説明

カバー材

【課題】耐光性(耐候性)が良好で、かつ、反発弾性および熱成形後の脱型性に優れたポリウレタンを含むカバー材を提供すること。
【解決手段】1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むイソシアネート成分と、活性水素化合物成分とを反応させて得られるポリウレタンを、カバー材に含ませる。このようなカバー材は、耐光性(耐候性)が良好であるとともに、反発弾性、および、熱圧縮あるいは射出成形などの熱成形後の脱型性に優れるため、生産性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー材に関し、詳しくは、ポリウレタンを含むカバー材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフボールのコアのカバー材や、車両のギアノブカバー、ドアシールカバー、ケーブルカバー、キーボードカバー、オーディオカバー、スポーツ用品のグリップカバーなどには、ポリウレタンが広く用いられている。
【0003】
例えば、ゴルフボールのコアのカバー材にポリウレタンを用いると、ゴルフボールの耐擦過傷性、スピン性、打球感およびコントロール性を向上させることができる。
【0004】
このようなゴルフボールのコアのカバー材としては、ゴルフボールのコアにカバー材をより簡易に被覆させ、ゴルフボールの生産性を向上するために、とりわけ、熱可塑性ポリウレタンをカバー材に含有させることが、提案されている。
【0005】
また、カバー材に含有される熱可塑性ポリウレタンとしては、上記の各種特性に加え、さらに、ゴルフボールの反発性を発現させるために、例えば、芳香族系イソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いた熱可塑性ポリウレタンが提案されている。
【0006】
しかし、このようなポリウレタンは、耐光性(耐候性)が十分ではなく、黄変し易いため、ゴルフボールの表面を白色塗料などで塗装する必要がある。そのため、このようなポリウレタン樹脂を用いる場合には、ゴルフボールの生産性が低下するという不具合がある。
【0007】
そこで、このような不具合を解消するため、例えば、脂環式イソシアネートを用いた熱可塑性ポリウレタンをカバー材に用いる方法が、提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−271538号公報
【特許文献2】特開2002−360740号公報
【特許文献3】特開2005−261444号公報
【特許文献4】特開2008−207019号公報
【特許文献5】特許第4340599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜5に記載されている脂環式イソシアネート(例えば、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなど)を用いた熱可塑性ポリウレタンは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いた上記の熱可塑性ポリウレタンと比較して、耐光性(耐候性)に優れ、黄変色し難い一方、反発弾性に劣る。
【0010】
そのため、このようなポリウレタンでは、ゴルフボールのコアのカバー材としての物性を、十分に得られない場合がある。
【0011】
さらには、これら脂環式イソシアネートを用いた熱可塑性ポリウレタンは、熱成形後の弾性の発現性が低いため、例えば、熱圧縮成形あるいは射出成形後、金型からの脱型時間が長く、脱型後の成形品の寸法変化率が大きいといった不具合がある。
【0012】
本発明の目的は、耐光性(耐候性)が良好で、かつ、反発弾性および熱成形後の脱型性に優れたポリウレタンを含むカバー材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のカバー材は、イソシアネート成分および活性水素化合物成分を反応させて得られるポリウレタンを含むカバー材であって、前記イソシアネート成分が、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むことを特徴としている。
【0014】
また、本発明のカバー材では、前記1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトランス比率が、80モル%以上であることが好適である。
【0015】
また、本発明のカバー材では、前記1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトランス比率が、95モル%以下であることが好適である。
【0016】
また、本発明のカバー材では、前記ポリウレタンの流動開始温度が160〜220℃であり、23℃における貯蔵弾性率が20〜200MPaであり、反発弾性が55%以上であることが好適である。
【0017】
また、本発明のカバー材では、ゴルフボールのコア層のカバー材として用いられることが好適である。
【0018】
また、本発明のカバー材では、ギアノブカバーとして用いられることも好適である。
【0019】
また、本発明のカバー材では、ドアシールカバーとして用いられることも好適である。
【0020】
また、本発明のカバー材では、ケーブルカバーとして用いられることも好適である。
【0021】
また、本発明のカバー材では、キーボードカバーとして用いられることも好適である。
【0022】
また、本発明のカバー材では、オーディオカバーとして用いられることも好適である。
【0023】
また、本発明のカバー材では、グリップカバーとして用いられることも好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のカバー材は、耐光性(耐候性)が良好であるとともに、反発弾性、および、熱圧縮あるいは射出成形などの熱成形後の脱型性に優れるため、生産性を向上することができる。
【0025】
そのため、本発明のカバー材を、例えば、ゴルフボールのコアのカバーとして用いれば、黄変性が少なく、さらに、スピン性、コントロール性の他、耐擦過傷性や生産性に優れたゴルフボールを提供することができる。
【0026】
また、本発明のカバー材を、例えば、ギアノブカバー、ドアシールカバー、ケーブルカバー、キーボードカバー、オーディオカバー、グリップカバーなどとして用いれば、黄変性が少なく、耐擦過傷性や生産性に優れた各種カバーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のカバー材は、ポリウレタンを含んでいる。
【0028】
ポリウレタンは、イソシアネート成分と、活性水素化合物成分との反応により得ることができる。
【0029】
本発明において、イソシアネート成分は、必須成分として、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含んでいる。
【0030】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,4体とする。)、および、トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,4体とする。)の立体異性体があり、本発明では、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,4体を、例えば、70%以上、好ましくは、80モル%以上、さらに好ましくは、85モル%以上、例えば、95モル%以下、好ましくは、92モル%以下含有している。
【0031】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、例えば、特開平7−309827号公報に記載される冷熱2段法(直接法)や造塩法、あるいは、特開2004−244349号公報や特開2003−212835号公報などに記載されるホスゲンを使用しない方法などにより、製造することができる。
【0032】
また、上記1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、変性体として調製することもできる。
【0033】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの変性体としては、例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの多量体(ダイマー、トリマーなど)、ビウレット変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと水との反応により生成するビウレット変性体など)、アロファネート変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとモノオールまたは低分子量ポリオール(後述)との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと低分子量ポリオール(後述)または高分子量ポリオール(後述)との反応より生成するポリオール変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体などが挙げられる。
【0034】
また、イソシアネート成分として、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとともに、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートを併用することもできる。
【0035】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネート、ならびにこれらトリレンジイソシアネートの異性体混合物、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2´−ジフェニルメタンジイソシアネート、ならびにこれらジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物、トルイレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0036】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2´−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカメチレントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアナトメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−ω,ω´−ジイソシアネート、リジンイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、2−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ビス(4−イソシアネート−n−ブチリデン)ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0037】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス、トランス−、トランス、シス−、およびシス、シス−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびこれらの混合物、1,3−または1,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよびこれらの混合物、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2´−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、その異性体である2,6−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチルビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチルビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル3−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタンなどが挙げられる。
【0038】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートおよびこれらの混合物、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0039】
また、ポリウレタンの熱成形性を損なわない範囲で、これらポリイソシアネートのイソシアヌレート、アロファネート、ビュレット、カルボジイミド、オキサジアジントリオンおよびウレトジオン変性体などのポリイソシアネート変性体を併用することもできる。
【0040】
さらに、ポリウレタンから成形されるカバー材の物性、特に反発弾性を損なわない範囲で、モノイソシアネートを併用することもできる。モノイソシアネートとしては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート,シクロヘキシルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと併用できるポリイソシアネートとして、好ましくは、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアナート(XDI)およびこれらの混合物、前記したジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)およびこれらの混合物、トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,5−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、その異性体である2,6−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン(NBDI)、およびこれらのポリイソシアネートの変性体が挙げられる。
【0042】
なお、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,3体とする。)、および、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,3体とする。)の立体異性体があり、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと併用する場合には、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,3体を、好ましくは、50モル%以上、さらに好ましくは、70モル%以上、とりわけ好ましくは、90モル%以上含有する。
【0043】
イソシアネート成分が、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、その他のイソシアネート(例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートおよびこれらポリイソシアネートの変性体、モノイソシアネート)とを含有する場合には、イソシアネート成分におけるイソシアネート基の総モル数に対して、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基を、50モル%以上、好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上、とりわけ好ましくは、90モル%以上の割合で含有している。最も好ましくは、100モル%含有させる。
【0044】
活性水素化合物成分としては、例えば、ポリオール成分が挙げられる。
【0045】
ポリオール成分として、例えば、高分子量ポリオールが挙げられる。
【0046】
高分子量ポリオールは、水酸基を1分子中に2つ以上有し、数平均分子量が、例えば、400〜8000、好ましくは、1400〜4000、さらに好ましくは、1500〜2500であり、その水酸基価が、例えば、10〜125mgKOH/gの化合物である。なお、ポリオール成分の数平均分子量は、ポリオール成分の水酸基当量(JIS K 1557−1(2007)から求められる。)および平均官能基数から算出することができる。
【0047】
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0048】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0049】
ポリオキシアルキレンポリオールは、例えば、低分子量ポリオールまたは低分子量ポリアミンを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合物である。
【0050】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドが挙げられる。
【0051】
また、ポリオキシアルキレンポリオールは、その分子末端の1級水酸基化率が、例えば、少なくとも50モル%であり、好ましくは、70モル%である。ポリオキシアルキレンポリオールの分子末端の1級水酸基化率が上記値であれば、ポリイソシアネートとの反応完結率を向上させることができる。
【0052】
ポリオキシアルキレンポリオールを調製するための触媒としては、例えば、特許第3905638号公報記載のホスファゼニウム化合物を触媒が挙げられる。このような触媒を用いてポリオキシアルキレンポリオールを調製すれば、モノオール副生量が少ないポリオキシアルキレンポリオールを得ることができる。
【0053】
なお、低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量60〜400未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,4−シクロヘキサンジオール、アルカン−1,2−ジオール(C17〜20)、水素化ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、p−キシリレングリコール、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、レゾルシン、ヒドロキノン、2,2´−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビスフェノールF、ビスフェノールAなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどの水酸基を4つ以上有する多価アルコールなどが挙げられる。
【0054】
また、低分子量ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、例えば、トリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0055】
なお、ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、好ましくは、200〜8000、さらに好ましくは、500〜5000である。
【0056】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物や、テトラヒドロフランの重合単位に上記した2価アルコールを共重合した非晶性(常温液状)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0057】
なお、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は、好ましくは、250〜8000、さらに好ましくは、250〜3000である。
【0058】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0059】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、メチルヘキサン二酸、シトラコン酸、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、酸ハライド、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
【0060】
低分子量ポリオールと多塩基酸との重縮合物として、具体的には、ポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンプロピレンアジペート)ポリオール、ポリ(プロピレンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンヘキサンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンアジペート)ポリオールなどが挙げられる。
【0061】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、ひまし油ポリオール、あるいは、ひまし油ポリオールとポリプロピレングリコールとを反応させて得られるエステル結合を介した変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。
【0062】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリオールなどが挙げられる。また、例えば、アジピン酸にグリコールを共重合させたアジピン酸系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0063】
なお、ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは、500〜4000、さらに好ましくは、800〜3000である。
【0064】
また、高分子量ポリオールがポリエステルポリオールである場合、カルボジイミド基を有するカルボジイミド基含有化合物を、ポリエステルポリオールに添加することが好ましい。カルボジイミド基含有化合物を添加することにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂の耐加水分解性を向上させることができる。
【0065】
カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、特開平9−208649号公報に記載のカルボジイミドが挙げられる。より具体的な市販品としては、例えば、カルボジライト(日清紡績株式会社製)、スタバクゾールI(ラインケミー社製)、スタビライザー7000(RASCHIG GmbH製)などが挙げられる。
【0066】
また、カルボジイミド基含有化合物は、例えば、ポリエステルポリオール100質量部に対して、0.01〜2質量部添加することが好ましい。
【0067】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した2価アルコールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートやジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとの縮合反応により得られるポリカーボネートジオールや非晶性(常温液状)ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0068】
なお、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは、500〜3000、さらに好ましくは、800〜2000である。
【0069】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、グリコールを共重合したアジピン酸系ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカーボネートポリオール、さらには非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリカーボネートポリオールが挙げられる。さらに好ましくは、上記したポリテトラメチレンエーテルグリコール、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールであり、これらの数平均分子量は、1000〜3000が好適である。
【0070】
また、本発明において、ポリオール成分として、高分子量ポリオールとともに、上記した低分子量ポリオールを併用することもできる。
【0071】
また、本発明において、活性水素化合物成分として、さらに、鎖伸長剤および架橋剤が挙げられる。
【0072】
本発明において、鎖伸長剤としては、例えば、数平均分子量が40〜600の化合物であって、例えば、上記した2価アルコールなどの低分子量ポリオール、芳香族ジアミン、芳香脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、脂肪族ジアミンなどのジアミンなどが挙げられる。
【0073】
芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4´−ジフェニルメタンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジアミン、エタキュアー300(商品名:アルベマール社製)、TCDAM(商品名:イハラケミカル社製)などが挙げられる。
【0074】
芳香脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
【0075】
脂環族ジアミンとしては、例えば、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物、1,3−および1,4−ビス(アミノエチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0076】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0077】
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,4−シクロヘキサンジオールが挙げられる。とりわけ好ましくは、1,4−ブタンジオールである。
【0078】
また、架橋剤としては、例えば、数平均分子量が40〜800の化合物であって、例えば、上記した3価アルコールなどが挙げられる。
【0079】
通常、活性水素化合物成分として、2官能性の鎖伸長剤を用いれば、熱可塑性を示すポリウレタンとなり、3官能性の架橋剤を用いれば、熱硬化性のポリウレタンとなる。
【0080】
カバー材の生産性を向上させる観点からは、好ましくは、熱可塑性を示すポリウレタンが用いられる。そのため、活性水素化合物成分として、好ましくは、鎖伸長剤が用いられる。
【0081】
熱可塑性のポリウレタンは、例えば、上記各成分(すなわち、イソシアネート成分、活性水素化合物成分(ポリオール成分および鎖伸長剤))を用いて、例えば、ワンショット法やプレポリマー法などの公知の合成方法により、合成することができる。
【0082】
なお、上記いずれの方法においても、好ましくは、予め、高分子量ポリオールを加熱減圧脱水処理し、その水分量を低下させておく。処理後の高分子量ポリオールの水分量は、例えば、0.05質量%以下であり、好ましくは、0.03質量%以下である。さらに好ましくは、0.02質量%以下である。
【0083】
ワンショット法では、イソシアネート成分と、ポリオール成分および鎖伸長剤とを、ポリオール成分および鎖伸長剤の活性水素基(水酸基およびアミノ基)に対する、イソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.9〜1.2、好ましくは、0.95〜1.1、さらに好ましくは、0.98〜1.08となる割合で、同時に配合して撹拌混合する。
【0084】
この撹拌混合は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素)雰囲気下、反応温度40〜280℃、好ましくは、100〜260℃で、反応時間30秒〜1時間程度実施する。
【0085】
撹拌混合の方法としては、特に制限されないが、例えば、ディスパー、ディゾルバー、タービン翼のような混合槽、循環式の低圧または高圧衝突混合装置、高速撹拌ミキサー、スタティックミキサー、ニーダー、単軸または二軸回転式の押出機、ベルトコンベアー式など、公知の混合装置を用いて撹拌混合する方法が挙げられる。好ましくは、高速撹拌ミキサーでイソシアネート成分と、ポリオール成分および鎖伸長剤とを十分に混合し、次いで、スタティックミキサー、単軸式押出機または混練機で混合する方法や高速撹拌ミキサーでイソシアネート成分と、ポリオール成分および鎖伸長剤とを十分に混合した反応混合液をベルトコンベアーに連続的に流し、反応させる方法が挙げられる。このような方法により各成分を撹拌混合すれば、得られる熱可塑性ポリウレタンのブツやゲルを低減することができる。
【0086】
また、撹拌混合時には、必要により、アミン類や金属系化合物などの触媒や、溶媒を添加することができる。
【0087】
触媒としては、好ましくは、有機金属化合物が挙げられ、そのような有機金属化合物として、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロライド、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、オクテン酸銅、ビスマス系触媒などが挙げられる。
【0088】
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができ、例えば、ポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.001〜0.5質量部、好ましくは、0.01〜0.3質量部添加される。
【0089】
プレポリマー法では、まず、イソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを合成し、次いで、そのイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させる。
【0090】
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、ポリオール成分の活性水素基(水酸基)に対する、イソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、1.0を超過する割合、例えば、1.1〜20、好ましくは、1.3〜10、さらに好ましくは、1.3〜6となる割合で、同時に配合し、撹拌混合して反応させる。
【0091】
この反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素)雰囲気下、反応温度40〜150℃で、反応時間30秒〜8時間程度、ポリイソシアネートと、鎖伸長剤以外のポリオール成分とを攪拌混合する。また、反応には、必要により、上記した触媒や溶媒を添加することができる。
【0092】
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.9〜1.2、好ましくは、0.95〜1.1、さらに好ましくは、0.98〜1.08となる割合で配合し、撹拌混合する。
【0093】
この撹拌混合は、例えば、反応温度40〜280℃、好ましくは、100〜270℃、さらに好ましくは、120〜260℃で、反応時間0.5分〜10分程度実施する。また、攪拌混合時には、必要により、上記した触媒や溶媒を添加することができる。
【0094】
なお、プレポリマー法における撹拌混合の方法としては、例えば、上記した撹拌混合の方法が挙げられる。
【0095】
本発明にかかわるポリウレタンの合成方法として、反発弾性を含む機械物性の向上の観点から、プレポリマー法が好適である。
【0096】
なお、得られた熱可塑性ポリウレタンを、例えば、カッター、ペレット製造装置(ペレタイザー)などを用いて粉砕、細粒化した後、押出成形機などの成形機を用いて、所望の形状(例えば、ペレット形状など)に形成することができる。
【0097】
なお、熱可塑性ポリウレタンには、必要に応じて、他の公知の添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐光安定剤(紫外線吸収剤)、可塑剤、ブロッキング防止剤、離型剤、さらには、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤、防錆剤、充填剤などを添加することができる。これら添加剤は、各成分の合成時に添加してもよく、あるいは、各成分の混合時に添加してもよい。
【0098】
耐熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤などが挙げられる。これら耐熱安定剤の市販品としては、例えば、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1222、IRGANOX1425WL、IRGANOX1520L、IRGANOX245、IRGANOX3790、IRGANOX5057、IRGAFOS168、IRGANOX126、HP−136など(いずれも、チバ・ジャパン社製)が挙げられる。
【0099】
耐光安定剤(紫外線吸収剤)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。これら耐光安定剤の市販品としては、例えば、TINUVIN P、TINUVIN234、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328、TINUVIN329、TINUVIN571、TINUVIN144、TINUVIN765、TINUVINB75など(いずれも、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)あるいは、アデカスタブLA−52、LA−62、LA−72(アデカ社製)が挙げられる。
【0100】
これら耐熱安定剤および耐光安定剤は、熱可塑性ポリウレタンに対して、例えば、0.01〜1.2質量%、好ましくは、0.1〜1質量%となる割合で、それぞれ添加される。
【0101】
このようなポリウレタンは、その流動開始温度が、例えば、160〜220℃、好ましくは、160〜220℃、さらに好ましくは、170〜220℃、とりわけ好ましくは、180〜210℃である。
【0102】
ポリウレタンの流動開始温度が上記範囲であれば、熱圧縮成形あるいは射出成形の成形サイクル時間を短縮することができる。
【0103】
なお、ポリウレタンの流動開始温度は、例えば、高架式フローテスター(例えば、島津製作所株式会社製、型式:CFT−500)で測定することができる。
【0104】
また、ポリウレタン(厚み0.1〜1mm程度のフィルムあるいはシートに熱成形したポリウレタン)の23℃における貯蔵弾性率は、例えば、20〜200MPa、好ましくは、30〜200MPa、さらに好ましくは、60〜180MPaである。
【0105】
また、上記の貯蔵弾性率の範囲は、ショアD型のデュロメーターを用いて23℃で測定した硬度として、例えば、25D〜60Dを包含する。あるいは、ショアA型のデュロメーターを用いて23℃で測定した硬度として、87A〜95Aを包含する。
【0106】
ポリウレタンの貯蔵弾性率が上記範囲であれば、カバー材をゴルフボールのコアのカバー材として用いた場合に、その反発弾性と打球感が両立することができる。
【0107】
なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性の温度依存性(1rad/s(10Hz))を測定したときの23℃での値である。
【0108】
また、ポリウレタンの反発弾性は、例えば、55%以上、好ましくは、58%以上であり、より好ましくは60%以上である。また、ポリウレタンの反発弾性の上限値としては、約80%程度である。
【0109】
反発弾性が上記下限以上であると、カバー材をゴルフボールのコアのカバー材として用いたときに、その反発係数が向上し、スピン性およびコントロール性に優れたゴルフボールを得ることができる。
【0110】
なお、反発弾性は、JIS K−7311記載の方法に準拠して測定することができる。
【0111】
また、ポリウレタンのキセノン照射などによる耐光性試験後のポリウレタンの色差(ΔE)は、例えば、3以下、好ましくは、2.5以下、より好ましくは、2以下、とりわけ好ましくは、1以下である。
【0112】
色差が上記範囲であると、カバー材の黄変性が少なく、意匠性が良好なゴルフボール、ギアノブカバー、ドアシールカバー、ケーブルカバー、キーボードカバー、オーディオカバー、グリップカバーなどが得られる。
【0113】
また、ポリウレタンの耐摩耗性は、例えば、JIS K−7311記載のテーバー磨耗試験法で測定することができる。例えば、磨耗輪(型式:H−22輪)で測定した磨耗量(単位:mg)は、例えば、50mg以下、好ましくは、45mg以下、より好ましくは35mg以下である。
【0114】
さらには、ポリウレタンの熱成形性は、例えば、射出成形後、金型からの成形品の脱型し易さと脱型後の成形品の寸法変化率を指標とする。射出成形後、ゴム弾性の発現性が低ければ、成形品にタックがあるため、脱型が困難であり、脱型できたとしても、成形品が変形しやすく、その寸法変化率が大きくなる。さらには、熱圧縮成形後、型からはみ出た樹脂片(バリ)あるいは射出成形後に付随する射出ゲートの樹脂片を切断、研磨する工程で、成形品の表面に研磨跡が観察されることもある。
【0115】
また、本発明にかかわるポリウレタンにおいて、上記ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメント濃度は、例えば、15〜40質量%、好ましくは、18〜35質量%、とりわけ好ましくは19〜32質量%である。熱可塑性ポリウレタンのハードセグメント濃度が上記範囲にあれば、好適な貯蔵弾性率、反発弾性および引張、引き裂き強度を発現することができる。
【0116】
なお、ハードセグメント濃度は、例えば、各成分の配合処方(仕込)から次式により算出することができる。
[鎖伸長剤(g)+(鎖伸長剤(g)/鎖伸長剤の分子量(g/mol))×ポリイソシアネートの平均分子量(g/mol)]÷(高分子量ポリオール(g)+ポリイソシアネート(g)+鎖伸長剤(g)+任意成分(低分子量ポリオール(g))×100
また、ハードセグメント濃度は、例えば、熱可塑性ポリウレタンを、固体NMRや溶液NMR測定することなどにより、実測することもできる。具体的な実測方法は、例えば、Satoshi Yamasaki et.al「Effect of aggregation structure on rheological properties of thermoplastic polyurethanes」雑誌名Polymer, 48巻, 4793〜4803ページ,2007年に記載されている。
【0117】
また、本発明のカバー材は、樹脂成分として、上記ポリウレタンの他、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂成分を含有することができる。
【0118】
他の樹脂成分を含有させる方法として、例えば、特許第4021176号公報に示される方法などが挙げられる。このような方法を適用することにより、カバー材の耐擦過傷性、繰返し使用における耐久性を向上させることができる。
【0119】
他の樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、熱可塑性エラストマー、ジエン系ブロック共重合体などが挙げられる。
【0120】
アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したポリマー、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したポリマー、または、これらの混合物が挙げられる。
【0121】
α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸などが挙げられ、好ましくは、アクリル酸またはメタクリル酸が挙げられる。
【0122】
また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステルなどが挙げられ、好ましくは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0123】
また、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体や、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。反発弾性の向上の観点から、好ましくは、ナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが挙げられる。
【0124】
また、アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル株式会社から市販されているハイミラン(商品名)、さらにデュポン株式会社から市販されているサーリン(商品名)などが挙げられる。
【0125】
熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、アルケマ株式会社から市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー(商品名:ペバックス)、東レ・デュポン株式会社から市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー(商品名:ハイトレル)、三菱化学株式会社から市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマー(商品名:ラバロン)などが挙げられる。
【0126】
本発明のカバー材が、上記ポリウレタンの他の樹脂成分を含有する場合には、ポリウレタンの含有率は、ポリウレタンとその他の樹脂成分との総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上である。さらに、上記ポリウレタンのみからなることも好ましい態様である。
【0127】
また、本発明のカバー材は、上記樹脂成分のほか、カバー材の性能を損なわない範囲で、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、青色顔料などの顔料成分、例えば、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、さらに、例えば、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料、蛍光増白剤などを含有することもできる。
【0128】
顔料成分としては、例えば、白色顔料としての酸化チタンなどが挙げられる。
【0129】
酸化チタンが配合される場合には、その含有量は、樹脂成分(必須成分としてのポリウレタン、および、任意成分としてのその他の樹脂成分、以下同様。)100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、通常、8質量部以下である。
【0130】
酸化チタンの含有量が上記範囲であると、カバー材としての隠蔽性と反発弾性や物性の耐久性を確保することができる。
【0131】
また、本発明のカバー材は、上記のポリウレタンを主体とした樹脂成分を熱成形することにより製造される。例えば、特定の金型を用いた熱圧縮成形やコア層に直接、射出成形する方法を挙げることができる。
【0132】
熱成形温度は、例えば、180〜240℃、好ましくは、185〜230℃である。また、成形圧力は、例えば、0.5〜25MPa、好ましくは、1〜20MPaである。上記条件で熱成形することにより、均一な厚みを有するカバー材を得ることができる。
【0133】
また、本発明のカバー材の厚みは、例えば、1.0mm以下、好ましくは、0.9mm以下、より好ましくは、0.6mm以下、通常、0.3mm以上である。
【0134】
とりわけ、本発明のカバー材をゴルフボールに使用する場合には、その厚みは、例えば、5mm以下、好ましくは、3mm以下、より好ましくは、2mm以下、通常、0.1mm以上である。
【0135】
カバー材の厚みが上記範囲であれば、例えば、カバー材をゴルフボールのコアのカバー材として用いる場合に、コアの外径を大きくできるため、ゴルフボールの反発性能を向上させることができる。
【0136】
このようにして得られるカバー材は、例えば、ゴルフボールのコアのカバー、サッカー、野球、バスケットあるいはバレーボールのカバー材、車両のギアノブのカバー、ドアシールカバー、テールランプカバー、バネカバー、コンソールボックスカバー、電線、光ファイバーのケーブルカバー、キーボードカバー、オーディオカバー、テニスラケット等スポーツ用品のグリッブカバー、ドアミラーカバー、チューブ、ホースなどの各種カバー、さらには、厚みが数ミリから数ミクロン程度の各種シート、フィルムなどに、好適に用いることができる。
【0137】
そして、本発明のカバー材は、耐光性(耐候性)が良好であるとともに、反発弾性、および、熱圧縮あるいは射出成形などの熱成形後の脱型性に優れるため、生産性を向上することができる。
【0138】
そのため、本発明のカバー材を、例えば、ゴルフボールのコアのカバーとして用いれば、黄変性が少なく、さらに、スピン性、コントロール性の他、耐擦過傷性や生産性に優れたゴルフボールを提供することができる。
【0139】
本発明のカバー材が用いられるゴルフボールは、通常、コアとカバー材とを有する構造である。
【0140】
コアとしては、特に制限されず、例えば、複数のゴム層からなるコア、複数の樹脂の中間層からなるコア、糸ゴム層を有する糸巻きコアなど、種々の公知のコアを用いることができる。
【0141】
コアのゴム層に用いられるゴムとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴムなどが挙げられる。合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン系合成ゴム、ポリイソプレン系合成ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系合成ゴムなどが挙げられる。
【0142】
ゴムとして、反発弾性の向上を図る観点から、好ましくは、シス結合率が40質量%以上のシスリッチポリブタジエンゴムが挙げられる。
【0143】
また、上記のゴムには、必要により、例えば、有機過酸化物などの架橋開始剤、金属塩からなる共架橋剤および充填剤、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤などを配合することができる。
【0144】
ゴム層の硬度は、特に制限されないが、ショアD型のデュロメーターを用いて23℃で測定した硬度として、好ましくは、25D〜55Dである。
【0145】
また、ゴム層の直径は、特に制限されないが、例えば、36〜42mmである。
【0146】
また、コアの中間層に用いられる樹脂としては、例えば、アイオノマー樹脂、アミド、エステルなどの熱可塑性エラストマーや加硫ゴムなどが挙げられる。
【0147】
中間層の硬度は、特に制限されないが、ショアD型のデュロメーターを用いて23℃で測定した硬度として、好ましくは、40D〜60Dである。
【0148】
本発明のカバー材が用いられるゴルフボールとして、好ましくは、ツーピースのゴルフボール、スリーピースのゴルフボールが挙げられる。
【0149】
また、本発明のカバー材を、例えば、ギアノブカバー、ドアシールカバー、ケーブルカバー、キーボードカバー、オーディオカバー、グリップカバーなどとして用いれば、黄変性が少なく、耐擦過傷性や生産性に優れた各種カバーを提供することができる。
【実施例】
【0150】
次に、本発明を、製造例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。また、合成例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
【0151】
製造例1(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン1(以下、1,4−BIC1)の製造方法)
13C−NMR測定によるトランス/シス比が93/7の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製)を原料として、冷熱2段ホスゲン化法を加圧下で実施した。
【0152】
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、オルトジクロロベンゼン2500部を仕込んだ。次いで、ホスゲン1425部をホスゲン導入ラインより加え撹拌を開始した。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン400部をオルトジクロロベンゼン2500部に溶解した溶液を、フィードポンプにて60分かけてフィードし、30℃以下、常圧下で冷ホスゲン化を実施した。フィード終了後、フラスコ内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0153】
次いで、反応器内液を60分で140℃に昇温しながら0.25MPaに加圧し、さらに圧力0.25MPa、反応温度140℃で2時間熱ホスゲン化した。また、熱ホスゲン化の途中でホスゲンを480部追加した。熱ホスゲン化の過程でフラスコ内液は淡褐色澄明溶液となった。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃で窒素ガスを100L/時で通気し、脱ガスした。
【0154】
次いで、減圧下で溶媒のオルトジクロルベンゼンを留去した後、ガラス製フラスコに、充填物(住友重機械工業株式会社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学株式会社製、商品名:蒸留頭K型)および冷却器を装備する精留装置を用いて、138〜143℃、0.7〜1KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、382部の1,4−BIC1を得た。
【0155】
得られた1,4−BIC1のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス/シス比は93/7であった。
【0156】
製造例2(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン2(以下、1,4−BIC2)の製造方法)
13C−NMR測定によるトランス/シス比が41/59の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(東京化成工業社製)を原料として、1,4−BIC1と同様の方法にて388部の1,4−BIC2を得た。得られた1,4−BIC2のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス/シス比は41/59であった。
【0157】
製造例3(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン3(以下、1,4−BIC3)の製造方法)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例1の1,4−BIC1を846部、製造例2の1,4−BIC2を154部装入し、窒素雰囲気下、室温にて1時間撹拌した。得られた1,4−BIC3のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス/シス比は85/15であった。
【0158】
製造例4(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン4(以下、1,4−BIC4)の製造方法)
製造例1の1,4−BIC1を558部、製造例2の1,4−BIC2を442部用いた以外は、製造例3と同様の操作にて、1,4−BIC4を得た。得られた1,4−BIC4のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス/シス比は70/30であった。
(イソシアネート基末端プレポリマー溶液に含有されるイソシアネート基含量/単位:質量%)
イソシアネート基末端プレポリマー溶液のイソシアネート基含量は、電位差滴定装置を用いて、JIS K−1556に準拠したn−ジブチルアミン法により測定した。
【0159】
実施例1(ポリウレタン(A)の調製)
攪拌機、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例1の1,4−BIC1を283部、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTG2000SN、保土ヶ谷化学工業社製)(以下、PTG2000SNと略する)を314部、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTG1000、保土ヶ谷化学工業社製)(以下、PTG1000と略する)を314部装入し、窒素雰囲気下、80℃にてイソシアネート基含量が9.08質量%になるまで反応させ、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーA(以下、プレポリマーと略する)を得た。
【0160】
予め、80℃に調整したプレポリマー(A)1000部、耐熱安定剤(商品名:イルガノックス245、チバ・ジャパン社製)0.3部、紫外線吸収剤(商品名:チヌビン234、チバ・ジャパン社製)0.2部、耐光安定剤(商品名:アデカスタブLA−62、ADEKA製)0.2部、滑剤としてエチレンビスステアリルアミド(商品名:アルフローH−50S 日本油脂製)0.1部、触媒(商品名:スタノクト、エーピーアイコーポレーション社製)をジイソノニルアジペート(商品名:DINA、ジェイ・プラス社製)を用いて4質量%に希釈した触媒溶液0.12質量部をステンレス容器に入れ、高速ディスパーを使用して、800rpmの撹拌下、約2分間撹拌混合した。次いで、鎖伸長剤として予め、80℃に調整した1,4−ブタンジオール(三菱化学株式会社製)88.7部を添加した。さらに約4分間、全体が均一になるまで充分に撹拌した。予め、100℃に温調したSUS製バッドに前記した反応混合液を流し込み、150℃にて2時間、次いで100℃にて22時間反応させた。その後、バットからポリウレタンAを取り外し、室温23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生した。
【0161】
得られたポリウレタンAをベールカッターによりサイコロ状に切断し、粉砕機にてサイコロ状の樹脂を粉砕した。この粉砕ペレットを窒素気流下、80℃にて一昼夜乾燥した。単軸押出機(型式:SZW40−28MG、テクノベル社製)を用いてシリンダー温度 185〜225℃の範囲でストランドを押出し、それをカットすることによって、ポリウレタンAのペレットを得た。得られたペレットをさらに窒素気流下、80℃にて一昼夜乾燥した。
【0162】
射出成型機(型式:NEX−140、日精樹脂工業社製)を使用して、スクリュー回転数80rpm、バレル温度200〜220℃の設定にて、金型温度30℃、射出時間10秒、射出速度60mm/sおよび冷却時間45秒の条件で、射出成形を実施した。得られた2mm厚みのシートを室温23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生した後、物性評価を実施した。物性評価結果を表1に示す。
【0163】
実施例2(ポリウレタン(B)の調製)
製造例3の1,4−BIC3を288部、PTG2000SNを310部、PTG1000を310部用い、イソシアネート基含量が9.44質量%になるまで反応させた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマーBを得た。さらに、1,4−ブタンジオール91.9部を添加した以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、ポリウレタンBを得た。物性評価結果を表1および表2に示す。
【0164】
実施例3(ポリウレタン(C)の調製)
製造例3の1,4−BIC3を255部、PTG2000SNを336部、PTG1000を336部用い、イソシアネート基含量が7.33質量%になるまで反応させた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマーCを得た。さらに、1,4−ブタンジオール72.9部を添加した以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、ポリウレタンCを得た。物性評価結果を表1に示す。
【0165】
実施例4(ポリウレタン(D)の調製)
製造例4の1,4−BIC4を300部、PTG2000SNを301部、PTG1000を301部用い、イソシアネート基含量が10.16質量%になるまで反応させた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマーDを得た。さらに、1,4−ブタンジオール98.3部を添加した以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、ポリウレタンDを得た。物性評価結果を表1に示す。
【0166】
実施例5
実施例2のポリウレタン(B)100部と、熱可塑性ポリエステルエラストマー(ハイトレル4047 東レ・デュポン製)10部とをドライブレンドした。
【0167】
次いで、ブレンドしたペレットを二軸押出機(池貝鉄工製、PCM−30、L/D=41.5)のホッパーに投入し、その押出機のベント口より5部のイソシアネートモノマー1,4−BIC3を液添加し、回転数25rpm、バレル温度200〜220℃の範囲にて連続的に溶融混練しながら、均一なペレットを得た。
【0168】
その後、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作にて射出成形し、2mm厚みのシートを得た。物性評価結果を表2に示す。
【0169】
比較例1(ポリウレタン(E)の調製)
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(商品名:ベスタナットH12MDI、エボニック社製)を402部、PTG2000SNを246部、PTG1000を247部、さらに触媒溶液を0.12部用いて、イソシアネート基含量が10.92質量%になるまで反応させた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマーEを得た。さらに、1,4−ブタンジオール104.8部および触媒溶液を0.32部添加した以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、ポリウレタンEを得た。物性評価結果を表1に示す。
【0170】
比較例2(ポリウレタン(F)の調製)
H−NMRおよび13C−NMRの分析結果から、イソシアネート成分としてMDIを、ポリオール成分としてポリテトラメチレンエーテルグリコールを、鎖伸長剤として、1,4−ブタンジオールからなる市販のTPU(商品名:エラストラン1195ATR、BASF社製)を用いて、実施例1と同様に射出成形を実施し、ポリウレタンFを得た。物性評価結果を表1および表2に示す。
物性評価1
各実施例および各比較例で得られたポリウレタンの23℃における貯蔵弾性率、硬度、流動開始温度、反発弾性、色差および熱成形性を以下の方法で測定した。その結果を表1に示す。
<23℃における貯蔵弾性率(単位:MPa)>
射出成形したポリウレタンのシートを用いて、固体粘弾性装置(レオメトリックス・ファー・イースト社製、RSA−II)により測定した。昇温速度3℃/min、周波数1rad/s、−100〜250℃の温度範囲の条件で、23℃における貯蔵弾性率を測定した。
<硬度:ShoreA(単位:無し)>
「JIS K−7311 ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法」に準じてShoreA硬度を測定し、その結果を数値として示した。
<流動開始温度(単位:℃)>
キャピラリーレオーメータ(型式:CFT−500D、島津製作所製)を用いて、直径1mm、長さ10mmのダイ、荷重20kgf、昇温速度2.5℃/minの条件にて、予め、窒素気流下、80℃にて一昼夜乾燥したペレットの流動開始温度を測定した。
<反発弾性(単位:%)>
「JIS K−7311 ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法」に準じて反発弾性を測定し、その結果を数値として示した。
<色差(ΔE/単位:なし)>
色彩色素計(ミノルタカメラ社製、モデル:CR−200)を用いて、短冊状の各ポリウレタンシートのキセノン照射試験前後のΔL、Δa、Δb値を測定した。これらの値から、ΔE値を求めた。ΔE値は小さいほど、変色が少ないことを表す。
【0171】
なお、キセノン照射試験は、スーパーキセノンウエザーメーター(スガ試験機株式会社製、型式:SX75−AP)を用いて、ブラックパネル温度89℃、相対湿度50%、キセノンランプ放射照度100W/m(照射波長300〜400nm)の条件にて、480時間照射した。
<熱成形性>
実施例1に記載の射出成型機および射出条件にて、表面が平滑な金型にポリウレタンのシートを射出成形した。射出成形し、45秒の冷却後、自動的に金型が開放するシステムである。熱成形性を以下の評価基準で評価した。なお、寸法変化率は、射出成形後のシートを23℃、50%相対湿度のオーブンに12時間静置した後に測定した。
(評価基準)
金型が開放した際、シートが金型から容易に脱型し、かつ射出成形直後のシートの縦の長さと金型の同位置の長さの比を100倍した数値の絶対値(寸法変化率)が1.5%未満:○
金型が開放した際、シートが金型から脱型し、かつ射出成形直後のシートの縦の長さと金型の同位置の長さの比を100倍した数値の絶対値(寸法変化率)が1.5%を越えて2%未満:△
金型が開放した際、シートが金型から脱型できず、かつ射出成形直後のシートの縦の長さと金型の同位置の長さの比を100倍した数値の絶対値(寸法変化率)が2%を越える:×
【0172】
【表1】

【0173】
物性評価2
実施例2、5および比較例2で得られたポリウレタンについて、グラベロ試験およびデマチャ試験し、耐擦過傷性および耐久性について評価した。その結果を表2に示す。
<グラベロ試験>
グラベロメーター(Qパネル社製、型式:Q−G−R)を用いて、水平方向に射出する砕石がシート面に対して45°の角度で衝突するようにシート面を固定後、射出圧力0.2MPaにて7号砕石50gを約5秒間、シート面に吹き付けた。吹き付け後、シート面の傷付面積、傷の深さや傷の数など目視にて評価した。評価基準を以下に示す。
(評価基準)
◎:傷付面積が少なく、傷が浅い。
○:傷付面積はやや多いが、傷が浅い。
×:傷付面積が多く、傷が深い。
<デマチャ試験>
JIS K 6260記載の方法により、試験片を調製し、デマチャ屈曲試験機(上島製作所社製、型式:FT−1503)を用いて、23℃の雰囲気下、300回/分の往復運動を加え、10万回屈曲試験を行った。
【0174】
その後、試験片のき裂を観察することにより、同JISに記載の方法に従い、1級から6級まで等級を判定した。1級とは、肉眼で針穴のようなき裂が見られる場合であり、この際、針穴10個またはそれ以下のときを指す。一方、6級とは、き裂長さが3.0mm以上のときを指す。級数の数字が大きくなれば、き裂の程度が大きい、すなわち、耐久性が低下すると判断される。
【0175】
なお、2級とは、針穴が11個以上のとき、もしくは、針穴が10個以下のときでも針穴より大きなき裂が1個またはそれ以上あるときで、き裂長さが0.5mm未満のときを指し、4級とは、き裂長さが1.0mm以上、1.5mm未満のときを指す。
【0176】
【表2】

【0177】
グラベロ試験およびデマチャ試験結果より、各実施例では、耐擦過傷性および耐久性に優れたカバー材が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート成分および活性水素化合物成分を反応させて得られるポリウレタンを含むカバー材であって、
前記イソシアネート成分が、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むことを特徴とする、カバー材。
【請求項2】
前記1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトランス比率が、80モル%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のカバー材。
【請求項3】
前記1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトランス比率が、95モル%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のカバー材。
【請求項4】
前記ポリウレタンの流動開始温度が160〜220℃であり、23℃における貯蔵弾性率が20〜200MPaであり、反発弾性が55%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のカバー材。
【請求項5】
ゴルフボールのコア層のカバー材として用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のカバー材。
【請求項6】
ギアノブカバーとして用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のカバー材。
【請求項7】
ドアシールカバーとして用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のカバー材。
【請求項8】
ケーブルカバーとして用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のカバー材。
【請求項9】
キーボードカバーとして用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のカバー材。
【請求項10】
オーディオカバーとして用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のカバー材。
【請求項11】
グリップカバーとして用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のカバー材。

【公開番号】特開2011−140618(P2011−140618A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109609(P2010−109609)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】