説明

カプサイシンを含有する乱用防止薬学的組成物

【課題】物質の有効な医療的な使用を経口経路または皮下経路を介して可能となるが、同時に鼻腔内および/または静脈内の乱用を防止する、新しい組成物および方法を提供すること。
【解決手段】薬学的活性成分;およびカプサイシノイド;を含む組成物であって、当該組成物は、固体経口投薬形態および経皮投薬形態から選択される、最終投薬形態への引き続く処方のための組成物であり;そして当該カプサイシノイドは、当該最終投薬形態が、粘膜または血管膜と接触したとき、咳、くしゃみ、分泌、および疼痛から選択される、少なくとも1つの応答を引き起こすために有効な量を含むような量で存在する、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、乱用を防止するための系を含む薬学的組成物に関する。より具体的には、本発明は、有効量の薬学的化合物およびカプサイシンまたはカプサイシノイド化合物を含む組成物に関する。最も具体的には、本発明は、有効量の薬学的化合物および一定量のカプサイシン化合物を含む組成物であって、所望される場合、経口または皮下により投与される場合に、刺激効果をほとんどまたは全く有さないが、鼻腔内、経口および静脈内の乱用を防止するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
多くの薬学的化合物の医療的な利益(麻酔薬およびオピオイドならびに非麻酔薬および非オピオイドを含む)は、周知であり、そして明白である。不幸にも、多くのこれらの薬物の乱用および依存性も等しく、明白である。このことは、特に、オピオイドに当てはまる。乱用者は、最も大きな効果を得るために、しばしば、薬物の粉末形態または希釈形態を鼻から吸い込むか、または薬物の溶液を調製し、そしてそれを注射する。いずれにしても、乱用者は、錠剤またはカプセルを簡単に粉砕することによって、処方された錠剤およびカプセル中に依存性物質の容易な供給源を見出し得る。オピオイドは、恐らく、これらの化合物の中で、最も依存性が高く、そして最も乱用される。オピオイドは、本明細書中で使用される場合、任意のオピウム生成物もしくはそのアナログ、または他の薬物を意味し、これらは、医薬として使用することが意図される場合、オピオイドレセプターに作用し、この医薬としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:コデイン、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、フェンタニル、ヒドロコデン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルフィン、ナルブフィン、オキシコデン、オキシモルホン、ペンタゾシン、およびプロポキシフェン、トラマゾール。さらに、乱用される他の医薬としては、以下のクラスの薬物中の医薬が挙げられる:ベンゾアジアザピン(例えば、Valium)、およびNMDA−アンタゴニスト(例えば、ケタミン)。
【0003】
制御された放出錠剤および他の処方物の出現により、さらに増加した量の有効な薬学的組成物が、単一の錠剤中に処方されている。これらの処方物が、増加した有効性および便宜性により患者に利益を与え、いずれもまた、依存性にするのに、より多くで、かつ、より簡便な量の乱用薬物を提供する。従って、乱用を防止するための新しく、かつ、より良好な方法が、探索されている。経鼻乱用および静脈内乱用は、これらの薬物から幸福感効果(すなわち、「ハイな状態(high)」)を達成するのに最も所望され、かつ、最も危険な方法であることが証明されているので、このような使用を防止することは、利点がある。経口乱用を防止することがまた、役に立つ。
【0004】
カプサイシン(トウガラシ(chili pepper)およびトウガラシ(capsicium)属の他の種において見出される天然成分)は、刺激薬として公知である。これは、粘膜(例えば、鼻孔において見出される膜)を特に刺激する。専門家ではなく素人が、「ペパースプレイ」の使用に関する最近の評判を見出した。この状況において、ペパースプレイは、逃避するのに十分な期間、侵入者を動けなくするのに効果的である。カプサイシンはまた、このカプサイシンを皮膚または筋肉に注射することによって、ヒトの神経障害性の疼痛を研究するために、実験的に使用されている。この方法で注射された少量のカプサイシンは、数時間持続し得る疼痛を生じさせることが、見出されている。他のカプサイシンアナログまたはカプサイシノイドはまた、同様の効果を示すようである。この明細書および特許請求の範囲の全体にわたって、用語「カプサイシン」は、カプサイシンを示すために使用され、そして用語「カプサイシノイド」は、天然であろうと、または合成であろうと、カプサイシン、そのアナログ、ならびにカプサイシノイドと当該分野で一般に呼ばれている他の誘導体および化合物を含む、広範なクラスの化合物を示すために使用される。
【0005】
研究は、カプサイシンが、陽性鎮痛結果を有する種々のオピオイドと合わせられ得ることを示唆している。カプサイシンが、拮抗的に作用するか、またはオピオイドの生物活性に干渉することは、見出されていない。特許文献1には、特定の比のカプサイシンおよびオピオイドが、無痛感を生じさせる相乗効果を有することがさらに示唆されている。20,000:1〜1:20の間のカプサイシン:オピオイドの比が、患者において示されている。特許文献1はまた、経口投薬において、最小の有効用量のカプサイシンは、平均の成人について約100mg、または約1.3mg/kgであり、但し、カプサイシン:オピオイドの比は、維持される。用量は、2000mgまでの範囲である。特許文献2は、非オピオイド鎮痛薬(例えば、非ステロイド、鎮痛薬/抗炎症薬(NSAID))との類似の相乗効果を示唆している。示唆された最小のカプサイシン含量は、平均の成人について50mg(0.85mg/kg)であり、但し、同様のカプサイシン:鎮痛薬の類似の比が維持される。本明細書において、受容可能な用量は、2000mgまであり得る。しかし、特許文献2において、投薬形態は、全て、経口使用または皮下使用のためである。
【0006】
興味深いことに、カプサイシン自体は、鎮痛特性を有することが見出されているが、他の鎮痛薬を試験する際に、咳、くしゃみ、および他の害を誘発する刺激物としてさらに使用されている。従って、カプサイシンは、一見反対の目的のために使用されている。一方、カプサイシンは、咳、くしゃみ、疼痛および他の効果を引き起こす刺激物であるが、他方、疼痛の動物モデルにおいて、鎮痛剤を増強することが、意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,599,342号明細書
【特許文献2】米国特許第4,681,897号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
乱用の高い可能性および高い含量バージョンであるが医療的に許容される物質が、固体経口投薬形態および皮下処方物においてより容易に利用可能となるので、物質の有効な医療的な使用を経口経路または皮下経路を介して可能となるが同時に鼻腔内および/または静脈内の乱用を防止する新しい組成物および方法が、必要とされる。本発明は、この問題を解決するための解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
経口使用が企図される薬学的組成物は、有効成分、カプサイシン、および投薬処方物のために使用される他の物質を含む。この組成物は、好ましくは、固体の経口投薬形態、一般に、錠剤またはカプセルのいずれかの形態である。皮下投与される組成物はまた、本発明の範囲内である。有効な薬学的成分とは別に、この組成物は、組成物の鼻腔内使用、経口使用または静脈内使用に対する防止剤(deterrent)として役立つ量のカプサイシンを含む。このような組成物は、鼻から吸い込むことおよび/または注入による乱用のために処方物の薬学的錠剤を粉砕することによる乱用を防止する。このカプサイシンは、投薬形態に直接的に取り込まれ得るか、またはこのカプサイシンは、その放出を減少または排除するために隔離され得る。さらに、カプサイシンの効果を増強させるさらなる物質が、この錠剤中に含まれ得る。
・本発明は、以下を提供し得る:
・(項目1)
組成物であって、当該組成物は、以下:
薬学的活性成分;および
カプサイシノイド;
を含み、
当該組成物は、固体経口投薬形態および経皮投薬形態から選択される、最終投薬形態への引き続く処方のための組成物であり;そして
当該カプサイシノイドは、当該最終投薬形態が、粘膜または血管膜と接触したとき、咳、くしゃみ、分泌、および疼痛から選択される、少なくとも1つの応答を引き起こすために有効な量を含むような量で存在する、組成物。
・(項目2)
上記薬学的活性成分が、オピオイドである、項目1に記載の組成物。
・(項目3)
固体経口投薬組成物であって、当該組成物は、以下:
有効量の薬学的活性成分;および
粘膜または血管膜または皮膚または筋肉と接触したとき、咳、くしゃみ、分泌、および疼痛から選択される、少なくとも1つの応答を引き起こすために有効な量のカプサイシノイド;
を含む、組成物。
・(項目4)
上記薬学的活性成分が、オピオイドである、項目3に記載の固体経口投薬組成物。
・(項目5)
上記オピオイドが、オキシコドン、ヒドロモルホン、およびオキシモルホンからなる群より選択される、項目4に記載の組成物。
・(項目6)
上記オピオイドが、2.5mgで存在し、そしてカプサイシンが、0.125mg未満で存在する、項目5に記載の組成物。
・(項目7)
上記オピオイドが、5.0mgで存在し、そしてカプサイシンが、0.250mg未満で存在する、項目5に記載の組成物。
・(項目8)
上記オピオイドが、10mgで存在し、そしてカプサイシンが、0.5mg未満で存在する、項目5に記載の組成物。
・(項目9)
上記オピオイドが、20mgで存在し、そしてカプサイシンが、1.0mg未満で存在する、項目5に記載の組成物。
・(項目10)
上記オピオイドが、40mgで存在し、そしてカプサイシンが、2.0mg未満で存在する、項目5に記載の組成物。
・(項目11)
上記オキシモルホンが、80mgで存在し、そしてカプサイシンが、4.0mg未満で存在する、項目5に記載の組成物。
・(項目12)
固体経口投薬組成物であって、当該組成物が、以下:
複数の有効用量の薬学的活性成分;
各々の当該複数の有効用量の当該薬学的活性成分について、粘膜または血管膜と接触したときに、くしゃみ、咳、分泌、および疼痛の1つを誘導するために十分な量のカプサイシン、
を含む、組成物。
・(項目13)
上記組成物が、制御放出処方物である、項目12に記載の組成物。
・(項目14)
上記薬学的活性成分が、オピオイドである、項目12に記載の固体経口投薬組成物。
・(項目15)
上記オピオイドが、オキシモルホンである、項目12に記載の組成物。
・(項目16)
オキシモルホンが、10mgで存在し、そして上記カプサイシンが、0.5mg未満で存在する、項目12に記載の組成物。
・(項目17)
オキシモルホンが、20mgで存在し、そして上記カプサイシンが、1.0mg未満で存在する、項目12に記載の組成物。
・(項目18)
オキシモルホンが、40mgで存在し、そして上記カプサイシンが、2.0mg未満で存在する、項目12に記載の組成物。
・(項目19)
オキシモルホンが、80mgで存在し、そして上記カプサイシンが、4.0mg未満で存在する、項目12に記載の組成物。
・(項目20)
カプサイシンが、オピオイドを含むマトリクス中に直接組み込まれる、項目2に記載の組成物。
・(項目21)
カプサイシンが、上記活性成分のマトリクスとは別個の第2のマトリクス中に組み込まれる、項目2に記載の組成物。
・(項目22)
カプサイシンは、上記組成物が経口投与されるときに、通常当該カプサイシンを放出しない物質中にカプセル化される、項目2に記載の組成物。
・(項目23)
上記カプサイシンが、経口投与されるときに、12時間のうちに20%以下を放出する物質中にカプセル化される、項目22に記載の組成物。
・(項目24)
上記カプサイシノイドが、経口投与されるときに、12時間のうちに20%以下を放出する物質中にカプセル化される、項目1に記載の組成物。
・(項目25)
上記薬学的活性成分が、オピオイド、非ステロイド抗炎症薬物(NSAID)、COX−1インヒビターおよびCOX−2インヒビター、ベンゾジアゼピン、ならびにNMDA−アンタゴニストからなる群より選択される、項目2に記載の組成物。
・(項目26)
組成物であって、当該組成物が、以下:
薬学的活性成分;および
ヒスタミン;
を含み、
当該組成物は、固体経口投薬形態および経皮投薬形態から選択される最終投薬形態への引き続く処方のための組成物である、組成物。
・(項目27)
上記薬学的活性成分が、オピオイドである、項目26に記載の組成物。
・(項目28)
上記ヒスタミンは、上記組成物が経口投与されるときに、通常当該ヒスタミンを放出しない物質中にカプセル化される、項目27に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の組成物は、潜在的に乱用され得る物質の医療的に有効な経口投薬を可能にする一方で、鼻腔内、経口、または静脈内でのそれらの乱用を防止し得る。刺激成分は、鼻から吸入した場合または注入した場合に特に刺激するので、本発明は、固体経口投薬形態(例えば、丸剤、錠剤、カプセルなど)を、当然に含む。本発明はまた、液体充填固体経口投薬形態も含む。なぜならば、これらの形態は、同様に乱用され得るからである。本発明は、錠剤およびカプセルに関する。なぜなら、これらの投薬形態は、後者の使用のために、患者に投与されることが企図されるからである。従って、これらの形態は、乱用のための錠剤となる可能性がより高い。皮下適用がまた、企図される。本質的に、粘膜または他のカプサイシン感受性膜との接触が企図されない全ての投薬形態は、本発明の実施形態に従って作製され得る。静脈内または鼻腔内にこの系を入れるように設計された投薬形態は、本発明に従って処方されるべきではない。
【0011】
上記のことを考慮して、この組成物は、好ましくは、固体経口投薬形態としての送達のために処方される。当該分野で周知であるように、このような投薬形態は、多数の不活性成分(例えば、充填剤、賦形剤、および時間放出型処方物(徐放(sustained release)、持続放出(extended release)など))を含み得る。この組成物およびその利用投薬形態は、任意の公知の技術によって処方され得、そして任意の特定の処方方法または処方形態に限定されることを意味しない。便宜のため、そして本発明の範囲を限定するとして構成されないが、用語「錠剤」は、上記の全ての投薬形態を言及するために使用される。
【0012】
組成物はまた、有効量の薬学的成分を含む。薬学的成分の正確な量は、成分の性質、求められる錠剤の強度、処置される状態、および意図される患者の大きさ、ならびに多くの他の因子に依存して変化する。より多くの用量および時間放出型処方物は、従来のように、1日に2以上の用量を服用されるもののために、十分な薬学的成分を含む可能性を有する。これらの錠剤の各々は、活性成分の潜在的に乱用され得る複数の用量を含み得る。潜在的に乱用され得る用量は、活性成分に依存する量で変化する。このような量は、容易に確認される。これらの高い含有量の処方物は、特に、乱用に対して感受性であり;乱用者に濃縮されたオピオイドの供給源を与えることになる。さらに、いくつかの薬学的に鎮痛性の薬物は、オピオイドおよび他の鎮痛性薬物(例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、および他の非ステロイド抗炎症剤)の両方から構成される。本発明の範囲はまた、これらの鎮痛性薬物の組み合わせを含む。
【0013】
錠剤を粉砕して、鼻から吸い込むことによって鼻腔内に、またはこの粉砕した用量から作製した溶液の注入によって静脈内に取り込む場合、カプサイシンの激しい刺激効果が、直ちに感じられるように、カプサイシンが添加される。これらの刺激効果は、咳、くしゃみ、灼熱感(burning)、および疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。カプサイシンに関連する疼痛および不快感は、数分および潜在的に数時間認められ得、そして続く乱用または連続した乱用を防止する。この組成物が粉砕され、そして鼻から吸い込まれる場合、疼痛および激しいくしゃみが生じる。さらに、カプサイシンによって誘導されるくしゃみは、乱用者にオピオイドを吐き出させ、従って、直ちに乱用を防止するのに役立ち得る。静脈に直接注射されたカプサイシンは、有痛性ではないが、乱用者が少しでも静脈から外すと、生じる皮下のカプサイシンからの疼痛が苦しめる。これは、さらなる乱用に対する防止効果を提供する。この錠剤はまた、経口乱用を防止する。経口乱用は、2つの方法のいずれかにおいて生じ得る。第1に、乱用者は、単に錠剤を噛み得る。これは、錠剤の任意の制御放出マトリクスを壊し、そしてオピオイド錠剤の全てを直ちに放出する。これは、強い幸福感または「ハイな状態」を乱用者に与える。オピオイドを経口的に乱用するための他の方法は、錠剤を粉砕および溶解することによる。次いで、乱用者は、この溶液を飲み、迅速に放出した全てのオピオイドを得、再び「ハイな状態」を得る。いずれにしても、この錠剤が、粉砕され、かつ、溶解されるか、または噛まれる場合、本発明に従うカプサイシンの取り込みは、刺激のある味を有し得るか、または疼痛を与え得る。カプサイシンの効果に対する個々の感受性において、これは、カプサイシンによって生じる刺激のある味または疼痛に起因して、さらなる乱用を防止するのに役立つ。
【0014】
カプサイシンは、2種の原理的な方法のいずれかで添加され得る。第1に、このカプサイシンは、この錠剤のマトリクス中に直接取り込まれ得る。これは、錠剤を粉砕することによって乱用を防止する。なぜならば、このような行動が、カプサイシンを放出させ、そして潜在的な乱用者に激しく不快にさせるからである。このような錠剤は、好ましくは、この錠剤が患者の胃に到達した後に、カプサイシンの放出を遅延させるようにコーティングされている。
【0015】
あるいは、このカプサイシンは、意図されるように錠剤が服用される場合に、放出されないように、錠剤中に隔離され得る。カプサイシンを隔離する好ましい方法は、カプサイシンをカプセル化することによる。従って、この錠剤は、2つの別個のマトリクスを含む。一般により豊富な第1のマトリクスは、錠剤の活性成分(すなわち、オピオイドまたは他の医薬)を含む。第2のマトリクスは、カプサイシンを含む。この第2のマトリクスは、均一な制御放出マトリクス(12〜24時間中にカプサイシンの20%未満を放出し得る低速放出マトリクス中のカプサイシン)であり得る。あるいは、この第2マトリクスは、即時放出マトリクス上にコーティングされ(例えば、カプサイシンは、即時放出マトリクス上にコーティングを有する、そのマトリクス中にある)、これにより、このコーティングが、(この錠剤を噛むことまたは粉砕することによって)傷つけられる場合を除く、カプサイシンの放出を防止する。この「即時放出マトリクス」は、従来の処方物成分を含み得るか、または純粋にカプサイシンであり得る。さらに、このカプサイシンは、このマトリクスであろうと、別のマトリクスであろうと、乱用者により刺激または疼痛を与えるために、例えば、溶解度を改善することによってか、または他のいくつかの方法によって他の物質とともに混合され得るか、または化学的に直接的に改変され得る。
【0016】
本明細書の全体にわたって、用語「カプサイシン」は、乱用防止物質をいうために使用されるが、特に、化合物がカプセル化される場合、他の乱用防止化合物がまた使用され得ることに注目すべきである。従って、本発明において有用な乱用防止薬剤は、続く損傷を生じさせることなく、粘膜に対して潜在的に有害であるか、または刺激する任意の薬剤を含み、この薬剤としては、カプサイシンおよび以下の一般式:
【0017】
【化1】

のカプサイシン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない:ここで、
は、−NHC(O)−、−NHC(O)O−、−NHC(O)NH−、NHC(S)NH−、−NHS(O)−、または−C(O)NH−であり;
は、直鎖または分枝鎖のC〜C11アルキル、C11〜C23アルケニル、C11〜C23アルキニル、またはC11〜C23アルカジエニルであり;
は、OHまたはC〜Cエステルであり;そして
は、OHまたはOCHである。
【0018】
特に好ましいカプサイシン誘導体(これはまた、カプサイシンアナログとして公知である)は、N−バニリル−9E−オクタデセンアミド、8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミド(カプサイシン)、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノルカプサイシン、およびノモルカプサイシンである。集団的におよび個々に、これらの化合物(カプサイシン自体を含む)は、本明細書中で「カプサイシノイド」という。
【0019】
当然、粘膜との接触により損傷を与えることなく、物理的な不快感を生じさせる可能性が最も高いこれらの化合物を使用することが、最も所望される。それらの化合物はまた、服用される場合、熱感を与える可能性が最も高い。特定の化合物によって提供される熱感は、Scoville Unit(カプサイシノイドの存在に対して緩やかに拘束される相対的な熱感の自覚的スケール)の使用を介して決定され得る。Scovilleスコアが高くなる程、より高い程度の熱感を示す。カプサイシノイドの中で、Scovilleスケールが最も高くランク付けされるものは、カプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、およびジヒドロカプサイシンであり、これらは、本発明の使用のために最も好ましい化合物を作製する。これらの化合物は、以下に示される。これらの混合物、および他のカプサイシノイドはまた、上記のカプサイシンの定義において含まれ、そして本発明において有用である。
【0020】
本発明は、粘膜に放出される場合に刺激感または不快感を生じさせることが意図される他の化合物を利用し得、但し、このような化合物は、口腔中で放出させることなく、身体を通過または通るように処方される。例えば、ヒスタミンが、くしゃみおよびアレルギー性反応の症状を生じさせるために使用され得る。
【0021】
最小量のカプサイシンが、所望の防止効果を生じる。この最小量は、錠剤強度に関係無く、それぞれの錠剤中に含まれるべきである。最小量以下の量は、決定された依存性を防止するのに効果的ではないかもしれない。増大した量のカプサイシンは、カプサイシンの希釈を避けるために、より多くの用量または時間放出型用量を含む錠剤中に含まれ、従って、これらの用量は潜在的な乱用者によって分離される可能性がより高いので、防止効果を有する。さらに、カプサイシンが隔離されるか、またはカプセル化されるそれらの状況において、さらなるカプサイシンが含まれ得る。なぜなら、カプサイシンが放出されない場合、有害な副作用の可能性が存在するからである。しかし、このカプサイシンは、防止範囲で維持されるべきである。カプサイシンは、任意の防止効果を克服し得る鎮痛性効果を提供し得るので、過剰のカプサイシンは避けるべきである。それにも係わらず、カプサイシン含有量は、錠剤中の他の成分によって与えられ得る任意のマスキング効果を克服するのに十分多量であるべきである。この状況にも係わらず、この乱用を防止するために、錠剤から誘導される乱用用量中に防止量のカプサイシンを提供することが、考えられる。
【0022】
カプサイシンが、粘膜および血管膜を非常に刺激するので、非常に少量のカプサイシンが、効果的である。ちょうど75μgで、男性および女性の鼻腔粘膜に導入された場合に、分泌、くしゃみ、および/または咳を誘導させることが示されている。必要とされる最小量のカプサイシンは、多くの因子によって影響され得、この因子としては、薬学的成分の相対強度、および他の錠剤成分のマスキング効果が挙げられる。いくつかの薬学的薬剤は、一つの特定の経路によって乱用される可能性が高いので、カプサイシンを錠剤に導入するのにどこが最良であるかを決定する場合、乱用の最も高い可能性を有する経路がまた、考慮され得る。鼻腔内から乱用される薬物は、静脈または経口から乱用されるカプサイシンの量とは異なる量のカプサイシンを必要とし得る。
【0023】
表1は、種々の錠剤処方物中に、オピオイド、オキシモルホン、およびカプサイシンを含む好ましい組成物を例示する。他の錠剤成分は、この錠剤中に含まれない。IRは、即時放出処方物を示し、ERは、持続放出処方物を示す。オキシモルホンの場合において、最小有効用量が2.5mgである場合、125μg未満のカプサイシンが好ましい。この量は、乱用を防止するのに十分であるが、経口受容性および胃腸受容性の範囲内で良好である。これより多くの量が使用され得るが、125μg未満の量が、乱用を防止するのに十分である。
【0024】
(表1 オキシモルホン含量(mg)および好ましいカプサイシン含量(mg))
【0025】
【表1】

上記されるように、カプサイシンの量を証明する考察としては、薬学的成分の量およびその強度が挙げられる。オキシモルホンは、強力なオピオイドの1つであるので、125μg未満の好ましい量のカプサイシンは、あまり強力でない他のオピオイドまたは他の薬物を含有する錠剤において有効であるべきである。しかし、より多くのカプサイシンは、特に、より大きな最小投薬量が企図される場合、使用され得る。例えば、あまり強力でない薬学的成分が、5mgで存在する場合、カプサイシンは、好ましくは、250μg未満で存在し、そして125μg以下でさえも有効であり得る。さらに、錠剤におけるより多くのオピオイドは、錠剤をより乱用しやすくさせ、本発明の使用をより必要にさせる。
【0026】
すでに記載されるように、錠剤が乱用される場合、乱用者に有痛性であり、従ってこのような乱用を防止する錠剤を作製することが本発明の目的である。試みられる乱用は、経鼻(鼻からの吸入による)または静脈内(注射による)であり得る。経鼻の不快感は、鼻通路の感受性に起因して比較的低濃度で生じるべきである。しかし、カプサイシノイド単独の使用は、問題を引き起こし得る。すなわち、オピオイドは、一般に、水溶性であるが、カプサイシンは、水溶性でない。カプサイシンおよびカプサイシノイドは、疎水性の傾向がある。従って、カプサイシン単独の使用は、注射によるかまたは錠剤の溶解後の鼻腔内投与による乱用に対して効果がないかもしれない。
【0027】
オピオイドおよびカプサイシンを含む錠剤が、水に溶解される場合、カプサイシンは、沈澱するが、オピオイドは、溶解する。次いで、液体は、カプサイシンを底に残したまま引き上げられ、そして注射され得るかまたは鼻から吸入され得る。これは、カプサイシンの対乱用の目的を無効にする。この問題は、錠剤への乳化剤の添加によって解決される。錠剤が溶解されるとき、乳化剤は、カプサイシンを溶液中に残存させて、鼻から吸引されるかまたは注射される場合に有効にさせ得る。どの程度の乳化剤が必要とされるかは、使用される乳化剤および使用される特定のカプサイシノイドに依存する。
【0028】
しかし、カプサイシンおよびラウリル硫酸ナトリウムについて、以下の比率が、有効であることが決定された。
【0029】
【表2】

これらの比率は、変動する濃度のラウリル硫酸ナトリウムを含む溶液中において、どの程度のカプサイシンが、沈澱なしにそのままでいるかを試験することによって決定された。示されるラウリル硫酸ナトリウムの量は、最小量である。さらなるラウリル硫酸ナトリウムが使用される場合、本発明は、なお作動する。実際には、カプサイシンの全てを乳化させるために十分な乳化剤が存在することを確実にするために、過剰の乳化剤が使用されるべきである。さらに、乳化剤の不足は、本発明を作動不能にすることを生じない。どちらかというと、その有効性が、減少され得る。
【0030】
任意の適切な乳化剤は、本発明の錠剤において使用され得る。適切な乳化剤としては、ステアレート(例えば、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノステアレートおよびソルビタントリステアレート)、モノグリセリドおよびジグリセリド、ラウレート(laureate)、オレエート、グリコール、またはドキュセートナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
この好ましい実施形態は、カプサイシンおよびオキシモルホンに関する本発明の組成物を議論するが、他のオピオイドおよび非オピオイドが、有効な薬学的成分として使用され得る。記載されるように、本発明は、本明細書中に開示される特定の組成物に限定されず、乱用についての潜在性を有する種々の薬学的化合物とともに有用である。さらに、乱用防止剤は、灼熱感を引き起こす化合物に限定されず、カプサイシノイドおよびカプサイシンのアナログが、好ましい。
【0032】
これまでに説明されるように、乱用防止剤(カプサイシンまたは他の刺激物)は、薬学的に受容可能なマトリクス中に活性薬学的成分とともに直接組み込まれ得るか、またはこの薬剤は、別個のマトリクス中に組み込まれ得るかもしくはカプセル化され得る。乱用防止剤が、別個のマトリクス中に組み込まれる場合、薬剤の量は、同様に乱用防止量の限界の範囲内で、相当に増加され得る。乱用者に送達する乱用防止剤(カプサイシンまたはカプサイシノイドの場合)の量はまた、錠剤中の乳化剤の量によって制御され得ることは注目されるべきである。妥当なレベルで乳化剤を保つことによって、錠剤中の乱用防止剤の量は、乱用者の用量において過剰な薬剤にすることなく、増加され得る。このことは、錠剤が溶解されるときに、過剰なカプサイシノイドが、沈澱するためである。
【0033】
乱用防止剤は、マトリクスが粉砕を通じて破壊されない限り薬剤を放出しないマトリクス中に組み込まれ得るか、またはこの薬剤は、同様に粉砕されない限り薬剤が放出されないマイクロカプセル中に形成され得る。この薬剤は、正規の使用者に対して放出されないので、薬剤の量は、標準的な錠剤に組み込まれ得るレベルを超え得る。
【0034】
本発明のこの実施形態において、カプサイシノイドは、オピオイドとは別個のマトリクス中に含まれる。この別個のマトリクスは、多くの異なる方法で形成され得る。1つの適切な構成は、カプサイシノイドがその中に分散された均一な制御放出マトリクスである。この制御放出マトリクスは、処方され、非常に小さな顆粒に顆粒化される。次いで、これらの顆粒は、錠剤の主要なマトリクス中に組み込まれる。このようにして、カプサイシノイドは、錠剤全体の一部を形成する別個の制御放出マトリクス中に含まれる。摂取の際に、オピオイドを含有する錠剤の主要なマトリクスは、溶解し、オピオイドを放出し、そしてまた、固体の減少放出マトリクスまたは非放出マトリクス中のカプサイシノイドを含有する顆粒を放出する。次いで、この顆粒は、最小限のカプサイシノイドのみを放出するか、またはカプサイシノイドを全く放出することなく、体を通過し、そして排出される。
【0035】
本発明の錠剤について別の考えられる構成は、即時放出マトリクス中にカプサイシノイドを組み込むことである。このマトリクスは、顆粒化され、そして非放出コーティング(例えば、アクリルポリマー)でコーティングされる。この顆粒は、即時放出オピオイド錠剤または制御放出オピオイド錠剤のいずれかに組み込まれる。投与の際に、この錠剤は、所定の速度でオピオイドを放出するが、コーティングされた顆粒は、カプサイシノイドを放出しない。むしろ、この顆粒は、腸を通過し、そして患者から排出される。このようにして、コーティングされた顆粒は、賦形剤として作用し、そして通常の状況下で、全く薬理学的作用を有さない。任意の適切な制御または即時の放出マトリクスは、適切な非放出コーティングがこのマトリクスと一緒に使用される場合、カプサイシノイドについて使用され得る。
【0036】
あるいは、減少放出速度顆粒は、形成された顆粒よりも減少した放出速度のコーティングを有する即時放出マトリクスを用いて形成され得る。本発明の記述は、1つの実施形態において、「非放出」マトリクスを記述するが、「非放出」が特定される場合、カプサイシノイドのある程度の漏出が生じ得る可能性がある。従って、本明細書中で使用される場合、「非放出」の定義において、任意の減少放出マトリクスが含まれるべきであり、このマトリクスは、20%未満のカプサイシノイドが経口投与の通常の条件下で12時間にわたって放出されることを可能にする。言うまでもなく、本明細書中で記載されるどんな「非放出」マトリクスも、錠剤が粉砕または溶解されるときに、放出を避けるようにカプサイシノイドを完全にカプセル化するように意図されない。さらに、適切な非放出コーティングは、顆粒化マトリクス含有カプサイシノイド上でいくつかの公知のコーティングを一緒に使用することによって形成され得る。例えば、カプサイシノイド顆粒は、pH5(または3)未満でのみ物質の放出を可能にするコーティングで覆われ得、次いでこの顆粒は、5(もしくは7または9でさえも)を超えるpHでのみ物質の放出を可能にするコーティングによって覆われる。このようにして、錠剤が摂取されたとき、外側のコーティングは、顆粒が胃に存在している間、物質の放出を妨げ、そして一旦、錠剤が胃を通って腸へと通過すると、pHは、外側のコーティングが溶解するのに十分に上昇し、内側のコーティングは、物質の放出を妨げる。当業者は、本発明の錠剤における使用のための適切なマトリクスを処方し得る。
【0037】
カプサイシノイドは、不活性であるように完全にカプセル化されなくてもよい。少量が、相乗効果を通じてオピオイドの有効性を増強する場合、カプサイシノイドのある程度の放出を可能にすることが所望され得る。従って、このカプセル化は、処方に依存してカプサイシノイドの可変の放出を提供し得る。
【0038】
乱用について高い可能性を有するオピオイドとともに本発明の錠剤を使用することが最も好ましい。本発明において使用されるオピオイドアゴニストは、上記され、そして鎮痛薬として一般に使用する任意のアゴニストであり得、好ましくは、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロコドン、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロモルホン、プロポキシフェン、メタドン、およびオキシモルホンを含む。詳細には、経口錠剤形態における任意の依存性オピオイドは、本発明の対象である。最も詳しくは、制御放出オキシコドンは、近年、乱用の対象であり、従って本発明における使用のための良好な候補物となる。しかし、制御放出錠剤は、特に最近の問題であるが、本発明の錠剤は、上記に説明されるように、制御放出形式の錠剤と同様に即時放出錠剤について使用され得る。
【0039】
本発明の錠剤は、乱用可能な医薬品、主にオピオイドとともに使用するために意図される。錠剤の他の局面は、現在作製される錠剤と同じままであるべきである。さらに、オピオイド錠剤の先行技術と同様に、本発明の錠剤は、組合せ錠剤であり得、他の医薬品(例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、ナプロキセンナトリウム、イブプロフェン、他のステロイド抗炎症剤および非ステロイド抗炎症剤、COX−2インヒビター、ギャバペンチン、プレガバリン(pregabalin)、または他の同様な薬剤)を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【公開番号】特開2009−149696(P2009−149696A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94439(P2009−94439)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【分割の表示】特願2002−590972(P2002−590972)の分割
【原出願日】平成14年5月16日(2002.5.16)
【出願人】(503407443)エンドー ファーマシューティカルズ, インコーポレイティド (9)
【Fターム(参考)】