説明

カバー開閉機構

【課題】筺体の開口をカバーで開閉する際に、単一の機構でカバーの開閉操作が容易であると共に、カバーを筐体に組み込む作業が簡単にできるカバー開閉機構を提供する。
【解決手段】カバー103には、開口102を覆うカバー本体104と、カバー本体104の裏面に垂立して設けられた弾性変形可能な長板状の支持体105とを備え、開口102に接近して支持体105が挿通される挿通孔107を形成し、挿通孔107には、挿通孔107の内面に突出して設けられた突出部109と、突出部109に対向した位置に挿通孔105の内面から後退した後退部110とを備え、支持体105には、支持体105の長手方向に延在して形成され突出部109に係合するガイド用溝108を備える。支持体105の先端を挿通孔107に押し込んで弾性的に変形させ突出部109をガイド用溝108に係合させ、カバー本体104がを開口自在に取り付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筺体の開口をカバーでもって開閉するカバー開閉機構に関し、特に、開口を介して筐体内部のコネクタに外部機器を接続する電子機器に適用して好適なカバー開閉機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリカードを用いた各種の電子機器が普及している。この種の電子機器は、メモリカードに記憶された音声、映像などのデータを再生することが可能なものである。そのため、電子機器には、筐体前面にメモリカード挿入用の開口が形成され、この開口内にコネクタが配され、メモリカードを開口に挿入して電子機器に装着可能になっている。また、電子機器には開口を開閉するカバーが設けられており、塵埃の進入防止、コネクタの破損防止などを図っている。携帯電話、携帯型情報端末装置やデジタルカメラなどはこのような電子機器の代表的な例である。
【0003】
従来のカバー開閉機構としては、例えば、下記の特許文献1(特開2002−134942号公報)に示すものが提案されている。この従来のカバー開閉機構は、メモリカードの一種であるSDメモリカードが装着される携帯電話機に適用した場合である。その具体的な構成は、携帯電話機の本体の側面に開口となるSDカードスロットが形成され、SDカードスロットに閉塞位置または開放位置の間で回動自在にされるカバーが装備され、閉塞状態で塵埃などのスロット内への侵入を防止している。
【0004】
カバーの端部にはヒンジを構成する回転軸部が一体に形成されている。一方、本体側には回転軸部を係止させるための溝及び、カム軸ユニットが配置されている。カム軸ユニットはカム体と弾性体とを有しカバーが開放状態に半ば強制的に移行されて開放状態を保持されると共に、カバーが閉塞状態に半ば強制的に移行されて閉塞状態を保持されるようになっている。
【0005】
従って、上記特許文献1に示す従来技術によれば、SDカード収容部にSDカードを収容させた状態でSDカードスロットをカバーで確実に閉塞して塵埃の進入を防止できる。また、SDカードをSDカード収容部から取り出したり収容する際には、カバーが確実に開放状態に保持されるのでSDカードスロットを介してのSDカードの収容、取り出しが容易に行うことができる。しかし、このような構成のカバー開閉構造においては、その構造が複雑であり、部品点数も多く、コスト的に不利である。また、組み立てに際してもその作業が面倒であるなどの問題点を有する。
【0006】
そこで、例えば、下記の特許文献2(特開2009−290745号公報)に示す従来技術が考えられる。この従来技術は、携帯電話機における筐体の側面に開口が設けられ、開口の奥に外部機器との接続を行うためのコネクタが配置されている。開口は外部機器との接続が行われない場合にはコネクタを保護するために、帯板状に形成された合成樹脂製のカバーで覆われている。そのため、筐体の開口部分の周囲には、開口を覆っているときに帯板状のカバー部を収容する凹部と、カバー部をその一端で回動して開口を開閉可能にするために、カバーに設けられている円柱状の軸部及び該軸部先端に配置された係止部が挿入される円形の孔と角形の孔が複合された複合孔が形成されている。
【0007】
カバーは柔軟な合成樹脂又はゴム等で構成されており、開口を覆うための帯板状のカバー部と、カバー部の一端側に設けられて、筐体の開口の周囲に形成された複合孔に挿通させることにより、カバー部をその一端側で回動させるための円柱状の軸部を備えている。この軸部の先端には該軸部が複合孔を貫通した後に筐体裏面側で複合孔周辺を係止することによってカバーが筐体から外れるのを防止する機能を有する係止部を備えている。
【0008】
係止部は、円柱状の軸部の先端に軸方向の断面が軸部の径よりも小さい厚みと軸部の径よりも大きい幅を有し、その開き角度が180度よりも小さい角度で軸部の中心から突出する軸方向の断面が「く」の字状に形成されており、かつ軸方向先端に行くほどその断面が小さくなる楔状に形成された板状の部材によって構成されている。また、この板状部材の間には溝が形成されている。
【0009】
従って、カバーを筐体の凹部に組み込む際に、係止部の先端を複合孔に差し込んで押し込むと、柔軟な材料で構成されている係止部の板状部財が複合孔に形成されている角形の孔に沿って弾性変形されてその開き角度を180度に拡げられながら挿入される。複合孔を通過後は、カバー側系止部の側面に対する筐体側の角孔からの圧迫力が解除されるので、係止部の板状部材はもとの「く」の字状に復帰する。
【0010】
その後、カバーを筐体から外す方向に力が加わった場合には、軸部と接合している側の係止面と筐体裏面の複合孔周辺部との引っ掛かりが生じる。この場合、係止部の面に加わる力は、円柱状の軸部と接合された付け根部分に対して軸方向の力として加わるため筐体側の角孔に沿って変形させることは困難となる。そのため、一旦筐体にはめ込まれたカバーは、筐体から簡単には外れなくなる。
【0011】
上記特許文献2に示すカバー開閉機構によれば、カバーを筐体に組み込む際に係止部の先端を複合孔に差し込むだけでよいため組み込み作業が簡単となる。従って、特許文献1に示す従来技術の問題点を解消できる。
【0012】
また、上記特許文献2のカバー開閉機構によれば、カバー部を筐体の凹部に納めて開口を塞ぐことができる。一方外部機器を開口内のコネクタと接続する場合には、凹部に収納されているカバー部の一端を指などで引き出した後、円柱状の軸部を複合孔に沿って、カバー側係止部の面が筐体裏面の複合孔周辺部と突き当たるまで引き上げた後、カバー部を円柱状の軸部を中心に回動させて開口を開放状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−134942号公報(段落「0012」〜「0016」、段落「0 018」)
【特許文献2】特開2009−290745号公報(段落「0024」〜段落「0031」、図1 )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記特許文献2に示す従来技術においては、組み込み作業が容易なカバー開閉機構を提供できるが、カバーの開閉が開口の前方に移動させることと開口の前方で回動させるという操作手順を踏まなければならず、操作が面倒であるという問題点がある。また、開口を開くときにカバーを筐体に対して大きく旋回して回動させなければならないため、開口部分の周辺に広い空間を必要とするなどの問題点がある。
【0015】
従って、従来においては、カバーの開閉操作が容易であることと、カバーを筐体に組み込む作業が簡単であるという技術は、例えば、上記特許文献1、2に示すように、夫々単独に存在するだけであって、単一の機構によって得られないという問題点があった。
【0016】
そこで、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、カバーの開閉操作が容易であると共に、カバーを筐体に組み込む作業が簡単であるというカバー開閉機構を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
筺体にある開口をカバーでもって開閉するカバー開閉機構であって、
前記カバーは、前記開口を覆うカバー本体と、該カバー本体の裏面に設けられた弾性変形可能な支持体とを備え、前記開口に接近した前記筐体には、前記支持体が挿通される挿通孔を形成し、前記挿通孔は、該挿通孔内面に突出して設けられた突出部と、該突出部に対向した位置に該挿通孔内面から後退した後退部とを備え、前記支持体は、該支持体の長手方向に延在して形成され、前記突出部に係合するガイド用溝を備えて構成したことを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項2に係るカバー開閉機構の発明は、請求項1に係るカバー開閉機構において、前記支持体は、前記カバー本体が上方に傾いて位置するように折り曲げられて形成された折曲部を備えて構成したことを特徴とする。
【0019】
また、本願の請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2に係るカバー開閉機構において、前記支持体は、先端部分が前記挿通孔の縦辺の長さに略等しく該挿通孔に挿通される厚さ(例えば下記実施例では、厚みa1)であり、該先端部分を除く部分が該縦辺の長さに対して小さい値の厚み(例えば下記実施例では、厚みa2)で形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本願の請求項4に係る発明においては、請求項1ないし請求項3のいずれかに係るカバー開閉機構において、前記突出部は、前記挿通孔の入口側に向った位置に傾斜面を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスタンド装置は、次に示すような優れた効果を奏する。
【0022】
すなわち、請求項1に係る発明においては、筐体の開口を覆うカバー本体の裏面に支持体が設けられ、この支持体は弾性変形可能になっている。一方、開口に接近した筐体に支持体を挿通させる挿通孔が形成され、挿通孔内面には突出部が設けられ、突出部に対向する位置に後退部が設けられている。そして、支持体には長手方向に延在して形成されて突出部に係合するガイド用溝が設けられている。
【0023】
このような構成によれば、組み込みの際には、支持体の先端を挿通孔に強く押し込めば支持体の先端部分が後退部側に弾性変形し、更に押し込むと係合用のガイド用溝に突出部が係合する。この係合状態では支持体の弾性変形が元の状態に復帰するので支持体が挿通孔から抜け出てしまうことがない。そのため、カバー本体は筐体に開口を開閉自在に取り付けられる。一方、カバーは、カバー本体を筐体の方に押し付けることにより開口を閉じ、カバー本体を前方に引っ張ることにより開口を開くことができる。そして、カバー本体は支持体によって筐体の前方に大きく飛び出して位置される。
【0024】
従って、単なる押込み動作だけでカバー本体を筐体に組み込むことができ。そして、組み込まれたカバー本体は筐体に対して前後に動かすだけで開口を開閉できる。その結果、組み込み作業が簡単であると共に、開口の開閉操作が簡単なカバー開閉機構を提供できる。
【0025】
また、請求項2に係る発明においては、請求項1に係るカバー開閉機構において、支持体には、カバー本体を上方に傾ける折曲部とが設けられている。
【0026】
このような構成によれば、カバーが開いた状態では、そのカバー本体が支持体の折曲部によって開口の前方で上方に偏倚して位置されるのでカバー本体を前方に引っ張ることにより開口を開くことができる。従って、カバー本体は支持体によって筐体の前方に大きく飛び出して位置される。
【0027】
従って、請求項1、請求項2に係る発明によれば単一の機構によって以下の複数の利点を有するカバー開閉機構を得ることができる。第一に、組み込み作業はカバー本体を単に押し込むだけの動作で達成できるので作業性が良い。第二に、開口の開閉動作はカバー本体を筐体に対して前後に動かすだけの簡単な操作で達成できる。第三に、外部機器の装着、離脱は、開口が開かれた状態ではカバー本体を開口の前方に大きく突出させると共に、開口の上方に位置させているため、その装着、離脱を容易に行うことができる。第四に、長板状の支持体は、筐体内に入り込むときに各種部品が配置されていない空間部分を利用しているので、支持板を長いもので構成してカバー本体の前後動作のストロークを大きくすることができる。
【0028】
また、請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2に係るカバー開閉機構において、支持体が先端部分の厚みが大きく先端部分を除く部分の厚みが小さい。そのため、カバー本体が開口を開くように引き出されているときには、支持体の先端部分が挿通孔に上下方向にがたつきのない状態で挿通されている。従って、カバー本体は下方に垂れ下がって開口の前方に位置することがないので、外部機器の装着、離脱を容易にする。一方、カバーによる開閉のために支持体を挿通孔内で移動させる際には、支持体の厚みの小さい部分が挿通されるので、開閉動作を円滑に行うことができる。
【0029】
また、請求項4に係る発明においては、請求項1ないし請求項3のいずれかに係るカバー開閉機構において、突出部には挿通孔入口側に向う位置に傾斜面を備えている。
【0030】
このような構成によれば、カバー開閉機構の組み込みに際して、挿通孔に支持体を押し込む際、突出部に当接した支持体が傾斜面に沿って突出部を通過するので、突出部をガイド用溝に至らしめることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例に係るカバー開閉機構を適用した電子機器を示す正面図である。
【図2】図1におけるカバー開閉機構の開口を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図2における支持体の先端部分と挿通孔部分を筐体の背面側から見て拡大して示す斜視図である。
【図4】図2における支持体の先端部分と切断した挿通孔部分を拡大して示す説明図であって、挿通孔部分を切断して示したものである。
【図5】図2におけるカバーを示す斜視図である。
【図6】図3における支持体の先端部分を下方から見た斜視図である。
【図7】本発明の一実施例におけるカバー開閉機構の組み立てについて、その最初の手順を示す説明図であり、図7(a)は支持体を挿通孔に挿入開始したときの側方から見た状態を示し、挿通孔部分を切断したものであり、図7(b)は支持体を挿通孔に挿入開始したときの後方から見た状態を示している。
【図8】本発明の一実施例におけるカバー開閉機構の組み立てについて、その途中の状態を示す説明図であり、図8(a)は支持体を挿通孔に途中まで挿入したときの側方から見た状態を示し、挿通孔部分を切断したものであり、図8(b)は支持体を挿通孔に途中まで挿入したときの後方から見た状態を示している。
【図9】本発明の一実施例におけるカバー開閉機構の組み立てについて、組み立て終了の状態を示す説明図であり、図9(a)は組み立て終了時における支持体の挿通孔への挿入状態を側方から見て示し、挿通孔部分を切断したものであり、図9(b)は組み立て終了時における支持体の挿通孔への挿入状態を後方から見た状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するためのカバー開閉機構を例示するものであって、本発明をこのカバー開閉機構に特定することを意図するものでなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のカバー開閉機構にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0033】
図1は本発明の一実施例に係るカバー開閉機構を適用した電子機器を示す正面図であり、図2は図1におけるカバー開閉機構の開口を開いた状態を示す斜視図である。
【0034】
本実施例に係るカバー開閉機構10は、図1に示すように、例えば、ナビケーション機能を有すると共に、音声信号、映像信号等の各種のデータを再生できる車載用の電子機器20の前面201に設けられている。また、前面201には、デイスプレイ202と、前面201の右辺寄りに設けられたナビケーション操作用、音声、映像信号再生用等のキーが配された操作面203と、前面201の上辺寄りに配された横長状のデイスク挿入口204と、操作面203の下方に設けられた外部機器である例えばUSBメモリが挿入される外部機器装着用開口205が設けられている。ここで、カバー開閉機構10は操作面203の上方、すなわち前面201の上方右隅に配置されている。
【0035】
このように、カバー開閉機構10、デイスプレイ201、操作面203等は前面201の筐体206において、操作の容易性、占有面積の有効利用等を考慮して配置されている。
【0036】
また、外部機器装着用開口205はその開口を開閉するカバーを有する。
【0037】
カバー開閉機構10は、図2に示すように、電子機器20の筐体206に横長状に形成された矩形の凹部101と、凹部101に形成されたメモリカード30を挿通するための横長状に形成された開口102と、開口102を開閉するカバー103とを備えている。カバー103は、凹部101に収納され開口102を覆う矩形のカバー本体104と、カバー本体104の裏面の上辺寄りに垂立して設けられた長板状の一対の支持体105とを備えている。カバー本体104の下辺にはユーザがカバー103を外す際に爪を引っ掛けるための切り欠き106が形成されている。
【0038】
支持体105は弾性材によって形成され弾性的に変形可能になっている。また、凹部101における開口102の上辺に接近した筐体206には、支持体105が挿通される横長の長方形状に形成された一対の挿通孔107が設けられている。支持体105には、後述する突出部109に係合するガイド用溝108が支持体105の長手方向に延在して形成されている。
【0039】
図3は、図2における支持体105の先端部分と挿通孔107部分を筐体206の背面側から見た斜視図であり、図4は、図2における支持体105の先端部分と切断した挿通孔107部分を示す断面図であり、図5は、図2におけるカバー103を示す斜視図であり、図6は、図3における支持体105の先端部分を下方から見た斜視図である。
【0040】
横長状の長方形に形成された挿通孔107は、その縦方向の辺の長さがA、横方向の辺の長さがBである。支持体105は、先端部分が縦方向の辺の長さAに略等しい値の厚みa1で形成され、先端部分を除く部分が縦方向の辺の長さAに対して小さい値の厚みa2で形成されている。また、支持体105は、横方向の長さBよりも若干小さい値の幅bで形成されている。換言すれば、支持体105は、先端部分が挿通孔107の縦辺の長さAに対して略等しく挿通孔107に挿通される厚みa1で形成され、先端部分を除く部分が縦辺の長さAに対して小さい値の厚みa2で形成され、先端部分が挿通孔107内を密着して挿通し、先端部分以外が挿通孔107内を厚み方向に間隙をもって挿通されるようになっている。(図3参照)。
【0041】
挿通孔107は、その下側内面の中央に突出して形成されて設けられ突出部109と、突出部109に対向する位置に挿通孔107の上側内面から後退した形状の後退部110とを備えている。突出部109は挿通孔107の入口側に向かった位置に傾斜面111が形成されている。ここで、後退部110は挿通孔107の上側内面を部分的に切り欠くことによって形成されている。また、突出部109の先端と挿通孔107の上側内面との間の距離Cは支持板105における先端部分の厚みa1より小さい値に設定されている(図4参照)。
【0042】
支持体105の中間部分には、カバー本体103が若干上方に傾き偏倚して位置するように折曲部112が形成されている。支持体105の先端部分には、その下面において先端側に一端が開放され、他端がガイド用溝108の端に接近する位置まで連なったガイド用凹部113が形成されている。そして、このガイド用凹部113には突出部109が係合するようになっている。ガイド用溝108とガイド用凹部113との間は、ガイド用凹部113に対して支持体105の面まで膨出した膨出部114となっている(図6参照)。
【0043】
また、ガイド用凹部113の反対側の面に先端からガイド用溝108に至るまで切りかかれた切り欠き面115が形成され肉薄状になっている(図5参照)。
【0044】
次に、図7〜図9の説明図に基づいて、上述した実施例のカバー開閉機構10の組み立てについて説明する。この組み立ては電子機器10を製造する際にカバー103を筐体206に取り付けることである。
【0045】
まず、図7(a)、(b)に示すように、最初の手順として支持体105の先端を挿通孔107に押し込む。先端部分はガイド用凹部113に突出部109が係合して挿通孔107内に入り込む。そして、突出部109が膨出部114に至ると、突出部109の先端と挿通孔107の上側内面との間の距離Cが支持体105の厚みa1より小さいため、突出部109が膨出部114に当接する。
【0046】
この状態から、更に、カバー本体103を押し込むと、図8(a)、(b)で示すように、突出部109の傾斜面111に沿って膨出部114が乗り上げられるように支持体105が弾性的に変形される。この弾性変形は支持体105の上面部分が後退部110によって開放されているので容易に行われる。また、支持体105の先端部分はガイド用凹部113と切り欠き面115により形成された肉薄部分において容易に変形する。そのため、膨出部114が突出部109を円滑に通過する。
【0047】
図9(a)、(b)に示すように、膨出部114が突出部109を通過すると、突出部109はガイド用溝108に係合する。この係合によって支持体105の変形状態が解除され再び扁平な状態に復帰される。このように支持体105の形状が復帰されることにより、支持体105を挿通孔107から引き出そうとしても、突出部109に膨出部114が当接して支持体105を挿通孔107から抜き取ることを不可能にする。
【0048】
なお、突出部109はフック状に形成してもよい。このようにフック状に形成することにより、膨出部114を確実に係止して支持体105が挿通孔107から不用意に抜き取られてしまうことを防止できる。
【0049】
上述した実施例におけるカバー開閉機構10のカバー103による開口102の開閉動作は下記のとおりである。
【0050】
通常は、開口102はカバー本体104によって塞がれている。この状態ではカバー本体104は凹部101内に収まっている(図1参照)。
【0051】
カバー103を開くときには、切り欠き106に爪などを引っ掛けてカバー本体104を引き出す。カバー本体104を引き出すと、支持体105は突出部109がガイド用溝108の端に至るまで前方に大きく引き出される。そのため、カバー本体104は開口102の前方の離れた位置まで移動される(図2参照)。一方、この移動の際には、支持体105は小さい値の厚みa2部分が挿通孔107を挿通するので、引き出しのために大きな力を要しない。
【0052】
カバー本体104が大きく引き出された後の状態では、支持体105は大きな値である厚みa1の先端部分が挿通孔107内にあるので上下方向にがたつきがなくなる。そのため、カバー本体104は下方に垂れ下がることがない。また、カバー本体104は折曲部112により上方に位置される。
【0053】
従って、開かれた開口102には前方からメモリカード30を挿入して筐体206内部のコネクタに接続することができる。一方、装着されたメモリカード30を取き出すときには、開かれた開口102からメモリカード30を引き出せばよい。このとき、カバー本体104はメモリカード30の開口102への挿入、開口102からの取り出しに際して邪魔にならない。
【0054】
再び、開口102を塞ぐ場合は、カバー本体104を開口102の方向に押し付けて凹部101内に納めることによって達成される。このとき、支持体105は小さい値の厚みa2の部分が挿通孔107を通過するので押し込みのために大きな力を要しない。
【0055】
なお、カバー103を取り外す場合は、筐体206の背面よりドライバーによって膨出部114を上方に押し上げるように支持体105を強制的に変形させ、この状態で支持体105を引っ張る。その結果、膨出部114が突出部109上を通過することにより、支持体105は挿通孔107から抜き取れる。
【0056】
従って、上述した本発明の実施例によれば、カバー開閉機構10を組み込む際には、カバー本体104でもって支持体105の先端を挿通孔107に差し込めばガイド用凹部113に突出部109が係合し、支持体105をガイドして挿通孔107に挿通させる。そして、支持体105を更に押し込むと突出部109が膨出部114に当接するが、この時点で支持体105を強く押し込むことにより先端部分を後退部110側に変形させることができる。その結果、突出部109は膨出部114上を通過してガイド用溝108に至せることになる。
【0057】
一方、組み込まれたカバー開閉機構10はカバー本体104を筐体206に対して前後に動かすだけで開口102を開閉できる。そして、カバー本体104は長板状の支持体105によって筐体206の前方に大きく飛び出して位置させることができる。
【0058】
その結果、カバー開閉機構10は組み込み作業が支持体105を挿通孔107に押し込むだけの簡単な動作で行うことができると共に、開口102の開閉がカバー本体104を筐体206に対して前後するだけの簡単な操作で達成できる。
【0059】
また、開口102が前面201上辺に接近して配置されている電子機器20においては、筐体206における開口102の上部に挿通孔107が形成されているので、挿通孔107に挿通された支持体105は各種部品が配置されていない電子機器20内の上方の空間部分に位置させることができる。そのため、支持体105は筐体206内に深く入り込む長いもので構成してカバー本体104の前後動作のストロークを大きくすることができる。従って、カバー開閉機構10は開口102を開いたときカバー本体104が開口102から大きく離れて位置させ、メモリカードなどの外部機器の装着、離脱を容易にする。
【0060】
また、支持体105はカバー本体104が上方に傾いて位置するように折り曲げられて形成された折曲部112を有する。そのため、カバー103が開口102を開いた状態では、そのカバー本体104が開口102の前方から上方に偏移した位置に在るので、前方より開口102を認識して外部機器の装着、離脱を確実に行うことができる。
【0061】
支持体105は、先端部分の厚みa1が大きく先端部分を除く部分の厚みa2が小さい。そのため、カバー本体104が開口102を開くように引き出されているときには、支持体105の先端部分が挿通孔107に対して上下方向にがたつきのない状態で挿通されている。従って、カバー本体104は下方に垂れ下がって開口102の前方に位置することがないので、外部機器の装着、離脱を容易にする。一方、カバー103による開閉動作において、支持体105を挿通孔107内で移動させる際には、支持体105の薄い厚みa2の部分が挿通されるので、開閉動作を円滑に行うことができる。
【0062】
また、支持体105は突出部109に対向する面において先端側からガイド用溝108の端に接近する位置までガイド用凹部113を備え、突出部109には挿通孔107入口側に向う位置に傾斜面111を備えている。そのため、カバー開閉機構10の組み込みに際して、挿通孔107に支持体105を差し込んだときにガイド用凹部113に突出部109が係合し先端部分をガイドするので、先端部分の挿通孔107への挿入を確実に行うことができる。挿入が進んで、突出部109がガイド用凹部113の端で膨出部114に当接しときには、膨出部114が支持体105の変形によって傾斜面111に沿って突出部109を通過する。そのため、少ない力で支持体105を押込んでガイド用溝108に突出部109を至らしめることができる。
【0063】
さらに、支持体105は、ガイド用凹部113を形成した面と反対の面に切欠き面115が形成され、肉薄状になっているので、先端部分が後退部110に向かって弾性的に変形し易い。そのため、膨出部114が突出部109通過する際に、先端部分がスムーズに弾性変形して少ない押込み力で突出部109をガイド用溝108に至らしめることができる。
【0064】
なお、上記実施例においては、カバー開閉機構10は電子機器20の前面201に設けたものであるが、本発明はこれに限定されることなく電子機器20の側面等の他の面に設けたものであってもよい。
【0065】
また、上記実施例においては、支持体105はカバー本体104の裏面の上辺寄りに設けたものであるが、本発明はこれに限定されることなく、支持体105をカバー本体104の裏面の下辺寄り、または側辺寄りに設けたものであってもよい。
【0066】
また、上記実施例においては、カバー開閉機構10は前面201の上辺右隅に配置されているが、本発明はこれに限定されることなく下辺等その他の位置に配置してもよい。
【0067】
また、上記実施例においては、カバー開閉機構10が適用される開口102はメモリカード30を挿通するためのものであるが、本発明はこれに限定されることなく、カード状でないメモリ、外部機器のコードに接続されたコネクタ等を挿通する各種の外部機器用の開口に適用できるものである。
【符号の説明】
【0068】
10・・・・カバー開閉機構
20・・・・電子機器
30・・・・メモリカード
101・・・凹部
102・・・開口
103.・・カバー
104・・・カバー本体
105・・・支持体
106・・・切り欠き
107・・・挿通孔
108・・・ガイド用溝
109・・・突出部
110・・・後退部
111・・・傾斜面
112・・・折曲部
113・・・ガイド用凹部
114・・・膨出部
115・・・切り欠き面
201・・・前面
202・・・デイスプレイ
203・・・操作面
204・・・デイスク挿入口
205・・・外部機器装着用開口
206・・・筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体にある開口をカバーでもって開閉するカバー開閉機構であって、
前記カバーは、前記開口を覆うカバー本体と、該カバー本体の裏面に設けられた弾性変形可能な支持体とを備え、
前記開口に接近した前記筐体には、前記支持体が挿通される挿通孔を形成し、
前記挿通孔は、該挿通孔内面に突出して設けられた突出部と、該突出部に対向した位置に該挿通孔内面から後退した後退部とを備え、
前記支持体は、該支持体の長手方向に延在して形成され、前記突出部に係合するガイド用溝を備えて構成したことを特徴とするカバー開閉機構。
【請求項2】
前記支持体は、前記カバー本体が上方に傾いて位置するように折り曲げられて形成された折曲部を備えて構成されたことを特徴とする請求項1に記載のカバー開閉機構。
【請求項3】
前記支持体は、先端部分が前記挿通孔の縦辺の長さに略等しく該挿通孔に挿通される厚さであり、該先端部分を除く部分が該縦辺の長さに対して小さい値の厚みで形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカバー開閉機構。
【請求項4】
前記突出部は、前記挿通孔の入口側に向った位置に傾斜面を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のカバー開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−15141(P2012−15141A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147192(P2010−147192)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】