説明

カプセル用コーティング剤

【課題】非ゼラチンカプセル表面を被覆することにより、該非ゼラチンカプセルに付着防止性、及び吸湿防止性を付与するとともに、該非ゼラチンカプセルの外観の変化を防ぐことができ、かつ崩壊性を劣化させないカプセル用コーティング剤、及び該カプセル用コーティング剤を被覆してなる表面被覆非ゼラチンカプセル、並びに該表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法を提供する。
【解決手段】グリセリン脂肪酸エステル、及び水溶性フィルム形成剤を含み、非ゼラチン基材により形成された非ゼラチンカプセルの表面の被覆に使用されることを特徴とするカプセル用コーティング剤である。該カプセル用コーティング剤によって表面が被覆されてなることを特徴とする表面被覆非ゼラチンカプセルである。前記カプセル用コーティング剤を用いて、非ゼラチンカプセルの表面を被覆することを特徴とする表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ゼラチンカプセル表面に付着防止性及び吸湿防止性を付与するカプセル用コーティング剤、及び該カプセル用コーティング剤を被覆してなる表面被覆非ゼラチンカプセル、並びに該表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品、医薬品、及び化粧品等の分野においては、油性液、顆粒、錠剤などをカプセル皮膜中に充填されて販売されている。このようなカプセル剤は、一定量の成分を手軽に摂取でき、1回の使用量を手軽に持ち歩くことができる利便性とともに、カプセルの内容成分が空気に触れないため、内容成分の安定性を保つことができる点で有効である。
【0003】
前記カプセルの基材としては、一般にゼラチンを主成分とし、グリセリン、適当な防腐剤、及び甘味料等から構成されているため、前記カプセル表面の付着性が経時的に高まり、保存時に前記カプセル剤同士が付着する傾向があり、特に、保存温度が40℃を越えた場合には、その付着性が著しく増加する。そのため、摂取時等に前記カプセル剤を容器から必要量取り出すのに困難を伴ったり、前記カプセル皮膜が破壊されることがある。
【0004】
そこで、前記カプセル剤同士の付着や、前記カプセル剤と容器との付着を防ぐために、前記カプセル表面を種々の付着防止剤で被覆する方法が提案されている。前記付着防止剤として、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(特許文献1参照)、不溶性セルロース(特許文献2参照)、セルロース−デンプン混合成形体(特許文献3参照)、ヒドロキシアルキル置換セルロースとポリビニルアセタール系ポリマー(特許文献4参照)、セルロース誘導体(特許文献5参照)、水溶性ヘミセルロース(特許文献6参照)、及びグリセリルモノ脂肪酸ジアセテート(特許文献7参照)などが提案されている。
【0005】
一方、前記カプセル基材として使用されるゼラチンは、主に牛、豚、鳥類、魚類等の動物を出発原料として製造されており、その本質は蛋白質であるため、アレルギーの原因物質となることがある。特に、医薬用ゼラチンカプセル基材は牛骨や牛皮由来のゼラチンを使用することが多いため、牛海綿状脳症(BSE)等の原因となる病原性蛋白分子の除去を必要とし、その除去が困難であるという問題がある。これらの問題から、近年、カプセル基材の原料として、動物由来の物質の使用を避ける傾向にある。
【0006】
これまでに、動物由来の原料を使用しないカプセル基材として、例えば、セルロースエーテル(特許文献8参照)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(特許文献9参照)、カラギーナン(特許文献10及び11参照)、寒天(特許文献12及び13参照)、澱粉(特許文献14及び15参照)、プルラン(特許文献16参照)、β−グルカン(特許文献17参照)、ガム類(特許文献18及び19参照)、及びビニルエステル系ポリマー(特許文献20参照)などを使用した非ゼラチンカプセルが提案されている。
【0007】
しかしながら、非ゼラチン基材により形成された前記非ゼラチンカプセルにおいても、表面の付着性が経時的に高まり、保存時に前記カプセル剤どうしが付着するという問題があり、さらに吸湿による硬度・強度の劣化や、皮膜の白濁や変色による外観の劣化が生じるという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特公昭49−11047号公報
【特許文献2】特開平2−180815号公報
【特許文献3】特開平3−98638号公報
【特許文献4】特開平7−252139号公報
【特許文献5】特開平8−34727号公報
【特許文献6】特開2001−39863号公報
【特許文献7】特開平4−288011号公報
【特許文献8】特公昭47−4310号公報
【特許文献9】特開平8−208458号公報
【特許文献10】特開昭60−12943号公報
【特許文献11】特開昭61−10508号公報
【特許文献12】特開平5−32543号公報
【特許文献13】特開平5−310529号公報
【特許文献14】特表2003−504326号公報
【特許文献15】特開2000−355534号公報
【特許文献16】特開平5−65222号公報
【特許文献17】特開平8−169817号公報
【特許文献18】特開平6−329833号公報
【特許文献19】特開平10−291928号公報
【特許文献20】特開2001−329029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、非ゼラチンカプセル表面を被覆することにより、該非ゼラチンカプセルに付着防止性、及び吸湿防止性を付与するとともに、該非ゼラチンカプセルの外観の変化を防ぐことができ、かつ崩壊性を劣化させないカプセル用コーティング剤、及び該カプセル用コーティング剤を被覆してなる表面被覆非ゼラチンカプセル、並びに該表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち
グリセリン脂肪酸エステル及び水溶性フィルム形成剤を含むカプセル用コーティング剤により表面が被覆された非ゼラチンカプセルは、従来の非ゼラチンカプセルに比し、付着防止性、及び吸湿防止性に優れ、経時による外観の変化を防止でき、かつ崩壊性の劣化が無いという知見である。
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> グリセリン脂肪酸エステル、及び水溶性フィルム形成剤を含み、
非ゼラチン基材により形成された非ゼラチンカプセルの表面の被覆に使用されることを特徴とするカプセル用コーティング剤である。
<2> グリセリン脂肪酸エステルが、5〜50℃においてペースト状である前記<1>に記載のカプセル用コーティング剤である。
<3> グリセリン脂肪酸エステルが、5〜50℃において粘性液状である前記<1>から<2>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤である。
<4> グリセリン脂肪酸エステルの粘度が、5〜50℃において5000〜200000cpsである前記<1>から<3>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤である。
<5> グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が6〜24であり、不飽和結合数が0〜3である前記<1>から<4>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤である。
<6> グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が、カプリン酸、ラウリン酸、デセン酸、エイコセン酸、エルシン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、及びリグノセリン酸から選択されるいずれか1種である前記<1>から<5>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤である。
<7> 水溶性フィルム形成剤が、水溶性セルロースである前記<1>から<6>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤である。
<8> 水溶性セルロースが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースのいずれかである前記<7>に記載のカプセル用コーティング剤である。
<9> グリセリン脂肪酸エステルを1〜10質量%含む前記<1>から<8>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤である。
<10> 水溶性フィルム形成剤を1〜30質量%含む前記<1>から<9>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤である。
<11> グリセリン脂肪酸エステルの含有量と、水溶性フィルム形成剤の含有量との比が、1:0.25〜1:10である前記<1>から<10>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤によって表面が被覆されてなることを特徴とする表面被覆非ゼラチンカプセルである。
<13> カプセル用コーティング剤の被覆量が、非ゼラチンカプセルの質量に対し1〜20質量%である前記<12>に記載の表面被覆非ゼラチンカプセルである。
<14> 前記<1>から<11>のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤を用いて、非ゼラチンカプセルの表面を被覆することを特徴とする表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法である。
<15> カプセル用コーティング剤を、非ゼラチンカプセルの質量に対し1〜20質量%となるように被覆する前記<14>に記載の表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における問題を解決し、非ゼラチンカプセル表面を被覆することにより、各種の医薬品、食品、化粧品等を内包する前記非ゼラチンカプセルの崩壊性を劣化させることなく、付着防止性、及び吸湿防止性を付与するとともに、外観の劣化を防ぐことができるカプセル用コーティング剤、及び前記非ゼラチンカプセル剤の崩壊性を劣化させることなく、該非ゼラチンカプセルに付着防止性、及び吸湿防止性を付与し、強度に優れ、外観の劣化が防止され、取扱性に優れた表面被覆非ゼラチンカプセル、並びに該表面被覆非ゼラチンカプセルを効率的に製造し得る前記表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(カプセル用コーティング剤)
本発明のカプセル用コーティング剤は、グリセリン脂肪酸エステル、及び水溶性フィルム形成剤を含み、さらに必要に応じて、適宜選択したその他の成分を含む。
また、本発明のカプセル用コーティング剤は、非ゼラチン基材により形成された非ゼラチンカプセルの表面の被覆に使用される。
【0013】
−グリセリン脂肪酸エステル−
前記グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸とのエステル化合物であるが、該グリセリン脂肪酸エステルとしては、前記カプセル用コーティング剤に付着防止能を付与し得る限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記グリセリン脂肪酸エステルは、適宜合成したものであってもよく、市販品であってもよい。
【0014】
前記グリセリン脂肪酸エステルの性状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜50℃において粘性液状、及びペースト状(半固体状)のいずれかであるものが好ましい。
【0015】
前記グリセリン脂肪酸エステルの粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜50℃において5000〜200000cpsであることが好ましく、5000〜150000cpsであることがより好ましい。
【0016】
前記グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数が6〜24であり、不飽和結合数が0〜3である脂肪酸が好ましい。これらの中でも、炭素数が10〜12であり、不飽和結合数が0である脂肪酸、及び炭素数が14〜22であり、不飽和結合数が1〜3である脂肪酸がより好ましい。
【0017】
前記脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、デセン酸、エイコセン酸、エルシン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、及びリグノセリン酸が好ましい。
【0018】
前記グリセリン脂肪酸エステルを構成するグリセリンの重合度としては、1〜16が好ましく、2〜10がより好ましい。前記グリセリンは、グリセリンをアルカリ触媒の存在下、脱水縮合することによって得られるポリグリセリンであり、該ポリグリセリンは、未反応のグリセリン及び種々の重合度のポリグリセリンからなる化合物として得られる。このため、前記グリセリンの重合度は、平均重合度を表す。
【0019】
前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、セスキオレイン酸デカグリセリル、モノカプリン酸デカグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、及びモノオレイン酸ヘキサグリセリルなどが好適に挙げられる。
【0020】
前記グリセリン脂肪酸エステルの含有量としては、前記カプセル用コーティング剤全量中1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0021】
−水溶性フィルム形成剤−
前記水溶性フィルム形成剤としては、前記カプセル用コーティング剤を前記非ゼラチンカプセルにコーティングした際に膜を形成しうる機能を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水溶性セルロースなどが好ましい。
【0022】
前記水溶性セルロースとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
また、前記水溶性セルロースに不溶性セルロースを混合して使用してもよく、前記不溶性セルロースとしては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びエチルセルロースなどが挙げられる。
【0023】
前記水溶性フィルム形成剤の含有量としては、前記カプセル用コーティング剤全量中1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0024】
前記カプセル用コーティング剤中の前記グリセリン脂肪酸エステルの含有量と前記水溶性フィルム形成剤との含有量の比は、1:0.25〜1:10であることが好ましく、1:0.5〜1:5であることが好ましい。
【0025】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、希釈剤、溶剤、可塑剤、着色剤、防湿剤、及び防腐剤などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分としては、経口摂取して体内に吸収された際に安全なものが好ましく、また、適宜合成乃至調製(抽出)したものであってもよく、市販品であってもよい。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を害さない範囲で適宜選択することができる。
【0026】
前記希釈剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも前記グリセリン脂肪酸エステルを溶解可能であり、さらに前記水溶性フィルム形成剤をも溶解可能であるものが好ましく、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセライド、オクチルデシルトリグリセライド、流動パラフィン、モノオレイン酸グリセリンなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水系溶剤などが挙げられる。前記水系溶剤としては、例えば、水、アルコール、及びこれらの混合溶剤などが好適に挙げられる。
【0028】
また、前記防湿剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セラックなどが挙げられる。
【0029】
前記カプセル用コーティング剤の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記グリセリン脂肪酸エステルを前記溶剤中に攪拌しながら溶解し、次いで前記水溶性フィルム形成剤を分散させ、得られた分散液に水を添加して攪拌し、均一に混合して調製することができる。
【0030】
本発明のカプセル用コーティング剤は、前記非ゼラチンカプセル表面を被覆することにより、各種の医薬品、食品、化粧品等を内包する前記非ゼラチンカプセルの崩壊性を劣化させることなく、付着防止性、及び吸湿防止性を付与するとともに、外観の劣化を防ぐことができる。また、後述する表面被覆非ゼラチンカプセルの製造に好適に用いることができる。
また、本発明のカプセル用コーティング剤は、前記非ゼラチンカプセル中に混合して使用してもよく、例えば、前記非ゼラチンカプセル調製液に前記カプセル用コーティング剤を添加してカプセル成形してもよい。
【0031】
(表面被覆非ゼラチンカプセル)
本発明の表面被覆非ゼラチンカプセルは、上述した本発明のカプセル用コーティング剤によって表面が被覆されてなる非ゼラチンカプセルである。
【0032】
前記非ゼラチンカプセルとしては、ハードカプセル(硬カプセル剤)及びソフトカプセル(軟カプセル剤)のいずれであってもよい。
前記非ゼラチンカプセルとしては、成分として実質的にゼラチンを含有しないカプセルであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カプセル基材、可塑剤などを含み、さらに必要に応じて、適宜選択したその他の成分を含み、常法に準じて調製されたものが挙げられる。
【0033】
前記カプセル基材としては、ゼラチンを含まない限り、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、セルロース、寒天、カラギーナン、澱粉、プルラン、β−グルカン、ガム類、アルギン酸(塩)などが挙げられ、これらの中でも澱粉、カラギーナン、及びこれらの混合物が好ましい。また、特表2003−504326号公報記載のイオターカラギーナンと改質澱粉との混合物が好適に挙げられる。
【0034】
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、グリセリン、ポリビニルアルコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、着色剤、防腐剤、芳香剤、矯味剤、矯臭剤、緩衝剤などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記表面被覆非ゼラチンカプセルは、前記カプセル用コーティング剤が表面に塗布され、該カプセル用コーティング剤により形成された膜に被覆されてなる。
前記カプセル用コーティング剤の被覆量としては、前記非ゼラチンカプセルの質量に対して1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることが好ましい。
【0037】
(表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法)
本発明の前記表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法は、上述の本発明のカプセル用コーティング剤を用い、前記非ゼラチンカプセルの表面を被覆する方法であり、さらに必要に応じて、適宜選択したその他の工程を含む。
【0038】
前記表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法の具体的な方法としては、前記カプセル用コーティング剤を用いて、前記非ゼラチンカプセルの表面を被覆可能な方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記カプセル用コーティング剤を前記非ゼラチンカプセル表面に対して塗布する方法、噴霧する方法、浸漬させる方法などが挙げられ、これらの中でも前記カプセル用コーティング剤を前記非ゼラチンカプセル表面に対して噴霧する方法が好ましい。
噴霧に用いる装置としては、例えば、パン型コーター、流動コーター、通気式乾燥コーター(ハイコーター)、水平型コーターなどが挙げられる。
【0039】
前記表面被覆ゼラチンカプセルの製造方法としては、前記カプセル用コーティング剤を、前記非ゼラチンカプセルの質量に対して1〜20質量%となるように被覆することが好ましく、1〜10質量%となるように被覆することがより好ましい。
【0040】
本発明の表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法により、崩壊性が劣化することなく、付着防止性及び吸湿防止性が付与され、強度に優れ、外観の劣化が防止され、取扱性に優れた表面被覆非ゼラチンカプセルを効率的に製造することができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
−カプセル用コーティング剤の調製−
前記グリセリン脂肪酸エステルとして、デカグリセリンモノオレイン酸エステルをエタノール中に攪拌しながら溶解し、次いで前記水溶性フィルム形成剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び防湿剤としてセラックを分散させ、さらに水を添加して攪拌し、均一に混合して前記カプセル用コーティング剤を調製した。攪拌にはプロペラ式攪拌機を用いた。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0043】
−表面被覆非ゼラチンカプセルの製造−
前記非ゼラチンカプセルとして、特表2003−504326号公報に記載の処方物10に従い製造した3000個を、ハイコーター(HTC−30、フロイント産業(株)製)に投入し、前記カプセル用コーティング剤を、前記非ゼラチンカプセルの質量に対して10質量%となるようにスプレー塗布し、乾燥させて前記表面被覆非ゼラチンカプセルを製造した。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例2及び3)
実施例1において、前記カプセル用コーティング剤の組成を、表1に示す組成に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び3の表面被覆非ゼラチンカプセルを得た。
【0046】
(比較例1及び2)
実施例1において、前記カプセル用コーティング剤の組成を、表1に示す組成に変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1及び2の表面被覆非ゼラチンカプセルを得た。
【0047】
(比較例3)
実施例1において、前記非ゼラチンカプセルに前記カプセル用コーティング剤を塗布しないこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の非ゼラチンカプセルを得た。
【0048】
得られた前記表面被覆非ゼラチンカプセル、及び非ゼラチンカプセルについて、以下に示す外観観察、吸湿試験、荷重試験、皮膜剥離の観察、付着性試験、落下試験、及び崩壊性試験を行い、評価した。
【0049】
<外観観察>
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセル、及び比較例3の非ゼラチンカプセルを、各3個ずつデシケーターに入れ、25℃、相対湿度75%の条件下で保管した。保管開始から1、3、6及び7日目における実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセル、及び比較例3の非ゼラチンカプセルの外観と硬さ変化の有無をそれぞれ観察した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセルでは、外観及び硬さに変化が観られなかったのに対して、比較例3の非ゼラチンカプセルでは、白濁や軟化が観られた。
【0052】
<吸湿試験>
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセル、及び比較例3の非ゼラチンカプセルを、各3個ずつデシケーターに入れ、25℃、相対湿度75%の条件下で24時間保管した。保管前後の質量を比較し、質量の増加率の平均値を吸湿した水分量として評価した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセルは、比較例3の非ゼラチンカプセルと比較して、吸湿水分量が明らかに少なかった。
【0055】
<荷重試験>
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセル、及び比較例3の非ゼラチンカプセルを、各3個ずつデシケーターに入れ、25℃、相対湿度75%の条件下で24時間保管した。保管前後の各カプセルに対し、精密万能試験機(オートグラフAG5000B、島津製作所株式会社製)を使用して、プランジャーで前記カプセルを圧迫し、圧迫距離が2mmとなったときの荷重(kg)を測定し、平均値を求めた。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
比較例3の非ゼラチンカプセルは、容易に圧迫され、荷重が測定不能であったのに対し、実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセルは、実用上問題のない硬度が保たれていた。
【0058】
<皮膜剥離の観察>
実施例1、比較例1、及び比較例2の表面被覆非ゼラチンカプセルを、製造直後に任意の3個を取り出し、それらの皮膜の剥離状態を目視で観察した。結果を表5に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセルでは、皮膜の剥離がみられなかったのに対し、比較例1及び2の表面被覆非ゼラチンカプセルでは、皮膜の剥離がみられた。
【0061】
<付着性試験>
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセル、及び比較例3の非ゼラチンカプセルの各40個を、容器としてガラス製の6号瓶に入れて密栓し、50℃又は55℃、75%の条件下で1週間保管した。その後、前記容器を静かに逆さにし、実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセル及び比較例3の非ゼラチンカプセルの付着の状態を観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6に示す。
−評価基準−
1 :すべて分離(容器付着、及びカプセル同士の付着はみられない)
2 :静かに逆さにしたとき、容器底部に少量のカプセルが付着している
3 :静かに逆さにしたとき、約半数のカプセルが付着している
4 :半数以上のカプセルが付着し、容器を振ると分離
5 :半数以上のカプセルが付着し、容器を強く叩くと分離
【0062】
【表6】

【0063】
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセルでは、ほとんど容器に対する付着もカプセル同士の付着も観られなかったのに対して、比較例3の非ゼラチンカプセルでは、その全てが容器又はカプセル同士で付着し、容器を強くたたかないと分離しなかった。
【0064】
<落下試験>
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセル、及び比較例3の非ゼラチンカプセルを、それぞれ100個ずつポリエチレンテレフタラート(PET)製の円筒状容器に入れたものを3個ずつ、計6個用意した。これらを4℃の冷暗所に1週間保管した後、120cmの高さから、天面、底部、横部を上にして、各1回ずつコンクリート上に落下させた。その後、前記円筒状容器を室温下で24時間保管した後、破損したカプセル数を測定した。結果を表7に示す。
【0065】
【表7】

【0066】
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセルでは、被覆を施さない比較例3の非ゼラチンカプセルと比較して、破損するカプセル数が減少した。
【0067】
<崩壊性試験>
実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセル、及び比較例3の非ゼラチンカプセルを、各6個ずつ用いて、日本薬局方第14版に記載された方法に準じて、崩壊性試験を行った。結果を表8に示す。
【0068】
【表8】

【0069】
試験開始から20分経過後、実施例1の表面被覆非ゼラチンカプセル、及び比較例3の非ゼラチンカプセルのすべてが崩壊し、溶解した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のカプセル用コーティング剤は、各種の医薬品、食品、化粧品等を内包する前記非ゼラチンカプセルの崩壊性を劣化させることなく、付着防止性、及び吸湿防止性を付与するとともに、外観の劣化を防ぐことができるカプセル用コーティング剤として好適に使用することができる。また、本発明の表面被覆非ゼラチンカプセルは、各種の医薬品、食品、化粧品等を内包するカプセルとして好適に使用することができ、本発明の表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法は、前記非ゼラチンの崩壊性を劣化させることなく、該非ゼラチンカプセルに付着防止性、及び吸湿防止性を付与し、強度に優れ、外観の劣化が防止され、取扱性に優れた表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン脂肪酸エステル、及び水溶性フィルム形成剤を含み、
非ゼラチン基材により形成された非ゼラチンカプセルの表面の被覆に使用されることを特徴とするカプセル用コーティング剤。
【請求項2】
グリセリン脂肪酸エステルが、5〜50℃においてペースト状である請求項1に記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項3】
グリセリン脂肪酸エステルが、5〜50℃において粘性液状である請求項1から2のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項4】
グリセリン脂肪酸エステルの粘度が、5〜50℃において5000〜200000cpsである請求項1から3のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項5】
グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が6〜24であり、不飽和結合数が0〜3である請求項1から4のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項6】
グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が、カプリン酸、ラウリン酸、デセン酸、エイコセン酸、エルシン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、及びリグノセリン酸から選択されるいずれか1種である請求項1から5のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項7】
水溶性フィルム形成剤が、水溶性セルロースである請求項1から6のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項8】
水溶性セルロースが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースのいずれかである請求項7に記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項9】
グリセリン脂肪酸エステルを1〜10質量%含む請求項1から8のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項10】
水溶性フィルム形成剤を1〜30質量%含む請求項1から9のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項11】
グリセリン脂肪酸エステルの含有量と、水溶性フィルム形成剤の含有量との比が、1:0.25〜1:10である請求項1から10のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤によって表面が被覆されてなることを特徴とする表面被覆非ゼラチンカプセル。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載のカプセル用コーティング剤を用いて、非ゼラチンカプセルの表面を被覆することを特徴とする表面被覆非ゼラチンカプセルの製造方法。

【公開番号】特開2006−182771(P2006−182771A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347436(P2005−347436)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】