説明

カプセルトナー並びにこれを用いた画像形成方法及びプロセスカートリッジ

【課題】低温での離型性に優れ、フィルミングの発生が少なく、低温定着性と耐熱保存性とを両立し、長期使用においても高画質が得られる、小粒径かつ粒度分布の狭いトナー。
【解決手段】少なくともポリエステル樹脂とスチレン/アクリル樹脂とアクリル樹脂とを含むトナー粒子のトナーであって、前記樹脂のフローテスターにおけるダイ穴径およびダイ長さが1.0mm、せん断応力が7.355×10Pa、昇温速度が3.0℃/minでのT1/2法温度が下記式(1)乃至(3)を満たし、且つ、該トナー粒子は前記ポリエステル樹脂粒子の外側に前記スチレン/アクリル樹脂微粒子から成る層Aと、前記アクリル樹脂微粒子から成る層Bを含み、前記樹脂微粒子層Aが層Bの外側にあるトナー。70℃≦ポリエステル樹脂≦100℃・・・(1)120℃≦スチレン/アクリル樹脂≦200℃・・・(2)120℃≦アクリル樹脂≦150℃・・・(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー並びにその製造方法及びこれを用いた画像形成方法及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市場では画像の高品質化のための小粒径化や、省エネルギーのための低温定着が要求され、特に、省エネルギーのために、画像形成装置を使用可能な状態にしてから画像形成が可能となるまでの待機時間(装置のウォームアップタイム)に要する電力量を可能な限り小さくするために、待機時間の短縮が強く要望されている。しかし、通常の混練粉砕法により得られるトナーは、技術的に小粒径化が限界に近づきつつあり、その形状は不定形で、粒径分布はブロードとなり、定着エネルギーが高いなど様々な問題点があった。
特に定着においては、粉砕法で作製された混練粉砕型のトナーは粉砕が離型剤(ワックス)の界面で割れるため表面に多く存在するので離型効果が出やすくなる一方、キャリアや感光体、更にブレードへの付着が起こりやすく、性能としては不満足なものであった。
【0003】
前記混練粉砕法による問題点を克服するために、重合法によるトナーの製造方法が提案されている。この重合法は、トナーの小粒径化が容易であり、粒度分布も、粉砕法によるトナーの粒度分布に比べてシャープな分布である上、ワックスの内包化も可能である。例えば乳化重合凝集法についての提案がなされている(特許文献1及び2参照)。また、前記乳化凝集法の抱える界面活性剤の使用における問題点を改良した技術についての提案もなされている(特許文献3及び4参照)。
【0004】
また、トナーの流動性改良、低温定着性改良、耐熱保存性改良、及びホットオフセット性改良を目的とし、トナーバインダーとしてウレタン変性されたポリエステルの伸長反応物からなる実用球形度が0.90〜1.00の乾式トナーが提案されている(特許文献5参照)。また、小粒径トナーとした場合の粉体流動性、転写性に優れるとともに、耐熱保存性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れた乾式トナーについての提案もなされている(特許文献6及び7参照)。これらの提案のトナーの製造方法は、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを有機溶媒及び水系媒体中でアミンと重付加反応させる高分子量化工程と、加温等による有機溶媒を除去する工程とを含むものであり、特に特許文献8には、有機溶媒の除去方法について詳細に述べられている。
【0005】
また、重合トナーの製造時における液面コントロールにより、シャープな粒度分布を得たり、効率的に残留重合性単量体を除去する方法が提案されている(特許文献9及び10参照)。
【0006】
しかし、重合トナーの製造方法においては、品質と共に、効率のよい生産性を達成することも重要である。特に、貯槽に溜めた乳化分散液から、加温下にて、有機溶媒を除去する工程を有する、重合トナーの製造方法においては、槽内の皮張り又は付着は大きな問題となり得る。この問題に対し、一般的に、槽内の洗浄に、高圧水や溶剤を用いたりして対処しているが、液面上部に発生する皮張り物又は付着物は固化して、除去するのが困難なものになっている。特に、連続式で乳化分散液を得るような工法では、バッチ式とは異なり、得られる乳化分散液が変動する場合が多く見受けられるため、熱特性を代表とする品質を安定に保ちながら、効率のよい連続生産は非常に難しい。また、乳化分散液を加温することにより、乳化分散液の安定性が低下し、凝集による粗粉の発生も確認されるため、効率のよい生産性の達成に対して、大きな障害となっている。
【0007】
したがって低温での離型性に優れ、フィルミングの発生が少なく、低温定着性と耐熱保存性を両立し、長期使用においても高画質が得られる、小粒径かつ粒度分布の狭いトナー、並びに該トナーを用いた現像剤、及び画像形成方法の提供が望まれており結着樹脂の1/2法による軟化点Taと、トナーの1/2法による軟化点Tbとの差(Tb−Ta)を制御することにより前期課題を克服する方法が提案されている(特許文献11参照)。
しかし、この提案に記載されたトナーの製造方法では、低温定着性への効果が不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、低温での離型性に優れ、フィルミングの発生が少なく、低温定着性と耐熱保存性とを両立し、長期使用においても高画質が得られる、小粒径かつ粒度分布の狭いトナー、並びに該トナーを用いた現像剤、及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明者等は、以下の発明を完成した。
(1)少なくともポリエステル樹脂とスチレン/アクリル樹脂とアクリル樹脂とを含むトナー粒子のトナーであって、前記樹脂のフローテスターにおけるダイ穴径およびダイ長さが1.0mm、せん断応力が7.355×10Pa、昇温速度が3.0℃/minでのT1/2法温度が下記式(1)乃至(3)を満たし、且つ、該トナー粒子は前記ポリエステル樹脂粒子の外側に前記スチレン/アクリル樹脂微粒子から成る層Aと、前記アクリル樹脂微粒子から成る層Bを含み、前記樹脂微粒子層Aが層Bの外側にあることを特徴とするトナー。
70℃ ≦ ポリエステル樹脂 ≦ 100℃ ・・・ (1)
120℃ ≦ スチレン/アクリル樹脂≦ 200℃ ・・・ (2)
120℃ ≦ アクリル樹脂≦ 150℃ ・・・ (3)
(2)「少なくとも結着樹脂及び/又はその前駆体を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してなるトナー材料の有機溶媒液を、水系媒体中で乳化乃至分散させてなるO/W型乳化乃至分散液から、前記有機溶媒を除去することによって作成されたトナー粒子のトナーであって、前記樹脂のフローテスターにおけるダイ穴径およびダイ長さが1.0mm、せん断応力が7.355×10Pa、昇温速度が3.0℃/minでのT1/2法温度が下記式(1)乃至(3)を満たし、且つ、該トナー粒子は前記ポリエステル樹脂粒子の外側にスチレン/アクリル樹脂微粒子から成る層Aと、アクリル樹脂微粒子から成る層Bを含み、前記樹脂微粒子層Aが層Bの外側にあることを特徴とする前記(1)項に記載のトナー。
70℃ ≦ ポリエステル樹脂 ≦ 100℃ ・・・ (1)
120℃ ≦ スチレン/アクリル樹脂≦ 200℃ ・・・ (2)
120℃ ≦ アクリル樹脂≦ 150℃ ・・・ (3)
(3)前記トナーのT1/2法温度が70℃以上100℃以下の範囲であることを特徴とする前記(1)項または(2)項に記載のトナー。
(4)前記スチレン/アクリル樹脂微粒子の分子量Mwが100,000〜800,000の範囲内であることを特徴とする前記(1)項乃至(3)項のいずれか一項に記載のトナー。
(5)前記アクリル樹脂微粒子の分子量Mwが20,000〜1,000,000の範囲内であることを特徴とする前記(1)項乃至(4)項のいずれか一項に記載のトナー。
(6)前記ポリエステル樹脂の分子量Mwが3,000〜50,000の範囲内であることを特徴とする前記(1)項乃至(5)項のいずれか一項に記載のトナー。
(7)前記スチレン/アクリル樹脂微粒子のTgが40〜100℃の範囲内であることを特徴とする前記(1)項乃至(6)項のいずれか一項に記載のトナー。
(8)前記アクリル樹脂微粒子のTgが40〜80℃の範囲内であることを特徴とする前記(1)項乃至(7)項のいずれか一項に記載のトナー。
(9)前記ポリエステル樹脂のTgが10〜80℃の範囲内であることを特徴とする前記(1)項乃至(8)項のいずれか一項に記載のトナー。
(10)前記スチレン/アクリル樹脂微粒子が、スチレン重合体、又はスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含む架橋樹脂又は未架橋樹脂の微粒子であること、及び/又は、前記アクリル樹脂微粒子が、アクリル酸エステル重合体若しくはメタクリル酸エステル重合体を含む架橋樹脂、又は未架橋樹脂の微粒子であること、を特徴とする前記(1)項乃至(9)項のいずれか一項に記載のトナー。
また、本発明は、その他に、以下の(11)〜(18)項に記載されるような「トナー」、「画像形成装置」、「画像形成方法」、「プロセスカートリッジ」及び「トナーの製造方法」をも好ましい態様として包含する。
(11)前記トナー材料は、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする前記(1)項1乃至(10)項のいずれか一項に記載のトナー。
(12)静電像担持体、この表面を帯電させる帯電手段、該静電像担持体上に静電潜像を形成する露光手段、前記形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像するための現像手段、前記静電像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体上に転写する一次転写手段、前記中間転写体上に転写されたトナー像をさらに記録材上に転写するための二次転写手段、前記記録材上に転写されたトナー像を記録材上に定着させるための定着熱及び圧力定着部材を含む定着手段、前記一次転写後の前記静電像担持体表面に付着している転写残トナーをクリーニングするための静電像担持体クリーニング手段、前記二次転写後の中間記録媒体表面に付着している転写残トナーをクリーニングするための中間記体クリーニング手段、を備え、前記現像手段で用いられる前記トナーが前記(1)項乃至(11)の
ずれか一項に記載のトナーであることを特徴とするフルカラー画像形成装置。
(13)電子写真感光体を帯電手段により帯電させる帯電工程と、前記帯電された電子写真感光体上に露光手段により静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を形成された電子写真感光体上にトナーを含む現像手段によりトナー像を形成する現像工程と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を一次転写手段により中間転写体上に転写する一次転写工程と、前記中間転写体上に転写されたトナー像を二次転写手段により記録材上に転写する二次転写工程と、前記記録材上に転写されたトナー像を熱及び圧力定着部材を含む定着手段により記録材上に定着させる定着工程と、前記一次転写手段によりトナー像を中間転写体上に転写した電子写真感光体の表面に付着している転写残トナーをクリーニング手段によりクリーニングするクリーニング工程とを備え、前記現像工程におけるトナーが前記(1)項乃至(11)のいずれか一項に記載のトナーであることを特徴とするフルカラー画像形成方法。
(14)前記二次転写工程において、トナー像の記録材への転写の線速度は100〜1000mm/secであり、二次転写手段のニップ部での転写時間は0.5〜60msecであることを特徴とする前記(13)項に記載のフルカラー画像形成方法。
(15)タンデム方式の電子写真画像形成プロセスを採用したことを特徴とする前記(13)項又は(14)項に記載のフルカラー画像形成方法。
(16)電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、前記帯電された電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーによりトナー像とする現像手段と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を中間転写体を介して又は介さずに記録材上に転写する転写手段と、前記記録材上に転写されたトナー像を熱及び圧力定着部材により記録材上に定着させる定着手段定着工程と、前記転写手段によりトナー像を中間転写体又は記録材上に転写した後の電子写真感光体表面に付着している転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段とを備えた画像形成装置における各手段のうち、少なくとも前記電子写真感光体、及び前記(1)項乃至(11)項のいずれか一項に記載のトナーを備えた現像手段を、一体に支持して画像形成装置本体に着脱自在としたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
(17)前記帯電手段、前記転写手段及び前記クリーニング手段から選ばれる少なくとも一つの手段をさらに含むことを特徴とする前記(16)項に記載のプロセスカートリッジ。
(18)有機溶媒を用いてトナー粒子を製造するトナーの製造方法であって、前記トナー母体粒子を、少なくとも結着樹脂及び又はその前駆体を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散して作成されたトナー材料の有機溶媒溶解又は分散液を作成する工程Aと、前記トナー材料の溶解又は分散液を水系媒体中に添加して乳化乃至分散させて作成された乳化乃至分散液を作成する工程Bと、前記乳化乃至分散液から有機溶媒を除去してトナー粒子を作成する工程Cとを含む製造工程によって前記トナー粒子を製造し、前記樹脂のフローテスターにおけるダイ穴径およびダイ長さが1.0mm、せん断応力が7.355×10Pa、昇温速度が3.0℃/minでのT1/2法温度が下記式(1)乃至(3)を満たし、且つ、該トナー粒子は前記ポリエステル樹脂粒子の外側にスチレン/アクリル樹脂微粒子から成る層Aと、アクリル樹脂微粒子から成る層Bを含み、前記樹脂微粒子層Aが層Bの外側にあることを特徴とする静電荷現像用トナーの製造方法。
70℃ ≦ ポリエステル樹脂 ≦ 100℃ ・・・ (1)
120℃ ≦ スチレン/アクリル樹脂≦ 200℃ ・・・ (2)
120℃ ≦ アクリル樹脂≦ 150℃ ・・・ (3)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速のフルカラー画像形成方法において、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂微粒子、スチレン/アクリル樹脂微粒子の3層構造により低温定着性と耐熱保存性に優れたトナーの製造方法、及び前記トナーを用いたフルカラー画像形成方法、プロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のトナーの構造を示す図である。
【図2】3層構造を有するトナーの断面写真である。
【図3】接触式のローラ式帯電装置の一例の概略構成図である。
【図4】接触式のブラシ式帯電装置の一例の概略構成図である。
【図5】現像器の一例の概略構成図である。
【図6】定着装置の一例の概略構成図である。
【図7】定着ベルトの層構成を示す図である。
【図8】本発明のプロセスかとリッジの一例の概略構成図である。
【図9】本発明の画像形成装置の一例の概略構成図である。
【図10】本発明の画像形成装置の他の例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を必要に応じて図面を参照にして説明する。なお、いわゆる当業者は上記に示した本発明の態様について適宜変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正は本発明に含まれるものであり、以下の説明はこの発明の好ましい実施形態における例であって、本発明を限定するものではない。
【0013】
本発明のトナーは、好適には例えば、少なくとも結着樹脂又は結着樹脂前駆体を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料の有機溶媒液を作成し、前記トナー材料の有機溶媒液を、平均粒子径が5〜50nmのアニオン性のスチレン/アクリル樹脂微粒子と好ましくはアニオン性界面活性剤とを含む水系媒体中に添加し乳化乃至分散させてO/W型乳化乃至分散液を作成し、前記乳化乃至分散液から有機溶媒を除去しトナー粒子を形成した後、該トナー粒子をイオン交換水で分散させて分散液を作成し、該分散液を攪拌下で加熱処理して得られるトナーである。そして、製造されたトナー粒子の重量平均粒径は1〜6μmであることが好ましい。
また、前記乳化乃至分散液を作成する工程において、水系媒体中に平均粒子径10〜500nmのアクリル樹脂微粒子を添加する。アクリル樹脂微粒子は、エマルションとして使用し、元素としてCとHとNとOを含んでいる。アクリル樹脂微粒子の添加は、アニオン性のスチレン/アクリル樹脂微粒子やアニオン性界面活性剤を添加する前又は後の水系媒体でもよいし、この水系媒体にさらにトナー材料の溶解又は分散液を添加した後、又はさらにこの水系媒体を攪拌等により乳化しながら若しくは乳化後でもよい。
【0014】
上記のようにして得られたトナーは、図1に示すように、着色剤及び結着樹脂を中心としたトナー材料を核としたトナー粒子本体の表面に、アクリル樹脂微粒子が付着し、その外側にスチレン/アクリル樹脂微粒子が付着している。このような3層構造をとる理由は、アクリル樹脂微粒子は耐熱性、スチレン/アクリル樹脂微粒子は乳化性・帯電性の役割を担っており、機能が異なるためである。なお、それぞれの樹脂粒子の酸価はスチレン/アクリル樹脂微粒子>ポリエステル樹脂粒子>アクリル樹脂微粒子であることが好ましい。
【0015】
通常、電子写真式の画像形成装置において、小粒径トナーを用いた場合には、トナー粒子と電子写真感光体、又はトナー粒子と中間転写体との非静電的付着力が増加するため、より転写効率が低下する。特に、高速機において小粒径トナーを使用した場合には、トナーの小粒径化により中間転写体との非静電的付着力が増加した上に、高速化に伴い転写のニップ部、特に二次転写のニップ部においてトナー粒子が転写電界を受ける時間が短くなるため、二次転写での転写効率の低下が顕著となることが知られている。しかし、本発明の製造方法で製造されたトナーにおいては、トナー粒子表面に大粒径の微粒子(アクリル樹脂微粒子)が付着していることと、この大粒径の微粒子がある程度の硬さを有することで、トナー粒子の非静電的付着力が低減され、高速機のように転写時間が短くなった場合においても、定着性を阻害することなく十分な転写効率を得ることができる。さらに、大粒径の微粒子が十分な硬さを有しているため、高速機のように経時での機械的ストレスの大きい場合においても、トナー粒子表面に付着した大粒径の微粒子がトナー粒子中に埋没することなく存在し続けることができるため、長期的にも十分な転写効率を維持することが可能である。同時にトナー粒子表面に付着させる外添剤の埋没も防止することができる。
【0016】
本製造方法によれば、前記トナー材料の有機溶媒液の水系媒体中での乳化前、もしくは乳化後にアクリル樹脂微粒子が添加される。このタイミングではトナー組成物の液滴に有機溶媒が存在しているためアクリル樹脂微粒子は液滴表面に付着した後に液滴表面からある程度進入し、有機溶媒が除去された後にトナー表面に付着固定化されるといった望ましい形態を実現することができる。その場合、アクリル樹脂微粒子とポリエステル樹脂粒子とのゼータポテンシャル差は、スチレン/アクリル樹脂微粒子とポリエステル樹脂粒子とのゼータポテンシャル差よりも大きいことが好ましい。
【0017】
アニオン性のスチレン/アクリル樹脂微粒子は、トナー粒子表面に付着して融着、融合し、比較的硬い表面を形成する。したがって付着固定化されたアクリル樹脂微粒子の機械的ストレスによる埋没や移動を防止する効果がある。また、スチレン/アクリル樹脂微粒子は、アニオン性を有するため、トナー材料を含む有機溶媒液滴に吸着し、液滴同士の著しい合一を抑える効果があり、トナーの粒度分布を制御するのに重要である。さらにトナーの負帯電性を与えることもできる。これらの効果を発揮するために、アニオン性のスチレン/アクリル樹脂微粒子は、アクリル樹脂微粒子より小さくし、平均粒子径が5〜50nmとするとよい。
【0018】
トナーの粒径は、本発明の目的を達成するために、重量平均粒径が1〜6μmとなるように制御されることが好ましい。特にトナーの重量平均粒径が2〜5μmであることがより好ましい。1μmよりも小さい場合には、一次転写及び二次転写においてトナーチリが発生しやすく、逆に6μmよりも大きい場合には、ドット再現性が不十分になり、ハーフトーン部分の粒状性も悪化して高精細な画像が得られなくなってしまう。
【0019】
トナー粒子の表面には、少なくとも一次平均粒径が10〜500nmの大微粒子(アクリル樹脂微粒子)が付着固体化されていることが好ましく、特に100〜400nmの大粒径微粒子が付着固体化されていることが好ましい。これによりスペーサ効果によりトナー粒子の非静電的付着力を低減することができるとともに、高速機のように経時での機械的ストレスの大きい場合においても微粒子がトナー粒子の表面に埋没することによる非静電的付着力の増加を抑制することが可能となり、長期に渡り十分な転写効率を維持することができる。特に中間転写方式での一次転写工程と二次転写工程と二度の転写工程を有す場合に本発明の製造方法で製造したトナーは非常に有効である。比較的高速の画像形成プロセス(転写線速300〜1000mm/sec、二次ニップ部での転写時間が0.5〜20msec)において特にその効果が大きく発揮できる。これよりも低速の線速や二次転写時間が短いプロセスでは本発明と表面にアクリル樹脂微粒子を配置しないトナーとの差は大きくはない。また、これ以上の高速機であると転写効率の低下は防ぎきれない傾向がある。
【0020】
アクリル樹脂微粒子の一次平均粒径が10nmよりも小さい場合には、スペーサ効果が十分に得られないためトナー粒子の非静電的付着力を低減することができず、さらに、高速機のように経時での機械的ストレスの大きい場合には、トナー粒子の表面にアクリル樹脂微粒子や外添剤が埋没しやすくなり、長期に渡り十分な転写効率を維持することができない恐れがある。また、アクリル樹脂微粒子の一次平均粒径が500nmよりも大きい場合には、トナーの流動性が悪くなり、均一転写性を阻害する場合がある。
【0021】
一般に、現像機に充填されたトナーは、主に現像機内部での機械的ストレスによってトナー粒子表面の樹脂微粒子はトナー粒子の内部に埋め込まれたりトナー粒子本体の表面の凹部に移動したりして、付着力の低減効果が失われる。また外添剤が同様のストレスにさらされることによってトナー粒子内部に埋没し、トナーの付着力が増大する。
しかし、本発明の製造方法によるトナーは、アクリル樹脂微粒子が比較的大きくトナー粒子本体に埋没しにくい。特に、アクリル樹脂微粒子がアクリル酸エステル重合体、又はメタクリル酸エステル重合体を含む架橋樹脂の微粒子であることが好ましい。このようなアクリル樹脂微粒子は、架橋されていて比較的硬いため、現像器内での機械的ストレスによってトナー粒子表面で変形することなく、スペーサ効果も保つため外添剤の埋没も防止し、上述の付着力維持にはさらに適している。
【0022】
近年、トナーバインダー用ポリエステルでは定着時の消費電力削減による環境負荷の低減などから、分子量を低くし溶融粘性を低下させたものが使用される傾向にある。しかしトナーの保存安定性の観点から結着樹脂及びトナーのT1/2法温度は130〜160℃である事例が多く見られる。これらの事例ではトナーの保存安定性は確保されるものの、トナーの溶融粘性を十分な低温定着性が発現されるレベルまで低下させることが困難である。
【0023】
本発明は少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナー材料から成るトナー粒子表面に2重の被覆層を有し三層構造を形成する静電荷像現像用トナーにおいて、再外殻の被覆層が平均粒子径5〜50nmの樹脂微粒子A、第2の被覆層が平均粒子径10〜500nmの樹脂微粒子Bから形成され、前記樹脂微粒子Bのガラス転移温度が結着樹脂主成分のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする静電荷像現像用トナーである。該結着樹脂のガラス転移温度を低下させることでトナー全体の溶融粘性を下げ低温定着性を発現させると共に、結着樹脂の外側に形成された2つの被覆層によりトナーの低温定着性を阻害することなく、保存安定性を担保できることを見出した。
該アクリル微粒子のT1/2法温度は120〜150℃であり、好ましくは125〜140℃である。T1/2法温度が120℃以下の場合では、トナーの保存温度帯での十分な耐熱保存性が得られず、トナー粒子同士の凝集が発生してしまうことがある。一方、150℃を越える場合、耐熱保存性が発現できるもののトナーの低温定着性を阻害する場合がある。
【0024】
前記アクリル樹脂の分子量Mwは20,000〜1,000,000であることが好ましく、より好ましくは20,000〜600,000である。Mwが20,000未満の場合では、トナーの保存温度帯での十分な耐熱保存性が得られず、トナー粒子同士の凝集が発生してしまうことがある。一方、Mwが1,000,000を越える場合、耐熱保存性が発現できるもののトナーの低温定着性を阻害する場合がある。
【0025】
前記結着樹脂のT1/2法温度は70℃以上100℃未満であり、好ましくは75〜95である。T1/2法温度が70℃未満ではトナーの保存温度帯での十分な耐熱保存性が得られず、トナー粒子同士の凝集が発生してしまう。100℃を超えると耐熱保存性が発現できるもののトナーの低温定着性を阻害する場合がある
【0026】
前記スチレン/アクリル樹脂微粒子の分子量Mwは、好ましくは100,000〜800,000の範囲内であり、より好ましくは100,000〜450,000である。前記スチレン/アクリル樹脂微粒子のT1/2は120〜200℃の範囲内であり、好ましくは130〜180℃である。
前記スチレン/アクリル樹脂微粒子の分子量Mwが800,000より大きい場合や前記スチレン/アクリル樹脂微粒子のT1/2が200℃より高い場合にはトナー表面が硬くなりすぎるため、加熱定着時にトナーが十分に溶融しないことから定着性が悪化する。
また、前記スチレン/アクリル樹脂微粒子の分子量Mwが100000未満の場合は有機溶媒や水系媒体中で膨潤しやすくなることから、トナー粒子表面に固定化する際に凝集体が形成され、スチレン/アクリル樹脂微粒子からなる最外殻の被覆層の形成が阻害されアクリル樹脂微粒子が機械的ストレスによる埋没や移動を防止する効果が十分に得られないことがある。前記スチレン/アクリル樹脂微粒子のT1/2が120℃より低い場合はトナーの保存温度域でトナー表面の樹脂微粒子Aが軟化しトナー同士の融着による凝集体は形成される恐れがある。
【0027】
結着樹脂は、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。結着樹脂はアクリル樹脂微粒子と非相溶であることが重要であり、ポリエステル系樹脂は、特にアクリル樹脂微粒子がアクリル酸エステル重合体、又はメタクリル酸エステル重合体を含む架橋樹脂の微粒子の場合ほとんど相溶性がない。乳化工程において、乳化前又は乳化後にアクリル樹脂微粒子が添加された時にトナー材料の液滴に有機溶媒が存在しているためアクリル樹脂微粒子は液滴表面に付着した後に溶解してしまう場合がある。トナーを構成する樹脂成分がポリエステル樹脂であり、アクリル樹脂微粒子がアクリル酸エステル重合体、又はメタクリル酸エステル重合体を含む架橋樹脂の微粒子である場合、樹脂同士の相溶性が悪いためアクリル樹脂微粒子はトナー材料の液滴と相溶せずに付着した状態で存在する。したがって、液滴表面からある程度進入し、有機溶媒が除去された後にトナー粒子表面に付着固定化されるといった望ましい形態を実現することができる。相溶か非相溶かは未変性な結着樹脂を有機溶媒に対して50%の重量比率で溶解させ、その溶液に各種溶液を加えたときに、二層に分離した場合は非相溶、分離しない場合は相溶であると目視で判断して行う。
【0028】
アクリル樹脂微粒子はアニオン性界面活性剤を含む水系媒体中で凝集体を生成する性質を有すことが好ましい。本発明の製造方法において、乳化工程で乳化前又は乳化後にアクリル樹脂微粒子が添加された時に、アクリル樹脂微粒子がトナー材料の液滴に付着せずに独立して安定に存在することは好ましくない。アニオン性界面活性剤を含む水系媒体中でアクリル樹脂微粒子が凝集体を作る性質を有すことによって、乳化時、もしくは乳化後に水相側に存在していた樹脂微粒子がトナー材料の液滴表面に移動し、容易にトナー材料の液滴表面に付着することができる。すなわち、アニオン性界面活性剤を含む水系媒体中では、アクリル樹脂微粒子が不安定で、通常であれば凝集してしまうところ、トナー材料の液滴があるとトナー材料の液滴との引力が強い場合異種粒子の複合体が形成される。
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセリールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0029】
得られた複合体はそのままでも強固な接着力を示すが、乳化後樹脂微粒子がトナー材料の液滴表面に移動し、トナー材料の液滴表面に付着した後に加熱工程を経ることによってより強固にトナー表面に固定化できる。固定化させる温度はトナーに用いた樹脂のガラス転移点よりも高い温度が好ましい。
【0030】
トナー材料は、結着樹脂前駆体として活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。トナー材料の液滴中に活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂が含まれることにより、得られるトナーの機械的強度が高まりアクリル樹脂微粒子や外添剤の埋没を抑制することができる。活性水素基含有化合物がカチオン性の極性を有す場合にはアクリル樹脂微粒子を静電的に引き寄せることもできる。またトナーの加熱定着時の流動性を調節でき定着温度幅を広げることもできる。
【0031】
アクリル樹脂微粒子の添加量は、トナー100質量%に対して0.5〜5質量%であることが好ましく、特に1〜4質量%であることが好ましい。添加される割合が0.5質量%よりも少ない場合には、スペーサ効果が十分に得られないためトナー粒子の非静電的付着力を低減することができず、5質量%よりも多い場合には、トナーの流動性が悪くなり、均一転写性を阻害したり、微粒子がトナーに充分固定化できずに離脱しやすくなり、キャリアや感光体などに付着し、感光体などを汚染してしまう恐れがある。
【0032】
トナーは、ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が1〜3GPa、特に1.2〜2.6GPa、かつマイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が40〜120N/mm、特に60〜110N/mm、であることが好ましい。
ナノインデンテーション法はミクロ的な硬さを測定するためトナー粒子最表面の硬さを表し、マイクロインデンテーション法はマクロ的な硬さを測定するためトナー全体の硬さを表している。したがって、ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値は、トナー表面に添加された微粒子の埋没しにくさを表す指標となる。
【0033】
ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が1GPaよりも小さいと、トナー表面に添加された微粒子が機械的ストレスを受けると埋没しやすい恐れがある。ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が3GPaよりも大きいと、トナーが機械的ストレスを受けてもトナー表面に添加された微粒子は埋没しにくいが、トナー表面が硬すぎるため定着においてトナーが十分に溶融できずに定着性が悪化する恐れがある。さらに、ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が1〜3GPaであると、トナー1粒子表面の粘着性が適度であるためか弾性が適度であるためかは定かではないが、大粒径微粒子が添加されていない場合でもトナー粒子の非静電的付着力が低減される傾向にある。この特性と大粒径微粒子によるスペーサ効果が相まって、トナー粒子の非静電的付着力をより低減することができる。なお、ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が1〜3GPa以外だと、大粒径微粒子が添加されていない場合のトナー粒子の非静電的付着力の低減の傾向は見られない。
【0034】
また、マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値は、トナーの定着での溶融しにくさを表す指標となる。マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が40N/mmよりも小さいと、トナー1粒子全体としては軟らかいため定着性は良好であるが、現像部での攪拌や転写部での転写圧等によりトナーが変形しやすくなり画像品質が乱れたり、トナー粒子中にWAXなどの離型剤が含有されている場合は、離型剤が析出してキャリアや感光体などにスペントし汚染してしまう恐れがある。マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が120N/mmよりも大きいと、トナー1粒子全体としては硬いためトナーが機械的ストレスを受けてもトナー表面に添加された微粒子は埋没しにくいが、トナー表面が硬すぎるため定着においてトナーが十分に溶融できずに定着性が悪化する恐れがある。
【0035】
このように、機械的ストレスによるトナー表面に添加されたアクリル微粒子や外添剤の埋没と、定着性の悪化とを抑制するためには、トナーはナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値の範囲と、マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値の範囲の双方を満たすように制御されることが好ましい。実際に双方の値の範囲を満たすためには、トナー粒子は最表面にアクリル樹脂微粒子によるスペーサー部分を設け、トナー粒子本体は比較的軟らかくして機能分離を達成させるような構造が好ましい。
【0036】
本発明の製造方法によるトナーのT1/2法温度は70℃以上100℃以下であり、好ましくは80℃以上90℃以下である。70℃未満の場合には、低温定着性には優れるが、保存性が悪化してしまう。逆に、100℃よりも高い場合には、保存性に優れるが、低温定着性が悪化してしまう。
【0037】
本発明の製造方法によるトナーの平均円形度は、0.950〜0.990であることが好ましく、0.950よりも低い場合には、現像時の画像均一性が悪化したり、電子写真感光体から中間転写体もしくは中間転写体から記録材へのトナー転写効率が低下し均一転写が得られなくなる。また、本発明の製造方法によるトナーは、水系媒体中で乳化処理をして作成されたものであり、特にカラートナーにおける小粒径化や、平均円形度が上記の範囲の形状を得るために効果的である。
【0038】
本発明の製造方法において製造したトナーにおける重量平均粒径(Dw)と個数平均粒径(Dn)との比(Dw/Dn)としては、例えば、1.30以下が好ましく、1.00〜1.30がより好ましい。重量平均粒径と個数平均粒径との比(Dw/Dn)が、1.00未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力の低下や、クリーニング性の悪化につながり易い。一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがある。また、Dw/Dnが1.30を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0039】
また、トナーの重量平均粒径と個数平均粒径との比(Dw/Dn)が、1.00〜1.30であると、保存安定性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れたトナーとなりやすい。特に、フルカラー複写機に使用した場合に画像の光沢性に優れる。
二成分現像剤では長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても良好で安定した現像性が得られ、一成分現像剤ではトナーの収支が行われてもトナーの粒子径の変動が少なくなるとともに、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等への部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期使用(攪拌)においても良好で安定した現像性が得られ、高画質の画像を得ることが可能となる。
【0040】
本発明の製造方法によるトナーのBET比表面積は、0.5m/gから4.0m/gであることが好ましく、特に0.5m/gから2.0m/gが好ましい。BET比表面積が0.5m/gよりも小さい場合には、トナー表面全体を密に覆う状態となり、前記スチレン/アクリル樹脂微粒子がトナー内部の結着樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られる。また、スチレン/アクリル樹脂微粒子がワックスの染み出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットの発生が見られる。BET比表面積が4.0m/gよりも大きい場合には、トナー表面上に残存する有機微粒子が凸部として大きく突出したり、粗状態の多重層としてスチレン/アクリル樹脂微粒子が残存し、やはりスチレン/アクリル樹脂微粒子がトナー内部の結着樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られる。また、スチレン/アクリル樹脂微粒子がワックスの染み出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットの発生が見られる。また、添加剤が浮出し、表面の凹凸により画質に影響が現れやすい。
【0041】
本発明によって製造されたトナーと共に用いるキャリアの粒径は、重量平均粒径が15〜40μmであることが好ましく、15μmよりも小さい場合には、転写工程においてキャリアも一緒に転写されてしまうキャリア付着が起こりやすくなり、逆に40μmよりも大きい場合には、キャリア付着は起りにくいものの、高画像濃度を得るためにトナー濃度を高くした場合、地汚れが発生しやすくなる恐れがある。また、潜像のドット径が小さい場合、ドット再現性のバラツキが大きくなり、ハイライト部の粒状性が悪くなる恐れもある。
【0042】
本発明のフルカラー画像形成方法は、潜像担持体(以下、典型例として電子写真感光体について記載する)を帯電手段により帯電させる帯電工程と、前記帯電された電子写真感光体上に露光手段により静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を形成された電子写真感光体上にトナーを含む現像手段によりトナー像を形成する現像工程と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を一次転写手段により中間転写体上に転写する一次転写工程と、前記中間転写体上に転写されたトナー像を二次転写手段により記録材上に転写する二次転写工程と、前記記録材上に転写されたトナー像を熱及び圧力定着部材を含む定着手段により記録材上に定着させる定着工程と、前記一次転写手段によりトナー像を中間転写体上に転写した電子写真感光体の表面に付着している転写残トナーをクリーニング手段によりクリーニングするクリーニング工程とを備えている。そして、現像工程におけるトナーが上述の本発明のトナーである。このフルカラー画像形成方法においては、二次転写工程におけるトナー像の記録材への転写の線速度、所謂印字速度は100〜1000mm/secであり、二次転写手段のニップ部での転写時間は0.5〜60msecであることが好ましい。
【0043】
さらに、本発明のフルカラー画像形成方法は、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、一次転写手段、及びクリーニング手段のセットを複数有するタンデム型であることが好ましい。電子写真感光体を複数個配備して、各々の回転時に1色ずつ現像するいわゆるタンデム型では、潜像形成工程と現像・転写工程とが各色毎に行なわれて各色のトナー像が形成されるため、単色の画像形成速度とフルカラーの画像形成速度との差が小さく、高速印字に対応できる利点を有している。しかし、各色のトナー像を別々の電子写真感光体に形成し、各色トナー層の積層(色重ね)を行なうことによりフルカラー画像を形成するため、各色のトナー粒子間での帯電性等が異なるなど、特性にばらつきがあると各色のトナー粒子による現像トナー量に差が生じ、色重ねによる二次色の色相の変化が大きくなり、色再現性が低下する。
【0044】
タンデム型による画像形成方法に使用されるトナーにおいては、各色のバランスを制御するための現像トナー量を安定化すること(各色のトナー粒子間でばらつきがないこと)、各色のトナー粒子間で電子写真感光体及び記録材に対する付着性が均一であることが必要である。この点に関しては、本発明のトナーは好適である。
【0045】
帯電手段は、少なくとも交番電圧を重畳した直流電圧を印加するのが好ましい。交番電圧を重畳した直流電圧を印加することにより、直流電圧のみを印加する場合に比べて電子写真感光体の表面電圧を所望の値に安定化させることができるため、より均一帯電させることが可能となる。さらに、帯電手段は、電子写真感光体に帯電部材を接触させ、帯電部材に電圧を印加することによって帯電を行なうのが好ましい。電子写真感光体に帯電部材を接触させ、帯電部材に電圧を印加して帯電を行なうことによって、特に交番電圧を重畳した直流電圧を印加することで得られる均一帯電性の効果をさらに向上させることが可能となる。
【0046】
定着手段は、磁性金属から構成されて電磁誘導により加熱される加熱ローラと、加熱ローラと平行に配置された定着ローラと、加熱ローラと定着ローラとに張り渡され、加熱ローラにより加熱されるとともにこれらのローラによって回転される無端帯状のトナー加熱媒体(加熱ベルト)と、加熱ベルトを介して定着ローラに圧接されるとともに、加熱ベルトに対して順方向に回転して定着ニップ部を形成する加圧ローラとを有することにより、定着ベルトの温度が短時間で上昇し、かつ安定した温度制御が可能となる。また、表面の粗い記録材を使用した場合にも、定着時にある程度転写紙の表面に応じた状態で定着ベルトが作用するため、十分な定着性が得られるようになる。
【0047】
定着手段は、オイルレスあるいはオイル微量塗布タイプであることが好ましい。これを達成するために、トナー粒子中に離型剤(WAX)を含有し、さらにそれがトナー粒子中に微分散しているものを定着することが好ましい。離型剤がトナー粒子中に微量分散しているトナーにより、定着時に離型剤が浸み出しやすく、オイルレス定着装置において、あるいは微量オイル塗布定着装置でオイル塗布効果が少なくなってきた場合においても、トナーのベルト側への転移を抑制することができる。離型剤がトナー粒子中に分散した状態で存在するためには、離型剤と結着樹脂とは相溶しないことが好ましい。また、離型剤がトナー粒子中に微分散するためには、例えばトナー製造時の混練の剪断力を利用する方法がある。離型剤の分散状態は、トナー粒子の薄膜切片をTEMで観察することにより判断できる。離型剤の分散径は小さい方が好ましいが、小さすぎると定着時の染み出しが不十分な場合がある。従って、倍率1万倍で離型剤が確認できれば、離型剤が分散した状態で存在していると判断する。1万倍で離型剤が確認できない大きさでは、微分散していたとしても、定着時の染み出しが不十分な場合がある。
【0048】
[トナーの特性測定方法]
<重量平均粒径(Dw)、体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)>
トナーの重量平均粒径(Dw)、体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Multisizer 3 Version3.51)にて解析を行なった。具体的にはガラス製100mlビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.5ml添加し、各トナー0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II本多電子社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記マルチサイザーIIIを用いて、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター製)を用いて測定を行なった。測定は装置が示す濃度が8±2%に成るように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0049】
[平均円形度]
トナーの平均円形度は、平均円形度SR=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長)×100%で定義される。フロー式粒子像分析装置(「FPIA−2100」;シスメックス社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10)を用いて解析を行なった。具体的には、ガラス製100mlビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.1〜0.5ml添加し、各トナー0.1〜0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(本多電子社製)で3分間分散処理した。前記分散液を前記FPIA−2100を用いて濃度を5000〜15000個/μlが得られるまでトナーの形状及び分布を測定した。本測定法は平均円形度の測定再現性の点から前記分散液濃度が5000〜15000個/μlにすることが重要である。前記分散液濃度を得るために前記分散液の条件、すなわち添加する界面活性剤量、トナー量を変更する必要がある。界面活性剤量は前述したトナー粒径の測定と同様にトナーの疎水性により必要量が異なり、多く添加すると泡によるノイズが発生し、少ないとトナーを十分にぬらすことができないため、分散が不十分となる。またトナー添加量は粒径のより異なり、小粒径の場合は少なく、また大粒径の場合は多くする必要があり、トナー粒径が3〜7μmの場合、トナー量を0.1〜0.5g添加することにより分散液濃度を5000〜15000個/μlにあわせることが可能となる。
【0050】
<BET比表面積>
トナーのBET比表面積は、自動比表面積/細孔分布測定装置TriStar3000(島津製作所製)を用いて測定した。トナー1gを専用セルに入れ、TriStar用脱ガス専用ユニット、バキュプレップ061(島津製作所製)を用いて、前記専用セル内の脱気処理を行った。脱気処理は室温下で行い、少なくとも100mtorr以下の減圧条件下で20時間行った。脱気処理を行った専用セルは、TriStar3000を用いて自動でBET比表面積を得ることが出来る。なお、吸着ガスとしてはチッソガスを用いて行った。
【0051】
<ナノインデンテーション法>
ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さは、Hysitron Inc.製のTribo Indenterを使用して測定する。詳細条件は、以下に示す通りである。
使用圧子:Berkovich(三角錐形)
最大押込み深さ:20nm
上記条件にて、トナー1粒子の表面から圧子を押込み、最大圧入時の圧痕の大きさから硬さH[GPa]を測定する。なお、実際の測定では、製品形態のトナー100粒子(1粒子については、測定箇所を変えてN=10にて測定し、平均値化。)について測定し、その平均値をナノインデンテーション法でのトナー1粒子の硬さとした。
【0052】
<マイクロインデンテーション法>
マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さは、(株)フィッシャー・インストルメンツのフィッシャースコープ H100(微小硬さ試験システム)を使用して測定する。詳細条件は、以下に示す通りである。
使用圧子:ビッカース圧子
最大押込み深さ:2μm
最大押込み荷重:9.8mN
クリープ時間:5sec
負荷(除荷)時間:30sec
上記条件にて、トナー1粒子の表面からビッカース圧子を押込み、マルテンス硬度[N/mm]を測定する。なお、実際の測定では、製品形態のトナー100粒子について測定し、その平均値をマイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さとした。
【0053】
[キャリアの特性測定方法]
<重量平均粒径>
キャリアの重量平均粒径Dwは、個数基準で測定された粒子の粒径分布(個数頻度と粒径との関係)に基づいて算出されたものである。この場合の重量平均粒径Dwは、式(4)で表わされる。
【0054】
Dw={1/Σ(nD)}×{Σ(nD)} ・・・ (4)
【0055】
式(4)中、Dは、各チャネルに存在する粒子の代表粒径(μm)を示し、nは、各チャネルに存在する粒子の総数を示す。なお、チャネルとは、粒径分布図における粒径範囲を等分に分割するための長さを示すもので、本発明においては、2μmを採用した。また、各チャネルに存在する粒子の代表粒径としては、各チャネルに保存する粒子の粒径の下限値を採用した。
【0056】
また、キャリア及びキャリアの芯材粒子における個数平均粒径Dpは、個数基準で測定された粒子の粒径分布に基づいて算出されたものである。この場合の個数平均粒径Dpは、式(5)で表わされる。
【0057】
Dp=(1/ΣN)×(ΣnD) ・・・ (5)
式(5)中、Nは、計測した全粒子数を示し、nは、各チャネルに存在する粒子の総数を示し、Dは、各チャネル(2μm)に保存する粒子の粒径の下限値を示す。
【0058】
本発明において、粒径分布を測定するための粒度分析計としては、マイクロトラック粒度分析計モデルHRA9320−X100(Honewell社製)を用いることができる。その測定条件は以下の通りである。
[1]粒径範囲:8〜100μm
[2]チャネル長さ(チャネル幅):2μm
[3]チャネル数:46
[4]屈折率:2.42
【0059】
以下、本発明のトナーの製造方法例について具体的に説明する。
なお、本発明は、ここに例示されるトナーの製造方法に限定されるものではない。
トナー粒子本体表面にアクリル樹脂微粒子が付着固定化し、その外側にスチレン/アクリル樹脂微粒子が付着固定化した構造を取るには、トナー材料を有機溶媒に溶解または分散し、このトナー前駆体の溶解または分散液をアニオン性界面活性剤とアニオン性の平均粒子径が5〜50nmの粒子径のスチレン/アクリル樹脂微粒子が含まれる水系媒体中で乳化乃至分散し、有機溶媒を除去した後に加熱処理を施してトナーを製造する際に、有機溶媒を除去前に水系媒体中へ平均粒子径が10〜500nmのアクリル樹脂微粒子を添加する。有機溶媒を除去しトナー粒子を形成した後、該トナー粒子を含む水を40〜60℃で加熱処理し、アクリル樹脂微粒子を付着固定化する。乳化ないし分散においては、必要に応じて、油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0060】
[本発明のトナー製造に用いる原料]
(スチレン/アクリル樹脂微粒子)
本発明で用いられるスチレン/アクリル樹脂微粒子用の樹脂としては、水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができる。スチレン/アクリル樹脂微粒子用のその余の樹脂成分としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細な球状の樹脂微粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されるのが好ましい。なお、ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0061】
スチレン/アクリル樹脂微粒子は、アニオン性であることが必要である。先に示したアニオン性界面活性剤とともに用いた際に凝集させないためである。スチレン/アクリル樹脂微粒子は、後に述べる製法でアニオン活性剤を用いたり、樹脂中にカルボン酸基、スルホン酸基などのアニオン性基を導入することによっても作成できる。粒子径としては一次粒子の平均粒子径として5〜50nmが乳化粒子の粒子径と粒子径分布を制御するのに重要であり、さらに好ましくは10〜25nmの粒子径である。なお、粒子径はSEM、TEM、光散乱法などによって測定できる。好ましくはレーザ散乱測定法による堀場製作所製LA−920によって、測定レンジにはいるように適切な濃度に希釈して測定すればよい。粒子径は体積平均径として求められる。
【0062】
スチレン/アクリル樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、スチレン/アクリル樹脂微粒子の水性分散液として得ることが好ましい。スチレン/アクリル樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、例えば、以下の方法が好適に挙げられる。
(1)ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、スチレン/アクリル樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法
(2)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加ないし縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、スチレン/アクリル樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法
【0063】
(3)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加ないし縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法
(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによってスチレン/アクリル樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤の存在下、水中に分散させる方法
【0064】
(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することによりスチレン/アクリル樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下、水中に分散させる方法
(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することによりスチレン/アクリル樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂微粒子を得た後、スチレン/アクリル樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法
【0065】
(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法
(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法
【0066】
〔アクリル樹脂微粒子〕
アクリル樹脂微粒子はスチレン/アクリル樹脂微粒子と同様な方法で作成できる。粒子径としては一次粒子の平均粒子径として10〜500nmが乳化粒子の粒子径と粒子径分布を制御するのに重要であり、さらに好ましくは10〜200nmの粒子径である。なお、アクリル樹脂微粒子の粒子径と粒子径分布はスチレン/アクリル樹脂微粒子と同様な方法で測定できる。先にあげたアニオン性界面活性剤溶液と混合されたときに不安定で凝集する性質を持つものの方が、トナー材料の液滴表面に付着しやすくなる。そのためには先に述べた製法でノニオン界面活性剤や両性界面活性剤、カチオン界面活性剤を用いたり、樹脂中にアミン基、アンモニウム塩基などのカチオン性基を導入することによっても作成できる。
【0067】
カチオン界面活性剤としてはアミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。
また、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが好ましい。
【0068】
カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子株式会社製);フロラードFC−135(住友3M株式会社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業株式会社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ株式会社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ株式会社製);フタージェントF−300(ネオス株式会社製)、等が挙げられる。
【0069】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0070】
アクリル樹脂微粒子用の樹脂成分としてはトナーを構成する樹脂と非相溶性であることが好ましく、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体が好ましく挙げられ、また併用できるその余の副成分樹脂として、スチレン−その他の樹脂との共重合体としては、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0071】
このアクリル樹脂微粒子は、結着樹脂と非相溶性を示す白色エマルションであり、架橋密度の違いにより有機溶媒に対する膨潤性の程度が異なる。膨潤性の制御方法として、架橋密度や構成モノマーがあるが、構成モノマーはアクリル樹脂微粒子の膨潤性以外の物性をコントロールするために変更する場合があるため、架橋密度で制御するのが好ましい。
【0072】
乳化液滴に付着した際に溶解せず、表面に固定化されるためには、アクリル樹脂微粒子は架橋重合体であることが好ましく、少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体と共重合させたものが好ましい。少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」;三洋化成工業製)、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物、1,6−ヘキサンジオールアクリレートなどのジアクリレート化合物が挙げられる。
【0073】
(アクリル樹脂微粒子の効果)
アクリル樹脂微粒子が有機溶媒に対する膨潤性を有していれば、安定した転写率及び目的の定着上下限温度が期待できるのみならず、0.950〜0.975の円形度を有し、且つ、BET比表面積0.2〜4.0m/g程度の滑らかな表面性状を有するクリーニング性に優れた異形化トナーが作成できる。しかし、膨潤性の程度が大きすぎると、円形度が低くなり過ぎる傾向があり、また、膨潤性の程度が小さすぎると、BET比表面積が大きく転写率の劣るトナーが作成される傾向がある。
トナーの比表面積は0.2m/g未満であるとクリーニング不良が起こり、4.0m/gを超えると安定性不足となる。
【0074】
(アニオン性界面活性剤)
本発明のトナーの製造で用いられるアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が好適に挙げられる。フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0075】
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)、等が挙げられる。
【0076】
(結着樹脂)
本発明のトナーの製造方法に用いるトナー材料に含まれる結着樹脂としては、特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等、公知の結着樹脂を用いることができる。
【0077】
この中でも本発明のトナーの製造方法に用いる結着樹脂としては、定着時にシャープメルトし、画像表面を平滑化できる点で、低分子量化しても十分な可とう性を有しているポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂にさらに他の樹脂を組み合せて用いても良い。
本発明で用いるポリエステル系樹脂とは、下記一般式(1)で表される1種若しくは2種以上のポリオールと、下記一般式(2)で表される1種若しくは2種以上のポリカルボン酸とをポリエステル化したものである。
【0078】
A−(OH)m ・・・一般式(1)
[式中、Aは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。mは2〜4の整数を表す。]
【0079】
B−(COOH)n ・・・一般式(2)
[式中、Bは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。nは2〜4の整数を表す。]
【0080】
一般式(1)で表される具体的なポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールA酸化エチレン付加物、ビスフェノールA酸化プロピレン付加物、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA酸化エチレン付加物、水素化ビスフェノールA酸化プロピレン付加物等が挙げられる。
【0081】
一般式(2)で表される具体的なポリカルボン酸としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(トリメリット酸)等が挙げられる。
【0082】
本発明の実施例では結着樹脂成分としては未変性の結着樹脂、結着樹脂前駆体(プレポリマー)を用いており、最終的には結着樹脂前駆体が反応したものと未変性の結着樹脂との混合物が結着樹脂となるが、アクリル樹脂粒子が非相溶であるのは未変性の結着樹脂に対してである。
【0083】
(活性水素基含有化合物)
本発明のトナー材料中に活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂が含まれることにより、得られるトナーの機械的強度が高まり、アクリル樹脂微粒子や外添剤の埋没を抑制することが出来る。活性水素基含有化合物がカチオン性の極性を有す場合には、アクリル樹脂微粒子を静電的に引き寄せることもできる。また、トナーの加熱定着時の流動性を調節でき定着温度幅を広げることも出来る。なお、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂は、結着樹脂前駆体であるとも言える。
【0084】
活性水素基含有化合物は、水系媒体中で、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体が伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。活性水素基含有化合物としては、活性水素基を有していれば特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体がイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)である場合には、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)と伸長反応、架橋反応等の反応により高分子量化可能な点で、アミン類(B)が好適である。
【0085】
活性水素基としては、活性水素基を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
アミン類(B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)、などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン(B1)、ジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)との混合物、が特に好ましい。
【0087】
ジアミン(B1)としては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、等が挙げられる。該芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。該脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。該脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0088】
3価以上のポリアミン(B2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。また、アミノアルコール(B3)としては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン、等が挙げられる。また、アミノメルカプタン(B4)としては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン、等が挙げられる。また、アミノ酸(B5)としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、等が挙げられる。
【0089】
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、例えば、B1からB5のいずれかのアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物、等が挙げられる。
【0090】
活性水素基含有化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いる。反応停止剤を用いると、接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる点で好ましい。該反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はこれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)、などを用いることができる。
【0091】
アミン類(B)と、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)との混合比率としては、イソシアネート基含有プレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3〜3/1であることが好ましく、1/2〜2/1であることがより好ましく、1/1.5〜1.5/1であることが特に好ましい。何故なら、混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3/1を超えると、ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
【0092】
(活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)
活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」)としては、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば特に制限はなく、公知の樹脂等の中から適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体樹脂、等を用いることができる。
これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
なお、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
プレポリマーにおける活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、特に制限はなく、公知の置換基等の中から適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基、等が挙げられる。これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、イソシアネート基が特に好ましい。プレポリマーの中でも、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない場合でも良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)が特に好ましい。
【0094】
ウレア結合生成基としては、例えば、イソシアネート基、等が挙げられる。ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)における該ウレア結合生成基が該イソシアネート基である場合、該ポリエステル樹脂(RMPE)としては、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)等が特に好適である。イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物であり、かつ活性水素基含有ポリエステル樹脂をポリイソシアネート(PIC)と反応させてなるもの、等が挙げられる。ポリオール(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(DIO)、3価以上のポリオール(TO)、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジオール(DIO)単独、又はジオール(DIO)と少量の3価以上のポリオール(TO)との混合物、が好ましい。
【0095】
ジオール(DIO)としては、例えば、アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
アルキレングリコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。アルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。また、脂環式ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。また、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、脂環式ジオールに対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物としたもの等が挙げられる。また、ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。また、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物としたもの等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2〜12のアルキレングリコールとの混合物が特に好ましい。
【0096】
3価以上のポリオール(TO)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、3価以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。また、3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。また、3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノール体(本州化学工業株式会社製のトリスフェノールPAなど)、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。また、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
【0097】
ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物におけるジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合質量比(DIO:TO)としては、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0098】
ポリカルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸(DIC)単独、又はジカルボン酸(DIC)と少量の3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物が好ましい。
【0099】
ジカルボン酸(DIC)としては、例えば、アルキレンジカルボン酸、アルケニレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、等が挙げられる。また、アルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。また、アルケニレンジカルボン酸としては、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20のものが好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0100】
3価以上のポリカルボン酸(TC)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、芳香族ポリカルボン酸、等が挙げられる。また、芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20のものが好ましく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0101】
ポリカルボン酸(PC)としては、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、及び、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、から選択されるいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステル物を用いることもできる。低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0102】
ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物におけるジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合質量比(DIC:TC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0103】
ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを重縮合反応させる際の混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリオール(PO)における水酸基[OH]と、ポリカルボン酸(PC)におけるカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、通常、2/1〜1/1であるのが好ましく、1.5/1〜1/1であるのがより好ましく、1.3/1〜1.02/1であるのが特に好ましい。
【0104】
ポリオール(PO)のイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。何故なら、含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがあるからである。
【0105】
ポリイソシアネート(PIC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらのフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの、などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。また、脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアヌレート類としては、例えば、トリス−イソシアナトアルキル−イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキル−イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種単独でも使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0106】
ポリイソシアネート(PIC)と、活性水素基含有ポリエステル樹脂(例えば水酸基含有ポリエステル樹脂)とを反応させる際の混合比率としては、ポリイソシアネート(PIC)におけるイソシアネート基[NCO]と水酸基含有ポリエステル樹脂における水酸基[OH]との混合当量比([NCO]/[OH])が、通常、5/1〜1/1であるのが好ましく、4/1〜1.2/1でるのがより好ましく、3/1〜1.5/1であるのが特に好ましい。何故なら、イソシアネート基[NCO]が、5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、1未満であると、耐オフセット性が悪化することがあるからである。
【0107】
ポリイソシアネート(PIC)のイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。何故なら、含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化するからである。
【0108】
イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)の1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4がより好ましい。何故なら、イソシアネート基の平均数が1未満であると、ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化するからである。
【0109】
活性水素基含有化合物と反応可能な重合体の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、3,000〜40,000が好ましく、4,000〜30,000がより好ましい。何故なら、重量平均分子量(Mw)が、3,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、40,000を超えると、低温定着性が悪化することがあるからである。
【0110】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布の測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度でカラム溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料における分子量の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.又は東洋ソーダ工業社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、及び4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。なお、検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いることができる。
【0111】
(その他の成分)
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、離型剤、帯電制御剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。
【0112】
(着色剤)
本発明に使用するトナー用の着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトポン、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
着色剤のトナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。着色剤の含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0114】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0115】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等が挙げられる。前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレンービニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレンーアクリロニトリルーインデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、等が挙げられる。
【0116】
マスターバッチは、マスターバッチ用樹脂と、着色剤とを高せん断力をかけて混合又は混練して製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶媒成分を除去する方法である。前記混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。着色剤は2樹脂に対する親和性の差を利用することで、第一の樹脂相、第二の樹脂相いずれにも任意に含有させることができる。着色剤はトナー表面に存在した際にトナーの帯電性能を悪化させることが良く知られている。そのため内層に存在する第一の樹脂相に選択的に着色剤を含有させることで、トナーの帯電性能(環境安定性、電荷保持能、帯電量等)を向上させることができる。
【0117】
(離型剤)
離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50〜120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好である。
【0118】
離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類、等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜120℃が好ましく、60〜90℃がより好ましい。融点が、50℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、120℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、10〜100cpsがより好ましい。溶融粘度が、5cps未満であると、離型性が低下することがあり、1,000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0120】
離型剤は2樹脂に対する親和性の差を利用することで、トナー粒子本体中の樹脂(第一の樹脂相)、アクリル樹脂微粒子の樹脂(第二の樹脂相)、スチレン/アクリル樹脂微粒子の樹脂(第三の樹脂相)のいずれにも任意に含有させることが出来る。トナー外層に存在する第二および第三の樹脂相に選択的に含有させることで、離型剤の染み出しが定着時の短い加熱時間でも充分生じるため、充分な離型性を得ることができる。また、離型剤を内層に存在する第一の樹脂相に選択的に含有させることで、感光体、キャリア等の他の部材への離型剤のスペントを抑制させることができる。本発明では、離型剤の配置を比較的自由に設計することがあり、各々の画像形成プロセスに応じて任意の配置を取ることが出来る。
【0121】
(帯電制御剤)
帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0122】
帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、等が挙げられる。
【0123】
帯電制御剤はトナー粒子本体中の樹脂とアクリル樹脂微粒子、又はスチレン/アクリルの樹脂に対する親和性の差を利用することで、トナー粒子本体中の樹脂相、アクリル樹脂微粒子の樹脂相、スチレン/アクリル樹脂微粒子の樹脂相、いずれにも任意に含有させることが出来る。トナー表面に存在するアクリル樹脂微粒子、又はスチレン/アクリル樹脂微粒子の樹脂相に選択的に含有させることで、より少量の帯電制御剤によって停電に対する効果を得やすくなる。また、帯電制御剤を内層に存在するトナー粒子本体中の樹脂相に選択的に含有させることで、感光体、キャリア等の他の部材への帯電制御剤のスペントを抑制させることができる。本発明のトナーの製造方法では、帯電制御剤の配置を比較的自由に設計することがあり、各々の画像形成プロセスに応じて任意の配置を取ることが出来る。
【0124】
帯電制御剤のトナーに対する含有量としては、前記樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。帯電制御剤の含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0125】
(無機微粒子)
無機微粒子は、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として使用する。この無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0126】
本発明で得られた着色粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための無機微粒子としては、80〜500nmの一次平均粒径を有する大粒径の無機微粒子の他にも、小粒径の無機微粒子を好ましく用いることができる。特に、疎水性シリカおよびまたは疎水性酸化チタンが好ましい。この無機微粒子の一次平均粒径は、5〜50nmであることが好ましく、特に10〜30nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、大粒径のもの及び小粒径のものそれぞれがトナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい。
【0127】
(流動性向上剤)
流動性向上剤とは、表面処理を行って疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止する剤のことであり、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。シリカ、酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0128】
(クリーニング性向上剤)
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加される剤のことであり、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好適である。
【0129】
(磁性材料)
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等を用いることができる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0130】
[本発明のトナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法においては、結着樹脂又は結着樹脂前駆体と着色剤とを主成分としたトナー材料を有機溶媒中に溶解又は分散させて形成した溶解物又は分散物を、スチレン/アクリル樹脂微粒子及びアクリル樹脂微粒子を含む水系媒体中で乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を調製し、造粒し、乳化乃至分散したトナー材料を含むトナー前駆体にアクリル樹脂微粒子を付着させた後に有機溶媒を除去し、トナー粒子を形成した後に該トナー粒子を含む水を加熱処理することにより所望のトナーを製造する。好ましくは、活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを含むトナー材料の溶解ないし分散液を、水系媒体中に乳化ないし分散させ、水系媒体中で活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させた接着性基材を含むトナー前駆体粒子を生成させて、アクリル樹脂微粒子を付着させることにより所望のトナーを製造する。
【0131】
(トナー材料の溶解ないし分散液)
トナー材料の溶解ないし分散液は、トナー材料を溶媒に溶解ないし分散させて調製する。
トナー材料としては、トナーを形成可能である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結着樹脂もしくは活性水素基含有化合物、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)と着色剤を含み、さらに必要に応じて、離型剤、帯電制御剤等の上記その他の成分を含んでいてもよい。トナー材料の溶解ないし分散液は、トナー材料を有機溶媒に溶解ないし分散させて調製することが好ましい。なお、有機溶媒は、トナーの造粒時ないし造粒後に除去することが好ましい。
【0132】
(有機溶媒)
トナー材料を溶解ないし分散する有機溶媒としては、トナー材料を溶解ないし分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーの造粒時ないし造粒後の除去の容易性の点で沸点が150℃未満のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を用いることができる。また、エステル系溶剤が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対し40〜300質量部が好ましく、60〜140質量部がより好ましく、80〜120質量部がさらに好ましい。なお、トナー材料の溶解ないし分散液の調製は、有機溶媒中に、活性水素基含有化合物、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、未変性ポリエステル樹脂、離型剤、着色剤、帯電制御剤、等のトナー材料を、溶解ないし分散させることにより行うことができる。また、トナー材料の中で、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、後述する水系媒体の調製において、水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体に添加する際に、溶解ないし分散液と共に水系媒体に添加してもよい。
【0133】
(水系媒体)
水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶剤、これらの混合物、などを用いることができるが、これらの中でも、水が特に好ましい。水と混和可能な溶剤としては、水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、などを用いることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。また、低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0134】
水系媒体の調製は、例えば、アニオン性界面活性剤の存在下でスチレン/アクリル樹脂微粒子を水系媒体に分散させることにより行う。アニオン性界面活性剤とスチレン/アクリル樹脂微粒子の水系媒体中への添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、それぞれ0.5〜10質量%が好ましい。アクリル樹脂微粒子は、その後水系媒体に加えられる。アクリル樹脂微粒子がアニオン性界面活性剤と凝集性を有す場合は、水系媒体を乳化前に高速せん断分散機にて分散させておくことが好ましい。
【0135】
(乳化ないし分散)
トナー材料の溶解ないし分散液の水系媒体中への乳化ないし分散は、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体中で攪拌しながら分散させることが好ましい。分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の分散機などを用いて行うことができる。分散機としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機などが挙げられる。このトナーの製造方法においては、乳化ないし分散の際、活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と、を伸長反応ないし架橋反応させると、接着性基材が生成する。アクリル樹脂微粒子は乳化中または乳化後に水系媒体に加えても良い。高速せん断分散機にて分散させながら行うか乳化後低速攪拌に切り替えて添加するか適宜トナーへのアクリル樹脂微粒子の付着性、固定化状況を見ながら行われる。
【0136】
(接着性基材)
接着性基材は、紙等の記録材に対し接着性を示し、活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを、水系媒体中で反応させてなる接着性ポリマーを含むことが好ましい。接着性基材の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000以上が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましく、7,000〜500,000が特に好ましい。何故なら、重量平均分子量が、3,000未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
【0137】
(スチレン/アクリル樹脂)
トナー表面の最外層を形成するスチレン/アクリル樹脂は、トナー母体よりも高いT1/2法温度を有する必要があり、120〜200℃である。120℃より前記T1/2法温度が低い場合、耐熱保存性が低下してしまう。他方、前記T1/2法温度200℃よりも高い場合、低温定着性を低下させてしまう。
【0138】
(アクリル樹脂)
スチレン/アクリル樹脂層の内側に存在するアクリル樹脂は、トナー母体よりも高いT1/2法温度を有する必要があり、120〜150℃である。120℃より前記T1/2法温度が低い場合、耐熱保存性が低下してしまう。他方、前記T1/2法温度150℃よりも高い場合、低温定着性を低下させてしまう。
【0139】
原料として用いる結着樹脂のT1/2法温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、70℃以上100℃未満が望ましく、75〜95℃がより好ましい。なぜなら、結着樹脂のT1/2はトナーの低温定着性に大きく影響し、低T1/2であるものほど、低温定着性に優れるためである。本実施形態の電子写真用トナーでは、トナー母体の表面層にシェル構造を有するため、従来の結着樹脂のT1/2と比較して低いT1/2の結着樹脂を使用した場合においても良好な保存性を示す。
【0140】
ここで、T1/2法温度は高架式フローテスターCFT500型(島津製作所製)を用いて測定したフローカーブから算出した。フローカーブからは前記T1/2法温度以外にも軟化温度(Ts)、流出開始温度(Tfb)を得ることができる。
《測定条件》
荷重:10kg/cm、昇温速度:3.0℃/min、ダイ口径:0.50mm、ダイ長さ:10.0mm
【0141】
ここで、本発明におけるガラス転移点(Tg)とは、具体的に次のような手順で決定される。測定装置として島津製作所製TA−60WS、及びDSC−60を用い、次に示す測定条件で測定した。
測定条件
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50ml/min)
温度条件
開始温度:0℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
保持時間:なし
降温温度:10℃/min
終了温度:0℃
保持時間:なし
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
【0142】
測定した結果は前記島津製作所製データ解析ソフト(TA−60、バージョン1.52)を用いて解析を行った。解析方法は2度目の昇温のDSC微分曲線であるDrDSC曲線のもっとも低温側に最大ピークを示す点を中心として±5℃の範囲を指定し、解析ソフトのピーク解析機能を用いてピーク温度を求める。次にDSC曲線で前記ピーク温度+5℃、及び−5℃の範囲で解析ソフトのピーク解析機能をもちいてDSC曲線の最大吸熱温度を求める。ここで示された温度がトナーのTgに相当する。
【0143】
トナーに含有される結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル系樹脂、などが特に好適である。ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ウレア変性ポリエステル系樹脂と未変性ポリエステル樹脂、などが特に好適なものとして挙げられる。ウレア変性ポリエステル系樹脂は、活性水素基含有化合物としてのアミン類(B)と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としてのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)とを水系媒体中で反応させて得られる。ウレア変性ポリエステル系樹脂は、ウレア結合のほかに、ウレタン結合を含んでいてもよい。この場合、該ウレア結合と該ウレタン結合との含有モル比(ウレア結合/ウレタン結合)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が特に好ましい。何故なら、ウレア結合が10未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
【0144】
ウレア変性ポリエステル樹脂と未変性ポリエステル樹脂の好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。
(1)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
(2)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
【0145】
(3)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(4)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
【0146】
(5)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(6)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
【0147】
(7)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(8)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
【0148】
(9)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(10)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
【0149】
ウレア変性ポリエステル樹脂は、例えば、(1)活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含むトナー材料の溶解ないし分散液を、活性水素基含有化合物(例えば、アミン類(B))と共に、水系媒体中に乳化ないし分散させ、油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよく、(2)トナー材料の溶解ないし分散液を、予め活性水素基含有化合物を添加した水系媒体中に乳化ないし分散させ、油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよい。あるいは(3)トナー材料の溶解ないし分散液を、水系媒体中に添加混合させた後で、活性水素基含有化合物を添加し、油滴を形成し、該水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよい。なお、(3)の場合、生成するトナー表面に優先的に変性ポリエステル樹脂が生成され、該トナー粒子に濃度勾配を設けることが可能となる。
【0150】
乳化ないし分散により、接着性基材を生成させるための反応条件としては、特に制限はなく、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と活性水素基含有化合物との組み合わせに応じて適宜選択することができる。なお、反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
【0151】
水系媒体中において、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む分散体を安定に形成する方法としては、例えば、水系媒体中に、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))、着色剤、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂等のトナー材料を有機溶媒に溶解ないし分散させて調製したトナー材料の溶解ないし分散液を添加し、せん断力により分散させる方法、等が挙げられる。
【0152】
乳化ないし分散において、水系媒体の使用量としては、トナー材料100質量部に対し、50〜2,000質量部が好ましく、100〜1,000質量部がより好ましい。何故なら、使用量が50質量部未満であると、トナー材料の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなるからである。
水系媒体には先に説明したアニオン性界面活性剤、スチレン/アクリル樹脂微粒子の他に以下の無機化合物分散剤や高分子系保護コロイドを併用することができる。難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、等が挙げられる。
【0153】
高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、等が挙げられる。酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
【0154】
ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。また、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。また、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。
【0155】
クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。また、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。
【0156】
ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。また、セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0157】
リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能な分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することが可能となる。
【0158】
(有機溶媒の除去)
乳化ないし分散により得られた乳化スラリーから、有機溶媒を除去する。有機溶媒の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法、等が挙げられる。有機溶媒の除去が行われるとトナー粒子が形成される。
【0159】
(洗浄)
有機溶媒を除去しトナー粒子を形成した後、形成されたトナー粒子に対しイオン交換水で洗浄を行い、所望の伝導度を有する分散液を作成する。
【0160】
(加熱処理)
前記分散液を加熱処理する。加熱処理は、(1)静止状態で加熱処理する方法、(2)攪拌下で加熱処理する方法、等が挙げられ、加熱処理が行われると表面が平滑なトナー粒子が形成される。また、加熱処理はトナー粒子がイオン交換水で分散されている場合は、洗浄前に実施しても洗浄後に実施しても良い。
【0161】
(乾燥)
形成されたトナー粒子に対し乾燥等を行い、さらにその後、所望により分級等を行う。
該分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行う。なお、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
【0162】
こうして得られたトナー粒子を、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の粒子と共に混合したり、さらに機械的衝撃力を印加したりすることにより、トナー粒子の表面から離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック株式会社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所株式会社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢、等が挙げられる。
【0163】
[フルカラー画像形成方法、画像形成装置]
本発明のフルカラー画像形成方法は、電子写真感光体を帯電手段により帯電させる帯電工程と、前記帯電された電子写真感光体上に露光手段により静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を形成された電子写真感光体上にトナーを含む現像手段によりトナー像を形成する現像工程と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を一次転写手段により中間転写体上に転写する一次転写工程と、前記中間転写体上に転写されたトナー像を二次転写手段により記録材上に転写する二次転写工程と、前記記録材上に転写されたトナー像を熱及び圧力定着部材を含む定着手段により記録材上に定着させる定着工程と、前記一次転写手段によりトナー像を中間転写体上に転写した電子写真感光体の表面に付着している転写残トナーをクリーニング手段によりクリーニングするクリーニング工程とを備えている。そして、現像工程において使用するトナーが、上述の本発明のトナーである。本発明のフルカラー画像形成方法は、二次転写工程において、トナー像の記録材への転写の線速度は100〜1000mm/secであり、二次転写手段のニップ部での転写時間は0.5〜60msecとすることが好ましい。また、本発明のフルカラー画像形成方法は、タンデム方式の電子写真画像形成プロセスを採用することが好ましい。
【0164】
(帯電工程、帯電手段)
本発明の画像形成方法において使用される帯電手段(装置)としては、例えば図3及び図4に示した接触式の帯電装置を用いることができる。
【0165】
<ローラ式帯電装置>
図3に接触式帯電装置の一種であるローラ式帯電装置(500)の一例の概略構成を示した。被帯電体である像担持体としての感光体(505)は矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。この感光体(505)に接触させた帯電部材である帯電ローラ(501)は芯金(502)とこの芯金(502)の外周に同心一体にローラ上に形成した導電ゴム層(503)を基本構成とし、芯金の両端を不図示の軸受け部材などで回転自由に保持させるとともに、不図示の加圧手段によって感光ドラムに所定の加圧力で押圧させており、本図の場合はこの帯電ローラ(501)は感光体(505)の回転駆動に従動して回転する。帯電ローラ(501)は、直径9mmの芯金上に100,000Ω・cm程度の中抵抗の導電ゴム層(503)を被膜して直径16mmに形成されている。帯電ローラ(501)の芯金(502)と図示の電源(504)とは電気的に接続されており、電源(504)により帯電ローラ(501)に対して所定のバイアスが印加される。これにより感光体(505)の周面が所定の極性、電位に一様に帯電処理される。
【0166】
<ファーブラシ式帯電装置>
本発明で使われる帯電装置の形状としてはローラ式帯電装置の他にも、磁気ブラシ式帯電装置、ファーブラシ式帯電装置など、どのような形態をとってもよく、電子写真装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。磁気ブラシ式帯電装置を用いる場合、磁気ブラシは例えばZn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。また、ファーブラシ式帯電装置を用いる場合、例えばファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属、および金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電装置とする。
【0167】
図4に接触式のブラシ式帯電装置(510)の一例の概略構成を示した。被帯電体としての像担持体としての感光体(515)は矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。この感光体(515)に対して、ファーブラシによって構成されるファーブラシローラ(511)が、ブラシ部(513)の弾性に抗して所定の押圧力をもって所定のニップ幅で接触させてある。
【0168】
本例における接触式帯電装置としてのファーブラシローラ(511)は、電極を兼ねる直径6mmの金属製の芯金(512)に、ブラシ部(513)としてユニチカ(株)製の導電性レーヨン繊維REC−Bをパイル地にしたテープをスパイラル状に巻き付けて、外径14mm、長手方向長さ250mmのロールブラシとしたものである。ブラシ部(513)のブラシは300デニール/50フィラメント、1平方ミリメートル当たり155本の密度である。このロールブラシを内径が12mmのパイプ内に一方向に回転させながらさし込み、ブラシと、パイプが同心となるように設定し、高温多湿雰囲気中に放置してクセ付けで斜毛させた。
【0169】
ファーブラシローラ(511)の抵抗値は印加電圧100Vにおいて1×10Ωである。この抵抗値は、金属製の直径φ30mmのドラムにファーブラシローラをニップ幅3mmで当接させ、100Vの電圧を印加したときに流れる電流から換算した。このブラシ式帯電装置(510)の抵抗値は、被帯電体である感光体(515)上にピンホール等の低耐圧欠陥部が生じた場合にもこの部分に過大なリーク電流が流れ込んで帯電ニップ部が帯電不良になる画像不良を防止するために10Ω以上必要であり、感光体(515)表面に十分に電荷を注入させるために10Ω以下である必要がある。
【0170】
ブラシの材質としては、ユニチカ(株)製のREC−B以外にも、REC−C、REC−M1、REC−M10、さらに東レ(株)製のSA−7、日本蚕毛(株)製のサンダーロン、カネボウ製のベルトロン、クラレ(株)のクラカーボ、レーヨンにカーボンを分散したもの、三菱レーヨン(株)製のローバル等が考えられる。ブラシは一本が3〜10デニールで、10〜100フィラメント/束、80〜600本/mmの密度が好ましい。毛足は1〜10mmが好ましい。
【0171】
このファーブラシローラ(511)は感光体(515)の回転方向と逆方向(カウンター)に所定の周速度(表面の速度)をもって回転駆動され、感光体面に対して速度差を持って接触する。そしてこのブラシローラ(511)に電源(514)から所定の帯電電圧が印加されることで、回転感光体面が所定の極性・電位に一様に接触帯電処理される。
本例では該ファーブラシローラ(511)による感光体(515)の接触帯電は直接注入帯電が支配的となって行なわれ、回転感光体表面はファーブラシローラ(511)に対する印加帯電電圧とほぼ等しい電位に帯電される。
本発明で使われる帯電部材の形状としてはファーブラシローラ(511)の他にも、帯電ローラ、ファーブラシなど、どのような形態をとってもよく、電子写真装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。帯電ローラを用いる場合、芯金上に100000Ω・cm程度の中抵抗ゴム層を被膜して用いるのが一般的である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは例えばZn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。
【0172】
本例における接触帯電部材としての磁気ブラシとしては、平均粒径:25μmのZn−Cuフェライト粒子と、平均粒径10μmのZn−Cuフェライト粒子を、重量比1:0.05で混合して、それぞれの平均粒径の位置にピークを有する、平均粒径25μmのフェライト粒子を、中抵抗樹脂層でコートした磁性粒子を用いた。接触帯電部材は、上述で作成された被覆磁性粒子、および、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成され、上記被覆磁性粒子をスリーブ上に、厚さ1mmでコートして、感光体との間に幅約5mmの帯電ニップを形成した。また、該磁性粒子保持スリーブと感光体との間隙は、約500μmとした。さらに、マグネットロールは、スリーブ表面が、感光体表面の周速に対して、その2倍の速さで逆方向に摺擦するように、回転され、感光体と磁気ブラシとが均一に接触するようにした。
【0173】
(現像工程、現像手段)
本発明において感光体の潜像を現像するに際しては、交互電界を印加することが好ましい。図5に示した現像器(600)において、現像時、現像スリーブ(601)には、電源(602)により現像バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した振動バイアス電圧が印加される。背景部電位と画像部電位は、上記振動バイアス電位の最大値と最小値の間に位置している。これによって現像部(603)に向きが交互に変化する交互電界が形成される。この交互電界中で現像剤のトナーとキャリアが激しく振動し、トナー(605)が現像スリーブ(601)およびキャリアへの静電的拘束力を振り切って感光体(604)に飛翔し、感光体の潜像に対応して付着する。なお、トナー(605)は、上述の本発明の製造方法で製造されたトナーである。
【0174】
振動バイアス電圧の最大値と最小値の差(ピーク間電圧)は、0.5〜5kVが好ましく、周波数は1〜10kHzが好ましい。振動バイアス電圧の波形は、矩形波、サイン波、三角波等が使用できる。振動バイアスの直流電圧成分は、上記したように背景部電位と画像部電位の間の値であるが、画像部電位よりも背景部電位に近い値である方が、背景部電位領域へのかぶりトナーの付着を防止する上で好ましい。
【0175】
振動バイアス電圧の波形が矩形波の場合、デューティ比を50%以下とすることが望ましい。ここでデューティ比とは、振動バイアスの1周期中でトナーが感光体に向かおうとする時間の割合である。このようにすることにより、トナーが感光体に向かおうとするピーク値とバイアスの時間平均値との差を大きくすることができるので、トナーの運動がさらに活発化し、トナーが潜像面の電位分布に忠実に付着してざらつき感や解像力を向上させることができる。またトナーとは逆極性の電荷を有するキャリアが感光体に向かおうとするピーク値とバイアスの時間平均値との差を小さくすることができるので、キャリアの運動を沈静化し、潜像の背景部にキャリアが付着する確率を大幅に低減することができる。
【0176】
(定着装置)
本発明の画像形成方法において使用される定着装置としては、例えば図6に示した定着装置を用いることができる。図6に示す定着装置は、誘導加熱手段(760)の電磁誘導により加熱される加熱ローラ(710)と、加熱ローラ(710)と平行に配置された定着ローラ(720)(対向回転体)と、加熱ローラ(710)と定着ローラ(720)とに張り渡され、加熱ローラ(710)により加熱されるとともに少なくともこれらの何れかのローラの回転により矢印A方向に回転する無端帯状の定着ベルト(耐熱性ベルト、トナー加熱媒体)(730)と、定着ベルト(730)を介して定着ローラ(720)に圧接されるとともに定着ベルト(730)に対して順方向に回転する加圧ローラ(740)(加圧回転体)とから構成されている。
【0177】
加熱ローラ(710)は例えば鉄、コバルト、ニッケルまたはこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材からなり、外径を例えば20〜40mm、肉厚を例えば0.3〜1.0mmとして、低熱容量で昇温の早い構成となっている。
定着ローラ(720)(対向回転体)は、例えばステンレススチール等の金属製の芯金(721)と、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状または発泡状にして芯金(721)を被覆した弾性部材(722)とからなる。そして、加圧ローラ(740)からの押圧力でこの加圧ローラ(740)と定着ローラ(720)との間に所定幅の接触部を形成するために外形を20〜40mm程度として加熱ローラ(710)より大きくしている。弾性部材(722)は、その肉厚を4〜6mm程度としている。この構成により、加熱ローラ(710)の熱容量は定着ローラ(720)の熱容量より小さくなるので、加熱ローラ(710)が急激に加熱されてウォームアップ時間が短縮される。
【0178】
加熱ローラ(710)と定着ローラ(720)とに張り渡された定着ベルト(730)は、誘導加熱手段(760)により加熱される加熱ローラ(710)との接触部位(W1)で加熱される。そして、加熱ローラ(710)と定着ローラ(720)の回転によって定着ベルト(730)の内面が連続的に加熱され、結果としてベルト全体に渡って加熱される。
【0179】
図7に定着ベルト(730)の層構成を示す。ベルト(730)の構成は、内層から表層に向かって下記4層であり、以下のようにすることができる。
・基体(731):ポリイミド(PI)樹脂などの樹脂層
・発熱層(732):Ni,Ag,SUS等の導電材料層
・中間層(733):均一定着のための弾性層
・離型層(734):離型効果とオイルレス化のための弗素樹脂材料等の樹脂層
【0180】
離型層(734)の厚さとしては、10μmから300μm程度が望ましく、特に200μm程度が望ましい。このようにすれば、図6に示すような定着装置(700)において、記録材(770)上に形成されたトナー像(T)を定着ベルト(730)の表層部が十分に包み込むため、トナー像(T)を均一に加熱溶融することが可能になる。離型層(734)の厚さ、即ち表面離型層は経時耐磨耗性を確保するためには最低10μmは必要である。また、離型層(734)の厚さが300μmよりも大きい場合には、定着ベルト(730)の熱容量が大きくなってウォームアップにかかる時間が長くなる。さらに、トナー像定着工程において定着ベルト(730)の表面温度が低下しにくくなって、定着部出口における融解したトナーの凝集効果が得られず、定着ベルト(730)の離型性が低下してトナー像(T)のトナーが定着ベルト(730)に付着し、いわゆるホットオフセットが発生する。なお、定着ベルト(730)の基体として、上記金属からなる発熱層(732)としてもよいが、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂などの耐熱性を有する樹脂層を用いてもよい。
【0181】
加圧ローラ(740)は、たとえば銅またはアルミ等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金(741)と、この芯金(741)の表面に設けられた耐熱性およびトナー離型性の高い弾性部材(742)とから構成されている。芯金(741)には上記金属以外にSUSを使用しても良い。加圧ローラ(740)は定着ベルト(730)を介して定着ローラ(720)を押圧して定着ニップ部(N)を形成しているが、本実施の形態では、加圧ローラ(740)の硬度を定着ローラ(720)に比べて硬くすることによって、加圧ローラ(740)が定着ローラ(720)(及び定着ベルト(730))へ食い込む形となり、この食い込みにより、記録材(770)は加圧ローラ(740)表面の円周形状に沿うため、記録材(770)が定着ベルト(730)表面から離れやすくなる効果を持たせている。この加圧ローラ(740)の外径は定着ローラ(720)と同じ20〜40mm程度であるが、肉圧は0.5〜2.0mm程度で定着ローラ(720)より薄く構成されている。
【0182】
電磁誘導により加熱ローラ(710)を加熱する誘導加熱手段(760)は、図6に示すように、磁界発生手段である励磁コイル(761)と、この励磁コイル(761)が巻き回されたコイルガイド板(762)とを有している。コイルガイド板(762)は加熱ローラ(710)の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、励磁コイル(761)は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板(762)に沿って加熱ローラ(710)の軸方向に交互に巻き付けたものである。なお、励磁コイル(761)は、発振回路が周波数可変の駆動電源(図示せず)に接続されている。励磁コイル(761)の外側には、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア(763)が、励磁コイルコア支持部材(764)に固定されて励磁コイル(761)に近接配置されている。
【0183】
[プロセスカートリッジ]
本発明のプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、前記帯電された電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーによりトナー像とする現像手段と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を中間転写体を介して又は介さずに記録材上に転写する転写手段と、前記記録材上に転写されたトナー像を熱及び圧力定着部材により記録材上に定着させる定着手段と、前記転写手段によりトナー像を中間転写体又は記録材上に転写した後の電子写真感光体表面に付着している転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段とを備えた画像形成装置における各手段のうち、少なくとも電子写真感光体、及び現像手段を含む上記手段を一体に支持して画像形成装置本体に着脱自在としたものである。そして、現像手段には、上述の本発明の製造方法によって製造したトナーを備えている。現像手段及び帯電手段としては、上述の現像装置及び帯電装置が好適に使用できる。
【0184】
本発明のプロセスカートリッジの例を図8に示す。図8に示したプロセスカートリッジ(800)は、感光体(801)、帯電手段(802)、現像手段(803)、クリーニング手段(806)を備えている。このプロセスカートリッジ(800)の動作を説明すると、感光体(801)が所定の周速度で回転駆動される。感光体(801)は回転過程において、帯電手段(802)によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の不図示の像露光手段からの画像露光光を受け、こうして感光体(801)の周面に静電潜像が順次形成され、形成された静電潜像は、次いで現像手段(802)によりトナー像化され、現像されたトナー像は、給紙部から感光体(801)と不図示の転写手段との間に感光体(801)の回転と同期されて給送された記録材に、転写手段により順次転写されていく。像転写を受けた記録材は感光体面から分離されて不図示の像定着手段へ導入されて像定着され、複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体(801)の表面は、クリーニング手段(806)によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更除電された後、繰り返し画像形成に使用される。
【0185】
(フルカラー画像形成方法、画像形成装置例)
本発明のフルカラー画像形成方法において使用されるフルカラー画像形成装置としては、例えば図9、図10に示したタンデム方式の画像形成装置(100)を用いることができる。
図9において、画像形成装置(100)は電子写真方式によるカラー画像形成を行なうための画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)、画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)、給紙部(140)から主に構成されている。画像信号を元に、画像処理部(図示せず)で画像処理を行ない、画像形成用の黒(Bk),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色信号に変換し、画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)に送信する。画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)は、例えば、レーザ光源、回転多面鏡等の偏向器、走査結像光学系及びミラー群(いずれも図示せず)からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)に各色信号に応じた画像書込を行なう。
【0186】
画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)は、黒,シアン,マゼンタ,イエロー用の各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)を備え、これらの各色用の感光体(210Bk,210C,210M,210Y)には通常OPC感光体が用いられる。各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)の周囲には、帯電装置(215Bk,215C,215M,215Y)、上記画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)からのレーザ光の露光部、各色用の現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)、1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)、クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)、除電装置(図示せず)等が配設されている。なお、上記現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)には、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。また、中間転写ベルト(220)が各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)と1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)との間に介在し、この中間転写ベルト(220)に各感光体から各色のトナー像が順次重ね合わせて転写され、各感光体上のトナー像を担持する。
【0187】
場合によっては、この中間転写ベルト(220)の外側で、最終色の1次転写位置通過後で2次転写位置通過前の位置に転写前帯電手段としてのプレ転写チャージャが配設されるのが好ましい。このプレ転写チャージャは、上記1次転写部で感光体(210)に転写された中間転写ベルト(220)上のトナー像を記録材としての転写紙に転写する前に、トナー像をトナー像と同極性に均一に帯電するものである。
【0188】
各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)から転写された中間転写ベルト(220)上のトナー像は、ハーフトーン部及びベタ部を含んでいたりトナーの重ね合せ量が異なる部分を含んでいたりするため、帯電量がばらついている場合がある。また、中間転写ベルト移動方向における1次転写部の隣接下流側の空隙に発生する剥離放電により、1次転写後の中間転写ベルト(220)上のトナー像内に帯電量のばらつきが発生する場合もある。このような同一トナー像内の帯電量のばらつきは中間転写ベルト(220)上のトナー像を転写紙に転写する2次転写部における転写余裕度を低下させてしまう。そこで、プレ転写チャージャで転写紙へ転写する前のトナー像をトナー像と同極性に均一に帯電することにより、同一トナー像内の帯電量のばらつきを解消し、2次転写部における転写余裕度を向上させている。
【0189】
以上、この画像形成方法によれば、各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)から転写した中間転写ベルト(220)上のトナー像を前記プレ転写チャージャで均一に帯電することにより、中間転写ベルト(220)上のトナー像内に帯電量のばらつきがあっても、2次転写部における転写特性を、中間転写ベルト(220)上のトナー像の各部に渡ってほぼ一定にすることができる。従って、転写紙へ転写する時の転写余裕度の低下を抑え、トナー像を安定して転写できる。
【0190】
なお、この画像形成方法において、プレ転写チャージャで帯電される帯電量は、帯電対象物である中間転写ベルト(220)の移動速度に依存して変化する。例えば、中間転写ベルト(220)の移動速度が遅ければ、中間転写ベルト(220)上のトナー像の同一部分がプレ転写チャージャによる帯電領域を通過する時間が長くなるので、帯電量が大きくなる。逆に、中間転写ベルト(220)の移動速度が速いと、中間転写ベルト(220)上のトナー像の帯電量が小さくなる。従って、中間転写ベルト(220)上のトナー像がプレ転写チャージャによる帯電位置を通過している途中に中間転写ベルト(220)の移動速度が変化するような場合には、その中間転写ベルト(220)の移動速度に応じて、トナー像に対する帯電量が途中で変化しないようにプレ転写チャージャを制御することが望ましい。
【0191】
1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)の間に導電性ローラ(241),(242),(243)が設けられている。そして、転写紙は給紙部(140)から給紙された後、レジストローラ対(160)を介して転写ベルト(180)に担持され、中間転写ベルト(220)と転写ベルト(180)が接触するところで2次転写ローラ(170)により中間転写ベルト(220)上のトナー像が転写紙に転写され、カラー画像形成が行なわれる。
【0192】
そして、画像形成後の転写紙は2次転写ベルト(180)で定着装置(150)に搬送され、画像が定着されてカラー画像が得られる。転写されずに残った中間転写ベルト(220)上のトナーは、図示しない中間転写ベルトクリーニング装置によってベルトから除去される。
【0193】
転写紙への転写前の中間転写ベルト(220)上のトナー極性は、現像時と同じマイナス極性であるため、2次転写ローラ(170)にはプラスの転写バイアス電圧が印加され、トナーは転写紙上に転写される。この部分でのニップ圧が転写性に影響し、定着性に大きく影響する。また、転写されずに残った中間転写ベルト(220)上のトナーは、転写紙と中間転写ベルト(220)とが離れる瞬間にプラス極性側に放電帯電され、0〜プラス側に帯電される。なお、転写紙のジャム時や非画像域に形成されたトナー像は、2次転写の影響を受けないため、もちろんマイナス極性のままである。
【0194】
感光体層の厚みを30μmとし、光学系のビームスポット径を50×60μm、光量を0.47mWとしている。感光体(黒)(210Bk)の帯電(露光側)電位V0を−700V、露光後電位VLを−120Vとして現像バイアス電圧を−470Vすなわち現像ポテンシャル350Vとして現像工程が行なわれるものである。感光体(黒)(210Bk)上に形成されたトナー(黒)の顕像はその後、転写(中間転写ベルト及び転写紙)、定着工程を経て画像として完成される。転写は最初、1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)から中間転写ベルト(220)へ全色転写された後、更に別の2次転写ローラ(170)へのバイアス印加により転写紙へ転写される。
【0195】
次に、感光体クリーニング装置について詳細に説明する。図9において、各現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)と各クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)とは、各々トナー移送管(250Bk,250C,250M,250Y)で接続されている(図9中の破線)。そして、各トナー移送管(250Bk,250C,250M,250Y)の内部には、スクリュー(図示せず)が入っており、各クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)で回収されたトナーが、各現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)へ移送されるようになっている。
【0196】
従来の4つの感光体ドラムとベルト搬送との組合せによる直接転写方式では、感光体と転写紙が当接することにより紙粉が付着しトナーを回収すると紙粉が含有しているので、画像形成時にトナー抜け等の画像劣化をきたし使用することができなかった。更に、従来の一つの感光体ドラムと中間転写とを組合せたシステムでは、中間転写体の採用で転写紙転写時の感光体への紙粉付着はなくなったが、感光体への残トナーのリサイクルを行おうした場合、混色したトナーを分離することは実用上不可能である。また、混色トナーを黒トナーとして使用する提案があるが、全色混合しても黒にならず、プリントモードにより色が変化するため1つの感光体の構成ではトナーリサイクルは不可能であった。
【0197】
これに対して、このフルカラー画像形成装置では、中間転写ベルト(220)を使用するので紙粉の混入が少なく、かつ、紙転写時の中間転写ベルト(220)への紙粉の付着も防止される。各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)が独立した色のトナーを使用するので各感光体クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)を接離する必要もなく、確実にトナーのみを回収することができる。
【0198】
上記中間転写ベルト(220)上に残ったプラス帯電されたトナーは、マイナス電圧が印加された導電性ファーブラシ(262)でクリーニングされる。導電性ファーブラシ(262)への電圧印加方法は、導電性ファーブラシ(261)と極性が異なるだけで全く同一である。転写されずに残ったトナーも2つの導電性ファーブラシ(261),(262)でほとんどクリーニングされる。ここで、導電性ファーブラシ(262)でクリーニングされずに残ったトナー、紙粉、タルク等は、導電性ファーブラシ(262)のマイナス電圧により、マイナス帯電される。次の黒色の1次転写は、プラス電圧による転写であり、マイナス帯電したトナー等は中間転写ベルト(220)側に引き寄せられるため、感光体(黒)(210Bk)側への移行は防止できる。
【0199】
次に、この画像形成装置に使用される中間転写ベルト(220)について説明する。中間転写ベルトは前述のとおり、単層の樹脂層であることが好ましいが、必要に応じて、弾性層や、表層を保有しても良い。
【0200】
上記樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0201】
また、上記弾性層を構成する弾性材料(弾性材ゴム、エラストマー)としては、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0202】
また、上記表層の材料は特に制限は無いが、中間転写ベルト表面へのトナーの付着力を小さくして2次転写性を高めるものが要求される。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上を使用し表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、例えばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体、粒子を1種類あるいは2種類以上または粒径を異ならしたものを分散させ使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行なうことで表面にフッ素リッチな層を形成させ表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
【0203】
上記樹脂層や弾性層には、抵抗値調節用導電剤が添加される。この抵抗値調節用導電剤は特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫,酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。上記導電剤に限定されるものではないことは当然である。
【0204】
図10は、本発明の画像形成方法において使用される画像形成装置の他の例を示すもので、タンデム型間接転写方式の電子写真式の画像形成装置を備えた複写装置(100)である。
図10中、(110)は複写装置本体、(200)はそれを載せる給紙テーブル、(300)は複写装置本体(110)上に取り付けるスキャナ、(400)はさらにその上に取り付ける原稿自動搬送装置(ADF)である。複写装置本体(110)には、中央に、無端ベルト状の中間転写体(10)を設ける。
【0205】
そして、図10に示すとおり、この例では3つの支持ローラ(14)、(15)、(16)に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能とする。この図示例では、3つのなかで第2の支持ローラ(15)の左に、画像転写後に中間転写体(10)上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置(17)を設ける。また、3つのなかで第1の支持ローラ(14)と第2の支持ローラ(15)間に張り渡した中間転写体(10)上には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段(18)を横に並べて配置してタンデム画像形成装置(120)を構成する。
【0206】
このタンデム画像形成装置(120)の上には、図10に示すように、さらに露光装置(21)を設ける。一方、中間転写体(10)を挟んでタンデム画像形成装置(120)と反対の側には、2次転写装置(22)を備える。2次転写装置(22)は、図示例では、2つのローラ(23)間に、無端ベルトである2次転写ベルト(24)を掛け渡して構成し、中間転写体(10)を介して第3の支持ローラ(16)に押し当てて配置し、中間転写体(10)上の画像をシートに転写する。2次転写装置(22)の横には、シート上の転写画像を定着する定着装置(25)を設ける。定着装置(25)は、無端ベルトである定着ベルト(26)に加圧ローラ(27)を押し当てて構成する。上述した2次転写装置(22)には、画像転写後のシートをこの定着装置(25)へと搬送するシート搬送機能も備えてなる。もちろん、2次転写装置(22)として、転写ローラや非接触のチャージャを配置してもよく、そのような場合はこのシート搬送機能を併せて備えることは難しくなる。
なお、図示例では、このような2次転写装置(22)および定着装置(25)の下に、上述したタンデム画像形成装置(120)と平行に、シートの両面に画像を記録すべくシートを反転するシート反転装置(28)を備える。
【0207】
さて、いまこのカラー電子写真装置を用いてコピーをとるときは、原稿自動搬送装置(400)の原稿台(130)上に原稿をセットする。または、原稿自動搬送装置(400)を開いてスキャナ(300)のコンタクトガラス(32)上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置(400)を閉じてそれで押さえる。
【0208】
そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置(400)に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス(32)上へと移動して後、他方コンタクトガラス(32)上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナ(300)を駆動し、第1走行体(33)および第2走行体(34)を走行する。そして、第1走行体(33)で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体(34)に向け、第2走行体(34)のミラーで反射して結像レンズ(35)を通して読取りセンサ(36)に入れ、原稿内容を読み取る。
【0209】
また、不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ(14)、(15)、(16)の1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体(10)を回転搬送する。同時に、個々の画像形成手段(18)でその感光体(40)を回転して各感光体(40)上にそれぞれ、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体(10)の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体(10)上に合成カラー画像を形成する。
【0210】
一方、不図示のスタートスイッチを押すと、給紙テーブル(200)の給紙ローラ(142)の1つを選択回転し、ペーパーバンク(143)に多段に備える給紙カセット(144)の1つからシートを繰り出し、分離ローラ(145)で1枚ずつ分離して給紙路(146)に入れ、搬送ローラ(147)で搬送して複写機本体(100)内の給紙路(148)に導き、レジストローラ(49)に突き当てて止める。
【0211】
または、給紙ローラ(50)を回転して手差しトレイ(51)上のシートを繰り出し、分離ローラ(58)で1枚ずつ分離して手差し給紙路(53)に入れ、同じくレジストローラ(49)に突き当てて止める。
【0212】
そして、中間転写体(10)上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ(49)を回転し、中間転写体(10)と2次転写装置(22)との間にシートを送り込み、2次転写装置(22)で転写してシート上にカラー画像を記録する。
【0213】
画像転写後のシートは、2次転写装置(22)で搬送して定着装置(25)へと送り込み、定着装置(25)で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、切換爪(55)で切り換えて排出ローラ(56)で排出し、排紙トレイ(57)上にスタックする。または、切換爪(55)で切り換えてシート反転装置(28)に入れ、そこで反転して再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録して後、排出ローラ(56)で排紙トレイ(57)上に排出する。
【0214】
一方、画像転写後の中間転写体(10)は、中間転写体クリーニング装置(17)で、画像転写後に中間転写体(10)上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成装置(120)による再度の画像形成に備える。ここで、レジストローラ(49)は一般的には接地されて使用されることが多いが、シートの紙粉除去のためにバイアスを印加することも可能である。
【実施例】
【0215】
以下、本発明を実施例及び比較例にて更に詳細に説明する。なお、本発明は、ここに例示される実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は、特に記載がなければ質量部を表わす。
【0216】
<酸価の測定>
JIS K0070−1992に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行った。
試料調製:ポリエステル樹脂0.5gをトルエン120mLに添加して室温(23℃)で約1時間撹拌して溶解した。更にエタノール30mLを添加して試料溶液とした。
測定は、上記記載の装置にて計算することができるが、具体的には次のように計算した。
予め、標定されたN/10苛性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算式で酸価を求めた。
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料質量(Nは、N/10KOHのファクター)
【0217】
<重量平均分子量の測定>
測定装置GPC−8020(東ソー株式会社製)を用い、カラムにはTSK−GEL SUPER HZ2000、TSK−GEL SUPER HZ2500、TSK−GEL SUPER HZ3000を使用した。
測定は以下の方法で行った。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分0.35mLの流速で流し、試料濃度として0.05質量%〜0.6質量%に調製したポリエステル樹脂のテトラヒドロフラン(THF)試料溶液を10μL〜200μL注入して測定した。ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mw、個数平均分子量Mn、ピークトップ分子量の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては1×10、8.5×10、1.6×10、2.83×10、4.6×10、6.7×10、1.11×10、1.98×10、2.78×10、4.5×10のものを用いる。
検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0218】
[トナーの製造]
評価に用いたトナーの具体的な作成例について説明する。本発明で用いるトナーは、これらの例に限定されるものではない。
【0219】
(合成例1;ポリエステル樹脂C1の合成)
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物66.0質量部、プロピレングリコール2.3質量部、無水トリメリット酸2.4質量部、及びジブチルスズオキシド0.2質量部を投入し、常圧下、170℃で1時間反応させた。次に、アジピン酸31.5質量部を投入し常圧下、230℃で4時間反応させた後に10mmHg〜15mmHgの減圧下、5時間反応させ、ポリエステル樹脂C1を得た。得られたポリエステル樹脂C1のT1/2法温度が92.1℃であった。
【0220】
(合成例2;ポリエステル樹脂C2の合成)
合成例1において、下記表1に示すように、ポリエステル樹脂材料の投入量を調整した以外は、合成例1と同様にして、ポリエステル樹脂C2を合成した。
得られたポリエステル樹脂C2について、ポリエステル樹脂C1と同様にして、T1/2法温度について測定した。結果を表2に示す。
【0221】
(合成例3;ポリエステル樹脂C3の合成)
合成例1において、下記表1に示すように、ポリエステル樹脂材料の投入量を調整した以外は、合成例1と同様にして、ポリエステル樹脂C3を合成した。
得られたポリエステル樹脂C3について、ポリエステル樹脂C1と同様にして、T1/2法温度について測定した。結果を表2に示す。
【0222】
(合成例4;ポリエステル樹脂C4の合成)
合成例1において、下記表1に示すように、ポリエステル樹脂材料の投入量を調整した以外は、合成例1と同様にして、ポリエステル樹脂C4を合成した。
得られたポリエステル樹脂C4について、ポリエステル樹脂C1と同様にして、T1/2法温度について測定した。結果を表2に示す。
【0223】
(合成例5;ポリエステル樹脂C5の合成)
合成例1において、下記表1に示すように、ポリエステル樹脂材料の投入量を調整した以外は、合成例1と同様にして、ポリエステル樹脂C5を合成した。
得られたポリエステル樹脂C5について、ポリエステル樹脂C1と同様にして、T1/2法温度について測定した。結果を表2に示す。
【0224】
(合成例6;ポリエステル樹脂C6の合成)
合成例1において、下記表1に示すように、ポリエステル樹脂材料の投入量を調整した以外は、合成例1と同様にして、ポリエステル樹脂C6を合成した。
得られたポリエステル樹脂C6について、ポリエステル樹脂C1と同様にして、T1/2法温度について測定した。結果を表2に示す。
【0225】
(合成例7;ポリエステル樹脂C7の合成)
合成例1において、下記表1に示すように、ポリエステル樹脂材料の投入量を調整した以外は、合成例1と同様にして、ポリエステル樹脂C7を合成した。
得られたポリエステル樹脂C7について、ポリエステル樹脂C1と同様にして、T1/2法温度について測定した。結果を表2に示す。
【0226】
(合成例8;ポリエステル樹脂C8の合成)
合成例1において、下記表1に示すように、ポリエステル樹脂材料の投入量を調整した以外は、合成例1と同様にして、ポリエステル樹脂C8を合成した。
得られたポリエステル樹脂C8について、ポリエステル樹脂C1と同様にして、T1/2法温度について測定した。結果を表2に示す。
【0227】
【表1】

【0228】
【表2】

【0229】
(マスターバッチ(MB)の調製)
水1000質量部、及びカーボンブラック(「Printex35」;デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)540質量部、及び前記未変性ポリエステル1200質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。該混合物を二本ロールで150℃にて30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを調製した。
【0230】
(プレポリマーの合成)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10〜15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が49であった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル411質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、プレポリマー(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。得られたプレポリマーの遊離イソシアネート含有量は、1.60質量%であり、プレポリマーの固形分濃度(150℃、45分間放置後)は50質量%であった。
【0231】
〔アクリル樹脂微粒子の調製〕
(合成例9;アクリル樹脂微粒子1(樹脂微粒子B1)の合成)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(カチオンDS、花王製)10部、メタクリル酸メチル144部、アクリル酸ブチル50部、過硫酸アンモニウム1部、エチレングリコールジメタクリレート4部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度65℃まで昇温し10時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(メタクリル酸メチル)の水性分散液[アクリル樹脂微粒子分散液B1]を得た。[アクリル樹脂微粒子B1]の体積平均粒径(堀場製作所製 LA−920で測定)は60nm、T1/2は139℃であった。
【0232】
(合成例10;樹脂微粒子B2の合成)
合成例8において、下記表3に示すように、樹脂微粒子B1材料の投入量を、下記表3に示すように、樹脂微粒子B2材料の投入量に調整した以外は、合成例8と同様にして、アクリル樹脂B2を合成した。
得られたアクリル樹脂B2について、アクリル樹脂B1と同様にして、体積平均粒径及びガラス転移点について測定した。結果を表4に示す。
【0233】
(合成例11;樹脂微粒子B3の合成)
合成例8において、下記表3に示すように、樹脂微粒子B1材料の投入量を、下記表3に示すように、樹脂微粒子B3材料の投入量に調整した以外は、合成例8と同様にして、アクリル樹脂B3を合成した。
得られたアクリル樹脂B3について、アクリル樹脂B1と同様にして、体積平均粒径及びガラス転移点について測定した。結果を表4に示す。
【0234】
(合成例12;樹脂微粒子B4の合成)
合成例8において、下記表3に示すように、樹脂微粒子B1材料の投入量を、下記表3に示すように、樹脂微粒子B4材料の投入量に調整した以外は、合成例8と同様にして、アクリル樹脂B4を合成した。
得られたアクリル樹脂B4について、アクリル樹脂B1と同様にして、体積平均粒径及びガラス転移点について測定した。結果を表4に示す。
【0235】
(合成例13;樹脂微粒子B5の合成)
合成例8において、下記表3に示すように、樹脂微粒子B1材料の投入量を、下記表3に示すように、樹脂微粒子B5材料の投入量に調整した以外は、合成例8と同様にして、アクリル樹脂B5を合成した。
得られたアクリル樹脂B5について、アクリル樹脂B1と同様にして、体積平均粒径及びガラス転移点について測定した。結果を表4に示す。
【0236】
(合成例14;樹脂微粒子B6の合成)
合成例8において、下記表3に示すように、樹脂微粒子B1材料の投入量を、下記表3に示すように、樹脂微粒子B6材料の投入量に調整した以外は、合成例8と同様にして、アクリル樹脂B6を合成した。
得られたアクリル樹脂B6について、アクリル樹脂B1と同様にして、体積平均粒径及びガラス転移点について測定した。結果を表4に示す。
【0237】
(合成例15;樹脂微粒子B7の合成)
合成例8において、下記表3に示すように、樹脂微粒子B1材料の投入量を、下記表3に示すように、樹脂微粒子B7材料の投入量に調整した以外は、合成例8と同様にして、アクリル樹脂B7を合成した。
得られたアクリル樹脂B7について、アクリル樹脂B1と同様にして、体積平均粒径及びガラス転移点について測定した。結果を表4に示す。
【0238】
【表3】

【0239】
【表4】

【0240】
〔スチレン/アクリル樹脂微粒子の調製〕
(合成例16;スチレン/アクリル樹脂微粒子1(樹脂微粒子A1)の合成)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)16部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[樹脂微粒子分散液A1]を得た。[樹脂微粒子分散液A1]の体積平均粒径(堀場製作所製 LA−920で測定)は38nm、重量平均分子量は420000、T1/2は174℃であった。
【0241】
(合成例17;樹脂微粒子A2の合成)
合成例16において、下記表5に示すように、樹脂微粒子A1材料の投入量を調整した以外は、合成例16と同様にして、樹脂微粒子A2を合成した。
得られた樹脂微粒子A2について、樹脂微粒子A1と同様にして、体積平均粒径及びガラス転移点について測定した。結果を表6に示す。
【0242】
(合成例18;樹脂微粒子A3の合成)
合成例16において、下記表5に示すように、樹脂微粒子A1材料の投入量を調整した以外は、合成例16と同様にして、樹脂微粒子A3を合成した。
得られた樹脂微粒子A3について、樹脂微粒子A1と同様にして、体積平均粒径及びガラス転移点について測定した。結果を表6に示す。
【0243】
【表5】

【0244】
【表6】

【0245】
〔結晶性ポリエステル樹脂の合成〕
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、1,10−デカン二酸2300g、1、8−オクタンジオール2530g、ハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaにて2時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0246】
[実施例1;トナーaの製造]
(水系媒体相の調製)
水660質量部、前記スチレン/アクリル樹脂微粒子分散液A1 25質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%の水溶液(「エレミノールMON−7」;三洋化成工業製)25質量部、及び酢酸エチル60質量部を混合撹拌し、乳白色の液体(水相)を得た。さらにアクリル樹脂微粒子B1を50重量部加えた。光学顕微鏡で観察すると数百μmの凝集体が見られた。本水系媒体相をTK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数8000rpmで攪拌すると該凝集体がほぐれ、数μmの小凝集体に分散できることを光学顕微鏡によって確認した。したがってこの後行われるトナー材料の乳化工程においてもアクリル樹脂微粒子B1は分散してトナー材料成分の液滴に付着することが期待できた。このようにアクリル樹脂微粒子B1は凝集を生じるがせん断によってほぐれることがトナー表面に均一に付着させる上で重要である。
【0247】
(トナー材料相の調製)
ビーカー内に前記未ポリエステル樹脂C1の100質量部、酢酸エチル130質量部を、攪拌し溶解させた。次いで、カルナウバワックス(分子量=1,800、酸価=2.5、針入度=1.5mm(40℃))10質量部、及び前記マスターバッチ10質量部を仕込み、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、[トナー材料の溶解乃至分散液]を調製した。
【0248】
(乳化乃至分散液の調製)
前記水系媒体相150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これに前記トナー材料の溶解乃至分散液100質量部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリー)を調製した。
【0249】
(有機溶媒の除去)
脱気用配管、攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、前記乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間減圧下、脱溶剤し脱溶剤スラリーとした。
【0250】
(洗浄)
前記脱溶剤スラリー全量を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合、再分散(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を3回行い、再分散したスラリーの伝導度が0.1μS/cm以上且つ10μS/cm以下になったところで洗浄スラリーとした。
【0251】
(加熱処理)
攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、得られた洗浄スラリーを攪拌周速20m/分で攪拌しながら50℃で60分間攪拌下、加熱処理しトナー表面に付着した微粒子B1を固定化処理した後濾過した。
【0252】
(乾燥)
得られた濾過ケーキを順風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子aを得た。
【0253】
(外添処理)
トナー母体粒子aを100質量部に対して、平均粒径100nmの疎水性シリカ0.6質量部と、平均粒径20nmの酸化チタン1.0質量部と、平均粒径15nmの疎水性シリカ微粉体を0.8部とをヘンシェルミキサーにて混合し、トナーaを得た。
【0254】
〔実施例2;トナーbの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、ポリエステル樹脂C1をポリエステル樹脂C2に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーbを得た。
【0255】
〔実施例3;トナーcの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、ポリエステル樹脂C1をポリエステル樹脂C3に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーcを得た。
【0256】
〔実施例4;トナーdの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、ポリエステル樹脂C1をポリエステル樹脂C4に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーdを得た。
【0257】
〔実施例5;トナーeの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、ポリエステル樹脂C1をポリエステル樹脂C5に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーeを得た。
【0258】
〔実施例6;トナーfの製造〕
実施例4のトナー材料相の調製において、樹脂微粒子B1を樹脂微粒子B6に代えた以外は、実施例4と同様にして、実施例6のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーfを得た。
【0259】
〔実施例7;トナーgの製造〕
実施例6のトナー材料相の調製において、ポリエステル樹脂C4をポリエステル樹脂C1に代えた以外は、実施例6と同様にして、実施例7のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーgを得た。
【0260】
〔実施例8;トナーhの製造〕
実施例6のトナー材料相の調製において、ポリエステル樹脂C4をポリエステル樹脂C2に代えた以外は、実施例6と同様にして、実施例8のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーhを得た。
【0261】
〔実施例9;トナーiの製造〕
(結晶性ポリエステルの分散液作製)
金属製2L容器に[前期結晶性ポリエステル樹脂]を100g、酢酸エチル400gを入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。これにガラスビーズ(3mmφ)500mlを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行ない、[結晶性ポリエステル分散液]を得た。
【0262】
(トナーiの製造)
実施例5のトナー材料相の調製において、前記結晶性ポリエステルの分散液10質量部を添加した以外は実施例5と同様にして、実施例9のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーiを得た。
【0263】
〔実施例10;トナーjの製造〕
実施例6のトナー材料相の調製において、前記プレポリマー40質量部を添加した以外は実施例6と同様にして、実施例10のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーbを得た。
【0264】
〔実施例11;トナーkの製造〕
実施例3のトナー材料相の調製において、前記プレポリマー40質量部を添加した以外は実施例3と同様にして、実施例11のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーkを得た。
【0265】
〔実施例12;トナーlの製造〕
ポリエステル樹脂C5:100重量部、着色剤:「銅フタロシアニンブルー:FG7351」(東洋インキ社製)3.0重量部、及び荷電制御剤「ボントロン E−84」(オリエント化学工業社製)1.5重量部をヘンシェルミキサー20B(三井三池化工社製)を用い1200rpmにて混合し、得られた混合物を連続式混練機「ブス・コ・ニーダーMDK45型(Buss社製)。
フィード量:10kg/hr、スクリュー回転数:80rpm、スクリュー温度:40℃、設定温度(Z1温度:90℃、Z2,3温度:70℃)により混練し、混練物を得た。
ついで、得られた混練物を空気中で冷却したのち、ロートプレックス(アルバイン社製)にて粗粉砕し、体積中位粒径(D50v)500μmの粗粉砕物を得た。
更に、IDS−2型粉砕機(日本ニューマチック社製)を使用して微粉砕を行なった。
粉砕条件は粗粉砕物のフィード量:3.5kg/hr、エアー圧力:7.2気圧/cm、CCリング厚み:20mm、OEリング厚み:10mmとした。
ここで得られた粉砕トナー100重量部、樹脂微粒子B1の4質量部をヘンシェルミキサー20B(三井三池化工社製)を用い1500rpmにて1分間混合した後に、更に樹脂微粒子A1 2質量部を添加して1500rpmにて1分間混合した。ここに平均粒径100nmの疎水性シリカ0.6質量部と、平均粒径20nmの酸化チタン1.0質量部と、平均粒径15nmの疎水性シリカ微粉体を0.8部とをヘンシェルミキサーにて混合し、トナーlを得た。
【0266】
〔比較例1;トナーmの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、ポリエステル樹脂C1をポリエステル樹脂C6に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーmを得た。
【0267】
〔比較例2;トナーnの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、ポリエステル樹脂C1をポリエステル樹脂C7に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーnを得た。
【0268】
〔比較例3;トナーoの製造〕
実施例4のトナー材料相の調製において、樹脂微粒子B1を樹脂微粒子B2に代えた以外は、実施例4と同様にして、比較例3のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーcを得た。
【0269】
〔比較例4;トナーpの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、樹脂微粒子B1を樹脂微粒子B3に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例4のトナー母体粒子を作製しし、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーpを得た。
【0270】
〔比較例5;トナーqの製造〕
実施例5のトナー材料相の調製において、樹脂微粒子B1を樹脂微粒子B4に代えた以外は、実施例5と同様にして、比較例5のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーqを得た。
【0271】
〔比較例6;トナーrの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、樹脂微粒子B1を樹脂微粒子B5に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例6のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーrを得た。
【0272】
〔比較例7;トナーsの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、樹脂微粒子A1を樹脂微粒子A2に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例7のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーsを得た。
【0273】
〔比較例8;トナーtの製造〕
実施例1のトナー材料相の調製において、樹脂微粒子A1を樹脂微粒子A3に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例8のトナー母体粒子を作製しし、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーtを得た。
【0274】
〔比較例9;トナーuの製造〕
実施例5のトナー材料相の調製において、ポリエステル樹脂C5をポリエステル樹脂C8に代えた以外は、実施例5と同様にして、比較例9のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーuを得た。
【0275】
〔比較例10;トナーvの製造〕
実施例6のトナー材料相の調製において、樹脂微粒子B6を樹脂微粒子B7に代えた以外は、実施例6と同様にして、比較例10のトナー母体粒子を作製し、このトナー母体粒子から、同様にして、トナーvを得た。
【0276】
[キャリアの作製]
トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100質量部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、平均粒径50μmの球状マグネタイト1000質量部の表面に樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを作製した。
【0277】
[現像剤の作製]
ボールミルを用いて、各トナー5質量部とキャリア95質量部を混合し、現像剤を作製した。次に、作製した各現像剤を用いて、以下のようにして諸特性の評価を行った。結果を表7に示す。
【0278】
[トナー粒子の体積平均粒径(Dv)及び比(Dv/Dn)の測定]
各トナー粒子の体積平均粒径(Dv)、及び比(Dv/Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer3 Version3.51)にて解析を行った。具体的には、ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5mL添加し、各トナー0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いで、イオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記「マルチサイザーIII」により、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。測定は装置が示す濃度が8%±2%になるように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8%±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0279】
[カプセル化トナーの断面の確認]
トナー粒子が3層構造を有していることを確認するために、フリーズ・フラクチャー法による観察を行った。フリーズフラクチャー法は凍結により物理固定した試料を割断し割断表面に蒸着して得られたレプリカ膜を観察する方法である。その結果、最外殻にスチレン/アクリル樹脂微粒子層が存在し、その内側にアクリル樹脂微粒子層が存在しており3層構造を有していることを確認した。
【0280】
[低温定着性]
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した複写機(MF−200、株式会社リコー製)の定着部を改造した装置を用いて、タイプ6200紙(株式会社リコー製)をセットし、定着ローラの温度を5℃刻みで変化させて、複写テストを行った。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ローラの温度の最小値を定着下限温度とした。
定着下限温度は、消費電力が抑えられることから、低いことが好ましく、125℃以上では問題の発生する可能性が高いので125℃より大きいものを×として判定した。
〔評価基準〕
○:低温定着性が110℃以下
△:低温定着性が110以上120未満
×:低温定着性が120℃以上
【0281】
[耐熱保存性]
50mlのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により、針入度を測定し、下記基準により耐熱保存性を評価した。なお、針入度が大きい程、耐熱保存性が優れていることを意味し、針入度が5mm未満であるもの(×)は、使用上、問題が発生する可能性が高い。
〔評価基準〕
○:針入度が10mm以上
△:針入度が5mm以上10mm未満
×:針入度が5mm未満
【0282】
【表7】

【0283】
上記のとおり、実施例1〜12では低温定着性、耐熱保存性共に優れたトナーが得られた。
比較例1では結着樹脂のポリエステル樹脂T1/2が低すぎるため耐熱保存性が劣る結果となった。比較例2では結着樹脂のポリエステル樹脂T1/2が高すぎるため耐熱保存性は得られるものの、低音定着性に劣る結果となった。比較例3では樹脂微粒子BのT1/2が低いため、十分な耐熱保存性が発現できなかった。比較例4では樹脂微粒子BのT1/2が高すぎるため、トナー加熱定着時に結着樹脂が溶融するのを阻害し低温定着性に劣る結果となった。比較例5では樹脂微粒子Bの粒径が高すぎるため、比較例4と同様にトナー加熱定着時に結着樹脂が溶融するのを阻害し低温定着性に劣る結果となった。比較例6では樹脂微粒子Bの粒径が小さすぎるため加熱時に外添加の埋没を抑制する効果が得られず、保存安定性が劣る結果となった。比較例7では樹脂微粒子AのT/2が低すぎるため加熱時にトナー表面の樹脂微粒子Aが軟化し融着による凝集が発生し耐熱保存性が発現できなかった。比較例8では樹脂微粒子A3のTgは樹脂微粒子A1と同等だが、Mwが高く樹脂微粒子A3のT1/2法温度が高いため、比較例4、5と同様にトナー加熱定着時に結着樹脂が溶融するのを阻害し低温定着性に劣る結果となった。比較例9では、ポリエステル樹脂C8のTgはポリエステル樹脂C5と同等だが、ポリエステル樹脂C8のT1/2法温度が高いため、実施例5と比較して低温定着性が劣る結果となった。実施例10では、樹脂微粒子B7のTgは樹脂微粒子B6と等しいが、樹脂微粒子B7のT1/2法温度が低いため、実施例6と比較して耐熱保存性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0284】
本発明のトナーは、高速のフルカラー画像形成方法において転写効率を向上させ、転写時に画像欠陥をなくし長期的に再現性の良い画像を出力することを可能にするので、電子写真感光体から中間転写体への転写工程(一次転写)及び中間転写体から最終画像を得る記録材上への転写工程(二次転写)という2回にわたる転写工程を経る電子写真装置において好適に使用できる。
【符号の説明】
【0285】
(図3〜8について)
500 ローラ式帯電装置
501 帯電ローラ
502 芯金
503 導電ゴム層
504 電源
505 感光体
510 ブラシ式帯電装置
511 ファーブラシローラ
512 芯金
513 ブラシ部
514 電源
515 感光体
600 現像器
601 現像スリーブ
602 電源
603 現像部
604 感光体
605 トナー
700 定着装置
710 加熱ローラ
720 定着ローラ
721 芯金
722 弾性部材
730 無端帯状の定着ベルト
731 基体
732 発熱層
733 中間層
734 離型層
740 加圧ローラ
741 芯金
742 弾性部材
760 誘導加熱手段
761 励磁コイル
762 コイルガイド板
763 励磁コイルコア
764 励磁コイルコア支持部材
770 記録材
800プロセスカートリッジ
801 感光体
802 帯電手段
803 現像手段
804 現像剤
805 現像手段
806 クリーニング手段
(図9について)
100 画像形成装置
120Bk,120C,120M,120Y 画像書込部
130Bk,130C,130M,130Y 画像形成部
140 給紙部
150 定着装置
160 レジストローラ対
170 2次転写ローラ
180 2次転写ベルト
200Bk,200C,200M,200Y 現像装置
210Bk,210C,210M,210Y 感光体
215Bk,215C,215M,215Y 帯電装置
220 中間転写ベルト
230Bk,230C,230M,230Y 1次転写装置
241 導電性ローラ
242 導電性ローラ
243 導電性ローラ
261 導電性ファーブラシ
262 導電性ファーブラシ
300Bk,300C,300M,300Y クリーニング装置
(図10について)
10 中間転写体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
21 露光装置
22 2次転写装置
23 ローラ
24 2次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
49 レジストローラ
50 給紙ローラ
51 手差しトレイ
53 手差し給紙路
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
58 分離ローラ
62 転写帯電器
100 複写装置
110 複写装置本体
120 タンデム画像形成装置
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0286】
【特許文献1】特開昭63−282752号公報
【特許文献2】特開平6−250439号公報
【特許文献3】特開2000−275907号公報
【特許文献4】特開2001−305797号公報
【特許文献5】特開平11−133665号公報
【特許文献6】特開2002−287400号公報
【特許文献7】特開2002−351143号公報
【特許文献8】特開2005−77776号公報
【特許文献9】特開2001−242663号公報
【特許文献10】特開2005−156586号公報
【特許文献11】特開2010−061071号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエステル樹脂とスチレン/アクリル樹脂とアクリル樹脂とを含むトナー粒子のトナーであって、前記樹脂のフローテスターにおけるダイ穴径およびダイ長さが1.0mm、せん断応力が7.355×10Pa、昇温速度が3.0℃/minでのT1/2法温度が下記式(1)乃至(3)を満たし、且つ、該トナー粒子は前記ポリエステル樹脂粒子の外側に前記スチレン/アクリル樹脂微粒子から成る層Aと、前記アクリル樹脂微粒子から成る層Bを含み、前記樹脂微粒子層Aが層Bの外側にあることを特徴とするトナー。
70℃ ≦ ポリエステル樹脂 ≦ 100℃ ・・・ (1)
120℃ ≦ スチレン/アクリル樹脂≦ 200℃ ・・・ (2)
120℃ ≦ アクリル樹脂≦ 150℃ ・・・ (3)
【請求項2】
少なくとも結着樹脂及び/又はその前駆体を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してなるトナー材料の有機溶媒液を、水系媒体中で乳化乃至分散させてなるO/W型乳化乃至分散液から、前記有機溶媒を除去することによって作成されたトナー粒子のトナーであって、前記樹脂のフローテスターにおけるダイ穴径およびダイ長さが1.0mm、せん断応力が7.355×10Pa、昇温速度が3.0℃/minでのT1/2法温度が下記式(1)乃至(3)を満たし、且つ、該トナー粒子は前記ポリエステル樹脂粒子の外側にスチレン/アクリル樹脂微粒子から成る層Aと、アクリル樹脂微粒子から成る層Bを含み、前記樹脂微粒子層Aが層Bの外側にあることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
70℃ ≦ ポリエステル樹脂 ≦ 100℃ ・・・ (1)
120℃ ≦ スチレン/アクリル樹脂≦200℃ ・・・ (2)
120℃ ≦ アクリル樹脂≦ 150℃ ・・・ (3)
【請求項3】
前記トナーのT1/2法温度が70℃以上100℃以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記スチレン/アクリル樹脂微粒子の分子量Mwが100,000〜800,000の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記アクリル樹脂微粒子の分子量Mwが20,000〜1,000,000の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂の分子量Mwが3,000〜50,000の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記スチレン/アクリル樹脂微粒子のTgが40〜100℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー
【請求項8】
前記アクリル樹脂微粒子のTgが40〜80℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂のTgが10〜80℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項10】
前記スチレン/アクリル樹脂微粒子が、スチレン重合体、又はスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含む架橋樹脂又は未架橋樹脂の微粒子であること、及び/又は、前記アクリル樹脂微粒子が、アクリル酸エステル重合体、又はメタクリル酸エステル重合体を含む架橋樹脂、又は未架橋樹脂の微粒子であること、を特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−50570(P2013−50570A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188331(P2011−188331)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】