説明

カプセル化された硬化系

キュラティブが固体または半固体キャリアー材内に組み込まれたカプセル化された硬化系を提供し、これによりこの硬化系をカプセル化するカプセル壁を単に破砕または破壊しただけではキュラティブは充分に放出されない。またこのカプセル化された硬化系を組み込んだ接着剤系も本発明は提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の反応性および/または硬化性または重合性成分がカプセル化された接着およびシーラント組成物に関する。特に本発明は、接着およびシーラント組成物の硬化または重合を直接または間接的に開始および/または実行するためのカプセル化された硬化系およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、農薬、塗料、接着剤、シーラントおよび印刷用インクの製造にマイクロカプセル化された成分を使用することがよく知られている。おそらくマイクロカプセルは、通常カーボンレスペーパーと言われている製品において最もよく使用されていることが知られており、カーボンレスペーパーには、その面に圧力が加わった際に放出されるマイクロカプセル化されたインクおよび/または発色剤を含むコーティングが含まれる、またはそのようなコーティングが塗付されている。製造部門および修理部門において最もよく知られているマイクロカプセルの用途は、接着剤およびシーラントである。マイクロカプセル化を利用することにより2液型またはそれ以上の接着剤およびシーラントを1液型の接着剤およびシーラントにすることが可能になる。またマイクロカプセル化によりそのような接着剤およびシーラントを被接着体にそれを使用するまたは設置する現場ではなく、製造または加工現場で予め塗付することができる。接着剤およびシーラントにおけるマイクロカプセル化の利用は、よく知られており、多くの異なる過程を経ている。
【0003】
カプセル化された溶剤型接着剤系は、その構造が種々異なる。Roesch et al.(米国特許第5,922,798号)には溶剤単独またはそれに溶けた樹脂と共にカプセル化され、2つの被接着体を接合するために用いられ、それぞれ溶剤によって溶解または軟化される溶剤型接着剤系が教示されている。Eichel(米国特許第2,907,682号)には接着テープが開示されており、このテープの接着部はカプセル化された溶剤とその溶剤に可溶なカプセル化された固形接着剤とを組み合わせたものを含む。テープを被接着体に貼り、圧力を加えると、カプセルが破裂し、溶剤が接着剤を溶解する、または少なくとも接着剤を粘着性にし、これにより溶剤の蒸発または吸収によって接着層が形成される。溶剤が非揮発性のもの、例えば可塑剤であり、接着剤を支持する被接着体または被接着体が接着される支持体が非揮発性の溶剤を吸収しない場合、溶剤と接着材料との組み合わせにより感圧式接着剤となる。ポリビニルアセテート、ゴム、ニトリルゴム、エチルセルロースまたはセルロースアセテートなどのその他のセルロース誘導体系の接着剤は、特に溶剤活性/再活性式用途に適している。
【0004】
カプセル化された溶剤を利用した熱溶融型接着剤もよく知られている。Baetzold et. al.(米国特許第6,084,010号)は、固体で粘着性または非粘着性熱溶融接着組成物を教示しており、この組成物は、その中に熱溶融液を軟化またはさらに粘着化することができる溶剤のマイクロカプセルを含んでいる。通常スティック状のこの熱溶融型接着剤をそれが塗付される被接着体上で擦ることによってカプセルを破砕し、溶剤を放出し、熱溶融液を軟化させ、被接着体の表面に付着させる。
【0005】
別の種類のカプセル化された接着剤およびシーラントの場合、接着またはシーラント材料もしくは硬化性接着またはシーラント材料の成分が単一のカプセルにカプセル化されている。これらのカプセルは、通常、非粘着性で指触乾燥状態であるバインダー系に含まれ、被接着体に塗付される。このようにして粘着性または液状流動性(liquid flowable)接着剤を予め塗付することができるが、これはカプセル壁自身が破砕し、接着材料を放出または露出させるまで活性化されない、または接着層を形成しない。例えば、Eichel(米国特許第2,986,447号)は、粘着性接着材料のカプセル化を教示している。Wallace(米国特許第4,428,982号)は、硬化性の嫌気性接着剤のカプセル化を教示しており、ここではカプセル化材料が空気透過性であり、これにより使用するまで硬化性接着剤がカプセル内で液体または未硬化状態にある。Schwantes(米国特許第6,592,990号)は、カプセル化された接着剤、特に感圧式接着剤を教示しており、この接着剤ではその成分のカプセル化の後、現場(in-situ)形成される。
【0006】
第3のそしておそらく接着剤およびシーラントのカプセル化で最も一般的な使用は、硬化性または反応性接着剤およびシーラント組成物を使用するものであり、この組成物は、キュラティブ(curatives)または硬化剤(curing agents)および/または架橋剤および/または活性剤、触媒、開始剤、促進剤などのその他の反応剤の存在に依存して、組成物の重合または硬化を行い、所望の接着剤またはシーラントを形成し、この接着剤またはシーラントには1つ以上の反応構成成分がカプセル化され、これらを他の成分から隔離している。これらの接着剤およびシーラント組成物では、多くの異なる種類のものがあり、より典型的なもののいくつかは、モノマー、プレポリマーおよび低分子量ポリマーまたはこれらを組み合わせたものとしてエポキシ、ウレタン、不飽和ポリエステル、アルキドおよび(メタ)クリレートをベースにしている。このような接着剤およびシーラント組成物は、2液以上の系として形成され、これらの液が使用時にアプリケーターで組み合わされることを特徴としている。しかしながら、カプセル化技術の出現により、1つ以上の反応成分をカプセル化し、それを他の成分から離隔することが可能になり、貯蔵安定性を有する1液型接着剤およびシーラント組成物が製せられる。例えば、キュラティブまたは硬化および/または架橋剤および/またはその他の反応剤をカプセル化し、そのカプセルを接着剤またはシーラントのマトリックスを形成する液体重合性モノマーに分散させる。これとは別に液体重合性成分をカプセル化し、カプセルの外壁または液体重合性成分に付着したキュラティブまたは硬化および/または架橋剤を同様にカプセル化してもよい。
【0007】
これらの1液型接着剤およびシーラント組成物は、いくつかの異なるマイクロカプセルを含み、これらマイクロカプセルは、それぞれキュラティブまたは硬化剤および/または架橋剤および/または他の共反応性成分の内の1つを単独で、または接着剤またはシーラント組成物の他の構成成分と共に含む。例えば、フリーラジカル重合性接着剤またはシーラント組成物では、酸化剤(典型的には過酸化物)および還元剤(典型的にはアミンおよび/またはメタロセン)が別のカプセルに存在する限り、系は安定する。この場合、2つの異なるマイクロカプセルを使用してもよく、各マイクロカプセルは重合性成分の一部および上述の硬化剤および/または共反応剤の内の1つ以上を含む。同様に共反応重合性の系の場合、共反応性種は、それぞれ別のマイクロカプセルにカプセル化される。
【0008】
プレアプライド(pre-applied)接着剤およびシーラント組成物の場合、通常液体接着剤またはシーラント組成物がその中に分散されているカプセル化成分を含み、この組成物は、被接着体に塗布され、その上にポリマーフィルムが形成され、液体接着剤またはシーラントを包み込む。このポリマーフィルムは、液体接着剤またはシーラント組成物を所定の位置に保持し、保護バリアーを形成すると共に液体接着剤またはシーラント組成物を指触乾燥状態にする。しかしながら、接着剤またはシーラントの硬化性または重合性成分はカプセル化された状態、即ち個々のマイクロカプセルの形状で存在しない。
【0009】
プレアプライド接着剤およびシーラントの第2の態様は、特に液体重合性成分などの接着剤またはシーラントの成分の1つ以上が複数のマイクロカプセルにカプセル化され、これらマイクロカプセルが液体硬化性、重合性または固化性(hardenable)バインダー系に分散されるものである。この態様では1つ以上の固体キュラティブまたは硬化剤またはカプセル化された液体重合性成分を硬化または重合させるための1つ以上の固体活性材、触媒、開始剤、促進剤などをカプセル化せずにバインダーに分散させてもよい。これとは別に接着剤またはシーラント組成物の全ての成分を液体バインダーに分散される複数の異なるマイクロカプセルにカプセル化してもよい。使用に際しては、これらの変性されたバインダーの系のそれぞれを接着する被接着体に塗布し、硬化または重合させ、マイクロカプセルを被接着体表面に結合させる。好適なバインダー系は、接着剤またはシーラント組成物の硬化または重合の間、その組成物と共反応しても、しなくてもよい。ほとんどの場合、バインダーは、共反応しないが、その代わり重合性または硬化性組成物のフィラーとして作用する。
【0010】
これらのカプセル化された接着剤およびシーラント組成物の活性化は、マイクロカプセルを粉砕することによって行われ、これにより液体重合性成分は、硬化剤、活性剤、触媒、開始剤と接触する。これらの成分の混合は、接着される被接着体へ圧力を加えるまたは被接着体同士の相対移動によって生じる流れによって確実に混合される。従って混合が制限されることによって、このような系は、混合の機会を最大限にするために可能な限り流動性を有することが重要である。粘度が増加するほど、混合されにくくなり、従って硬化性材料の一部しか硬化されなくなる。より重要なことは、粘度が増加すると、不可能ではないが、カプセル化が困難になるということである。カプセル化が可能な場合でも、カプセルの粒径が問題になる。通常、高粘度の液体をカプセル化する場合、多数の大きい粒子および小さい粒子となるか、または大きな粒子および小さな粒子が少ない放物線状に分散したマイクロカプセルが得られる。
【0011】
このようなカプセル化された接着剤およびシーラント組成物の出現によってこの接着剤および/またはシーラント系が使用される最終用途が大幅に拡大および/または単純化されているが、これらに足りないものがないわけではない。カプセルの意図しない早期の破壊が、特に接着剤またはシーラントがその迅速な配送および塗布を必要とする工業製造工程に使用される場合、特にプレアプライド接着剤またはシーラントにおいて、接着剤またはシーラントがプレアプライドされる被接着体が同じようにこのような製造工程で処理され、繰り返し取り扱いまたは移動するような場合、最も一般的な問題になる。早期の破壊の心配は、しかしながら、カプセル化された接着剤の塗布および使用に限らない。早期の破壊は、マイクロカプセルの貯蔵および取り扱いならびに特にカプセル化された成分を接着剤またはシーラントのマトリックスに組み込む間またはプレアプライド接着剤においては、カプセル化された接着剤系をバインダー材に組み込む間の接着剤の製造および処理において重要な問題である。早期の破壊の問題は、チキソトロピック性で、高粘度を有し、および/またはフィラー、特に粒状のフィラーおよび鋭い縁部を有するフィラーを組み込む、または高せん断混合および吐出工程に晒される系では大きくなる。
【0012】
早期の破壊の問題を克服するためにマイクロカプセル壁の厚みを増加させることがよく行われる。これは特にプレアプリライド接着剤およびシーラント、特にネジ係止またはネジ封止プリアプライド接着剤およびシーラントで行われる。これにより、30重量パーセント以上、典型的には10乃至20重量パーセントのカプセル化された成分を含むセル壁は、使用時に塗布されるこれらの1液系接着剤または15乃至25重量パーセントになるプレアプライド接着剤では特別なことではない。しかしながら、マイクロカプセルの壁が厚くなればなるほど、同じ重量または容量の接着剤またはシーラントでは利用可能な硬化性材料が少なくなってしまう。さらに接着面または封止部を形成するためのボンドラインで硬化性材料の量が少なくなってしまう。硬化性材料の量が制限されるので、流動性が不足し、被接着体の表面の濡れが不足する。さらにガラス板の間に挟まれた砂粒のように多量の殻壁の破片によって2つの被接着体の間に隙間ができ、硬化性材料が少ないことおよび低粘度によってこの隙間を埋めることは困難になる。
【0013】
さらにマイクロカプセル壁の厚みが増加すると、必要なときに壁を壊すのが困難になる。従って、より大きな力がそれ相応の量の液体硬化性または重合性成分を確実に放出するのに必要になる。このような場合のカプセルの破裂は、通常、指または手による圧力、ピンチローラーおよび/またはねじ切り部材によるネジきりによって生じるので、マイクロカプセルの破壊の度合いは、カプセル壁が厚くなるほど、特に加えられる圧力の量がそれに応じて増えなければ小さくなってしまう。これは多くの回転が利用されるねじ切り用途以外の用途で特にそのようになる。従って特定の最終用途によっては、液体硬化性または重合性成分の不十分な放出により封止または接着強度が劣る、または小さくなるので、所定の用途ではこのような材料の性能または適用性が制限されてしまう。同様にねじ切り部材の接着および/または封止にしばしば見られるように、多量のプレアプライド接着剤またはシーラントが液の使用に起因した硬化した材料の同じ接着または封止容量を得るためにプレアプライド接着剤およびシーラント組成物とは対照的に必要になる。
【0014】
より厚みを増したカプセル壁の必要性を緩和するために、接着剤またはシーラント組成物に「スペーサー」粒子として中空のマイクロ球体(microspheres)を組み入れいることも知られている。例えば、Hinterwaldner(米国特許第4,362,566号)では、接着剤の貯蔵安定性を高め、接着材料の活性化および利用中のマイクロカプセルの破砕を促進するために中空のマイクロ球体を採用している。しかしながら、このようなマイクロ球体の添加は、さらに別の添加剤を加えることになり、そのマイクロ球体の量に対応して多量の接着剤およびシーラントを使用しなければ同じ接着または封止量が得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、カプセルのセル壁の厚みが最小限に抑えられ、液体硬化性成分の量が多いカプセル化された接着剤およびシーラント組成物が望まれている。
【0016】
また制御された流動特性、特に高いまたは従来のカプセル化接着剤およびシーラント組成物より高い粘度を有し、そして特に広い温度範囲に亘って殆ど一定のレオロジーを有することによって隙間での使用および液体硬化性材料の流出が望ましくない他の状況で使用できるカプセル化された接着剤およびシーラント組成物が必要とされている。
【0017】
またカプセルの意図しない早期の破壊または破砕が生じたとしても硬化性または重合性成分の反応または重合を最小限に抑えることができるカプセル化された接着剤およびシーラント組成物が必要とされている。
【0018】
また特定の用途の場合、被接着体およびその面の接着および/または封止に関係のない成分または材料を使用しないで上記の目的を達成することが望まれている。
【0019】
また高速で行われる工業製造工程の使用に好適な1液式の貯蔵安定性を有する接着剤およびシーラント組成物も必要とされている。
【0020】
また大きな圧力および力によって活性化せずに特に所定の被接着体にプレアプライドされた状態で耐え得るプレポリマー接着剤の提供も望まれている。
【0021】
本発明では接着剤およびシーラント組成物の硬化または重合を直接または間接的に開始または行うためのマイクロカプセル化された硬化系が提供される。これらのマイクロカプセル化された硬化系は、少なくとも1つの硬化剤と、キャリアーと、この中で硬化剤が分離相として分散し、または硬化剤の一部また全体がキャリアーに可溶化されたまたはキャリアーと混和性である、キャリアーをカプセル化するポリマーシェルとを含み、キャリアーは、外部の力を受ない状態では実質的に非流動性である。キャリアーは、高温で軟化または流動するが、常温で固体または半固体、接着剤またはシーラントの液体硬化性または重合性成分に晒されると軟化または流動する固体または半固体、パティまたはゲル状の材料または僅かな力が加わることによって流動するように最後の2つを組み合わせたものであることが好ましい。カプセル化された硬化系の好ましい態様では、硬化剤とそれが加えられる硬化性組成物とが均質混合されるまで、硬化剤が硬化性組成物を実質的または完全に硬化させない。
【0022】
より具体的には本発明は、硬化性組成物のためのカプセル化された硬化系に関し、この硬化系は、(a)キャリアー材と、(b)このキャリアー材に含まれるキュラティブと、(c)キャリアー材を包むポリマーカプセルとを含み、このキャリアーは、外部の力が加わらない、または高温に晒されないと実質的に非流動性である天然または合成材料または組成物である。キャリアー材料は、(a)軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有し、(b)(i)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分に可溶である、またはこのマトリックス成分によって軟化される、(ii)硬化性組成物が硬化される、または重合される反応および/または環境的条件によって軟化される、または(iii)キュラティブを接着剤またはシーラントの硬化性、重合性または架橋性成分に利用できるようにする方法または工程によって軟化される固体または半固体であることが好ましい。ある1つの態様では、パティ状またはゲル状の特性を有するキャリアーは、モノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらを組み合わせたものを含むチキソトロピック性を有する、または増粘された組成物であり、この組成物は、カプセル化された状態のキュラティブと実質的に反応しない。またはイン−シツ発生されるまたはキャリアー材のカプセル化と同時またはその後に潜作用する1つ以上のチキソトロープ剤または非チキソトロープゲル化剤または増粘剤であるまたは含むキャリアーについても実施されている。キャリアー用に考慮される種々の材料の中には、熱溶融液、感圧性接着剤、ゴム材、エラストマー/粘着付与剤組成物、Tgが35℃未満のポリマー、半固体および固体樹脂、スターチおよびスターチ系ポリマー、ヒドロゲル、低温ワックス、1つ以上のモノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらの混合物の増粘またはゲル化された素材がある。特定の用途ではキャリアーは、接着剤であるか、または潜接着性を有するのが望ましい。流動させるまたは変形させるのに力を必要とするこれらのキャリアーではその力は、少なくとも1psiでなければならない。またキャリアー中に分散されたまたは連行されたキュラティブは、キャリアー中で実質的に非移動性である、および/またはカプセル壁が実質的にキュラティブに対して非透過性であることが好ましい。使用を簡単にし、より均一に分配するためにキュラティブとキャリアーは互いに非移動性であることが特に望ましい、一般的に言えば、キュラティブは、カプセル化された硬化系の全重量基準で約0.1重量パーセント乃至約25重量パーセントの量で存在し、および/またはシェルは、カプセル化された硬化系の約0.8重量パーセント乃至約25重量パーセントを構成する。
【0023】
別の態様では本発明のカプセル化された硬化系は、(a)キャリアー材と、(b)このキャリアー材に含まれるキュラティブと、(c)このキャリアー材を包むポリマーカプセルとを含み、キャリアー材は、外部の力が加わらない、または高温に晒されないと実質的に非流動性である天然または合成材料または組成物であり、キュラティブが分散または溶解している液体キャリアー前駆体組成物からカプセル化と同時またはその後にイン−シツ形成される。
【0024】
また本発明は、上記カプセル化された硬化系の調製方法に関する。この方法には、(1)硬化剤を含む非液状のキャリアー粒子のカプセル化と、(2)硬化剤が分散または溶解し、室温でおよび/または高せん断力が加わらなければ固体または粘性であるが、高温および/または高せん断力が加えられると液体または流動性になる感熱および/または感せん断性材料の分散体のカプセル化と、(3)硬化剤が分散または溶解し、硬化剤を消費せず、また消費した場合、全てまたは実質的に全ての硬化剤を消費することなく硬化または重合する液体前駆体組成物の液体ビーズの分散体のカプセル化などがある。最後の方法では、前駆体組成物の硬化は、イン−シツで、カプセル壁の形成と同時またはその後に起こる。このような硬化は、カプセル化される硬化剤によってまたは好ましくはキャリアー前駆体組成物の重合性または硬化性成分を硬化または重合させるのに好適な別の硬化剤によって全体的にまた部分的に行われる。さらに上述の第2および第3の方法では、(a)潜ゲル化および/または増粘剤成分である、またはこのような成分を含む、または(b)イン−シツでそのようなゲル化または増粘剤を形成する材料または前駆体組成物を使用してもよい。このような増粘またはゲル化剤は、温度依存性または時間およびせん断依存性であってもよく、またはイン−シツでゲルを形成するために反応してもよい。
【0025】
より具体的には本発明は、硬化性組成物を重合させるカプセル化された硬化系の製造方法に関し、この方法は、
(a)活性剤に対して実質的に非活性であるモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマー組成物にキュラティブを均一に分散または溶解させる工程と、
(b)工程(a)の組成物の微小滴を形成する工程と、
(c)この小滴を重合する工程と、
(d)壊れやすい高分子材料に重合された小滴をカプセル化する工程とを含む。上述の小滴を形成するために種々の方法があり、例えば沈殿重合、溶液重合、懸濁重合および分散重合などが挙げられる。
【0026】
別の態様では本発明の方法は、
(a)活性剤に対して実質的に非活性であるモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマー組成物にキュラティブを均一に分散または溶解させる工程と、
(b)工程(a)の組成物の微小滴を形成する工程と、
(c)第2の重合性材料中に工程(a)で得られた組成物の小滴をカプセル化する工程と、
(d)カプセル化された小滴の重合前にまたは同時に第2の重合性材料を重合する工程とを含む。ここではカプセル化は、コアセルベーション、界面重合、空気懸濁、遠心押し出し、スプレードライ、パンコーティングまたは(a)の小滴を第2の重合性材料の分散体に加え、この分散体に圧力ショック波を加えることによって行われる。
【0027】
また別の態様においては、本発明のカプセル化された硬化系の製造方法は、
(a)活性剤に対して実質的に非活性であるモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマー組成物にキュラティブを均一に分散または溶解させる工程と、
(b)工程(a)の組成物を重合する工程と、
(c)重合された工程(a)の組成物を粒子状にする工程と、
(d)壊れやすい高分子材料に粒子をカプセル化する工程とを含む。
【0028】
またこれとは別に本発明の方法は、
(a)キュラティブをこのキュラティブと非反応性の感熱性材料の溶融液に均一に分散させる工程と、
(b)好適な液体媒体中でこの溶融液の分散液、エマルジョンまたは懸濁液を作成する工程と、
(c)壊れやすい高分子材料にこうして得られたビーズをカプセル化する工程と、
(d)溶液の温度を下げてカプセル化工程の前に、同時にまたは後に溶融液を硬化させる工程とを含む。
【0029】
また本発明は、上述のカプセル化された硬化系を含む硬化性および重合性組成物に関する。この硬化性および重合性組成物は、液体硬化性成分中に分散したカプセル化された硬化系を有する1液(ワンパッケージ)系液体硬化系の形態であってもよい。これとは別にこの硬化性および重合性組成物は、カプセル化された硬化系粒子およびカプセル化された硬化性成分粒子のドライブレンドであってもよい。さらに本発明のこの硬化性および重合性組成物は、カプセル化された硬化系粒子およびカプセル化硬化性および/または重合性成分粒子の混合物を含む液体バインダーを含んでもよい。また本発明は、プレアプライドされた前述の硬化性/重合性組成物を有する被接着体およびこの硬化性/重合性組成物を活性化する方法に関する。
【0030】
より具体的には本発明は、上述の硬化性または重合性モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの1つ以上と、カプセル化されたキュラティブの1つ以上とを含み、このカプセル化されたキュラティブの少なくとも1つが(a)キャリアー材と、(b)このキャリアーに含まれたキュラティブと、(c)このキャリアーを包むポリマーカプセルとを含み、キャリアー材が外部の力が加わらないまたは高温に晒されないと実質的に非流動性である天然または合成材料または組成物である。キャリアー材料は、(a)軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有し、(b)(i)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分に可溶であるまたはこのマトリックス成分によって軟化される、(ii)硬化性組成物が硬化されるまたは重合される反応および/または環境的条件によって軟化される、または(iii)キュラティブを接着剤またはシーラントの硬化性、重合性または架橋性成分に利用できるようにする方法または工程によって軟化される固体または半固体であることが好ましい。このようなキャリアー材は、1つ以上のチキソトロープ剤または非チキソトロープ性ゲル化剤または増粘剤、特に作用の遅いものまたは天然に存在するものを含んでもよく、これらはキャリアー材のカプセル化と同時またはその後にキャリアー内でイン−シツ発生されてもよい。好適な硬化性または重合性モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーとしては、ビニル重合されたもの、即ち少なくとも1つのビニル基CH2=CH−および/または反応性不飽和(すなわち、−C=C−);不飽和ポリエステル;ウレタン;エポキシ樹脂;ポリスルフィド;イソシアネート;シリコーン;シラノール縮合またはヒドロシリル化反応を受けることができるシラノール基を有するポリエーテル、ポリウレタンおよびポリオレフィン;およびフェノキシ樹脂などが挙げられる。その好ましい態様では、キャリアーに分散または連行したキュラティブは、キャリアー内で実質的に非移動性である、および/またはカプセル壁が実質的にキュラティブおよび/または重合性成分に対して非透過性である。
【0031】
また本発明は、このような重合性組成物に関し、この組成物では、硬化性組成物の重合、硬化または架橋に必要なキュラティブの1つだけがカプセル化されたキャリアー内に含まれ、その他の必要な硬化剤は、硬化性成分に分散しているか、または溶解している、または組成物が塗布される被接着体面に固有に存在している。また別の態様では、硬化性組成物が少なくとも2つの異なるカプセル化された硬化系を含み、これら硬化系は、それぞれ異なるキャリアー材および/または異なるキュラティブとを含む。本発明の特に重要な特徴は、本発明のカプセル化された硬化系のカプセル壁が破損したとしても、キャリアーに連行されたキュラティブが放出または硬化性組成物の硬化性成分に晒される条件が得られる、そして必要に応じて残りのキュラティブが硬化系を遂行するまたは活性化するのに必要とされるまでまたは必要とされない限り、硬化性成分が実質的に重合、硬化または架橋しないということである。
【0032】
また別の態様では本発明は、製造業の工業的または商業的ストック材、物品の形状の被接着体にプレアプライドされる硬化性組成物に関し、その硬化性成分もカプセル化される。このような態様においては、種々のカプセル化された成分がこれを被接着体に塗布するまたは保持するための好適なバインダーに分散されている。
【0033】
また本発明は、製造業の工業的または商業的ストック材、物品の形状の被接着体に関し、これには上述のプリアプライド硬化性組成物が塗布されている。
【0034】
また別の態様では、本発明は、工業的接着工程に関し、上述のカプセル化された硬化系およびこれを含む硬化性組成物が採用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明を実施する際に好適に使用される硬化剤は多岐に亘る。特定の硬化剤が硬化性または重合性接着剤および/またはシーラント材の化学的性質、硬化される接着剤またはシーラントの性質および硬化メカニズム、接着剤またはシーラントが重合または硬化される方法および条件、接着剤またはシーラントが塗付される被接着体の最終用途および/または性質、硬化剤とキャリアー、その前駆体および/またはカプセル化された材料との適合性に応じて選択される。1つの類の硬化剤としては、硬化剤およびハードナー並びにこれらと共にこれらの材料の架橋または固化を開始、促進または触媒する作用物質を含むポリマーおよびプレポリマー材料の架橋を伴うものが挙げられる。別の類の硬化剤としては、例えば活性剤、共活性剤、促進剤、共促進剤、触媒、共触媒、開始剤および共開始剤などを含む1つ以上の重合性モノマー、プレポリマーおよび/または低分子量ポリマーの重合を伴うもの、特にフリーラジカル重合を伴うものが挙げられる。便宜上特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用する「キュラティブ」および「硬化剤」は、このような作用物質の全てを意味する。種々のキュラティブの具体例は、下記のそれらを採用する種々の接着剤およびシーラント系について説明する際に詳しく説明する。
【0036】
本発明を実施する上で使用するのに好適なキュラティブが一部を構成する重合性、硬化性または架橋性接着剤およびシーラント組成物もまた多岐に亘る。特定の接着剤およびシーラント組成物がそれが塗付される最終用途および環境、採用される硬化メカニズム、キュラティブを接着剤またはシーラントの硬化性、重合性または架橋性成分に対して利用可能にする方法および接着剤またはシーラントと使用されるキャリアーとの適合性に応じて選択される。一般的に言えば、本発明は、本明細書で開示したように殆どの1液および2液以上の系の接着剤およびシーラント組成物に適用可能である。現在、カプセル化は従来の1液系に使用されていないが、本発明は、1液系を処理中にその1液系を重合または硬化を開始させる、または生じさせる条件に晒される被接着体への塗付を可能にする。例えば、熱硬化性1液型接着剤またはシーラントを被接着体の処理中ただし所望の硬化または重合が行われる前にその1液系の硬化または重合を開始するのに充分な熱に晒される被接着体に予め塗付してもよい。便宜上、特に明記しない限り、「硬化性組成物」なる用語は、本明細書および特許請求の範囲に使用される場合、全ての硬化性、重合性および/または架橋性組成物を意味する。同じように次の用語が従来から使用されている意味で使用されていないことを明確にしていない限り、「硬化」、「重合」および「架橋」なる用語は、本明細書および添付の特許請求の範囲では互換性のある用語として使用される。
【0037】
キャリアーは、カプセルの調製に使用される方法および材料、硬化系が使用される用途、キャリアーが使用される硬化性組成物の化学的性質およびキュラティブを接着剤またはシーラントの硬化性、重合性または架橋性成分に対して利用できるようにする方法に応じて多数の異なる材料のいずれかが使用される。一般的に言えば、キャリアーは、(a)軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有するもの、または(b)(i)キャリアーが共に使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分に可溶であるまたはこのマトリックス成分によって軟化される、(ii)硬化性組成物が硬化されるまたは重合される反応および/または環境的条件によって軟化される、および/または(iii)キュラティブを接着剤またはシーラントの硬化性、重合性または架橋性成分に対して利用できるようにする方法または工程によって軟化される固体または半固体である天然および合成材料または組成物から選択される。キャリアーは、実質的に高分子またはオリゴマー成分および/または単量体成分で構成されてもよく、ただしキャリアー組成物はそれ自身、上述の特徴を示す。さらに本発明の硬化系は、それぞれが同じまたは異なる硬化剤を含む異なるカプセル化されたキャリアーの混合物を含んでもよいことを理解されたい。キャリアーは、チキソトロープ剤または潜チキソトロープ剤でもよく、またはこれらをイン−シツ発生させるものであってもよい、しかしながら、マイクロカプセルの粒径が小さいことから、チキソトロピーは、キャリアーを含む組成物または材料に特有または特有にしなければならない。ヒュームド・シリカなどの従来の無機チキソトロープ添加剤は、現代では、マイクロカプセル化された硬化系の粒径に比較して現在の無機チキソトロピック添加剤の粒径が大きいので本発明のマイクロカプセル化された硬化系の調製に使用するのは適切ではないと考えられている。これとは別にまたは加えて、キャリアー組成物は、カプセル化工程の直前またはカプセル化工程中のキャリアーまたはキャリアー前駆体材料が低粘度であり、カプセル化後に高粘度になり、イン−シツ発生されるように潜在的に作用する1つ以上のチキソトロピックゲル化剤または増粘剤を含むまたはから構成されてもよい。本願および添付の特許請求の範囲で使用されているように、「軟らかい」および「パティ状」なる用語は、これら用語が付された材料が中程度の力、通常少なくとも1psi、好ましくは少なくとも5psiの力を加えなければ流動または変形しないことを意味する。これらの軟らかい、またはパティ状の材料は、弾性を全く有しないか、小さいまたは中程度の弾性を有してもよく、好ましくは充分かつ繰り返し加えられる力がカプセル化されたキャリアーに作用する際に、キャリアー内のより多くのキュラティブが露出する、または利用可能になるように、ケーキフロスティング(cake frosting)のような弾性からパン生地(bread dough)のような弾性の範囲の稠度および弾性率を有する。同様にキャリアー材を軟化すると言った場合、これはキャリアー材が、例えばキャリアーの全てまたは一部が可溶性、混和性または膨潤性になる硬化性組成物の液体成分に晒されると、または熱に晒されるまたはゴム製のキャリアー材料の場合、素練りされることなどの特定の材料および/または条件に晒されることによって軟らかくなる、またはパティ状になる、さらに流動性になることを意味する。
【0038】
キャリアーとして使用するのに好適な材料の例としては、熱溶液、感圧接着剤、ラバー材料および他の低Tg材料などの多くの低Tg材料のいずれか、半固体および固体材料、スターチおよびスターチ系ポリマー、ヒドロゲルおよび低温ワックスなどが挙げられるが、これらは上述の特徴の1つ以上を満たし、かつ、硬化性組成物の硬化または重合を阻害しない、または硬化、重合または架橋した組成物の所望の接着および封止性を物質的に劣化させないということが条件になる。
【0039】
またキャリアーは、有機および無機のチキソトロピック増粘ゲル化剤、特に例えば塗料、接着剤、シーラント、エンジン油、工業用油および食品の流動性および流動学的特性を調整するために商業的に使用されているものを含んでもよい。好適な有機高分子増粘またはゲル化剤としては、「クラトン(Kraton)」という商品名で販売されているスチレン/オレフィンブロック共重合体および種々の可塑剤、増粘剤、流れ調整剤などと化学的または物理的に関連する種々の低分子が挙げられる。上述したように従来の無機チキソトロピック剤、増粘剤およびゲル化剤は、これらの粒径が極めて小さくならない限り、そしてカプセル化されるキャリアー材またはキャリアー前駆体のビーズの粒径が非常に大きくならない限り、マイクロカプセル化された硬化系の調製に使用するには好ましくない。しかしながら、技術が進歩してナノサイズの無機チキソトロピック剤、増粘剤およびゲル化剤の製造が可能になれば、これらの材料が本発明の実施に利用可能になることは当然のことである。
【0040】
一方、キャリアーまたはその成分は硬化性組成物および/またはキュラティブと共反応性であってもよい。例えば、硬化性組成物に関して言えば、キャリアーは、硬化性組成物の重合性モノマー、プレポリマーおよび/またはポリマーと共におよびこれらが重合または硬化する間に反応または架橋部位としての役割りを果たす官能基を有してもよい。これとは別に、かつ、好ましくはキャリアー組成物は、(a)硬化性組成物の液体硬化性成分によって共重合する1つ以上の液体単官能および/または多官能モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの混合物(「混合物(a)」)と、(b)(i)作用の遅い、潜ゲル化剤または増粘剤である、(ii)温度活性ゲル化剤または増粘剤(高温ではゲル化しない)および/または(iii)感せん断性ゲル化剤または増粘剤である粘度変性剤とを含んでもよい。この態様では、キャリアー組成物は、混合物(a)の微細ビーズまたは小滴がカプセル化のために調製され、高粘度に戻って、またはなって、その後上述のキャリアーの特性を示すカプセル化工程中にそれが低粘度になる条件、即ち粘度変性剤が作用しない、または実質的に作用しない条件に晒される。例えば、粘度を低下させる高温またはせん断力を小滴の形成の後で殻壁または殻壁形成材料の塗付または沈着の前、または同時にまたは続いて取り除いてもよい。これとは別に小滴の形成の後、混合物(a)のエマルジョン、分散液、懸濁液、コロイドなどを潜ゲル化または増粘剤のゲル化性または増粘性を作用させる、または促進させる条件に晒してもよい。混合物(a)を含むキャリアーを採用することによって最終的な硬化性組成物中の液体硬化性成分の量を最小限に抑え、かつ、硬化したまたは重合した硬化性組成物の特性に影響を与える可能性のある他の不活性成分および/または他の成分の量を最小限に抑えることができるという付加利益が得られる。
【0041】
キャリアーが増粘剤、ゲル化剤またはチキソトロピック剤である場合、ビーズの形成時の粘度は、低または中程度のせん断力によって微細小滴が形成され、形成されるカプセル化された硬化系の所望の粒径および粒径分布に一致するような低い粘度である。増粘、ゲル化またはチキソトロピック状態において、その粘度は、中程度から高いせん断力では微細、好ましくは実質的に均一な小滴の調製または非常に狭い、かつ、従来の釣鐘曲線粒径分布が得られないような粘度である。
【0042】
またキュラティブは、キャリアー組成物の特定のまたは全ての成分の重合に関与するが、キャリアー前駆体に組み込まれるキュラティブの量は、キャリアーの重合完了後に硬化性組成物を硬化させるのに適当な量のキュラティブが残存するのに充分な量でなければならない。好ましくは硬化性組成物のための硬化剤は、キャリアーの硬化または重合に関わらない、または大きく関わらない。その代わり、キャリアー前駆体組成物は、硬化性組成物の硬化または重合に利用可能なカプセル化された硬化剤を残して、1つ以上の他の硬化剤を含む。いずれにしても重要なことはキャリアーに組み込まれるキュラティブが一度形成されたキャリアーと反応しないで、カプセル化されたキャリアー中のキュラティブの長期の貯蔵安定性および効能を維持するということである。当然のことながら、キュラティブは、殆どの場合、キャリアーと硬化性組成物の硬化性成分との化学反応に関わる。ここで重要なことは、キュラティブがカプセル化された状態のキャリアーと反応しないことである。
【0043】
さらにキャリアーは、その中に接着剤またはシーラントの他の成分または例えばキャリアーの可撓性または柔軟性を向上させるための可塑剤および/または粘着性樹脂などのキャリアー自身に関係する他の添加剤を含んでもよい。しかしながら、ここでも重要なことは、このような他の成分が硬化性組成物の硬化または重合を阻害しない、または硬化、重合または架橋した組成物の所望の接着性または封止性を実質的に劣化させないということである。好適な可塑剤としては、フタレート、アジペート、炭化水素樹脂、油およびメチルパルミテートおよびメチルステアレートなどの脂肪酸エステルなどである。特に好ましい可塑剤は、Wyffels(米国特許第5,688,850号)に教示されているようなポリブテン系の可塑剤およびこれらを組み合わせたものまたはこれらを脂肪族乳酸エステルなどの他の添加剤と組み合わせたものが挙げられる。好適な粘着性樹脂としては、脂肪族および/または芳香族炭化水素樹脂およびテルペン樹脂などが挙げられる。
【0044】
キャリアーは、接着および封止の観点から不活性材であってもよいが、キャリアー自身がそれが組み込まれる最終的な接着剤またはシーラントの接着または封止性能に関与することが好ましい。具体的には場合によって、キャリアーが固有のまたは潜在的な接着性または封止性を有することが必要とされる。例えば、キャリアーは、ホットメルト接着剤、感圧接着剤、エラストマー/粘着組成物、1つ以上のモノマー、オリゴマーまたはこれらの混合物を含む増粘またはゲル化された塗料であってもよい、またはこれらのいずれかを含んでもよい。接着特性を有するキャリアーを採用することによって、当該キャリアーは、接着される2つの被接着体をすぐに接着し、これら被接着体を所定の配置に保持するとができ、硬化性組成物が硬化、重合または架橋するまで十分な時間を与えることができる。これは、ほんの一瞬程度の非常に僅かな時間でしか接着される2枚の被接着体に圧力を加えることができない高速で行われる工業的な接着用途において特に有益である。この特性は、接着される被接着体が瞬間的な粘着接合をしなければ離れてしまし、接着が不可能な製品デザインおよび材料で作られていることに起因する力を有するような場合に特に顕著に重要になる。例えば、何もしない状態では開きやすいシリアルの箱の対向する端部フラップを接着する際、接着特性を有するキャリアーを使用することによって、硬化性または重合性材料が硬化または重合して通常の接着を行う間にフラップ同士を合わさった状態に保持することができる。
【0045】
本発明の硬化系は、それぞれが同じまたは異なる硬化剤および/またはキャリアー材を含む2つ以上の異なるマイクロカプセル化されたキャリアーの混合物を含んでもよい。例えば、いくつかが潜在的な接着性を有する材料を高い比率で含み、残りが接着性が低いまたは接着性を有さないキャリアー材料を含むキャリアー粒子の組み合わせを採用することによってキャリアーが貢献する接着特性を調整することができるものであってもよい。これとは別にキャリアー粒子の一部が硬化性組成物によって共重合される単官能および/または多官能モノマーの混合物を含むゲルを含み、残りが接着剤を含んでもよい。このような組成物は、非反応性のキャリアーの量を減らしつつも接着剤組成物の性能を高めるためにより多くの液体硬化性成分で限定的な素早い接着能を供する。実質的には異なるキャリアー粒子の混合物を使用することによって最終的な接着剤組成物の即効接着性および潜在的接着性のバランスを取ることができる。
【0046】
既に述べたようにキャリアー材は、ヒドロゲルであってもよい。好適なヒドロゲルとしては、ゼラチン、多糖類、アルギナート類、架橋されたポリアクリルアミドポリマー、ヒドロキシメチルメタクリレートポリマー、架橋されたポリヒドロキシエチルアクリレート、重合架橋された2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ポリマーおよびこれらの塩、特にナトリウムおよびカリウム塩など、架橋されたポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、これらの共重合体および/またはこれらとポリスチレンなどの他のポリマーとの共重合体またはその他の非ヒドロゲル形成ポリマーから誘導されるものが挙げられる。典型的なヒドロゲルの例としては、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート系、好ましくはエチレングリコールジメタクリレートで架橋されたポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート系のヒドロゲルが挙げられる。
【0047】
またキャリアーは、エラストマー組成物であってもよい。エラストマーとしては、25℃未満、好ましくは0℃未満の二次ガラス転移点(Tg)または軟化点を示すもの、特に(メタ)アクリレートエステルモノマーに可溶ものが挙げられる。このようなエラストマーは、塑性流れを示す合成高分子化合物、特にポリクロロプレンおよびブタジエンまたはイソプレンとスチレン、アクリロニトリル、(メタ)クリレートエステルとの共重合体である。さらに有用なエラストマーとしては、エチレンと(メタ)アクリレートとの共重合体、エピクロロヒドリンのホモ重合体およびエピクロロヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体などがある。より具体的には、CR−ネオプレン−ポリクロロプレン、NBR−ニトリルラバーブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルラバーアクリレートブタジエン共重合体、エチレンとメタクリレートおよびエチルアクリレートなどのアクリレートエステルとの共重合体などが挙げられる。当然のことながら、硬化性組成物がより高い温度で活性化される、または活性の際に高い温度に晒される、例えば混合時の摩擦またはミキサーが高い温度を発生させる場合、より高いTgの材料を使用してもよい。またこの種の材料に含まれるものとして所謂ラバー樹脂接着剤が挙げられ、これは、天然ゴム、スチレン−ブタジエンエラストマー、ポリブタジエン、ポリイソブチレンおよびポリシロキサンなどのエラストマー成分と、水素化ロジンのグリセリルエステル、熱可塑性テルペン樹脂、石油系炭化水素樹脂、クマロンインデン樹脂、合成フェノール樹脂、低分子量ポリブテンおよび粘着性シリコーン樹脂などの粘着性樹脂とを含む。
【0048】
またキャリアーは、好ましくは25℃未満の低Tgまたは低軟化点を有し、かつ、動的機械熱分析器型番RSAII(Rheometrics社より入手可能)を使用して測定される弾性率が70℃で約5x105ダイン未満である接着材料または感圧性接着材料であってもよい。このような接着剤として好適なものは、アクリレート系感圧接着剤、特に粘着性樹脂を加える必要のない接着剤である。このようなアクリレートは、分子中に1乃至14個の炭素原子、好ましくは分子中に4乃至12個の炭素原子を有するアルキル鎖を含む。異なるアクリレートモノマーの混合物も使用することが可能であるが、少なくとも分子のアルキル尾部(tails)を形成するアルコール残基の少なくとも大半がエステル結合部で終結する少なくとも4つの炭素原子の炭素−炭素鎖を有する。有用なアクリレート系高分子材料の例としては、メチルイソアミルアクリレート、イソオクチルアクリレート、市販のフューズオイル(fuse oil)アクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体および共重合体などである。これら共重合体は、コモノマーとしてアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルを含んでもよい。その他のアクリル系材料としては、例えばn−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどの低Tgアクリレートモノマーと、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンなどの機能性モノマーと、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)クリレート、イソボルニル(メタ)クリレート、4−ビフェニル(メタ)クリレートおよび2−ネフチル(メタ)クリレートなどの高Tgアクリレートモノマーとを含む多成分組成物などがある。また別の類の感圧接着材料としては、Mancinelli(米国特許第5,225,470号)のアクリル系熱溶融PSAが挙げられ、その内容を本明細書に引用したものとする。
【0049】
本発明は、これらのキャリアー材料、特にイン−シツ重合された、即ちキャリアーのカプセル化と同時にまたはそれに続いて重合される感圧接着剤材料に特に好適である。そのような系を例示すると例えばSchwantes(米国特許第6,592,990号)およびNagai et. al.に開示されているものがある。このような系は、通常、付加重合性プレポリマー、例えばアルキル(メタ)クリレート、アラルキル(メタ)クリレート、シクロアルキル(メタ)クリレート、アルコキシ(メタ)クリレート、シクロアルコキシ(メタ)クリレート、ビシクロアルキル(メタ)クリレートおよびアルコキシ(アルコキシ)n(メタ)クリレートなどがある。これらのアルキル部分は、炭素数1から16のもの、シクロアルキル部分は炭素数4から8のもの、nは1から6の整数から選択される。
【0050】
より好適な付加重合性プレポリマーは、その単独重合体がTgが0℃未満、引火点が少なくとも75℃、沸点が少なくとも175℃であるプレポリマー、例えばn−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソ−オクチルアクリレート、イソ−オクチルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソヘキシルアクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレートおよびこれらの混合物である。
【0051】
任意ではあるがイン−シツ形成されたキャリアーは、重合性プレポリマーに加えてテルペン樹脂を含んでもよい。テルペン樹脂は、粘着性付与剤として機能し、本発明の目的を達成するのに好適なものとしては、ウッドロジン樹脂、ガムロジンのエステル、スチレン化テルペンおよびテルペンフェノール樹脂(CAS#2590494−71−8を含む)などがある。テルペン樹脂としては、商品名SylvaresおよびZontac(フロリダ州、パナマシティー所在のArizona Chemical)で市販されている変性テルペン樹脂および商品名Sylvalite(CAS#8050-26-8)などのエステル変性またはポリオールエステル変性テルペン樹脂がある。
【0052】
任意ではあるが、イン−シツ形成されたキャリアーが得られる組成物は、第2の実質的に水不溶性で少なくとも2つの付加重合部位を有する多官能である重合性プレポリマーを含んでいてもよい。「実質的に水不溶性」とは、その物質が水に約2重量パーセント未満、好ましくは1重量パーセント未満の可溶性を有することを意味する。このプレポリマーの付加重合部位は、プレポリマーがカプセル化された粘着性接着材料に変化する際に他の付加重合性部位と相互作用する。第2の実質的に水不溶性の重合性プレポリマーの例としては、アリルメタクリレート、アルケングリコールジメタクリレート、アルキルジメタクリレート、アルキルジオールジメタクリレート、アルコキシアルカノールジアクリレート、トリアルカノールトリアクリレート、アルコキシ(アルコキシ)nアルキルトリアクリレート、アルコキシ(アルコキシ)nアルキルジメタクリレート、アラルキルジメタクリレート、シクロアルキルジメタクリレート、アリルアクリレート、アルケングリコールジアクリレート、アルキルジアクリレート、アルキルジオールジアクリレート、アルコキシアルカノールジメタクリレート、トリアルカノールトリメタクリレート、アルコキシ(アルコキシ)nアルキルトリメタクリレート、アルコキシ(アルコキシ)nアルキルジアクリレート、アラルキルジアクリレート、シクロアルキルジアクリレート、アルコキシジアクリレート、ビシクロアルキルジアクリレート、シクロアルコキシジアクリレートなどが挙げられ、これらのアルキル部分は、炭素数1から16のものであり、シクロアルキル部分は、炭素数4から8のものであり、nは1から6の整数である。より具体的には第2の実質的に水不溶性で少なくとも2つの付加重合部位を有する多官能である重合性プレポリマーは、アリルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3ブチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、ジ−(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびこれらの混合物のいずれかから選択される。
【0053】
第2の実質的に水不溶性の重合性プレポリマーは、第1のプレポリマーと共に粘着性接着剤を形成するための少なくとも3つの異なる機構を有してもよい。またこの第2の重合性プレポリマーは、第1のプレポリマーと反応するための2つの反応性部位または多官能性部位を有してもよい。またこれとは別に第2のプレポリマーは、酸素、アミン、エーテル、エステル、アルコール、ケトン、ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸またはアリール酸などの極性基を有するように選択して接着剤形成プレポリマーの他の極性基と水素結合させてもよい。さらにこれとは別に形成された接着剤の対向する鎖の移動を立体的にからみ合わせる(entangles)または阻害するように第2のプレポリマーを選択してもよい。
【0054】
好適な極性基を有する第2の実質的に水不溶性の重合性プレポリマーは、アルコキシ(メタ)クリレート、ポリエステル(メタ)クリレート、アルコキシ(アルコキシ)nアルキル(メタ)クリレート、(メタ)クリルアルコキシフタル酸、グリシジル(メタ)クリレート、シクロアルコキシ(メタ)クリレートおよびアシロキシ(メタ)クリレートからなる群から選択され、これらのアルキル部分は、1から16の炭素数のもの、シクロアルキル部分は、4から8の炭素数のもの、nは1から6の整数である。この第2の実質的に水不溶性の重合性プレポリマーの具体例としては、ブチルジエチレングリコールメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル−エチル)メタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、エトキシル化ヒドロキシエチルメタクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールメタクリレート、アルコキシル化ノニルフェノールアクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−アクリルオキシエトキシ−o−フタル酸、2−アクリルオキシ−1−メチルエトキシ−o−フタル酸および2−アクリルオキシ−1−メチルエトキシ−o―ジヒドロ−(3,6)−フタル酸からなる群から選択される物質などである。
【0055】
上述したとおり、第2の実質的に水不溶性の重合性プレポリマーは、接着剤形成ポリマーの対向する鎖の移動を立体的にからみ合わせる、または阻害するプレポリマーであってもよい。このようなポリマーとしては、炭素数が14を超えるアルキル(メタ)クリレート、シクロアルキル(メタ)クリレート、多環式アルキル(メタ)クリレート、アラルキル(メタ)クリレートおよびシクロアルコキシ(メタ)クリレートなどであり、これらのアルキル部分は、少なくとも14個の炭素原子を有し、シクロアルキル部分は、少なくとも6個の炭素原子を有する。第1の水不溶性重合性プレポリマーを立体的に阻害する実質的に水不溶性の重合性プレポリマーの例としては、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、炭素数18から22のアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンチルオキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートおよびセチルアクリレートなどが挙げられる。テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレートおよび2−フェノキシエチルメタクリレートなどの早い時期に炭素結合に関与するものとして特定されている物質のいくつかは、立体阻害プレポリマーとして機能することができる。
【0056】
キャリアーのイン−シツ重合を行うために、キャリアー前駆体組成物は、通常、付加重合性プレポリマーと溶媒が存在する場合は溶媒と共に触媒として有効量の実質的に水不溶性のフリーラジカル開始剤を含む。この溶媒は、種々のポリマー材が重合される際の媒体を供する。このような溶媒としては、石油系油、植物油、植物油エステル、液体炭化水素樹脂、液体可塑剤およびこれらの混合物であってもよい。フリーラジカル開始剤は、25℃で多くて10時間、好ましくは25℃で多くて1時間の半減期を有するように選択される。フリーラジカル開始剤は、重合性プレポリマー材および溶媒に可溶でなければならない。フリーラジカル開始剤は、アゾ開始剤を含む開始剤、過酸化物、ジアルキル過酸化物、アルキル過酸化物、ペルオキシ酸エステル、ぺルオキシカーボネート、ぺルオキシケトンおよびぺルオキシジカーボネートからなる群から選択することができる。また特にこのフリーラジカル開始剤は、2,2’−アゾビス(イソブチルニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)、過酸化ベンゾイル、過酸化デカノニル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、ジ(n−プロピル)ぺルオキシジカーボネート、ジ(sec−ブチル)ぺルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ぺルオキシジカーボネート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチルぺルオキシネオデカノエート、α−クミルぺルオキシネオヘプタノエート、t−アミルぺルオキシネオデカノエート、t−ブチルぺルオキシネオデカノエート、t−アミルぺルオキシピバレート、t−ブチルぺルオキシピバレート、2,5−ジメチル2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルぺルオキシ)ヘキサン、t−アミルぺルオキシ−2−エチル−ヘキサノエート、t−ブチルぺルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルぺルオキシアセテート、ジ−t−アミルぺルオキシアセテート、t−ブチル過酸化物、ジ−t−アミル過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)ヘキシン−3、クメンヒドロキシペルオキシド、1,1−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ジ−(t−アミルぺルオキシ)−シクロヘキサン、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)−ブチレート、t−アミルペルベンゾエート、t−ブチルペルベンゾエートおよびエチル3,3−ジ−(t−アミルペルオキシ)−ブチレートから選択される。
【0057】
また本発明の別の態様では、キャリアー材料は感熱のもの、即ち比較的低い温度に晒されると固体または半固体状態から液体またはパティ状に変化するものであってもよい。通常、このようなキャリアーは、室温(25℃から)超の溶融点または溶融範囲を有し、好ましくは実質的にまたは少なくとも部分的に溶融点超または溶融範囲またはそれ以上の温度で硬化性組成物に可溶になる。また好ましくは分散相は、35から150℃、より好ましくは40から85℃の溶融点または範囲を有する。好適な感熱性キャリアー材料としては、好ましくは4000から20,000の分子量を有するポリエチレングリコール;酸性ワックス;ステアリン酸;ステアリン酸塩などがある。特に好ましいのは、ワックスである平均分子量が4000であるポリエチレングリコールである。その他の好適な材料は、Cooke et. al. (米国特許第4,497,916号および同第3,547,851号)に記載されており、その内容を本明細書中に引用したものとする。
【0058】
最後にその他の好適なキャリアー材料としては、Gosiewski et. al.(米国特許第5,206,288号)、Cahalan et. al.(米国特許第4,768,523号)、Sataki et. al.(米国特許第5,814,685号)、Everaerts et. al.(米国特許第5,905,099号および同第5,612,136号)、Mudge(米国特許第4,908,268号)、Sanderson et. al.(米国特許第4,077,926号)、Mancinelli(米国特許第5,225,470号および同第5,006,582号)、Iovine et. al.(米国特許第4,721,748号)およびPetras et. al.(米国特許第4,061,826号)に開示されているコア材料が挙げられ、これらの内容を本明細書中に引用したものとする。
【0059】
本発明の硬化系は、キャリアー粒子を包むポリマー殻を含む。ポリマー殻の形成に適した材料は、カプセル化技術、特に液滴または固体粒子のカプセル化で知られているものである。カプセル化材料は、殻壁の所望の特性、キャリアーの化学組成、殻の形成後または形成と同時にイン−シツ硬化または重合されるキャリアーの場合、キュラティブを含むキャリアー前駆体材料およびカプセル化工程において採用される方法に応じて選択される。また殻壁の組成は、特にキャリアーがキャリアー内でキュラティブを移動させるまたはキャリアー内からキュラティブをブルームさせる組成である場合、殻壁がキュラティブに対して不透過性となるようなものであることが重要である。
【0060】
殻壁は、硬化性組成物の重合、硬化または架橋を開始する条件下で破裂する限り、剛性材または可撓性材であってもよい。この目的のためにここで言う重合、硬化または架橋の「開始」または「開始する」は、実際に重合、硬化または架橋が同時に行われているかどうかに拘らず、キュラティブが硬化性組成物の重合性成分と直接接触するまたは重合性成分にとって利用可能になる工程を意味する。例えば、活性化された嫌気性の硬化性組成物においては、重合は開始するが、空気が存在すると酸素によって抑制されるので重合は生じない。同様に熱で活性されたキュラティブは、硬化性組成物の硬化成分と均質混合されるが、熱による活性を行うのに適当な温度が得られるまで、重合は生じない。実質的には接着剤が塗付されたまたは塗付される際の物理的または環境的条件または被接着体によって本質的に供される化学的共反応体が存在しない場合、重合または硬化は開始する。
【0061】
殻壁の厚みは、種々の厚みにすることが可能であり、構造的効果がないまたは殆どなく単にキュラティブに対して不透過なまたは低透過性バリアーとしての役割りを果たす程度の厚みから殻壁自身が構造的結合性を有する厚みまで可能である。このような薄い壁は、キャリアーが硬いまたは剛性を有する材料である硬化系に特に好適である。これとは別に接着剤またはシーラントの処方または使用時のマイクロカプセルまたはそれが塗付された被接着体が広範囲のせん断条件、強い力、過激な取り扱いに晒されるような場合は核壁をより厚くしてもよい。また厚い壁は、キャリアーが非常に軟らかいまたはチキソトロープ性であり、それ自身で変形に対して抵抗性を殆どまたは必要されるより小さい抵抗性を供する場合にも適している。
【0062】
透過性は、マイクロカプセルおよび/またはそれが組み込まれる接着剤またはシーラントの貯蔵寿命に悪影響を与えるマイクロカプセルへのまたはからの物質の進入および/または進出に対して適当な保護を供する殻壁の能力を意味する。従って殻壁は、マイクロカプセルの有用性および効能にその所定の寿命の間、通常3ヶ月、好ましくは6ヶ月以上、悪影響を与えない限り、特定の物質に対しては透過性であってもよい。
【0063】
一般的に言えば、本発明の目的は、薄い殻壁、特に現在のマイクロカプセル化された1液型接着剤に使用されている、または見られる従来のものより薄い殻壁を採用することであり、そして当然のことながらこのような薄い殻壁は、現在の1液型接着剤には必要とされず、従来からある厚みの殻壁が使用されている。しかしながら、薄い殻壁を用いることは、それが接着剤またはシーラントの形成に必要な成分がより多くそして殻壁によって表される不活性充填材がより少なく所定の量の接着剤または接着部位に存在するので特に望ましい。通常、本発明では殻壁は、硬化系全体の約0.8から25重量パーセント、好ましくは約2から12重量パーセント、最も好ましくは約4から10重量パーセントを構成する。
【0064】
本発明の硬化系は、2つの工程で調整され、第1の工程ではキュラティブがキャリアーに組み込まれ、第2の工程では変性されたキャリアーをカプセル化する。当業者であれば容易に明らかになるようにあらゆる種類のあらゆる数の方法がこれら両方の工程を実施する上で使用可能である。しかしながら、使用される材料およびキュラティブがキャリアーに組み込まれる時点などの多くの要因に応じて特定の方法が選択される。
【0065】
キュラティブは、キュラティブとキャリアー材の選択およびこのキャリアー材の粒状にされる能力およびキャリアー材を粒状にする方法に応じて多くの異なる方法でキャリアー内に組み込まれる。キャリアーが固体または半固体材料である場合の1つの態様では、キュラティブがキャリアー内に混合または混練され、得られたものが充分な硬さをを有する場合、所望の粒径に挽かれ、硬くない場合、凍結され、所望の粒径に挽かれる。例えば、キュラティブは、キャリアーのポリマー溶融液に含ませてもよく、またはキャリアーがワックスであったら、吸着材を液状のワックスに混合し、それを固化させることも可能であるはずである。またキュラティブをロールミキサー、バンベリーミキサーを用いて軟らかい柔軟性のあるまたは可鍛性の高分子またはエラストマーキャリアー内に混練してもよい。実質的には処理条件がキュラティブに悪影響を与えるまたは劣化させるような条件でなければ、固体または半固体を別の固体または半固体に組み込む公知の方法のいずれも採用することができる。
【0066】
キュラティブが液体または溶液状である場合、液体キュラティブまたはキュラティブ溶液は、溶媒を吸収するまたはこれによって膨潤する固体または半固体キャリアーを使用することが可能である。この方法では、キャリアーは、よりスポンジのように作用し、これにより液体キュラティブは、キャリアー内に吸収され、溶液中にある場合、溶媒がキュラティブをキャリアー内に持ち込む。キュラティブ溶液を使用する場合、好ましくは溶媒は、カプセル化前に蒸発する、またはこの蒸発後のキャリアーが適当な粒子形状になっていない場合、カプセル化前にキャリアーを挽く。しかしながら、キュラティブ溶液の溶媒がキャリアーの可塑剤として機能し、よって硬化した接着剤またはシーラントの性能または所望の特徴を阻害することなく、または決定的な影響を与えずにキャリアーを軟化させてキュラティブへ接近またはキュラティブの露出を促進させる場合、必ずしも溶媒または全ての溶媒を取り除く必要はない。
【0067】
またこれとは別にキャリアー自身が溶液中にある場合、溶媒を除去し、変性されたキャリアーを回収する前にキュラティブを溶液に加えてもよい。またキャリアーおよびキャリアー溶液の性質に応じて、特定の添加剤、pH調整および温度変化を利用して変性されたキャリアーを沈殿させてもよい。
【0068】
またキュラティブをキャリアー内に組み込む別の方法として、全体的または部分的に可溶性または混和性のキュラティブをキャリアー材料を形成するために使用される前駆体材料または反応物の1つ以上に分散または溶解させる方法がある。キュラティブもキャリアーの硬化または重合を開始する、加速させる、または促進させるのに効果的である場合、確実にキャリアー形成後のキャリアー内に充分な硬化剤が残るように過剰量のキュラティブを使用しなければならない。この反応混合物を硬化または重合させて変性されたキャリアーを形成し、得られた塊りを所望の粒径に粉砕してもよい。また上述の反応混合物またはその成分を適当な液状媒体に加え、せん断混合し、コロイド溶液、懸濁液またはエマルジョンを形成してもよい。コロイド溶液、懸濁液またはエマルジョンを反応混合物の硬化または重合を行うのに適当な条件下に置き、カプセル化の前に変性されたキャリアー粒子を形成してもよく、または適当なカプセル化材料を反応混合物の小滴のカプセル化を行うのに好適な溶液に加え、キャリアー材を同時にイン−シツ重合または硬化させてまたはさせずにカプセルまたは殻壁を形成してもよい。液体をカプセル化させるあらゆる公知の方法、例えば界面重合、コアセルベーションなどが使用可能である。
【0069】
キャリアー内に含まれるキュラティブの量は、使用する特定のキュラティブおよびそれが使用される硬化性組成物、硬化性組成物の硬化を開始する方法、硬化性組成物のカプセル化された硬化系の予想される重量比、上述したようにキュラティブがキャリアー材および/または殻壁の硬化または重合に関与するか、またはそれによって消費されるかによって異なる。一般的に言えば、キュラティブの量は、所定の硬化性組成物の硬化を行うのに使用される量に一致するはずである。しかしながら、キャリアーおよび硬化性組成物が混合される方法で均質混合、例えば混練または素練りが行われる場合、キュラティブがより効率よく硬化性組成物に晒されるので、同じ容量の硬化性組成物で少ない量のキュラティブを使用することが可能になる場合がある。
【0070】
カプセル化されたキュラティブが付加重合硬化性組成物に使用される場合、キュラティブはキャリアーの約0.1から25重量パーセント、好ましくは約1から20重量パーセント、最も好ましくは約5から15重量パーセント含まれる。これより多い量も可能であるが、量が多くなると、所定の粒径で硬化性組成物に含まれるカプセル化されたキャリアーの量が少なくなってしまう。さらにキャリアー粒子中のキュラティブの濃度が高くなる、および/またはキャリアー粒子の粒径が大きくなるほど(所定の量の硬化性成分に対して所定の量のキュラティブを維持するために)硬化性組成物中のキャリアー粒子の密度は、小さくなるので、確実に硬化性組成物中のキュラティブが完全に分散/分布するように活性化工程中にキャリアー粒子をより均質に混合または混練する必要が生じる場合がある。
【0071】
キュラティブが段階成長重合反応でよく使用される架橋またはハードニング剤である場合、マイクロカプセル中の当該キュラティブの量は、かなり多くなる。通常当該キュラティブは、キャリアーの約2から50重量パーセント、好ましくは10から30重量パーセント、最も好ましくは15から25重量パーセント含まれることになる。より重要なのはこれらキュラティブの量は、硬化性組成物に対する化学量論的要件および要求される架橋度に応じて変わるということである。従って所定量の硬化性組成物に組み込まれるキャリアー粒子の量を適当に調整してより多いまたは少ないキュラティブをキャリアーに使用してもよい。
【0072】
一般的に本発明のカプセル化されたキャリアーミクロ粒子は、高度に濃縮された量の硬化剤のミクロドメインとして機能する。またキュラティブがキャリアーおよび/またはマイクロカプセル壁のキュラティブとしての役割りを果たす場合、当該キュラティブは、キャリアーおよび/または壁材の硬化を行うのに必要な量の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10倍の量で含まれる。この場合、この2つ前の段落で述べた量は、必要に応じてキャリアーおよび/またはセル壁の重合および/または硬化後の量となる。
【0073】
本発明のカプセル化された硬化系の粒径は、意図する最終用途、硬化性組成物の硬化を開始する方法および粒子を形成する方法の制約に応じて多岐に亘る。通常、加重中央粒径(volume weighted median particle size)は、約2から200ミクロン、好ましくは約5から50ミクロン、最も好ましくは約10から20ミクロンの範囲である。加重中央粒径は、カリフォルニア州、サンタバーバラ所在のParticle Sizing Systems社が製造したAccusizer788を用いて測定される。
【0074】
上述したようにキャリアー材のマイクロカプセル化は、あらゆる公知の方法を介してあらゆる材料を使用して達成される。以下の説明は、主にキャリアーのカプセル化についてのものであるが、同じことが下記に述べるように必要な場合または適用可能な場合、特に液体硬化性成分を含む硬化性組成物の他の成分のカプセル化についても同じように適用される。このようなカプセル化の好適な方法としては、コアセルベーション、界面重合、気中懸濁、遠心押出し、スプレードライ、パンコーティング、イン−シツ重合およびRedding Jr.(米国特許第5,271,881号、この内容を本明細書中に引用する)に記載されている芯材料および殻材料の分散液を形成し、この分散液に圧力衝撃波を与える方法がある。方法および材料は、カプセル化される材料の物理的状態および/または化学的性質などの性質、例えばキャリアー材が液体または固体または半固体またはゲル状粒子であるかに応じて選択される。方法および材料の例としては、以下の段落に記載したものおよび例えばSchwantes(米国特許第6,592,990号)、Nagai et. al.(米国特許第4,708,924号)、Baker et. al.(米国特許第4,166,152号)、Wojciak(米国特許第4,093,556号)、Matuskawa et. al.(米国特許第3,965,033号)、Matsukawa(米国特許第3,660,304号)、Ozono(米国特許第4,588,639号)、Igarashi et. al.(米国特許第4,610,927号)、Brown et. al.(米国特許第4,552,811号)、Scher(米国特許第4,285,720号)、Shioi et. al.(米国特許第4,601,863号)、Kiritani et. al.(米国特許第3,886,085号)、Jahns et. al.(米国特許第5,996,051号および同第5,292,835号)、Matson(米国特許第3,516,941号)、Chao(米国特許第6,375,872号)、Foris et. al.(米国特許第4,001,140号、同第4,087,376号、同第4,089,802号および同第4,100,103号)、Green et. al.(米国特許第2,800,458号および同第2,730,456号)、Clark(米国特許第6,531,156号)、Saeki et. al.(米国特許第4,251,386号および同第4,356,109号)、Hoshi et. al.(米国特許第4,221,710号)、Hayford(米国特許第4,444,699号)、Hasler et. al.(米国特許第5,105,823号)、Stevens(米国特許第4,197,346号)、Riecke(米国特許第4,622,267号)、Greiner et. al.(米国特許第4,547,429号)およびTice et. al.(米国特許第5,407,609号)およびHeribigによる「Kirk Othmer, Encyclopedia of Chemistry Technology, V. 13, Second Edition」の436−456頁に記載されている「Encapsulation」と題された章およびHuber et. al.による1996年5月に発行された「TAPPI, Vol. 49, No. 5」の41A-44Aに記載されている「Capsular Adhesive」に教示されている方法などが挙げられ、これら全ての内容を本明細書中に引用する。
【0075】
カプセル化の第1の工程は、キャリアー材またはキャリアー前駆体材料の離散粒子、ドメインまたはビーズの調製である。当該材料が溶液または液体状であり、カプセル化がコアセルベーション、界面重合などによって行われる場合、キャリアーまたはキャリアー前駆体材料を含む溶液または液体は、高せん断混合または撹拌されて所望の粒径のキャリアーまたはキャリアー前駆体の離散ドメインの懸濁液、エマルジョンまたはコロイド系を形成する。キャリアーが感熱性材料、例えばワックスまたはワックス状の材料である場合、その中にキュラティブを含んだ状態でその融点を超える温度に加熱され、液体媒体中、好ましくは水の中で高せん断混合または撹拌されてキャリアーの離散小滴を形成し、カプセル化前に固体粒子が形成されるように冷却される。キュラティブが固体または実質的に固体のキャリアーに組み込まれた場合、カプセル化前にキャリアーは、粉砕され、所望の粒径に選り分けられる。このような方法は、カプセル化のための粒子または離散ドメインの調製のさらなる別の方法と同様に業界では広く使用されており、当業者にはよく知られている。
【0076】
好ましいマイクロカプセル化技術の1つにコアセルベーションがあり、この場合カプセル化される材料は、壁材として使用される材料の溶液中で分散または乳化される。この溶液は、全てまたは一部がカプセル化される分散した材料をコーティングした壁材を含む溶媒から壁材またはその一部を相分離させるために撹乱(perturbed)される。この工程では壁形成材料は、乳化したまたは分散した芯材料上に直接分離するか、または壁材の小滴を含むそれ自体のエマルジョンを形成し、その後芯材の小滴に堆積する。いずれに場合において、液状の壁材は内相またはカプセル芯材の分散した小滴の周りに連続したコーティングとして堆積し、その後壁材が固化する。溶液の撹乱は、温度変化および例えば壁材に対しては非溶媒である別の溶媒の添加など壁材の溶解性に影響を与える。これは、Green(米国特許第2,800,457号および同第2,800,458号、この内容を本明細書中に引用する)が教示するように壁形成工程における相分離を促進するためにゼラチンなどの壁材によるpHシフトを伴うことは当業者に用意に理解されるはずである。
【0077】
コアセルベーションカプセル化では、コートされる材料は、通常、液体であり、溶媒中で乳化され、小滴を形成し、壁材でコートされる。場合によっては乳化剤を使用してキャリアー材またはその前駆体の乳化を補助するようにすると有利な場合がある。使用可能な好ましい乳化剤は、両親媒性、即ち同じ分子中に親水基および疎水基の両方を含むものである。乳化剤の例としては、部分加水分解されたポリビニルアルコール、澱粉誘導体、セルーロース誘導体、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。本発明で使用する好ましい乳化剤は、部分加水分解されたポリビニルアルコールである。好ましい方法では、250ミクロン未満、好ましくは100ミクロン未満の粒径を得るために水性混合物を高せん断撹拌する。
【0078】
カプセル化の条件は、カプセルに使用する材料または組成物およびカプセル化される材料の選択によって変わる。カプセル化材料または組成物は、多くの異なる要因、例えば形成される殻壁の所望の特性、カプセル化される材料の化学組成および状態、殻壁の形成と同時またはそれに続いて硬化またはイン−シツ重合されるキャリアー材の場合、キュラティブなどのキャリアー前駆体材料およびカプセル化に用いられる方法に応じて選択される。殻壁の所望の特性は、カプセル化された硬化系、特にキャリアーがその中のキュラティブを移動またはブルームさせる組成である場合のキュラティブに関して言えば、強度、壊れやすさおよび透過性などである。カプセル壁の好適な材料は、ゼラチン、アラビアゴム、澱粉、糖、セラックおよびロジンなどの天然材料、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、パラフィン、トリステアリン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シリコーン、エポキシおよびポリウレタンなどのポリマー、ホルムアルデヒドとフェノール、尿素およびメラミンとの反応生成物などのホルムアルデヒド樹脂およびポリウレタンコポリエーテルなどの共重合体である。メラミンホルムアルデヒドおよびポリビニルアルコールが好ましい壁材であり、前者が特に好ましい。
【0079】
染料、顔料、充填材、可塑剤、架橋剤、結合材およびその他の添加剤もカプセル壁に組み込むまたはカプセル壁表面に塗布してもよい。壁材を処方する際に気をつけなければならない重要なパラメーターは、透過性である。一般に壁材は、少なくともカプセル化される材料に対して低透過性である必要がある。カプセルがキャリアー中のキュラティブに対して透過性を持たないまたは低い透過性を有することはキュラティブの損失および硬化性組成物の早期の重合を防ぐ上で重要である。同様に硬化性組成物の硬化性成分に対して不透過性であるまたは透過性が低いカプセル壁にとってキャリアー粒子内への硬化性成分の進入を防ぐことが重要である。カプセル化された材料によっては、特定の気体、例えば酸素に対して低い透過性を有する、または水、トルエンまたはテトラヒドロフランなどの溶媒などの液体に対して低い透過性を有するように壁材を処方することが望ましい場合もある。要求される透過率は、各系によって異なるが壁材を慎重に選択することおよび壁材の架橋度によって満たすことが可能である。
【0080】
上述したようにキャリアー材および硬化性組成物のその他の材料をカプセル化するためにあらゆる多くの異なる方法を使用することが可能である。その内の好ましい1つの方法は、カプセル壁材をイン−シツ重合することである。この方法ではモノマーまたはオリゴマーがカプセル化される材料上に分散され、コモノマーまたはラジカル開始剤などの反応種、硬化剤などを添加する、または熱または紫外線照射によって重合を行う。任意ではあるが、カプセル壁材を架橋剤の添加または熱処理、紫外線照射、ラジカル開始剤によってイン−シツ架橋させてもよい。カプセル壁材の重合または架橋の方法は、壁材の選択およびカプセル化される材料によって変わる。
【0081】
マイクロカプセルの壁がポリアミドまたはポリウレアで構成されている場合の好ましいカプセル化の方法は、界面重合である。界面重合は、酸塩化物またはイソシアネートのいずれかと共にマイクロカプセル化される接着剤モノマーを混合することによって行うことができる。得られた混合物を乳化剤で乳化し、水中油エマルジョンを得る。多官能アミノ化合物をエマルジョンに加えて、マイクロカプセル壁が各油のミクロ粒子の周囲に形成される。酸塩化物が多官能アミノ化合物と混合されるとき、ポリアミドマイクロカプセルが製せられ、イソシアネートを使用するとポリウレアカプセルが形成される。ここでは油相のマイクロカプセルを参照しているが、分散相は「ドメイン」、「ビーズ」または「小滴」も意味する。
【0082】
ポリアミドマイクロカプセルを製するために本発明で使用される酸塩化物は、テレフタロイルクロライド、イソフタロイルクロライド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸クロライド、セバシルジクロライド、4,4−スルホニルジベンゾイルクロライド、1,3−ベンゼンジスルホニルクロライド、1,4−ベンゼンジスルホニルクロライドまたはこれらの混合物である。本発明で使用するのに好ましい酸塩化物は、イソフタロイルクロライドとテレフタロイルクロライドとの混合物である。
【0083】
ポリウレアマイクロカプセルを製するのに本発明で使用されるイソシアネート化合物は、2,4−および2,6−ジイソシアナートトルエン、4,4’−ジイソシアナートジフェニルメタン、1,3,5−トリメチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアナートヘキサン、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートおよびさらにビウレット、アロファネートおよびカルボジイミド基を含むポリイソシアネートである。
【0084】
本発明で使用できる多官能アミンの例は、エチレンジアミン、ジエチエレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、1,6ヘキサンジアミン、ポリエチレンイミンおよびビス−ヘキサメチレントリアミンなどである。
【0085】
Matson(米国特許第3,516,941号)は、カプセル化される材料または芯材を水相に分散した有機疎水性油相に溶解させる重合反応について教示している。水相は、重合の際にマイクロカプセルの壁を形成する材料を形成するアミノプラスト樹脂を溶解している。微細油小滴の分散液が高せん断撹拌によって調製される。酸触媒を加えることによってアミノプラスト樹脂を形成する重縮合を開始し、これによって両方の相に不溶なアミノプラストポリマーを形成する。重合が進むと、アミノプラストポリマーが水相から分離し、油相の分散した小滴の表面に堆積し、2つの相の界面でカプセル壁を形成し、よって芯材をカプセル化する。アミンおよびアルデヒドを使用する重合は、アミノプラストカプセル化としてよく知られている。ユリア−ホルムアルデヒド、ユリア−レゾルシノール−アルデヒド、ユリア−メラミン−ホルムアルデヒドカプセルの形成は、同じように進行する。界面重合では、カプセル壁を形成する材料が別の相に含まれ、1つは水性にもう一方は油相に含まれる。従って、高分子カプセル殻壁が2つの相の界面で形成され、これにより芯材がカプセル化される。界面重合は、特にポリエステル、ポリアミド、ポリウレアなどの壁材に有用である。
【0086】
ゼラチンおよびマイクロカプセル壁材を含むゼラチンは、よく知られており、コアセルベーションおよび相分離カプセル化法によく用いられる。ゼラチン/アラビアゴムを用いてカプセル化する好ましい方法の1つでは最初に芯材をゼラチン溶液に乳化し、水中油エマルジョンを得る。その後この系は、pHが調整され、希釈されてゼラチン/アラビアゴムをコアセルベートさせる。その後、カプセルがホルムアルデヒド、グルタアルデヒドまたはその他の類似の公知の化合物などの架橋剤で後処理される。
【0087】
メラミン−ホルムアルデヒドからなる壁材は、最初に芯材をカルボキシメチルセルロース溶液またはポリ(スチレン−無水マレイン酸)溶液に乳化し、水中油エマルジョンを得ることによって製せられる。その後このエマルジョンは、メラミン−ホルムアルデヒド予備縮合溶液と混合される。この系は、pHが調整され、加熱され予備縮合物の高分子量化合物への重合を開始する。カルボキシメチルセルロースまたはポリ(スチレン−無水マレイン酸)溶液が存在することによって重合されたメラミン−ホルムアルデヒドが芯材表面に堆積するのを促進し、これにより芯をカプセル化する。また別の方法ではスチレンスルホン酸の存在下でメラミンとホルムアルデヒドを重合する。また別の方法でメラミン−ホルムアルデヒド樹脂壁を形成する方法の好ましい態様では、水中油エマルジョンの形成を補助するためにポリアクリル酸および/またはポリアクリル酸誘導体および乳化剤と類似したものを使用する。当該乳化剤は、好ましくは約8から18のHLB値を有する。
【0088】
任意ではあるが、壁材はフリーラジカル重合またはフリーラジカル架橋によって形成することができる。これは、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、アクリル酸エステル(例えばアルキルアクリレート−アクリル酸共重合体)、不飽和ポリエステルなどの壁材に特に有用である。フリーラジカル反応は、熱、紫外線照射によってまたは過酸化ベンゾイル、t−アミルペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエート、t−ブチルペロキシイソブチレート、t−アミルペルベンゾエート、ジ−t−ブチル過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)などの開始剤を加えることによって開始される。
【0089】
マイクロカプセルの壁がエポキシドから構成されている場合、好適なエポキシド化合物は、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−フェノール−A−ジグリシジルエーテルなどの二官能または多官能エポキシドである。マイクロカプセルを形成するのに便利な1つの方法では、カプセル化される材料のエマルジョンが形成され、二または多官能エポキシドとポリオールとを組み合わせたものを加えてカプセル化される材料をコートし、酸を加えて重合を行い、過酸化物を形成する。この場合の好適な酸は、塩酸またはスルホン酸などのブレンステッド酸および三フッ化ホウ素および五フッ化アンチモンなどのルイス酸である。
【0090】
本発明のカプセル化された硬化系は、従来のカプセル化された系には見られないまたは不可能な接着剤またはシーラントをカプセル化するために多くの利益および利点を供する。特に上述したようにキャリアーは、使用時にデュアルモードの接着および封止を供する固有または潜在的な接着特性を有する材料を含んでもよい。たとえキャリアー自身がなんら特定の作用を供しなくても、それは接着またはシーラント材料に付加的強度または持続性を与える構造的充填材として機能し、従って接着剤またはシーラントの皮膜引張強さを高めることになる。このことは、キャリアーおよび硬化性組成物が、それらの固有の性質および/または硬化性組成物が開始されるおよび/またはキュラティブを接着剤またはシーラントの重合性成分と接触させる方法の結果、相互貫入ネットワーク(interpenetrating network)を形成する、そうでなければ散在するまたは互いに混和性になる場合に特に顕著である。実質的に硬化性組成物は、キャリアーの空隙、溝またはポケットを最終的には埋めることになる。
【0091】
上記のことは、確かに有益で望ましい特性であるが、キャリアーのより重要な機能は、キュラティブの保護的な貯蔵部としておよび硬化性組成物内にまたは共に使用される他のカプセル化された成分の空間的保護物質としての役割を果たすということである。第1にキュラティブがキャリアー内に組み込まれ、好ましくはその中で移動しないため、キュラティブまたは充分な量のキュラティブは、カプセル化する殻が存在しなくとも、重合性成分と接触しない。その代わり、キャリアーを流動状態にする条件を課し、および/または好ましい態様に従ってキャリアーが繰り返し加えられるつぶすまたは混練による力を介して機械的に機能してより多くの取り込まれたキュラティブをキャリアー表面および液体硬化性組成物に晒さなければならない。従って、後述するようにそして以下に述べる場合を除いて、従来のカプセル化された接着剤およびシーラント系で行われる指圧およびピンチローラによる活性化では適当な硬化または重合を生じさせるために充分な量のキュラティブを露出させるには不十分である。これは、より多くの作用およびおそらく硬化を開始するためのより費用が掛かるまたは洗練された装置を必要とするが、それはこの接着剤およびシーラントがよりストレスが掛かる環境および工程および/または所望とするまたは意図する開始または活性のタイミングの前に充分な力がカプセル化された接着剤に作用する用途に使用することできることを意味する。またこれは、これらのマイクロカプセルが接着剤またはシーラント組成物に処方される方法および工程および/またはマイクロカプセルまたは処方された接着剤およびシーラント組成物を分散または塗布する方法に対する懸念または配慮することが少なくなることを意味する。従って、本発明は、これらの種類のカプセル化、特にプリアプライド式のカプセル化された接着剤およびシーラント組成物を高速で行われる工業用途、特に必要に応じて接着剤またはプリアプライド接着剤がマイクロカプセル壁を早期破壊することができる意図的または反意図的な力に晒される用途で使用することを可能にする。
【0092】
キュラティブマイクロカプセルの殻壁の意図しない早期の破壊時にキュラティブの放出を防ぐことに加えて、本発明の硬化系は、1つ以上の液体成分がカプセル化または予備塗布され、カプセル化するフィルムに覆われる硬化性系のカプセル化されたその他の成分のスペーサーおよびプロテクターとしても機能する。勿論、キャリアーは、マイクロカプセルに対して構造的結合性を有し、よって使用の際、マイクロカプセルは、従来のマイクロ球体と同じように作用し、硬化性組成物またはその他の液体成分を含むマイクロカプセルの早期の崩壊または破砕を防ぐことができる。この特性は、硬化性組成物または少なくとも本発明によるカプセル化された硬化系が貯蔵または取り扱い時に積み重ねられる、または他の被接着体と接触し、キャリアーおよびキュラティブを含むマイクロカプセルに圧力が加わる被接着体に予備塗布される場合に特に有益である。キャリアー材を覆うカプセル壁の構造的結合性に加えてキャリアー材の変形に対する構造的結合性または抵抗性によって硬化性組成物の液体重合性または硬化性成分を含むマイクロカプセルを保護することができるが、当然のことながらマイクロカプセルの粒径は、同じまたは小さくなければならない。カプセル化された硬化系粒子が予備塗布された接着剤に作用する圧力または力による本来の負荷を受ける前に破裂せずに初期の圧力を受け入れる充分な弾性がカプセル壁にあれば僅かに大きい粒径のカプセル化された硬化性組成物であっても許容される。硬化性組成物の液体重合性または硬化性成分および/またはキャリアーを含むカプセルの一部が破裂したとしても、上述したようにキュラティブはキャリアー内に連行されているので、充分な硬化または重合を開始するのに利用可能なキュラティブは充分に得られない。
【0093】
この空間的保護の利点は、プリアプライド接着剤に限定されず、処方された接着剤およびカプセル化された硬化系自体にもそれらの貯蔵および取り扱い安定性にも関係する。殻壁そしてより重要なことはキャリアーから得られるマイクロカプセルの構造的結合性のために、マイクロカプセルは早期に破壊または破砕しにくくなる。さらに上述したようにセル壁は、それ自身、殆ど構造的結合性または強度を持たず、むしろキャリアー材によっては、カプセル化された硬化系マイクロカプセルの構造的結合性は、カプセル化されたキャリアー自身によるものである。このような状況では、キャリアー内のキュラティブを利用することはできないので、セル壁の早期の破砕または破壊に関する心配はほとんどない。カプセル化された硬化系およびそれらが組み込まれる硬化性組成物の梱包、取り扱いおよび容器の容量についての懸念は殆どなくなる。前者の場合、カプセル化された硬化系は互いに支持し合う。後者の場合、カプセル化された硬化系は、処方された組成物中の他のカプセルの負荷を支持し、負荷に耐える。さらに早期の破砕または破壊が起こったとしても、キャリアー内に含まれているキュラティブは、失われず、当該キャリアー粒子は、単に必要に応じて再カプセル化されるだけである。
【0094】
本発明のカプセル化された硬化系のさらに別の有用性は、それらが硬化性組成物の液体重合性成分と均質混合されると、キュラティブを利用可能にする他にキャリアー自身が液体硬化性成分と均質混合され、この液体硬化性成分に増粘および/またはチキソトロピック効果を供するということである。この増粘効果は、間に硬化性組成物が塗布される2つの被接着体を結合させる間のはみ出しやすさまたははみ出しの可能性を小さくする。より重要なことは、液体硬化性組成物を多孔性被接着体、荒いまたは不均一な表面を有する被接着体または接着される2つの被接着体を合わせた際に隙間が生じる場合に使用することができるということである。具体的には液体硬化性成分のこの増粘効果によって確実にそれが塗布された場所に活性化された硬化性組成物が留まりやすくなる。また硬化性組成物がビーズまたは隆起したリッジとして塗布されることを可能にするので、確実に存在する隙間を埋めるまたは橋渡しすることができる。従来の液体接着剤もビードとして塗布できるが、粘度が低いためその高さを維持することができない。その代わり、液体ビードは、広がりやすく、平坦なテープ状の液体ビードを形成する。本発明のビードは、その最初の高さを維持するが、流れにくく、接着される被接着体を合わせる時間を多く取れる。実質的に一すくいのアイスクリームのように厚みのある接着剤ビードでもゆっくりと小さくなり、広がる。
【0095】
本発明では、高粘度または厚みのあるビードは、成分の均質混合の後または均質混合と同時に形成することが可能である。例えば、後述するように、成分を混合するために使用される活性機構または装置は、硬化性組成物が塗布される被接着体が活性機構または装置を通過する際に硬化性組成物を前後に押すまたは混練する一連のダムまたはバリアーであってもよく、これらを含むものであってもよい。この装置は、均質混合された硬化性組成物が最後のダムまたはバリアーから出た際に被接着体上で該組成物のビードまたは「バンク」を残す除雪機のような役割を果たす。これとは別に混合手段を含む手持ち式または自動化されたディスペンサーを使用する場合、該ディスペンサーは、オリフィスを含むようなものであってもよく、そのオリフィスから均質混合された硬化性組成物が連続的にまたは非連続的に吐出される。実質的にキャリアー粒子の増粘またはゲル化効果のために活性化された硬化性組成物は、あらゆる種類の外形の被接着体に塗布することができる。
【0096】
上述したように本発明のカプセル化された硬化系は、多くの硬化性組成物と共に使用することができ、カプセル化された硬化系のキュラティブは、硬化性組成物の重合性または硬化性成分の硬化、重合および/または架橋を行うために使用される硬化または重合メカニズムに対して適切に選択される。この点に関して、任意の1つのマイクロカプセル化されたキャリアー中のキュラティブは、任意の硬化性組成物の硬化、重合または架橋を完了するのに必要とされるキュラティブまたは硬化剤の全ての成分を表さなくてもよいことは理解されるはずである。従って本発明の出願人が言うマイクロカプセル化された硬化系は、硬化性組成物の硬化性成分の硬化、重合または架橋を行うのに必要とされる全てのキュラティブおよび必要とされる1つ以上のキュラティブを含むカプセル化されたキャリアーを包含するものとして解釈されるものである。さらにこのような状況において特に重要なことは1つ以上のキュラティブまたは硬化剤が1つ以上のその他の必要とされるキュラティブまたは硬化剤とは離隔されるということである。
【0097】
従って、本発明によって作製された硬化性組成物は、その中に分散または溶解した必要とされるキュラティブの内1つ以上を含んでもよいが、これらはキャリアーに含まれるカプセル化されたキュラティブの不存在下では共反応してはならない。これとは別にまたはこれに加えて、特に硬化性組成物の硬化性成分の1つ以上がカプセル化されている場合、キュラティブの1つ以上がその中に分散または溶解されてもよいが、この場合もこれらはキャリアーに含まれるカプセル化されたキュラティブの不存在下では共反応してはならない。さらに別の態様は、本発明の教示するところに従って作製される複数のマイクロカプセル化された硬化系を含み、それぞれがキャリアー中に異なるキュラティブを含む。これらの可能な態様の好ましい要件は、硬化性組成物の硬化、重合および/または架橋を行うのに必要とされる全てのキュラティブが処方された硬化性組成物中に存在し、これにより全てのキュラティブが互いにおよび硬化性組成物の硬化性成分に対して利用可能になり、そして必要に応じて適切な環境条件、例えば温度の上昇または酸素が存在しないことなどが満たされたとき、硬化、重合および/または架橋が生じる。しかしながら、金属製の被接着体の場合、金属塩または金属酸化物などの重合、硬化または架橋を行うのに重要な特定のキュラティブが、本発明の組成物が塗布される被接着体表面に存在してもよく、または当該キュラティブがプライマー剤として被接着体に予め塗布されていてもよく、例えば溶媒キャリアーのキュラティブ溶液をキュラティブを被接着体に下塗りまたは塗布するために使用してもよいことを理解されたい。
【0098】
一般的に言えば、本発明のカプセル化された硬化系は、基本的にはあらゆる硬化性または重合性成分、特にあらゆる接着剤またはシーラント成分と共にそれが1液型、2液型またはそれ以上の液を用いるものあるいは液系または指触乾燥プリアプライド系、特に液体硬化性または重合性マトリックスモノマー、プレポリマーおよび/またはポリマーがカプセル化されたものであっても使用することが可能である。あらゆる用途において、より重要な要因は、当該用途が影響を受けやすいまたは確実にカプセル化された硬化系の殻を適切に破壊し、確実にキャリアーに連行されたキュラティブを利用可能にするために必要とされる接着剤組成物の処理または機能させるのに適合され得るかということである。殻をむきとることによってキャリアーの外面上に存在するキュラティブの一部を露出させるが、利用可能となった量のキュラティブは、それを使用した硬化性組成物の硬化、重合および/または架橋を充分なレベルで適切に行うには充分ではない。その代わり、キャリアーは、混合または混練する、またはその中に含まれたキュラティブの硬化性組成物の残りまたは少なくとも硬化または重合を行うのに必要とされる組成物の成分への放出または露出を最小限にするいくつかの他の条件に晒されなければならない。
【0099】
すでに述べたように、本発明のカプセル化された硬化系は、幅広い種類の1液型液体硬化系に使用するのに適している。従来のカプセル化された系では、液体硬化性組成物の調製および/または吐出する際の高せん断力による硬化性組成物の早期の破砕および/または重合に関して懸念されていた。しかしながら、本発明のカプセル化された硬化系では、その新規なキャリアー系によって早期の破砕および/または重合の心配が軽減される。当然のことながら、接着剤の調製および/または吐出の際の高せん断力では、早期の重合または硬化を開始するには充分な量のキュラティブは得られない。一方、このように効果のあるこれら新しい系の場合、その液体硬化系が使用される用途および/または組立工程は、硬化性組成物の重合を行うまたは開始するためにキュラティブを利用可能にする好適な機会または手段を与えることが望ましく、そして必要である。例えば、本発明の硬化性組成物は、組立工程で何回もの回転が加えられるねじ切りされた部材を接着または封止する際に使用するのに好適である。ネジを完全に回転させずに組み立てられる組み立て体およびプレス/スナップ嵌合組み立て体は、接着面に大きなせん断力が加わるが、このような組み立て体または用途は、勧められない。ピンチロールまたは指圧によってカプセル壁が破裂し、キュラティブを利用可能にする場合にも本発明の使用は制限される。実質的にキャリアーに作用するこのような小さな作用は、硬化性組成物の完全なまたは実質的な硬化または重合を行うのに必要な好適な量のキュラティブを放出または利用可能にするには不充分である。しかしながら、キャリアーがワックスであり、カプセル化された硬化系を含む液体硬化性組成物が圧力を加えるおよび/または2つの被接着体を組み合わせる前またはこれと同時にワックスを溶融するのに充分な熱に晒されるカプセル化された硬化系またはキャリアーがチキソトロピック材であるカプセル化された硬化系は、例外である。
【0100】
本発明のカプセル化された硬化系のより典型的かつ実際的な用途は、上述のあらゆる一般的な種類のプレアプライド型接着剤である。より困難なキュラティブのまたはキュラティブへの可触性の利点および本発明のカプセル化された硬化系の保護性またはスペーサーとしての利点は、これらの用途に発揮される。しかしながら上述したように、カプセル化された硬化系が使用される用途または組み立て工程が硬化性組成物の重合を行うまたは開始するためにキャリアー中のキュラティブを利用可能にする好適な手段を供することが重要である。
【0101】
使用時に塗布され、硬化する上述の液体硬化性組成物と異なり、プリアプライド接着剤およびシーラントは、それらが塗布される被接着体の製造または加工に利用され、これら接着剤およびシーラントは、硬化性組成物の貯蔵安定性および保存性によっておよび該組成物が塗布されるストック材または被接着体に対する要求によってしばらくは硬化されない。通常、当該接着剤およびシーラントが塗布されるストック材または被接着体は、互いに順次積み重ねられるか、それらが互いに接触する容器に入れられる、および/または多くの異なる力に触れる機会および予備塗布された材料と接触する他の被接着体が存在する用途または組み立て作業に使用される。カプセル化された硬化系のカプセルまたは殻壁がこのような力または作用の結果、破裂した場合、硬化性組成物の早期の重合、硬化または架橋を行うための適当なキュラティブを利用可能にするキャリアーのせん断および混合は不充分になる。さらに液体重合性成分に分散したカプセル化された硬化系を含むプリアプライド接着剤において、さらに当該硬化系がそれが塗布された被接着体とその上に重ねられる硬化したポリマーフィルムまたは層の間に挟まれ、その液体接着剤の層の厚みがカプセル化された硬化系の粒径より小さい場合、当該カプセル化された硬化系は、スペーサーとして機能し、ポリマーフィルムの崩壊および/または破砕を防ぐ。同様に液体硬化性成分もカプセル化されているより一般的なプリアプライドカプセル化接着剤系では、カプセル化された液体成分の平均粒径がカプセル化された硬化系の平均粒径より小さい、同じまたは僅かに大きい場合、当該カプセル化された硬化系は、スペーサーとして機能し、液体硬化性成分を含むマイクロカプセルの崩壊または破砕を妨げる。後者の特徴は、従来液体成分のカプセル化に使用されていたのより薄いカプセルまたは殻の使用を可能にするので特に有用である。またこのことは、同じ容量の従来のカプセル化された接着剤およびシーラント組成物よりより多くの液体硬化性成分を供し、さらに接着または封止が形成される界面でより多くの液体が利用可能になるので、より良好な接着および/または封止性能を供することになる。
【0102】
本発明のカプセル化された硬化系の別の利点は、ユーザーが特定の最終用途にキュラティブを調整することができ、かつ、同じ硬化系であっても硬化速度を制御することができるということである。例えば、キャリアーが全体的にまたは部分的に硬化性組成物の液体成分に可溶である、混和性である、またはこの液体成分によって膨潤可能である場合、その溶解度または膨潤度がキャリアー中のキュラティブの露出に影響を与える。同様にキャリアーの混練の容易性もキュラティブを硬化性液体に対して利用可能にする速度を決定する。あるカプセル化された硬化系では、キュラティブを含む接着剤またはシーラント系が混合される速度または時間もキュラティブおよび硬化性液体が密に接触する度合いおよび速度に影響を与える。キャリアーに所定量のキュラティブが含まれる場合、より速くおよび/または長く混合することによってより多くのキュラティブが硬化性液体に露出され、従って硬化を速めおよび/または完全なる硬化または重合を促進する。よりゆっくりまたは短く混合することによって相互作用が少なくなり、硬化も遅くなる。
【0103】
上述したように本発明のカプセル化された硬化系は、接着剤およびシーラント組成物の硬化または重合を直接的または間接的に開始および/または行うのに有用である。この硬化または重合は、付加重合または段階成長重合またはこれら両方によって行われる。付加重合は、フリーラジカル重合、カチオン重合およびアニオン重合などがある。特に好ましいフリーラジカル重合系は、嫌気性接着剤およびシーラント、即ち空気の非存在下で重合または硬化するものである。
【0104】
一般的に言えば、好適な硬化性組成物は、今までに知られているものまたは以下に1液型(即ち、シングルパッケージ)カプセル化接着剤およびシーラント組成物に好適または適用可能とされているあらゆるものを含む。当該組成物は、貯蔵安定性であって、カプセル化を介して他の成分から離隔されている1つ以上の成分を含み、カプセル化を行わなくとも重合または硬化する硬化性組成物である。当該硬化性組成物は、本発明によってキャリアーに含まれるキュラティブと接着剤またはシーラント組成物の液体または粘性の成分とを含む。本発明を実施する際、この液体または粘性の成分は、その物理的状態または層を変えず、キュラティブと混合されなければおよび混合されるまで、そして妥当な場合、重合を行うのに適当な条件に晒されるまで液体または粘性状態のままである。
【0105】
硬化性組成物の液体または粘性成分は、それ自体が通常マイクロカプセル化された成分のドライブレンドを含むシングルパッケージのドライタイプの接着剤およびシーラント系によってまたはカプセル化された成分が液体バインダー系に分散されたまたは硬化したまたは固まったバインダー系によって被接着体にプレアプライドされる液体接着剤またはシーラント系によって同じようにカプセル化されてもよい。また硬化性組成物は、カプセル化されたキャリアーが液体または粘性硬化性材料に分散したシングルパッケージウエットタイプの接着剤またはシーラント系であってもよい。ここまで殆どの場合、液体硬化性成分または液体接着剤またはシーラント組成物を参照してきたが、これは流動性および/または非流動性粘性材料および組成物も含むものであることを理解されたい。同様に液体または粘性成分がキュラティブに晒されるまで、液体硬化性成分の物理的状態または相に実質的な変化は生じないが、当該液体または粘性組成物はさらに硬化性組成物が液体または粘性状態または相にある限り、粘度が上昇する化合物を含むまたはで化合物であってもよい。一般に液体または粘性重合性または硬化性成分は、低分子量モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの形態である。
【0106】
これら種々の硬化性組成物の中で、本発明を実施する上で好適なものは、例えば、ビニル重合するもの、即ち少なくとも1つのビニル基CH2=CH−および/または反応性不飽和(−C=C−)を有するもの、不飽和ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、ポリスルフィド、イソシアネート、シリコーン、シラノール縮合またはヒドロシリル化反応を受けることができるシラノール部分を有するポリエーテル、ポリウレタンおよびポリオレフィンおよびフェノキシ樹脂である。また本発明は、同じまたは異なる類の硬化性組成物を組み合わせたものに、それらが同じまたは異なる機構で硬化するかに関係なく、適用可能である。後者の場合、各硬化性組成物のキュラティブは、同じまたは異なるカプセル化されたキャリアーに含まれてもよい。また特にこれら硬化性組成物の1つの硬化機構が長期に亘る二次的な硬化機構である場合、その硬化性組成物のためのキュラティブを他の硬化性組成物のための硬化性成分でカプセル化してもよい。さらに本発明の硬化性組成物は、二様式(bi-modal)硬化または重合、即ち2つの異なる硬化機構を介して硬化または重合することができる。これは1つの機構で線状ポリマー鎖を形成し、もう一方の機構で架橋する硬化性組成物に特に見られる。さらに当該組成物は、共重合性ポリマーおよび/または一次成分と共重合するまたは一次ポリマーの二次的反応部位と共反応する二次重合性成分を含んでもよい。
【0107】
これらの硬化性組成物は、硬化または重合することができる低分子量反応性モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマー系のものである。プレポリマーの配合物は、付加共重合性モノマーおよび/またはオリゴマーであり、実質的にはプレ接着剤および/またはプレシーラントである。本発明は、当然のことながら、そして特定の用途では好ましく段階成長重合に利用可能であるが、一次重合性成分および固化剤または共反応性成分の適切な化学量論に対する要件がこれらの硬化性組成物の使用をより困難にしている。さらに硬化剤または共反応性成分の分子の大きさによって当該組成物は、キュラティブが低分子量材料である場合、付加重合性組成物より、より多くの重量パーセントのキャリアー粒子を必要とする場合がある。従って、本発明は、特に付加重合性組成物に適用可能である。
【0108】
好ましい付加重合性組成物は、ビニル付加するもの、例えばスチレンおよびアルファ−メチルスチレンなどの置換スチレン系のもの、アクリルアミド類、シアノアクリレートおよびメタアクリロニトリルなどのニトリル類、エチルビニルケトンなどのビニルケトン類、ビニルアセテートおよびビニルプロピオネートなどのビニルエステル類、エチレン、プロピレンおよびイソブチレンなどのオレフィン類、ビニルクロライドおよびビニリデンクロライドなどのハロゲン化オレフィン類、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンなどのジエンモノマーおよびビニルクロライド−ビニルアセテート共重合体などのこれらの共重合体である。多くの場合、これらの成分は、オリゴマー形態で使用するのが望ましく、この場合オリゴマーが残留不飽和またはさらなる重合または架橋を可能にするヒドロキシル、アミノ、カルボキシル、エポキシおよび同様の基などの別の反応性部分または官能基を含む。例えば、アミン官能基を有するポリスチレンオリゴマーを採用してもよく、これによりアミン官能基部位での例えばイソシアネートによる架橋と同時にまたは架橋の前に不飽和の部位で初期の硬化または重合が生じる。
【0109】
特に好ましい付加重合性成分は、多官能および単官能アクリレートおよびメタクリレートエステル、即ち1つ以上のアクリロイル(CH2=C(R)COO−)および/またはメタクリロイル(CH2=C(CH3)COO−)末端またはペンダント部分を有するモノマー、オリゴマーおよびプレポリマーである。便宜上、本明細書および特許請求の範囲で「(メタ)クリレート」と言った場合、特定のモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーのアクリレートおよびメタクリレートの両方のバージョンを意味する(例えば、「アリル(メタ)クリレート」はアリルメタクリレートおよびアリルアクリレートの両方が可能であることを示す)。このような物質は、広範囲の重合性化合物を包含し、例えばポリエステルポリ(メタ)クリレート、ウレタンおよびポリウレタンポリ(メタ)クリレート(特にヒドロキシアルキル(メタ)クリレートとポリイソシアネートまたはウレタンポリイソシアネートとの反応によって調整されるもの)、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)クリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)クリレート、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、アリル(メタ)クリレート、グリシジル(メタ)クリレート、(メタ)クリレート官能性シリコーン、ジ−、トリ−およびテトラエチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジプロプレングリコールジ(メタ)クリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジ(ペンタメチレングリコール)ジ(メタ)クリレート、エチレンジ(メタ)クリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)クリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)クリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)クリレート、ビスフェノールAジ(メタ)クリレート、ジグリセロールジ(メタ)クリレート、テトラエチレングリコールジクロロアクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)クリレート、ネオペンチルジ(メタ)クリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)クリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)クリレートおよびジプロピレングリコールジ(メタ)クリレートなどが挙げられる。ジ−およびポリアクリレートおよびメタクリレート、特にジメタクリレートが一般的には好ましい材料である。単官能アクリレート、即ちアクリレート基を1つだけ含むものも有利に使用することが可能である。典型的なモノアクリレートとしては、2−メチルヘキシル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、シアノエチル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)クリレート、p−ジメチルアミノエチル(メタ)クリレート、ラウリル(メタ)クリレート、シクロヘキシル(メタ)クリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)クリレート、クロロベンジル(メタ)クリレートおよびグリシジル(メタ)クリレートが挙げられる。当然のことながら、(メタ)クリレートまたはそれらの誘導体の混合物および1つ以上の(メタ)クリレートモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーまたはそれらの誘導体とアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどの他の共重合性モノマーとを組み合わせたものも使用することができる。
【0110】
(メタ)クリレートは、通常フリーラジカル反応によって重合される。本発明を実施する際に有用なフリーラジカル重合の開始剤としては、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸エステル、過酸、ペルオキシカーボネート、ペルオキシケトン、アゾ化合物およびレドックス開始剤およびこれらの誘導体である。これら開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ジクミル、過酸化デカノニル、過酸化ラウロイル、ジ−(n−プロピル)過酸化物、t−ブチル過酸化物アセテート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート、ジ−t−ブチルアゾジイソブチロニトリル、t−アミルペルオキシネオデカノエート、ジクロロベンゾイル過酸化物、メチルエチルケトンヒドロペルオキシド、t−ブチル過酸化物、t−アミルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチルペルオキシネオカーボネート、α−クミルペルオキシネオヘプタノエート、t−アミルペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシアセテート、t−アミルペルベンゾエート、ジ−t−ブチル過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)などである。特に好ましい開始剤は、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸エステルおよび過酸であり、最も好ましいのは、過酸化ベンゾイルである。通常このような開始剤は、フリーラジカル重合によって硬化性になる成分の重量で約0.01から10パーセント、好ましくは約0.5から3.0パーセント、最も好ましくは約0.1から2パーセントの量で存在する。
【0111】
開始剤に加えて、これらフリーラジカル重合性組成物は、フリーラジカル重合のための促進剤をさらに含む。一般に知られている促進剤としては、アミンおよびスルフィミドなどがある。N,N-ジメチルパラトルイジン、トリエチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルパラトルイジンおよびN,N-ジエチルアニリンなどの第3アミンおよび3−オキソ−2,3−ジヒドロベンズ−[ジ]イソチアゾール−1,1−ジオキシド(サッカリン)などのスルフィミドは、特に有用である。また有用な促進剤として、ブチルアルデヒド−アニリンおよびブチルアルデヒド−ブチルアミンなどのアルデヒド−アミン反応性生物が挙げられる。しかしながら、最も好ましい促進剤は、メタロセン、特にフェロセンとして知られている有機金属化合物および少なくとも1つのメタロセン、好ましくはフェロセンを含む有機金属ポリマーである。具体的な有機金属化合物は、フェロセン、ブチルフェロセン、チタノセンおよびカプリセンである。通常、促進剤は、フリーラジカル重合によって硬化する成分の重量基準で約0.01から1.0パーセントの量で使用される。しかしながら、当業者は、第3アミンがメタロセンより特定の系および/または用途、特に硬化性バインダー系、上述したようなUV硬化系バインダー系内にメタロセンが移動することが懸念される場合に好ましく使用されることを認識している。
【0112】
本発明を実施する上で使用するのに好適な好ましい類の(メタ)クリレート系硬化性組成物は、嫌気性接着剤およびシーラント組成物として知られているものである。通常、これらの組成物は、フリーラジカル重合性モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーと、フリーラジカル開始剤と、安定剤または禁止剤、例えば多価フェノールおよびキノンなどを含むまたは含まないフリーラジカル促進剤とを含む。特に好ましい重合性モノマー、オリゴマーおよびプレポリマーは、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)クリレート、モノ−、ジ−、トリーおよびテトラ−エチレングリコールジ(メタ)クリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)クリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)クリレート、ポリエステル(メタ)クリレートおよびその誘導体、ポリエチレングリコール(メタ)クリレートおよびその誘導体、ポリウレタン(メタ)クリレートおよびその誘導体である。好適なキノンとしては、ヒドロキノン、ベンゾキノン、ナフタキノン、フェナフタキノン、アントラキノンおよびこれらの置換化合物が挙げられる。これらの禁止剤は、接着剤組成物中にごく僅かな量、通常約10から1000ppm、好ましくは約50から500ppmの量で存在する。嫌気性組成物は、ベータ−ジケトン、エチレンジアミン四酢酸およびそのナトリウム塩などのキレート剤を含んでもよい。嫌気性組成物は、特に接着され被接着体の接合の前に硬化性成分の早期の硬化または重合が懸念される用途に特に好適である。
【0113】
また本発明は、広範囲のエポキシ樹脂、例えばDocket et. al.(米国特許第3,746,068号)、Hart et. al.(米国特許第4,536,524号)、Earls et. al.(米国特許第5,510,431号)およびSiebert et. al.(米国特許第5,157,077号および同第5,140,068号)に開示されている種類のものに適用可能であり、これらの内容を本明細書中に引用したものとする。一般的に言えば、好適なエポキシ樹脂は、分子ごとに平均して2つ以上のエポキシド基を含む低分子量オリゴマーの混合物を含むが、これらのオリゴマーポリマーを含んでもよい。最も一般的なエポキシ樹脂は、グリシジル化合物系のもの、特にビスフェノールAまたはレゾルシノール系のグリシジルエーテルおよびこれらほどではないがフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびテトラヒドロフタル酸のジグリシジルエステルなどである。その他の好適なエポキシ樹脂としては、ノボラック−エポキシ樹脂、特にフェノールノボラックまたはクレゾールノボラック系のもの、グリセロール、ポリプロピレングリコールまたはペンタエリスリトールのグリシジルエーテル、グリシジルエステル、グルシジルアミン、エポキシ化ジエンポリマーおよび脂環エポキシ樹脂などがある。
【0114】
エポキシ樹脂は、そのエポキシ基と反応するハードナーまたは硬化剤で処理することによって重合させてもよい。好適な硬化剤は、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンおよびジエチルアミノプロピレンなどの脂肪族1級および2級アミン、m−フェニレンジアミン、4,4’’−ジアミノジフェニルメタンおよびジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミン、無水物、特に無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、メチルナド酸無水物、ドデセニル酢酸無水物および無水クロレンド酸、および脂肪酸ポリアミド。その他の好適な硬化剤には、ジシアンジアミド、メラミン、イミダゾール誘導体、エチレンオキシドエポキシ樹脂付加物、アクリロニトリルエポキシ樹脂付加物およびケチミンなどの変性アミン、ホウ素トリフルオライド−モノエチルアミン錯体などのルイス酸、o−(ジエチルアミノエチル)フェノール、トリス−(ジメチルアミノメチル)フェノールおよび2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのルイス塩基などがある。当該エポキシ化合物および樹脂を化学的に硬化または重合させるために、多くのカチオン開始剤、例えばHCl、HBr、HI、C6H5SO3H、HSbF6、HAsF6、HBF4またはメタルハライド塩などのルイス酸などを使用してもよい。硬化剤の添加量は、採用する硬化剤によって変わるが、無水物の場合、通常エポキシ化学量論当たりまたはアミンの場合、化学量論量で0.85から1.0モルまたは化学的硬化のためのカチオン開始剤を使用する場合、硬化性エポキシの重量基準で約0.01乃至10パーセント、好ましくは約0.1から3パーセント加えられる。無水物の場合、約1パーセントの3級アミンを触媒として使用してもよい。当業者であれば容易に、使用するハードナーまたは触媒の適切な量を決めることができる。
【0115】
多くの場合、そして好ましくは用途に応じて、エポキシプレポリマーをポリオール、最も好ましくはポリエステルまたはポリエーテルポリオールと反応させる。ポリエーテルポリオールとしては、複数のエーテル結合および少なくとも2つのヒドロキシル基を有する鎖状および/または分枝状ポリエーテルが挙げられる。ポリエーテルポリオールの具体例を示すと、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリブチレンエーテルグリコールなどのポリオキシアルキレンポリオールがある。好適なポリオールは、単独重合体およびその共重合体、特にポリオキシアルキレンポリオールの共重合体などである。特に好ましいポリオキシアルキレンポリオールの共重合体は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチルへキサンジオール−1,3−グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(ヒドロキシフェニル)プロパン、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミンおよびエタノールアミンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む付加物である。
【0116】
ポリエステルポリオールは、炭素数2から15の多価アルコール1つ以上と炭素数2から14のポリカルボン酸1つ以上との縮合から形成される。好適な多価アルコールを例示すると、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールおよび1,3−プロピレングリコールなどのプロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,4,6−オクタントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ドデカンジオール、オクタンジオール、グリセロールモノアリルエーテル、グリセロールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、1,3−ビス−(2−ヒドロキシエトキシ)−プロパンがある。ポリカルボン酸を例示するとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、オクタデセニルマレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、アジピン酸、マロン酸、グルタル酸および無水フタル酸、塩化フタロイルおよびフタル酸のジメチルエステルなどの対応する酸無水物、酸塩化物および酸エステルがある。好ましいポリカルボン酸は、炭素数14以下の脂肪族および脂環族ジカルボン酸および炭素数14以下の芳香族ジカルボン酸である。
【0117】
硬化性組成物は、不飽和ポリエステル系のものであってもよく、その多くは上述のポリオールエステルと同じモノマーから得られる。当該不飽和ポリエステルは、スチレンなどの希釈剤として不飽和モノマーとの組み合わせとして存在する。不飽和ポリエステル樹脂は、通常、1つ以上の不飽和二塩基酸と前段落に記載した二価アルコール1つ以上との反応生成物である。不飽和ポリエステルの硬化または重合は、開始剤と促進剤を必要とするが、一度フリーラジカル重合が開始されると、当該重合は自続する。好適な加速剤は、ジエチルアニリン、ジメチルアニリンおよびN,N−ジメチルトルイジンなどの物質である。好適な開始剤は、過酸化ベンゾイル、エチルメチルケトンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドおよび過酸化ジクロロベンゾイルである。当然のことながら、不飽和ポリエステルのためのその他の促進剤および開始剤を使用してもよく、それらは当業者によく知られている。
【0118】
本発明が利用可能な別の種の硬化性高分子樹脂としては、ポリウレタンプレポリマー樹脂類がある。当該ポリウレタンプレポリマー樹脂は、分子の反応性または重合部分として遊離イソシアネート部分または基を含み、典型的にはポリ(アルキレン)グリコールとポリイソシアネートとの反応生成物である。具体的には、ポリウレタンプレポリマーは、ポリ(1,4−ブチレンオキシド)グリコールおよびトリレンジイソシアネートおよび/またはメチレンジイソシアネートの反応生成物である。当該樹脂は、5重量パーセントの反応に利用可能な遊離イソシアネート基を有する。このポリウレタンプレポリマー樹脂と使用するのに好適な硬化剤は、メチレン−ビス−(o−クロロアニリン)、ポリオール(1,4−ブタンジオール)またはトリメチロールプロパンさらには水であってもよい。その他の好適なポリウレタン樹脂は、遊離ヒドロキシルまたはオレフィン官能価(functionality)を有し、フリーラジカル重合を介して硬化するものが挙げられる。このポリウレタンプレポリマー樹脂に好適な触媒は、錫カルボキシレート、オルガノシリコーンタイチネート(titinates)、アルキルタイチネート、ビスカルボキシレート、3級アミン、アミジン、錫メルカプチド、鉛、コバルト、マンガニーズ、ビスマスまたは鉄のナフテネートまたはアルカノエート塩などである。具体的に例示すると、錫(II)ジアセテート、錫(II)ジオクタノエート、錫(II)ジラウレート、ジブチル錫ジアセテ-ト、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、オクチル酸錫、オレイン酸錫、酢酸錫、ラウリン酸錫、2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどである。
【0119】
本発明を適用する接着剤は、チオール基を末端基として有するオリゴマーポリサルファイドを含む液体ポリサルファイドプレポリマー系のものであってもよい。当該ポリサルファイドは、HS(R−Sx)nHで表される化学的構造を有し、ここでxは1または2から4の小さい数であり、nは1から25の整数であり、Rは、アルキレン、アリーレンまたはアルコキシアルキレン、特に−CH2CH2−および/または−CH2(OCH2CH2)2−であり、多くの場合、さらに分枝基−CH2CHCH2−を含む。好ましいオリゴマーポリサルファイドは、ポリエチレンサルファイドおよびポリプロピレンサルファイドなどのポリアルキレンサルファイド系のものおよびポリ(2,4−トリレンサルファイド)、ポリ(4,4’−ビフェニレンサルファイド)およびポリ(フェニレンサルファイド)(PPS)などのポリアリーレンサルファイド系のものである。末端にチオール基を有するオリゴマーポリサルファイドは、エポキシまたはフェノール樹脂または化合物またはジイソシアネートと反応することによって重合または硬化される。好ましいポリサルファイド系接着剤は、末端にチオール基を有するポリサルファイドとビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの二官能または多官能エポキシドとの反応によって形成することができる。これとは別に重合を末端のチオール基とオレフィンと反応させる、例えばポリエチレングリコールジメタクリレートとの反応によって行ってもよい。硬化性ポリサルファイドの硬化剤は、二酸化マンガン、二酸化鉛、三酸化アンチモンおよび二酸化テルルなどである。
【0120】
さらに本発明は、シリコーン系の接着剤およびシーラント組成物にも利用可能である。これらは、シリコン含有基を有し、これは水酸基またはシリコン原子に結合した水酸基と加水分解的に不安定な基を有し、シロキサン結合の形成で架橋される。好ましい硬化剤は、オクチル酸錫、オクチル酸鉛およびジブチル錫ジラウレートである。これらの硬化性組成物は、耐候性および耐候性が重要となるシーリング組成物として特に有用である。
【0121】
上述したように、硬化性組成物は、系が相溶性であり、得られる硬化または重合した接着剤またはシーラントが意図した特徴を有する限り、同じ一般的な化学的種類または異なる化学的種類のモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの混合物を含んでもよい。モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの組み合わせまたは混合物を使用する場合、3つの機構があり、それによって二次成分が一次硬化性成分の組成によってまたは組成内に組み込まれる。第1の機構では、第2の重合性成分が第1の成分と共反応または共重合するための複数の反応性または官能性部位を有する。第2の機構では第2成分が、硬化または重合した一次成分と水素結合を形成する酸素、アミン、エーテル、ヒドロキシル、ケトン、エポキシまたはカルボキシルなどの極性基を有する。第3の機構では第2成分が、一次成分の対向する鎖の動きと立体的にからみあう(entangled)または動きを阻害するようなものである。
【0122】
第1の硬化性成分と共反応または共重合する好適な第2成分は、アリル(メタ)クリレート、アルケングリコールジ(メタ)クリレート、アルキルジオールジ(メタ)クリレート、アルコキシアルカノールジ(メタ)クリレートおよびトリアルカノールトリ(メタ)クリレートであり、特にアリル(メタ)クリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)クリレート、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)クリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)クリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)クリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)クリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)クリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)クリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)クリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)クリレート、エトキシル化ビスフェノールジ(メタ)クリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)クリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)クリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)クリレート、ペンタエルスリトールトリ(メタ)クリレート、およびこれらの混合物である。当然のことながら、各種重合性成分について上述したものもその他の好ましい材料として含まれる。水素結合を形成するための極性基を有する第2成分を例示すると、アルコキシアクリレート、アルコキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、アクリルアルコキシフタル酸、メタクリルアルコキシフタル酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、シクロアルコキシアクリレート、シクロアルコキシメタクリレートなどである。最後に形成する接着剤ポリマーの対向する鎖の動きと立体的にからみあうまたは動きを阻害することになる好適な第2成分は、炭素数14超のアルキル(メタ)クリレート、シクロアルキル(メタ)クリレート、多環アルキル(メタ)クリレート、アラルキル(メタ)クリレート、シクロアルコキシ(メタ)クリレートである。具体的な例としては、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシルおよびアクリル酸セチルなどが挙げられる。
【0123】
任意ではあるが、硬化性組成物は、さらに木材ロジン樹脂、ゴムロジンのエステル、スチレン化されたテルペン、テルペンフェノール樹脂などのテルペン樹脂を含んでもよい。これらテルペン樹脂は、増粘剤として機能する。油がついた金属シート上の硬化性組成物の接着強度は、脂溶性の添加剤、例えばリモネン、ジペンテン、テルペン樹脂またはテレビン油を硬化性組成物の重量に対して1乃至10重量パーセントの量で包含させることによって高めることができる。その他の任意の成分としては染料、安定剤、禁止剤、増粘剤などが挙げられる。
【0124】
上記は、本発明が適用される無数の硬化性組成物の概要についての記載したものであり、本発明は、上述の類の硬化性組成物またはそれについて述べた特定の重合性成分に限定されるものではない。そして当然のことながら、これら組成物は、任意に染料、顔料、可塑剤、安定剤、溶媒、表面活性剤、乳化剤などの当業者によく知られているその他の添加剤を含んでもよい。本発明の利点および特性を供するために本発明の教示内容に従って変性し得る別の硬化性組成物は、当業者には自明であり、容易に認識される。そのような硬化性組成物は、Mahdi et. al.(米国特許第20020,010,272号)、Bachmann et. al.(米国特許第3,814,156号)、Chermack(米国特許第4,940,852号および同第4,808,639号)、Wallace(米国特許第4,428,982号および同第4,081,012号)、Krieble(米国特許第3,489,599号および同第3,746,068号)、Newell(米国特許第4,252,708号)、Kropp et. al.(米国特許第6,573,328号)、Matsuo(米国特許第6,025,074号)、Fryd et. al.(米国特許第4,980,410号)、Azevedo(米国特許第4,417,028号)、Cooke et. al.(米国特許第4,497,916号)、Chao(米国特許第6,375,872号)、Usami et. al.(米国特許第5,397,812号)、Wolinski et. al.(米国特許第4,126,504号)、Siebelt et. al.(米国特許第5,140,068号および同第5,157,077号)、Deckert et. al.(米国特許第3,746,068号)、Hart et. al.(米国特許第4,536,524号)、Earls et. al.(米国特許第5,510,431号)、Hilbelink et. al.(米国特許第3,725,501号)、Sweeney(米国特許第4,830,558号および同第4,555,206号)およびRich et. al.(米国特許第5,635,546号および5,853,520号)に開示されており、これらの内容を本明細書中に引用する。
【0125】
本発明の硬化性組成物を調製する方法は、その組成物の利用形態および方法によって変わる。液体または増粘された接着剤およびシーラント組成物の場合、カプセル化されたキャリアー粒子は、単にあらゆる公知の方法および商業的に採用されている技術によって液体硬化性組成物にブレンドされる。好ましくは当該組成物は、自然にまたはヒュームドシリカなどの好適な増粘剤および/またはチキソトロピー剤を添加することによって増粘され、カプセル化されたキャリアー粒子が貯蔵中に沈降しなくなる。また当該硬化性組成物は、使用前に撹拌される。
【0126】
硬化性組成物がプレアプライド式に使用される、即ちストックされ使用前に貯蔵される被接着体に塗付される、例えば別の場所で使用するために工場または加工場所でナットまたはボルトに塗付される場合、カプセル化されたキャリアー粒子は、被接着体に塗付された液体硬化性成分中に分散し、被接着体に塗布され、この上に液体硬化性組成物からなるポリマー膜が形成される、または好ましくは液体硬化性成分もカプセル化され、カプセル化された液体硬化性成分とカプセル化されたキャリアー粒子がカプセルを被接着体に付着させるための好適なバインダー中で分散される。最初に示した例の場合、本発明の液体硬化性組成物を被接着体に塗付した後、液体重合性材の薄膜または膜形成材の溶液が塗布され、その下の液体硬化性組成物を覆い、これにより膜と被接着体との間で液体硬化性組成物を包むまたは覆う。またそのような保護膜を硬化性組成物自身から得ることも可能である。この場合、この硬化性組成物は、好適な光開始剤および/または光増感剤を含み、適当な照射、好ましくはUVライトを当てることによって液体硬化性成分の表面の硬化が開始する。このような硬化性組成物は、好適なUVスクリーニング剤を含んでもよく、これにより確実に薄い表面の膜だけが硬化または重合する。このような系は、Ozono(米国特許第4,588,639号)およびWallace(米国特許第4,428,982号)に教示されており、これらから容易に得られ、この内容を本明細書中に引用し、これらは当業者によく知られている。
【0127】
通常そして好ましくは、液体硬化性組成物およびキュラティブは、カプセル化され、そのマイクロカプセルは、好適なバインダーに分散される。バインダーは、壁材の組成および被接着体の組成によって選択される。バインダー系は、殻壁および/または接着剤またはシーラントを形成するのに有用なものと同じまたは類似の硬化性または重合性材料を用いた硬化性バインダー系であってもよい。好適な硬化性バインダー系は、無水物とアリーレン、アルキレン、アルコキシレン、アルカリレン、アラルキレン、アルコキシアルキレン、アリールオキシアルキレンおよびアリールオキシアリーレンとの反応によるものである。好適なバインダーは、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体、などの水溶性バインダー剤、ゼラチンおよびクロロプレン、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、カルボキシまたはヒドロキシ変性ビニルクロライド−ビニルアセテート共重合体、セルロースアセテート、エポキシド、ポリテルペン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、これらの共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸−カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸−カプロラクトン)、ポリ無水物、アルブミン、カゼイン、ブチラート樹脂、ポリビニルアセテート、二塩基酸とジオールとのポリエステル、ポリビニルクロライド、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ワニスおよびタール系樹脂およびワックスである。これらバインダーに好適は有機溶剤は、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、メチレンクロライドなどの塩素系溶剤;モノフルオロトリクロロエタンおよびジクロロジフルオロエチレンなどの塩素/フッ素系炭化水素;ヘキサンおよびペンタンなどの炭化水素系溶剤、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコール;およびメチルエチルケトン、トルエンおよびベンゼンなどのラッカー系溶剤である。別のバインダー系は、例えば、Park et. al.(米国特許第5,827,924号)、Matsuo(米国特許第6,025,074号)およびBachman et. al.(米国特許第3,814,156号)に開示されており、この内容を本明細書中に引用する、そしてこれらは当業者によく知られている。
【0128】
特に望ましいバインダー系は、光重合性のもの、即ち光、好ましくは紫外線に晒されると硬化または重合するものである。当該バインダー系は、上述の硬化性モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーと好適な光開始剤および/または光増感剤とを含む。好適な光開始剤は、ベンゾインおよびその誘導体、ベンゾフェノンおよびその誘導体、キサントン、ベンジル、ベンジルケタール(特にベンジルメチルケタール)、アセトフェノンおよびその誘導体(特にα,α−ジエトキシアセトフェノン)、α−ヒドロキシアルキルフェノン、o−アシル−α−アミノケトン、アシルホスフィンオキシド(特に2,4,6−トリメチロールベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)およびアシルホスホネートである。これとは別の開始剤としては、置換されたピリリウム塩、アントラセンおよび置換アントラセンなどの誘導体、アントラキノンまたはケトクマリン誘導体などもある。通常、光開始剤は、バインダー組成物の重量基準で約0.5から10パーセントの範囲の量で使用され、総バインダー組成物の重量で約2から4パーセント以上であることが望ましい。これとは別にまたは加えて、光重合性バインダーは、光増感剤を含んでもよい。好適な光増感剤は、ベンゾフェノンまたはエオシン、フルオレセイン、チアゾールダイ、チアジンダイ、オキサジンダイ、アジンダイ、アミノケトンダイ、キサンタンダイ、アクリジニウムダイまたはフェナジンダイなどの染料である。このような光増感剤を加えることによって、硬化を開始するために使用される照射の露出強度を小さくし、および/または露出時間を短くすることができる。一般に光によって開始される重合の場合、過酸化物、過酸エステル、アゾ化合物および誘導体、ベンゾイン誘導体、アルファ−ハロアセトフェノンまたはアシルフォスフィン酸化物などの光開始ラジカル発生成分を総バインダー組成物の重量で約0.005から4パーセント以上(望ましくは約0.01から1.5パーセント)の範囲の量で使用することが望ましい。上記の説明は、主にフリーラジカル光重合に関するものであるが、好適なバインダー系は、同様に光イオン活性される。好適なカチオン光発生剤は、ヨードニウム塩、特にジアリルヨードニウム塩である。このようなヨードニウム塩は、米国特許第3,729,313号、同第3,741,769号、同第3,808,006号、同第4,250,053号および同第4,394,403号に記載されている。このヨードニウム塩は、塩化物、臭化物、ヨウ素、アンチモンペンタフルオライドまたはアーセニックヘキサフルオライドなどのアニオンを含む単塩であってもよい。必要であれば、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。通常、ヨードニウムカチオン光開始剤は、増感剤および電子供与性化合物と組み合わせて使用される。従って、特定のヨードニウム塩が、特定の重合性成分、増感剤およびドナーに応じてある程度決められる。
【0129】
バインダー組成物は、接着剤およびシーラント組成物のためのキュラティブおよび添加剤などの他の成分を含んでもよい。ただしキュラティブを含む場合、そのキュラティブは、硬化性組成物の硬化性成分を含むマイクロカプセルが早期に破壊してもその成分を早期に硬化または重合させないものである。従って、例えば所定の硬化性組成物の開始剤がカプセル化されたキャリアーまたは硬化性組成物の別のカプセル化された成分にある限り、促進剤をバインダー中に分散させてもよい。
【0130】
硬化性組成物内に組み込まれるまたはこれと共に使用されるカプセル化された硬化系の量は、硬化性組成物の種類、即ちそれが付加重合性の系であるか、または段階成長重合性の系であるか、硬化性組成物の状態、即ちそれがバインダー中で液系または完全にカプセル化された系であるか、所望の硬化または重合度、硬化性成分の量および/または化学量論、キャリアー粒子中のキュラティブの量などの多くの異なるパラメーターによって変わる。当業者であれば容易に好適な含有量を認識し、決めることができるはずである。多くの場合、キャリアーが存在しない場合と同じ量のキュラティブを含むカプセル化された硬化系の量を採用する場合もある。
【0131】
プレアプライド接着剤およびシーラント組成物の場合、バインダー系に組み込まれるカプセル化された硬化系の量もその組成物の塗付法および塗付量並びにバインダーの組成によって影響される。溶液状態のバインダーポリマーを含むバインダー組成物は、バインダー系の総重量基準で液体硬化性バインダー系より少ない量のカプセル化された成分(硬化系と硬化性成分の両方)を含む。通常、バインダー材の量を最小限にし、同時にカプセル化された成分(硬化系と硬化性成分の両方)の量を最大限にして、最適な接着またはシール性能を得るのが好ましい。一般的に他のマイクロカプセル化された成分と組み合わされるカプセル化された硬化系の量は、従来のカプセル化された接着剤およびシーラント組成物に使用されている量と一致する。しかしながら、それより少ない量もキュラティブと硬化性組成物を活性中に効率よく混合することによって採用することが可能である。
【0132】
本発明のカプセル化された硬化系内のキュラティブは、高せん断、特にキャリアーを素練りまたは混練する高せん断混合によって、または熱によって流動するキャリアーの場合、中程度のせん断混合によって放出される、および/または利用可能になる。これを起こす特定の方法は、キャリアー、カプセル化された硬化系が液体接着剤またはシーラント組成物の一部であるか、またはプレアプライド接着剤またはシーラント組成物の一部であるか、そして後者の場合、プレアプライド組成物が塗付される被接着体の性状によって変わる。例えば、カプセル化された硬化系を含む液体硬化性組成物の場合、硬化性組成物の硬化は、高せん断混合エレメントまたは押出しバレルのスクリューに類似したエレメントを介して吐出する、または塗布することによって行ってもよい。これとは別にカプセル化されたキャリアーを含む液体硬化性の組成物のビードを被接着体に重ね、ミキサーブレードまたは一連のミキサーブレードで混合または素練りしてもよい。ミキサーブレードは、複数の静止ダムの形状であってもよく、ビードと共に被接着体がこれらのダムを通過する際、ダムはビードを動かし、混練してキュラティブを露出させ、キュラティブと硬化性組成物の成分とを均質混合する。
【0133】
液体硬化性組成物中のキャリアーが熱溶融液のワックス材または感熱性材料である場合、ノズルはミキサーエレメントと組み合わせられた加熱エレメントを有し、このミキサーエレメントは、高せん断ミキサーエレメントであっても、なくてもよく、これによりキャリアーが加熱エレメントによって発生される熱によって軟化される、または流動状態に変質される。これとは別に前段落の最後の文章に続いて、ブレードおよび/またはダムを感熱材料を硬化性組成物との混合と同時に柔軟におよび/または流動性にするために加熱してもよい。
【0134】
プレアプライド接着剤またはシーラント組成物の場合、硬化性組成物の硬化または重合は、プレアプライド硬化性を介して繰り返し通過するミキサーブレードによって行われる。高速で行われる工業的生産工程では、接着剤は、静止または往復運動するブレードまたはミキサーエレメントを通過するが、これらブレードまたはミキサーエレメントは、加熱されてもされなくてもよい。静止エレメントの場合、エレメント自身が一連のせき板状の構造を有してもよく、これは、プレアプライド組成物が被接着体表面から掻き取られる際に鋤のようにプレアプライド硬化性組成物を押し、混合する役割りを果たす。いずれの場合において、接着剤混合物は、キャリアー成分および/または増粘または粘度向上添加剤の存在により、高い粘度を有するので、ミキサー部分を通過する硬化し始めた硬化性組成物は、隆起した嶺状になり、これにより硬化し始めた硬化性組成物と2つの被接着体とを接触させると、当該組成物は、両方の被接着体表面と接触し、特に平らでない被接着体表面の間の隙間を埋める。
【0135】
ミキサーエレメントにおいて重要なことは、それが確実に殻壁を破壊するように硬化性組成物を混練または素練りすることであり、より重要なことは、キャリアーを繰り返しすりつぶすまたは混練して、より多くの連行したキュラティブを露出させることである。
【0136】
上述したように活性化された接着剤およびシーラント組成物の高粘度により、当該組成物をそれが活性化される手段に応じてまたは活性化される際に活性化工程から生じる活性化された材料の隆起したビードまたは複数のビードとして塗布することが可能である。この特徴によって次に使用されるまで貯蔵される所定のストック材にプレアプライド接着剤の薄い膜を塗付することが可能になる。接着剤は薄い層として塗付されるので、加工材を高く積み重ねても接着剤によって傾むいたり、崩れ落ちたりする心配がない。一部の加工材は、既にその表面に反応性接着材料の薄膜が塗付されている場合があり、接着層の厚みはそのプレアプライドされた反応性接着材料の厚みに限定されてしまう。しかしながら本発明では、活性化された接着剤およびシーラント組成物の物理的および流動学的特性により、平らでない面および隙間を埋めることができる隆起したビードを作ることができる。これらは従来のプレアプライドされた膜では対処できない用途である。
【0137】
以下の実施例は、本発明のさらなる範囲を例示し、本発明の理解を容易にするものであるが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0138】
カプセル化された硬化系
いくつかの本発明による新規なカプセル化された硬化系(以後、「ECS」とする)をECSマイクロカプセルの内相、即ちキャリアー材またはキャリアーがイン−シツ重合される場合、その前駆体、そしてキャリアーに含まれるキュラティブの調製および1つ以上の壁形成またはカプセル化工程からなる多段階工程で作製した。一般的に内相は、適当な容器またはビーカー内で重合性モノマーに可塑剤、高分子増粘剤および/または粘着付与樹脂を加えて、全ての固形物がモノマーに溶解するまで室温で撹拌する。その後、例えば過酸化物およびアゾ開始剤などのキャリアーに組み込まれる感熱性の成分、特にキュラティブを混合物に加え、全ての固形物が完全にまたは実質的に完全に溶解するまで高温、通常45℃で一定に撹拌または混合した。第1の混合工程は、樹脂はモノマー中に温度に依存して溶解せず、時間を要するので、室温で行った。一方、キュラティブの混合はより温度の依存性が高いので、高温で行うのが好ましい。当然のことながら、全ての成分を高温で異なる順番で添加することも可能なはずであるが、樹脂がモノマーに溶ける速度が遅いので、長期の高温での混合は、キュラティブの有効性または効能に悪影響を与える。
【0139】
ECSの内相のカプセル化は、1、2または3段階の多段階工程、好ましくは2段階工程で行った。特に示さない限り、全てのカプセル化工程は、ジャケット付きスチール製容器または反応器中で、その中で成分を確実に良好に混合するための一体化された撹拌手段を有する窒素ブランケット下で行った。2段階カプセル化工程は、次の一般的な工程からなる。
−コロイド状のポリアクリル酸(C−121...)と、水酸化ナトリウム(5%溶液)と水との均質混合物を反応容器内で調製した。
−その後、部分メチル化されたメチロールメラミン樹脂溶液(Cymel 385)を一定の撹拌下で上記混合物に添加した。この材料の粘度が高いためにその添加は、4分間掛けて行った。
−メラミン樹脂の添加完了後、ECS内相材料を一定の撹拌下で当該混合物に添加した。
−通常約16分後にECS内相材料が均質に混合されると、その反応混合物を室温または好ましくは僅かに高温で高せん断処理してECS内相材料の所望の粒径を得る。高せん断または乳化条件は、一体化されたまたは挿入されたインペラー装置によって得た。粒径の測定は、乳化の進行を判断するために定期的に行った。
−乳化工程が完了する直前に、通常完了の5分前に、第2段階のカプセル化工程の壁形成組成物を調製した。上記のように第2段階壁形成組成物は、部分メチル化されたメチロールメラミン樹脂をコロイド状のポリアクリル酸と、水酸化ナトリウムと、水との混合物に添加することによって調製した。
−乳化工程の中断の5分後に、調製された第2工程壁形成組成物を前記混合物にそれが一定の撹拌下に維持されている状態で添加した。
−第2段階の壁形成組成物の添加後、塩、好ましくは硫酸ナトリウムを前記混合物に加えて、カプセル化工程が完了する。
−その後、この反応混合物の温度を約2時間以内、好ましくは約1時間以内で徐々に上昇し、その温度を長期に亘って維持し、カプセル壁の形成およびECS内相材の重合を確実に完了する。
【0140】
上記の手順は、本発明を実施する上で適用し得る多くのものの1つであることは明らかであり、当業者であれば多くの変更および変形例が成功し得ることを容易に認識するはずである。例えば、壁形成材およびECS内相材を同時にまたは順番を逆にして加えることも可能である。しかしながら、壁形成材料は、内相材の乳化工程を補助すると考えられているので、上記特定の順番が望ましい。さらにカプセル化工程の時間は、インペラーブレードの種類、大きさおよび形状ならびに速度などの多くの要因によって変わる。高せん断によってより小さい粒径が供されるが、当業者であればある一定の時間を超えると、高せん断混合を続けても材料にさらなる粒径の変化は生じないことを理解しているはずである。粒径の測定は、カプセル化工程中または後にParticle Sizing Systems社製造のAccusizer Model 780 size instrumentを用いて行った。
【0141】
〔実施例1−19〕
本発明に従っていくつかの異なるマイクロカプセル化された新規な活性系を調製した。これらの各実施例において、キャリアーをカプセル化と同時または後にイン−シツ重合した。ECSマイクロカプセルの内相の配合を表2に示し、そこに示した量は、グラムである。下記に示したもの以外、ECSマイクロカプセルを表4に示した反応条件および時間で表3に示したセル形成材料を用いて上述の2段階カプセル化工程に従って調製した。表4は、形成されたマイクロカプセルの物理的特性、即ち平均粒径およびセル壁の含有量も示している。
【0142】
【表1−a】

表1−a、表1−bは一つの表です。
【0143】
【表1−b】

【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【0147】
実施例3ではこの一連のその他の実施例と異なり、最終反応混合物を最終反応温度にする際に2段階の加熱サイクルを採用した。具体的には表4に示したように、反応混合物は、最初に45℃に加熱され、その温度を10分間維持し、その後80℃に加熱され、その温度を一晩維持し、内相材料を重合させた。
【0148】
実施例8では、ECS内相をポリアクリル酸と、水酸化ナトリウムと水との壁形成予備混合物に加え、45分間乳化させて、壁形成メラミン樹脂を加えて、この混合物をさらに30分間乳化させた。
【0149】
最後に実施例18では、2段階キャリアー重合を採用し、最初の重合を表4に示すように65℃で6時間行い、その後温度を80℃まで上昇させ、反応をさらに6時間継続した。
【0150】
〔実施例20−22〕
第2の実施例群を重合性壁形成材料を第二段階中に加えずに2段階カプセル化工程を再度使用して調製した。ECS内相の組成および壁形成材の成分を示す表5から明らかなようにカプセル化工程の第2段階は、単に水酸化ナトリウムとスルホン酸ナトリウムと水の溶液を加えただけである。反応条件および形成されたマイクロカプセルの物理的特性を表6に示す。表6から判るように、実施例22は、最初の重合工程を65℃で6時間行って、第2段階で反応温度を90℃にまで上昇させ、16時間維持した以外は、上記実施例18と同様に2段階キャリアー重合を採用した。
【0151】
【表5】

【0152】
【表6】

【0153】
〔実施例23−25〕
実施例23ならびに実施例24および25は、カプセル化を単一工程または3段階工程によってカプセル化を行った別のカプセル化工程を例示する。得られたECSマイクロカプセルの組成、製造方法および特性を表5および6に示す。
【0154】
接着剤組成物
本発明のカプセル化された硬化系の効果および有用性を証明するために上記カプセル化された硬化系のいくつかを組み込んだ硬化系接着剤の処方をいくつか調製した。実施例26は、一液型液体接着剤組成物にECSマイクロカプセルを使用し、残りの実施例は、全てECSマイクロカプセル、カプセル化された硬化性組成物(以下、「ECC」とする)がバインダー系内で組み合わされ、種々の被接着体に塗付し、乾燥させる、または必要に応じて硬化させ、そして活性化させた。
【0155】
表7は、硬化性組成物を含む種々のマイクロカプセルの内相および硬化性組成物をカプセル化する際に使用した壁形成材の構成を示す。一般的にECCマイクロカプセルを形成する方法は、次のように行われる。
−ECC内相の成分をこれら全てが溶解するまで窒素ブランケット下で混合し、次の使用まで保持する。
−メラミン樹脂を除いたセル壁相Iの全ての成分を25℃に維持されたスチール製反応器に加え、低せん断、即ち300rpmで混合し、メラミン樹脂を加えて低せん断でさらに4分間混合した。
−調製されたECC内相配合物を前記反応器に加え、さらに16分間300rpmで均質混合した。
−この混合物を25℃で75分間、3000rpmで高せん断乳化処理した。この間、第2段階の壁形成材料を上記反応混合物の乳化工程の完了約5分前にメラミンを第2段階の壁組成物の残りの成分に加えて調製した。
−乳化が完了した後、反応器中の混合物を低せん断、即ち300rpmでフラットパドルミキサーで連続的に混合した。乳化工程を中止した約5分後に第2壁形成組成物をこの混合物中に加え、硫酸ナトリウムを使用する場合にこの段階で加えた。
−その後、反応器温度を徐々に約2時間掛けて上昇させ、ECCマイクロカプセルを回収する前に65℃に維持された反応混合物をさらに8時間、低せん断混合した。
【0156】
これらプレアプライドマイクロカプセル化された接着剤組成物のいくつかでは塩基水溶液バインダーを使用し、いくつかではUV硬化性バインダー系を使用した。以下の実施例で使用した種々のUVバインダー系の組成を表8に示した。これらのバインダーは、従来の混合装置を使用してUV光に晒されないように注意して周囲条件で調整した。
【0157】
〔実施例26〕
6.7重量部のテトラメチルアナリンと、33.3重量部の実施例19で調製されたカプセル化された硬化系と、60重量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomer SR399)とを混合して1液型液体硬化性接着剤組成物を調製した。この液体接着剤組成物の薄膜をアルミニウムのプレート(0.75インチx4インチ)に塗付し、この上に別のアルミニウムプレートを載せた。これらプレートを指で圧力を加えながら1インチ動かして、約10から20回こすった。その後、これらプレートを5から10秒間、放置し、プレートを引き離せなかったことを確認し、これは接着剤が硬化したことを意味する。
【0158】
〔実施例27〕
5重量パーセントのポリビニルアルコールと5重量パーセントの過酸化ベンゾイルとを含む4重量部の水溶液と、2重量部のp−トルエンスルホン酸(p-TSA)と、20重量部のECCマイクロカプセルAと、74重量部の実施例1で調製したカプセル化された硬化系とを混合して、水性プレアプライド接着剤組成物を調製した。一枚のチップボードを5%のポリビニル溶液のコーティングで#16ロッドを用いて予備処理した。処理された面をさらに前記接着剤を#50ロッドを使用してコートした。そのコーティングを乾燥させ、かみそりの刃を用いて手の圧力でブレードの縁部をプレアプライド接着剤に亘って10回ほど、手で移動させた。それからチップボードを折り曲げて、10秒間手で圧力を加えて保持した。手を離した後も、チップボードは接着したままであった。
【0159】
〔実施例28〕
15重量部のスチレンアクリルラテックスエマルジョン(Jonacryl 3050)と、3.5重量部の重炭酸ナトリウムと、0.4重量部のポリアクリレート(TT-615-Rohm & Hass)と、52重量部の実施例6で調製されたカプセル化された硬化系と、14.2重量部のECCマイクロカプセルBと14.2重量部のECCマイクロカプセルCとを混合して第2の水性プレアプライド接着剤組成物を調製した。この組成物をニュースバックストック(news back stock)に薄膜(0.006インチ)としてクレーコートされた側に塗付した。この薄膜を乾燥させ、かみそりの刃を用いて手の圧力でブレードの縁部をプレアプライド接着剤に亘って10回ほど、手で移動させた。ニュースバックストックを指で圧力を加えて折り曲げ、シリアルの箱のフラップのように閉じた。ニュースバックストックを圧力を開放した後も接着されたままであって、1分後引き離したとき、強い接着が感じられた。5分間および1時間硬化させたフラップを引き離した際、繊維の裂けが認められた。
【0160】
〔実施例29−36〕
UV硬化性バインダー中での一連のプレアプライド接着剤組成物を本発明のカプセル化された硬化系を採用して評価した。これらのプレアプライド硬化系の構成を表9に示し、カプセル化された硬化系組成物(ECC)の組成を表7に示し、バインダー系の組成を表8に示し、カプセル化された硬化系(ECS)は実施例の番号で特定し、例えばECSCap5は、実施例5で調製されたカプセル化された硬化系を意味する。
【0161】
【表7】

【0162】
【表8】

【0163】
【表9】

【0164】
これら各実施例において、接着剤組成物をシリアルボックスの板紙から切り取った幅3インチ、長さ5インチのカードの主軸のセンターラインに沿って幅0.5インチ、厚さ0.006インチの薄膜として塗付した。接着剤膜は、カードの繊維側に塗付され、UV光で硬化させた。接着剤は、活性化し、このカードを同様のカードに特別仕様の活性化装置を用いて接着した。この装置は、挿入ステーションと、アクティベーターステーションと、接着ステーションと、これは挿入ステーションからアクティベーターステーションを介して接着ステーションで終結したレールを有する、このレールに沿って移動するスレッドとで構成されている。調製されたサンプルをテストする際、バキュームを備えたスレッドに、接着剤がプレアプライドされたカードを接着剤が塗付された面を上に、その主軸がレールの主軸と平行になるように設置した。スレッドをレールに沿って、毎分150から250フィートの速度で活性化ステーションを通過させ、ここでカードから接着剤を持ち上げ、こする1つ以上のリッジ、ダムまたはその他の構造体を有する面を持つ静止活性化手段がマイクロカプセルを破砕し、その内容物を混合し、カードに接着剤を再度堆積させる。その後スレッドは、活性化されたカードが約12秒間約5psiの圧力で別のカードと組み合わされる接着ステーションを通過する。その後接着されたカードを4週間放置し、最終的な引きはがし粘着力とせん断粘着力を測定した。各接着剤系に対して5つのカード接着体で試験を行い、それらの結果の平均値を取り、表9に示した。
【0165】
引きはがし粘着力とせん断粘着力試験は、Tappi条件下で200ポンドの加重セルを有するThwing-Albert EJA materials 引張試験機を用いて行った。試験の際、装置の設定は、テストスピード:毎分12インチ、感度:0.5ポンドおよびゲージ長:1.75インチとした。顎部が各サンプルの長さに亘って延び、接着部の領域と平行にその下に位置し、これによって接着領域を試験前に安定させるように変更されたバイスグリップのクランプに各サンプルを設置した。接着ラインに圧力を加えずに締まりばめするようにクランプを緊張させた。クランプされた組み立て体を以下の特定の試験に備えるために折り曲げた。
【0166】
はがし試験:はがし試験を行うためにクランプから延びた上記接着されたカードの露出し、接着されていないフラップをクランプの縁部に沿って反対方向にカードに対して90oに折り曲げた。このように折り曲げられたカードは、T字形になる。この曲げられたカードを各フラップを対向する顎部で保持し、引張試験機の中央に据えた。これにより試験の準備が完了した。
【0167】
せん断粘着力試験:このせん断試験を行うために上記接着されたカードの露出し、接着されていないフラップの角を接着されたカードに対して90o折り曲げた。接着されたカードのもう一方のカードの反対の端部で同じように角を第1の折り曲げられた角と反対の方向に90o折り曲げた。引張試験機の各顎部を折り曲げられた角の1つに取り付けた。これにより試験の準備が完了した。
【0168】
〔実施例37〕
最後にプレアプライド組成物を調製し、ねじ係止用途における本発明の組成物の有効性を証明した。この例では、23重量部の表8に示したUVバインダーRと、20重量部の表7からのECCマイクロカプセルKと、57重量部の実施例19のカプセル化された硬化系を使用して組成物を調製した。
【0169】
これらの組成物の効能を試験するために0.5インチ幅の接着剤のバンドを長さ1/2インチ、直径1/4インチの複数のボルトのねじ山に塗付した。このバンドをUV光下で硬化させた。ナットを接着剤バンドの上方縁部に進むまで手でボルトにねじ込みした。これらを数時間放置してからナットを手で取り外そうとしたが、できなかった。実際の接着強度は測定しなかったが、接着剤は硬化し、有効な接着面を形成していた。
【0170】
本発明を上述の特定の態様および実施例に関して説明してきたが、本発明の概念を使用したその他の態様も本発明の範囲を逸脱することなく可能である。本発明は、請求の範囲に記載された要素およびそれに包含される、または具現化される原理の範囲にかかる全ての変形、変更または対等のものによって定義される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物のためのカプセル化された硬化系であって、
a)キャリアー材と、
b)このキャリアー材に含まれるキュラティブと、
c)前記キャリアー材を包み込むポリマーカプセルとを含み、前記キャリアー材は、外部の力が加わらない、または高温に晒されないまたはその両方が備わらないと実質的に非流動性である天然または合成材料または組成物であるカプセル化された硬化系。
【請求項2】
キャリアー材が(a)軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有するもの、または(b)(i)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分に可溶である、(ii)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって軟化される、(iii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される反応条件によって軟化される、(iv)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される環境的条件によって軟化される、(v)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって軟化される、(vi)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって流動性になる、(vii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化または重合される反応条件によって流動性になる、(viii)硬化性組成物が硬化または重合する環境的条件下で流動性になる、または(ix)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって流動性になる固体または半固体であることを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項3】
前記キャリアー材が軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有し、モノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらを組み合わせたものを含むチキソトロピック性または増粘された組成物を含み、この組成物は、実質的にカプセル化された状態のキュラティブと非反応性であることを特徴とする請求項2記載のカプセル化された硬化系。
【請求項4】
前記キャリアー材がイン−シツ発生されるまたはキャリアー材のカプセル化と同時またはその後に潜作用する1つ以上のチキソトロープ剤またはチキソトロープ性または非チキソトロープ性ゲル化剤または増粘剤である、または含むことを特徴とする請求項3記載のカプセル化された硬化系。
【請求項5】
前記キャリアー材が熱溶融液、感圧性接着剤、ゴム材、エラストマー/粘着付与剤組成物、Tgが35℃未満のポリマー、半固体および固体樹脂、スターチおよびスターチ系ポリマー、ヒドロゲル、低温ワックス、1つ以上のモノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらの混合物の増粘またはゲル化された素材からなる群から選択されることを特徴とする請求項2記載のカプセル化された硬化系。
【請求項6】
前記キャリアー材が接着剤である、または潜接着特性を有することを特徴とする請求項2記載のカプセル化された硬化系。
【請求項7】
前記キャリアー材が少なくとも1psiの力が加えられないと流動または変形しないことを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項8】
前記キュラティブが前記キャリアー中に分散していることを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項9】
前記キュラティブが前記キャリアー中に溶解していることを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項10】
前記キュラティブとキャリアーとが互いに混和性であることを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項11】
前記キャリアーが前記キュラティブを添加した後、イン−シツ形成され、このキュラティブは、キャリアー材の前駆体材料に可溶である、または混和性であることを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項12】
前記カプセル壁が実質的に前記キュラティブに対して不透過性であることを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項13】
前記キュラティブが実質的に前記キャリアー中で非移動性であることを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項14】
前記キュラティブの量が前記キャリアーの0.1から25重量パーセントであることを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項15】
前記キュラティブが架橋剤またはハードナーであり、前記キュラティブの量は、前記キャリアーの2から50重量パーセントであることを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項16】
殻が0.8から25重量パーセントのカプセル化された硬化系を含むことを特徴とする請求項1記載のカプセル化された硬化系。
【請求項17】
カプセル化された硬化系であって、
a)キャリアー材と、
b)このキャリアー材に含まれるキュラティブと、
c)前記キャリアー材を包み込むポリマーカプセルとを含み、前記キャリアー材は、外部の力が加わらない、または高温に晒されないまたはその両方が備わらないと実質的に非流動性である天然または合成材料または組成物であり、前記キュラティブが混合、分散または溶解された液体キャリアー前駆体からキャリアーのカプセル化と同時またはカプセル化後にイン−シツ形成されているカプセル化された硬化系。
【請求項18】
前記キュラティブが前記液体キャリアー前駆体組成物と混和性であることを特徴とする請求項17記載のカプセル化された硬化系。
【請求項19】
キャリアー材が(a)軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有するもの、または(b)(i)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分に可溶である、(ii)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって軟化される、(iii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される反応条件によって軟化される、(iv)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される環境的条件によって軟化される、(v)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって軟化される、(vi)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって流動性になる、(vii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化または重合される反応条件によって流動性になる、(viii)硬化性組成物が硬化または重合する環境的条件下で流動性になる、または(ix)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって流動性になる固体または半固体であることを特徴とする請求項17記載のカプセル化された硬化系。
【請求項20】
前記液体キャリアー前駆体組成物が、その他のキュラティブが存在しない、またはその他の条件が満たされないと前記キュラティブと実質的に反応しない1つ以上のモノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらの組み合わせたものを含むことを特徴とする請求項17記載のカプセル化された硬化系。
【請求項21】
前記液体キャリアー前駆体組成物が、その中に含まれるキュラティブの量がその前駆体組成物の硬化または重合を行うのに必要とされる量を超えることを条件に、前記キュラティブと反応する1つ以上のモノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらの組み合わせたものを含むことを特徴とする請求項17記載のカプセル化された硬化系。
【請求項22】
硬化性組成物の硬化または重合を行うためのカプセル化された硬化系の製造方法であって、
a)キュラティブをキャリアー材に組み込む工程と、このキャリアー材は、外部の力が加わらない、または高温に晒されないまたはその両方が備わらないと実質的に非流動性である天然または合成材料または組成物である、
b)a)で得られた組成物の微細粒子または小滴を形成する工程と、
c)前記微細粒子または小滴を壊れやすいポリマー材料にカプセル化する工程とを含む方法。
【請求項23】
前記キャリアー材が(a)軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有するもの、または(b)(i)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分に可溶である、(ii)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって軟化される、(iii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される反応条件によって軟化される、(iv)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される環境的条件によって軟化される、(v)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって軟化される、(vi)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって流動性になる、(vii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化または重合される反応条件によって流動性になる、(viii)硬化性組成物が硬化または重合する環境的条件下で流動性になる、または(ix)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって流動性になる固体または半固体であることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記キャリアー手段が固体または半固体材料であり、前記粒子が機械的手段によって形成されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記キャリアー材の粒子がキャリアー材の前駆体材料を沈殿重合、溶液重合、懸濁重合または分散重合することによって形成され、前記キュラティブが重合の前に前駆体材料に加えられることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記キュラティブが前記前駆体材料の重合に関与しない、または関与した場合、前駆体組成物中のキュラティブの量は、前駆体材料の重合を行うのに必要とされる量を超えることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記キャリアー材がカプセル化において採用される少なくとも1つの溶剤に可溶であり、前記キャリアー材の粒子または小滴が高せん断混合によって形成されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項28】
カプセル化がコアセルベーション、界面重合、空気懸濁、遠心押し出し、スプレードライ、パンコーティングまたはキャリアー材の粒子または小滴をカプセル化する重合性材料の分散体に加え、この分散体に圧力ショック波を加えることによって行われることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項29】
硬化性組成物の硬化または重合を行うためのカプセル化された硬化系の製造方法であって、
a)1つ以上のモノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらを組み合わせたものを含むキャリアー前駆体組成物にキュラティブを組み込む工程と、
b)(a)の微細小滴を形成する工程と、
c)(a)の微細小滴を第2の重合性材料にカプセル化する工程と、
d)(a)の微細小滴の重合の前または同時に第2重合性材料を重合する工程とを含む方法。
【請求項30】
カプセル化がコアセルベーション、界面重合、空気懸濁、遠心押し出し、スプレードライ、パンコーティングまたは(a)の微細小滴を第2重合性材料の分散体に加え、この分散体に圧力ショック波を加えることによって行われることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記キュラティブが前記キャリアー前駆体組成物の硬化に関与しないことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
キュラティブがキャリアー前駆体組成物の重合に関与するが、存在するキュラティブの量は、前駆体組成物の硬化または重合を行うのに必要とされる量を超えることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項33】
硬化性組成物の硬化または重合を行うためのカプセル化された硬化系の製造方法であって、
a)キュラティブをキュラティブと反応しない感熱性材料の溶融液に組み込む工程と、
b)溶融液の分散液、エマルジョンまたは懸濁液を溶融液に好適な加熱された液体媒体中で形成する工程と、
c)壊れやすいポリマー材に形成された溶融液の小滴をカプセル化する工程とを含む方法。
【請求項34】
溶融液の小滴を冷却して固化し、カプセル化前に回収することを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
加熱された液体媒体もカプセル化に使用され、溶融液の小滴がカプセル化の前、同時または後に冷却されて固化されることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項36】
1つ以上の液体重合性モノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらを組み合わせたものとカプセル化された硬化系とを含む硬化性組成物であって、前記硬化系は、
a)キャリアー材と、
b)前記キャリアー材に含まれる前記液体重合性材料を硬化させるのに好適なキュラティブと、
c)前記キャリアー材を包み込むポリマーカプセルとを含み、前記キャリアー材は、外部の力が加わらない、または高温に晒されないまたはその両方が備わらないと実質的に非流動性である天然または合成材料または組成物である硬化性組成物。
【請求項37】
前記キャリアー材が(a)軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有するもの、または(b)(i)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分に可溶である、(ii)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって軟化される、(iii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される反応条件によって軟化される、(iv)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される環境的条件によって軟化される、(v)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって軟化される、(vi)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって流動性になる、(vii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化または重合される反応条件によって流動性になる、(viii)硬化性組成物が硬化または重合する環境的条件下で流動性になる、または(ix)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって流動性になる固体または半固体であることを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。
【請求項38】
さらに増粘剤またはチキソトロープを含むことによってアプリケーターが、接着される部材の全体に接着剤を塗布し終えるまで、充分な時間カプセル化されたキュラティブが前記増粘剤またはチキソトロープに懸濁されることを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。
【請求項39】
前記キャリアー材が軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有し、モノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらを組み合わせたもののチキソトロピック性または増粘された組成物を含み、この組成物は、カプセル化された状態のキュラティブと実質的に反応しないことを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。
【請求項40】
前記キャリアー材がイン−シツ発生されるまたはキャリアー材のカプセル化と同時またはその後に潜作用する1つ以上のチキソトロープ剤またはチキソトロープ性または非チキソトロープ性ゲル化剤または増粘剤である、または含むことを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。
【請求項41】
前記キャリアー材が熱溶融液、感圧性接着剤、ゴム材、エラストマー/粘着付与剤組成物、Tgが35℃未満のポリマー、半固体および固体樹脂、スターチおよびスターチ系ポリマー、ヒドロゲル、低温ワックス、1つ以上のモノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらの混合物の増粘またはゲル化された素材からなる群から選択されることを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。
【請求項42】
前記キャリアー材が接着剤である、または潜接着特性を有することを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。
【請求項43】
前記キャリアー材が少なくとも1psiの力が加えられないと流動または変形しないことを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。
【請求項44】
前記キャリアーが前記キュラティブを添加した後、イン−シツ形成され、このキュラティブは、キャリアー材の前駆体材料に可溶である、または混和性であることを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。
【請求項45】
前記液体重合性材料がビニル重合するモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマー;飽和ポリエステル;ウレタン;エポキシ樹脂;ポリサルファイド;イソシアネート;シリコーン;シラノール縮合またはヒドロシリル化反応を受けることができるシラノール基を有するポリエーテル、ポリウレタンおよびポリオレフィン;およびフェノキシ樹脂からなる群から選択されることを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。
【請求項46】
被接着体にプレアプライドすることができる接着剤またはシーラント組成物であって、
a)キュラティブを含むカプセル化された硬化系と、
b)前記キュラティブの存在下で硬化または重合可能なカプセル化された液体硬化性組成物と、
c)これらカプセル化された成分をこれらが塗付される被接着体に接着するためのバインダーとを含み、前記カプセル化された硬化系は、前記キュラティブと、このキュラティブが組み込まれるキャリアー材と、このキャリアー材と包み込むポリマーカプセルとを含み、前記キャリアー材は、外部の力が加わらない、または高温に晒されないまたはその両方が備わらないと実質的に非流動性である天然または合成材料または組成物である組成物。
【請求項47】
前記キャリアー材が(a)軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有するもの、または(b)(i)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分に可溶である、(ii)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって軟化される、(iii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される反応条件によって軟化される、(iv)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化される、または重合される環境的条件によって軟化される、(v)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって軟化される、(vi)キャリアーが使用される硬化性組成物の液体硬化性マトリックス成分によって流動性になる、(vii)キャリアーが使用される硬化性組成物が硬化または重合される反応条件によって流動性になる、(viii)硬化性組成物が硬化または重合する環境的条件下で流動性になる、または(ix)キュラティブをキャリアーが使用される硬化性組成物のその他の成分に対して利用できるようにする方法または工程によって流動性になる固体または半固体であることを特徴とする請求項46記載の組成物。
【請求項48】
前記バインダー材が溶液状の接着剤またはコーティング材であることを特徴とする請求項46記載の組成物。
【請求項49】
前記バインダーが水性バインダー系であることを特徴とする請求項46記載の組成物。
【請求項50】
前記バインダー材が化学線硬化性組成物であることを特徴とする請求項46記載の組成物。
【請求項51】
前記キャリアー材が軟らかくパティまたはゲルのような特徴を有し、モノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらを組み合わせたものを含むチキソトロピック性または増粘された組成物を含み、この組成物は、実質的にカプセル化された状態の接着剤と非反応性であることを特徴とする請求項46記載の組成物。
【請求項52】
前記キャリアー材がイン−シツ発生されるまたはキャリアー材のカプセル化と同時またはその後に潜作用する1つ以上のチキソトロープ剤またはチキソトロープ性または非チキソトロープ性ゲル化剤または増粘剤である、または含むことを特徴とする請求項46記載の組成物。
【請求項53】
前記キャリアー材が熱溶融液、感圧性接着剤、ゴム材、エラストマー/粘着付与剤組成物、Tgが35℃未満のポリマー、半固体および固体樹脂、スターチおよびスターチ系ポリマー、ヒドロゲル、低温ワックス、1つ以上のモノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはこれらの混合物の増粘またはゲル化された素材からなる群から選択されることを特徴とする請求項46記載の組成物。
【請求項54】
前記キャリアー材が接着剤である、または潜接着特性を有することを特徴とする請求項46記載の組成物。
【請求項55】
前記キャリアー材が少なくとも1psiの力が加えられないと流動または変形しないことを特徴とする請求項46記載の組成物。
【請求項56】
前記キャリアーがキュラティブを添加した後、イン−シツ形成され、このキュラティブは、キャリアー材の前駆体材料に可溶である、または混和性であることを特徴とする請求項46記載の硬化性組成物。
【請求項57】
前記液体重合性材料がビニル重合するモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマー;飽和ポリエステル;ウレタン;エポキシ樹脂;ポリサルファイド;イソシアネート;シリコーン;シラノール縮合またはヒドロシリル化反応を受けることができるシラノール基を有するポリエーテル、ポリウレタンおよびポリオレフィン;およびフェノキシ樹脂からなる群から選択されることを特徴とする請求項36記載の硬化性組成物。


【公表番号】特表2008−511736(P2008−511736A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530263(P2007−530263)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/030821
【国際公開番号】WO2006/028806
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(591154670)アップルトン ペーパーズ インコーポレイテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】APPLETON PAPERS INCORPORATED
【Fターム(参考)】