説明

カバー開閉検知装置

【課題】ショート故障等がなく、カバーの開閉を確実に検知する電子ユニット筐体用のカバー開閉検知装置を提供する。
【解決手段】電子ユニットが配設されるベース部と、ベース部に立設されて電子ユニットの周囲を囲み、上端側に露出する露出部を有する金属製壁42を含む側壁と、側壁の上端にボルト6により固定され、少なくとも一部が側壁対向面に露出する電磁波シールド材を有するカバーとを備えた電子ユニット筐体に設けられ、側壁の上端側に露出し、カバーが側壁の上端に固定されたときに電磁波シールド材と電気的に接続可能な2つの電気的接点11b、12bと、これら2つの電気的接点間の導通状態を検知する導通検知手段50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置などの電子部品が収納される電子ユニット筐体のカバーの開閉を検知するカバー開閉検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置には発熱量の大きなパワーモジュールが含まれており、放熱効果を高めるために冷却装置で冷却された筐体に収納することがおこなわれている。また、電力変換装置で発生する電磁波の漏れや外部からの電磁波浸入を低減するために、筐体には電磁波シールド構造が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の筐体はカバーが閉じられた状態で車両に搭載されるが、車両搭載後に筐体のカバーの開閉状態を検知する場合がある。カバーの開閉を検知する手段として、ケース側に接点式のリミットスイッチを設け、カバーの開閉を接触・非接触により検知する手段が知られている。
【0004】
しかしながら、振動等によりリミットスイッチの接点がずれてしまうと、スイッチの接点がオン状態のままとなってしまうショート故障等が発生し、カバーの開閉を正確に検知できない場合があるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−69270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、カバーの開閉を正確に検知する電子ユニット筐体用のカバー開閉検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電子ユニットが配設されるベース部と、ベース部に立設されて電子ユニットの周囲を囲み、上端側に露出する露出部を有する金属製壁を含む側壁と、側壁の上端に締結具により固定され、少なくとも一部が側壁対向面に露出する電磁波シールド材を有するカバーとを備えた電子ユニット筐体に設けられるカバー開閉検知装置に関するものである。
【0008】
そして、本発明のカバー開閉検知装置は、側壁の上端側に露出し、カバーが側壁の上端に固定されたときに電磁波シールド材と電気的に接続可能な2つの電気的接点と、これら2つの電気的接点間の導通状態を検知する導通検知手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、筐体のケース側に、カバーが側壁の上端に固定されたときにカバーの電磁波シールド材と電気的に接続される2つの電気的接点を設けて、この2つの電気的接点間の導通状態を導通検知手段により検知するという構成にしたので、カバーが開放されたときには2つの電気的接点間の通電を遮断するため、振動等による誤検知を生じさせることなく、カバーの開閉を正確に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は本実施形態のカバー開閉検知装置10が設けられる筐体を説明するための図面である。図1は本発明に係る電子ユニット筐体の実施形態を示す分解斜視図、図2は本発明に係る電子ユニット筐体に電力変換装置などの電子ユニットを収納して半導体モジュールとした実施形態を示す縦断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の電子ユニット筐体1は、ベース3,側壁4,ガスケット7およびカバー5で構成され、図2に示すように電子ユニット筐体1内に電子ユニット2が収納されている。
【0012】
電子ユニット2の例としては、電気自動車に用いられるパワーモジュール等を挙げることができるが、パワーモジュールの場合の電子ユニット2は、パワーモジュール2a,コンデンサ2b、回路基板2cなどから構成され、ベース3上に固定される。図示は省略するが、回路基板2cはベース上に立設された支柱などに支持されている。こうしたパワーモジュールには、絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTや電界効果トランジスタMOSFETなどの電力変換用半導体素子が搭載されており、動作時の発熱量が著しく大きい。
【0013】
また、電子ユニット筐体1も、エンジンルーム等の高温環境に配設される場合が多いため、ベース3はアルミニウムなどの金属のように熱伝導性及び電磁波シールド性の良い材質で形成され、必要に応じて冷却装置により冷却される。冷却装置としては、例えば、放熱フィンを配置したものや、金属製ベース3の内部に流路を形成し、その流路内に水やエチレングリコール水溶液などの冷却液を流して冷却する熱交換装置が採用されている。以下では、ベース3およびカバー5は熱伝導性および電磁波シールド性に優れた金属で形成されているものとして説明する。
【0014】
図2に示すように、側壁4の上下両端にはフランジ4a,4bが形成され、フランジ4aの上面には、後述するシール材72(第2シール材722)が納められるシール溝41a(図1参照)が形成されている。四面を有する側壁4は、ボルト8によりフランジ4bを固定することでベース3上に取り付けられる。また、カバー5は側壁4のフランジ4aにボルト6によって固定される。
【0015】
カバー5と側壁4の上端との間には、金属板71を有する導電性のガスケット7が配置される。金属板71は、熱伝導性および電磁波シールド性に優れた材料、例えばアルミニウムや銅により構成され、側壁4の上端に設けられたボルト6の貫通孔44に対応した位置にボルト6の貫通孔711が形成されている。ガスケット7を配置しない場合は、カバー1の電磁波シールド材と電気的接点11b,12bとを直接接触させればよい。
【0016】
カバー5とガスケット7との間は弾性体を配置させてもよいが、本実施形態では組み立て作業を簡易にする観点から、金属板71と弾性体72を備える複合ガスケットを採用する。具体的に、ガスケット7は、金属板71と、カバー5がボルト6その他の締結具により締結されたときに金属板71の一方の面を電気的接点11b,12bへ押圧するとともに、カバー5と金属板71との間を封止する第1シール材721と、カバー5がボルト6により締結されたときに金属板71と側壁4上端との隙間を封止する第2シール材722を有する。第1シール材721、第2シール材722を含むシール材72は、弾性および耐水性に優れた材料、例えばニトリルゴムNBRやエチレンプロピレンゴムEPDMなどの材料で構成することができる。第1シール材721、第2シール材722を設けることにより、カバー5を締結する際に発生させる加圧力と自身の弾性により、金属板71と後述する電気的接点11b,12bとの接触、及び金属板71と金属製壁42の露出部42aとの接触を確実にすることができる。また、第1シール材721を設けることにより、上記締結時における加圧力を分散することができ、金属板71への局所的な加圧を防ぎ、金属板71と電気的接続点11b,12b及び金属製壁42の露出部42aを確実に接触させることができる。
【0017】
第1シール部材721よりも外周側に配置された第2シール材722は、外壁41の上端に形成されたシール溝41aに収容される。た、本例のように電気的接続点11b,12bよりも外側に第2シール材722を配置することにより、外部からの水の浸入を防止し、水分による接触不良を回避することができる。
【0018】
なお、図示は省略したが、フランジ4bとベース3との間にも、防水性を確保するためにシール材が設けられている。
【0019】
側壁4は、断熱性外壁41と金属製壁42と断熱性内壁43で構成された3層構造とされている。外壁41及び内壁43は樹脂等の断熱性材料(換言すれば低熱伝導性材料)で構成され、金属製壁42は金属等の高熱伝導性及び電磁波シールド性を有する材料で構成されている。ここでは、金属製壁42を樹脂製外壁41及び樹脂製内壁43でモールドすることにより一体成形し、カバー5の電磁波シールド材又はガスケット7の金属板71とのシールド性を確保している。
【0020】
外壁41及び内壁43に用いられる樹脂は高温度環境下に耐え得るものが好ましく、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やPA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等が用いられる。
【0021】
金属製壁42としては、アルミニウム,銅,真鍮,鋼板等が用いられるが、なるべく薄くて軽く、かつ加工が容易なものが良く、これらの点からアルミニウムを用いるのが好ましい。また、放熱性や電磁波シールド性の点では銅も適している。
【0022】
金属製壁42の下端部分は、L形状に折り曲げられてフランジ4bの下端面に露出しており(露出部42b)、金属製のベース3と接触している。同様に、金属製壁42の上端部分もL形状に折り曲げられて側壁4の上端、具体的にはフランジ4aの上面に露出しており(露出部42a)、金属製壁42はガスケット7の金属板71を介してカバー5(カバー5の電磁波シールド)とも接触している。ガスケット7を配置せずに、金属製壁42の露出部とカバーとを直接接触させてもよい。
【0023】
これにより、が電子ユニット2を三次元的に取り囲むことになるので、電子ユニット筐体1の内側表面は熱伝導性に優れた金属材料によって冷却装置の冷媒により冷却され、電子ユニット2の放熱が効率よく行われ、その結果、電子ユニット2の温度上昇を抑えることができる。しかも、電子ユニット筐体1内に収容された電子ユニット2は、電気的に接続可能な電磁波シールド性に優れた金属製のベース3、金属製壁42および金属製カバー5によって三次元的に取り囲まれているので、電子ユニット2から放出される電磁波が筐体外に漏れたり、外部からの電磁波が筐体内に浸入したりするのを防止することができる。
【0024】
次に、本実施形態のカバー開閉検知装置10を図面に基づいて説明する。図3は本実施形態のカバー開閉検知装置10を電子ユニット筐体1の側壁に設けた状態を示す図である。カバー開閉検知装置10は、電気的接点11bを有する第1接触部材11と、別の電気的接点12bを有する第2接触部材12と、2つの電気的接点11b,12b間の導通状態を検知する導通検知手段50を有する。導通検知手段50はハーネスを介して外部のコントローラと接続する。
【0025】
接触部材11,12の一端側となる電気的接点11b,12bは側壁4の上端側に露出し、その他端側の接続電極11a,12aは導通検知手段50と接続する。側壁4の上端側に露出する電気的接点11b,12bは、カバー1が閉じられ、側壁4の上端に固定されたときにカバー1の電磁波シールド材と電気的に接続する。接触部材11,12の他端側となる接続電極11a,12aは導通検知手段50に接続する。接触部材11,12は、導通性のある素材であればよく、たとえばアルミニウム材、銅材、ステンレス系材を用いる。本実施形態のカバー開閉検知装置10は、電気的接点11b,12bを側壁の上端側に露出させるため、たとえば図1の領域Aのような側壁の上端側に設けることが好ましい。
【0026】
接触部材11及び12は、絶縁性樹脂で構成される側壁4にインサート成形されてもよいが、本実施形態では、ケース(側壁4及びベース部3)とは別体の絶縁性樹脂製のスライドケース8に、2つの電気的接点11及び12をインサート成形し、これを側壁4に嵌めこむようにした。具体的に、側壁4の断熱性内壁43には、その高さ方向に沿って延在するガイド43aを形成する。スライドケース8にはこのガイド43aと嵌合するフランジ13を形成する。別体のスライドケース8を、カバー5が側壁4に締結される方向(図3に示す方向R)に沿って、ガイド43aに挿入する。スライドケース8のフランジ13がガイド43aにスライドし、スライドケース8は側壁4に形成された凹部に受け入れられる。カバー5の締結方向に沿ってスライドケース8を側壁4へスライド挿入するようにしたので、締結時に印加される加圧力を利用してスライドケース8を側壁4の凹部に固定することができる。
【0027】
別体のスライドケース8の正面図を図4(A)に、背面図を図4(B)に示した。また、図4(A)に示すB−B断面図を図5に示した。図4及び5に示すように、接触部材11及び12は略「コ」の字形状の金属製板材であり、絶縁性樹脂製のスライドケース8にインサート成形されている。接触部材11及び12のうち一方端の外側面は側壁4の上端側に露出し、電磁波シールド材と電気的に接触する電気的接点11b,12bを形成する。電気的接点11b,12bの接触面はスライドケース8の上端面よりもカバー5側(上端側)に凸となるように構成した。これにより、電気的接点11b,12bをカバー5又はガスケット7の金属板71と確実に接触させることができる。もちろん、電気的接点11b,12bの接触面とスライドケース8の上端面とが同じ高さで同一面を形成してもよい。
【0028】
導通検知手段50は、接続電極11a,12aが電気的に接続されているか否かを検知する。具体的に、導通検知手段50としては接続電極11a,12aの間に電流が流れているか否かを検知する電流計、又は接続電極11a,12aの間に電圧差が生じているか否かを検知する電圧計を用いることができる。カバー5が閉じられると、2つの電気的接点11b及び12bがカバー5の電磁波シールド材又はガスケット7の金属板71と接触する。これにより、接続電極11a、電気的接点11b、カバー5の電磁波シールド材又はガスケット7の金属板71、電気的接点12b、接続電極12aは導通可能な状態となり、接続電極11a及び12aは電気的に接続される。導通検知手段50は、接続電極11aと接続電極12a間の電流又は電圧を検知し、電流又は電圧が検知された場合、接続電極11a,12a間は導通状態(ショート状態)にあると検知する。導通検知手段50は、接続電極11a,12a間の「導通状態(ショート状態)の信号」を「カバーが閉じている状態の信号」として内部回路を介して外部のコントローラへ向けて送出する。これにより、電子ユニット筐体の外部で電子ユニット筐体1のカバー5の開閉状態を検知することができる。
【0029】
本実施形態では、図3及び4に示すように、カバー5の電磁波シールドと接する電気的接点11b及び12bの間に位置する領域に溝14を形成した。本実施形態では、図3に示すように、スライドケース8の上端部に側壁4の延在面に対して高さ方向に沿う略垂直面に沿って溝14を形成した。接続部材11及び12を側壁4にインサート成形する場合には、側壁4の上端部に溝14を形成すればよい。2つの電気的接点11b及び12bの間の樹脂部材に溝14を形成することにより、絶縁性である樹脂の沿面距離を所定値以上とることができるため、カバー5の開閉とは無関係に生じる恐れのある電極間リークを防ぐことができる。
【0030】
また、図5に示すように、接続電極11a,12aとスライドケース8との境界部分には、樹脂製の電極保護部19を形成することが好ましい。電極保護部19を形成することにより、接続電極11a,12a間において樹脂の沿面距離を所定値以上とることができるため、カバー5の開閉とは無関係に生じる恐れのある電極間リークを防ぐことができる。
【0031】
本実施形態では、ボルト6等の締結具によりカバー5を側壁4に締結する位置は、2つの電気的接点11b,12bの略中間位置とした。締結により印加された押圧力はボルト6近傍が最も高いことから、本実施形態では、電気的接点11b,12bへの押圧力を最大とするとともに、2つの電気的接点11b,12bへの押圧力を均等に分配するため、螺着位置を電気的接点11b,12bの略中間位置とした。これにより、締結時に与えられる押圧力を減衰させることなく、2つの電気的接点11b,12bに均等に配分することができ、電気的接点11b,12bにおける接続を確実とすることができる。
【0032】
なお、図4(A)(B)に示す凹部16,17,18は、成形時の抑え用の穴である。成形時には、これらの押さえ用の穴に成形型が配置され、図5の矢印X方向を型締め方向として射出成形される。正面及び背面、正面上方及び正面下方から成形型を押さえることにより、インサート成形される接触部材11を所定の位置に配置することができる。
【0033】
図6は、本実施形態のガスケット7の金属板71の形状の一例を説明するための図であり、ガスケット7を側壁4の上端に載せた状態で、電気的接点11b、12bの間を側壁4の延在面に対して高さ方向に沿う略垂直面で切った断面である。本実施形態のガスケット7の金属板71のうち電気的接点12b(11b)に接する領域に、電気的接点12b(11b)に向って凸状となる凸状部712を設けた。ガスケット7を配置しない場合には、金属板71と同様に、カバー5の金属部分(電磁波シールド)の電気的接点12b(11b)に接する領域に電気的接点12b(11b)に向って凸状となる凸状部712を形成してもよい。金属板7(又はカバー5)をこのような形状とすることにより、金属板7(又はカバー5)に締結方向(筐体の高さ方向)に沿う反発力(弾性)を付与することができる。金属板7(又はカバー5)は反発力(弾性)をもって電気的接点12bに押し付けられ、接触を確実とすることができる。
【0034】
次に、図7に基づいて作用を説明する。
【0035】
図7(A)は、ボルト6によりカバー5を締結する前の断面(図3のA−A線に沿う断面)を示す図、図7(B)は、ボルト6によりカバー5を締結した後の断面(図3のA−A線に沿う断面)を示す図である。
【0036】
図7(A)に示すように、ガスケット7の金属板71の一方面が電気的接点12bと対向するように配置する。金属板71のうち電気的接点12b(11b)に接する領域は電気的接点12b(11b)に向って凸状とした。また、金属板71とカバー5との間には第1シール材721を介在させ、金属板71と断熱性外壁43との間には第2シール材722を介在させた。第2シール材722は、断熱性外壁41の上端部に形成されたシール溝41aに収容する。
【0037】
ボルト6を締め、カバー5を側壁4の上端に螺着すると、図7(B)に示すように、カバー5が側壁4を含むケース側に押圧され、ガスケット7の金属板71と電気的接点12b(11b)とが接触するとともに、ガスケット7の金属板71と図7(A)には示さない金属製壁42の上端側露出部42a(図3参照)とが接触する。この状態で電気的接点11b、12bの導通状態を導通検知手段50により検知する。具体的には、電気的接点11b、12bに連なる(接続部材11、12の他端側となる)接続電極11a、12a間の電流(又は電圧)を電流計(又は電圧計)により測定する。導通検知手段50は、接続電極11a、12a間に電流が流れる状態、又は接続電極11a、12a間に電圧差が生じる状態を検知した場合、電流検知信号(又は電圧検知信号)を「カバー閉」の信号として外部のコントローラへ出力する。
【0038】
本実施形態は以上のように構成されるので、以下の効果を奏する。
【0039】
本実施形態によれば、カバー5の締結時にカバー5又はガスケット7の金属板71と接する2つの電気的接点11b、12bを側壁4に設けたことにより、振動等の影響を受けることなく、カバー5の開閉を確実に検知することができる。つまり、カバー5と別体の側壁4に電気的接点11b、12bを設けたため、カバー5を閉じた場合には2つの電気的接点11b、12bを導通状態とさせる一方で、カバー5を開けた場合には2つの電気的接点11b、12bを不通状態とさせることができ、リミットスイッチ等を用いた場合のように、振動によりスイッチ接点がON状態のままになってしまうといったショート故障の発生を防止することができる。本実施形態のカバー開閉装置10は、ショートコネクタやブラケットの設置を必要としないため、部材点数を減らして、小型化及びコストダウンを図ることができる。また、本実施形態のカバー開閉装置10では、ショートコネクタを用いる場合のように、コネクタの確実な勘合を得るために必要な高い寸法精度が要求されることもないため、製造コストを抑制することができる。
【0040】
本実施形態では、カバー5と側壁4との間にガスケット7を介在させるため、カバー5と電気的接点11b、12b又はカバー5と金属製壁の露出部42aとの接触を確実にすることができる。
【0041】
本実施形態では、ガスケット7の金属板71とカバー5との間に、弾性体を介在させるため、カバー5を側壁4に締結する際の圧力を均等に分散し、カバー5又は金属板71と電気的接点11b、12bとの接触を確実にすることができる。
【0042】
また、ガスケット7を金属板7とシール材(第1シール材、第2シール材)と一体として形成した場合は、部品点数を減らして、組み付け作業を簡易化することができる。
【0043】
さらに、金属板71の一方の面を電気的接点11b、12bへ押圧するとともに、カバー5と金属板71との間を封止する第1シール材721を設けることにより、カバー5又は金属板71と電気的接点11b、12b及び金属製壁42の露出部42aとの間の接触を確実にすることができる。
【0044】
また、カバー5がボルト6により締結されたときに金属板71と側壁4上端との隙間を封止する第2シール材722を備えることにより、電子ユニット筐体の水密性を向上させることができる。弾性変形可能な第2シール材722を側壁4の上端に形成されたシール溝41aに収容することにより、水密性をさらに向上させ、外部からの水分の浸入を防止することができる。
【0045】
金属板71のうち電気的接点11b、12bと接する領域は、この電気的接点11b、12bに向って凸状としたため、カバー5がボルト6により締結されたときに弾性を持って金属板71と電気的接点11b、12bとが接するため、金属板71と電気的接点11b、12bとの接触を確実にすることができる。
【0046】
2つの電気的接点11b、12bは絶縁性樹脂で構成される側壁4にインサート成形することにより、カバー開閉検知装置専用のスペースを設ける必要がなく、ケース側壁の寸法内で設計できるので装置の小型化を図ることができる。
【0047】
また、2つの電気的接点11b、12bを別体のスライドケース8にインサート成形し、ケースの側壁4に係止することにより、形状、大きさの異なる電子ユニット筐体1の共用部品とすることができる。このとき、側壁4に、カバー5の締結方向と同じ方向で挿入されるスライドケース8を受け入れるガイドを設けることにより、脱落を生じさせることなく、締結時に受ける圧力を利用して、電気的接点11b、12bとの接触を確実に行うことができる。側壁にインサート成形する場合と同様に、ケース側壁の寸法内で設計でき、小型化を図ることができる。
【0048】
本実施形態では、2つの電気的接点11b、12bとの間に位置する領域に、溝14を形成した。溝14を形成して電気的接点11b、12bとの間に絶縁性の樹脂の沿面距離をとることにより、カバー5の開閉とは無関係に生じる恐れのある電極間リークを防止することができる。
【0049】
本実施形態では、ボルト6によりカバー5を締結する位置を、2つの電気的接点11b、12bの略中間位置とした。これにより、締結時に与えられる押圧力を減衰させずに2つの電気的接点11b,12bに均等に配分することができ、電気的接点11b,12bにおける接続を確実とすることができる。
【0050】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0051】
例えば、上述した実施形態では電子ユニット筐体1を開口部が矩形(四角形)とされたもので本発明を説明したが、開口部が円形またはそれに類する形状の電子ユニット筐体にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のカバー開閉検知装置が装着される電子ユニット筐体の実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】電子ユニット筐体に電力変換装置などの電子ユニットを収納して半導体モジュールとした実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本実施形態に係るカバー開閉検知装置を電子ユニット筐体に装着した状態を示す斜視図である。
【図4】(A)は本実施形態に係るカバー開閉検知装置のスライドケースの正面図、(B)は同背面図である。
【図5】本実施形態に係るカバー開閉検知装置のスライドケースの図4(A)のB−B線に沿う破断図である。
【図6】ガスケット7の金属板の形状を説明するための、側壁の延在面に対して略垂直縦方向に沿う破断図である。
【図7】(A)はカバーを締結する前の図3のA−A線に沿う断面図、(B)はカバーを締結した後の図3のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…電子ユニット筐体
2…電子ユニット
3…ベース
4…側壁
4a,4b…フランジ
41…外壁
42…金属製壁
42a…上端面(露出部)
43…内壁
44…貫通孔
5…カバー
6…ボルト
7…ガスケット
71…金属板
711…貫通孔
712…凸状部
72…シール材
721…第1シール材
722…第2シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ユニットが配設されるベース部と、
前記ベース部に立設されて前記電子ユニットの周囲を囲み、上端側に露出する露出部を有する金属製壁を含む側壁と、
前記側壁の上端に締結具により固定され、少なくとも一部が側壁対向面に露出する電磁波シールド材を有するカバーと、を備えた電子ユニット筐体に設けられ、
前記側壁の上端側に露出し、前記カバーが側壁の上端に固定されたときに前記電磁波シールド材と電気的に接続可能な2つの電気的接点と、前記2つの電気的接点間の導通状態を検知する導通検知手段とを有する電子ユニット筐体用のカバー開閉検知装置。
【請求項2】
前記カバーと前記側壁の上端との間に挟持される金属板を有するガスケットをさらに備える請求項1に記載のカバー開閉検知装置。
【請求項3】
前記カバーと前記ガスケットとの間に挟持される弾性体を備える請求項2に記載のカバー開閉検知装置。
【請求項4】
前記ガスケットは、前記金属板と、前記カバーが締結具により締結されたときに前記金属板の一方の面を前記電気的接点へ押圧するとともに、前記カバーと前記金属板との間を封止する第1シール材を有する請求項2に記載のカバー開閉検知装置。
【請求項5】
前記ガスケットは、前記締結具により締結されたときに前記金属板と前記側壁上端との隙間を封止する第2シール材をさらに有する請求項2又は4に記載のカバー開閉検知装置。
【請求項6】
前記金属板のうち前記電気的接点と接する領域は、この電気的接点に向って凸状である請求項2〜5のいずれかに記載のカバー開閉検知装置。
【請求項7】
前記2つの電気的接点は絶縁性樹脂で構成される前記側壁にインサート成形された請求項1〜6のいずれかに記載のカバー開閉検知装置。
【請求項8】
前記2つの電気的接点を絶縁性樹脂で構成されるスライドケースにインサート成形し、前記スライドケースを前記側壁に係止する請求項1〜6のいずれかに記載のカバー開閉検知装置。
【請求項9】
前記側壁に、その高さ方向に沿って延在し、前記カバーの締結方向と同じ方向で挿入される前記スライドケースを受け入れるガイドを設けた請求項8記載のカバー開閉検知装置。
【請求項10】
前記電磁波シールドと電気的に接続する前記2つの電気的接点の間に位置する領域に、溝を形成したことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のカバー開閉検知装置。
【請求項11】
前記締結具により前記カバーを締結する位置を、前記2つの電気的接点の略中間位置とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のカバー開閉検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−38296(P2009−38296A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203072(P2007−203072)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】