもよい。一般に、二方向に伸展する材料から下地要素31およびカバー層42を形成すると、足の形状に適合する一段と優れた能力をアッパー30に与え、それによって履物10の快適性を向上させる。下地要素31およびカバー層42が二方向に伸展する構成では、ストランド41と下地要素31およびカバー層42との組み合わせが特定の位置におけるアッパー30の伸展特性を効果的に変化させる。アッパー30に関しては、二方向に伸展するストランド41と下地要素31およびカバー層42との組み合わせによって、異なる伸展特性を有する帯域をアッパー30内に形成する。このような帯域としては、(a)ストランド41が存在せず、アッパー30が二方向に伸展する第1帯域、(b)複数のストランド41が存在して互いに交差せず、アッパー30がストランド41に直交する(すなわち、垂直の)方向に一方向の伸展性を示す第2帯域、および(c)複数のストランド41が存在して互いに交差し、アッパー30が実質的に非伸展性または限定的な伸展性を示す第3帯域が挙げられる。したがって、アッパー30の特定の領域の全体的な伸展特性は、ストランド41の存在によって制御され、また、複数のストランド41が互いに交差するかどうかによっても制御される。
【0031】
上記の説明に基づけば、ストランド41を用いて、アッパー30内に構造部品を形成してもよい。一般に、ストランド41は伸展に抵抗してアッパー30の全体的な伸展を制限する。また、ストランド41を用いて、アッパー30の異なる領域に力(例えば、靴紐33からの力)を分散してもよい。したがって、ストランド41の配向、位置および量は特定の目的に合った構造部品を提供するように選択される。さらに、互いに対するストランド41の配向およびストランド41が互いに交差するか否かを利用して、アッパー30の異なる部分における伸展方向を制御してもよい。
【0032】
製造工程
種々の方法を利用して伸張要素40を含むアッパー30を製造してもよい。一例として、縫取り(刺繍)プロセスを利用して下地要素31に対してストランド41を配置してもよい。一旦ストランド41を配置すると、カバー層42は下地要素31およびストランド41に接着されてもよく、それによって伸張要素40内にストランド41を固定する。同様の方法が、米国特許商標庁に2006年5月25日に出願された「Article Of Footwear Having An Upper With Thread Structural Elements(スレッド構造要素を備えたアッパーを有する履物物品)」と題した米国特許出願第11/442,679号に詳細に記載されており、この先行出願の全体を本明細書に引用して援用する。縫取りプロセスに代わる方法として、下地要素31に対してストランド41を配置するために、コンピューター縫合といった他の縫合方法を利用してもよい。さらに、下地要素31を囲むフレーム上にあるペグにストランド41を巻きつけることを含む工程を利用して、ストランド41を配置してもよい。
【0033】
次に、伸張要素40を形成し、下地要素31に伸張要素40を固定するために利用される別の方法について説明する。図10Aを参照して、下地要素31の一部(例えば、外側側部14を形成する部分)を形成するために用いてもよい材料の略矩形シートを、(a)ストランド41を形成する一次元材料のスプール60および(b)カバー層42を形成する二次元材料のロール70に関連して示す。図10Bに示すように、スプール60からのストランド41の部分およびロール70からのカバー層42の部分を下地要素31に対して敷設し、(例えば、熱で)下地要素31で接着して、靴紐開口部34のうちの1つから靴底構造20へ延びる伸張要素40の一部を形成し始める。より具体的には、ストランド41の部分を下地要素31に対して敷設し、カバー層42の部分をストランド41上に敷設し、下地要素31に接着する。製造方法によっては、ストランド41およびカバー層42を下地要素31に対して同時に敷設するように、また、カバー層42を下地要素31に接着するように継ぎ目テープ機械または継ぎ目シーリングテープ機械を変更してもよい。継ぎ目テープ機械を利用する場合、従来の継ぎ目テープ材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂)をカバー層42として用いてもよい。次いで、図10Cおよび図10Dに示すように、さらにスプール60からのストランド41の部分およびロール70からのカバー層42の部分を下地要素31に対して敷設し、下地要素31で接着して、靴紐開口部34のうちの1つから靴底構造20へ延びる伸張要素40の他の部分を形成する。ストランド41およびストランド41上に延びるカバー層42を同時に置くことの利点は、カバー層42と下地要素31との間を接着することによってストランド41の位置が固定されるということである。
【0034】
その後、同様の方法を用いて、図10Eおよび図10Fに示すように、前方領域11と踵領域13との間に延びる伸張要素40の各部分を形成する。より具体的には、ストランド41の部分を下地要素31に対して敷設し、カバー層42の部分をストランド41上に敷設し、下地要素31に接着する。一旦伸張要素40を下地要素31に対して敷設し、下地要素31で接着すると、図10Gに示すように、下地要素31および伸張要素40の組み合わせをアッパー30の外側側部14を形成するのに適した形状に(すなわち、はさみ、ダイカットまたはレーザーカッティングで)切断してもよく、また、様々な靴紐開口部34を形成してもよい。そして、このような要素を実質的に同様の要素で接合してアッパー30の大部分を形成してもよく、また、靴底構造20をアッパー30に接着して履物10の製造を実質的に完了してもよい。製造工程によっては、下地要素31を形成する材料の一つの部分から外側側部14および内側側部15の両方を形成してもよい。
【0035】
上述した図10A〜図10Gに示す方法では、ストランド41およびカバー層42を形成する材料の様々な部分の端は、アッパー30の外側側部14を形成するのに適した形状の境界線を越えて延び、切断される。かかる構成では、ストランド41およびカバー層42の端は下地要素31の縁部まで延びる。本方法の利点として、ストランド41は下地要素31の幅および高さの実質的に全体を横切って延びて、伸展しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。
【0036】
さらなる構成
図1および図2のストランド41の配向、位置および量は、履物10に好適な構成の一例を提供することを意図している。履物10の他の構成では、伸張要素40および履物10の種々の態様が大幅に変化してもよい。図11Aを参照して、靴紐開口部34から靴底構造20まで延びるストランド41およびカバー層42は、前方領域11から踵領域13まで延びるストランド41およびカバー層42と交差する別の構成を示す。同様の構成では、このような領域は他のストランド41およびカバー層42と交差して、アッパー30に織物の外観を与える。さらなる構成では、ストランド41およびカバー層42は、図11Bに示すように靴紐開口部34から靴底構造20までにだけ延びてもよく、または図11Cに示すように前方領域11から踵領域13までにだけ延びてもよい。ストランド41およびカバー層42は、アッパー30の長手方向の長さまたは高さを通して全体的に延びてもよいが、このような距離の一部にだけ延びてもよい。例えば、図11Dは、ストランド41およびカバー層42が長手方向の長さの一部にわたって構成を示す。
【0037】
ストランド41をカバー層42の縁部43に対して中央に置いてもよいが、図12Aは、ストランド41をカバー層42の中央からずらして置いた構成を示す。さらなる構成では、図12Bに示すように、複数のストランド41が一つのカバー層42と対応してもよい。下地要素31は、単層の材料から形成されているように図3に示している。しかし、図12Cを参照すると、下地要素31は3層である。例として、内側層および外側層は織物でもよいが、中央の層は快適性を増すポリマー発泡材料であってもよい。前図に示した構成の多くにおいては、カバー層42はストランド41の領域において外方へ突出するが、図12Dに示すように、ストランド41はカバー層42内に埋設されてもよい。同様に、図12Eに示すように、ストランド41は下地要素31内にも部分的に(または完全に)埋設されてもよい。このような構成ではそれぞれ、ストランド41は下地要素31の外部表面に隣接しており、下地要素31の外部表面と実質的に平行である。
【0038】
本発明は、様々な構成を参照して、上記および添付の図面において開示した。しかしこの開示によって示される目的は、本発明に関連する様々な特徴および概念の例を提供することであり、本発明の範囲を制限するためではない。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上述した構成に対して多くの変更や改変を行なえること認識するであろう。
【技術分野】
【0001】
この発明は、カバー層とともに伸張ストランドを組み込んだアッパーを有する履物物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、履物物品は2つの主な要素、すなわち、アッパーおよび靴底(ソール)構造を有する。アッパーは、互いに縫い合わせた、または接着剤で貼り合わせた、複数の材料要素(例えば、織物、ポリマーシート層、発泡層、革、合成皮革)から形成されていることが多く、足を快適で確実に収容するために履物の内部に空洞を形成する。より具体的には、アッパーは、足の内側側部および外側側部に沿い、また足の踵部分を回り、足の甲およびつま先の部分の上に延びる構造を形成する。また、アッパーは、履物のフィット性を調節すると共にアッパー内部の空洞から足の出し入れを可能にする紐システムを組み込んでいてもよい。さらにアッパーは、紐システムの下に延びて履物の調節性および快適性を高めるベロを備えていてもよく、また踵部カウンターを組み込んでいてもよい。
【0003】
アッパーを形成する種々の材料要素は、アッパーの異なる領域に特定の特性を与える。例えば、織物要素は通気性を提供し、足から湿気を吸収できる。発泡層は圧縮して快適性を与え、革は耐久性および耐摩耗性を与えることができる。
靴底構造は、足と地面との間に配置されるようにアッパーの下部に固定されている。運動靴では、例えば、靴底構造はミッドソールおよびアウトソールを含む。ミッドソールは、ウォーキング中、ランニング中および他の歩行活動中の地面反力を減衰する(すなわち、クッション性を与える)ポリマー発泡材料から形成されてもよい。またミッドソールは、例えば、力をさらに減衰したり、安定性を向上させたり、または足の動きに影響を及ぼしたりする流体を充填した区室(チャンバ)、板、緩和部または他の要素を含んでいてもよい。アウトソールは、履物の接地要素を形成し、通常は地面捕捉性能(トラクション)を付与するテクスチュアリングを含んだ、耐久性および耐摩耗性を有するゴム材料から構成される。また、靴底構造は、履物の快適性を向上させるために、アッパー内部および足の下表面近くに配置される中敷きを含んでいてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料要素の数が増えるのに比例して、履物の総質量は増加する場合がある。また、材料要素の輸送、仕入れ、切断および接合に関連する時間および費用も増大する場合がある。その上、アッパーに組み込まれた材料要素の数が増えるに従って、切断および縫合工程からの廃棄物がかなりの程度たまるおそれがある。さらに、数少ない材料要素から形成された製品よりも、多くの材料要素を用いた製品の方が再利用の難しい場合がある。したがって、材料要素の数を減少させることによって、履物の質量および廃棄物を減少させることができ、それと同時に生産効率およびリサイクル性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アッパーと前記アッパーに固定された靴底構造とを有する履物物品が、以下に開示される。アッパーは、下地要素、ストランド(ひも)およびカバー層を含む。下地要素は、内部表面および反対側の外部表面を有する。ストランドは、外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの距離にわたって外部表面と実質的に平行である。カバー層は少なくとも5センチメートルの距離にわたってストランドに沿って延び、ストランドはカバー層と下地要素との間に配置されている。
【0006】
また、履物物品を製造する方法も開示される。本方法は、ストランドおよびカバー層を履物物品のアッパーの外部表面に対して同時に敷設する工程を含む。さらに、カバー層は当該外部表面に接着される。
本発明の態様を特徴づける新規性の利点および特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に説明される。しかし、新規性の利点および特徴についてさらに理解を得るために、本発明に関連した様々な構成および概念について記載および例示する以下の記述および添付図面を参照してもよい。
【0007】
本発明の上記の発明の概要および以下の発明を実施するための形態は、添付の図面を参照して読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】履物物品の外側側部の立面図である。
【図2】履物物品の内側側部の立面図である。
【図3】履物物品の図1における切断線3−3に沿った横断面図である。
【図4】履物物品の図1に示すアッパーの第1部分の斜視図である。
【図5】アッパーの第1部分の分解斜視図である。
【図6A】図4における切断線6A−6Aに沿ったアッパーの第1部分の横断面図である。
【図6B】図4における切断線6B−6Bに沿ったアッパーの第1部分の横断面図である。
【図7】履物物品の図1に示すアッパーの第2部分の斜視図である。
【図8】アッパーの第2部分の分解斜視図である。
【図9A】図7における切断線9A−9Aに沿ったアッパーの第2部分の横断面図である。
【図9B】図7における切断線9B−9Bに沿ったアッパーの第2部分の横断面図である。
【図10A】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10B】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10C】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10D】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10E】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10F】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図10G】アッパーを製造する工程の概略斜視図である。
【図11A】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図11B】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図11C】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図11D】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図12A】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【図12B】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【図12C】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【図12D】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【図12E】履物物品のさらなる構成を示す、アッパーの一部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記の記述および添付図面により、伸張ストランドを組み込んだ履物物品の様々な構成を開示する。履物物品はウォーキングまたはランニングに適した一般的な構造を有するように開示される。また、この履物物品に関連した概念は、例えば、野球シューズ、バスケットボールシューズ、クロストレーニングシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズおよびハイキングブーツなど他の様々な履物タイプにも適用できる。こうした概念はまた、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴などの運動以外に使用されると一般に考えられる履物タイプにも適用できる。したがって、本明細書中に開示の様々な概念は、多種多様な履物タイプに当てはまる。履物の他に、伸張ストランドまたは伸張ストランドに関連した概念は、他の様々な製品に組み込まれてもよい。
【0010】
一般的な履物構造
靴底構造20およびアッパー30を含む履物物品10を図1〜図3に示す。参考として、図1および図2に示すように、履物10は前方(足前)領域11、中間領域12および踵領域13という3つの一般的な領域に分けられてもよい。また、履物10は外側側部14および内側側部15を含む。前方領域11は一般に、足指(つま先)、および中足骨を指骨に連結している関節に対応する履物10の部分を含む。中間領域12は一般に、足のアーチ部分に対応する履物10の部分を含み、踵領域13は踵骨を含む足の後方部分に対応する。外側側部14および内側側部15は、各領域11〜13を通して延び、履物10の反対側の側面に対応する。各領域11〜13および各側部14〜15は、履物10の正確な領域を区分するものではなく、むしろ、以下の説明の理解を助けるために、履物10の一般的な各領域を表すものである。また、履物10の他に、各領域11〜13および各側部14〜15も、靴底構造20、アッパー30およびそれらの各要素に適用される。
【0011】
靴底構造20はアッパー30に固定されており、履物10の着用時に足と地面との間に延びるものである。靴底構造20の主な要素としては、ミッドソール21、アウトソール22および中敷き23がある。ミッドソール21はアッパー30の下表面に固定され、ウォーキング中、ランニング中および他の歩行活動中に足と地面との間で圧縮される際に地面反力を減衰する(すなわち、クッション性を与える)圧縮可能なポリマー発泡要素(例えば、ポリウレタン発泡体またはエチルビニルアセテート発泡体)から形成されていてもよい。さらなる構成では、ミッドソール21は、力をさらに減衰したり、安定性を向上させたり、または足の動きに影響を及ぼしたりする流体を充填した区室(チャンバ)、板、緩和部もしくは他の要素を組み込んでいてもよく、または主に流体を充填した区室から形成されていてもよい。アウトソール22はミッドソール21の下表面に固定され、テキスチャが形成され地面捕捉性能を付与した耐摩耗性のゴム材から形成されていてもよい。中敷き23はアッパー30内部に位置され、足の下表面の下に延びるように配置される。このような靴底構造20に対する構成は、アッパー30に関連して用いられる靴底構造の一例を提供するが、靴底構造20に対する他の様々な従来の構成または従来にない構成も利用してよい。したがって、アッパー30と共に用いる靴底構造20または任意の靴底構造の構成および特徴は大幅に変化してもよい。
【0012】
アッパー30は靴底構造20に固定され、靴底構造20に対して足を収容し固定するために履物10内部に空洞を画定する下地要素31を含んでいる。より具体的には、下地要素31の内部表面が、空洞の少なくとも一部をアッパー30内部に形成している。図示するように、下地要素31は足を収容するために形作られ、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上を通って、踵を回り、足の下に延びている。他の構成では、下地要素31は、単に足の一部の上にまたはその部分に沿って延びており、それによってアッパー30内部に空洞の一部分だけを形成する。少なくとも踵領域13に位置する足首開口部32によって、下地要素31内部の空洞までアクセスできるようにしている。靴紐33が様々な靴紐開口部34を貫通して延び、靴紐開口部34は下地要素31を貫通している。この靴紐33によって、着用者が足の大きさに対応するようにアッパー30の寸法を変えることができる。より詳細には、靴紐33によって、着用者が足のまわりのアッパー30をしっかりと締めることができ、また、着用者が空洞から(すなわち、足首開口部32を通して)足を出し入れしやすいようにアッパー30を緩めることができる。さらに、下地要素31は、靴紐33の下に延びるベロ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0013】
下地要素31の様々な部分は、互いに縫い合わせた、または接着した1つ以上の複数の材料要素(例えば、織物、ポリマーシート、発泡層、革、合成皮革)から形成され、履物10内部に空洞を形成する。図3を参照すると、下地要素31は単一の材料層から形成されているように示しているが、それぞれ異なる特性を与える複数の材料層から形成されていてもよい。上述のように、下地要素31は、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上を通って、踵を回り、足の下に延びる。さらに、下地要素31の内部表面は足(または足に着用したソックス)と接触するのに対して、下地要素31の外部表面はアッパー30の外部表面の少なくとも一部を形成する。下地要素31を形成する材料要素はアッパー30に様々な特性を与えてもよいが、伸張要素40が外側側部14および内側側部15それぞれに固定され、より具体的には、下地要素31の外部表面に固定される。したがって、アッパー30の外部表面の大部分は、下地要素31および伸張要素40の組み合わせによって形成される。
【0014】
伸張要素40は様々なストランド41を組み込んでいる。図1および図2を参照すると、ストランド41は、外側側部14および内側側部15のどちらにも(a)靴紐開口部34と靴底構造20との間をほぼ鉛直方向に、かつ、(b)前方領域11と踵領域13との間をほぼ水平方向に延びる。また図3を参照すると、種々のストランド41はそれぞれ下地要素31と複数のカバー層42の1つとの間に位置されている。伸張要素40は側部14および15の両方に位置されているが、履物10の構成によっては側部14および15のどちらか一方に限定されてもよい。伸張要素40は、例えば、外側側部14の一部(例えば、中間領域12に限定)を通して延びるだけでもよく、または外側側部14および内側側部15の大部分を形成するように伸張されてもよい。すなわち、伸張要素40の一般的な構成を有し、ストランド41とカバー層42とを含む単一要素は、外側側部14および内側側部15の両方を通して延びていてもよい。他の構成では、さらなる要素が伸張要素40に接合されてもよい。
【0015】
ウォーキング中、ランニング中または他の歩行活動中、履物10の空洞内部の足はアッパー30を伸展させる傾向がある。すなわち、足の運動によって引っ張られると、下地要素31を含むアッパー30を形成する材料要素の多くが伸展する。ストランド41も伸展してよいが、一般にアッパー30を形成する他の材料要素(例えば、下地要素31およびカバー層42)よりも低い度合いで伸展する。したがって、ストランド41をそれぞれ位置して、特定の方向に伸展しにくい構造部品または力が集中する位置を補強する構造部品をアッパー30内に形成してもよい。一例として、靴紐開口部34と靴底構造20との間に延びる種々のストランド41は、内側から外側の方向に(すなわち、アッパー30を取り囲む方向に)伸展しにくい。また、靴紐33の張力による伸展に抵抗するため、このようなストランド41は靴紐開口部34にも隣接して配置され、靴紐開口部34から放射状に外方に広がる。別の例として、前方領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41は、長手方向に(すなわち、領域11〜13をそれぞれ貫通する方向に)伸展しにくい。したがって、ストランド41を位置して伸展しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。
【0016】
伸張要素の構成
伸張要素40を含むアッパー30の第1部分を図4〜図6Bに示す。上述したように、伸張要素40はストランド41およびカバー層42を含んでおり、ストランド41はカバー層42と下地要素31の外部表面との間に配置されている。本構成では、ストランド41は下地要素31の外部表面に隣接しており、下地要素31の外部表面と実質的に平行である。ストランド41はまた、カバー層42の内部表面に隣接しており、カバー層42の表面と実質的に平行である。上述したように、ストランド41は伸張しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。ストランド41は、下地要素31およびカバー層42の表面または平面と実質的に平行であることによって、アッパー30の平面と一致する方向に伸展しにくい。位置によって、ストランド41は(例えば、縫い合わせた結果)下地要素31を貫通して延びてもよいが、下地要素31を貫通して延びる領域が伸展を可能にしてもよく、それによってストランド41の全体的な能力が低下して伸展が制限される。その結果、ストランド41は一般にそれぞれ下地要素31の外部表面に隣接し、少なくとも12ミリメートルの距離にわたって下地要素31の外部表面と実質的に平行であり、また、下地要素31の外部表面に隣接し、少なくとも5センチメートル以上の距離全体にわたって下地要素31の外部表面と実質的に平行であってもよい。
【0017】
各カバー層42は実質的に一定の間隔の2つの互いに反対側の縁部43を画定し、ストランド41を縁部43間の中央に置いてもよい。図3および図6Aを参照して、例えば、様々なカバー層42はストランド41上に延び、カバー層42の中央に隆起または突出した領域を形成する。すなわち、中心に位置されたストランド41によって、カバー層42の中央に突出した領域を形成する。カバー層42はストランド41を下地要素31に固定するのを助け、その上、摩擦または摩耗からストランド41を保護するのも助けることから、ストランド41は縁部43を基準として中央に置かれることが多い。しかし、履物10の構成によっては、ストランド41をカバー層42の中央からずらして置いてもよい。ストランド41が下地要素31の外部表面に隣接して5センチメートル以上の距離にわたって実質的に平行である領域において、縁部43は5センチメートル以上の距離にわたって実質的に一定の間隔を保持していてもよい。
【0018】
カバー層42は縁部43の間でストランド41の長さに沿って連続していてもよいが、他の様々な構成を示していてもよい。例えば、カバー層42に、下地要素31またはストランド41の領域を露出する様々な開口部または打ち抜き孔を画定してもよい。別の例として、カバー層42はストランド41の長さに沿って隙間または他の不連続部分を有していてもよい。すなわち、カバー層42の複数の区分がストランド41上に延びて、その区分間に隙間が存在してもよい。
【0019】
下地要素31の外部表面の領域が縁部43を越えて露出される。上述したように、アッパー30の外部表面の大部分は、下地要素31および伸張要素40の組み合わせによって形成されている。伸張要素40の構成によっては、カバー層42はポリマーシートから形成されていてもよいのに対して、下地要素31は織物材料から形成されていてもよい。ポリマーシートは一般に織物より通気性、透湿性、透水性が劣ることから、伸張要素40を含むアッパー30の領域は下地要素31が露出される領域より透過性が劣る場合がある。しかし、下地要素31の外部表面の領域が縁部43を越えて露出されるアッパー30の領域は、透過性を維持したまま、履物10を着用時に空気、湿った空気、熱せられた空気または汗がアッパー30から出ていく程度を高める。
【0020】
伸張要素40を含むアッパー30の第2部分を図7〜図9Bに示す。かかるアッパー30の領域では、第1の方向に(例えば、前方領域11と踵領域13との間を長手方向に)延びるストランド41およびカバー層42が、第2の方向に(例えば、靴紐開口部34から靴底構造20まで)延びるストランド41およびカバー層42と交差する。伸張要素40の部分が互いに交差する領域では、アッパー30は、少なくとも下地要素31から形成される第1層と、カバー層42の1つから形成される第2層と、カバー層42の別の1つから形成される第3層とを含む層構成を有する。さらに、互いに交差する少なくとも2つのストランド41はこの層構成内に位置される。
【0021】
ストランド41は任意の一般的な一次元材料から形成されてもよい。本発明に対して用いるように、「一次元材料」という用語またはその変形は、幅および厚みより実質的に大きい長さを示す一般に細長い材料を包含することを意図している。したがって、ストランド41に好適な材料として、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル酸、絹、綿、炭素、ガラス、アラミド(例えば、パラ系アラミド繊維およびメタ系アラミド繊維)、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー、銅、アルミニウムおよび鋼から形成される種々のフィラメント、繊維、ヤーン、糸、ケーブルまたはロープが挙げられる。フィラメントは長さが不定で、ストランド41として個々に用いてもよい。一方、繊維は比較的長さが短く、一般に紡績または加撚工程を経て、好適な長さのストランドを生成する。ストランド41に用いた個々のフィラメントは、単一の材料(すなわち、単成分フィラメント)から形成されてもよく、または複数の材料(すなわち、二成分フィラメント)から形成されてもよい。同様に、異なるフィラメントが異なる材料から形成されていてもよい。一例として、ストランド41として用いるヤーンは、一般的な材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよく、2種以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよく、または2種以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよい。また、同様の概念が、糸、ケーブルまたはロープにも当てはまる。ストランド41の厚みは、例えば、0.03ミリメートル〜5ミリメートルを超える範囲で著しく変化してもよい。一次元材料は、断面の幅と厚みとが実質的に等しい(例えば、円形または正方形の断面)ことが多いが、厚みより幅の方が大きいもの(例えば、長方形、楕円形またはその他の細長い断面)もある。幅が大きいにもかかわらず、材料の長さが材料の幅および厚みよりも実質的に大きい場合、材料が一次元的であると考えられる。
【0022】
カバー層42ならびに下地要素31の部分は、任意の一般的に二次元材料から形成されてもよい。本発明に対して用いるように、「二次元材料」という用語またはその変形は、厚みより実質的に大きい長さおよび幅を表す一般に平坦な材料を包含することを意図している。したがって、カバー層42に好適な材料として、例えば、様々な織物、ポリマーシート、または織物とポリマーシートとの組み合わせが挙げられる。織物は一般に、例えば、(a)接着、融合、連結によって繊維の織物から直接生成されていて不織布およびフェルトを構成するか、または(b)ヤーンの機械加工によって形成して不織布もしくはニット生地を生成するか、どちらかの方法によって生成された繊維、フィラメントもしくはヤーンから製造される。織物は、一方向に伸展または複数方向に伸展するように配置された繊維を組み込んでもよく、例えば、通気性のある耐水バリヤを形成する被膜を含んでいてもよい。ポリマーシートは、押出、圧延、またはポリマー材料から形成されて、ほぼ平坦な態様を示す。また、二次元材料は積層材料、または織物、ポリマーシートまたは織物とポリマーシートとを組み合わせた2つ以上の層を含む層状材料を包含していてもよい。織物およびポリマーシートに加えて、他の二次元材料をカバー層42に用いてもよい。二次元材料は、平滑な表面またはほぼテクスチャのない表面を有していてもよいが、中には、テクスチャまたは、例えば、ディンプリング、凸部、ひだもしくは各種パターンなどの他の表面特性を示すものもある。表面特性があるにもかかわらず、二次元材料はほぼ平坦なままであり、厚みより実質的に大きい長さおよび幅を示す。構成によっては、さらに良好な透過性を付与するために、カバー層42にメッシュ材または有孔材を用いてもよい。
【0023】
カバー層42は様々な材料から形成されてもよいが、カバー層42に熱可塑性ポリマー材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン)を組み込むと、カバー層42と下地要素31との間を接着しやすくなり、さらにカバー層42と下地要素31との間にストランド41を固定しやすくなる。例としては、カバー層42は、(a)熱可塑性ポリマーシート、(b)熱可塑性ポリマー材料から形成されたフィラメントもしくは繊維を含む織物、または(c)織物と熱可塑性ポリマーシートとの組み合わせであってもよい。これらの構成のうちいずれも、カバー層42の熱可塑性ポリマー材料を加熱することによって、ストランド41および下地要素31の両方で接着剤を形成してもよい。他の構成では、下地要素31は熱可塑性ポリマー材料を組み込んでいてもよい。さらなる状況として、履物10の審美性を向上させるために、カバー層42はストランド41を視認できる少なくとも部分的に透明なポリマー材料から形成されてもよい。
【0024】
上記の説明に基づくと、伸張要素40は一般にストランド41およびカバー層42を含んでおり、ストランド41は下地要素31の外部表面とカバー層42との間に位置している。ストランド41は下地要素31およびカバー層42のいずれか一方を貫通してもよいが、ストランド41は一般に下地要素31およびカバー層42の表面に隣接し、これらの表面と12ミリメートルを超える長さ、さらに5センチメートルを超える長さにわたって平行である。様々な一次元材料がストランド41に使用されてもよいが、1つのまたはそれ以上の二次元材料を下地要素31およびカバー層42に用いてもよい。さらに、カバー層42が例えば熱可塑性ポリマー材料を含む場合、熱可塑性ポリマー材料を加熱することによって、カバー層42とアッパー30の他の要素との間を接着させてもよい。
【0025】
構造部品
従来のアッパーは複数の材料層から形成され、アッパーの様々な領域にそれぞれ異なる特性を与えていた。使用中にアッパーが著しい引張力を受け、その引張力に抵抗するために1つまたはそれ以上の材料層がアッパーの領域に配置される。すなわち、履物の使用中に発生する引張力に抵抗するために、アッパーの特定の部分に個々の層が組み込まれる。一例として、長手方向に伸展耐性を与えるために、織布地をアッパーに組み込んでもよい。織布地は、互いに直角で織り合せるヤーンから形成される。長手方向へ伸展しにくくするために織布地をアッパーに組み込むと、長手方向に配向されたヤーンだけが長手方向の伸展耐性に貢献し、一般に長手方向に直交するヤーンは長手方向の伸展耐性に貢献しない。したがって、織布地におけるヤーンの約2分の1は、長手方向の伸展耐性には不要である。この例の延長として、アッパーの異なる領域に要する伸展耐性の程度は変化してもよい。アッパーの領域によっては比較的高度の伸展耐性を要するものもあるが、他のアッパーの領域は比較的低度の伸展耐性を要する場合がある。織布地は高度および低度の両方の伸展耐性を要する領域で利用できるため、低度の伸展耐性を要する領域には織布地におけるヤーンが不要な場合もある。この例では、こうした不要なヤーンは、履物に有用な特性を付加することなく、履物の総質量を増やす。同様の概念が、例えば、耐摩耗性、柔軟性、空気透過性、クッション性および吸湿性のうち1つ以上に対して利用される革およびポリマーシートなどの他の材料に当てはまる。
【0026】
上記の説明の概要として、複数の材料層から形成された従来のアッパーに用いられる材料が、アッパーの所望の特性にあまり貢献しない不要な部分を有していてもよい。伸展耐性に関して、例えば、層は必要または所望するよりも(a)より多数の伸展耐性の方向または(b)より高度な伸展耐性を与える材料を有しているかもしれない。したがって、このような材料の不要な部分は、あまり有用な特性を与えることなく、履物の総質量および費用を増やすものである。
【0027】
上述した従来の層構造とは対照的に、アッパー30は不要な材料の存在を最小限に抑えるように構成されている。下地要素31は足を覆うものであるが、比較的質量が少なくてもよい。伸張要素40は種々のストランド41を含んでいるが、特定の方向および位置に伸展耐性を与えるように配置され、ストランド41の数は所望する伸展耐性の程度を与えるように選択される。したがって、ストランド41の配向、位置および量は、特定の目的に合った構造部品を提供するように選択される。
【0028】
以下の説明における参考として、4つのストランド群51〜54を図1および図2に明示する。ストランド群51は、足首開口部32に最も近い靴紐開口部34から下方へ延びる種々のストランド41を含む。同様に、ストランド群52および53は、他の靴紐開口部34から下方へ延びる種々のストランド41を含む。さらに、ストランド群54は、前方領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41を含む。
【0029】
靴紐開口部34および44と靴底構造20との間に延びる種々のストランド41は内側から外側の方向に伸展しにくいが、これは靴紐33の張力によるものであってもよい。より具体的には、ストランド群51の種々のストランド41は、足首開口部32に最も近い靴紐開口部44を貫通して延びる靴紐33の部分から協働的に伸展に抵抗する。また、ストランド群51が靴紐開口部44から離れて延びる場合、外方へ放射状に延び、それによって靴紐33からの力をアッパー30の領域全体に分散させる。同様の概念がストランド群52および53にも当てはまる。前方領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41は長手方向に伸展しにくい。より具体的には、ストランド群54の種々のストランド41は、長手方向に協働的に伸展に抵抗し、ストランド41の数は領域11〜13によって特定の程度の伸展耐性を提供するように選択される。さらに、ストランド群54のストランド41はまた、ストランド群51〜53の各ストランド41と交差して、領域11〜13にかけて比較的連続した伸展耐性を与える。
【0030】
履物10の特定の構成および履物10の意図された用途に応じて、下地要素31およびカバー層42は、例えば、非伸展性材料、一方向に伸展する材料、または二方向に伸展する材料であってもよい。一般に、二方向に伸展する材料から下地要素31およびカバー層42を形成すると、足の形状に適合する一段と優れた能力をアッパー30に与え、それによって履物10の快適性を向上させる。下地要素31およびカバー層42が二方向に伸展する構成では、ストランド41と下地要素31およびカバー層42との組み合わせが特定の位置におけるアッパー30の伸展特性を効果的に変化させる。アッパー30に関しては、二方向に伸展するストランド41と下地要素31およびカバー層42との組み合わせによって、異なる伸展特性を有する帯域をアッパー30内に形成する。このような帯域としては、(a)ストランド41が存在せず、アッパー30が二方向に伸展する第1帯域、(b)複数のストランド41が存在して互いに交差せず、アッパー30がストランド41に直交する(すなわち、垂直の)方向に一方向の伸展性を示す第2帯域、および(c)複数のストランド41が存在して互いに交差し、アッパー30が実質的に非伸展性または限定的な伸展性を示す第3帯域が挙げられる。したがって、アッパー30の特定の領域の全体的な伸展特性は、ストランド41の存在によって制御され、また、複数のストランド41が互いに交差するかどうかによっても制御される。
【0031】
上記の説明に基づけば、ストランド41を用いて、アッパー30内に構造部品を形成してもよい。一般に、ストランド41は伸展に抵抗してアッパー30の全体的な伸展を制限する。また、ストランド41を用いて、アッパー30の異なる領域に力(例えば、靴紐33からの力)を分散してもよい。したがって、ストランド41の配向、位置および量は特定の目的に合った構造部品を提供するように選択される。さらに、互いに対するストランド41の配向およびストランド41が互いに交差するか否かを利用して、アッパー30の異なる部分における伸展方向を制御してもよい。
【0032】
製造工程
種々の方法を利用して伸張要素40を含むアッパー30を製造してもよい。一例として、縫取り(刺繍)プロセスを利用して下地要素31に対してストランド41を配置してもよい。一旦ストランド41を配置すると、カバー層42は下地要素31およびストランド41に接着されてもよく、それによって伸張要素40内にストランド41を固定する。同様の方法が、米国特許商標庁に2006年5月25日に出願された「Article Of Footwear Having An Upper With Thread Structural Elements(スレッド構造要素を備えたアッパーを有する履物物品)」と題した米国特許出願第11/442,679号に詳細に記載されており、この先行出願の全体を本明細書に引用して援用する。縫取りプロセスに代わる方法として、下地要素31に対してストランド41を配置するために、コンピューター縫合といった他の縫合方法を利用してもよい。さらに、下地要素31を囲むフレーム上にあるペグにストランド41を巻きつけることを含む工程を利用して、ストランド41を配置してもよい。
【0033】
次に、伸張要素40を形成し、下地要素31に伸張要素40を固定するために利用される別の方法について説明する。図10Aを参照して、下地要素31の一部(例えば、外側側部14を形成する部分)を形成するために用いてもよい材料の略矩形シートを、(a)ストランド41を形成する一次元材料のスプール60および(b)カバー層42を形成する二次元材料のロール70に関連して示す。図10Bに示すように、スプール60からのストランド41の部分およびロール70からのカバー層42の部分を下地要素31に対して敷設し、(例えば、熱で)下地要素31で接着して、靴紐開口部34のうちの1つから靴底構造20へ延びる伸張要素40の一部を形成し始める。より具体的には、ストランド41の部分を下地要素31に対して敷設し、カバー層42の部分をストランド41上に敷設し、下地要素31に接着する。製造方法によっては、ストランド41およびカバー層42を下地要素31に対して同時に敷設するように、また、カバー層42を下地要素31に接着するように継ぎ目テープ機械または継ぎ目シーリングテープ機械を変更してもよい。継ぎ目テープ機械を利用する場合、従来の継ぎ目テープ材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂)をカバー層42として用いてもよい。次いで、図10Cおよび図10Dに示すように、さらにスプール60からのストランド41の部分およびロール70からのカバー層42の部分を下地要素31に対して敷設し、下地要素31で接着して、靴紐開口部34のうちの1つから靴底構造20へ延びる伸張要素40の他の部分を形成する。ストランド41およびストランド41上に延びるカバー層42を同時に置くことの利点は、カバー層42と下地要素31との間を接着することによってストランド41の位置が固定されるということである。
【0034】
その後、同様の方法を用いて、図10Eおよび図10Fに示すように、前方領域11と踵領域13との間に延びる伸張要素40の各部分を形成する。より具体的には、ストランド41の部分を下地要素31に対して敷設し、カバー層42の部分をストランド41上に敷設し、下地要素31に接着する。一旦伸張要素40を下地要素31に対して敷設し、下地要素31で接着すると、図10Gに示すように、下地要素31および伸張要素40の組み合わせをアッパー30の外側側部14を形成するのに適した形状に(すなわち、はさみ、ダイカットまたはレーザーカッティングで)切断してもよく、また、様々な靴紐開口部34を形成してもよい。そして、このような要素を実質的に同様の要素で接合してアッパー30の大部分を形成してもよく、また、靴底構造20をアッパー30に接着して履物10の製造を実質的に完了してもよい。製造工程によっては、下地要素31を形成する材料の一つの部分から外側側部14および内側側部15の両方を形成してもよい。
【0035】
上述した図10A〜図10Gに示す方法では、ストランド41およびカバー層42を形成する材料の様々な部分の端は、アッパー30の外側側部14を形成するのに適した形状の境界線を越えて延び、切断される。かかる構成では、ストランド41およびカバー層42の端は下地要素31の縁部まで延びる。本方法の利点として、ストランド41は下地要素31の幅および高さの実質的に全体を横切って延びて、伸展しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。
【0036】
さらなる構成
図1および図2のストランド41の配向、位置および量は、履物10に好適な構成の一例を提供することを意図している。履物10の他の構成では、伸張要素40および履物10の種々の態様が大幅に変化してもよい。図11Aを参照して、靴紐開口部34から靴底構造20まで延びるストランド41およびカバー層42は、前方領域11から踵領域13まで延びるストランド41およびカバー層42と交差する別の構成を示す。同様の構成では、このような領域は他のストランド41およびカバー層42と交差して、アッパー30に織物の外観を与える。さらなる構成では、ストランド41およびカバー層42は、図11Bに示すように靴紐開口部34から靴底構造20までにだけ延びてもよく、または図11Cに示すように前方領域11から踵領域13までにだけ延びてもよい。ストランド41およびカバー層42は、アッパー30の長手方向の長さまたは高さを通して全体的に延びてもよいが、このような距離の一部にだけ延びてもよい。例えば、図11Dは、ストランド41およびカバー層42が長手方向の長さの一部にわたって構成を示す。
【0037】
ストランド41をカバー層42の縁部43に対して中央に置いてもよいが、図12Aは、ストランド41をカバー層42の中央からずらして置いた構成を示す。さらなる構成では、図12Bに示すように、複数のストランド41が一つのカバー層42と対応してもよい。下地要素31は、単層の材料から形成されているように図3に示している。しかし、図12Cを参照すると、下地要素31は3層である。例として、内側層および外側層は織物でもよいが、中央の層は快適性を増すポリマー発泡材料であってもよい。前図に示した構成の多くにおいては、カバー層42はストランド41の領域において外方へ突出するが、図12Dに示すように、ストランド41はカバー層42内に埋設されてもよい。同様に、図12Eに示すように、ストランド41は下地要素31内にも部分的に(または完全に)埋設されてもよい。このような構成ではそれぞれ、ストランド41は下地要素31の外部表面に隣接しており、下地要素31の外部表面と実質的に平行である。
【0038】
本発明は、様々な構成を参照して、上記および添付の図面において開示した。しかしこの開示によって示される目的は、本発明に関連する様々な特徴および概念の例を提供することであり、本発明の範囲を制限するためではない。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上述した構成に対して多くの変更や改変を行なえること認識するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、
前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有し、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
前記下地要素の前記外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの距離にわたって前記下地要素の前記外部表面と実質的に平行であるストランドと、
少なくとも5センチメートルの距離にわたって前記ストランドに沿って延びるカバー層であって、前記ストランドが当該カバー層と前記下地要素との間に配置され、当該カバー層が前記ストランドの両側に一組の縁部を有し、前記ストランドが少なくとも5センチメートルの距離にわたって当該カバー層の前記縁部間の実質的に中央に置かれ、前記下地要素の前記外部表面の領域が当該カバー層の前記縁部を越えて露出されているカバー層と
を含むことを特徴とする履物物品。
【請求項2】
前記カバー層の前記縁部間の距離が、実質的に一定であることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項3】
前記カバー層が、前記下地要素に接着した熱可塑性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項4】
前記ストランドおよび少なくとも1つのさらなるストランドが、前記カバー層と前記下地要素との間に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項5】
前記ストランドおよび前記カバー層が、前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合されている領域との間に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項6】
別のストランドおよび別のカバー層が、前記アッパーの踵領域と前方領域との間に延びていることを特徴とする、請求項5に記載の履物物品。
【請求項7】
前記カバー層が、少なくとも部分的に透明なポリマー材料から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項8】
前記下地要素が層構造を有し、前記層構造の少なくとも第1層が前記内部表面を形成し、前記層構造の少なくとも第2層が前記外部表面を形成し、前記カバー層が前記第2層に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項9】
別のストランドおよび別のカバー層が、前記ストランドおよび前記カバー層と交差し、前記ストランドおよび前記カバー層が、(a)前記下地要素と(b)前記別のストランドおよび前記別のカバー層のそれぞれとの間に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項10】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、
前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有し、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
前記外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの第1距離にわたって前記外部表面と実質的に平行である第1ストランドと、
少なくとも5センチメートルの前記第1距離にわたって前記第1ストランドに沿って延びる第1カバー層であって、前記第1ストランドが当該第1カバー層と前記下地要素の前記外部表面との間に配置された第1カバー層と、
前記外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの第2距離にわたって前記外部表面と実質的に平行である第2ストランドであって、前記第1ストランドが前記下地要素の前記外部表面と当該第2ストランドとの間に配置されるように前記第1ストランドと交差する第2ストランドと、
少なくとも5センチメートルの前記第2距離にわたって前記第2ストランドに沿って延びる第2カバー層であって、前記第2ストランドが当該第2カバー層と前記下地要素の前記外部表面との間に配置された第2カバー層と
を含むことを特徴とする履物物品。
【請求項11】
前記第1カバー層が、前記第1ストランドの両側に一組の縁部を有し、前記外部表面の領域が前記第1カバー層の縁部を越えて露出されていることを特徴とする、請求項10に記載の履物物品。
【請求項12】
前記第1ストランドが、少なくとも5センチメートルの距離にわたって前記カバー層の前記縁部間の実質的に中央に置かれていることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項13】
前記カバー層の前記縁部間の距離が、実質的に一定であることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項14】
前記第1カバー層が、前記下地要素に接着された熱可塑性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする、請求項10に記載の履物物品。
【請求項15】
前記第1ストランドおよび前記第1カバー層が、前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合された領域との間に延びていることを特徴とする、請求項10に記載の履物物品。
【請求項16】
前記第2ストランドおよび前記第2カバー層が、前記アッパーの踵領域と前方領域との間に延びていることを特徴とする、請求項15に記載の履物物品。
【請求項17】
履物物品を製造する方法であって、
ストランドおよびカバー層を前記履物物品のアッパーの外部表面に対して同時に敷設し、前記ストランドが前記カバー層と前記外部表面との間に配置され、前記ストランドが少なくとも5センチメートルの距離にわたって前記外部表面と実質的に平行である工程と、
前記カバー層を前記外部表面に接着する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
熱可塑性ポリマー材料を含むように前記カバー層を選択する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接着する工程が、前記カバー層を前記外部表面に接合するために前記熱可塑性ポリマー材料を加熱する工程を含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記同時に敷設する工程が、前記ストランドを前記カバー層の縁部間の中央に置く工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記同時に敷設する工程が、前記カバー層の縁部を越えて前記外部表面の領域を露出したままにする工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記同時に敷設する工程が、(a)前記アッパーの靴紐領域と靴底構造が前記アッパーに接合する領域との間、および(b)前記アッパーの踵領域と前方領域との間のいずれか一方に延びるように、前記ストランドおよび前記カバー層を配向する工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項1】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、
前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有し、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
前記下地要素の前記外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの距離にわたって前記下地要素の前記外部表面と実質的に平行であるストランドと、
少なくとも5センチメートルの距離にわたって前記ストランドに沿って延びるカバー層であって、前記ストランドが当該カバー層と前記下地要素との間に配置され、当該カバー層が前記ストランドの両側に一組の縁部を有し、前記ストランドが少なくとも5センチメートルの距離にわたって当該カバー層の前記縁部間の実質的に中央に置かれ、前記下地要素の前記外部表面の領域が当該カバー層の前記縁部を越えて露出されているカバー層と
を含むことを特徴とする履物物品。
【請求項2】
前記カバー層の前記縁部間の距離が、実質的に一定であることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項3】
前記カバー層が、前記下地要素に接着した熱可塑性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項4】
前記ストランドおよび少なくとも1つのさらなるストランドが、前記カバー層と前記下地要素との間に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項5】
前記ストランドおよび前記カバー層が、前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合されている領域との間に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項6】
別のストランドおよび別のカバー層が、前記アッパーの踵領域と前方領域との間に延びていることを特徴とする、請求項5に記載の履物物品。
【請求項7】
前記カバー層が、少なくとも部分的に透明なポリマー材料から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項8】
前記下地要素が層構造を有し、前記層構造の少なくとも第1層が前記内部表面を形成し、前記層構造の少なくとも第2層が前記外部表面を形成し、前記カバー層が前記第2層に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項9】
別のストランドおよび別のカバー層が、前記ストランドおよび前記カバー層と交差し、前記ストランドおよび前記カバー層が、(a)前記下地要素と(b)前記別のストランドおよび前記別のカバー層のそれぞれとの間に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項10】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、
前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有し、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
前記外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの第1距離にわたって前記外部表面と実質的に平行である第1ストランドと、
少なくとも5センチメートルの前記第1距離にわたって前記第1ストランドに沿って延びる第1カバー層であって、前記第1ストランドが当該第1カバー層と前記下地要素の前記外部表面との間に配置された第1カバー層と、
前記外部表面に隣接して配置され、少なくとも5センチメートルの第2距離にわたって前記外部表面と実質的に平行である第2ストランドであって、前記第1ストランドが前記下地要素の前記外部表面と当該第2ストランドとの間に配置されるように前記第1ストランドと交差する第2ストランドと、
少なくとも5センチメートルの前記第2距離にわたって前記第2ストランドに沿って延びる第2カバー層であって、前記第2ストランドが当該第2カバー層と前記下地要素の前記外部表面との間に配置された第2カバー層と
を含むことを特徴とする履物物品。
【請求項11】
前記第1カバー層が、前記第1ストランドの両側に一組の縁部を有し、前記外部表面の領域が前記第1カバー層の縁部を越えて露出されていることを特徴とする、請求項10に記載の履物物品。
【請求項12】
前記第1ストランドが、少なくとも5センチメートルの距離にわたって前記カバー層の前記縁部間の実質的に中央に置かれていることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項13】
前記カバー層の前記縁部間の距離が、実質的に一定であることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項14】
前記第1カバー層が、前記下地要素に接着された熱可塑性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする、請求項10に記載の履物物品。
【請求項15】
前記第1ストランドおよび前記第1カバー層が、前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合された領域との間に延びていることを特徴とする、請求項10に記載の履物物品。
【請求項16】
前記第2ストランドおよび前記第2カバー層が、前記アッパーの踵領域と前方領域との間に延びていることを特徴とする、請求項15に記載の履物物品。
【請求項17】
履物物品を製造する方法であって、
ストランドおよびカバー層を前記履物物品のアッパーの外部表面に対して同時に敷設し、前記ストランドが前記カバー層と前記外部表面との間に配置され、前記ストランドが少なくとも5センチメートルの距離にわたって前記外部表面と実質的に平行である工程と、
前記カバー層を前記外部表面に接着する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
熱可塑性ポリマー材料を含むように前記カバー層を選択する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接着する工程が、前記カバー層を前記外部表面に接合するために前記熱可塑性ポリマー材料を加熱する工程を含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記同時に敷設する工程が、前記ストランドを前記カバー層の縁部間の中央に置く工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記同時に敷設する工程が、前記カバー層の縁部を越えて前記外部表面の領域を露出したままにする工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記同時に敷設する工程が、(a)前記アッパーの靴紐領域と靴底構造が前記アッパーに接合する領域との間、および(b)前記アッパーの踵領域と前方領域との間のいずれか一方に延びるように、前記ストランドおよび前記カバー層を配向する工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【公表番号】特表2013−502300(P2013−502300A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526859(P2012−526859)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046133
【国際公開番号】WO2011/028443
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046133
【国際公開番号】WO2011/028443
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】
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