説明

カバー開閉装置

【課題】 ストラドルキャリア等の作業車両に用いられるカバー開閉装置に於て、カバーを加工せずにそのまま使用できると共に、カバーを外す事なく点検の一部が行える様にする。
【解決手段】 車体51の側壁56に形成された開口2と、開口2を開閉するカバー3と、車体51の開口2下部に設けられカバー3の下部が挿入されてカバー3を略垂直な閉状態から外側に傾斜した半開き状態まで案内する受体4と、車体51の開口2上部とカバー3の上部との間に設けられてカバー3を離脱可能に係止する係止機構5とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばストラドルキャリア等の作業車両に用いられるカバー開閉装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカバー開閉装置としては、例えば特許文献1〜5に記載されたものが知られている。
【0003】
当該カバー開閉装置は、基本的には、車体の側壁に形成された開口と、開口を開閉するカバーと、車体の開口下部に設けられた凸部(ピンや突起や係止部)又は凹部(筒体や引掛部)と、カバーの下部に設けられて凸部又は凹部に挿脱可能に遊嵌される凹部又は凸部と、車体の開口上部とカバーの上部との間に設けられてカバーを離脱可能に係止する係止機構と、から構成されている。
【0004】
而して、カバーの開口量を規制する規制片(被係止体やストッパー棒)を設けたものも知られている(特許文献1及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−124574号公報
【特許文献2】特許第2611568号公報
【特許文献3】特許第2869326号公報
【特許文献4】特開平8−85477号公報
【特許文献5】実公平6−29173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の何れのものも、カバーの下部には、凸部又は凹部が設けられていたので、カバーを加工せずにそのまま使用できなかった。この為、それだけ構造が複雑化してコストが高く付くと共に、これらが他物に当たって損傷する事に依り本来の係合が行えない惧れもあった。
【0007】
又、カバーの開口量を規制する規制片を設けたものにあっては、カバーを挿脱する際にこの規制片が邪魔になったり、規制片が他物に当たって損傷する可能性があったので、規制片を長くする事が叶わなかった。この為、カバーを斜め方向に挿脱できる程度に傾斜できるものの、カバーを半開き状態に大きく傾斜できなかったので、カバーを外す事なく点検の一部が行えなかった。
【0008】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、カバーを加工せずにそのまま使用できると共に、カバーを外す事なく点検の一部が行える様にしたカバー開閉装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカバー開閉装置は、基本的には、車体の側壁に形成された開口と、開口を開閉するカバーと、車体の開口下部に設けられてカバーの下部が挿入されてカバーを略垂直な閉状態から傾斜した半開き状態まで案内する受体と、車体の開口上部とカバーの上部との間に設けられてカバーを離脱可能に係止する係止機構と、から構成した事に特徴が存する。
【0010】
カバーを開状態にして開口を開放する場合は、次の要領で行われる。
係止機構に依り車体の開口上部とカバーの上部との係止が解除される。そうすると、カバーが自重に依り略垂直な閉状態から半開き状態まで所定角度だけ傾斜される。この時、カバーは、その下部が受体に依り案内されて半開き状態まで傾斜された後に同状態に保たれる。カバーが半開き状態に傾斜されると、カバーが把持されて斜め上方に持ち上げられ、カバーの下部が受体から離脱されてカバーが外される。カバーが外されると、開放された開口から車体内部の点検等が行われる。
カバーを閉状態にして開口を閉塞する場合は、前述の逆の要領で行われる。
【0011】
車体の開口下部に受体を設けると共に、カバーの下部をそのまま受体に挿入する様にしたので、カバーを加工せずにそのまま使用できる。その結果、それだけ構造が簡単化されてコストの低減を図る事ができると共に、カバーの下部には、何も設けていないので、他物に当たって損傷する惧れもない。この為、カバーの下部と受体との本来の挿入を阻害される事がない。
カバーは、受体に依り半開き状態に大きく傾斜されるので、カバーを外す事なく点検の一部を行う事ができる。
【0012】
受体は、底壁と、底壁の左右方向の外端から樹立されて外側に傾斜された傾斜壁と、底壁と傾斜壁の前後方向の一側を連結すべく設けられた連結壁とを備えているのが好ましい。この様にすれば、カバーの前後方向の両側下部を挿入できる一対のものにする事ができ、簡単な構造に依りカバーを傾動案内できると共に、傾斜状態に保持する事ができる。
【0013】
係止機構は、カバーの上部に上下動可能に設けられて常時上突すべく付勢されたラッチと、ラッチの近傍に回動可能に設けられてこれの回動操作に依りラッチを収容位置に移動させるハンドルと、車体の開口上部に設けられてラッチに係合可能な受金具とを備えているのが好ましい。この様にすれば、ハンドルの回動操作に依り受金具とラッチの係合を解除してカバーを自重に依り開状態にできるので、例えばカバーを強く引っ張って係合を解除するものに比べて大きな力が不要となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 開口、カバー、受体、係止機構とで構成し、とりわけカバーの下部が挿入される受体を設けたので、カバーを加工せずにそのまま使用できる。
(2) カバーを略垂直な閉状態から傾斜した半開き状態まで案内する受体を設けたので、カバーを外す事なく点検の一部が行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のカバー開閉装置を示す側面図。
【図2】図1の拡大縦断正面図。
【図3】カバーを半開きにした状態を示す図2と同様図。
【図4】カバーを斜め上方に持ち上げて外した状態を示す図2と同様図。
【図5】図1の分解斜視図。
【図6】本発明のカバー開閉装置を適用した作業車両を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜6に於て、カバー開閉装置1は、開口2、カバー3、受体4、係止機構5とからその主要部が構成されて居り、ストラドルキャリア等の作業車両50に適用される。
尚、以下の説明に於て、前後方向及び左右方向とは、作業車両50の前後方向及び左右方向を言い、図1及び図6では、左右方向が前後方向になると共に、図2〜図4では、左右方向が左右方向になる。
【0017】
ストラドルキャリア等の作業車両50は、図6に示す如く、荷物を跨ぐ様に形成された車体51と、車体51の前後に設けられた車輪52と、車体51の前側上部に設けられたエンジン室53と、車体51の中程上部に設けられた運転室54と、車体51の中程下部に設けられて荷物を抱え込んで運搬する為の荷役装置55等から構成されている。
【0018】
開口2は、車体51の側壁56に形成されたもので、この例では、車体51に設けられたエンジン室53を構成する側壁56に形成されて居り、横長の長方形状を呈している。
而して、開口2を形成する側壁56には、カバー3を閉状態に保って内方への移動を阻止する一対の受板6が設けられている。
【0019】
カバー3は、開口2を開閉するもので、この例では、開口2に呼応した形状を呈してこれより若干小さな大きさを備えて居り、横長の長方形状を呈する板材7と、図略しているが、板材7の内側に設けられてこれを補強する四枠状の枠材及び適宜の縦横材と、板材7の外側の上部寄りに付設されて平面略U型を呈する一対の取っ手8とを備えている。
而して、カバー3は、軽量化を図る為にアルミニウム合金等の軽金属で作製されて居り、カバー3の下部は、そのままで何も設けられていない。
【0020】
受体4は、車体51の開口2下部に設けられてカバー3の下部が挿入されてカバー3を略垂直な閉状態から所定角度θだけ傾斜した半開き状態まで案内するもので、この例では、前後方向に離間した一対のものにしてあり、底壁9と、底壁9の左右方向の外端から樹立されて外側に傾斜された傾斜壁10と、底壁9と傾斜壁10の前後方向の一側を連結すべく設けられた連結壁11とを備えて居り、連結壁11が開口2の下方側部つまり側壁56の側部にボルト等の取付具12に依り着脱可能に取付けられている。
【0021】
而して、受体4は、カバー3の両側下部が上から挿入される様になっている。所定角度θは、この例では、略30度にしてある。所定角度θは、略20〜40度が好ましく、略20度より小さい場合は、カバー3の開口量が小さくなって点検の一部が行えなくなると共に、逆に、略40度より大きい場合は、カバー3の開口量が大きくなって手摺り等の他物との間隔が狭くなってカバー3の開閉作業が行えなくなる。
【0022】
係止機構5は、車体51の開口2上部とカバー3の上部との間に設けられてカバー3を離脱可能に係止するもので、この例では、ラッチ式平面ハンドルと呼ばれるものを用いて居り、カバー3の上部中程に突出位置から収容位置まで上下動可能に設けられて常時上突すべく付勢されたラッチ13と、ラッチ13の近傍に前後方向軸廻りに回動可能に設けられてこれの回動操作に依りラッチ13を収容位置に移動させるハンドル14と、車体51の開口2上部の側壁56に設けられてラッチ13に係合可能な受金具15とを備えている。
【0023】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
カバー3を閉状態にして開口2を閉塞した状態(図1,2,6参照)から、カバー3を開状態にして開口2を開放する場合は、次の要領で行われる。
係止機構5のハンドル14が手前に引かれて回動操作されると、ラッチ13が下方に移動されて車体51の開口2上部に設けられた受金具15とカバー3の上部に設けられたラッチ13との係止が解除される。
【0024】
そうすると、カバー3が自重に依り略垂直な閉状態から半開き状態まで所定角度θだけ傾斜される(図3参照)。
この時、カバー3は、その下部が受体4に依り案内されて半開き状態まで傾斜された後に同状態に保たれる。
【0025】
カバー3が半開き状態に傾斜されると、開口2の上部が開放されるので、点検の一部を行う事ができる。
【0026】
カバー3が半開き状態に傾斜されると、カバー3の取っ手8が把持されて斜め上方に持ち上げられ、カバー3の下部が受体4から離脱されてカバー3が外される(図4参照)。
カバー3が外されると、開放された開口2から車体51内部の点検等が行われる。この時、外されたカバー3は、適当な場所に立て掛けたりして置かれる。
【0027】
カバー3を閉状態にして開口2を閉塞する場合は、前述の逆の要領で行われる。
【0028】
車体51の開口2下部に受体4を設けると共に、カバー3の下部をそのまま受体4に挿入する様にしたので、カバー3を加工せずにそのまま使用できる。その結果、それだけ構造が簡単化されてコストの低減を図る事ができる。
カバー3の下部には、何も設けていないので、他物に当たって損傷する惧れもない。とりわけ、外したカバー3を立て掛けて置いても支障がない。この為、カバー3の下部と受体4との本来の挿入を阻害される事がない。
カバー3は、受体4に依り半開き状態に大きく傾斜されるので、カバー3を外す事なく点検の一部を行う事ができる。
【0029】
尚、受体4は、先の例では、底壁9と傾斜壁10と連結壁11とを備えていたが、これに限らず、例えば連結壁11を省略したものでも良い。この場合、底壁9を利用して取付けるのが望ましい。
係止機構5は、先の例では、ラッチ式平面ハンドルと呼ばれるものを用いたが、これに限らず、例えば他の構造のものを用いても良い。
【符号の説明】
【0030】
1…カバー開閉装置、2…開口、3…カバー、4…受体、5…係止機構、6…受板、7…板材、8…取っ手、9…底壁、10…傾斜壁、11…連結壁、12…取付具、13…ラッチ、14…ハンドル、15…受金具、50…作業車両、51…車体、52…車輪、53…エンジン室、54…運転室、55…荷役装置、56…側壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側壁に形成された開口と、開口を開閉するカバーと、車体の開口下部に設けられカバーの下部が挿入されてカバーを略垂直な閉状態から外側に傾斜した半開き状態まで案内する受体と、車体の開口上部とカバーの上部との間に設けられてカバーを離脱可能に係止する係止機構と、から構成した事を特徴とするカバー開閉装置。
【請求項2】
受体は、底壁と、底壁の左右方向の外端から樹立されて外側に傾斜された傾斜壁と、底壁と傾斜壁の前後方向の一側を連結すべく設けられた連結壁とを備えている請求項1に記載のカバー開閉装置。
【請求項3】
係止機構は、カバーの上部に上下動可能に設けられて常時上突すべく付勢されたラッチと、ラッチの近傍に回動可能に設けられてこれの回動操作に依りラッチを収容位置に移動させるハンドルと、車体の開口上部に設けられてラッチに係合可能な受金具とを備えている請求項1に記載のカバー開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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