説明

カプセル入り化粧料

【課題】カプセルの色ぶれがなく、豊富な色彩を施せると共に、明るい色調のものを選択できる余地が多くなり、また油分が高配合なものとなり、外液と一緒に用いた場合に、保湿、湿潤効果に優れ、エモリエント感の高いカプセル入り化粧料を提供する。
【解決手段】ペクチンおよび/またはアルギン酸塩と多価金属塩により形成され、オイルゲル、油溶性色素および乳化剤を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒径が数百μm〜数十mmサイズのカプセルを、化粧水、美容液、乳液等の外液中に存在させたカプセル入り化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカプセル入り化粧料において、カプセルの形成成分として、アルギン酸塩や、寒天、ゼラチン等を用いたものが存在している。例えば、アルギン酸塩を用いたものとしては、そのカプセルは、アルギン酸ナトリウムの水溶液からなる滴下液を水溶性カルシウム塩などの受液中に滴下することにより得ている(特許文献1〜4)。
【0003】
そして、上記カプセルの着色には、油溶性の色素(β−カロチン)が用いられたり(特許文献1、2)、顔料が用いられていた(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−92909号公報
【特許文献2】特開平5−228218号公報
【特許文献3】特開平8−175932号公報
【特許文献4】特開平11−29433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の従来のカプセル入り化粧料において、例えば、特許文献1、2のように油溶性の色素で着色した場合には、カプセルの多孔質である構造的な理由より、微細な孔から油溶性分が徐々に漏れ出してしまい、また、水溶性の色素で着色した場合には、水溶性の外液に溶出しまうため、特許文献3、4のように、そのどちらにも不溶である顔料をカプセル基材中分散させることによって着色しているのが一般的である。
【0006】
しかしながら、上記従来のカプセル入り化粧料において、カプセルの着色に顔料を用いる場合には、化粧料用としての顔料の種類が色素の種類に比べて少なく、また、基材に対して不溶な為、カプセルに色ブレが起こったり、豊富な色彩を施せなかったり、色彩的にも顔料は暗い色調のものが多く、油溶性の色素のように明るい色調のものを選択できる余地が少ないという課題を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、粘性が高いオイルゲルに油溶性の色素を混ぜ込み、カプセル基材に均一に分散させて発色させ、かつ、微細な孔から漏れ出さないようにしたカプセル入り化粧料を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカプセル入り化粧料は、ペクチンおよび/またはアルギン酸塩と多価金属塩により形成され、オイルゲル、油溶性色素および乳化剤を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたものとしている。
【0009】
本発明のカプセル入り化粧料は、ペクチンおよび/またはアルギン酸塩と多価金属塩により形成され、オイルゲル、油溶性色素、乳化剤および他の配合成分を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたものとしてもよい。
【0010】
本発明において、オイルゲルは、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、水添(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(スチレン/イソプレン)コポリマー、(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマー、スチレンブロックコポリマー、水添スチレンブロックコポリマーの少なくともいずれか一つとすることができる。
【0011】
本発明において、油溶性色素は、シコンエキス、チャ葉エキス、アスタキサンチン、グアイアズレン、ウミクロウメモドキ油、トマトエキス、銅クロロフィル、トウガラシエキス、ヘマトコッカス油、リコピンの少なくともいずれか一つとすることができる。
【0012】
本発明において、乳化剤は、水添レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの少なくともいずれか一つとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカプセル入り化粧料は、以上に述べたように構成されており、カプセルの着色に油溶性の色素を用いることができたので、カプセルの色ブレがなく、豊富な色彩を施せると共に、明るい色調のものを選択できる余地が多くなり、また油分が高配合なものとなり、外液と一緒に用いた場合に、保湿、湿潤効果に優れ、エモリエント感の高いものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のカプセル入り化粧料を詳細に説明する。
【0015】
本発明のカプセル入り化粧料は、ペクチンおよび/またはアルギン酸塩と多価金属塩により形成され、オイルゲル、油溶性色素および乳化剤を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたものとしている。
【0016】
ペクチンは、多価金属塩に対する反応性の高いグレードのものを使用するのが好ましいのはいうまでもない。例えば、カルシウム塩に対する反応性の高いグレードのペクチンとしては、三晶株式会社製の「GENU pectin type LM」が挙げられる。
【0017】
アルギン酸塩は、水溶性金属塩であれば特に限定されることなく、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等が好ましく用いられる。なお、アルギン酸塩は、二つ以上のものを同時に用いてもよいが、単独で用いるのが好ましい。
【0018】
多価金属塩は、水溶性金属塩であれば特に限定されることなく、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化バリウムなどが用いられる。乳酸カルシウムは、カルシウム塩の中でも、水に対する溶解度が高く、安全性が優れているので好ましい。なお、多価金属塩は、二つ以上のものを同時に用いてもよいが、単独で用いるのが好ましい。
【0019】
オイルゲルは、油分に油溶性増粘剤を溶解、分散させることによってゲル状にしたもの、もしくは高分子ポリマーとしたものであり、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、水添(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(スチレン/イソプレン)コポリマー、(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマー、スチレンブロックコポリマー、水添スチレンブロックコポリマー、その他の油溶性ポリマーが用いられる。なお、オイルゲルは、二つ以上のものを同時に用いても、単独で用いてもよい。
【0020】
油溶性色素は、シコンエキス、チャ葉エキス、アスタキサンチン、グアイアズレン、ウミクロウメモドキ油、トマトエキス、銅クロロフィル、トウガラシエキス、ヘマトコッカス油、リコピンなどが用いられる。なお、油溶性色素は、二つ以上のものを同時に用いても、単独で用いてもよい。
【0021】
乳化剤は、水添レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどの界面活性剤が用いられる。なお、乳化剤は、二つ以上のものを同時に用いても、単独で用いてもよい。
【0022】
さらに、本発明のカプセル入り化粧料は、ペクチンおよび/またはアルギン酸塩と多価金属塩により形成され、オイルゲル、油溶性色素、乳化剤および他の配合成分を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたものとしている。
【0023】
他の配合成分としては、代表的なものとして、比重調整剤、粘度調整剤および分散剤を挙げることができるが、これらはそれぞれ二つ以上のものを同時に用いても、単独で用いてもよい。配合成分は、その他にも保湿剤、ビタミン類、ホルモン類、配糖体、抗ヒスタミン剤、収れん剤、アミノ酸類、酵素剤、天然動植物からの分離物、オイル類、汚れ吸着剤、香料、蛋白質、炭水化物、繊維質をはじめとする種々様々な成分が挙げられる。配合成分は、液状であっても粉体状であってもよく、液状の場合はW/O型やO/W型のエマルジョン状であってもよい。なお、比重調整剤としては、グリセリン、ソルビトール、マンニトールを挙げることができる。粘度調整剤としては、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールを挙げることができる。これら比重調整剤および粘度調整剤も、それぞれ二つ以上のものを同時に用いても、単独で用いてもよい。
【0024】
また、化粧料の変質を防ぐため、適当な紫外線カット剤を含有させることもできる。さらに、香料をはじめとする種々の添加剤を必要に応じて含有させることもできる。
【0025】
本発明において、カプセルは、一般的には、ペクチンおよび/またはアルギン酸塩、オイルゲル、油溶性色素、乳化剤を混合した水溶液、またはこれらに他の配合成分を混合した水溶液からなる滴下液を、水溶性金属塩の受液中に滴下することなどにより得ることができるが、もちろんこの方法に限定されることはない。
【0026】
前記水溶液は、0.1〜5重量%のペクチンおよび/またはアルギン酸塩を配合したものとし、0.1〜10重量%のオイルゲルを配合したものとし、1 〜15重量%の乳化剤を配合したものとし、0. 001〜5重量%の色素を配合したものとし、他の配合成分を比重調整剤、粘度調整剤、分散剤とした場合には、1〜15重量%の比重調整剤および粘度調整剤を配合したものとし、0.1〜10重量%の分散剤を配合したものとすることができる。また、水溶性金属塩の受液としては、0.1〜5重量%の水溶性金属塩を溶解した水溶液とすることができる。
【0027】
これにより、製造段階でのカプセル(A)中における、ペクチンおよび/またはアルギン酸塩の配合率は0. 1〜5重量%、オイルゲルの配合率は0.1〜10重量%、乳化剤の配合率は1〜15重量%、色素の配合率は0. 001〜5重量%重量%、比重調整剤および粘度調整剤の配合率は1〜15重量%、分散剤の配合率は0.1〜10重量%とすることができる。
【0028】
さらに、製造段階でのカプセル(A)の大きさは、粒径が0.1〜10mm程度にするのが、一般的な化粧料として使用するのには好ましい。なお、これを外液(B)に存在させると、粒径が元の大きさの2〜5倍程度となり、重量は8〜50倍程度となる。
【0029】
本発明において、外液(B)は、カルボキシビニルポリマーの水溶液、キサンタンガムの水溶液等ができ、その剤型としては、化粧水、美容液、乳液、ジェル、クリームとすることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。以下、「部」、「%」とあるのは重量基準で表したものである。
【0031】
〔実施例1〜12〕
表1に示した配合量のペクチンおよび/またはアルギン酸ナトリウム、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー(オイルゲル)、油溶性天然色素、界面活性剤(乳化剤)、グリセリン(比重調整剤)、ブチレングリコール(粘度調整剤)を混合し撹拌しながら、さらに水を加えて全体が100部になるようにした。
【0032】
この水溶液を、表1に示した多価金属塩(乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム)の0. 1〜5%水溶液からなる多量の受液に向けて、ノズルから噴出させた。これを撹拌することによりカプセルが形成されたので、そのカプセルを掬い上げた後、水中に投入して洗浄した。これにより、粒径が0. 1〜10mmのカプセル(A)が得られた。
【0033】
別途、カルボキシビニルポリマーの1%水溶液を調製した後、その水溶液30部に5%濃度の水酸化カリウム水溶液2部を加え、さらに水を加えて全体が100部になるようにして撹拌した。これにより、pH6. 0に調製された外液(B)が得られた。
【0034】
この外液(B)80部中に、上記で得たカプセル5部を投入し、さらに水を加えて全体が100部になるようにしてから、ゆっくりと撹拌することにより、カプセル入り化粧料が得られた。
【0035】
【表1】

【0036】
このようにして得られたカプセル入り化粧料の色漏れ、安定性および使用感について評価をしたところ、表1の下段に示したような結果が得られた。なお、評価方法、評価基準についは、以下の通りである。
【0037】
(カプセルの色漏れ)
方法:表1で得られたそれぞれのカプセル入り化粧料をガラス容器に充填し40℃の恒温槽にて保管し、外液(B)に色移りがないかを目視にて観察した。
【0038】
評価:◎…変化なし
○…ほんの少し外液(B)に色が付いた
△…カプセルから色が少し漏れて色がついた
×…カプセルから色が漏れて色がついた
−…カプセルが形成しない
【0039】
(カプセルの安定性)
方法:表1で得られたそれぞれのカプセル入り化粧料をガラス容器に充填し40℃の恒温槽にて保管した物を確認した。
【0040】
評価:◎…変化なし
○…少しカプセルが崩れた状態になる
△…カプセルが崩れた状態になる
×…カプセルが崩壊する
【0041】
(使用感)
方法:表1で得られたそれぞれのカプセル入り化粧料をポンプ容器に充填し皮膚上に適量出し、化粧料を伸ばした時の状態を確認した。
【0042】
評価:◎…カプセルのカスが残らずに簡単に美容液が馴染んだ
○…カプセルのカスがほとんど残らずに美容液が馴染んだ
△…カプセルのカスが少し残り馴染みにくい
×…カプセルのカスが残り美容液が馴染まない
【0043】
(比較例1〜7)
表2に示した配合量のペクチンおよび/またはアルギン酸ナトリウム、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー(オイルゲル)、油溶性天然色素または水溶性天然色素、界面活性剤(乳化剤)、グリセリン(比重調整剤)、ブチレングリコール(粘度調整剤)を混合し撹拌しながら、さらに水を加えて全体が100部になるようにした。
【0044】
この水溶液を、表2に示した多価金属塩(乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム)の0. 05〜6%水溶液からなる多量の受液に向けて、ノズルから噴出させた。これを撹拌することによりカプセルが形成されたので、そのカプセルを掬い上げた後、水中に投入して洗浄した。これにより、粒径が0. 1〜10mmのカプセル(A)が得られた。
【0045】
別途、カルボキシビニルポリマーの1%水溶液(pH3)を調製した後、その水溶液30部に5%濃度の水酸化カリウム水溶液2部を加え、さらに水を加えて全体が100部になるようにして撹拌した。これにより、pH6. 0に調製された外液(B)が得られた。
【0046】
この外液(B)80部中に、上記で得たカプセル5部を投入し、さらに水を加えて全体が100部になるようにしてから、ゆっくりと撹拌することにより、カプセル入り化粧料が得られた。
【0047】
【表2】

【0048】
このようにして得られたカプセル入り化粧料の色漏れ、安定性および使用感について評価したところ、表2の下段に示したような結果が得られた。なお、評価方法、評価基準についは、実施例1〜12と同様に行った。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペクチンおよび/またはアルギン酸塩と多価金属塩により形成され、オイルゲル、油溶性色素および乳化剤を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたことを特徴とするカプセル入り化粧料。
【請求項2】
ペクチンおよび/またはアルギン酸塩と多価金属塩により形成され、オイルゲル、油溶性色素、乳化剤および他の配合成分を含有したカプセル(A)を、外液(B)中に存在させたことを特徴とするカプセル入り化粧料。
【請求項3】
オイルゲルが、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、水添(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(スチレン/イソプレン)コポリマー、(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマー、スチレンブロックコポリマー、水添スチレンブロックコポリマーの少なくともいずれか一つである請求項1または2記載のカプセル入り化粧料。
【請求項4】
油溶性色素が、シコンエキス、チャ葉エキス、アスタキサンチン、グアイアズレン、ウミクロウメモドキ油、トマトエキス、銅クロロフィル、トウガラシエキス、ヘマトコッカス油、リコピンの少なくともいずれか一つである請求項1または2記載のカプセル入り化粧料。
【請求項5】
乳化剤が、水添レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの少なくともいずれか一つである請求項1または2記載のカプセル入り化粧料。



【公開番号】特開2010−202596(P2010−202596A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50956(P2009−50956)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(391027929)三粧化研株式会社 (17)
【Fターム(参考)】