説明

カプセル化物、並びにこれを含んでなるインク組成物及び塗料組成物

【課題】 従来技術では解決できなかった、様々な機能を持つカプセル化物、印字物の蛍光発光特性、耐光性、耐擦性、インクの保存安定性、インクジェットノズルの目詰まり回復性の全てを満足し、かつ画像の密着性も良好にすることができるインク組成物及び塗料組成物を提供する。
【解決手段】 芯物質として表面に電荷を有する蛍光色素を含有するカプセル化物において、芯物質がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されており、当該ポリマーが、少なくとも(1)イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(2)芯物質表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤Bから誘導された繰り返し構造単位とからなるカプセル化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル化物、インク組成物、及び塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光印刷とは、紫外線などの励起光を照射することで発光して読みとり可能となる印刷を意味する。そして、蛍光印刷には蛍光印刷単独のもののみならず、可視光において認識可能な一般的な印刷物の上に、紫外線などの照射によって読みとり可能な蛍光印刷部を有するものも含まれる。後者にあっては、蛍光印刷部は通常可視光によっては認識されないため、偽造防止に有効である。すなわち、有価証券、定期券、身分証明書などの偽造防止手段として有効である。また、蛍光印刷は一般に可視光により認識可能な印刷物の外観を損なうことがないことから、製造工程における物品の認識、あるいは使用時に物品を自動識別するための標識として付すことも可能である。このような蛍光印刷において重要なことは、十分な蛍光強度が安定して得られることである。
【0003】
蛍光印刷をインクジェット記録方法によって行うことも提案されている。インクジェット記録方法は、インクの小液滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位の画像を、高速で印刷可能という特徴を有する。記録媒体が紙のようなインク組成物を吸収して画像が定着されるものである場合、着色剤成分は記録媒体内部にある程度浸透する。この浸透により印刷物は耐擦性を有するものとなるが、必要以上に着色剤が浸透してしまうと蛍光強度が不足してしまうおそれがある。
【0004】
水性蛍光インク組成物として、水溶性蛍光染料を水性媒体に溶解したインク組成物(特許文献1)、界面活性剤又は分散剤で蛍光顔料を水性媒体又は有機溶媒の中に分散させたインク組成物(特許文献2)、乳化重合により油溶性蛍光染料をポリマーに含浸させたインク組成物(特許文献3)、蛍光染料で着色されたエマルジョンとエチレンオキサイドユニットを有するインク組成物(特許文献4)等が知られている。
しかしながら、上記先行技術によっては、印字物の耐光性が不十分で、インクジェット記録においてノズルで目詰まりを生じ、インクの吐出安定性が悪く、長期放置した時に沈降物が発生する等、安定した特性を得ることが出来ない場合があった。また、塗料組成物も従来のインクでは、インク面の密着性が劣るという課題があった。
【0005】
一方、従来より、多くの産業・技術分野で各種物質のカプセル化が行われている。印刷、塗料、インク業界では、顔料や色素等のカプセル化が数多く実用化されている。また、医薬、農薬分野において、効力増強や毒性軽減、安定性付与、効果の遅延等を目的として薬物のカプセル化が数多く試みられている。
【0006】
【特許文献1】特開平09−249835号
【特許文献2】特開平10−130558号
【特許文献3】特開平08−53640号
【特許文献4】特開2002−309143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術では解決できなかった、蛍光発光特性の他に様々な機能を持つカプセル化物、印字物の蛍光発光特性、耐光性、耐擦性、インクの保存安定性、インクジェットノズルの目詰まり回復性の全てを満足し、かつ画像の密着性も良好にすることができるインク組成物及び塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 芯物質として表面に電荷を有する蛍光色素を含有するカプセル化物において、芯物質がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されており、当該ポリマーが、少なくとも(I)芯物質表面の電荷に対して反対電荷を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(II)当該芯物質表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤Bから誘導された繰り返し構造単位とからなるカプセル化物。
(2) 前記蛍光色素が蛍光染料又は蛍光顔料であることを特徴とする(1)に記載のカプセル化物。
(3) (1)又は(2)に記載のカプセル化物を含んでなるインク組成物。
(4) 水溶性有機溶剤を含んでなる(3)に記載のインクジェット記録用インク組成物。
(5) (1)又は(2)に記載のカプセル化物を含んでなる塗料組成物。
【0009】
本発明の上記(1)〜(2)のカプセル化物の製造法は、(イ)芯物質として表面に電荷を有する蛍光色素の表面に、芯物質表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーを吸着させる工程、(ロ)当該芯物質表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤Bおよび(ハ)これに重合開始剤を加えて重合する工程を少なくとも有する。
【0010】
本発明のカプセル化物の芯物質として、蛍光色素、好ましくは染料又は顔料を用いることにより、インクジェット記録や塗料の分野において、有用なカプセル化物とすることができ、該カプセル化物を含むインク組成物を提供することができる。
本発明のインクジェット記録方法は、上記いずれかのインク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出し、前記液滴を記録媒体に付着させることを特徴とするものである。
本発明の記録物は、上記インクジェット記録方法を用いて記録されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカプセル化物は、蛍光色素をポリマーにより被覆したカプセル化物であるため、その印字物は十分な蛍光発光特性や耐光性を有し、さらには保存安定性等の信頼性にも優れたインク、又は密着性に優れたインクとなる。また、本発明のカプセル化物を用いたインク組成物は、インクジェット用や塗料用として好適に使用できる。
本発明のカプセル化物は、シェル層(芯物質の被覆層)の厚みを自由に設計することができるとともに、芯物質とシェル物質とでその機能を分離することができる。しかも、均一な表面状態を有する粒子を製造することができる。
本発明のカプセル化物は、一個の芯物質をカプセル化することができ、ナノオーダーでのカプセル化も容易である。
本発明のカプセル化物は、均一な粒子径を有する粒子(粉体)を製造することができる。
また、本発明のカプセル化物は、溶剤を使用しない水系の反応により製造することができるため、環境への悪影響を及ぼすことが無い。
さらにまた、本発明のカプセル化物を蛍光インク用の色材として用いた場合においては、水性分散液中における分散安定性に優れたインクを得ることができる。そして、このインクは、堅牢性にも、耐擦性にも優れた記録物も得ることができる。さらに、本発明のカプセル化物をインクジェット記録用インクとして用いた場合には、記録ヘッドからの吐出安定性に優れ、且つ画像品質も優れた記録物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、(イ)芯物質として表面に電荷を有する蛍光色素の表面に、芯物質表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーを吸着させる工程、(ロ)当該芯物質表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤Bおよび(ハ)これに重合開始剤を加えて重合する工程を含む製造方法によって、カプセル壁材として、(1)芯物質表面の電荷に対して反対電荷を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(2)芯物質表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤Bから誘導された繰り返し構造単位を少なくとも有するポリマーで芯物質が被覆されるとの知見を得た。
さらに、本発明者らは、芯物質に、蛍光色素を用いて得たカプセル化物が、水性媒体中で優れた分散安定性を示し、該カプセル化物をインクに用いた場合、記録ヘッドからの吐出安定性に優れること、また、該カプセル化物を含むインク組成物で、普通紙やインクジェット用専用メディア等の記録媒体上に、高い蛍光発光特性を有するとともに、光沢性と写像性に優れ、且つ耐擦性や堅牢性にも優れた画像を形成できることを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0013】
図1は、本発明のカプセル化物の一例を示す。親水性基としてアニオン性基14を表面に有する蛍光色素1が、水を主成分とする溶媒(以下、水性溶媒ともいう)に分散するとともに、カチオン性基11と疎水性基12と重合性基13とを有するカチオン性親水性モノマー又はカチオン性重合性界面活性剤2と、アニオン性基14'と疎水性基12'と重合性基13'とを有するアニオン性重合性界面活性剤3とに対して、共存している状態を示す図である。カチオン性親水性モノマー又はカチオン性重合性界面活性剤2は、そのカチオン性基11が蛍光色素1のアニオン性基14に向くように配置され、イオン性の強い結合で吸着する。そして、このカチオン性親水性モノマー又はカチオン性重合性界面活性剤2の疎水性基12と重合性基13に対しては、疎水性相互作用によって、アニオン性重合性界面活性剤3の疎水性基12'と重合性基13'が向き、他のアニオン性重合性界面活性剤3のアニオン性基14'は水性溶媒の存在する方向、すなわち蛍光色素粒子1から離れる方向に向いている。
【0014】
このような水性分散液に例えば重合開始剤を添加するなどしてカチオン性親水性モノマー又はカチオン性重合性界面活性剤2の重合性基13ならびにアニオン性重合性界面活性剤3の重合性基13'を重合させることによって、図2に示すように、蛍光色素1がポリマー層60'で被覆されたカプセル化物100'が作製される。ここで、ポリマー層60'の表面はアニオン性基14'を有するので、カプセル化物100'は、水性溶媒に分散可能である。前記アニオン性重合性界面活性剤3の代わりに、親水性基としてアニオン性基を有する親水性モノマーを使用する場合も同様にしてカプセル化物を作製することができる。重合の際、必要に応じて、水性分散液中に、カチオン性親水性モノマー及び/又はカチオン性重合性界面活性剤と、アニオン性重合性界面活性剤及び/又はアニオン性基を有する親水性モノマーとに対して共重合可能なコモノマーを存在させても良く、その場合は、ポリマー層が、カチオン性親水性モノマー及び/又はカチオン性重合性界面活性剤と、アニオン性重合性界面活性剤及び/又はアニオン性基を有する親水性モノマーと、コモノマーとから共重合されるコポリマー層となり得る。
【0015】
以下、初めに本発明のカプセル化物を製造するために用いる各種原料等について説明し、その後、これらの原料を用いたカプセル化物の製造法について説明する。
【0016】
〔芯(コア)物質〕
本発明のカプセル化物の芯物質としては、蛍光色素が用いられる。蛍光色素とは、蛍光染料及び蛍光顔料が挙げられる。
蛍光染料としては、いかなる構造の物でも使用でき、例えば酸性染料、直接染料、カチオン染料、媒染染料、酸性媒染染料、分散染料、反応性染料、酸化染料などが好ましく使用される。
具体例としては、C.I ACID YELLOW3、C.I ACID YELLOW7、C.I ACID RED52、C.I ACID RED87、C.I ACID RED92、C.I ACID BLUE9、C.I BACIC YELLOW1、C.I BACIC YELLOW40、C.I BACIC RED1、C.I BACIC RED13、C.I BACIC VIOLET7、C.I BACIC VIOLET10、C.I BACIC ORANGE22、C.I BACIC BLUE7、C.I BACIC GREEN1、C.I DISPERSE YELLOW82、C.I DISPERSE YELLOW121、C.I DISPERSE ORENGE11、C.I DISPERSE RED58、C.I DISPERSE BLUE7、C.I DIRECT YELLOW85、C.I DIRECT ORANGE8、C.I DIRECT RED9、C.I DIRECT BLUE22、C.I DIRECT GREEN6、C.I FLUORESCENT BRIGHTENING AGENT55、C.I FLUORESCENT BRIGHTENING WHITEX WS52、C.I FLUORESCENT162、C.I FLUORESCENT112、C.I SOLVENT YELLOW44、C.I SOLVENT RED49、C.I SOLVENT BLUE5、C.I SOLVENT PINK、C.I SOLVENT GREEN7、C.I PIGMENT BLUE15、
C.I PIGMENT GREEN7、C.I PIGMENT RED53、C.I PIGMENT RED57、C.I PIGMENT YELLOW1などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0017】
蛍光顔料としては、例えばY:Eu、La:Eu、Al:Cr、ZnO:Zn、CaF:Sm、BaF:Sm、ZnS:Mn、CaS:Er、SrS:Ce、YS:Eu、ZnSiO:Mn、ZnSiO:Ti、BaSi:Pb、YSiO:Tb、YPO:Nd,Yb、Ca(PO:Ce,Mn、CaWO:Pb、YA1O:Ce、YAl12:Tb、SrAl:Eu、SrAl1425:Eu、CaTiO:Nd、CaZrO:Yb、CaMoO:Nd,Yb、CaSO:Tm、InBO:Tb、MgGa:Mn、YVO:Dyなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0018】
[イオン性重合性界面活性剤]
本発明に用いられるイオン性重合性界面活性剤は、イオン性基と疎水性基とさらに重合性基を有するイオン性界面活性剤である。
イオン性基としては、アニオン性基及びカチオン性基が挙げられ、カプセル化物の用途に応じて適宜決定される。イオン性重合性界面活性剤は、イオン性基として、アニオン性基、カチオン性基のいずれを有するかによって、それぞれアニオン性重合性界面活性剤、カチオン性重合性界面活性剤と称される。
【0019】
アニオン性基としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸エステル基、スルフィン酸エステル基、リン酸エステル基、および、これらの塩の群から選択されたものを好適に例示できる。塩としては、Na塩、K塩 、Ca塩、有機アミン塩などを挙げることができる。
カチオン性基としては、一級アンモニウムカチオン、二級アンモニウムカチオン、三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。一級アンモニウムカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、二級アンモニウムカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、三級アンモニウムカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、第四級アンモニウムカチオンとしては(R)等を挙げることができる。ここで、Rは、疎水性基であり、以下に示すものを挙げることができる。また、上記カチオン性基の対アニオンとしては、Cl、Br、I、CHOSO、COSOなどを挙げることができる。
【0020】
疎水性基としては、炭素数が8〜16のアルキル基及びフェニル基、フェニレン基等のアリール基からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましく、分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。
【0021】
重合性基としては、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択された基であることが好ましい。このなかでも特にアリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基が好ましい。
【0022】
[アニオン性重合性界面活性剤]
本発明に用いられるアニオン性重合性界面活性剤は、アニオン性基と疎水性基とさらに重合性基を有するアニオン性界面活性剤である。
アニオン性基としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸エステル基、スルフィン酸エステル基、リン酸エステル基、および、これらの塩の群から選択されたものを好適に例示できる。塩としては、Na塩、K塩 、Ca塩、有機アミン塩などを挙げることができる。
疎水性基としては、炭素数が8〜16のアルキル基及びフェニル基、フェニレン基等のアリール基からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましく、分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。
重合性基としては、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択された基であることが好ましい。このなかでも特にアリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基が好ましい。
アニオン性重合性界面活性剤の具体例としては、特公昭49−46291号公報、特公平1−24142号公報、又は特開昭62−104802号公報に記載されているようなアニオン性のアリル誘導体、特開昭62−221431号公報に記載されているようなアニオン性のプロペニル誘導体、特開昭62−34947号公報又は特開昭55−11525号公報に記載されているようなアニオン性のアクリル酸誘導体、特公昭46−34898号公報又は特開昭51−30284号公報に記載されているようなアニオン性のイタコン酸誘導体などを挙げることができる。
【0023】
本発明において使用するアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(31):
【0024】
【化1】



[式中、R21及びR31は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、
は、炭素−炭素単結合又は式:
−CH−O−CH
で表される基であり、mは2〜20の整数であり、Xは式−SOで表される基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物、又は、例えば、下記一般式(32):
【0025】
【化2】



[式中、R22及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Dは、炭素−炭素単結合又は式:
−CH−O−CH
で表される基であり、nは2〜20の整数であり、Yは式−SOで表される基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物が好ましい。
【0026】
前記式(31)で表されるアニオン性重合性界面活性剤としては、特開平5−320276号公報、又は特開平10−316909号公報に記載されている化合物を挙げることができる。式(31)におけるmの値を適宜調整することによって、蛍光色素をカプセル化して得られるカプセル化物表面の親水性を調整することが可能である。式(31)で表される好ましい重合性界面活性剤としては、下記の式(310)で表される化合物を挙げることができ、さらに具体的には、下記の式(31a)〜(31d)で表される化合物を挙げることができる。
【0027】
【化3】

[式中、R31、m、及びMは式(31)で表される化合物と同様である。]
【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
上記アニオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもできる。旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−10Nは、式(310)で表される化合物において、MがNH、R31がC19、m=10とされる化合物である。旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−20Nは、式(310)で表される化合物において、MがNH、R31がC19、m=20とされる化合物である。
【0033】
また、本発明において用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式(33):
【0034】
【化8】

[式中、pは9又は11であり、qは2〜20の整数であり、Aは−SOで表わされる基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩又はアルカノールアミンである。]
で表される化合物が好ましい。式(33)で表される好ましいアニオン性重合性界面活性剤としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0035】
【化9】

[式中、rは9又は11、sは5又は10である。]
上記アニオン性重合性界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンKHシリーズ(アクアロンKH−5、及びアクアロンKH−10)(以上、商品名)などを挙げることができる。アクアロンKH−5は、上記式(33)で示される化合物において、rが9及びsが5である化合物と、rが11及びsが5である化合物との混合物である。アクアロンKH−10は、上記式で示される化合物において、rが9及びsが10である化合物と、rが11及びsが10である化合物との混合物である。
【0036】
また、本発明に用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、下記の式(34)で表される化合物が好ましい。
【0037】
【化10】



〔式中、Rは炭素数8〜15のアルキル基であり、nは2〜20の整数であり、Xは−SO3Bで表わされる基であり、Bはアルカリ金属、アンモニウム塩又はアルカノールアミンである。〕
上記アニオン性重合性界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製のアデカリアソープSRシリーズ(アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−1025)(以上、商品名)などを挙げることができる。アデカリアソープSRシリーズは、上記一般式(34)において、BがNHで表される化合物であって、SR−10はn=10、SR−20はn=20である化合物である。
【0038】
また、本発明に用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、下記の式(A)で表される化合物も使用できる。
【0039】
【化11】

[上記式(A)中、R4は水素原子又は炭素数1から12の炭化水素基を表し、lは2〜20の数を表し、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンを表す。]
上記アニオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンHSシリーズ(アクアロンHS−10、HS−20、及びHS−1025)(以上、商品名)が挙げられる。
【0040】
また、本発明において用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式(35)で表されるアルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩を挙げることができる。
【0041】
【化12】




上記アニオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社のエレミノール JS−2を挙げることができ、上記一般式(35)において、m=12で表される化合物である。
【0042】
また、本発明において用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式(36)で表されるメタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム塩を挙げることができる。下記式で、nは1〜20である。
【0043】
【化13】


上記アニオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社のエレミノール RS−30を挙げることができ、上記一般式(36)において、n=9で表される化合物である。
【0044】
また、本発明において用いるアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式(37)で表される化合物を用いることができる。
【0045】
【化14】

上記アニオン性重合性界面活性剤としては市販品を用いることもでき、日本乳化剤株式会社のAntox MS−60がこれに当たる。
【0046】
以上に例示したアニオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0047】
[カチオン性重合性界面活性剤]
本発明に用いられるカチオン性重合性界面活性剤は、カチオン性基と疎水性基とさらに重合性基を有するカチオン性界面活性剤である。
カチオン性基としては、一級アンモニウムカチオン、二級アンモニウムカチオン、三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。一級アンモニウムカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、二級アンモニウムカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、三級アンモニウムカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、第四級アンモニウムカチオンとしては(R)等を挙げることができる。ここで、Rは、疎水性基であり、以下に示すものを挙げることができる。
疎水性基としては、炭素数が8〜16のアルキル基及びフェニル基、フェニレン基等のアリール基からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましく、分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。
また、上記カチオン性基の対アニオンとしては、Cl、Br、I、CHOSO、COSOなどを挙げることができる。
【0048】
重合性基としては、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択された基であることが好ましい。このなかでも特にアリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基が好ましい。
【0049】
カチオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式R[4−(l+m+n)]・Xで表される化合物を挙げることができる(前記一般式中、Rは重合性基であり、R、R、Rはそれぞれ炭素数が8〜16のアルキル基及びフェニル基、フェニレン基等のアリール基であり、XはCl、Br、I、CHOSO、COSOであり、l 、m 及びnはそれぞれ1又は0である)。ここで、重合性基としては、前述したものを挙げることができる。
【0050】
カチオン性重合性界面活性剤の具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルオクチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルセチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルデシルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルドデシルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルテトラデシルクロライド塩、等を挙げることができる。以上例示したカチオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0051】
[イオン性モノマー]
本発明で用いるイオン性モノマーは、イオン性基および重合性基を有する化合物で、水溶性である。
イオン性基としては、アニオン性基、カチオン性基のいずれでもよく、カプセル化物の用途に応じて適宜選択される。イオン性基として、アニオン性基、カチオン性基のいずれを有するかによって、それぞれアニオン性水溶性モノマー、カチオン性水溶性モノマーと賞される。
【0052】
重合性基としては、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択された基であることが好ましい。このなかでも特にアリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基が好ましい。
【0053】
アニオン性基としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸エステル基、スルフィン酸エステル基、リン酸エステル基、および、これらの塩の群から選択されたものを好適に例示できる。塩としては、Na塩、K塩 、Ca塩、有機アミン塩などを挙げることができる。
カチオン性基としては、一級アンモニウムカチオン、二級アンモニウムカチオン、三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。一級アンモニウムカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、二級アンモニウムカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、三級アンモニウムカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、第四級アンモニウムカチオンとしては(R)等を挙げることができる。ここで、Rは、疎水性基であり、以下に示すものを挙げることができる。また、上記カチオン性基の対アニオンとしては、Cl、Br、I、CHOSO、COSOなどを挙げることができる。
【0054】
本発明で使用できるカチオン性水溶性モノマーの好ましい具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド塩、等が挙げられる。上記のカチオン性水溶性モノマーとしては市販品を用いることもでき、例えば、アクリエステルDMC(三菱レイヨン(株))、アクリエステルDML60(三菱レイヨン(株))、及びC−1615(第一工業製薬(株))などを挙げることができる。以上例示したカチオン性水溶性モノマーは、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0055】
本発明において使用できるアニオン性水溶性モノマーの好ましい具体例としては、カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、4−スチレンスルホン酸及びその塩、ビニルスルホン酸及びその塩、スルホエチルアクリレート及びその塩、スルホエチルメタクリレート及びその塩、スルホアルキルアクリレート及びその塩、スルホアルキルメタクリレート及びその塩、スルホプロピルアクリレート及びその塩、スルホプロピルメタクリレート及びその塩、スルホアリールアクリレート及びその塩、スルホアリールメタクリレート及びその塩、ブチルアクリルアミドスルホン酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。また、ホスホン基を有するモノマーとしては、ホスホエチルメタクリレート等のリン酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。以上例示したアニオン性水溶性モノマーは、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0056】
[イオン性重合性界面活性剤A]
本発明に用いるイオン性重合性界面活性剤Aは、芯物質表面の電荷に対して反対電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基を有するものである。
上記のイオン性基、疎水性基および重合性基とは、前述のイオン性重合性界面活性剤の項目で記載のものと同じである。
本発明で用いるイオン重合性界面活性剤Aとして用いられる、アニオン性重合性界面活性剤およびカチオン性重合性界面活性剤としては、前述のイオン性重合性界面活性剤の項目で記載のものと同じである。
【0057】
[イオン性重合性界面活性剤B]
本発明に用いるイオン性重合性界面活性剤Bは、芯物質表面の電荷に対して同種又は反対電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基を有するものである。
上記のイオン性基、疎水性基および重合性基とは、前述のイオン性重合性界面活性剤の項目で記載のものと同じである。
本発明で用いるイオン重合性界面活性剤Bとして用いられる、アニオン性重合性界面活性剤およびカチオン性重合性界面活性剤としては、前述のイオン性重合性界面活性剤の項目で記載のものと同じである。
【0058】
〔疎水性モノマー〕
本発明においては、ポリマーの構成成分として疎水性モノマーを用いることも可能である。疎水性モノマーとは、その構造中に少なくとも疎水性基及び重合性基を有する重合性モノマーをいい、疎水性基が脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の群から選択されたものを例示できる。
上記の脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、及びプロピル基等を、脂環式炭化水素基としてはシクロヘキシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、及びイソボルニル基等を、芳香族炭化水素基としてはベンジル基、フェニル基、及びナフチル基等を挙げることができる。
上記疎水性モノマーの重合性基は、前述のイオン性重合性界面活性剤の項目で記載のものと同じものを用いることができる。
【0059】
疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、t−ブチルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、イソプロピルアクリレート、アクリル酸n−ブチル、ブトキシエチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、イソプロピルメタクリレート、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソデシル、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、及びイソボルニルメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート、等の単官能メタクリル酸エステル類;アリルベンゼン、アリル−3−シクロヘキサンプロピオネート、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン、アリルフェノキシアセテート、アリルフェニルアセテート、アリルシクロヘキサン、及び多価カルボン酸アリル等のアリル化合物;フマル酸、マレイン酸、及びイタコン酸等の不飽和エステル類;N−置換マレイミド、環状オレフィンなどのラジカル重合性基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0060】
[重合成分]
本発明のカプセル化物は、芯(コア)材である蛍光色素をポリマーを主成分とする壁材で被覆したものであり、原料として、上記各種界面性活性剤、重合性界面活性剤及び疎水性モノマーのほかに、本発明の効果を損ねない範囲でその他の重合性モノマー成分を用いることができる。本発明に用いるその他の重合性モノマーとしては、例えば架橋性モノマーを挙げることができる。架橋性モノマーを重合成分に加えて、疎水性モノマーと共重合させることにより、ポリマーの機械的強度や耐熱性を高めることができ、カプセル壁材の形態維持性が向上する。また、有機溶剤によるポリマーの膨潤や有機溶剤のポリマー内部への浸透を抑制することができ、カプセル壁材の耐溶剤性を高めることができる。これによって、例えば、水溶性有機溶剤を共存するインクジェット記録用インク組成物においては、本発明の蛍光色素を含有するカプセル化物の分散性や、インク組成物の保存安定性、さらにインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出性をも高めることができる。
【0061】
本発明において用いる架橋性モノマーとしては、ビニル基,アリル基,アクリロイル基,メタクリロイル基,プロペニル基,ビニリデン基,及びビニレン基から選ばれる1種以上の不飽和炭化水素基を2個以上有する化合物を有するものが挙げられる。架橋性モノマーの具体例としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリグリセーロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネート等が挙げられる。
【0062】
本発明のカプセル壁材の主成分であるポリマーを合成するために用いるモノマーとして、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに下記一般式(2)で表されるモノマーを用いることができる。
【0063】
【化15】

【0064】
[ただし、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはt−ブチル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はヘテロ環基を表す。mは0〜3、nは0又は1の整数を表す。]
上記一般式(2)において、Rが示す脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、及びアダマンタン基等が挙げられ、ヘテロ環基としてはテトラヒドロフラン基等が挙げられる。
上記一般式(2)で表されるモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0065】
【化16】

【0066】
【化17】

【0067】
カプセル壁材のポリマー中に一般式(2)で表されるモノマー由来の"嵩高い"基である前記R基を入れることによって、ポリマーの分子のたわみやすさを低下させ、すなわち、分子の運動性を低下させて、ポリマーの機械的強度や耐熱性を高めることができる。このため、芯(コア)物質に蛍光色素を用いた本発明のカプセル化物を含むインク組成物は、優れた耐擦性と耐久性を有する印刷物を得ることができる。また、カプセル壁材を構成するポリマー中に、"嵩高い"基である前記R基が存在させることによって、ポリマー内部へのインク組成物中の有機溶媒の浸透を抑制できることから、カプセル化物の耐溶剤性を優れたものにすることができる。これによって、水溶性有機溶媒を共存するインクジェット記録用インク組成物において、カプセル化物粒子の分散性や、インク組成物の保存安定性、さらにインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出性をも高めることができる。
【0068】
上記の架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーや、一般式(2)で表されるモノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が高く、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性に優れるという利点を有する。
しかし、このような架橋性モノマー及び/又は上記一般式(2)で表されるモノマーを共重合成分として多く含むポリマーで被覆されたカプセル化物粒子をインクジェット記録用インク組成物に用いた場合は、カプセル壁材ポリマーの可塑性が低いことに起因して、紙やインクジェット専用メディア等の記録媒体に密着しにくくなる場合がある。その結果、カプセル化物の記録媒体への定着性や得られた画像の耐擦性が低下するといった問題が生じることもある。したがって、架橋性モノマー及び/又は上記一般式(2)で表されるモノマーの使用量は適宜調整することが好ましい。
【0069】
一方、前述した疎水性モノマーのうち、長鎖アルキル基を有するモノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーは柔軟性を有する。したがって、架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位及び/又は一般式(2)で表されるモノマーから誘導された繰り返し構造単位と長鎖アルキル基を有するモノマーから誘導された繰り返し構造単位との比率を適宜調整することによって、好ましい可塑性とあわせて、優れた機械的強度及び優れた耐溶剤性を有するカプセル壁材ポリマーを合成することができる。このようなポリマーで被覆されたカプセル化物粒子を含むインク組成物は、それが水溶性有機溶媒を含む場合であっても、分散安定性や長期保存性に優れ、インクジェットヘッドからの吐出性安定性にも優れている。さらに、このカプセル化物粒子を含むインク組成物を用いて印刷した印刷物の画像は、紙やインクジェット専用メディア等の記録媒体への定着性が良好である。さらにまた、このインク組成物は耐光性、耐擦性、耐久性、及び耐溶剤性に優れた画像を得ることができる。
さらに本発明においては、上述した各種重合性モノマーに加えて、他の公知の重合性モノマーを本発明の効果を損ねない範囲で用いることができる。
【0070】
〔重合開始剤〕
本発明のカプセル化物のカプセル壁材を構成するポリマーは、上述したように、界面活性剤及び疎水性モノマーを含むモノマーを重合して得られる。この重合反応は公知の重合開始剤を用いて行うことができ、特にラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては水溶性の重合開始剤が好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2−アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、及び4,4−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)などが挙げられる。また、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等と、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等とを組み合わせたレドックス系開始剤を用いることもできる。
[その他の成分]
本発明のカプセル化物は、芯(コア)材をポリマーを主成分とする材料で被覆したものであり、原料として上述したものに加えて、本発明の効果を損ねない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、ワックス等のその他の成分をポリマー中に含有させることができる。
【0071】
〔カプセル化物の重合法〕
本発明のカプセル化物の製造法を以下に説明する。
カプセル化物のカプセル壁材は重合反応によって合成するが、この重合反応は、超音波発生器、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度調節器を備えた反応容器を使用して行うことが好ましい。
本発明のカプセル化物の製造法について説明する。初めに、表面に電荷を有する芯物質の混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)に、芯物質表面の電荷に対して反対電荷を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーを加えて混合する。このとき、イオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーのイオン性基が芯物質表面のイオン性基にイオン的に結合しやすくなるように超音波を混合物に照射することが好ましい。
【0072】
上記芯物質混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)への芯物質表面の電荷の反対電荷を持つイオン性重合性界面活性剤A及び/又は芯物質表面の電荷に対して反対電荷を有するイオン性モノマーの添加量は、芯物質表面のイオン性基の総モル数(すなわち、用いたコア物質1gの芯物質表面に存在するイオン性基量[mol/g])に対して、0.5〜2倍モルの範囲であることが好ましく、0.8〜1.2倍モルの範囲であることがさらに好ましい。芯物質表面のイオン性基の総モル量に対して、芯物質表面のイオン性基と反対電荷のイオン性基を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又は芯物質表面のイオン性基に対して反対電荷を有するイオン性モノマーを0.5倍モル以上添加することによって、その後の重合反応によって良好な分散性を有するカプセル化物を得ることができる。これは芯物質をイオン性重合性界面活性剤A及び/又は芯物質表面のイオン性基に対して反対電荷を有するイオン性モノマーで充分覆うことができるためと考えられる。一方、イオン性重合性界面活性剤A及び/又は芯物質表面のイオン性基に対して反対電荷を有するイオン性モノマーの添加量を2倍モル以下にすることによって、芯物質を持たないポリマー粒子(ポリマーのみからなる粒子)の発生を抑制することができる。これは、芯物質に吸着されないイオン性重合性界面活性剤A及び/又は芯物質表面のイオン性基に対して反対電荷を有するイオン性モノマーの量を少なくできるためであると考えられる。
【0073】
次に、場合によっては、疎水性モノマーを添加して混合する。このとき重合性モノマーとしては疎水性モノマーのほか、発明の効果を損ねない範囲で、架橋性モノマー、上記一般式(2)で表される化合物、及びその他の公知の重合性モノマーからなる群から選ばれるモノマーを併用することができる。
【0074】
さらに、芯物質表面のイオン性基の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤Bを添加して混合する。ここで、イオン性重合性界面活性剤Bの添加量は、イオン性重合性界面活性剤A及び/又は芯物質表面のイオン性基に対して反対電荷を有するイオン性モノマーに対して、1倍〜10倍モルの範囲であることが好ましく、1倍モル〜5倍モルの範囲であることがさらに好ましい。前記添加量を1倍モル以上にすることにより、カプセル化物の凝集を抑制でき、分散安定性が優れたカプセル化物混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)が得られる。さらに、本発明の蛍光色素を含有するカプセル化物の混合液を用いたインク組成物は、インクジェット記録ヘッドからの吐出安定性が優れ、紙繊維への吸着性が向上するとともに、印刷濃度及び蛍光発光特性が優れたものになる。また、前記添加量を10倍モル以下にすることによって、芯物質のカプセル化反応に寄与しないイオン性重合性界面活性剤Bの量を減らし、芯物質を有しないポリマー粒子が発生することを抑制できる。
【0075】
以上の工程により、表面に電荷を有する芯物質表面に、そのイオン性基に対して反対電荷を持つイオン性重合性界面活性剤A及び/又は芯物質表面のイオン性基に対して反対電荷を有するイオン性モノマーが静電的に付着し、その外側に場合によっては疎水性モノマーが局在し、さらにその外側に芯物質表面のイオン性基の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤Bがそのイオン性基を水相側に向けて配向してアドミセル(admicell)が形成されると推定される。
なお、上記の工程において超音波の照射を行わなくても、アドミセルの形成が得られる場合においては、超音波照射は必ずしも必要ではないが、カプセル化粒子の粒子径を制御するためには、超音波を照射することが特に好ましい。
【0076】
次に上記のようにして調製された混合液に重合開始剤を添加して重合反応を行う。重合開始剤の添加は、重合開始剤が活性化される温度に加熱した上記混合液に重合開始剤を一度に若しくは分割して添加しても、又は連続的に添加してもよい。また、重合開始剤を添加した後に、重合開始剤が活性化される温度に上記混合液を加熱してもよい。本発明においては、重合開始剤として水溶性重合開始剤を用い、これを純水に溶解して得られる水溶液を反応容器内の水性分散液中に滴下して加えることが好ましい。添加した重合開始剤が開裂して開始剤ラジカルが発生し、これがイオン性重合性界面活性剤の重合性基や重合性モノマーの重合性基を攻撃することによって重合反応が起こる。重合温度及び重合反応時間は、用いる重合開始剤の種類及び重合性モノマーの種類によって変わるが、当業者であれば適宜好ましい重合条件を設定することは容易にできる。一般に重合温度は60℃〜90℃の範囲とするのが好ましく、重合時間は3時間〜10時間とするのが好ましい。
【0077】
上記重合反応においては、上記イオン性重合性界面活性剤AおよびB、疎水性モノマー、架橋性モノマー、上記一般式(2)で表される化合物、及びその他の公知の重合性モノマーは、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。また、上記乳化重合反応は、イオン性重合性界面活性剤を用いて行っているため、混合液の乳化状態は乳化剤を用いなくても良好な場合が多い。したがって、必ずしも乳化剤を用いる必要はないが、必要に応じて公知のアニオン系、ノニオン系、及びカチオン系乳化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることもできる。
重合終了後は、得られた本発明のカプセル化物の混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)のpHを7.0〜9.0の範囲に調整し、さらに濾過を行なうことが好ましい。濾過は限外濾過が好ましい。
【0078】
上述した重合法によれば、芯物質表面のイオン性基に反対電荷を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又は芯物質表面のイオン性基に対して反対電荷を有するイオン性モノマーが吸着されると考えられる。次いで場合によっては、疎水性モノマーを含む重合性モノマーを加え、さらに芯物質表面のイオン性基の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤Bを加え、超音波を照射して処理する。この処理によって、芯物質の周囲に存在するイオン性重合性界面活性剤や重合性モノマー分子の配置形態が極めて高度に制御され、最外層では水相に向かってイオン性基(アニオン性基又はカチオン性基)が配向した状態が形成されると考えられる。そして、この状態で重合することによって、芯物質のまわりにイオン性重合性界面活性剤A及びイオン性重合性界面活性剤Bの重合性基から誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーとなり、本発明のカプセル化物が得られると考えられる。疎水性モノマーを加えた場合には、イオン性重合性界面活性剤A及びイオン性重合性界面活性剤Bの重合性基のみならず、疎水性モノマーからなる繰り返し構造単位を有するポリマーが芯物質のまわりに形成される。本発明の重合法を用いることにより、副生成物である水溶性のオリゴマーやポリマーの生成を抑制することができる。これによって、低粘度のカプセル化物の混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)が得られ、限外濾過等の精製工程を容易に行うことができる。
しかも、本発明の芯物質として蛍光色素を用いて、上記重合法によって得られたカプセル物を用いたインク組成物は、分散安定性に優れ、記録ヘッドからの吐出安定性に優れ、普通紙に対しても滲みにくく、高い蛍光発光特性を有するとともに、高濃度の印刷画像を得ることができる。
【0079】
以上のようにして得られる本発明のカプセル化物は水性溶媒に対して高い分散安定性を有するが、これは芯物質がポリマー層で完全に被覆されている(被覆されていない部分がない)とともに、カプセル壁材のポリマー層の親水性基が水性溶媒に向かって規則正しく配向しているためであると考えられる。
【0080】
本発明で得られるカプセル化物は、蛍光色素の表面をカプセル壁材であるポリマーが被覆した形態を有するが、所望により、重合前又は重合反応中に、混合液中に酸化防止剤や可塑剤などを添加することによって、ポリマー中にそれらの添加剤を含有させることもできる。このような酸化防止剤や可塑剤などは公知の材料を用いることができる。
【0081】
このようにして得られた本発明のカプセル化物は、ポリマーを主成分とするカプセル壁材が蛍光色素を被覆したものであり、このポリマーが蛍光色素表面のイオン性基と反対電荷を有するイオン性重合性界面活性剤と、前記重合性界面活性剤と共重合可能な疎水性モノマーと、前記蛍光色素表面のイオン性基と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤から誘導された構造を有するものであり、蛍光色素のまわりにこれらの構造が高度に制御された(積層された形態)をとったものとなる。
【0082】
このようにして得られる本発明のカプセル化物の粒子径は、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがさらに好ましく、20〜200nmであることが特に好ましい。カプセル化物の粒子径は、市販の動的光散乱法粒度分布測定機を使用して測定することができる。また、本発明により得られたカプセル化物の粒子径は、重合反応開始前に超音波を所定の照射条件(照射エネルギーの違いが主であり、例えば周波数及び照射時間によって制御できる)で反応混合液に照射すること、重合反応中に反応混合物に超音波を照射するか否かの違い、及び重合反応中に反応混合物に超音波を照射する場合はその照射条件の制御等によって所望する粒子径に制御することができる。
【0083】
さらに、本発明のカプセル化物においては、カプセル壁材の主成分であるポリマーのガラス転移温度(Tg)が50℃以下であることが好ましい。特に好ましくは、30℃以下であることが好ましい。前記ポリマーを重合するために用いる上記モノマーを適宜選択することによって、所望のガラス転移温度にすることができる。ホモポリマーのガラス転移温度、及び重合に用いるモノマーの組成から重合後に得られるポリマーのガラス転移温度を予測するためには、例えば以下の計算式:
【0084】
【数1】

【0085】
(上記式中、Tg[p]は得られるポリマーのガラス転移温度、iは種類の異なるモノマーごとに付した番号、Tg[hp]iは重合に用いるモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度、xiは重合するモノマーの重量総計に対するモノマーiの重量分率を表す。)を用いることができる。
カプセル壁材の主成分であるポリマーのガラス転移温度を50℃以下にすることにより、光沢性に優れ、彩度が高く、優れた鮮映性を有する画像が得られるとともに、カプセル化物が記録媒体へ密着しやすくなる。さらに、カプセル壁材の主成分であるポリマーのTgが30℃以下であるとカプセル化物どうしが記録媒体上で結合しやすくなるため、画像の耐擦性がさらに向上し、記録媒体への密着性も向上するので、より好ましく、10℃以下であるとさらに好ましい。
【0086】
以上のようにして得られる本発明のカプセル化物は混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)であり、これにさらに所望の材料を混合してインク組成物を調製するが、前記混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)中に含まれる未反応モノマー(イオン性重合性界面活性剤や疎水性モノマーなどの用いた重合性化合物など)を予め除去して精製して用いることが好ましい。カプセル化物を含む混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)を精製処理して未反応モノマーの濃度を低減することによって、本発明により得られたカプセル化物を用いたインクジェット記録用インクを普通紙に用いて作成した画像は、高い蛍光発光特性を示すとともに、インクジェット記録用専用メディア、特にインクジェット用光沢メディアを使用した場合に得られる画像も、高い蛍光発光特性と良好な光沢性をさらに有する。
【0087】
本発明で得られるカプセル化物を含む混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)の固形分以外の全成分中に含まれる未反応モノマーの量は、50,000ppm以下であることが好ましく、10,000ppm以下であることがより好ましい。
カプセル化物を含む混合液(蛍光色素の分散液または水溶液)を精製処理する方法としては、遠心分離法や限外ろ過法等を用いることができる。また、上記未反応モノマーの量は、既知濃度の未反応モノマーを含む試料を対象として、測定試料のガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーを用いて容易に測定することができる。
【0088】
〔インク組成物に添加する樹脂粒子〕
本発明のインク組成物には、ポリマー微粒子をさらに添加することができる。ポリマー微粒子は、以下の形態のものが好ましい。
表面に本発明のカプセル化物表面のイオン性基と同種のイオン性基を有し、ガラス転移温度が30℃以下で、体積平均粒子径が10〜100nmであるポリマー微粒子。
前記したように、架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマー及び/又は一般式(2)で表されるモノマーから誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーを主成分とするカプセル壁材で被覆されたカプセル化物は、高い機械的強度、耐熱性、及び耐溶剤性を有するものの、ポリマーの可塑性が不十分となって、記録媒体への定着性・耐擦性が低下する傾向にある。しかし、たとえカプセル化物のカプセル壁材の可塑性が不十分な場合でも、上記ポリマー微粒子と併用することにより、得られるインク組成物を用いて記録媒体上に形成した画像においては、カプセル化物をポリマー微粒子が覆うことができ、記録媒体への画像の定着性及び画像の耐擦性を高くできる。
【0089】
上記ポリマー微粒子としては成膜性を有するものが特に好ましい。「成膜性を有する」とは、ポリマー微粒子を水に分散させて水性エマルジョンの形態にし、この水性エマルジョンの水分を蒸発させたときにポリマーの皮膜が形成されうることを意味する。成膜性を有するポリマー微粒子を含んだ本発明のインク組成物は、その溶媒成分を蒸発させていくと、ポリマーの皮膜を形成する性質を有する。このポリマーの皮膜によって、インク中のカプセル化物をより強固に記録媒体表面に固着することができる。これによって、より優れた耐擦性及び耐水性を有する画像が形成できる。
【0090】
上記ポリマー微粒子が良好な成膜性を有するためには、そのポリマーのガラス転移温度が30℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがさらに好ましく、10℃以下であることが特に好ましい。ポリマーのガラス転移温度は、使用するモノマーの種類や組成比を適宜選択することによって好ましい温度範囲内にすることができ、当業者には周知の方法である。本発明において、ポリマーのガラス転移温度としては、熱走査型熱量計(Differential scanning calorimeter:DSC)による昇温測定によって得られたガラス転移温度を用いた。すなわち、熱走査型熱量計によるポリマーの昇温測定を行って得られた示差熱曲線において、吸熱ピークの底部から吸熱の開始点に向かって接線を引いたとき、その接線とベースラインとの交点の温度をそのポリマーのガラス転移温度(Tg)とした。
【0091】
このようなポリマー微粒子、及び本発明のカプセル化物を含有したインク組成物を用いて、普通紙やインクジェット記録用専用メディア等の記録媒体に印字した場合、インク組成物中の水性媒体が記録媒体中に浸透し、ポリマー粒子及びカプセル化物粒子が近接し、ポリマー微粒子同士及び/又はカプセル化物粒子の被覆ポリマー同士及び/又はポリマー微粒子とカプセル化物粒子の被覆ポリマーが融着してカプセル化物粒子を内部に包み込んだ状態で記録媒体上にポリマーの膜が形成される。これにより、画像の記録媒体への定着性や画像の耐擦性を特に良好にできる。
【0092】
さらに、前記ポリマー微粒子がその表面にカプセル化物と同種のイオン性基を有している場合は、前記ポリマー微粒子及び本発明のカプセル化物がインク組成物中に共存しても凝集することなく、安定に分散できることから好ましい。
さらに、前記ポリマー微粒子の粒子径は、体積平均粒子径で10〜100nmの範囲であることが好ましい。体積平均粒子径が100nm以下の場合、画像の光沢性や写像性が良好となることから、好ましい。
【0093】
また、本発明のインク組成物においては、ポリマー微粒子を濃度10重量%で水媒体に分散させた水性エマルジョンのテフロン(登録商標)板上での接触角が70°以上であることが好ましい。さらに、ポリマー微粒子を濃度35重量%で水媒体に分散させた水性エマルジョンの表面張力が、40×10-3N/m(40dyne/cm、20℃)以上であることが好ましい。上記のような特性のポリマー微粒子を用いることによって、インクジェット記録方法においてインク滴の飛行曲がりをさらに有効に防止でき、良好な画質の画像を印刷することが可能となる。
【0094】
さらに、上記のようなイオン性基を比較的多く表面に有するポリマー微粒子をインク組成物に含有させることにより、より良好な画像の耐擦性を実現できる。その理由は定かではないが、以下の様に考えられる。すなわち、本発明によるインク組成物を紙のような記録媒体表面に付着させると、先ずインク組成物中の水及び水溶性有機溶媒が記録媒体へ浸透する。そして、記録媒体の表面近傍に本発明のカプセル化物粒子とポリマー微粒子とが残る。この時、このポリマー微粒子表面のイオン性基が、紙繊維を構成するセルロースの水酸基やカルボキシル基と作用して、ポリマー微粒子が紙繊維に強固に吸着する。この紙繊維に吸着したポリマー微粒子の近傍の水及び水溶性有機溶媒はさらに紙内部に浸透し減少していく。さらに、上述のとおり、ポリマー微粒子が成膜性を有することから、記録媒体上で水及び水溶性有機溶媒がカプセル化物及びポリマー微粒子の近傍から消失すると、粒子同士が合(coalescence)し、カプセル化物を包み込んでポリマー層が形成され、カプセル化物粒子をポリマーで被覆した状態が形成される。このポリマーは、イオン性基によって、より強固に記録媒体表面に結合することができる。ただし、これらは本発明の効果を説明するための仮説である。
【0095】
具体的な上記ポリマー微粒子としては、イオン性基を有する不飽和ビニル単量体に由来する繰り返し単位を少なくとも1〜10重量%含むポリマーからなるものであることが好ましい。
さらには、イオン性基を有する不飽和ビニル単量体に由来する繰り返し単位を1〜10重量%含み、かつ重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体によって架橋された構造を有し、この架橋性単量体に由来する構造を0.2〜4重量%含有するポリマーからなるものであることがさらに好ましい。重合の際に重合可能な二重結合を二つ以上、さらに好ましくは三つ以上有する架橋性単量体類を他の重合性モノマーと共重合させてポリマー鎖を架橋し、そのような架橋ポリマーからなるポリマー微粒子をインク組成物に用いることによって、インク組成物によってインクジェット記録装置のノズルプレート表面がさらに濡れ難くなるため、インク滴の飛行曲がりを防止でき、吐出安定性を向上させることができる。
【0096】
本発明において用いるポリマー微粒子は、公知の乳化重合法によって製造することができる。たとえば、不飽和ビニル単量体(不飽和ビニルモノマー)を重合開始剤、及び乳化剤を存在させた水中において乳化重合することによってポリマー微粒子を得ることができる。
【0097】
上記不飽和ビニル単量体としては、一般的に乳化重合で用いられるアクリル酸エステル単量体類、メタクリル酸エステル単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルエステル単量体類、ビニルシアン化合物単量体類、ハロゲン化単量体類、オレフィン単量体類、及びジエン単量体類が挙げられる。さらに、具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、及びグリシジルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、及びグリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類;塩化ビニリデン及び塩化ビニル等のハロゲン化単量体類;スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、及びビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類;エチレン、プロピレン、及びイソプロピレン等のオレフィン類;ブタジエン及びクロロプレン等のジエン類;並びに、ビニルエーテル、ビニルケトン、及びビニルピロリドン等のビニル単量体類が挙げられる。
【0098】
イオン性基を有する不飽和ビニル単量体としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、及びこれらの塩から選択されたアニオン性基を有する不飽和ビニル単量体が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレート、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などを例示することができる。また、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド塩等のカチオン性基を有する不飽和ビニル単量体も例示できる。
【0099】
さらに、上記単量体に加えて、アクリルアミド類又は水酸基含有ビニル単量体を用いて製造したポリマー微粒子をインク組成物に用いることにより、このインク組成物をインクジェット記録方法に用いた場合に、インクジェットヘッドからのインク組成物の吐出安定性を向上させることが出来る。上記アクリルアミド類の例としてはアクリルアミド及びN,N'−ジメチルアクリルアミドが挙げられる。また、水酸基含有ビニル単量体の例としては2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0100】
また、上記のように、ポリマー微粒子を構成するポリマーとしては、上記モノマー由来の構造単位が、重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体によって架橋された構造を有するポリマーが好ましい。重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2'−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、及び2,2'−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、及びテトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物;ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、及びペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、及び2,2'−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びトリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;メチレンビスアクリルアミド;並びに、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0101】
また、ポリマー微粒子を乳化重合する際に用いる重合開始剤、乳化剤、界面活性剤、分子量調整剤、及び中和剤等も上記公知の方法に準じて用いることができる。特に、乳化剤として前述したアニオン性重合性界面活性剤を用いた場合、アニオン性重合性界面活性剤がモノマーと共重合することから、液中に遊離している乳化剤が無くなるか、微量となり、それに伴って液の泡立ちが抑制されるため、本発明のカプセル化物と併用したインク組成物の吐出安定性を高めることができる。また、本発明のカプセル化物に使用したアニオン性重合性界面活性剤と同種のものを乳化剤として使用した場合、本発明のカプセル化物と併用したインク組成物は、分散安定性ならびに保存安定性が特に優れたものとなる。
本発明のインク組成物に上記ポリマー微粒子を用いる場合、ポリマー微粒子は微粒子粉末として用いることもできるが、好ましくは、水媒体にポリマー微粒子が分散されたポリマーエマルジョンの形態で、インク組成物に含有される他の成分と混合することが好ましい。インク組成物中に含まれるポリマー微粒子の量は、インク組成物の総重量に対して0.01〜10重量%程度が好ましく、0.01〜5重量%程度であることがさらに好ましい。
【0102】
〔その他のインク組成物用添加剤等〕
また、本発明のインク組成物はpH調整剤を含有することができる。カプセル化物粒子やポリマー粒子表面がアニオン性基を有する場合には、インク組成物のpHを7〜11、より好ましくは8〜9に調整することが好ましく、pH調整剤としては塩基性化合物を用いることが好ましい。また、カプセル化物粒子表面やポリマー粒子表面がカチオン性基を有する場合には、インク組成物のpHを5〜7、より好ましくは6〜7に調整することが好ましく、pH調整剤としては酸性化合物を用いることが好ましい。
【0103】
pH調整剤として好ましい塩基性化合物は、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、及び酒石酸水素カリウムなどのアルカリ金属塩類;アンモニア;並びに、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン、及びプロパノールアミンなどのアミン類などが挙げられる。
これらの中でも、水酸化アルカリ化合物又はアミンアルコールをインク組成物に添加すると、アニオン性基を有するカプセル化物粒子のインク中での分散安定性を向上させることができる。
【0104】
また、防カビ、防腐、又は防錆の目的で、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンチアゾリン−3−オン〔製品名:プロキセルXL(アビシア社製)〕、及び3,4−イソチアゾリン−3−オン、4,4−ジメチルオキサゾリジン等から選ばれる一種以上の化合物を本発明のインク組成物に添加することができる。
また、インクジェット記録ヘッドのノズルが乾燥することを防止する目的で、尿素、チオ尿素、及びエチレン尿素等なる群から選ばれる少なくとも一種を本発明のインク組成物に添加することもできる。
【0105】
特に好ましい本発明のインク組成物の実施態様の一例は、
(1)上記カプセル化物、
(2)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールからなる群から選択される1種以上の化合物(浸透剤)、
(4)グリセリン、及び
(5)水、
を少なくとも含むインク組成物である。
【0106】
特に好ましい本発明のインク組成物の実施態様の別の一例は、
(1)上記カプセル化物、
(2)ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールからなる群から選択される1種以上の化合物(浸透剤)、
(3)アセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤、
(4)グリセリン、及び
(5)水、
を少なくとも含むインク組成物である。
【0107】
本発明の蛍光色素を含有するカプセル化物を用いてインク組成物とする場合、インク組成物中の当該カプセル化物の含有量は0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲内が好ましい。
【0108】
上記各実施態様例において、浸透剤として上記(2)のジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いる場合の添加量はインク組成物の全重量に対して、10重量%以下であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがさらに好ましい。ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルをインク組成物に添加することにより、インク組成物の記録媒体への浸透性を向上することができ、印字品質の向上に役立つ。また、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び/又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルは、アセチレングリコール系の界面活性剤の溶解性を向上させるという効果もある。
【0109】
上記各実施態様例において、浸透剤として上記(2)の炭素数4〜10の1,2−アルキルジオールを用いる場合の添加量は、インク組成物の全重量に対して、15重量%以下であることが好ましい。炭素数が3以下の1,2−アルキルジオールを用いた場合、記録媒体に対するインク組成物の充分な浸透性が得られず、炭素数が15を超える1,2−アルキルジオールは水に溶解しにくくなるので好ましくない。インク組成物の1,2−アルキルジオールの量が15重量%を超えると、インク組成物の粘度が増加する傾向があるため好ましくない。1,2−アルキルジオールとしては、具体的には1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールを用いるのが好ましく、いずれか一方を単独で用いることも、両者を併用することもできる。1,2−ペンタンジオールは、インク組成物の全重量に対して3〜15重量%の範囲で添加するのが好ましい。インク組成物に1,2−ペンタンジオールを3重量%以上添加することにより、良好な浸透性を有するインク組成物が得られる。1,2−ヘキサンジオールは、インク組成物の全重量に対して0.5〜10重量%の範囲で添加するのが好ましく、前記範囲において良好な浸透性を有するインク組成物が得られる。
【0110】
また、上記各実施態様例のインク組成物をインクジェット記録方法に用いる場合、インクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなるように(目詰まり信頼性の向上)、固体湿潤剤をインク組成物の全重量に対して3重量%〜20重量%で含有させることが好ましい。固体保湿剤の添加は、上記各実施態様例に限らず、本発明のカプセル化物を用いたインク組成物に添加することができる。
【0111】
上記固体湿潤剤とは保水機能を有する常温(25℃)で固体の水溶性物質を言う。好ましい固体湿潤剤は、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸塩、トリメチロールプロパン、及び1,2,6−ヘキサントリオールである。糖の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類があげられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオースなどがあげられる。ここで、糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、及びセルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いる。また、これらの糖類の誘導体としては、上記糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(ここで、n=2〜5の整数を表す)で表される)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖など)があげられる。特に糖アルコール類が好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビトール、及びキシリトールなどが挙げられる。ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(分子量350000)として市販されているものを使用することができる。特に好ましい固体湿潤剤は、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサトリオール、糖類、及び糖アルコール類である。本発明のインク組成物には、一種又は二種以上の固体湿潤剤を添加することができる。
【0112】
インク組成物に固体湿潤剤を用いることにより、その保水機能によってインクの水分の蒸発を抑えることができるため、インクジェットプリンタのインク流路やインクジェットノズル周辺でインク組成物の粘度が上昇することなく、また、インク組成物の水分蒸発による皮膜の形成も起こりにくくなるため、ノズルの目詰りが起こり難くなる。また、上記の固体湿潤剤は化学的に安定であるため、インク組成物中で分解することもなく、長期にわたってインク組成物の品質を維持することができる。また、インク組成物に上記の固体湿潤剤を添加した場合でも、インク組成物がノズルプレートを濡らすことがなく、インクジェットノズルからインク組成物を安定して吐出することができる。固体保湿剤としてトリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、糖類、及び糖アルコール類から選ばれる化合物を用いた場合に特に優れた上記効果が得られる。
【0113】
本発明のインク組成物中に添加する上記の固体湿潤剤の量はその合計量が、インク組成物の全重量に対して3〜20重量%であることが好ましく、3〜10重量%であることがさらに好ましい。固体湿潤剤を二種以上混合して用いる場合の好ましい組み合わせは、糖類、糖アルコール類、及びヒアルロン酸塩から選ばれる一種以上と、トリメチロールプロパン、及び1,2,6−ヘキサントリオールから選ばれる一種以上との組み合わせである。この組み合わせで固体湿潤剤をインク組成物に添加した場合は、インク組成物の粘度の上昇を抑えることができる。インク組成物中に含まれる固体湿潤剤の量を3重量%以上にすることによって、インクジェットノズルの目詰まりを防止する効果が得られ、インク組成物中に含まれる固体湿潤剤の量を20重量%以下にすることによってインク組成物がインクジェットノズルから安定して吐出できるために充分に低い粘度のインク組成物を得ることができる。
【0114】
上記後者の実施態様例においては、インク組成物に(3)のアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤を添加するが、これら界面活性剤はその合計量がインク組成物の全重量に対して0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることが特に好ましい。
【0115】
上記実施態様例に示したインク組成物は、特に、カプセル化物の分散安定性、及びインクジェット記録方法に用いた場合にインクジェットヘッドノズルからの吐出安定性に優れ、更に、長期にわたって、ノズルの目詰まりもなく、安定した印字が可能である。また、このインク組成物は、普通紙及び再生紙並びにコート紙等の記録媒体に印字したときに、印字後のインクの乾燥性が良好であり、このインク組成物を用いることによって滲みがなく、高い印刷濃度を有し、蛍光発光特性に優れた高品位の画像を得ることができる。
また、本発明のカプセル化物は、インクジェット記録方法の他、塗料用としても用いる事が出来る。塗料用の組成としては、従来公知の組成を使用することが出来る。
【0116】
以上、本発明について説明したが、本発明のカプセル化物を用いて調製したインク組成物と、従来公知の蛍光物質を用いて調製したインク組成物との間には以下のような違いがある。
界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて蛍光物質を分散させた蛍光物質分散液と、前記のアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤と、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の浸透剤とを用いたインク組成物は、細いインクジェットノズルを通って吐出される際に加えられる強い剪断力によって分散剤が蛍光物質表面から容易に脱離して分散性の劣化をもたらし、吐出が不安定となる傾向がある。これに対して、本発明により得られたインク組成物は、こうした現象が全く認められず、インクジェットノズルを通して長期間安定にインク組成物を吐出することができる。また、本発明により得られたカプセル化蛍光物質粒子は耐溶剤性が良好であるため、上記浸透剤によってカプセル化蛍光物質粒子表面からカプセル壁材のポリマーが脱離したり、ポリマーが膨潤する等のことが起こりにくく、長期にわたって蛍光物質粒子をインク組成物中に安定して分散している状態を保つことができる。
また、従来公知の蛍光物質を用いたインク組成物は、日光や光照射にさらされる事で、蛍光色素が侵されてしまい、蛍光発光特性は急激に減少してしまう傾向にある。特に蛍光色素として染料を用いた場合にその影響は大きい。しかし、本発明により得られたインク組成物は、蛍光色素がポリマーを主成分とする壁材により被覆されているため、日光や光照射により蛍光色素が侵される影響は少なくなり、長期に渡って高い蛍光発光特性を保つ事が出来る。
【0117】
また、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて蛍光物質を分散して得られる蛍光物質分散液を用いるとともに、浸透性を向上させた公知のインク組成物では、一般に、蛍光物質を分散液媒体に分散した当初は分散剤の全てが蛍光物質表面には吸着されるわけではないため、蛍光物質分散液中に溶解している分散剤によってインク組成物の粘度が高くなる傾向や、蛍光物質分散後の時間経過にともない蛍光物質から分散剤が脱離し、この脱離した分散剤によってインク組成物の粘度が高くなる傾向がある。このため、蛍光物質分散液中に含まれる蛍光物質の含有量を高くすることができない場合も多い。蛍光物質含有量が少ない蛍光物質分散液を用いた場合には、インク組成物を用いて、特に普通紙や再生紙に印刷した場合は、充分な印刷濃度を得ることができず、画像の良好な発色性が得られないことも多い。これに対して、本発明により得られたカプセル化物を用いたインク組成物では、経時的なインク組成物の粘度上昇がきわめて起こりにくい。したがって、本発明により得られたカプセル化物を用いたインク組成物は、低粘度化が容易であり、カプセル化物粒子をより多く含有できるという利点を有し、普通紙や再生紙を印刷媒体として用いた場合でも充分に高い印刷濃度を得ることができる。
【0118】
さらに、本発明により得られたカプセル化物は、形状が真球状であるために、このカプセル化物を用いたインク組成物の流動性がニュートニアンになりやすい。これは、カプセル化物の表面のイオン性基が水性溶媒側に向かって規則正しく密に配向しているためと考えられ、カプセル化物相互間に効果的な静電反発力が生じているものと考えられる。このことから、従来のカプセル化物と比較して本発明により得られたカプセル化物を用いたインク組成物は、インクジェット記録方法においてインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出安定性に優れる。さらに、インク組成物中に含有させるカプセル化物の量を多くしてもカプセル化物の分散性及び分散安定性に優れる(高分散性)ことから、着色剤の含有濃度を高めたインクジェット記録用インク組成物を製造することができ、そのインク組成物を用いることによって高い印刷濃度を有する画像を得ることができる。本発明により得られたインク組成物は、インクジェット記録方法に用いるためのインク組成物として特に好ましいが、その用途は制限されるものではない。
【実施例】
【0119】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0120】
「アニオン性基を表面に有するカプセル化物(カプセル化蛍光色材)MC1の製造」
ゾル−ゲル法によるY:Eu超微粒子蛍光色素の製造方法を以下に示す。
まず以下の原材料をよく混合し、
【0121】
トリイソプロポキシイットリウム 1重量%
1-ブタノール 1重量%
【0122】
次いで、これに以下の原材料を混合したものを滴下する。
【0123】
硝酸ユーロピウム 0.1重量%
イオン交換水 0.1重量%
1-ブタノール 19.8重量%
【0124】
その後、2時間攪拌することで蛍光色素ゾルを得ることができる。そしてフィルタ法などにより溶媒を除去し、真空乾燥および/または高温(約110℃)乾燥することで、蛍光色素ゲルを得た。このゲルを800℃以上で2時間焼成することで、超微粒子蛍光色素が得られた。
【0125】
この得られた超微粒子蛍光色素20gを、アニオン性重合性界面活性剤アクアロンKH−10(第一工業製薬(株)製)5gと、イオン交換水200gと混合し、アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン(株)製)でビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で2時間分散した。得られた分散液に、カチオン性親水性モノマーとしてメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライドを1.5g添加して混合した後、超音波を30分間照射して処理した。次いで、ベンジルメタクリレート17.3gとドデシルメタクリレート7.7gとジエチレングリコールジメタクリレート0.05gを混合して加え攪拌混合し、予めイオン交換水50gに溶解しておいた、アニオン性重合性界面活性剤アクアロンKH−10を5.5gを添加し、再び超音波を30分間照射して処理した。これを攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度調整器、窒素導入管及び超音波発生器を備えた反応容器に投入した。反応容器の内温を80℃に昇温した後、イオン交換水20gに重合開始剤として、過硫酸カリウム0.6gを溶解した過硫酸カリウム水溶液を滴下し、窒素を導入しながら80℃で6時間重合した。重合終了後、2mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整し、孔径1μmのメンブレンフィルターでろ過し、粗大粒子を除去して目的のカプセル化物MC1を得た。
【0126】
「アニオン性基を表面に有するカプセル化物(カプセル化蛍光色材)MC2の製造」
蛍光色素として、Y:EuをC.I DISPERSE YELLOW82に変更した以外は、上記と同様の方法でカプセル化物MC2を得た。
【0127】
また比較例として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムで分散した例を示す。「比較例1の蛍光色材の製造」
蛍光体として、上記で得られた超微粒子蛍光体20gを、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5gと、イオン交換水200gと混合し、アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン(株)製)でビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で2時間分散して、比較例1の蛍光色材を得た。
【0128】
「比較例2の蛍光色材の製造」
前記、比較例1の蛍光色材の製造において、蛍光体として、Y:EuをC.I DISPERSE YELLOW82に変更した以外は、上記と同様の方法で比較例2の蛍光色材を得た。
【0129】
上記で得られたカプセル化物を用いて、下記に示す組成に基づいてインク化を行った。インク組成表を表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
添加量はいずれも重量%で示す 蛍光色素は固形分濃度で示す。

オルフィン104PG50 アセチレングリコール界面活性剤 日信化学工業(株)製
アクリル樹脂 ダイヤナールHW138 三菱レイヨン(株)製
メラミン樹脂 ニカレジンS−260 日本カーバイト(株)製
【0132】
評価
発光特性評価
実施例1〜2のインクについて、印刷媒体としてXerox P、Xerox 4024(ゼロックス(株)製)を用いて、インクジェットプリンターPX−V500(セイコーエプソン(株)製)で印刷を行った。得られた画像を波長350nmの励起光を照射して発光状態を観察した。その結果を以下の基準で評価した。
A:発光特性 良好
【0133】
【表2】

【0134】
表2の結果から明らかなように、本発明のインクでは発光特性が良好であることがわかる。
【0135】
耐光性評価
実施例1〜2と比較例1〜2の各インクを、印刷媒体としてXerox 4024(ゼロックス(株)製)、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン(株)製)を用いて、インクジェットプリンターPX−V500(セイコーエプソン(株)製)でベタ印刷を行った。得られた画像を耐候性試験機Ci−5000(東洋精機(株)製)を用いて、25℃60%RH下で、70000lux/hrの照射エネルギーにて20日間露光したものを、蛍光分光光度計 FP750(日本分光(株)製)により350nmの励起光で発光強度を測定した。その結果を以下の基準で評価した。
A:暴露前後の発光強度が、80%以上である
B:暴露前後の発光強度が、80%以下である
【0136】
【表3】

【0137】
表3の結果から明らかなように、本発明のインクでは耐光性が良好であることがわかる。
【0138】
耐擦性評価
実施例1〜2と比較例1〜2の各インクを、印刷媒体として写真用紙<光沢>(セイコーエプソン(株)製)を用いて、インクジェットプリンターPX−V500(セイコーエプソン(株)製)でベタ印刷を行った。得られた画像をサウザーランドラブテスタ(東洋精機(株)製)を用いて、1Kgの荷重を載せて10往復させた時の用紙の表面状態を確認した。その結果を以下の基準で評価した。
A:用紙の表面にキズがみられない
B:用紙の表面にキズがみられる
【0139】
【表4】

【0140】
表4の結果から明らかなように、本発明のインクでは耐擦性が良好であることがわかる。
【0141】
保存安定性評価
実施例1〜2と比較例1〜2の各インクを、ガラス瓶に入れ密栓後、60℃で2週間放置して、放置前後におけるインクの物性値変動(粘度、表面張力)について評価した。その結果を以下の基準で評価した。
A:放置前後の物性値に変化はみられない
B:放置前後の物性値比に変化がみられる
【0142】
【表5】

【0143】
表5の結果から明らかなように、本発明のインクでは保存安定性が良好であることがわかる。
【0144】
目詰まり性評価
各インクをクリーニングを繰り返す事でヘッドに充填し、各ノズルからインクが吐出している事を印字で確認後、キャップをしない状態で40℃の環境に1ヶ月間放置した。放置後、プリンターの電源を入れ全ノズルの吐出が可能となるまでに要するクリーニングの動作回数から、下記評価基準で評価した。
A:クリーニング 4回以内で回復する
B:クリーニング 5〜6回以内で回復する
【0145】
【表6】

【0146】
表6の結果から明らかなように、本発明のインクでは目詰まり回復性が良好であることがわかる。
【0147】
密着性評価
実施例3及び比較例3のインクについて、基材に刷毛塗りして乾燥後、1mmのゴバン目を入れ、セロハンテープ剥離により評価した。下記評価基準で評価した。
A:剥離が見られない
B:剥離が見られる
【0148】
【表7】

【0149】
表7の結果から明らかなように、本発明のインクでは密着性が良好であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】蛍光色素を含有し、アニオン性基を表面に有する色材粒子が、水性溶媒に分散するとともに、カチオン性親水性モノマー及び/又はカチオン性重合性界面活性剤とアニオン性重合性界面活性剤とに対して、共存している状態を示す模式図である。
【図2】図1に示す分散状態においてカチオン性親水性モノマー及び/又はカチオン性重合性界面活性剤とアニオン性重合性界面活性剤とが重合された状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0151】
1 蛍光色素、2 カチオン性親水性モノマー及び/又はカチオン性重合性界面活性剤、3 アニオン性重合性界面活性剤、11 カチオン性基、12, 12' 疎水性基、13, 13' 重合性基、14, 14' アニオン性基、60' ポリマー層(ポリマー)、100' カプセル化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯物質として表面に電荷を有する蛍光色素を含有するカプセル化物において、芯物質がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されており、当該ポリマーが、少なくとも(1)芯物質表面の電荷に対して反対電荷を有するイオン性重合性界面活性剤A及び/又はイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位と、(2)当該芯物質表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性重合性界面活性剤Bから誘導された繰り返し構造単位とからなるカプセル化物。
【請求項2】
前記蛍光色素が蛍光染料又は蛍光顔料であることを特徴とする請求項1に記載のカプセル化物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカプセル化物を含んでなるインク組成物。
【請求項4】
水溶性有機溶剤を含んでなる請求項3に記載のインクジェット記録用インク組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のカプセル化物を含んでなる塗料組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−154103(P2007−154103A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353982(P2005−353982)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】