説明

カプセル粒子含有乳化物の製造方法

【課題】経時に伴う粘度変化が抑制され、カプセル粒子の分散安定性と容器からの排出性のいずれも優れたカプセル粒子含有乳化物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する油相と、水を含有する水相とを、撹拌翼を備えたラインミキサーにより下記混合条件(a)で混合して第一の乳化物を得る工程(1)と、該工程(1)で得られた第一の乳化物を、撹拌翼を備えた混合装置により下記混合条件(b)で混合して第二の乳化物を得る工程(2)と、該工程(2)で得られた第二の乳化物とカプセル粒子とを混合する工程(3)とを有するカプセル粒子含有乳化物の製造方法。混合条件(a):撹拌翼先端の周速度をA(m/s)、撹拌翼を通過する油相及び水相の線速度をB(m/s)とした際、A=0.5以上3未満、A/B=15〜500。混合条件(b):撹拌翼先端の周速度をC(m/s)とした際、C=3〜10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル粒子含有乳化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯後の繊維製品の風合いを高めるために、繊維用仕上げ剤又は衣料用柔軟剤と呼ばれる繊維製品処理剤が用いられている。
繊維製品処理剤には、一般に、柔軟性付与成分であるカチオン界面活性剤を含む油相と水相とを混合して調製される水中油型乳化物が利用されている。しかし、このような繊維製品処理剤は、経時に伴って粘度が増加して経時安定性を確保するのが難しかった。
これに対して、水中油型乳化物の配合直後の粘度を低く設定して、経時に伴う粘度変化を抑制することにより、経時安定性の向上を図る方法が提案されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、衣料等の繊維製品に香りを付与するため、香料を配合した繊維製品処理剤で処理することが行われている。香料の配合方法としては、一般的に、香料をそのまま配合する方法、香料を乳化して配合する方法が挙げられる。
近年、特に衣料用柔軟剤においては、衣料等への柔軟性付与効果だけでなく、香りも重視されるようになってきており、衣料等に付与した香りの持続性の高いことも要望されている。
これまでに香りの持続性を高める方法としては、香料をカプセル粒子に封入して配合する方法がある。たとえば、香料等の活性物質及び安定剤を含有するカプセル粒子と、該カプセル粒子の分散安定化を配合目的とする分散剤とを含む組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−143935号公報
【特許文献2】特開2005−248406号公報
【特許文献3】特表2007−503516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カプセル粒子を含有する水中油型乳化物を調製する際、特許文献1、2に記載された水中油型乳化物と、カプセル粒子とを混合した場合、水中油型乳化物の粘度が低く設定されているため、カプセル粒子が分離して浮上しやすく、均一で経時安定性の良好な組成物を調製するのが困難である。これに対して、カプセル粒子が分離しないようにするため、水中油型乳化物の粘度を高くする方法が考えられるが、計量キャップで計量する際又は詰め替えの際、容器からの排出性が悪くなり、カプセル粒子の分散安定性と容器からの排出性との両立を図ることができない。
また、特許文献3に記載された技術においては、カプセル粒子と共に分散剤を配合しなければならず、分散剤の影響によって、繊維製品の風合いが低下する、水中油型乳化物の経時安定性が悪くなる、製造コストが高くなる等の問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、経時に伴う粘度変化が抑制され、カプセル粒子の分散安定性と容器からの排出性のいずれも優れたカプセル粒子含有乳化物を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
すなわち、本発明のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する油相と、水を含有する水相とを、撹拌翼を備えたラインミキサーにより下記混合条件(a)で混合して第一の乳化物を得る工程(1)と、該工程(1)で得られた第一の乳化物を、撹拌翼を備えた混合装置により下記混合条件(b)で混合して第二の乳化物を得る工程(2)と、該工程(2)で得られた第二の乳化物とカプセル粒子とを混合する工程(3)とを有することを特徴とする。
混合条件(a):撹拌翼先端の周速度をA(m/s)、撹拌翼を通過する油相及び水相の線速度をB(m/s)とした際、A=0.5以上3未満、A/B=15〜500。
混合条件(b):撹拌翼先端の周速度をC(m/s)とした際、C=3〜10。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカプセル粒子含有乳化物の製造方法によれば、経時に伴う粘度変化が抑制され、カプセル粒子の分散安定性と容器からの排出性のいずれも優れたカプセル粒子含有乳化物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のカプセル粒子含有乳化物の製造方法の一実施形態を示す工程概略図である。
【図2】工程(1)で用いるラインミキサーの一例を示す模式図である。
【図3】工程(2)で用いる混合装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する油相と、水を含有する水相とを、撹拌翼を備えたラインミキサーにより下記混合条件(a)で混合して第一の乳化物を得る工程(1)と、該工程(1)で得られた第一の乳化物を、撹拌翼を備えた混合装置により下記混合条件(b)で混合して第二の乳化物を得る工程(2)と、該工程(2)で得られた第二の乳化物とカプセル粒子とを混合する工程(3)とを有する。
混合条件(a):撹拌翼先端の周速度をA(m/s)、撹拌翼を通過する油相及び水相の線速度をB(m/s)とした際、A=0.5以上3未満、A/B=15〜500。
混合条件(b):撹拌翼先端の周速度をC(m/s)とした際、C=3〜10。
【0010】
<油相>
油相は、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する。
【0011】
≪カチオン界面活性剤≫
カチオン界面活性剤としては、炭素数12〜36の炭化水素基を分子内に1つ以上有する3級アミン化合物もしくはその塩又は該3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。炭素数12〜36の炭化水素基は、アミド基、エステル基及びエーテル基から選ばれる1種以上の基で分断されていてもよい。
このようなカチオン界面活性剤としては、例えば、下記一般式(III)〜(X)に示す3級アミン化合物又はその有機酸もしくは無機酸による中和物、該3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
上記一般式(III)中、Rは、それぞれ独立にアミド基、エステル基及びエーテル基から選ばれる1種以上の基で分断されていてもよい、炭素数12〜36の炭化水素基を示す。上記一般式(IV)〜(X)中、Rは、それぞれ独立にアミド基、エステル基及びエーテル基から選ばれる1種以上の基で分断されていてもよい、炭素数12〜36の炭化水素基を示す。
【0014】
前記3級アミン化合物(III)を構成するRは、炭素数12〜36の炭化水素基である。不飽和基を有する場合、シス体とトランス体が存在するが、この質量比はシス/トランス=25/75〜100/0が好ましく、40/60〜80/20が特に好ましい。また、飽和と不飽和炭化水素基の質量比は95/5〜50/50であることが好ましい。
【0015】
また、前記3級アミン化合物(IV)〜(X)を構成するRは、炭素数12〜36の脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基であり、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、直鎖脂肪酸又は分岐脂肪酸から誘導される炭化水素基である。不飽和脂肪酸の場合、シス体とトランス体が存在するが、この質量比はシス/トランス=25/75〜100/0が好ましく、40/60〜80/20が特に好ましい。
のもととなる脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10〜60)、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10〜60)等が挙げられる。なかでも好ましいのは、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸を所定量組み合わせ、飽和/不飽和の質量比が95/5〜50/50、シス/トランス体質量比が40/60〜80/20、ヨウ素価が10〜50、炭素数18の含有率が80質量%以上であり、炭素数20の脂肪酸を2質量%以下、炭素数22の脂肪酸が1質量%以下となるように調整した脂肪酸組成物を用いることが好ましい。ここで、式中に存在するRは、すべて同一であっても、又はそれぞれ異なっていても構わない。
【0016】
前記3級アミン化合物の中和に用いる酸としては、塩酸、硫酸、メチル硫酸が挙げられる。本発明で用いる3級アミンは、塩酸、硫酸、メチル硫酸によって中和されたアミン塩の形で用いることが好ましい。この中和工程は、3級アミンを予め中和したものを水に分散してもよく、酸水溶液中に3級アミンを液状又は固体状で投入してもよく、3級アミンと酸成分を同時に投入してもよい。また、上記3級アミンの4級化に用いる4級化剤としては、塩化メチルやジメチル硫酸が挙げられる。
【0017】
一般式(IV)、(V)の化合物は、上記脂肪酸組成物、又は脂肪酸メチルエステル組成物とメチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。この際、分散安定性を良好にする観点から、(IV)/(V)で表される存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。さらに、これらの4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸等を用いるが、低分子量であり4級化に所要する4級化剤の質量が少ない点で塩化メチルがより好ましい。この際、(IV)と(V)で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率は、分散安定性の観点から質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。また、(IV)と(V)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。この際、[4級化物]/[4級化されていないエステルアミン]の質量比は、エステル基の加水分解安定性の観点から、99/1〜70/30の範囲内であることが好ましい。
【0018】
一般式(VI)、(VII)、(VIII)の化合物は、上記脂肪酸組成物、又は脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。この際、分散安定性を良好にする観点から、[(VI)+(VII)]/(VIII)で表される存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。さらに、この4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸等を用いるが、反応性の観点からジメチル硫酸がより好ましい。この際、[(VI)の4級化物+(VII)の4級化物]/[(VIII)の4級化物]で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率が、分散安定性の観点から、質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。また、(VI)、(VII)及び(VIII)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。この際、[4級化物]/[4級化されていないエステルアミン]で表される質量比は、エステル基の加水分解安定性の観点から、99/1〜70/30であることが好ましい。
【0019】
一般式(IX)、(X)の化合物は、上記脂肪酸組成物とN−メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物より、「J.Org.Chem.,26,3409(1960)」に記載の公知の方法で合成したN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミンとの縮合反応により合成することができる。この際、(IX)/(X)で表される存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。さらに、この4級化物を用いる場合には塩化メチルで4級化するが、[(IX)の4級化物]/「(X)の4級化物」で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。また、(IX)、(X)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。この際、[4級化物]/[4級化されていないエステルアミン]で表される質量比は、エステル基の加水分解安定性の観点から、99/1〜70/30であることが好ましい。
【0020】
また、例えば、カチオン界面活性剤として、以下に示す炭素数が12〜36の高級脂肪酸由来の脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩を用いることもでき、該脂肪酸は飽和でも不飽和であってもよい。
脂肪酸アミドアルキル3級アミンとしては、例えば、カプリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミド等の脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩等が挙げられる。
なかでも、それ自体の臭気が低く良好なことから、カプリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミドが好ましく、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドがより好ましく、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミドとステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドとの混合物がさらに好ましい。
【0021】
長鎖脂肪酸アミドアルキル3級アミンの具体的な商品としては、例えば、東邦化学株式会社製のカチナールMPAS−R(商品名、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド/ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(質量比)=3/7の混合物)、ライオンアクゾ株式会社製のアーミンAPA168−65E(商品名、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド/ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(質量比)=30/70の混合物65質量%のエタノール溶液)等が好ましく用いられる。
【0022】
上記の「脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩」は、例えば、脂肪酸あるいは脂肪酸低級アルキルエステル、動・植物性油脂等の脂肪酸誘導体と、ジアルキルアミノアルキルアミンとを縮合反応させた後、未反応のジアルキルアミノアルキルアミンを、減圧又は窒素ブローにて留去することにより得られる。
【0023】
脂肪酸又は脂肪酸誘導体としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、とうもろこし油脂肪酸、牛脂脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸等、又はこれらのメチルエステル、エチルエステル、グリセライド等が挙げられる。中でも、繊維製品処理剤に配合した際、繊維製品への吸着性能に優れることから、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸が好ましい。これら脂肪酸又は脂肪酸誘導体は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
上述したカチオン界面活性剤の中でも、上記式(III)〜(X)に示す3級アミン化合物又はその有機酸もしくは無機酸による中和物、該3級アミンの4級化物が好ましい。繊維製品処理剤に配合した際、カプセル粒子の繊維製品への吸着効率及び吸着の持続性の向上が図れることから、上記式(VI)〜(VIII)で表される3級アミンの4級化物の一種以上を用いることがより好ましい。
【0025】
上述したカチオン界面活性剤における炭化水素基の炭素数は、12〜24であることが好ましい。炭素数が12未満であると、充分な柔軟効果が得られないおそれがあり、炭素数が24超であると、疎水性が強くなり水への分散が著しく低下し、繊維製品処理剤に配合した際、繊維に対する吸着が不均一となって充分な柔軟効果が得られないおそれがある。
また、カチオン界面活性剤に生分解性を付与するため、該長鎖炭化水素基の途中にエステル基を含有させることが好ましい。しかるに、柔軟効果と生分解性との両立を図る観点から、カチオン界面活性剤は、分断基としてエステル基を有する炭素数12〜24の炭化水素基を1以上含有するカチオン界面活性剤であることが好ましい。
上述したカチオン界面活性剤は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。2種以上のカチオン界面活性剤を組み合わせる場合、特に繊維製品処理剤に配合した際、処理した繊維製品の柔軟性を良好にするために、長鎖炭化水素基(炭素数12以上)を2つ又は3つ有する化合物をカチオン界面活性剤中に50質量%以上配合することが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有乳化物中のカチオン界面活性剤の含有量は、所望とする機能に応じて決定でき、例えば、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは8〜18質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。
カチオン界面活性剤の含有量が下限値以上であれば、カチオン界面活性剤の配合効果(たとえば衣料用柔軟剤として用いた場合、柔軟効果や抗菌効果など)が充分に得られる。また、カプセル粒子の繊維製品等への吸着を充分に促進できる。上限値以下であれば、水中油型の乳化物が良好に形成される。
また、カプセル粒子含有乳化物中のカチオン界面活性剤の含有量は、カチオン界面活性剤/カプセル粒子で表される質量比が、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜150、さらに好ましくは10〜30である。
カチオン界面活性剤/カプセル粒子で表される質量比が下限値未満であると、カプセル粒子の繊維製品等への吸着量が不充分となるおそれがあり、上限値超としても、カプセル粒子の繊維製品等への吸着性向上の効果が飽和し、さらなる吸着量の向上が図れない。
【0027】
≪ノニオン界面活性剤≫
ノニオン界面活性剤は、主に、乳化物中でのカチオン界面活性剤の乳化分散安定性を向上する目的で用いられる。特に、ノニオン界面活性剤を配合すると、商品価値上、充分なレベルの凍結復元安定性が確保されやすい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコール、高級アミン又は高級脂肪酸から誘導されるものを用いることができる。なかでも、高級アルコールのアルキレンオキシド付加物が好ましい。
【0028】
高級アルコールは一級でも二級でもよく、その長鎖炭化水素鎖部分は、分岐鎖状であっても直鎖状であってもよく、不飽和があってもよく、炭素鎖長に分布があってもよい。
炭素鎖長は、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは10〜18である。炭化水素鎖が不飽和基を含む場合には、炭素数は16〜18であるものが好ましく、不飽和基の立体異性体構造は、シス体もしくはトランス体でもよく、又は両者の混合物でもよい。
ノニオン界面活性剤として好適な高級アルコールアルキレンオキシド付加物の原料アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−ブチルオクタノール、イソトリデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、2−ブチルデカノール、2−ヘキシルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルデカノール、2−ヘキシルドデカノール、2−オクタデカノール、2−ドデシルヘキサデカノールなどの天然系もしくは合成系の高級アルコールを使用することができる。
【0029】
一方、高級アルコールに付加するアルキレンオキシドは、エチレンオキシド(EO)単独が好ましいが、エチレンオキシドにプロピレンオキシド(PO)又はブチレンオキシド(BO)を併用してもよく、これらアルキレンオキシドの平均付加モル数は10〜100モルが好ましく、より好ましくは20〜80モルである。
【0030】
アルキレンオキシド付加物のノニオン界面活性剤として、より具体的には、ラウリルアルコールの平均EO20モル付加物、オレイルアルコールの平均EO50モル付加物(日光ケミカルズ株式会社製)、一級イソデシルアルコールの平均EO20モル付加物、一級イソトリデシルアルコールの平均EO40モル付加物(ライオン株式会社製のTDA400−75)、一級イソトリデシルアルコールの平均EO60モル付加物(ライオン株式会社製のTA600−75)、一級イソへキサデシルアルコールの平均EO60モル付加物(ライオン株式会社製のエソミンT70)、二級の炭素数12〜14のアルコールの平均EO30モル付加物(株式会社日本触媒製のソフタノール300)、牛脂アルキルアミンの平均EO60モル付加物、ラウリン酸の平均EO30モル付加物などが挙げられる。
それらの具体例として、日本エマルジョン株式会社のエマレックスシリーズ、三洋化成株式会社のエマルミンシリーズ、ライオン株式会社のTAシリーズ、TDAシリーズ、エソミンシリーズ、株式会社日本触媒製ソフタノール300などのソフタノールシリーズ、BASF社製Lutensolシリーズなどを使用することができる。
また、上記化合物には、原料であるアルコール、アミン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコール等が未反応分としてノニオン界面活性剤中に10質量%以下で含まれてもよい。
【0031】
上述したノニオン界面活性剤は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
上述したノニオン界面活性剤の中でも、乳化物の分散安定性が良好となることから、高級アルコールのエチレンオキシド付加物が好ましく、一級イソトリデシルアルコールの平均EO60モル付加物(ライオン株式会社製のTA600−75)が特に好ましい。
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有乳化物中のノニオン界面活性剤の含有量は、所望とする機能に応じて決定でき、例えば、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜4質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。
ノニオン界面活性剤の含有量が下限値以上であると、乳化物中でのカチオン界面活性剤の乳化分散安定性、乳化物の凍結復元安定性がより向上する。上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の粘度の上昇を抑えて使用性の面で良好なものとすることができる。
【0032】
なお、油相には、所望とする機能に応じて、種々のその他の油溶性成分を含有してもよい。油溶性成分としては、香料組成物、シリコーン化合物等が挙げられる。
たとえば繊維製品処理剤を調製する場合、香料成分の繊維製品処理剤中における分散性を向上させるため、油相に香料組成物を配合することが好ましい。
香料組成物については、カプセル粒子に含有していてもよい香料組成物(後述)と同様のものが挙げられる。
【0033】
<カプセル粒子>
カプセル粒子は、有効成分を含有する芯物質(a1)(以下「(a1)成分」ということがある)を、水不溶性の高分子化合物(a2)(以下「(a2)成分」ということがある)で内包したものである。有効成分が、カプセル粒子の形態で乳化物に含有されることで、有効成分の有する効果を持続させられる。
【0034】
カプセル粒子の比重(25℃、水を基準)は、0.80〜1.20が好ましく、より好ましくは0.85〜1.15、さらに好ましくは0.90〜1.10である。カプセル粒子の比重が前記範囲であると、乳化物中でのカプセル粒子の分散安定性がより良好となる。
【0035】
カプセル粒子の粒径は、特に制限されるものではなく、例えば単芯型構造の場合、平均粒径は1〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜6μm、さらに好ましくは2〜5μmである。平均粒径が小さすぎると、有効成分の対象物への吸着性が低減し、充分な効果が得られにくい。たとえば繊維製品処理剤に配合した際、繊維製品への吸着量が低減し、繊維製品を乾燥した直後の香りが低下する場合がある。平均粒径が大きすぎると、乳化物中でのカプセル粒子の分散安定性が悪くなる。
本発明において「平均粒径」は、島津製作所製の粒度分布測定装置SALD−7100、高濃度サンプル測定システムSALD−HC71、測定・解析ソフトWing SALDII−7100HCを用い、乳化物の液温25℃で、屈折率2.65−0.20i、測定吸光度範囲0.01−0.20にて、体積基準のメジアン径(μm)により測定される値である。
また、単芯型構造とは、芯物質の塊が、カプセル粒子中に1つだけ存在する構造をいう。
【0036】
(a1)成分には、香り付与を目的として香料組成物(後述)、日焼け止め成分として紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤等を含有してもよい。加えて、芯物質には、必要に応じて酸化防止剤、防腐剤等の添加剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸フェニル、シノキサート、パラアミノ安息香酸エステル、又はこれらのいずれか1種以上を含む組成物などが挙げられる。
紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、又はこれらのいずれか1種以上を含む組成物などが挙げられる。
【0037】
カプセル粒子全体に占める(a1)成分の含有割合は、芯物質の種類等を勘案して適宜決定でき、好ましくは30〜95質量%、より好ましくは45〜90質量%、さらに好ましくは70〜85質量%である。
カプセル粒子全体に占める(a1)成分の含有割合が下限値以上であれば、カプセル粒子含有乳化物の使用中に、カプセル粒子のカプセル壁が崩壊し、芯物質中の有効成分を放出させることができる。カプセル粒子全体に占める(a1)成分の含有割合が上限値以下であれば、芯物質をカプセル壁で内包することができる。
【0038】
(a2)成分は、(a1)成分を内包するためのカプセル粒子のカプセル壁を構成する物質で、水不溶性の高分子化合物である。
本発明において、「水不溶性」とは、25℃の水100gへの溶解度が1g未満であることをいう。また、「高分子」は、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーメーションクロマトグラフィーで測定される重量平均分子量が1,000〜5,000,000のものをいう。
【0039】
(a2)成分の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000である。これにより、有効成分の効果を持続させることができる。
【0040】
(a2)成分としては、芯物質の性状、製造性、適度なカプセル壁の強度、コスト等を勘案して決定でき、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等の合成高分子化合物;油脂、ワックス等の油性膜形成物質等を挙げることができる。これらの(a2)成分は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0041】
ウレタン樹脂は、多官能性イソシアネート化合物とポリオールもしくはポリアミン化合物との縮合反応により得られるものである。
多官能性イソシアネート化合物としては、ポリフェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート等が挙げられる。ポリオール化合物としては、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。ポリアミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
なかでも、ポリフェニルイソシアネートとヘキサメチレンジアミン、トルエンジイソシアネートとジエチレングリコールの組み合わせを好適に用いることができる。
【0042】
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドから誘導されるメチロールメラミンからなるプレポリマーを加熱硬化して得られるものである。
【0043】
ポリアクリル酸樹脂を構成するモノマーとしては、アクリル酸、もしくはその低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0044】
ポリビニル樹脂を構成するモノマーとしては、エチレン、無水マレイン酸、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0045】
ポリメタクリル酸樹脂を構成するモノマーとしては、メタアクリル酸、もしくはその低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0046】
油脂としては、硬化油、固形脂肪酸及び金属塩等が挙げられる。
ワックスとしては、密ロウ、木ロウ、パラフィン等が挙げられる。
【0047】
(a2)成分としては、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、ウレタン樹脂、メラミン樹脂がより好ましく、ポリフェニルイソシアネートとヘキサメチレンジアミンとから誘導されるポリウレタン樹脂、メラミン樹脂がさらに好ましい。
【0048】
カプセル粒子は、公知の方法により製造でき、例えば、界面重合法、in−situ重合法等が挙げられる。
(a2)成分としてウレタン樹脂を用いる場合、界面重合法が好ましい。例えば、一方の容器に適宜濃度の乳化剤水溶液を調製しておき、別の容器に芯物質と多官能性イソシアネート化合物との芯物質溶液を調製する。次いで、乳化剤水溶液と芯物質溶液とを高速撹拌機に投入した後、高速撹拌してO/Wエマルションを調製し、次いで、適度な濃度のポリアミン化合物の水溶液を入れて、常温で所定時間撹拌、反応させる。こうして、カプセル壁を硬化させて、カプセル粒子が分散したカプセル粒子分散液を得られる。
【0049】
(a2)成分としてメラミン樹脂を用いる場合、in−situ重合法が好ましく、カプセル壁を芯物質の外側から形成させる方法が好適である。例えば、撹拌機を備えた容器にて、芯物質を分散濃度が10〜40質量%になるように水に分散させた後、撹拌によって芯物質が所定の粒径となるように調整して芯物質分散液とする。その際、芯物質分散液の温度は60〜80℃とされる。これとは別に、メラミンとホルムアルデヒドを60〜80℃で5〜20分間縮重合させて水溶性のプレポリマーを調製する。この際、メラミン/ホルムアルデヒド(質量比)は、例えば3/1〜6/1とされる。プレポリマーを芯物質分散液に投入し、次いで、クエン酸、硫酸、塩酸等の酸によりpHを2〜5に調製した後、60〜80℃で3〜6時間重合させることによって、カプセル粒子が分散したカプセル粒子分散液を得られる。
【0050】
(a2)成分としてポリアクリル酸樹脂又はポリメタクリル酸樹脂を使用する場合、in−situ重合法が好ましく、カプセル壁を芯物質側から形成させる方法が好適である。例えば、予めアクリル酸エチル、メタクリル酸エチル等のモノマーと、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤と、芯物質とを水に分散し、撹拌機で撹拌し、芯物質を任意の粒径に調整した混合分散液を得る。その際、モノマーの配合量は芯物質に対し5〜30質量%とされ、重合開始剤の配合量はモノマーに対し0.1〜5質量%とされる。また、混合分散液の調製は、20〜70℃の温度条件下で行われることが好ましい。
次いで、該混合分散液を60〜80℃とした後、窒素ガスを導入しながら、3〜6時間重合させることによって、カプセル粒子が分散したカプセル粒子分散液を得られる。
【0051】
カプセル粒子の製造に当たっては、カプセル壁の形成を容易にするために、必要に応じて乳化剤、分散剤等を通常の使用量で配合することができる。このような乳化剤又は分散剤としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、エチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩等のアニオン系乳化剤又は分散剤、ポリビニルアルコール等の非イオン系乳化剤又は分散剤等が挙げられる。
【0052】
上述したカプセル粒子は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0053】
≪香料組成物≫
香料組成物は、柔軟剤、繊維用仕上げ剤、繊維製品処理剤や毛髪化粧料等に、一般的に用いられる香料成分を1種類以上含む香料組成物であり、例えば香料成分、又は香料成分と溶剤と香料安定化剤等からなる混合物等が挙げられる。
香料組成物をカプセル粒子の芯物質に配合する場合、(a2)成分との反応性及び水溶性が低いものを選択することが好ましい。
前記香料成分としては、例えば、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、天然香料、動物性香料等が挙げられる。
【0054】
アルデヒド類としては、例えば、ウンデシレンアルデヒド、ラウリルアルデヒド、アルデヒドC−12MNA、ミラックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、エチルバニリン、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、オクタナール、リグストラール、リリアール、リラール、トリプラール、バニリン、ヘリオナール等が挙げられる。
【0055】
フェノール類としては、例えば、オイゲノール、イソオイゲノール等が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、バクダノール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、ターピネオール、テトラハイドロリナロール、フェニルエチルアルコール等が挙げられる。
【0056】
エーテル類としては、例えば、セドランバー、グリサルバ、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール等が挙げられる。
【0057】
エステル類としては、例えば、シス−3−ヘキセニルアセテート、シス−3−ヘキセニルプロピオネート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、p−クレジルアセテート、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、アミルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、アミルサリシレート、ベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、セドリルアセテート、シトロネリルアセテート、デカハイドロ−β−ナフチルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エリカプロピオネート、エチルアセトアセテート、エリカアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ヘディオン、リナリルアセテート、β−フェニルエチルアセテート、ヘキシルサリシレート、スチラリルアセテート、ターピニルアセテート、ベチベリルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、マンザネート、アリルヘプタノエート等が挙げられる。
【0058】
ハイドロカーボン類としては、例えば、d−リモネン、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン等が挙げられる。
【0059】
ケトン類としては、例えば、α−イオノン、β−イオノン、メチル−β−ナフチルケトン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、シス−ジャスモン、メチルイオノン、アリルイオノン、カシュメラン、ジハイドロジャスモン、イソイースーパー、ベルトフィックス、イソロンジフォラノン、コアボン、ローズフェノン、ラズベリーケトン、ダイナスコン等が挙げられる。
【0060】
ラクトン類としては、例えば、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナラクトン、クマリン、アンブロキサン等が挙げられる。
【0061】
ムスク類としては、例えば、シクロペンタデカノライド、エチレンブラシレート、ガラキソライド、ムスクケトン、トナリッド、ニトロムスク類等が挙げられる。
【0062】
テルペン骨格を有する香料としては、例えば、ゲラニオール(ゼラニオール)、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、ミント、シトロネラール、ミルセン、ピネン、リモネン、テレピネロール、カルボン、ヨノン、カンファー(樟脳)、ボルネオール等が挙げられる。
【0063】
天然香料としては、例えば、オレンジ油、レモン油、ライム油、プチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバンジン油、アビエス油、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、イランイラン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、ハッカ油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、白檀油、芳樟油、テレピン油、クローブ油、クローブリーフ油、カシア油、ナツメッグ油、カナンガ油、タイム油等の精油が挙げられる。
動物性香料としては、例えば、じゃ香、霊猫香、海狸香、竜涎香等が挙げられる。
【0064】
香料組成物としては、アニスアルデヒド、アンブロキサン、イソイースーパー、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、オレンジテルペンオイル、ガラクソライド、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、1,8−シネオール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ゼラニウムオイル、ターピネオール、ダマスコン、ダマセノン、1−デカナール、テトラハイドロリナロール、トナライド、バクダノール、バニリン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘディオン、ヘリオトロピン、ベルテネックス、ベルドックス、ベンジルアセテート、ベンジルサリシレート、メチルイオノン、2−メチルウンデカナール、l−メントール、ラズベリーケトン、リナリルアセテート、リナロール、リモネン、リラール、リリアール、ローズ、ベンジルベンゾエート及びジプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが好ましい。
【0065】
香料組成物には、通常用いられる香料用溶剤を配合してもよい。
香料用溶剤としては、アセチン(トリアセチン)、MMBアセテート(3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート)、スクロースジアセテートヘキサイソブチレート、エチレングリコールジブチレート、ヘキシレングリコール、ジブチルセバケート、デルチールエキストラ(イソプロピルミリステート)、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、TEG(トリエチレングリコール)、安息香酸ベンジル(BB)、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、トリプロピレングリコール、アボリン(ジメチルフタレート)、デルチルプライム(イソプロピルパルミテート)、ジプロピレングリコール(DPG)、ファルネセン、ジオクチルアジペート、トリブチリン(グリセリルトリブタノエート)、ヒドロライト−5(1,2−ペンタンジオール)、プロピレングリコールジアセテート、セチルアセテート(ヘキサデシルアセテート)、エチルアビエテート、アバリン(メチルアビエテート)、シトロフレックスA−2(アセチルトリエチルシトレート)、シトロフレックスA−4(トリブチルアセチルシトレート)、シトロフレックスNo.2(トリエチルシトレート)、シトロフレックスNo.4(トリブチルシトレート)、ドゥラフィックス(メチルジヒドロアビエテート)、MITD(イソトリデシルミリステート)、ポリリモネン(リモネンポリマー)、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。
【0066】
このような香料組成物を芯物質に配合する場合、香料と共に通常用いる溶剤を配合してもよいが、微量混入する場合を除いて水溶性溶剤を用いることを避けなければならない。
これら香料用溶剤を用いる場合、香料組成物中の香料用溶剤の含有量は、例えば、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0067】
香料組成物は、上記成分以外に、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じて、酸化防止剤、防腐剤等の添加剤を含有することができる。
【0068】
香料組成物をカプセル粒子含有乳化物に用いる場合、本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有乳化物中の香料組成物の含有量は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜4質量%、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。
香料組成物の含有量が下限値未満であると、香料組成物に求める香りの持続が望めず、上限値超であると、経済的に好ましくない。
【0069】
また、香料組成物は、徐放性の制御と嗜好性の点から、常圧での沸点が260℃未満である香料成分を、香料組成物から溶剤を除いた量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、含有することが望ましい。
【0070】
香料組成物に含有される香料成分の沸点は、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」Vol.IandII,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)及び「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)及び「香料と調香の基礎知識」、産業図書(1995)に記載されており、本明細書ではそれらの文献から引用する。
【0071】
<その他の成分>
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有乳化物には、本発明の効果を妨げない範囲で、上述した成分以外に、抗菌剤・防腐剤・殺菌剤(たとえば、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、イミダゾール・チアゾール系の有機硫黄化合物、安息香酸類、フェノール系のフェノール化合物、界面活性剤系のカチオン系化合物など)、増粘剤(水溶性又は水膨潤性の高分子化合物など)、水溶性溶剤(エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール類、ヘキサンジオール類、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)、シリコーン化合物、酸化防止剤、着色剤、消泡剤、pH調整剤、分散剤などを任意成分として配合できる。
前記その他の成分は、適宜、後述する工程(1)で水と共に水相として配合してもよく、工程(2)の前後で、又は工程(3)の後でそれぞれ単独で若しくは混合物として配合してもよい。
【0072】
(カプセル粒子含有乳化物の製造方法)
本発明のカプセル粒子含有乳化物の製造方法について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明のカプセル粒子含有乳化物の製造方法の一実施形態を示す工程概略図である。
図1に示すように、本実施形態の製造方法は、油相と水相とをラインミキサーで混合して第一の乳化物を調製する工程(1)(符号10)と、第一の乳化物を混合装置で混合して第二の乳化物を調製する工程(2)(符号20)と、第二の乳化物とカプセル粒子とを混合装置で混合する工程(3)(符号30)とを有するものである。
【0073】
[工程(1)]
工程(1)では、油相と水相とをラインミキサーで混合して第一の乳化物を調製する。
油相は、カチオン界面活性剤と、ノニオン界面活性剤と、所望とする機能に応じてその他の油溶性成分とを、カチオン界面活性剤の融点以上の温度、即ちカチオン界面活性が溶融する温度で混合することにより調製する。
油相の調製は、カチオン界面活性剤を溶融した状態で、ノニオン界面活性剤と混合できればよく、例えば、ジャケット付きニーダー、インラインミキサー等を用いることができる。
【0074】
カチオン界面活性剤の融点は、例えば、カチオン界面活性剤10mgをアルミニウム製の密閉セル(液体用、株式会社リガク製)に封入し、示差走査熱量計(THERMOFLEX TAS200、株式会社リガク製)を用い、2℃/分の昇温速度で0℃から80℃まで測定した際の吸熱ピークの最大値を示す温度として求めることができる。
なお、2種以上のカチオン界面活性剤を配合する場合、カチオン界面活性剤の融点は、用いるカチオン界面活性剤を混合し、この混合物の吸熱ピークの最大値として求めることができる。
【0075】
油相中のカチオン界面活性剤の配合量は、カプセル粒子含有乳化物の用途等を勘案して決定でき、例えば、45〜95質量%が好ましく、55〜95質量%がより好ましく、65〜95質量%がさらに好ましい。
油相中のカチオン界面活性剤の配合量が下限値以上であれば、カチオン界面活性剤の配合効果、たとえば衣料用柔軟剤として用いた場合、柔軟効果や抗菌効果が充分に発揮され、上限値以下であれば、油相の粘度が著しく上昇するのを抑え、工程(1)で得られる第一の乳化物の粘度を適度なものにできる。
【0076】
油相中のノニオン界面活性剤の配合量は、カプセル粒子含有乳化物の用途等を勘案して決定でき、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
ノニオン界面活性剤の配合量が下限値以上であれば、油剤の乳化に効果的に作用し、上限値以下であれば、工程(1)で得られる第一の乳化物の粘度を適度なものにできる。
【0077】
油相にその他の成分を配合する場合、油相中のその他の成分の配合量は、カプセル粒子含有乳化物の用途等を勘案して決定でき、例えば、40質量%以下が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。
たとえばカプセル粒子含有乳化物を衣料用柔軟剤として用いた場合、油相中の香料組成物の配合量が1質量%以上であれば、洗濯終了後、洗濯機から衣類を取り出した時点から乾燥後まで香りを感知できる等、充分に香りを付与でき、40質量%以下であれば、油相のハンドリング性も良好であり、不快なべた付き等を抑制できる。
【0078】
水相は、水と、必要に応じてその他の成分(水溶性抗菌剤、pH調整剤、分散剤等)とを、常法により混合することによって調製する。
また、油相に加え、別途用意した油溶性成分を配合してもよい。油溶性成分は、上記油溶性成分についての説明の中で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0079】
工程(1)における油相と水相との混合比率は、油相の種類を勘案して決定でき、液晶を形成しない比率で混合することが好ましい。これにより、適度な大きさの乳化物粒子を容易に調製でき、粘度が制御しやすくなり、工程(2)で乳化物粒子の粒径(粒度分布)を制御しやすくなる。
油相と水相とを混合して液晶を形成しないようにするには、たとえばカチオン界面活性剤として前記の式(VI)、(VII)又は(VIII)で表される化合物を配合する場合、第一の乳化物中の該化合物(カチオン界面活性剤)の含有量が21質量%以下、好ましくは10〜18質量%となるように油相の配合量を決定することが好ましい。
また、油相と水相とを混合して液晶を形成しないようにするには、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤との混合比率を、質量比で、カチオン界面活性剤/ノニオン界面活性剤=1〜15とすることが好ましく、3〜12とすることがより好ましく、5〜9とすることがさらに好ましい。加えて、該質量比が下限値未満であると、乳化不良が起こり、乳化物の安定性が悪化して経時で増粘が起こりやすくなる。該質量比が上限値超であると、乳化物の分散性が低下し、経時で分離しやすくなる。
さらに、油相と水相とを混合して液晶を形成しないようにするには、カプセル粒子を除く全配合成分を工程(1)で配合することが好ましい。
【0080】
工程(1)で用いるラインミキサー100としては、ディスプロ翼、ディスパー翼等の高剪断型の撹拌翼;又は、平羽根タービン翼、プロペラ翼、パドル翼等の汎用撹拌翼を備えた連続式混合装置を用いることができる。
これらのなかでも、工程(1)で用いるラインミキサー100は、乳化物粒子の微細化を充分に図れることから、高剪断型の撹拌翼を備えたラインミキサーを用いることが好ましい。
ラインミキサー100として具体的には、マイルダー(太平洋機工株式会社製)、T.K.パイプラインホモミクサーM型(プライミクス株式会社製)等の連続式混合装置が挙げられる。
【0081】
図2は、工程(1)で用いるラインミキサーの一例を示す模式図である。
ラインミキサー100は、略円筒状のハウジング110と、撹拌翼122を備えるローター120とで概略構成されている。図2において、撹拌翼122としては、円板に12等分となるように切込みを入れて任意の角度で折り曲げ加工された撹拌羽根(ディスプロ翼)を2段に配置したものが用いられている。
ラインミキサー100においては、ローター120を回転させながら、吸入口112からハウジング110内へ油相と水相とを供給することで、供給された油相と水相とが撹拌翼122とハウジング110の内周面との間で生じる剪断力を受けながら混合され、水中油型の乳化物(第一の乳化物)となる。そして、第一の乳化物は、排出口114から装置外へ排出される。
【0082】
図2に示す本実施形態において、撹拌翼122における羽根の最大外径dと、ハウジング110内の撹拌槽径Dとの比は、d/D=0.7以上であることが好ましく、0.7〜0.9であることがより好ましい。d/Dが下限値以上であると、充分な剪断力が付与され、油相と水相とが良好に混合される。d/Dが上限値を超えると、付与される剪断力が不足し、乳化不良となりやすい。
【0083】
工程(1)では、一例として、ラインミキサー100を用い、カチオン界面活性剤の融点以上の温度とした油相と水相とを投入し、カチオン界面活性剤の融点以上の温度に維持しながら、下記混合条件(a)で混合することにより第一の乳化物が得られる。
【0084】
混合条件(a):撹拌翼先端の周速度をA(m/s)、撹拌翼を通過する油相及び水相の線速度をB(m/s)とした際、A=0.5以上3未満、A/B=15〜500。
【0085】
周速度Aは0.5m/s以上、3m/s未満であり、1.3〜2.6m/sであることが好ましい。周速度Aが0.5m/s未満であると、油相と水相との混練不良が生じ、乳化物粒子の微細化が足りず、乳化物粒子の分散性が悪くなる。一方、周速度Aが3m/s以上であると、乳化物粒子の微細化が進行しすぎて、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりやすい。
【0086】
本実施形態において「線速度B(m/s)」とは、撹拌翼122を通過する油相及び水相の液流速を意味し、油相及び水相の合計流速(単位時間当たりの流量)を、撹拌翼122回転方向の断面積で除して算出される値を示す。
周速度A/線速度Bは15〜500であり、100〜400であることが好ましく、150〜350であることがより好ましく、200〜300であることが特に好ましい。A/Bが下限値未満であると、経時に伴って粘度増加が起こり、容器からの排出性が悪くなる。また、乳化物粒子が大きく、得られるカプセル粒子含有乳化物の保存安定性が損なわれるおそれがある。一方、A/Bが上限値を超えると、形成される乳化物粒子が小さくて粘度が低く、カプセル粒子の分散安定性が悪くなる。
【0087】
油相の流速(単位時間当たりの流量)は、100〜300000cm/分であることが好ましく、150〜18000cm/分であることがより好ましく、200〜1500cm/分であることがさらに好ましい。
水相の流速(単位時間当たりの流量)は、480〜1440000cm/分であることが好ましく、700〜864000cm/分であることがより好ましく、900〜5000cm/分であることがさらに好ましい。
油相及び水相の流速が前記範囲であれば、乳化物粒子が適度に微細化され、カプセル粒子含有乳化物の保存安定性が向上する。
【0088】
工程(1)における剪断速度は15sec−1以上であることが好ましく、より好ましくは100sec−1以上であり、さらに好ましくは300sec−1以上である。剪断速度が下限値未満であると、油相と水相との混練不良が生じ、乳化物粒子の微細化が足りず、乳化物粒子の分散性が悪くなる。
剪断速度は高いほど、乳化物粒子の粒径は小さく、かつ、均一になるが、剪断速度の上限は450sec−1以下であることが好ましい。剪断速度を上限値超としても、乳化物粒子の分散性向上の効果が飽和すると共に、剪断速度を上限値超とするためにはラインミキサーの高度な調整が必要とされ、作業が煩雑である。
図2において、剪断速度とは、ラインミキサー100の撹拌翼122先端の周速度A(m/s)、該先端とラインミキサー100内面とのクリアランス[(D−d)/2(m)]により決定される、周速度A/クリアランス(sec−1)で算出される値である。
なお、該剪断速度は、ラインミキサーの撹拌翼の回転速度、又は撹拌翼とラインミキサー内面とのクリアランスの調節により調整することができる。
【0089】
工程(1)における温度条件は、カチオン界面活性剤の融点以上であれば特に限定されず、好ましくはカチオン界面活性剤の融点より10℃以上高い温度とされる。また、工程(1)における温度条件の上限は、カチオン界面活性剤の種類やノニオン界面活性剤の種類等を勘案して決定でき、例えば、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下、特に好ましくは50〜60℃とされる。100℃超とすると、配合成分の熱分解により、水中油型乳化物の粘度が上昇したり、香料組成物等を配合した際に香気の劣化を生じたりするおそれがある。
【0090】
ラインミキサー100内における油相及び水相の平均滞留時間は、5秒間以上であることが好ましく、10〜30秒間であることがより好ましい。
平均滞留時間が下限値以上であると、油相と水相とが良好に混合される。平均滞留時間が上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好な乳化物が得られやすい。
【0091】
工程(1)で得られる第一の乳化物の粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは2〜4μm、さらに好ましくは2〜3μmである。
【0092】
なお、工程(1)においては、水相の一部を第一水相、その残部を第二水相として分割し、第一水相と油相とを混合した後、第二水相を投入してラインミキサーで混合することもできる。
【0093】
本実施形態において、工程(1)から工程(2)までの移送時間は、最終的に調製されるカプセル粒子含有乳化物の保存安定性を確保する点から、なるべく短い方がよく、好ましくは300秒間以下、より好ましくは120秒間以下とするのがよい。
【0094】
[工程(2)]
工程(2)では、工程(1)で得られた第一の乳化物を混合装置で混合して第二の乳化物を調製する。
工程(2)で用いる混合装置200としては、工程(1)で用いるラインミキサー100についての説明のなかで例示した連続式混合装置;ホモミキサー、ウルトラミキサー、フィルミックス、クレアミックス等のバッチ式混合装置などが挙げられる。
なかでも、工程(2)で用いる混合装置200は、乳化物粒子の粒度分布を狭く制御しやすいことから、連続式混合装置が好ましく、そのなかでも乳化物粒子の微細化を促進せず、分散性を高める目的から、汎用撹拌翼を備えたラインミキサーを用いることがより好ましい。
混合装置200として具体的には、マイルダー(太平洋機工株式会社製)、T.K.パイプラインホモミクサーM型(プライミクス株式会社製)等、混合装置100で使用できるものと同様の連続式混合装置が挙げられる。
【0095】
図3は、工程(2)で用いる混合装置の一例を示す模式図である。
混合装置200は、略円筒状のハウジング210と、撹拌翼222を備えるローター220とで概略構成されている。図3において、撹拌翼222としては、4枚の平羽根が十字状に固定された4枚平羽根タービン翼を2段に配置したものが用いられている。
混合装置200においては、ローター220を回転させながら、吸入口212からハウジング210内へ第一の乳化物を供給することで、供給された乳化物は撹拌翼222とハウジング210の内周面との間で生じる剪断力を受けながら混合され、乳化物粒子の微細化が図られると共に粒径(粒度分布)が制御された乳化物(第二の乳化物)となる。そして、該乳化物は、排出口214から装置外へ排出される。
【0096】
図3に示す本実施形態において、撹拌翼222における羽根の最大外径d’と、ハウジング210内の撹拌槽径D’との比は、d’/D’=0.4以上であることが好ましく、0.5〜0.9であることがより好ましい。d’/D’が下限値以上であると、充分な剪断力が付与され、油相と水相とが良好に混合される。d’/D’が上限値を超えると、クリアランス部で剪断力が強く付与され、乳化物粒子の微細化が促進しすぎてしまう場合がある。
【0097】
工程(2)では、一例として、前記工程(1)で得られた第一の乳化物を、カチオン界面活性剤の融点以上の温度を維持しながら、混合装置200に連続的に供給し、下記混合条件(b)で混合することにより、粒径(粒度分布)が制御された第二の乳化物が得られる。
【0098】
混合条件(b):撹拌翼先端の周速度をC(m/s)とした際、C=3〜10。
【0099】
周速度Cは3〜10m/sであり、5〜8m/sであることが好ましい。周速度Cが下限値未満であると、剪断が足りず、乳化物粒子の粒度分布が広くなりやすく、カプセル粒子含有乳化物の粘度が増加しやすい。一方、周速度Cが上限値を超えると、乳化物粒子の微細化が進行して、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりやすい。
工程(1)における周速度Aよりも、工程(2)における周速度Cが大きいほど、工程(1)で得られた第一の乳化物の粒径を保ちながら、粒度分布をより狭く制御できる。
【0100】
撹拌翼222を通過する、前記工程(1)で得られた第一の乳化物の液流速(線速度E)は、0.001〜0.067m/sであることが好ましく、0.003〜0.016m/sであることがより好ましい。
第一の乳化物の線速度が下限値以上であると、乳化物に充分な剪断力が付与され、上限値以下であると、粒径が制御されやすい。
本実施形態において「線速度E(m/s)」とは、撹拌翼222を通過する第一の乳化物の液流速を意味し、乳化物の流速(単位時間当たりの流量)を、混合装置200における撹拌翼222回転方向の断面積で除して算出される値を示す。
周速度C/線速度Eは150〜3000であることが好ましく、300〜2500であることがより好ましく、400〜2000であることがさらに好ましく、500〜1500であることが特に好ましい。
C/Eが下限値未満であると、乳化物粒子の粒度分布が広がりやすく、経時に伴う粘度変化が起こりやすい。一方、C/Eが上限値を超えると、形成される乳化物粒子が小さくて粘度が低く、カプセル粒子の分散安定性が悪くなる。
【0101】
第一の乳化物の流速(単位時間当たりの流量)は、500〜150000cm/分であることが好ましく、800〜50000cm/分であることがより好ましく、1000〜5000cm/分であることがさらに好ましい。第一の乳化物の流速が前記範囲であれば、乳化物粒子の粒径の制御が容易に図られる。
【0102】
工程(2)における剪断速度は150sec−1以上であることが好ましく、より好ましくは250sec−1以上であり、さらに好ましくは300sec−1以上である。剪断速度が下限値未満であると、剪断が足りず、乳化物粒子の粒度分布が広くなりやすく、カプセル粒子含有乳化物の粘度が増加しやすい。
剪断速度は高いほど、乳化物粒子の粒度分布は狭くなるが、剪断速度の上限は500sec−1以下であることが好ましい。剪断速度を上限値超としても、乳化物粒子の粒径を制御する効果が飽和すると共に、剪断速度を上限値超とするためには混合装置の高度な調整が必要とされ、作業が煩雑である。
図3において、剪断速度とは、混合装置200の撹拌翼222先端の周速度C(m/s)、該先端と混合装置200内面とのクリアランス[(D’−d’)/2(m)]により決定される、周速度C/クリアランス(sec−1)で算出される値である。
【0103】
なお、工程(2)においては、工程(2)で配合する成分の合計配合量が、工程(2)で得られる第二の乳化物全量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
工程(2)で配合する成分の合計配合量を上限値以下とすることにより、乳化物粒子の粒径が適度に制御され、粘度が低すぎたりすることがなく、カプセル粒子の分散安定性が向上する。
【0104】
工程(2)における温度条件は、カチオン界面活性剤の融点以上であれば特に限定されず、工程(1)と同様の条件とすればよい。
【0105】
混合装置200内における、工程(1)で得られた第一の乳化物の平均滞留時間は、5秒間以上であることが好ましく、10〜60秒間であることがより好ましい。
平均滞留時間が下限値以上であると、乳化物に充分な剪断力が付与される。平均滞留時間が上限値以下であれば、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好な乳化物が得られやすい。
【0106】
本実施形態において、工程(2)から工程(3)までの移送時間は、最終的に調製されるカプセル粒子含有乳化物の保存安定性を確保する点から、なるべく短い方がよく、好ましくは300秒間以下、より好ましくは120秒間以下とするのがよい。
【0107】
[工程(3)]
工程(3)では、工程(2)で得られた第二の乳化物とカプセル粒子とを混合装置で混合することによりカプセル粒子含有乳化物を得る。
工程(3)で用いる混合装置300としては、スタティックミキサー等の公知の混合装置を使用することができる。工程(3)においては、混合によるカプセル粒子の破壊を防ぐため、低剪断での撹拌が好ましい。
工程(3)における剪断速度は100sec−1以下であることが好ましく、より好ましくは10〜60sec−1であり、さらに好ましくは30〜50sec−1である。
なお、工程(3)における剪断速度は、たとえばスタティックミキサーの半径r(m)と該ミキサー内の流量Q(m/s)から算出することができる(剪断速度=4Q/πr)。
スタティックミキサーを用いる場合、エレメント数は12〜30が好ましく、24〜30がより好ましい。
【0108】
工程(3)における温度条件は、カプセル粒子中の内包成分へのダメージを避けるために温度は低い方が好ましく、具体的には25〜35℃が好ましい。
かかる温度に調整する際、冷却速度は、好適な25〜35℃に冷却できればよく、なるべく早い方が好ましく、具体的には5〜50℃/分とすることが好ましく、20〜50℃/分とすることがより好ましい。
【0109】
工程(3)で配合するカプセル粒子は、乳化物中での分散安定性(浮遊・沈降の抑制効果)に優れることから、その比重(25℃、水を基準)が工程(2)で得られた乳化物の0.8〜1.2倍であることが好ましく、0.85〜1.15倍であることがより好ましく、0.9〜1.1倍であることがさらに好ましい。
【0110】
本発明の製造方法により得られるカプセル粒子含有乳化物中の乳化物粒子の平均粒径は、好ましくは2〜4μm、より好ましくは2〜3μmである。
該乳化物粒子の平均粒径が下限値以上であると、カプセル粒子含有乳化物の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が向上する。上限値以下であると、カプセル粒子含有乳化物の粘度増加が起こりにくくなり、容器からの排出性が向上する。
該乳化物粒子の平均粒径の標準偏差が0.30μm以下であることが好ましく、0.25〜0.28μmであることがより好ましい。この標準偏差が上限値以下あると、乳化物粒子の分散性がより高まり、経時に伴う粘度変化がより抑制され、カプセル粒子の分散安定性と容器からの排出性がいずれも向上する。この標準偏差は、平均粒径の測定方法と同様にして求められる。
上記の平均粒径、標準偏差を満たす粒度分布とすることで、乳化物粒子とカプセル粒子とが互いに似通った粒度分布となり、細密充填されることで、カプセル粒子の分散安定性が向上する、と考えられる。
【0111】
本発明の製造方法により得られるカプセル粒子含有乳化物の粘度は、用途に応じて決定することができ、例えば、その粘度が200〜500mPa・sであることが好ましく、200〜400mPa・sであることがより好ましく、250〜350mPa・sであることがさらに好ましい。
当該粘度が好ましい下限値以上であると、カプセル粒子の分散安定性がより向上する。一方、当該粘度が好ましい上限値以下であると、容器からの排出性がより向上する。また、ハンドリングが良好となり、繊維製品処理剤等を製造する際の混合性が良好になる。
粘度は、株式会社東京計器製のBL型回転式粘度計を用い、以下に示す測定条件で測定できる。
【0112】
ローター:No.2(粘度が10〜1000mPa・sの場合)、No.3(粘度が1001〜4000mPa・sの場合)
回転数:30rpm、測定温度:25℃(乳化物の温度)、測定時間:20秒後(10回転目の値)
【0113】
本発明のカプセル粒子含有乳化物の製造方法においては、工程(1)で、混合条件(a)による剪断力の付与で乳化分散させることにより、適度な大きさの乳化物粒子が調製されて粘度が制御され、工程(2)で、混合条件(b)による剪断力の付与によって連続で再分散させることにより、乳化物粒子の粒径(粒度分布)が制御される。
本発明によれば、一回の剪断力の付与で乳化分散したものより乳化物粒子の粒度分布が狭く、40℃経時保存での粘度増加を抑制できる。また、一括乳化では本発明のような粘度、粒径、標準偏差を満たすものはできず、特に標準偏差を充足できない(すなわち粒度分布が広くなる)。
油相と水相の全量を一括乳化した後、さらに連続で混合する本発明の製造方法により、高温(40℃)保存経時での粘度増加と、室温(25℃)保存での粘度減少とが共に抑制されたカプセル粒子含有乳化物が得られる。この本発明の製造方法により得られるカプセル粒子含有乳化物は、カプセル粒子の浮遊・沈降が抑制されて、カプセル粒子の分散安定性に優れる。また、容器からの排出性にも優れる。
【0114】
本発明のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、衣料用柔軟剤、衣料用洗剤等の繊維製品処理剤、ヘアリンス、化粧品等、又はこれらを構成する成分の製造方法として好適である。
【0115】
本発明のカプセル粒子含有乳化物の製造方法は、上述した本実施形態に限定されず、工程(2)の操作を複数回繰り返した後、工程(3)の操作を施してもよい。工程(2)の操作は2回以上繰り返すことが好ましく、2〜3回繰り返すことがより好ましい。
工程(2)の操作を複数回繰り返すことにより、乳化物粒子の粒径(粒度分布)がより制御され、粒度分布が狭くなる。これにより、経時に伴う粘度変化がより抑制され、カプセル粒子の分散安定性と容器からの排出性のいずれも優れる。
【実施例】
【0116】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各実施例及び各比較例で用いた成分の配合量は、特に指定しない限り純分換算値である。
【0117】
(使用原料)
各実施例及び各比較例における使用原料を以下に示す。
<カチオン界面活性剤>
モノ/ジ/トリ長鎖エステル型第4級アンモニウムメチルサルフェート[(a)モノエステルアンモニウム塩:(b)ジエステルアンモニウム塩:(c)トリエステルアンモニウム塩=28:53:19(質量比)の混合物]、エステル基で分断された長鎖炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩;下記合成例により合成した第4級アンモニウム塩
[合成例]
(1)脂肪酸メチルエステルの水素添加
オレイン酸メチル75質量%、リノール酸メチル16質量%及びステアリン酸メチル9質量%よりなるパーム脂肪酸メチル(ライオン株式会社製、商品名:パステルM182、平均分子量296)2.5kgと、市販の安定化ニッケル触媒2.5g(0.1質量%/脂肪酸メチル)とを4Lのオートクレーブに仕込み、窒素ガス置換を3回行った。
次いで、回転数を800rpmに合わせ、温度185℃で約54Lの水素ガスを導入した。導入した水素が完全に消費された後、冷却し、濾過助剤を使用して触媒を除き、水素添加したパーム脂肪酸メチルを得た。けん化価より求めた分子量は297であった。ガスクロマトグラフィー(GC)から求めた脂肪酸メチル組成は、ステアリン酸メチル11質量%、エライジン酸メチル(トランス体)23質量%、オレイン酸メチル(シス体)66質量%であり、不飽和脂肪酸メチルエステルのトランス/シス比率は26/74(質量比)であった。なお、不飽和アルキル基は、GCによる次の方法で測定した。
機種:Hitachi FIDガスクロG−3000カラム(GLサイエンス製、TC−70)0.25mm i.d.×30m
温度:カラム150℃→230℃、昇温速度10℃/分、インジェクター&ディテクター240℃、カラム圧力:1.0kgf/cm
【0118】
(2)アルカノールアミンエステルとそのカチオンの合成
上記(1)で調製した水素添加したパーム脂肪酸メチル352g(1.19モル)に、ステアリン酸メチル243g(0.82モル)とパルミチン酸メチル188g(0.70モル)とを混合した脂肪酸メチルエステル(不飽和脂肪酸メチル/飽和脂肪酸メチルの質量比40/60)と、トリエタノールアミン250g(1.67モル)と、酸化マグネシウム0.51gと、14質量%水酸化ナトリウム水溶液3.69gとを、撹拌器、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに入れ、窒素置換を行った後、窒素を0.52L/分の流量で流しながら、1.5℃/分の昇温速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1質量%以下であることを確認して反応を停止し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。アミン価を測定し、分子量を求めると578であった。
得られたアルカノールアミンエステル265g(0.46モル)を温度計、滴下ロート及び冷却機を備えた4つ口フラスコに入れて窒素置換した。次いで、85℃に加熱し、ジメチル硫酸57.4g(0.45モル)を1時間に渡り滴下した。滴下終了後、温度を90℃に保ち、1時間撹拌した。反応終了後、約62gの未変性エタノール(日本エタノール株式会社)を滴下しながら冷却してエタノール溶液を調製し、最後に、フェリオックスCY−115(ライオン株式会社製、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸の60質量%水溶液)と、ジブチルヒドロキシトルエン(住友化学工業株式会社製)とをそれぞれ100ppmの濃度になるように添加した。
得られた反応生成物には、モノエステルアンモニウム塩とジエステルアンモニウム塩とトリエステルアンモニウム塩とが合計で85質量%、その比率は28/53/19(質量比)で含まれていた。
このエタノール溶液中には、4級化されていないモノエステルアミンとジエステルアミンとトリエステルアミンとが合計で9.0質量%含まれており、その比率は1/9/90(質量比)で存在していた。さらに副生成物として、両性化合物が2.0質量%含まれていた。
【0119】
<ノニオン界面活性剤>
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数13、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数60、商品名:TA600−75、ライオン株式会社製)
【0120】
<香料組成物>
香料組成物(A):表1に記載の香料組成物
香料組成物(B):表1に記載の香料組成物
【0121】
【表1】

【0122】
<水溶性抗菌剤>
商品名:ケーソンCG/ICP、Rohm&Haas社製
【0123】
<カプセル粒子>
カプセル粒子A:内包香料として香料組成物(2−1−1)と、壁物質としてウレタン系高分子とを用いた。
300mL容ビーカーに、イオン交換水200gと、平均分子量が16,000のポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩(商品名:ポリティPS−1900、ライオン株式会社製)5gとを入れ、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩水溶液を調製した。
また、別の100mL容ビーカーに、表2に示す香料組成物(2−1−1)55gと、ポリフェニルイソシアネート(商品名:PAPI−135、Dow Chemical製)8gとを入れて混合し、芯物質溶液を調製した。
次いで、500mL容ビーカーに、前記の二種類の溶液を入れ、ホモミキサーにより3000rpmで5分間撹拌してO/Wエマルションを調製し、その後、40質量%のヘキサメチレンジアミン水溶液75gを入れ、常温で、400rpmで2時間撹拌してカプセル壁を反応硬化させることにより、硬化したカプセル壁を有するアニオン性マイクロカプセル粒子が分散した水性分散液を調製した。
このように調製されたカプセル粒子の粒径を測定した結果、平均粒径は約5μmであり、比重は0.92であった。また、得られたカプセル粒子中の香料組成物(2−1−1)の含有率は約16質量%であった。
【0124】
カプセル粒子B:内包香料として香料組成物(2−1−2)と、壁物質としてメラミン系高分子とを用いた。
エチレン−無水マレイン酸共重合体(商品名:A−C573A、573P、ハネウェル社製)のナトリウム塩、及び平均分子量16,000のポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩(商品名:ポリティPS−1900、ライオン株式会社製)をそれぞれ5質量%含有する水溶液300gに、表3に示す香料組成物(2−1−2)150gを加え、ホモミキサーにより2,500rpmで撹拌してO/Wエマルションを調製した。
また、別途、メラミン30g、35質量%のホルムアルデヒド水溶液100g及び水350gに、少量の水酸化ナトリウムを加えてpHを約9に調節した後、80℃で30分間撹拌してメチロールメラミン水溶液を調製した。
次いで、このメチロールメラミン水溶液を前記のO/Wエマルションに添加し、70℃で約2時間撹拌してカプセル壁を反応硬化させることにより、硬化したカプセル壁を有するアニオン性マイクロカプセル粒子が分散した水性分散液を調製した。
このように調製されたカプセル粒子の粒径を測定した結果、平均粒径は約4μmであり、比重は0.95であった。また、得られたカプセル粒子中の香料組成物(2−1−2)の含有率は約16質量%であった。
【0125】
【表2】

【0126】
【表3】

【0127】
<増粘剤>
商品名:RHEOVIS FRC、Ciba社製
【0128】
(評価方法)
各例で製造されたカプセル粒子含有乳化物について、乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)、粘度(製造直後、25℃で1ヶ月保存後、40℃で1ヶ月保存後)、25℃で1ヶ月保存後のカプセル粒子の分散状態、40℃で1ヶ月保存後の詰替え容器からの排出性をそれぞれ評価した。これらの結果を表4、5に示す。
【0129】
<カプセル粒子含有乳化物における乳化物の粒度分布の測定>
乳化物の粒度分布は、島津製作所製の粒度分布測定装置SALD−7100、高濃度サンプル測定システムSALD−HC71、測定・解析ソフトWing SALDII−7100HCを用い、カプセル粒子含有乳化物の液温25℃で、屈折率2.65−0.20i、測定吸光度範囲0.01−0.20にて、体積基準のメジアン径(μm)、標準偏差(μm)を測定した。
【0130】
<カプセル粒子含有乳化物の粘度の測定>
200mLのトールビーカーに、製造直後、25℃で1ヶ月保存後、40℃で1ヶ月保存後の各カプセル粒子含有乳化物200mLをそれぞれ入れ、25℃の恒温水槽で1時間調温した。その後、粘度計(BL型回転式粘度計、株式会社東京計器製)を用い、以下の測定条件で測定した。
ローター:No.2(粘度が10〜1000mPa・sの場合)、No.3(粘度が1001〜4000mPa・sの場合)
回転数:30rpm、測定温度:25℃(乳化物の温度)、測定時間:20秒後(10回転目の値)
【0131】
<カプセル粒子含有乳化物におけるカプセル粒子の分散状態の評価>
カプセル粒子と乳化物部分とは見た目で差異があって区別できるため、25℃で1ヶ月保存後のカプセル粒子含有乳化物の外観を目視観察し、下記の評価基準に従い、カプセル粒子の分散状態について評価した。
評価基準
○:カプセル粒子が均一に分散していた。
△:カプセル粒子の一部が浮上していた。
×:カプセル粒子全体が浮上し、分離していた。
なお、○、△、×の差は、目視で充分に判定できる。
【0132】
<カプセル粒子含有乳化物の詰替え容器からの排出性の評価>
各例で製造されたカプセル粒子含有乳化物を、ライオン株式会社製の液体洗剤であるトップNANOX用ボトル500mLに充填し、排出口を鉛直線の方向に向けて、排出量が400mLに達するまでの時間を測定した。この測定を10人で行い、下記の評価基準に従い、詰替え容器からの排出性について評価した。
評価基準
◎:10人の平均時間が10秒以下であった。
○:10人の平均時間が11〜20秒であった。
△:10人の平均時間が21〜40秒であった。
×:10人の平均時間が41秒以上であった。
【0133】
(実施例1)
図1に示す実施形態と同じ実施形態の製造方法によりカプセル粒子含有乳化物を製造した。工程(1)では図2に示す実施形態と同じ実施形態のラインミキサー(第1ラインミキサー,1LM)、工程(2)では図3に示す実施形態と同じ実施形態の混合装置(第2ラインミキサー,2LM)をそれぞれ用いた。具体的に用いたラインミキサーは以下の通りである。
第1ラインミキサー:容量0.285L、撹拌槽径(D)65.7mm、撹拌槽の撹拌翼回転方向の断面積33.8cm、撹拌翼における羽根の最大外径(d)21.7mm、羽根の幅(b)6.6mm
第2ラインミキサー:容量0.500L、撹拌槽径(D’)80.4mm、撹拌槽の撹拌翼回転方向の断面積50.6cm、撹拌翼における羽根の最大外径(d’)40.1mm、羽根の幅(b’)7.9mm
【0134】
工程(1):
表4に示す組成の割合となるように、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤と香料組成物とを55℃に加熱しながら混合して油相とした。また、精製水と水溶性抗菌剤とを均一に混合した後、55℃に加熱して水相とした。
それぞれ55℃に予め加温した前記の油相と水相の全量を、55℃に設定した第1ラインミキサー(1LM)に連続的に供給しながら混合して乳化物(a1)を得た。
混合条件について、第1ラインミキサー(1LM)として、撹拌翼における羽根の最大外径dと撹拌槽径Dとの比d/Dが0.8であり、円板に12等分となるように切込みを入れて設定角度通りに折り曲げ加工された撹拌羽根(ディスプロ翼)が2段に配置されたものを用いた。そして、撹拌翼を回転数850rpm(撹拌翼先端の周速度A=2.32m/s)、剪断速度356sec−1で撹拌して乳化分散を行った。
このときの流量は、水相が980cm/分、油相が200cm/分、第1ラインミキサーの撹拌翼を通過する油相及び水相の線速度B=0.0058m/sであり、第1ラインミキサーでの平均滞留時間は14秒間であった。
【0135】
工程(2):
前記工程(1)で得られた乳化物(a1)を、平均移送時間30秒で、55℃に設定した前記工程(1)とは別の第2ラインミキサー(2LM)に連続的に供給(線速度0.039m/s)し、さらに剪断を加えて乳化物(a2)を得た。
混合条件について、第2ラインミキサー(2LM)として、撹拌翼における羽根の最大外径dと撹拌槽径Dとの比d/Dが0.5であり、4枚平羽根タービン翼を2段に配置したものを用いた。そして、該タービンの回転数3600rpm(撹拌翼先端の周速度C=9.75m/s)、剪断速度は480sec−1、第2ラインミキサーの撹拌翼を通過する乳化物(a1)の線速度E=0.0039m/sとして剪断を与え、第2ラインミキサーでの平均滞留時間が25秒間の混合を行った。
【0136】
工程(3):
前記工程(2)で得られた乳化物(a2)を、熱交換器(30℃/分)により25℃に冷却した。
その後、カプセル粒子を連続的に添加し、スタティックミキサーを用いて剪断速度40sec−1で混合し、カプセル粒子含有乳化物を得た。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0137】
(実施例2〜5)
表4に示すように、第1ラインミキサー(1LM)の撹拌翼先端の周速度Aと、撹拌翼先端の周速度Cとをそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして各カプセル粒子含有乳化物を得た。
なお、第1ラインミキサーの撹拌翼を通過する油相及び水相の線速度Bは、実施例1と同じ0.0058m/sとした。また、第2ラインミキサーの撹拌翼を通過する乳化物の線速度Eは、実施例1と同じ0.0039m/sとした。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0138】
(実施例6)
実施例2の工程(2)と工程(3)との間に、該工程(2)と同じ操作(混合条件についても同じ)を行う工程(2’)(この工程で用いるラインミキサーを「第3ラインミキサー(3LM)」という。)を追加した以外は、実施例2と同様にしてカプセル粒子含有乳化物を得た。第3ラインミキサーの撹拌翼を通過する乳化物の線速度は0.0039m/sとした。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0139】
(実施例7)
実施例6の工程(2’)と工程(3)との間に、該工程(2’)と同じ操作(混合条件についても同じ)を行う工程(2”)(この工程で用いるラインミキサーを「第4ラインミキサー(4LM)」という。)を追加した以外は、実施例6と同様にしてカプセル粒子含有乳化物を得た。第3ラインミキサー及び第4ラインミキサーの各撹拌翼を通過する乳化物の線速度はそれぞれ0.0039m/sとした。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0140】
(実施例8)
表4に示すようにカプセル粒子の種類を変更した以外は、実施例2と同様にしてカプセル粒子含有乳化物を得た。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0141】
(実施例9)
工程(1)、工程(2):
実施例2における工程(1)、工程(2)とそれぞれ同様にして行った。
工程(3):
前記工程(2)で得られた乳化物(a2)を、熱交換器(25℃/分)により25℃に冷却した。
次いで、増粘剤を加えてスタティックミキサーで混合し、その後、カプセル粒子を連続的に添加してスタティックミキサーで混合し、カプセル粒子含有乳化物を得た。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0142】
(比較例1)
実施例1における工程(1)と工程(3)のみを行い、カプセル粒子含有乳化物を得た。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0143】
(比較例2)
表5に示すように、工程(2)における撹拌翼先端の周速度Cを変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセル粒子含有乳化物を得た。なお、第2ラインミキサーの撹拌翼を通過する乳化物の線速度Eは、実施例1と同じ0.0039m/sとした。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0144】
(比較例3)
表5に示すように、工程(1)における撹拌翼先端の周速度Aを変更した以外は、実施例1と同様にしてカプセル粒子含有乳化物を得た。なお、第1ラインミキサーの撹拌翼を通過する油相及び水相の線速度Bは、実施例1と同じ0.0058m/sとした。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0145】
(比較例4)
下記バッチ式混合装置を用いて、撹拌槽に、それぞれ55℃に予め加温した前記の油相と水相の全量を入れて混合する方法(バッチ配合)により混合物を得た。
バッチ式混合装置:撹拌機はアジターSJ型(島津製作所製)を用いた。該撹拌機の撹拌翼における羽根の最大外径(d)52.5mm、羽根の幅(b)6.6mm。容器は、容量0.285L、撹拌槽径(D)65.7mm、撹拌槽の撹拌翼回転方向の断面積33.83cmのガラス容器を用いた。
混合条件について、撹拌翼先端の周速度Aを、実施例2と同じ1.45m/sに設定して14秒間撹拌した。
表中、比較例4の「A/B」における※は、A/B=250となるように、撹拌時間(乳化物の全量に対して剪断力を付与した時間)を調整したことを意味する。
続けて、得られた混合物を25℃に冷却し、その後、カプセル粒子を連続的に添加してスタティックミキサーで混合し、カプセル粒子含有乳化物を得た。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0146】
(比較例5)
撹拌翼先端の周速度Aを8.20m/sに変更した以外は、比較例4と同様にしてカプセル粒子含有乳化物を得た。
表中、比較例5の「A/B」における※は、A/B=1400となるように、乳化物の全量に対する剪断力(周速度Aを8.20m/sに設定)と撹拌時間(14秒間撹拌)を調整したことを意味する。
得られたカプセル粒子含有乳化物について、製造直後の25℃での初期粘度と乳化物の粒度分布(メジアン径、標準偏差)の測定、25℃で1ヶ月保存後の粘度の測定とカプセル粒子の分散状態の評価、40℃で1ヶ月保存後の粘度の測定と詰替え容器からの排出性の評価をそれぞれ行った。これらの結果を表中に示す。
【0147】
【表4】

【0148】
【表5】

【0149】
表4に示すように、本発明を適用した実施例1〜9によれば、経時に伴う粘度変化が抑制され、カプセル粒子の分散安定性と容器からの排出性のいずれも優れたカプセル粒子含有乳化物を製造できることが分かる。
【0150】
一方、表5に示すように、混合回数が1回の比較例1と、1回目と2回目の撹拌翼先端の周速度が同じ比較例2では、40℃で1ヶ月保存により粘度が増加して、容器からの排出性が劣る結果であった。
混合回数が1回で、かつ、周速度Aが高い比較例3では、乳化物の粒子が小さすぎて粘度が低いため、カプセル粒子の分散安定性が劣る結果であった。
バッチ配合を行った比較例4では、40℃で1ヶ月保存により粘度が増加して、容器からの排出性が劣る結果であった。
バッチ配合を行い、周速度Aが比較例4に比べて高い比較例5では、製造直後から粘度が低く、カプセル粒子の分散安定性が悪かった。
【符号の説明】
【0151】
100 ラインミキサー、110 ハウジング、120 ローター、122 撹拌翼、200 混合装置、210 ハウジング、220 ローター、222 撹拌翼、300 混合装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を含有する油相と、水を含有する水相とを、撹拌翼を備えたラインミキサーにより下記混合条件(a)で混合して第一の乳化物を得る工程(1)と、
該工程(1)で得られた第一の乳化物を、撹拌翼を備えた混合装置により下記混合条件(b)で混合して第二の乳化物を得る工程(2)と、
該工程(2)で得られた第二の乳化物とカプセル粒子とを混合する工程(3)とを有することを特徴とするカプセル粒子含有乳化物の製造方法。
混合条件(a):撹拌翼先端の周速度をA(m/s)、撹拌翼を通過する油相及び水相の線速度をB(m/s)とした際、A=0.5以上3未満、A/B=15〜500。
混合条件(b):撹拌翼先端の周速度をC(m/s)とした際、C=3〜10。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−61446(P2012−61446A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209496(P2010−209496)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】