説明

カプセル化されたシリコーン化合物を含む化粧品組成物

本発明は、少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物X、少なくとも1種のオルガノハイドロジェンシロキサン化合物Y、および少なくとも1種のヒドロシリル化触媒を、生理学的に許容される媒体中に含む化粧品組成物に関し、前記化合物XおよびYは触媒の存在下でヒドロシリル化反応により互いに反応し、化合物XおよびYの中の少なくとも1種の化合物は、シリカ殻マイクロカプセルにカプセル化された状態で前記組成物中に存在し、前記触媒は、前記カプセル化された化合物Xおよび/またはYと一緒になっている、あるいは別にカプセル化されており、マイクロカプセルは水性相に懸濁されている。ケラチン質の美容ケアおよび/またはメイクアップのための適用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物X、少なくとも1種のオルガノハイドロジェンシロキサン(organohydrogensiloxane)化合物Y、および少なくとも1種のヒドロシリル化触媒を含む化粧品組成物に関し、化合物XまたはYの少なくとも1種は、シリカ殻(shell)マイクロカプセルにカプセル化されている。
【0002】
本発明によると見なされる組成物は、より詳細には、ケラチン質、特に皮膚、唇および外皮をケアおよび/またはメイクアップすることを意図している。
【背景技術】
【0003】
一般に、化粧品組成物は、美的効果をもたらすことを意図しており、この美的効果は、通常、例えば、顔、唇、睫毛、爪および毛髪のような、対象とする支持体(support)上に、メイクアップおよび/またはケア製品のフィルムを形成することによって得られる。
【0004】
明白な理由で、これらのフィルムの快適性、持久性および/または耐移行性の最適化は、化粧品分野における常に変わらない関心事である。
【0005】
シリコーン化合物を含む特定の系は、これらの化合物の単なる接触によって、適切である場合は触媒の存在下で、シリコーンポリマーフィルムを生成できると立証されていることが知られている。このように、化合物Xおよび化合物Y(下で定義される)と呼ばれるシリコーン化合物は、大気圧および室温で、in situで重合でき、有利にも、生体適合性で、非粘着性で、僅かに乳白色である、または剥がすことさえできるフィルムを形成できることが立証されている。このような系は、特に、文献WO 01/96 450、およびGB 2 407 496に記載されている。しかし、これらの化合物の高い反応性を考えると、早期で未熟なフィルムの形成を防ぐために、それらを別々にパッケージ化することが避けられない。
【0006】
結果的に、ケアおよび/またはメイクアップの分野においてこれらの系を使用する場合は、系を形成する2種のシリコーン化合物の、適切である場合は触媒の存在下で実施される混合が、対象とする支持体と接触している際にのみ起こることを保証するために、または支持体へのその塗布の直前に、その場でのみ実施されることを保証するために、パッケージ化方式が必要となり、またはダブルアクションの方式に似た塗布方式さえも必要となる。
【0007】
2種のシリコーン化合物を別々に、または、適切である場合、2種のシリコーン化合物と触媒を別々にパッケージ化するための必要性は、配合者および使用者の両方にとっての制約を表すことは明らかであり、その制約なしで済ませることが望ましいと思われる。
【0008】
こうして、出願EP-A-1 935 454により、単一組成物としてこのような系を如何に配合するか、および系の成分の少なくとも1つをポリマー殻マイクロカプセルにカプセル化することが知られる。しかし、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸のポリマー、塩化ビニル/酢酸ビニルのコポリマー、メタクリル酸/メタクリル酸メチルのコポリマー、ポリアルキレンアジペート、およびポリエステルポリオールのような特定のポリマーは、40℃を超える温度での組成物の貯蔵の間に、利点が少なくなることが証明されている:実際に、これらの高い温度で、特に、45℃で2カ月に渡る貯蔵の間に、ポリマーカプセルは、それらの閉じ込め能力を部分的に失い、系の成分の一部がカプセルから漏れ、その結果、それらが接触するとき、組成物のまさに中心部で反応し得る。この場合、組成物は、もはや良好な貯蔵安定性を示さず、これらの条件下では、シリコーン成分の系は、ケラチン質へのその使用およびその塗布の前に、組成物の内部で時期尚早な架橋によって反応し始める。このような組成物は、組成物の内部で反応がすでに開始されているので、カプセルの破裂の間の成分の接触の間にフィルムを形成するという、その最良の能力を示さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 01/96 450
【特許文献2】GB 2 407 496
【特許文献3】EP-A-1 935 454
【特許文献4】US 2,823,218
【特許文献5】US 3,923,705
【特許文献6】US 3,715,334
【特許文献7】US 3,814,730
【特許文献8】US 3,419,593
【特許文献9】US 5,175,325
【特許文献10】US 3,159,601
【特許文献11】US 3,220,972
【特許文献12】US 3,296,291
【特許文献13】US 3,516,946
【特許文献14】US 3,989,668
【特許文献15】US 5,036,117
【特許文献16】EP 0 347 895 B
【特許文献17】US 6159453
【特許文献18】US 6238650
【特許文献19】US 6303149
【特許文献20】WO 2005/009604
【特許文献21】WO 03/066209
【特許文献22】US 5,035,832
【特許文献23】US 61/096397
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、系のシリコーン成分を含むカプセルの貯蔵安定性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、シリカ殻を有するカプセルの使用が、その2つのシリコーン成分の反応性を害することなく、45℃近くの温度での貯蔵の間の組成物の安定性を効果的に向上させることを可能にすることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
より詳細には、本発明の1つの主題は、少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物X、少なくとも1種のオルガノハイドロジェンシロキサン化合物Y、および少なくとも1種のヒドロシリル化触媒を、生理学的に許容される媒体中に含む化粧品組成物であって、前記化合物XおよびYは、触媒の存在下でヒドロシリル化反応により互いに反応し、化合物XおよびYの中の少なくとも1種の化合物は、シリカ殻マイクロカプセルにカプセル化された状態で前記組成物中に存在し、前記触媒は、前記カプセル化された化合物Xおよび/またはYと一緒になっている、あるいは別にカプセル化されており、マイクロカプセルは水性相に懸濁されている。
【0013】
前記組成物は、特に、皮膚、唇、毛髪、睫毛および爪のようなケラチン質をケアおよび/またはメイクアップすることを意図している。
【0014】
本発明は、また、前記ケラチン質への前記組成物の塗布を少なくとも含む、ケラチン質をケアおよび/またはメイクアップするための美容コーティング方法にも関する。
【0015】
本発明の意図の範囲内で、組成物は、化合物Xおよび/またはYを、まだ反応していない状態で、それらのヒドロシリル化反応生成物ではない状態で専ら含むと理解されている。
【0016】
こうして、本発明による反応生成物の形成は、処置されなければならないケラチン質の表面で直接実施されるか、または、相互作用にとって有利な条件下での化合物XおよびYの即時混合によって、塗布の直前に開始されるかのいずれかであり得るが、後者の場合、反応生成物の形成は、ケラチン質の表面で完結する。好ましくは、本発明による反応生成物の形成は、処置されなければならないケラチン質の表面で直接実施される:このため、先に記載された方法において、好ましくは、化合物XおよびYは、それらが、処置されるケラチン質と接触するときに、互いに反応する。
【0017】
明白な理由で、また化合物Xおよび/またはYの高い反応性を考慮すると、特に、例えば、それを薄く塗ること(spreading)を考慮して、それ(もしくはそれら)を含む組成物の取扱い易さにとって有利な条件下で、それらの方法(implementation)が実施されることが、実際に必要である。それゆえに、本発明による方法は、化合物XおよびYを含み、したがって、全てのXおよび/または全てのYの反応により得られる、予想される最終フィルムの状態に硬化されていない組成物を用いる。
【0018】
下に記される例から明らかになるように、本発明者等は、前記組成物が約45℃の温度で経時的に安定であり、シリコーンポリマーフィルムの形成に有効な状態のままであることが立証されることを認めた。これらの組成物が支持体(例えばケラチン質)の上にフィルム状に薄く塗られたとき、マイクロカプセルは、塗布の圧力の下で、さらにまた付着したフィルムの脱水の効果の下で、破壊され、次いで触媒の存在下で接触状態に置かれる化合物XおよびYは、互いに反応して、フィルムを形成する。有利には、本発明による組成物は、化合物XおよびYの反応を延期することが可能となり、反応は、対象とする支持体上のフィルムの状態で組成物を塗布した後で化合物XおよびYが接触したときにだけ起こる。
【0019】
本発明による組成物の一実施形態によれば、化合物Xおよび化合物Yは、それぞれ、シリカ殻マイクロカプセルに、別々にカプセル化される。
【0020】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、化粧品組成物は、少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物X、少なくとも1種のオルガノハイドロジェンシロキサン化合物Y、および少なくとも1種のヒドロシリル化触媒を、生理学的に許容される媒体中に含み、前記化合物XおよびYは、触媒の存在下でヒドロシリル化反応により互いに反応し、化合物XおよびYは、シリカ殻マイクロカプセルに別々にカプセル化されており、前記触媒は、前記カプセル化された化合物X、または前記カプセル化された化合物Yと一緒になっており、マイクロカプセルは水性相に懸濁されている。この実施形態によれば、化合物XおよびY、さらに触媒も、シリカ殻カプセルにカプセル化されている。
【0021】
先に記載された本発明の特に好ましい実施形態によれば、化粧品組成物は、少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有するオルガノポリシロキサン化合物X、およびヒドロシリル化触媒を含む、マイクロカプセルの第1部分(こうして、架橋性シロキサン組成物の部分Iを形成する)、ならびに、オルガノハイドロジェンシロキサン化合物Yを含む、マイクロカプセルの第2部分(架橋性シロキサン組成物の部分IIを形成する)を含み、化合物XおよびYは、触媒の存在下で、ヒドロシリル化反応により互いに反応する。
【0022】
ヒドロシリル化反応により架橋し得るシロキサン組成物を含むシリカ殻マイクロカプセルは、約45℃で、特に2カ月間の貯蔵の後、良好な貯蔵安定性を有する。これらのマイクロカプセルは、また、水に懸濁された状態で延長された貯蔵寿命を、また良好な耐漏えい性を有する。
【0023】
本発明の第1の実施形態によれば、本発明による組成物は、化合物XおよびYの少なくとも1種を含むマイクロカプセルの第1部分、および、ヒドロシリル化触媒を含む第2部分を含む。
【0024】
本発明の第2の実施形態によれば、水性懸濁液は、化合物XおよびYから選択される化合物を、ヒドロシリル化触媒と一緒に含むシリカ殻マイクロカプセルを含む。
【0025】
特に好ましい実施形態である、本発明の第3の実施形態によれば、本発明による組成物は、化合物Xを、ヒドロシリル化触媒と一緒に含むシリカ殻マイクロカプセル、および化合物Yを含むシリカ殻マイクロカプセルを含む。
【0026】
こうして、本発明の特に好ましい第3の実施形態によれば、本発明による組成物は、マイクロカプセルの第1部分が、コアとして、化合物Xを含む、架橋性シロキサン組成物の第1部分(後で、部分Iと呼ばれる)を含み、マイクロカプセルの第2部分が、化合物Yを含む、架橋性シロキサン組成物の第2部分(後で、部分IIと呼ばれる)を含む、シリカ殻マイクロカプセルの混合物を含む。
【0027】
架橋性シロキサン組成物の2つの部分(IおよびII)が、特定の条件下に(特に、ケラチン質への塗布の間、および/または、ケラチン質上に付着した組成物の乾燥の間に、壊れることによって)、マイクロカプセルから放出されたときに、化合物XおよびYは、反応して、架橋したシロキサン組成物を形成する。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、シリカ殻マイクロカプセルにカプセル化された架橋性シロキサン組成物は、ヒドロシリル化反応により架橋し得るどのようなシロキサン組成物であってもよい。
【0029】
ヒドロシリル化反応により架橋し得る、このようなシロキサン組成物は、ヒドロシリル化触媒の存在の下での、アルケニル不飽和炭化水素系基を含むオルガノポリシロキサン化合物Xと、オルガノハイドロジェンシロキサン化合物Yとの反応を伴う。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、シリカ殻マイクロカプセルの第1部分は、架橋性シロキサン組成物の第1部分(部分I)を含むコアを含む。
【0031】
架橋性シロキサン組成物の部分Iは、少なくとも2つの成分を含む:
a)少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有するオルガノポリシロキサン化合物X;および
b)ヒドロシリル化触媒(成分c)。
【0032】
マイクロカプセルの第2部分は、架橋性シロキサン組成物の第2部分(後で、部分IIとして知られる)を含む。架橋性シロキサン組成物の部分IIは、
c)オルガノハイドロジェン化合物Y;
の少なくとも1種を含む。
【0033】
一実施形態によれば、架橋性シロキサン組成物の部分IIは、化合物XおよびYを含み、こうして、これは、少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンシロキサンとの混合物である。
【0034】
別の実施形態において、架橋性シロキサン組成物の部分IIに用いられる化合物XおよびYの含量は、SiH/不飽和基のモル比が、3から10の範囲であるようなものである。
【0035】
本発明による組成物は、組成物の全重量に対して、1から45重量%、好ましくは1重量%から30重量%の範囲の全含量の化合物Xを含み得る。本発明による組成物における化合物Yの全含量は、組成物の全重量に対して、1から45重量%、好ましくは1重量%から30重量%の範囲であり得る。
【0036】
各成分を下で詳細に説明する。
【0037】
a)少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有するオルガノポリシロキサン(化合物X)
オルガノポリシロキサンは、(R3SiO0.5)、(R2SiO)、(RSiO1.5)、または(SiO2)の単位から独立に選択されるシロキシ単位を含むポリマーであり、式中、Rは、どのような炭化水素系基であってもよい。
【0038】
これらの単位は、環状、線状または分岐状の構造を形成するように、様々な仕方で組み合わせられ得る。
【0039】
有利には、少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有するオルガノポリシロキサンは、非揮発性流体である。
【0040】
表現「非揮発性流体」は、特に、1.33Pa(0.01mmHg)未満の蒸気圧を有する液体(特に、オイル)を意味すると理解されている。
【0041】
特に、化合物Xは、少なくとも2つのシロキサン単位を含み、平均式:
R2RmSiO(4-m)/2
を有するどのようなオルガノポリシロキサンから選択されてもよく、
式中、
Rは、1から10個の炭素原子を有する炭化水素系基であり;
R2は、2から12個の炭素原子(特に、2から6個の炭素原子)を含むアルケニル基(不飽和脂肪族1価炭化水素系基)であり;
mは、0から2の範囲である。
【0042】
アルケニル基R2は、特に置換基R2を含まない他のシロキシ単位(例えば、(R3SiO0.5)、(R2SiO)、(RSiO1.5)、または(SiO2)シロキシ単位、式中、Rは、独立に、1から20個の炭素原子を含む炭化水素系基、代わりとして、1から20個の炭素原子を含むアルキル基、代わりとして、1から12個の炭素原子を含むアルキル基、代わりとして、1から6個の炭素原子を含むアルキル基、代わりとして、1から4個の炭素原子を含むアルキル基、または代わりとしてメチル基である)と組み合わさって、オルガノポリシロキサン分子におけるモノシロキシ、ジシロキシ、またはトリシロキシ単位のいずれかに存在し得る(例えば、(R2R2SiO0.5)、(R2RSiO)、または(R2SiO1.5))が、但し条件として、オルガノポリシロキサンには少なくとも2個のR2基が存在する。特に、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジルまたはフェニルエチルから選択される基であり得る。R2は、ビニル、アリル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、7-オクテニル、9-デセニル、および10-ウンデセニルから選択される基であり得る。
【0043】
特に、R2は、CH2=CH-、CH2=CH-CH2-、CH2=C(CH3)CH2-、もしくはCH≡C-、または類似の置換された不飽和基、例えば、H2C=C(CH3)-、およびHC≡C(CH3)-から選択される基である。
【0044】
化合物Xとして適切である、このようなシロキサンの非限定的例として、次のものを挙げることができる。
(R2R2SiO1/2)v(R2SiO2/2)x
(R2R2SiO1/2)v(R2SiO2/2)x(R2RSiO2/2)y
(R2R2SiO1/2)v(R2SiO2/2)x(RSiO3/2)z
(R2R2SiO1/2)v(R2SiO2/2)x(RSiO3/2)z(SiO4/2)w
(R2R2SiO1/2)v(SiO2)w(R2SiO)x
(R3SiO1/2)v(R2SiO)x(R2RSiO2/2)y
(R3SiO1/2)v(R2SiO)x(R2RSiO)y
(R3SiO1/2)v(R2SiO)x(R2RSiO)y(RSiO3/2)z
(R3SiO1/2)v(R2SiO)x(R2RSiO)y(SiO2)w
(R3SiO1/2)v(R2SiO)x(R2RSiO)y(SiO2)w(RSiO3/2)z
(R3SiO1/2)v(R2SiO)x(R2SiO3/2)z
式中、v≧2、w≧0、x≧0、y≧2、およびz≧0であり、Rは、炭化水素系基であり、
R2は、上で定義されたアルケニル基である。
【0045】
部分Iの成分a)は、また、化合物Xの混合物でもあり得る。
【0046】
化合物Xの分子量は変わり得るし、限定されない。
【0047】
マイクロカプセル内に存在する化合物Xは、溶媒または流体シリコーンで希釈されていてもよい。こうして、カプセル化される化合物X単独、または化合物X + 溶媒もしくは流体シリコーンの混合物は、1から10000mPa.s、代わりとして、50から1000mPa.s、または代わりとして100から1000mPa.sの範囲の、25℃での粘度を有し得る。
【0048】
化合物Xの例として、ビニルジメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン/ポリメチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン/ポリメチルヘキセニルシロキサンコポリマー、ヘキセニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン/ポリメチルヘキセニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサンポリマー、トリメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサンポリマー、ビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、およびビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンポリマーを、
特に、10から300の範囲の重合度を有するもの、または、特に、10から1000mPa.sの範囲である、25℃での粘度を有するものを挙げることができる。
【0049】
好ましくは、化合物Xは、ビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンから選択される。
【0050】
化合物Xは、ビニル官能基を有するポリジメチルシロキサン(ビニルシロキサン)、またはヘキセニル官能基を有するポリジメチルシロキサン(ヘキセニルシロキサン)から、例えば、次の平均式を有するものから選択され得る。
CH2=CH(Me)2SiO[Me2SiO]x'Si(Me)2CH=CH2
CH2=CH-(CH2)4-(Me)2SiO[Me2SiO]x'Si(Me)2-(CH2)4-CH=CH2
Me3SiO[(Me)2SiO]X'[CH2=CH(Me)SiO]x"SiMe3
式中、Meはメチル基であり;
x'≧0であり、好ましくは、x'は、0から200の範囲であり、優先的に、x'は、10から150の範囲であり;
x"≧2であり、好ましくは、x"は、2から50の範囲であり、優先的に、x"は、2から10の範囲である。
【0051】
好ましい化合物Xは、特に、次の平均式のものから選択される。
CH2=CH(Me)2SiO[Me2SiO]x'Si(Me)2CH=CH2
式中、Meはメチル基であり;
X'≧0であり、好ましくは、x'は、0から200の範囲であり、優先的に、x'は、10から150の範囲である。
【0052】
ビニルまたはヘキセニル官能基を有するポリジメチルシロキサンは、知られており、例えば、DOW CORNINGから、SFD 128、DC4-2764、DC2-7891、DC2-7754、DC2-7891、およびDC 2-7463、SFD-117、SFD-119、SFD 120、SFD 129、DC 5-8709、LV、2-7038、DC 2-7892、2-7287、2-7463、およびジヘキセニル末端DC7692、DC7697の名称で市販されている。
【0053】
b)ヒドロシリル化触媒
成分c)は、ヒドロシリル化触媒である。それは、VIII族からの金属に基づく触媒から、例えば、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム、またはルテニウム系の触媒から選択され得る。
【0054】
組成物を架橋させるために用いられるVIII族金属系触媒は、ケイ素に結合した水素原子と、ケイ素に結合したアルケニル基との反応を触媒することが知られているもののいずれかであり得る。
【0055】
好ましくは、白金系触媒、特に、白金金属もしくは白金化合物、または白金錯体の触媒が用いられる。
【0056】
使用され得る白金触媒は、文献US 2,823,218(Speierの触媒として一般に呼ばれるもの)、およびUS 3,923,705に記載されている。白金触媒は、Karstedtの触媒であってもよく、これは、特許US 3,715,334、およびUS 3,814,730に記載されている。Karstedtの触媒は、特に、トルエンのような溶媒中に約1重量%の白金を含むジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体である。代わりとなる一実施形態において、白金触媒は、特許US 3,419,593に記載されているように、クロロ白金酸と、末端不飽和脂肪族基を含む有機ケイ素化合物との反応生成物であり得る。別の実施形態によれば、触媒は、特許US 5,175,325に記載されているように、塩化白金と、ジビニルテトラメチルジシロキサンとの、中和された錯体であってもよい。
【0057】
本発明に適する他のヒドロシリル化触媒は、例えば、次の式のもののようなロジウム触媒である。
[Rh(O2CCH3)2]2、Rh(O2CCH3)3、Rh2(C8H15O2)4、Rh(C5H7O2)3、Rh(C5H7O2)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C5H7O2)、RhX43[(R3)2S]3、(R23P)2Rh(CO)X4、(R23P)2Rh(CO)H、Rh2X42Y24、HaRhbolefincCld、Rh(O(CO)R3)3-n(OH)n、式中、X4は、水素、塩素、臭素、またはヨウ素原子であり、Y2は、アルキル基(例えば、メチルもしくはエチル)、CO、C8H14、または0.5C8H12であり、R3は、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、また、R2は、アルキルもしくはアリール基、または酸素置換された基であり、aは0または1であり、bは1または2であり、cは、1から4の範囲の(両端を含む)整数であり、dは2、3、または4であり、nは0または1である。
【0058】
また、Ir(OOCCH3)3、Ir(C5H7O2)3、[Ir(Z4)(En)2]2、または(Ir(Z4)(Dien)]2のようなイリジウム触媒のいずれかを用いることも可能であり、式中、Z4は、塩素、臭素、もしくはヨウ素原子、またはアルコキシ基であり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである。
【0059】
ヒドロシリル化触媒は、例えば、特許US 3,159,601、US 3,220,972、US 3,296,291、US 3,516,946、US 3,989,668、US 5,036,117、およびUS 5,175,325、ならびにEP 0 347 895 Bに記載されている。
【0060】
ヒドロシリル化触媒は、化合物Xを含む組成物(部分I)に、組成物の100万部当たり0.001重量部(ppm)を超える白金族金属に相当する量で、添加され得る。好ましくは、組成物におけるヒドロシリル化触媒の濃度は、それが、特に化合物Xの全重量に対して、少なくとも1ppmに相当する白金族金属をもたらすことができるようなものである。通常、触媒濃度は、それが、特に化合物Xの全重量に対して、約1から500、さらに良好には1から100ppmに相当する白金族金属をもたらすようなものである。
【0061】
c)オルガノハイドロジェンシロキサン(化合物Y)
化合物Yは、1分子当たり、ケイ素に結合した、平均で2個を超える水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサンである。
【0062】
本発明の趣旨の範囲内で、オルガノハイドロジェンシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH)を含むオルガノポリシロキサンのいずれかを表す。
【0063】
オルガノハイドロジェンシロキサンは、少なくとも1個のSiH基を有する少なくとも1個のシロキシ単位を有するオルガノポリシロキサンであり、そのため、そのオルガノポリシロキサン中に存在する少なくとも1個のシロキシ単位は、次の式:(R2HSiO0.5)、(RHSiO)、または(HSiO1.5)の1つを有する。こうして、本発明に従って使用されるオルガノハイドロジェンシロキサンは、式:(R3SiO0.5)、(R2SiO)、(RSiO1.5)、(R2HSiO0.5)、(RHSiO)、(HSiO1.5)、または(SiO2)の任意の数のシロキシ単位を含み得るが、但し条件として、それらは、分子内に、SiH基を有する少なくとも2個のシロキシ単位を含む。
【0064】
化合物Yは、単一の線状もしくは分岐状オルガノハイドロジェンシロキサンであっても、あるいは、次の特性:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位および配列の少なくとも1つで異なる2種以上の線状もしくは分岐状オルガノハイドロジェンシロキサンを含む混合物であってもよい。オルガノハイドロジェンシロキサンの分子量には特別な制限はなく、通常、25℃での粘度は、3から10000mPa.sの範囲、特に3から1000mPa.sの範囲、さらに良好には10から50mPa.sの範囲であり得る。
【0065】
オルガノハイドロジェンシロキサンに存在するSiH単位の量は変わり得るが、それは、ハイドロジェンシロキサンの1分子当たり、少なくとも2個のSiH単位を含む。SiH単位の含量(%SiHによって示される)は、オルガノハイドロジェンシロキサン中の水素の重量パーセントとして表される。有利には、%SiHは、オルガノハイドロジェンシロキサンの全重量の0.01から10重量%、好ましくは0.1から5%、さらに良好には0.5から2%の範囲であり得る。
【0066】
オルガノハイドロジェンシロキサンは、次の平均式を有し得る。
(R33SiO0.5)a(R42SiO)b(R4HSiO)c
式中、
R3は、水素またはR4であり;
R4は、1から10個の炭素原子を有する1価の炭化水素系基であり;
a≧2であり;
b≧0であり、好ましくは、b=1から500、優先的には、b=1から200であり;
c≧2であり、好ましくは、c=2から200、優先的には、c=2から100である。
【0067】
R4は、置換または無置換の、脂肪族または芳香族の炭化水素系基であり得る。無置換脂肪族1価炭化水素系基として、アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル、ならびにシクロアルキル基、例えばシクロヘキシルを挙げることができる。置換脂肪族炭化水素系基として、ハロゲン化アルキル基、例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、および3,3,3-トリフルオロプロピルを挙げることができる。芳香族炭化水素系基として、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、および2-フェニルエチルを挙げることができる。
【0068】
一実施形態によれば、オルガノハイドロジェンシロキサンは、次の平均式を有するさらなるシロキシ単位を、またはこれらの混合物を含み得る。
(R33SiO0.5)a(R42SiO)b(R4HSiO)c(R4SiO1.5)d;
(R33SiO0.5)a(R42SiO)b(R4HSiO)c(SiO2)d;
(R33SiO0.5)a(R42SiO)b(R4HSiO)c(SiO2)d(R4SiO1.5)e
式中、
R3は、水素原子または基R4であり;
R4は、1から10個の炭素原子を有する1価の炭化水素系基であり;
a≧2、b≧0、c≧2、d≧0、およびe≧0である。
【0069】
別の実施形態によれば、オルガノハイドロジェンシロキサンは、次の平均式を有する、ジメチル、メチルハイドロジェンポリシロキサンから選択され得る。
(CH3)3SiO[(CH3)2SiO]b[(CH3)HSiO]cSi(CH3)3
式中、b≧0であり、好ましくは、b=1から200、優先的には、b=1から100であり;
c≧2であり、好ましくは、c=2から100、優先的には、c=2から50である。
【0070】
オルガノハイドロジェンシロキサンの製造方法は、シリコーンの技術分野においてよく知られており、多くのオルガノハイドロジェンシロキサンが市販されている。
【0071】
カプセルの調製
部分IおよびIIを含む別々のマイクロカプセルを調製するために油相(oily phase)に用いられる化合物Xおよび化合物Yの量は、変わり得る。しかし、シロキサン組成物全体で用いられる量は、化合物Xに存在する不飽和基に対する、化合物YのSiH基の望まれるモル比を達成するために、調節され得る。通常、1を超え、特に1から10の範囲であり、好ましくは1から4の範囲であり、優先的に2から3の範囲である、化合物Xの不飽和アルケニル基に対する、化合物YのSiHのモル比をもたらすのに十分な量の化合物Yが、用いられる。
【0072】
こうして、本発明による組成物では、化合物XおよびYは、化合物Xの不飽和アルケニル基に対する、化合物YのSiHのモル比が、1を超え、特に、1から10の範囲であり、好ましくは1から4の範囲であり、優先的には2から3の範囲であるような含量で存在し得る。
【0073】
シリカ殻マイクロカプセルの水性懸濁液は、先行技術から知られるいずれかの方法によって調製され得る。
【0074】
一般に、シリカ殻マイクロカプセルを調製するために通常用いられる2つの方法がある。
【0075】
第1の技術は、シリカ前駆体と油相を混合した後の、シリカ前駆体のin situ重合を用いる(ゾル-ゲル法としても知られている)。
【0076】
in situ重合法の代表的で非限定的な例は、文献US 6159453、US 6238650、US 6303149、およびWO 2005/009604に記載されている。
【0077】
第2の技術は、シリカ前駆体の重合が乳化重合法により実施される移動法(ex situ process)を用いる。この移動重合法の代表的で非限定的な例は、出願WO 03/066209に記載されている。
【0078】
一実施形態によれば、シリカ殻マイクロカプセルは、
I)水中油エマルジョンを形成するために、架橋性シロキサン組成物の化合物X(または部分I)あるいは化合物Y(または部分II)あるいはヒドロシリル化触媒(別にカプセル化しようとする場合)と、陽イオン界面活性剤の水溶液とを混合すること;
II)テトラアルコキシシランを含み、水と反応するシリカ前駆体化合物を、水中油エマルジョンに添加すること;
III)架橋性シロキサン組成物の部分Iまたは部分IIのいずれかを含むコアと、シリカ殻とを有するマイクロカプセルを形成するために、エマルジョンの油/水の界面でテトラアルコキシシランを重合させること;および
IV)架橋性シロキサン組成物の化合物Xまたは部分Iを含むマイクロカプセルと、架橋性シロキサン組成物の化合物Yまたは部分IIを含むマイクロカプセルと、任意選択で、別にカプセル化される場合、触媒を含むマイクロカプセルとを混合すること;
によって調製される。
【0079】
特に好ましい一実施形態によれば、上のプロセスは、2回(架橋性シロキサン組成物の化合物Xまたは部分Iを含むマイクロカプセルを調製するための第1回、および、架橋性シロキサン組成物の化合物Yまたは部分IIを含むマイクロカプセルを調製するための第2回)実施される。
【0080】
次いで、得られるマイクロカプセルの水性懸濁液は、水性懸濁液としてのマイクロカプセル混合物を形成するために、混合される。
【0081】
本発明の別の実施変形形態において、上のプロセスは、3回(化合物Xを含むマイクロカプセルを調製するための第1回、化合物Yを含むマイクロカプセルを調製するための第2回、および、ヒドロシリル化触媒を含むマイクロカプセルを調製するための第3回)実施される。
【0082】
本発明の好ましい実施形態によれば、架橋性シロキサン組成物の部分Iは、化合物Xおよび前記成分c)を含む。通常、部分Iは、化合物Xと、ヒドロシリル化反応を実施するために有効なヒドロシリル化触媒とを含む。例えば、部分Iは、96〜98重量%の化合物X、および成分c)として2〜4重量%の白金触媒溶液(18ppmの白金を含む)を含み得る。
【0083】
本発明の好ましい実施形態によれば、架橋性シロキサン組成物の部分IIは、少なくとも化合物Yを含む。部分IIは、下に記載されるように、さらなる成分を含み得る。
【0084】
一実施形態によれば、架橋性シロキサン組成物の部分IIは、有利には、化合物XおよびYを含み、したがって、少なくとも2個の不飽和基を有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンシロキサンとの混合物を含む。
【0085】
化合物XおよびYが、部分IIを形成するために混合される場合、それらの量は、シロキサン組成物の架橋に望まれる目標と、得られるフィルムの性質(機械的性質)とに応じて変わり得る。通常、それらの量は、50〜94重量%の化合物X、および6から50重量%の化合物Yの範囲であり得る。
【0086】
別の実施形態において、架橋性シロキサン組成物の部分IIに用いられる化合物XおよびYの量は、SiH/不飽和基のモル比が、3から10、好ましくは4から9の範囲であり得る、優先的には5から7の範囲であり得るようなものである。このような比により、薄いフィルムを形成することによって架橋すると同時に、水性懸濁液として良好な貯蔵安定性を有する架橋性シロキサン組成物を提供することが可能になる。
【0087】
この実施形態における最適化された比は、優れた架橋度のシロキサン組成物を得ると同時に、水性媒体中のこのような組成物の貯蔵安定性を保持することを可能にする。
【0088】
本発明において、表現「油相」は、架橋性シロキサン組成物の化合物Xもしくは部分I、または化合物Yもしくは部分IIを、または他に、ヒドロシリル化触媒およびさらなるオイルを含む。通常、油相は、水中油エマルジョンの調製の間、液体である。油相は、部分Iまたは部分IIとの混合物として、さらなる炭化水素またはシリコーンまたはフッ素化オイルを、好ましくはさらなるシリコーンオイルを含み得る。
【0089】
架橋性シロキサン組成物の部分IまたはIIを含む油相は、他の成分を、特に、炭化水素系またはシリコーン系成分を含み得るが、これらは、他の油相の成分に、雰囲気温度(25℃)で実質的に可溶であり、逆に、水には実質的に不溶である。このようなさらなる成分は、揮発性シリコーン、流体ポリジメチルシロキサン、1000を超える重量平均分子量を有するシロキサン(シリコーンエラストマーおよび樹脂を含めて)、炭化水素オイル、ワックス、ならびにエモリエントから選択され得る。
【0090】
架橋性シロキサン組成物の化合物Xもしくは部分I、または化合物Yもしくは部分II、でなければ、ヒドロシリル化触媒のいずれかを含む油相は、カプセルの破裂を促進する作用剤のような他の知られている成分を含み得る。表現「カプセルの破裂を促進する作用剤」は、カプセル化されたコア物質の制御された放出を、特にケラチン質に付着した組成物のフィルムの脱水の間に、開始するという目的で油相に添加される任意の成分、または成分の混合物を包含する。
【0091】
カプセルの破裂を促進する作用剤は、揮発性の疎水性炭化水素、またはシリコーン化合物から選択され得る。カプセルの破裂を促進する作用剤は、特に、揮発性の分岐状炭化水素化合物、例えば、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソデカン、およびイソドデカン;揮発性の線状シロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、およびデカメチルテトラシロキサン;揮発性の環状シロキサン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデシルメチルシクロヘキサシロキサンから選択され得る。
【0092】
架橋性シロキサン組成物の化合物Xもしくは部分I、または化合物Yもしくは部分II、でなければ、ヒドロシリル化触媒のいずれかを含む油相は、水中油エマルジョンを形成するように、有利には、陽イオン界面活性剤の水溶液と混合される。
【0093】
本発明に従って使用され得る陽イオン界面活性剤は、水酸化第4級アンモニウム、例えば、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化デシルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、水酸化牛脂トリメチルアンモニウム、および水酸化ココトリメチルアンモニウム、さらにこれらの塩、脂肪アミンおよびそれらの塩、脂肪酸アミドおよびそれらの塩、ピリジニウム化合物、ベンゾイミダゾリンおよびポリプロパノールポリエタノールアミンの第4級アンモニウムであり得るが、このリストの陽イオン界面活性剤には限定されない。好ましい陽イオン界面活性剤として、セチルトリメチルアンモニウムクロリドもしくはブロミドが用いられる。
【0094】
陽イオン界面活性剤は、また、両性界面活性剤、例えば、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシサルフェート(cocamidopropyl hydroxysulphate)、ココベタイン、コカミド酢酸ナトリウム、ココジメチルベタイン、N-ココ-3-アミノ酪酸からも選択され得るが、このリストの両性界面活性剤に限定されない。
【0095】
前記界面活性剤は、単独で、または混合物として使用され得る。陽イオンまたは両性界面活性剤は、水に溶け、得られる水溶液は、ステップI)の水中油エマルジョンの成分として用いられる。
【0096】
如何なる理論にも拘束されないが、陽イオンまたは両性界面活性剤の使用は、上で記載されたように、乳化した油相の液滴の界面での、テトラアルコキシシランの縮合および重合に有利であり、結果的に多孔質マイクロカプセルを生じる。テトラアルコキシシランは、エマルジョン中での反応によって、加水分解し、縮合する。加水分解生成物の陰イオン電荷は、陽イオンまたは両性界面活性剤によって、界面に引き寄せられ、そこで、シリカ系ポリマー殻が形成する。
【0097】
水中油エマルジョンの形成の間の陽イオン界面活性剤の濃度は、用いられる油相の重量に対して、0.1重量%から0.3重量%の範囲であり得る。通常、油相の乳化およびアルコキシシランの反応の間の少量の陽イオンまたは両性界面活性剤の使用は、結果的に、マイクロカプセルからの油相の拡散または放出に対して、より抵抗性のあるマイクロカプセルを生じる。
【0098】
さらなる界面活性剤、特に陰イオン界面活性剤が、水中油エマルジョンの形成の間に、添加され得る。適切な陰イオン界面活性剤は、例えば、ポリオキシアルキレン化アルキルエーテル(例えば、ポリエチレングリコールおよびアルキル(C12〜C14)エーテル)、ポリオキシアルキレン化ソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレン化アルコキシレートエステル(alkoxylate ester)、ポリオキシアルキレン化アルキルフェノールエステル、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、ポリビニルアルコール、およびアルキル多糖(例えば、特許US 5,035,832に記載されているもの)であるが、このリストの非イオン界面活性剤に限定されない。
【0099】
陽イオンまたは両性界面活性剤の水溶液は、さらなる水溶性成分を、例えば、水混和性有機溶媒(例えば、エタノール)を含み得る。他の水溶性成分は、ケア配合物に通常用いられる水性相に添加され得る。このような成分は、特に、さらなる界面活性剤、増粘剤、保存剤、抗菌剤、水溶性活性剤、および芳香剤である。
【0100】
油相と、陽イオンまたは両性界面活性剤の水溶液とは、混合されて、水中油エマルジョンを形成する。混合およびエマルジョンの形成は、知られているエマルジョン技術のいずれかを用いて実施され得る。通常、油相と、陽イオンまたは両性界面活性剤の水溶液とは、エマルジョンを形成するために、簡単な混合技術を用いて混合される。エマルジョンのオイル液滴の大きさは、テトラアルコキシシランの添加の前に、エマルジョン技術分野の装置のいずれかによって低下され得る。乳化に用いられる装置は、高圧ホモジナオザー、超音波デバイス、ロータ-ステータ撹拌機、コロイドミル、マイクロフルイダイザー、ブレード(blade)、プロペラ、およびこれらの組合せであり得るが、このリストの装置に限定されない。この追加のプロセスステップは、初期の水中油陽イオンエマルジョン粒子の大きさを、0.2から500マイクロメートルの範囲で、好ましくは0.5から100マイクロメートルの範囲の値に、低下させる。
【0101】
架橋性シロキサン組成物の部分Iまたは部分IIのいずれかを含む油相と水性相との、エマルジョンにおける重量比は、特にマイクロカプセルの懸濁液の配合の間、40:1から1:50の範囲であり得る。通常、油相と水性相の間の重量比は、2:1から1:3の範囲である。油相が非常に粘性である場合、転相法(phase inversion process)が用いられてもよく、この方法では、撹拌されたときに水中油エマルジョンに転化する油中水エマルジョンを形成するように、油相が界面活性剤および少量の水(例えば、油相の重量に対して2.5から10重量%の水)と混合される。望みの濃度にエマルジョンを希釈するために、追加の水が添加され得る。
【0102】
一実施形態によれば、エマルジョンにおける水性相の密度と比べた油相の密度は、ほぼ一致しており、その結果、これらの密度は同一であり得る、または代わりとして、2%だけ、でなければ1%だけ異なり得る、またはたった0.5%だけ異なり得る。
【0103】
前記プロセスの第2および第3ステップは、テトラアルコキシシラン(1から4個(好ましくは1から2個)の炭素原子を含むアルコキシ基を有する)を含む水反応性シリコーン化合物の、水中油エマルジョンへの添加、および、エマルジョンの油/水の界面でのテトラアルコキシシランの重合を含む。如何なる理論にも拘束されないが、プロセスの第3ステップは、テトラアルコキシシラン前駆体が加水分解し、この前駆体の相移動により、油/水の界面で縮合し、コア/殻のマイクロカプセルが形成される、移動乳化重合を行う。
【0104】
テトラアルコキシシラン、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)は、液体の部分縮合体(オリゴマーとしても知られている)、またはモノマーの状態で使用され得る。テトラアルコキシシランは、ケイ素に結合した、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のSi-OH基または加水分解性基を有する、水と反応する1種または複数のケイ素化合物、例えば、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン)、またはアルキルトリアルコキシシランもしくは(置換されたアルキル)トリアルコキシシランの液体縮合体(またはオリゴマー)と組み合わせて使用され得る。加水分解性基は、例えば、ケイ素に結合したアルコキシまたはアシルオキシ基であり得る。水反応性ケイ素化合物は、例えば、50から100重量%のテトラアルコキシシラン、および0から50重量%のトリアルコキシシランを含み得る。テトラアルコキシシランまたは他のシランのアルキルおよびアルコキシ基は、好ましくは、1から4個の炭素原子を、優先的には1から2個の炭素原子を含む。テトラアルコキシシラン、および、用いられる場合、他の水反応性ケイ素化合物は、加水分解し、架橋性シロキサン組成物の部分IまたはIIの乳化した液滴の回りで、縮合して、シリカ系物質の3次元網目としてポリマーを形成する。水反応性ケイ素化合物は、通常、少なくとも75%、特に90〜100重量%のテトラアルコキシシランを含む。テトラアルコキシシランは、SiO4/2単位から実質的に成る3次元網目を形成して、不透過性マイクロカプセルの殻をもたらす。こうして形成される殻は、シリカから成る。
【0105】
水反応性ケイ素化合物は、また、4級化置換アルキル基のような他の有機官能基を有するアルコキシシランも含み得る。4級化アルコキシシランの好ましいタイプは、次の一般式:
(CH3O)3SiCH2CH2CH2N+(CH3)2(CH2)17CH3 Cl-
を有する。
【0106】
水反応性ケイ素化合物は、例えば、10〜100重量%のテトラアルコキシシラン、および0〜90重量%のトリアルコキシシランを含み得る。4級化アミノアルキルトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランの混合物は、前記シリコーン組成物をカプセル化するために、特に有効である。
【0107】
テトラアルコキシシラン、および、用いられる場合、他のケイ素化合物は、架橋性シロキサン組成物のエマルジョンに、希釈されていない液体として、または有機溶媒中の溶液もしくはエマルジョン中の溶液として添加され得る。
【0108】
テトラアルコキシシランおよび水中油エマルジョンは、それらを添加している間に混合される。水中のテトラアルコキシシランは、乳化した液滴の表面で、反応し、重合して、ケイ素系ポリマー殻を形成する。混合は、通常、撹拌技術を用いて実施される。標準的な撹拌技術は、初期の水中油エマルジョン粒子の大きさを維持すると同時に、テトラアルコキシシランが、油/水の界面で重合し、縮合することを可能にするのに十分である。
【0109】
ステップIIにおいて添加されるテトラアルコキシシランの量は、エマルジョンに存在する油相の全重量に対して、6/1から1/13、好ましくは1.2/1から1/7.3、優先的には1.3から1/6.1の範囲であり得る。
【0110】
油/水の界面での水反応性ケイ素化合物の重合は、酸性、中性または塩基性pHで実施され得る縮合反応である。
【0111】
縮合反応は、通常、雰囲気温度、雰囲気圧力で実施されるが、例えば95℃までのより高い温度で、また、より低いもしくはより高い圧力で、例えば、縮合反応の間に生じる揮発性アルコールを除くために真空下に、実施されてもよい。
【0112】
シリカ殻マイクロカプセルの水性懸濁液中のコロイド状シリカ粒子の存在は、マイクロカプセルの貯蔵安定性に限界を設け得る。これらのコロイド状シリカ粒子は、シリカマイクロカプセルの製造の間のテトラアルコキシシランの重合の間に形成する反応副生成物であると見なすことができる。シリカ殻マイクロカプセルのこの水性懸濁液の安定性は、水性懸濁液中のコロイド状シリカ粒子の量を減らすことによって、または、代わりとして、これらのコロイド状粒子の遮蔽剤(sequestrant)の添加によってコロイド状シリカ粒子を抑制することによって、向上し得る。
【0113】
表現「コロイド状シリカ遮蔽剤」は、コロイド状シリカ粒子もまた含む、シリカ殻マイクロカプセルの懸濁液に添加されたとき、コロイド状粒子の反応またはコロイド状粒子の凝結(coagulation)を妨げるような仕方で、コロイド状粒子と相互作用する何らかの化合物または物質を意味すると理解されている。コロイド状シリカ粒子を除去するための技術、および様々なコロイド状シリカ遮蔽剤は、出願US 61/096397に記載されている。
【0114】
本発明による組成物は、有機官能性シランのいずれかであり得るコロイド状シリカ遮蔽剤を含み得る。一実施形態によれば、この有機官能性シランは、第4級化トリアルコキシシラン、例えば、Dow CorningによってDow Corning(登録商標)Q9-6346の名称で販売されているセトリモニウムプロピルトリメトキシシランクロリドであり得る。
【0115】
コロイド状シリカ遮蔽剤は、シリコーンポリエーテル、例えば、Dow CorningによってDow Corning(登録商標)190、193、および2-5657の名称で販売されているものであり得る。
【0116】
本発明による組成物のマイクロカプセルは、0.5から100μmの範囲で、好ましくは1から50μmの範囲の数平均径(number-average size)を有し得る。
【0117】
上に記載されたように、本発明による組成物は、生理学的に許容される媒体を含む。
【0118】
表現「生理学的に許容される媒体」は、本発明による組成物を、皮膚または唇のようなケラチン質に塗布するのに特に適切である媒体を表そうとするものである。通常、生理学的に許容される媒体は、組成物を塗布するはずの支持体の特質に、また組成物をパッケージ化しようとする状態にも適合させられる。
【0119】
生理学的に許容される媒体には、水性相が含まれ得るが、これは、本質的に水を含み得る。
【0120】
それは、また、水と、水混和性溶媒(25℃で50重量%を超える、水との混和性)(例えば、1から5個の炭素原子を含む低級アルコール(例えば、エタノール、もしくはイソプロパノール)の1種または混合物、2から8個の炭素原子を含むグリコール(例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、もしくはジプロピレングリコール)、およびこれらの混合物)との混合物も含み得る。
【0121】
水性相(水、および任意選択で、水混和性溶媒)は、組成物の全重量に対して、5重量%から95重量%、好ましくは10重量%から85重量%、さらに良好には20重量%から80重量%の範囲の含量で存在し得る。
【0122】
生理学的に許容される媒体には、また、1種または複数の揮発性もしくは非揮発性オイルを含む液体脂肪相、ならびに/あるいは、1種または複数のワックスおよび/またはペースト状化合物を含む固体脂肪相、ならびにこれらの混合物も含まれ得る。
【0123】
本特許出願の目的では、表現「液体脂肪相」は、室温で液体である1種または複数の非水性脂肪物質(オイルまたは有機溶媒としても知られている)からなり、室温(25℃)および大気圧(760mmHg)で液体である脂肪相を意味する。
【0124】
オイルは、揮発性オイルおよび/または非揮発性オイル、ならびにこれらの混合物から選択され得る。
【0125】
オイルは、組成物の全重量に対して、1重量%から90重量%、好ましくは5重量%から50重量%の範囲の含量で存在し得る。
【0126】
これらのオイルは、炭化水素系オイル、シリコーンオイル、もしくはフッ素化オイル、またはこれらの混合物であり得る。
【0127】
表現「炭化水素系オイル」は、主に水素および炭素原子を含み、任意選択で酸素、窒素、硫黄およびリン原子を含むオイルを意味すると理解されている。炭化水素系オイルは、8から16個の炭素原子を含む炭化水素系オイル、特に分岐状C8〜C16アルカン、例えば、石油由来のC8〜C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られている)、例えば、イソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られている)、イソデカン、イソヘキサデカン、ならびに、例えば、Isopar(登録商標)およびPermethyl(登録商標)の商用名で販売されているオイル、C8〜C16分岐状エステルおよびネオペンタン酸イソへキシル、ならびにこれらの混合物から選択され得る。
【0128】
やはり挙げることができる炭化水素系オイルには、以下がある:
植物由来の炭化水素系オイル、例えば、脂肪酸とグリセロールのトリエステル、これらの脂肪酸はC4からC24の様々な鎖長を有し得る、これらの鎖は、可能性として、線状もしくは分岐状で、飽和もしくは不飽和である;これらのオイルは、特に、コムギ胚芽油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ゴマ油、トウモロコシ油、アピリコット油、ひまし油、シア油、アボカド油、オリーブ油、大豆油、スイートアーモンドオイル、パーム油、ナタネ油、綿実油、ヘーゼルナッツオイル、マカダミアオイル、ホホバ油、アルファルファ油、ケシの実油、カボチャ油、ゼニアオイ(marrow)油、ブラックカラント油、イブニングプリムローズオイル、キビ(millet)油、オオムギ油、キノア油、ライムギ油、ベニバナ油、ククイ(candlenut)油、パッションフラワー油、もしくはジャコウバラ油;または、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、例えば、Stearineries Dubois社によって販売されているもの、もしくはDynamit Nobel社によってMiglyol 810、812および818の名称で販売されているものである;
-10から40個の炭素原子を含む合成エーテル;
-非極性炭化水素系オイル、例えば、スクアレン、線状もしくは分岐状炭化水素、例えば、液体パラフィン、液体ワセリン、およびナフタレンオイル、水素化もしくは部分水素化ポリイソブテン、イソエイコサン、スクアラン、デセン/ブテンコポリマー、およびポリブテン/ポリイソブテンコポリマー、特に、Indopol L-14、ならびに、ポリデセン、例えば、Puresyn 10、ならびにこれらの混合物;
-合成エステル、例えば、式R1COOR2のオイル(式中、R1は、1から40個の炭素原子を含む線状もしくは分岐状の脂肪酸残基を表し、R2は、炭化水素系の鎖を表し、この鎖は、特に、分岐状であり、1から40個の炭素原子を含むが、但し、条件として、R1+R2≧10である)、例えば、Purcellin oil(オクタン酸セトステアリル)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、C12からC15アルコール安息香酸エステル、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソステアリル、アルコールもしくはポリアルコールとオクタン酸のエステル、デカン酸エステルもしくはリシノール酸エステル、例えば、ジオクタン酸プロピレングリコール;ヒドロキシル化エステル、例えば、乳酸イソステアリル、もしくはリンゴ酸ジイソステアリル;ならびにペンタエリトリトールエステル;
-12から26個の炭素原子を含む分岐状および/または不飽和炭素系鎖を有する、室温で液体である脂肪アルコール、例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-ブチルオクタノール、もしくは2-ウンデシルペンタデカノール;
-高級脂肪酸、例えば、オレイン酸、リノール酸、もしくはリノレン酸;
-ならびにこれらの混合物。
【0129】
本発明において使用され得るシリコーンオイルとして、特に、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、およびドデカメチルペンタシロキサン、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。
【0130】
シリコーンオイルは、また、以下であり得る:
-ポリジメチルシロキサン(PDMS)、
-アルキルもしくはアルコキシ基を含むポリジメチルシロキサン、これらの基は、ペンダントである、および/または、シリコーン鎖の末端にある、これらの基は、それぞれ、3から40個の炭素原子を含む、
-フェニルシリコーン、例えば、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、およびトリメチルシロキシケイ酸2-フェニルエチル;
-ならびにこれらの混合物。
【0131】
本発明による組成物はまた、特にワックス、およびペースト状脂肪物質、ならびにこれらの混合物から選択される、室温で固体である少なくとも1種の脂肪物質も含み得る。これらの脂肪物質は、動物、植物、鉱物、もしくは合成由来であり得る。
【0132】
本発明による組成物は、また、化粧品に通常用いられる成分、例えば、オイル、ワックス、ペースト状脂肪物質、ビタミン、増粘剤、ゲル化剤、痕跡量元素、軟化剤、遮蔽剤、芳香剤、塩基性化もしくは酸性化剤、保存剤、界面活性剤、酸化防止剤、繊維、フィラー、染料、フィルム形成ポリマー、美容活性剤、例えば、殺菌剤もしくは発汗抑制剤、中和剤、エモリエント、モイスチャライザー、およびこれらの混合物も含み得る。
【0133】
言うまでもなく、当業者は、本発明による対応する組成物の利点のある特性が、想定される添加によって悪影響を受けない、または実質的に受けないように、これもしくはこれらの任意選択のさらなる化合物を、および/またはこれらの量を、選択するのに注意を払うであろう。
【0134】
本発明による組成物は、独立に、懸濁液、分散体、溶液、ゲル、エマルジョン、特に、水中油(O/W)、水中ワックスもしくは油中水(W/O)エマルジョン、または多重エマルジョン(W/O/W、もしくは、ポリオール/O/W、もしくは、O/W/O)の状態に、あるいは、クリーム、ペースト、ムース、特にイオン性もしくは非イオン性脂質の、ベシクル分散体、2相もしくは多相ローション、またはペースト、特に、ソフトペーストの状態にあり得る。
【0135】
本発明による、または本発明による方法に用いられる組成物は、顔、手、足、主な解剖学上の襞もしくは身体を、保護、処置、もしくはケアするための組成物(例えば、デイクリーム、ナイトクリーム、メイクアップリムーバークリーム、アンチサン組成物、保護もしくはケア用ボディミルク、アフターサン(after-sun)ミルク、スキンケアローション、ゲルもしくはムース、または人工的日焼け組成物);アフターシェイブ組成物の状態であり得る。
【0136】
それらは、また、用いられる成分の特質に応じて、皮膚、唇、睫毛および/または爪をメイクアップするためにも使用され得る。
【0137】
特に、本発明による組成物は、独立に、ファンデーション、リップ製品(特に、リップスティック)、コンシーラー製品、目元(eye contour)製品、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、ボディメイクアップ製品、またはスキンカラー製品の状態であり得る。
【0138】
一実施形態によれば、本組成物は、身体もしくは顔の皮膚のコーティングのための組成物、より詳細には、身体もしくは顔の皮膚のメイクアップまたはケア組成物、例えば、ファンデーション、またはボディメイクアップ組成物である。
【0139】
当業者は、一方では、用いられる構成成分の特質、特に支持体へのそれらの溶解性を、また他方では、それぞれの組成物の意図される用途を考慮して、彼の一般的知識に基づいて、適切な製品形態(galenic form)、またそれを調製する方法を選択し得る。
【0140】
本発明による組成物は、ケラチン質上への第1化粧品組成物の先立つ塗布によって形成された第1付着物の上に塗布される、仕上げ用組成物(トップコートとしても知られている)として使用され得る。
【0141】
このように、ケラチン質をケアもしくはメイクアップするための、本発明による美容方法の一実施形態によれば、ケラチン質への第1化粧品組成物の塗布によって得られる、ケラチン質上の第1付着物の先立つ形成の後で、本発明による組成物が塗布される。第1化粧品組成物は、例えば、また通常そうであるように、上に記載されたような化粧品成分を含む。
【0142】
本発明が、下に記載される実施例によって、より詳細に例示される。特に断らなければ、示される量は、重量パーセントで表されている。
【実施例1】
【0143】
下の反応性シリコーン成分の系を用いた。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
ビニルシロキサンおよびSiHシロキサンの粘度は、Dow Corning CTM 0050法に従って、ブルックフィールド回転粘度計を用い、20rpmでRVF #2スピンドルにより、23℃で測定した。
【0147】
a)次の2つのマイクロカプセル水性懸濁液を調製した。
懸濁液A:
架橋性シロキサン組成物の部分Iを含むマイクロカプセルの懸濁液は、3.35gのセチルトリエチルアンモニウムクロリド(CCTA)を791.9gの水に溶かすことによって調製した。次いで、水中油エマルジョンを生成するために、675.6gのビニルシロキサン(成分a)および21gの触媒の混合物を、CCTA/水の混合物に加え、Ultra-Turrax T25 Basic装置を9500rpmで180秒間用いた。次に、15μm未満の体積平均粒径(偏差0.9)を有する微細エマルジョンを生成するように、エマルジョンを、APV 1000ホモジナイザーを用い、700barの圧力で撹拌した。エマルジョンのpHは、2.5MのHClを添加することによって3.7に調節した。
【0148】
次いで、12.86重量%(エマルジョンの全重量に対して)のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を加えながら、400rpmで4時間混合した。TEOSの完全な加水分解および縮合の後、4.7μmの体積平均径(偏差0.5)を有するコア/殻マイクロカプセルの水性懸濁液を得た。30%の固形分含量を得るように、水性懸濁液を水で希釈した。次いで、最後に、45℃での増粘を避けるために、0.3%の3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリドを懸濁液に加えた。
【0149】
懸濁液B:
架橋性シロキサン組成物の部分IIを含むマイクロカプセルの懸濁液は、3.35gのセチルトリメチルアンモニウムクロリド(CCTA)を、813.5gの水に溶かすことによって調製した。次いで、600gのビニルシロキサン(成分a)および75gのSiHシロキサン(成分c)を、水中油エマルジョンを生成するために、400rpmで撹拌しながら、CCTA/水の混合物に加えた。次に、エマルジョンを、Ultra-Turrax T25 Basic装置を用い、9500rpmで90秒間撹拌した。次いで、15μm未満の体積平均粒径(偏差0.9)を有する微細な水中油エマルジョンを生成するように、APV 1000ホモジナイザーを用い、700barの圧力で、エマルジョンに、さらに剪断を加えた。エマルジョンのpHを、2.5MのHClを添加することによって4.7に調節した。次いで、12.86重量%(エマルジョンの全重量に対して)のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を加えながら、400rpmで4時間撹拌した。TEOSの完全な加水分解および縮合の後、3.6μmの体積平均粒径(偏差0.5)を有するコア/殻カプセルの水性懸濁液を得た。30%の固形分含量を得るように、水性懸濁液を水で希釈した。次いで、最後に、45℃での増粘を妨げるために、0.3%の3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリドを懸濁液に加えた。
【0150】
b)
次いで、触媒およびベース混合物のマイクロカプセルを含む2つ水性懸濁液AおよびBを、1/1の重量比で混合して、水性懸濁液Cを得た。
【0151】
こうして得た混合物を、45℃に2カ月間保った。貯蔵の後、水性懸濁液は、依然として液体であり、固まらないことを認めた:マイクロカプセルは、漏えいがない状態のままであり、その結果、反応性シリコーン成分のカプセル化に関して良好な特性を有する。
【0152】
ガラスプレート上に水性懸濁液Cを薄く塗ることによって、水の蒸発の後、ガラスプレート上に水性懸濁液Cを薄く塗る間に破壊されたマイクロカプセルから放出された反応性シリコーン成分の反応により生じるフィルムが得られることを認めた。
【実施例2】
【0153】
次の組成を有するフェイシャルケアセラム(serum)を調製した。
実施例1によるマイクロカプセルの水性懸濁液C 15g
グリセロール 3g
ブチレングリコール 2g
ステアリン酸スクロース(CrodaによるCrodesta F110) 1g
シクロヘキサシロキサン 5g
オキシエチレン化(20 EO)メチルグルコース(LubrizolによるGlucam E20) 0.1g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
水 100gとするのに十分な量
【0154】
皮膚に塗布されたセラムは、容易に薄く塗られ、マイクロカプセルから放出されるシリコーン成分の反応の後、皮膚の起伏(skin relief)に完全に合致するフィルムを生じる。
【実施例3】
【0155】
次の組成を有するファンデーションを調製した。
ジメチコン(Dow CorningによるDow Corning 200 Fluid 350cst) 5g
グリセロール 5g
ザンサンガム 0.2g
ステアリン酸グリセロール(WitcoによるWitconol RHT) 1.1g
PDMSでコーティングされた顔料 12g
実施例1によるマイクロカプセルの水性懸濁液C 30g
水 100gにするのに十分な量
【0156】
皮膚に塗布されたファンデーションは、容易に薄く塗られ、マイクロカプセルから放出されるシリコーン成分の反応の後、皮膚の起伏に完全に合致し、また良好な耐移行性を有するフィルムを生じる。
【実施例4】
【0157】
次の組成を有するシャンプーを調製した。
ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2.2molのエチレンオキシドを含む);70%活性物質
15g
ココベタイン;30%活性物質 3g
ミリスチン酸イソプロピル 2g
カルボキシビニルポリマー(Carbopol 980) 0.8g
実施例1によるマイクロカプセルの水性懸濁液C 10g
芳香剤、保存剤 十分量
塩酸 pH5〜5.6にする十分量
水 100gにする十分量
【0158】
このシャンプーで洗った毛髪は、毛髪に快い感じを生じさせる、毛髪繊維のコーティングを有する。
【実施例5】
【0159】
2層ファンデーション
次の成分を含む第1ファンデーション組成物Aを調製した。
ジメチコン(Dow CorningによるDow Corning 200 Fluid 350cst) 5g
グリセロール 5g
ザンサンガム 0.2g
ステアリン酸グリセロール(WitcoによるWitconol RHT) 1.1g
PDMSでコーティングされた顔料 12g
マイクロカプセルの水性懸濁液C 30g
水 100gにする十分量
【0160】
次の成分を含む第2ファンデーション組成物Bを調製した。
ジメチコン(Dow CorningによるDow Corning 200 Fluid 350cst) 5g
グリセロール 5g
ザンサンガム 0.2g
ステアリン酸グリセロール(WitcoによるWitconol RHT) 1.1g
PDMSでコーティングされた顔料 12g
実施例1によるマイクロカプセルの水性懸濁液C 30g
水 100gにする十分量
【0161】
第1ファンデーション組成物Aを顔に塗布する。乾燥後、このメイクアップに第2組成物Bを塗布する。
【0162】
乾燥後、組成物Bのカプセル化されたシリコーン成分の皮膚上での架橋によって得られるフィルムのおかげで、良好な耐移行性を有するファンデーションが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個のアルケニル不飽和基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン化合物X、少なくとも1種のオルガノハイドロジェンシロキサン化合物Y、および少なくとも1種のヒドロシリル化触媒を、生理学的に許容される媒体中に含む化粧品組成物であって、前記化合物XおよびYが触媒の存在下でヒドロシリル化反応により互いに反応し、化合物XおよびYの中の少なくとも1種の化合物が、シリカ殻マイクロカプセルにカプセル化された状態で前記組成物中に存在し、前記触媒が、前記カプセル化された化合物Xおよび/またはYと一緒になっている、あるいは別にカプセル化されており、マイクロカプセルが水性相に懸濁されている、組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の化合物Xまたは少なくとも1種の化合物Yをカプセル化された状態で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
化合物XおよびYが、どちらも、別々にカプセル化された状態で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
マイクロカプセルの第1部分が化合物Xおよび触媒を含み、第2部分が化合物Yを、任意選択で化合物Xと一緒に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
化合物Xが、少なくとも2つのシロキサン単位を含み、次の平均式:
R2RmSiO(4-m)/2
[式中、
Rは、1から10個の炭素原子を有する炭化水素系基であり;
R2は、2から12個の炭素原子を含むアルケニル基であり;
mは、0から2の範囲である]
を有するオルガノポリシロキサンから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
化合物Xが、次の化合物:
CH2=CH(Me)2SiO[Me2SiO]x'Si(Me)2CH=CH2
CH2=CH-(CH2)4-(Me)2SiO[Me2SiO]x'Si(Me)2-(CH2)4-CH=CH2
Me3SiO[(Me)2SiO]X'[CH2=CH(Me)SiO]x"SiMe3
[式中、Meはメチル基であり;
x'≧0であり、好ましくは、x'は、0から200の範囲であり、優先的に、x'は、10から150の範囲であり;
x"≧2であり、好ましくは、x"は、2から50の範囲であり、優先的に、x"は、2から10の範囲である]
から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
好ましい化合物Xが、特に、次の平均式のもの:
CH2=CH(Me)2SiO[Me2SiO]x'Si(Me)2CH=CH2
[式中、Meはメチル基であり;
x'≧0であり、好ましくは、x'は、0から200の範囲であり、優先的に、x'は、10から150の範囲である]
から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
オルガノハイドロジェンシロキサンが、次の平均式:
(R33SiO0.5)a(R42SiO)b(R4HSiO)c
[式中、
R3は、水素またはR4であり;
R4は、1から10個の炭素原子を有する1価の炭化水素系基であり;
a≧2であり;
b≧0であり、好ましくは、b=1から500、優先的には、b=1から200であり;
c≧2であり、好ましくは、c=2から200、優先的には、c=2から100である]
を有し得る、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
オルガノハイドロジェンシロキサンが、次の平均式:
(CH3)3SiO[(CH3)2SiO]b[(CH3)HSiO]cSi(CH3)3
[式中、b≧0であり、好ましくは、b=1から200、優先的には、b=1から100であり;
c≧2であり、好ましくは、c=2から100、優先的には、c=2から50である]
を有する、ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンから選択され得る、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
化合物Xの不飽和アルケニル基に対する、化合物YのSiHのモル比が1を超え、特に1から10の範囲であり、好ましくは1から4の範囲であり、優先的には2から3の範囲である含量で、化合物Xおよび化合物Yが存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ヒドロシリル化触媒が、化合物Xの全重量に対して、1から500ppmの濃度で存在する白金族金属である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
セトリモニウムプロピルトリメトキシシランクロリドを含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
オイル、ワックス、ペースト状脂肪物質、ビタミン、増粘剤、ゲル化剤、痕跡量元素、軟化剤、遮蔽剤、芳香剤、塩基性化もしくは酸性化剤、保存剤、界面活性剤、酸化防止剤、繊維、フィラー、染料、フィルム形成ポリマー、美容活性剤、例えば、殺菌剤もしくは発汗抑制剤、中和剤、エモリエント、モイスチャライザー、およびこれらの混合物から選択される化粧品成分を含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物をケラチン質に塗布することを少なくとも含む、前記ケラチン質をケアおよび/またはメイクアップするための美容コーティング方法。
【請求項15】
化合物XおよびYが、処置されるケラチン質とそれらが接触するときに、互いに反応する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
マイクロカプセルを含む組成物が、ケラチン質上への第1化粧品組成物の先立つ塗布によって形成された第1付着物の上に塗布される、請求項14または15に記載の方法。

【公表番号】特表2012−531455(P2012−531455A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518091(P2012−518091)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059345
【国際公開番号】WO2011/000902
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】