説明

カプセル入り化粧料

【課題】カプセルを外液中に存在させた場合に、その外液が低いpH値であっても、高温に保管しても、安定なものとなり、外液と一緒にポンプ容器等から塗出し肌に塗り広げる際にも、ゲルのかたまりが残らず伸びが良く使用感のよいカプセル入り化粧料を提供する。
【解決手段】ペクチンと多価金属塩により形成され、化粧料としての配合成分を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒径が数百μm〜数十mmサイズのカプセルを、化粧水、美容液、乳液等の外液中に存在させたカプセル入り化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカプセル入り化粧料において、カプセルの形成成分として、アルギン酸塩や、寒天、ゼラチン等を用いたものが存在している。例えば、アルギン酸塩を用いたものとしては、そのカプセルは、アルギン酸ナトリウムの水溶液からなる滴下液を水溶性カルシウム塩などの受液中に滴下することにより得ている(特許文献1〜4)。
【0003】
また、上記カプセル入り化粧料の中でも、アルギン酸塩とバリウム塩を必須成分とするアルギン酸バリウム系カプセルとしたものは、pH4〜11という広いpH領域において、カプセルが安定で壊れないので、共存可能な物質や処理条件の選択枝が広く、性能や使い勝手を含め化粧料として最適の設計ができるとしている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−92909号公報
【特許文献2】特開平5−228218号公報
【特許文献3】特開平8−175932号公報
【特許文献4】特開平11−29433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のカプセル入り化粧料において、カプセルはその内部に有効成分を安定した状態で含有させることができると共に、使用時に肌に軽く押し付けることにより、容易に擦壊して皮膚上に滑らかに展延するというように、使用感に優れたものが望まれている。
【0006】
しかしながら、上記従来のカプセル入り化粧料において、特許文献1〜3に示されたものでは、カプセルのpH領域における安定性については言及されていないが、カプセルを外液中に存在させておくと、その外液のpH値が低い場合にはカプセルが不安定になり、使用できる外液の種類が限られてしまったり、使用感が低下してしまったりしていた。
また、高温で保管する場合、カプセルが不安定になるという課題を有していた。
【0007】
さらに、上記従来のカプセル入り化粧料において、特許文献4に示されたものでも、広いpH領域において安定ではあるが、pH4を境界として、これよりpHが低くなると急激に不安定になり、カプセルのゲルがかたまり、使用感も低下してしまうという課題を有していた。
【0008】
そこで、本発明は、新たに植物由来の原料であるペクチンを利用し、カプセル化したものを外液中に存在させることによって、その外液がpH4未満でも、高温に保管しても、安定した状態で保存でき、ポンプ容器等から塗出して肌に塗り広げる際にも、ゲルのかたまりが残らず伸びが良く使用感のよい新たなカプセル入り化粧料を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカプセル入り化粧料は、ペクチンと多価金属塩により形成され、化粧料としての配合成分を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたものとしている。
【0010】
本発明において、多価金属塩としては、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化バリウムのいずれかとすることができる。
【0011】
本発明において、化粧料としての配合成分は、比重調整剤、粘度調整剤および分散剤の少なくともいずれか一つとすることができる。
【0012】
本発明において、比重調整剤としては、グリセリン、ソルビトール、マンニトールの少なくともいずれか一つとすることができる。
【0013】
本発明において、粘度調整剤としては、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールの少なくともいずれか一つとすることができる。
【0014】
本発明において、外液(B)のpH値は、pH3.5〜6. 5とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカプセル入り化粧料は、以上に述べたように構成されており、カプセルを外液中に存在させた場合に、その外液が低いpH値であっても、高温に保管しても、安定なものとなり、外液と一緒にポンプ容器等から塗出し肌に塗り広げる際にも、ゲルのかたまりが残らず伸びが良く使用感のよいものとなった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のカプセル入り化粧料を詳細に説明する。
【0017】
本発明のカプセル入り化粧料は、ペクチンと多価金属塩により形成され、化粧料としての配合成分を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたものとしている。
【0018】
ペクチンは、多価金属塩に対する反応性の高いグレードのものを使用するのが好ましいのはいうまでもない。例えば、カルシウム塩に対する反応性の高いグレードのペクチンとしては、三晶株式会社製の「GENU pectin type LM」が挙げられる。
【0019】
多価金属塩は、水溶性金属塩であれば特に限定されることなく、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化バリウムなどを挙げることができる。乳酸カルシウムは、カルシウム塩の中でも、水に対する溶解度が高く、安全性が優れているので好ましい。なお、多価金属塩は、二つ以上のものを同時に用いてもよいが、単独で用いるのが好ましい。
【0020】
化粧料としての配合成分は、代表的なものとして、比重調整剤、粘度調整剤および分散剤を挙げることができるが、これらはそれぞれ二つ以上のものを同時に用いても、単独で用いてもよい。配合成分は、その他にも保湿剤、ビタミン類、ホルモン類、配糖体、抗ヒスタミン剤、収れん剤、アミノ酸類、酵素剤、天然動植物からの分離物、オイル類、汚れ吸着剤、顔料、香料、蛋白質、炭水化物、繊維質をはじめとする種々様々な成分が挙げられる。配合成分は、液状であっても粉体状であってもよく、液状の場合はW/O型やO/W型のエマルジョン状であってもよい。なお、比重調整剤としては、グリセリン、ソルビトール、マンニトールを挙げることができる。粘度調整剤としては、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールを挙げることができる。これら比重調整剤および粘度調整剤も、それぞれ二つ以上のものを同時に用いても、単独で用いてもよい。
【0021】
また、化粧料の変質を防ぐため、適当な紫外線カット剤を含有させることもできる。さらに、増粘剤、香料、着色剤、フィラー(酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)をはじめとする種々の添加剤を必要に応じて含有させることもできる。
【0022】
本発明において、カプセルは、一般的には、ペクチンと化粧料としての配合成分とを混合した水溶液からなる滴下液を、水溶性金属塩の受液中に滴下することなどにより得ることができるが、もちろんこの方法に限定されることはない。
【0023】
前記水溶液は、0.1〜5重量%のペクチンを配合したものとし、配合成分を比重調整剤、粘度調整剤、分散剤とした場合には、1〜15重量%の比重調整剤および粘度調整剤を配合したものとし、0.1〜10重量%の分散剤を配合したものとすることができる。また、水溶性金属塩の受液としては、0.1〜5重量%の水溶性金属塩を溶解した水溶液とすることができる。
【0024】
これにより、製造段階でのカプセル(A)中における、ペクチンの配合率は0.1〜5重量%、比重調整剤および粘度調整剤の配合率は1 〜15重量%、分散剤の配合率は0.1〜10重量%とすることができる。
【0025】
さらに、製造段階でのカプセル(A)の大きさは、粒径が0.1〜10mm程度にするのが、一般的な化粧料として使用するのには好ましい。なお、これを外液(B)に存在させると、粒径が元の大きさの2〜5倍程度となり、重量は8〜50倍程度となる。
【0026】
本発明において、外液(B)は、カルボキシビニルポリマーの水溶液、キサンタンガムの水溶液等とすることができ、その剤型としては、化粧水、美容液、乳液、ジェル、クリームとすることができる。
【0027】
さらに、外液(B)のpH値としては、pH2以上pH7未満の酸性領域とすることができるが、特にpH3. 5〜6. 5の領域がカプセルを特に安定した状態で存在させておくのに好ましい領域である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。以下、「部」、「%」とあるのは重量基準で表したものである。
【0029】
〔実施例1〜14〕
表1に示した配合量のペクチン、グリセリン(比重調整剤)、ブチレングリコール(粘度調整剤)、界面活性剤(分散剤)、酸化鉄および/または酸化チタン(色素)を混合し撹拌しながら、さらに水を加えて全体が100部になるようにした。
【0030】
この水溶液を、表1に示した多価金属塩(乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム)の0. 1〜5%水溶液からなる多量の受液に向けて、ノズルから噴出させた。これを撹拌することによりカプセルが形成されたので、そのカプセルを掬い上げた後、水中に投入して洗浄した。これにより、粒径が0. 1〜10mmのカプセル(A)が得られた。
【0031】
別途、カルボキシビニルポリマーの1%水溶液を調製した後、その水溶液30部に5%濃度の水酸化カリウム水溶液の適量を加え、さらに水を加えて全体が100部になるようにして撹拌した。これにより、pH3. 5〜6. 5に調製された外液(B)が得られた。
【0032】
この外液(B)80部中に、上記で得たカプセル5部を投入し、さらに水を加えて全体が100部になるようにしてから、ゆっくりと撹拌することにより、カプセル入り化粧料が得られた。
【0033】
【表1】

【0034】
このようにして得られたカプセル入り化粧料の安定性および使用感について評価をしたところ、表1の下段に示したような結果が得られた。なお、評価方法、評価基準についは、以下の通りである。
【0035】
(カプセルの安定性)
方法:表1で得られたそれぞれのカプセル入り化粧料をガラス容器に充填し40℃の恒温槽にて保管した物を確認した。
【0036】
評価:◎…変化なし
○…少しカプセルが崩れた状態になる
△…カプセルが崩れた状態になる
×…カプセルが崩壊する
【0037】
(使用感)
方法:表1で得られたそれぞれのカプセル入り化粧料をポンプ容器に充填し皮膚上に適量出し、化粧料を伸ばした時の状態を確認した。
【0038】
評価:◎…カプセルのカスが残らずに簡単に美容液が馴染んだ
○…カプセルのカスがほとんど残らずに美容液が馴染んだ
△…カプセルのカスが少し残り馴染みにくい
×…カプセルのカスが残り美容液が馴染まない
【0039】
(比較例1〜6)
表2に示した配合量ペクチンまたはアルギン酸ナトリウム、グリセリン(比重調整剤)、ブチレングリコール(粘度調整剤)、界面活性剤(分散剤)、酸化鉄および/または酸化チタン(色素)を混合し撹拌しながら、さらに水を加えて全体が100部になるようにした。
【0040】
この水溶液を、表2に示した多価金属塩(乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム)の0. 05〜6%水溶液からなる多量の受液に向けて、ノズルから噴出させた。これを撹拌することによりカプセルが形成されたので、そのカプセルを掬い上げた後、水中に投入して洗浄した。これにより、粒径が0. 1〜10mmのカプセル(A)が得られた。
【0041】
別途、カルボキシビニルポリマーの1%水溶液を調製した後、その水溶液30部に5%濃度の水酸化カリウム水溶液の適量を加え、さらに水を加えて全体が100部になるようにして撹拌した。これにより、pH2〜7に調製された外液(B)が得られた。
【0042】
この外液(B)80部中に、上記で得たカプセル5部を投入し、さらに水を加えて全体が100部になるようにしてから、ゆっくりと撹拌することにより、カプセル入り化粧料が得られた。
【0043】
【表2】

【0044】
このようにして得られたカプセル入り化粧料の安定性および使用感について、表2の下段に示したような評価が得られた。なお、評価方法、評価基準についは、実施例1〜14と同様に行った。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペクチンと多価金属塩により形成され、化粧料としての配合成分を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたことを特徴とするカプセル入り化粧料。
【請求項2】
多価金属塩が、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化バリウムのいずれかである請求項1記載のカプセル入り化粧料。
【請求項3】
化粧料としての配合成分が、比重調整剤、粘度調整剤および分散剤の少なくともいずれか一つである請求項1記載のカプセル入り化粧料。
【請求項4】
比重調整剤が、グリセリン、ソルビトール、マンニトールの少なくともいずれか一つである請求項3記載のカプセル入り化粧料。
【請求項5】
粘度調整剤が、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールの少なくともいずれか一つである請求項3記載のカプセル入り化粧料。
【請求項6】
外液(B)のpH値が、pH3.5〜6. 5である請求項1記載のカプセル入り化粧料。



【公開番号】特開2010−202595(P2010−202595A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50953(P2009−50953)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(391027929)三粧化研株式会社 (17)
【Fターム(参考)】